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ホンダ アコード ハイブリッド EX:新車試乗記

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キャラクター&開発コンセプト

2リッター直4エンジンで発電し、主にモーターで走る

ホンダ アコード ハイブリッド。2013年6月20日の発表会にて
2013年6月21日に発売された新型「アコード ハイブリッド」と「アコード プラグイン ハイブリッド」は、ホンダ独自の全く新しいハイブリッドシステム「スポーツ ハイブリッド i-MMD」(以下、i-MMD)を搭載したFFアッパーミディアムセダン。アコードとしては9代目になる。 i-MMDとは、インテリジェント・マルチ・モード・ドライブの略。その特徴は、エンジンは主に発電に徹し、主としてモーターで走行するという、シリーズハイブリッド的な仕組みであること。ホンダにとっては初の「モーターだけで発進・走行するハイブリッド車」だが、シリーズ・パラレル方式であるトヨタの「THS-II」とは根本的に異なる。 ただし、i-MMDを単にシリーズハイブリッドと呼べないのは、高速巡航時や限られた速度域の加速時にはエンジンも駆動に直接参加するから。メカニズム的には、三菱のアウトランダー PHEVとよく似ている(ただしアウトランダーPHEVは電気式の4WDであり、後輪にも駆動用モーターを備える)。アコード ハイブリッドの場合、モーターとエンジンを合わせたシステム最高出力は199psに達する。

JC08モード燃費はクラスで群を抜く30.0km/L

ホンダ アコード プラグイン ハイブリッド
JC08モード燃費は、現行プリウス(30.4~32.6km/L)に迫る30.0km/Lを達成し、トヨタのカムリ ハイブリッド(23.4km/L)やクラウン ハイブリッド(23.2km/L)を引き離して同クラスダントツのトップ。 また、家庭用電源からの充電(プラグイン)が可能なアコード プラグイン ハイブリッド(当面は法人企業や官公庁向けのリース販売のみ)は、EVでの走行可能距離が37.6kmに及び、JC08モード燃費(プラグインハイブリッド燃料消費率)は70.4km/Lに達する。 北米にはガソリン車もあるが、日本向けはハイブリッドのみで、国内向けの生産は埼玉製作所(狭山工場)で行われる。販売計画台数は月間1000台で、先日発表された発売後約1ヵ月の累計受注台数はその7倍の7000台超とのこと。
 
i-MMDは、ハイブリッド専用の2リッター直4・DOHC i-VTEC アトキンソンサイクルエンジン(143ps、16.8kgm)、走行用モーター(169ps、31.3kgm)、発電用モーター、高速巡航時などにエンジンと駆動輪を直結するエンジン直結クラッチ、リチウムイオン電池で構成される (photo:Honda)
広告キャッチコピーは「セダン愛。」「超アコード。」など。テレビCMでは「開発は革命だ」「重力に挑むハイブリッド」「圧倒的な技術力で」といった硬派なコピーが続くものが印象的。 ■過去の新車試乗記【ホンダ アコード/インスパイア】ホンダ インスパイア(5代目) 35TL (2008年2月更新)ホンダ アコード(8代目) ツアラー 24TL (2008年1月更新)ホンダ インスパイア(4代目) アバンツァーレ (2003年7月更新)ホンダ アコード(7代目) 24TL (2002年11月更新)ホンダ アコード(6代目) ユーロ R(2000年8月更新) ■外部リンクホンダ>新型上級セダン「アコード ハイブリッド」を発売 (2013年6月20日発表)ホンダ>新型「アコード ハイブリッド」受注状況について (2013年7月23日発表)

