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愛知県ITS推進協議会/平成26年度講演会・総会:ITS DAYS

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名古屋市中区・名古屋ガーデンパレスにて、愛知県ITS推進協議会の平成26年度講演会&総会が開催された。日本大学理工学部交通システム工学科・