価格帯&グレード展開

価格は365万円~。ミリ波レーダー搭載車は390万円

試乗中、たまたま一緒に並んだライバル車、カムリ ハイブリッド。オーナーによると「燃費は街乗りで15km/Lくらい、高速では最高23km/L。ガソリンが減らないし、クラウンより中が広いよ」とのこと。トランクもアコードより広い
価格はアコード ハイブリッドの標準グレード「LX」が365万円。ミリ波レーダーを搭載し、CMBS(衝突軽減ブレーキ)やACC(アダプティブ クルーズ コントロール)を標準装備した「EX」が390万円。アコード プラグイン ハイブリッドは500万円(リース販売のみ)。 ライバル車は、トヨタ カムリ ハイブリッド(304万円~)、トヨタ クラウン ハイブリッド(410万円~)、あるいはディーゼルのマツダ アテンザ XD(290万円~)など。 ■アコード ハイブリッド LX     365万円 ■アコード ハイブリッド EX    390万円 ※今回の試乗車 ■アコード プラグイン ハイブリッド 500万円
 

パッケージング&スタイル

全長は一気に4.9メートル台へ

全長は先代アコード(欧州向けと共通)より、一気に185mm増した
北米向けアコードと久々に(15年ぶりくらい?)統合された新型アコードは、全長が4.9メートル超、全幅は1.85メートルと、堂々たる国際規格のミディアムクラスセダンに成長。アコードと言えば一昔前まで5ナンバーサイズの中型セダンだったことを思うと、「大きくなったなぁ」というのが率直な印象で、実際のところ外寸は現行クラウンより大きく、メルセデスのEクラスやBMWの5シリーズにも並ぶ。 ちなみに、今やホンダの国内向け「4ドアセダン」は、アコードのみ。2010年にはシビックセダン(ハイブリッドを含む)が、2012年にはレジェンドとインスパイアが国内での販売を終了しており、つまり新型アコード ハイブリッドはそれら全ての後継車でもある。

LEDヘッドライトと青いガーニッシュが目印

デザイン自体は、現行オデッセイ似ながら、クリアブルーのガーニッシュをあしらったフロントまわりが目を引く。ポジションライトに加えて、ヘッドライト自体(ロービーム)にもホンダ初となるLEDを採用。プロジェクターが片側2灯で、1灯あたり5つのLEDを備えるから、LEDは両側で計20個。消費電力は片側で約20Wとのこと。 ただし、オーソドクスな3ボックスのスタイリングは、やや個性に乏しい。このあたりも北米向けということか。ちなみに米国での販売目標は年間35万台以上で、日本国内の約30倍にもなる。
 
 
    全長(mm) 全幅(mm) 全高(mm) WB(mm) 最小回転半径(m)
BMW アクティブハイブリッド 3 4625 1800 1440 2810 5.4
レクサス IS300h 4665 1810 1430 2800 5.2
8代目ホンダ アコード(2008-2013) 4665 1810 1430 2800 5.2
トヨタ カムリ ハイブリッド(2011-) 4825 1825 1470 2775 5.5
マツダ アテンザ セダン XD(2012-) 4860 1840 1450 2830 5.6
トヨタ クラウン ハイブリッド(2013-) 4895 1800 1450-1460 2850 5.2
BMW アクティブハイブリッド 5 4910 1860 1475 2970 5.7
ホンダ アコード ハイブリッド 4915 1850 1465 2775 5.7
アウディ A6 ハイブリッド 4930 1875 1465 2910 5.7
日産 フーガ ハイブリッド 4945 1845 1500 2900 5.6
 

インテリア&ラゲッジスペース

インターナビを中心にしたインパネレイアウト

インパネデザインは最近のホンダ車に共通するもの。グレーの木目調パネルはイイ感じ
インパネのデザインは、ここ最近のホンダ車に共通するもの。ダッシュボード中央にインターナビ用の8インチワイドディスプレイを配置し、その下にオーディオ用の5.8インチタッチディスプレイ、空調スイッチ、さらにインターナビのコントローラー(プログレッシブコマンダー)、シフトレバーと続く。操作スイッチとモニターの関連が分かりづらく、少し慣れが必要。メーターまわりは大型のアナログメーターを中央に配したオーソドクスなもので、回転計はない。あと、けっこうなハイテク車だが、パーキングブレーキは足踏み式になる。
 
シフトレバーはごくオーソドクスなストレートタイプ。マニュアルモードやスポーツモードはない
ホンダ車でおなじみのインターナビは標準装備。高度なプローブ機能が自慢
スマートキーはハイブリッド車らしくブルーをあしらったデザイン。小型でかさばらない
 
トランク容量は381リッター+床下17リッター(計398リッター)。ちなみにプラグイン仕様は261リッター。いずれもトランクスルーはない
当然ながらリアシートは広く、座面も大きくて座り心地も良い。6エアバッグ標準で、後席乗員の頭部はカーテンエアバッグが守る。EXは電動リアウインドウサンシェード付
試乗車はレザーパッケージ(19万9500円)装着車。電動&シートヒーターも備わる。シートは大柄で、ポジションの調整自由度は高い
 

基本性能&ドライブフィール

基本はエンジンで発電し、モーターで走る

試乗したのは、ホンダではCMBSと呼ばれる衝突軽減ブレーキや、前走車追従機能付クルーズコントロールのACCなどの先進安全装備を備えた上級グレード「EX」(390万円)。 始動ボタンを押すと、システムが起動したことを知らせる電子音が鳴り、メーター内にREADYと出る。ブレーキペダルを離すと、モーターによるクリープ力が即座に立ち上がり、クルマがヒュゥィーンと静かに動き出す。このあたりまではプリウスなど、トヨタのハイブリッド車とよく似ている。 アコード ハイブリッドが優れているのは、40km/hくらいまでなら(アクセルの踏み方によってはそれ以上でも)、エンジンを掛けずに走ってしまうこと。これは新開発のリチウムイオン電池(GSユアサとの合弁会社となるブルーエナジー社製)の性能に負うところが大きいだろう。ここまでの走行状態は、「EVモード」と呼ばれる。
 
ハイブリッド専用開発の2リッター直4「LFA」アトキンソンサイクルユニット。ボア×ストローク:81.0×96.7の超ロングストロークで、圧縮比は13.0もある (photo:Honda)
アクセルペダルをグイと踏み込めば、エンジンが始動。この時点で重要なのは、エンジンはあくまで発電を始めただけ、ということ。エンジンで発電しながらモーターで走行するこの状態を、ホンダは「ハイブリッドドライブ」と呼ぶ。 ただ、実際のところは、アクセルを踏めばエンジンはブォーンと回転を上げるし、フル加速時にはCVT(無段変速機)を備えた純ガソリン車のようにブォォォォンと高回転をキープするので、予備知識がなければ、トヨタのハイブリッド車のように「エンジンで走っている」と勘違いしやすい。 ちなみにこの感覚、実は以前にも一度味わったことがある。それは今から2年以上前、2011年に浜松で試乗したプラグインハイブリッドの試作車、スズキのスイフト レンジ・エクステンダー。こんなことを言うと、ホンダにもスズキにも怒られるかもしれないが、アコード ハイブリッドの走行感覚は、スイフト レンジ・エクステンダーの延長線上にあって、ある意味、それをよりパワフルに、静かに、スムーズにしたもの、とも言える。

エンジンと駆動輪をクラッチで直結

メーター内には各種情報が表示される。写真はハイブリッド車に欠かせないエネルギーフロー
ここまでを読むと、アコード ハイブリッドは「シリーズハイブリッド」、すなわちエンジンは発電に徹するだけの「発電機付EV」のように思えるが、実際にはそれだけではない。アコード ハイブリッドは70km/h以上で、エンジンと駆動輪を電子制御クラッチで直結し、エンジンで直接タイヤを駆動することもできるのだ。それは主に、エンジンで駆動した方が効率のいい高速巡航時など。この状態をホンダは「エンジンドライブ」と呼ぶ。 また、これはカタログには詳しく書かれていないが、70km/h以上の加速時にも、条件に合えばエンジンの力を発電だけでなく、駆動力にも回して加速をアシストする制御が備わっている。システム出力199psという数字は、この時のもので(モーター単体の最高出力は169ps)、特に100km/hくらいまでの中間加速は、掛け値なしに速い(リーフの加速に似ている)。トヨタのハイブリッド車の場合、「エンジンをモーターがアシストする」という感覚が強いが、アコード ハイブリッドは逆に「エンジンがモーターをアシストする」のが面白い。
 
とはいえ、この状態でも、エンジンが駆動力をアシストしているのか、それとも発電に徹しているかは、体感では分からない。何となく「エンジン直結かなあ」と思う程度。モニターのエネルギーフローを見ていると、エンジンがタイヤを回す様子が表示されるようだが、よく分からなかった。ホンダによると、100km/h巡航なら、だいたい1/3くらいはEVドライブモード(エンジン停止、モーター駆動)になるという。 なお、アコード ハイブリッドには、トランスミッションは基本的に無い。つまりギアは1段のみ。また、エンジン直結モードでも変速比は一つで、通常の変速機であればトップギアに近いギア比が与えられている。ゆえに70km/h以上でしか直結されないわけで、効率の悪い回転域に入ればクラッチが切り離される、というわけだ。

静粛性や乗り心地も問題なし。操安はVSAで確保

静粛性は、EVドライブの領域が長く、また遮音も徹底されているので、少なくとも日本の常用速度域では不満なし。乗り心地も良く、荒れた路面でも不満は一切なかった。車重の重さを生かした、路面を踏みしめるような感覚があり、高速巡航もフラットにこなしてくれる。 ワインディングでは姿勢変化が小さく、大柄なボディに似合わず俊敏に反応してくれる。フロントの軸重は980kgとそこそこ重いが、エンジンが(V6のDOHCとかではなく)2リッターの4気筒であることや、リアに駆動用バッテリーが適度に載っている分、重量バランスはいい感じ。高速コーナーも得意だ。 タイヤは燃費重視のエコタイヤ(ダンロップのエナセーブ)なので、グリップはそれなりだが、VSAが素早く強力に介入し、アンダーステアやオーバーステアをグイグイ抑えこんでくれるため、操縦性に不安はない。主にモーター駆動ということで制御が緻密にできるのか、いきなり失速するような感じもない。このあたりはi-MiEVやリーフのようなピュアEV同様、モーター駆動ならではメリットかも。なお、VSAが作動する時は、CMBS作動時と同様に、シートベルトの引き込みが行われる。 あと、フィーリングがいいと言えばブレーキ。ブレーキ操作と協調して減速エネルギーの回生を行うが、ある程度踏み込んでも回生能力を超えることが少なく、つまりエネルギー回収能力が高い。それでいてブレーキを踏んだ時のフィーリングも自然。実はブレーキは完全に電動化されているが、知らなければ普通の油圧ブレーキに思える。
 
    エンジン モーター システム
出力(ps)
JC08
モード
燃費(km/L)
最高出力(ps) 最大トルク(kgm) 最高出力(ps) 最大トルク(kgm)
トヨタ プリウス(3代目) 99 14.5 82 21.1 136 30.4~32.6
レクサス HS250h 150 19.1 143 27.5 190 20.6
ホンダ アコード ハイブリッド 143 16.8 169 31.3 199 30.0
トヨタ カムリ ハイブリッド 160 21.7 143 27.5 205 23.4
トヨタ クラウン ハイブリッド
レクサス IS 300h
178 22.5 143 30.6 220 23.2
アウディ A6 ハイブリッド 211 35.7 54 21.4 245 13.8
BMW アクティブハイブリッド 3 306 40.8 54 21.4 340 16.5
BMW アクティブハイブリッド 5 306 40.8 54 21.4 340 13.6
日産 フーガ ハイブリッド 306 35.7 68 27.5 360 16.6
レクサス GS450h(2012-) 295 36.3 200 28.0 348 18.2
 

試乗燃費は15.6~24.3km/L。航続距離は1000kmオーバー?

今回は約200kmを試乗。参考までに試乗燃費は、一般道から高速道路、ワインディングまで、いつものパターンで走った区間(約90km)が15.6km/L。また、郊外の一般道を大人しく走った区間(約30km)が24.3km/L、高速道路を80~100km/hで走った区間が21~25km/Lだった(渋滞などによって加減速が多いと悪化する)。また、高速燃費は法定速度の範囲内なら良好だが、飛ばすと落ち込みが激しい。なおホンダの場合、ミリ波レーダーによるACCは112km/hまでしかセットできない。 JC08モード燃費は、ライバル車を圧倒する30.0km/L。燃料タンク容量は60リッターなので、航続距離は実用燃費を最悪の15km/Lとしても900km、20km/Lなら1200kmに及び、実際メーター内の航続可能距離にも、そういった数字が表示される。レギュラーガソリン仕様なのも嬉しいところ。
 

ここがイイ

「クルマの電動化」、先進安全装備、燃費性能、航続距離

画期的なパワーユニットを含めてハードウェアすべて。新しい走行感覚。そして、ピュアEVとは違い、「クルマの電動化」を、普通のエンジン車に遜色ない実用性を保ったまま、量産車として実現したこと。そしてホンダの持つ先進安全装備を、ほぼすべて搭載していること。 さらに、燃費性能がトヨタのハイブリッド車と同等とかではなく、明確に上回っていること。そして、その低燃費による、圧倒的な航続距離の長さ。高速巡航なら間違いなく無給油で1000kmは走れるはず。 標準仕様はファブリックシートであること。高級車でも革シートを好まない人はいるので。

ここがダメ

デザイン、ボディサイズ、タコメーターの不備

今ひとつ、個性や主張が感じられないデザイン。1960年代から90年代のホンダ車にしびれた世代としては、「デザインのホンダ」はどこに行った?と言いたいところ。特にCピラー形状がBMWのデザインアイコンの一つであるホフマイスター・キンクとそっくりなのは……。ホンダ全体で、デザイン戦略の練り直しが急務と思う。ごちゃごちゃしたインパネデザインも、セダン愛とは言いづらい。 アコード自体は本来、今も昔も北米市場がメインターゲットだから大きくても仕方ないが、日本ではもう少しコンパクトなセダンが欲しいところ。いくらセダン愛があっても、全長4.9メートル超を敬遠する人は少なくない。 タコメーターはぜひ欲しかった。ほとんどの領域をモーターで駆動するのだから、要らないようにも思えるが、実際のところはエンジンは必要とされる発電量を賄うべく、アクセル操作に応じて回転数を激しく上下させるし、時には駆動にも参加している。なのにタコメーターがないと、それがどのように行われているのかは、音やエネルギーフローモニターで確認するしかなく、実際のところよく分からない。液晶ディスプレイの一項目としてでもいいから、タコメーターを用意した方が「面白かった」と思う。

総合評価

普通のエンジン車より航続距離の長いモーター駆動のクルマ

ホンダがこれから展開してゆく3種類のハイブリッドシステム。一番上が次期フィット用(1モーター+DCT)。真ん中がアコード用、下が次期レジェンド用(V6+DCT+3モーター)
トヨタとフォードが、今後開発する大型ハイブリッド車に関しての提携を解消したというニュースが入ってきた。フォードはハイブリッド車の独自開発に自信を持っているという。トヨタのハイブリッド車(初代プリウス)が登場したのはもう15年も昔の話。デイズの創業時と同時期だからよく覚えているが、突然現れたトヨタのハイブリッドシステムは、当時としては時代の遥か先を行くものだった。そして現在、隆盛を極めているトヨタのハイブリッドは基本的には初代プリウスのシステムを元にしたもので、システム全体は他社の追随を許さないものとして今も健在だ。 しかしさすがに15年もたつと、フォードをはじめ各社が、トヨタとは異なるハイブリッド車を開発できるようになったということなのだろう。とはいえ、いまだに超えたと思えるクルマが発売されていないことも事実で、我々もこれまで試乗してきたハイブリッド車で、トヨタのそれをトータルで超えたと思えるクルマはなかった。
 
ところが今回ついに、これは超えたのでは、と思えるクルマに乗ることになった。それがこのアコード ハイブリッドだ。技術的には複雑な部分もあるが、ごく大雑把にいえば、エンジンで発電し、その電気でモーターを回して走るクルマだ。つまり主役はEV同様「モーター」なのだ。そう言ってしまうと「エンジンのホンダ」的には面白くないのか、どうにも分かりにくい説明がなされているのだが、基本はモーター駆動のクルマである。新型アコード ハイブリッドは、普通のエンジン車より航続距離の長いモーター駆動のクルマだ。そんなクルマがモーターデイズ、15年目にしてついにやってきたのである。 モーター駆動のみのEVが、いまだ実用になりきれていないのはご承知の通り。15年前にはこれからはモーターの時代だと思った我々にとっては、アコードによってついにその時がやってきた感が強い。これでそのクルマの名がデイズだったりすると素晴らしかったのだが、さすがにそこまでのシンクロニシティは無かったけれど(笑)。
 
試乗の感想は本文のとおりだが、再び大雑把にいうと、乗ってる感覚は一般的なガソリンエンジンの高級セダンのようだ。エンジン音を抑えて、静粛性を高めているのが、高級車の高級車たる所以だが、それでもアクセルを踏み込めば、それなりにエンジンの唸りは聞こえてくる。このアコードもちょうどそんな感じで、アクセルに反応してエンジンの唸り音が耳に届く。さらに高級車っぽい大トルク感もあるため、何も考えずに乗っていると、感覚自体は大柄なサイズのガソリンエンジン高級車とよく似ている。いかにもトヨタのハイブリッド車らしい、独自の乗り味を持ったカムリ ハイブリッドやクラウンハイブリッドとは乗り味が大きく異なる。回生協調ブレーキながらブレーキフィーリングも自然で、全く説明なしで乗せられたら、ハイブリッド車だと気づかない人もいるかもしれない。この自然さは主戦場の北米市場では重要だと思うし、日本の熟年層(アコード購入層)にも重要だろう。ホンダがあまり仕組みを説明したがらないのは、「ガソリン車から乗り換えても違和感のないところを評価して欲しい。でもガソリン代は半分以下ですよ」と言いたいからなのかもしれない。

画期的なのに、カタチに現れていない

ということで、これは全く新たな、初代プリウスにも匹敵する革命的なクルマの出現とも言える。であれば、欲しいだろうと言われると、スタイリングがごく普通のセダンであることで萎えてしまう。しかも北米で好まれるデザインのせいか、これが本当にコンサバだ。北米のライバルにはヒュンダイ ソナタがいるはずだが、ああいうカッコ良さもない。むろん日本の道路事情では相当に大柄で、その点でもダウンサイジングな時代にもそぐわない。 このハードウエアで、コンパクトでカッコいいスタイリングなら、セダンであってもすぐに欲しい。あるいはステーションワゴンであれば、と思う。リチウムイオン電池が後席とトランクルームの間に搭載されていることもあって、今回ワゴンは用意されていないが、いつも書いている通り、ワゴンの需要はけっして少なくない。実際、先代アコードの販売実績はワゴンとセダンで半々だったとのことだ(それぞれ月間100台ずつだったようだが)。電池の搭載位置を変更すれば、ワゴンもできなくはないと思う。
 
ホンダ アコード エアロデッキ (1985年) (photo:Honda)
新型アコードは、中身はホンダらしい画期的な商品なのに、どうもそれがカタチに現れていないことに、なんだか無念さを感じる。もちろん世界のユーザーやマーケットを見ながらモノ作りをしなくては、グルーバル企業として勝ち残れないのは分かっているつもりだが。アコードというと記憶に鮮烈なのは1985年(昭和60年)に登場した3代目のロングルーフ3ドアハッチ、アコード エアロデッキだ。いま見ても斬新なああいったスタイリングに、この画期的なハイブリッドシステムが載って登場しようものなら、それこそが僕らのイメージする「ホンダのクルマ」なのだが。 間もなく出る1モーターとDCTを組み合わせた新型フィット ハイブリッドこそが、日本におけるホンダ製ハイブリッド車のマジョリティ になるのだろう。しかしアコードの画期的な2モーターハイブリッドシステムも、いずれ他のクルマに転用されるはず。セダン愛の薄い人でも、その時にはしっかり恩恵を受けられるだろう。実に待ちどおしいことである。

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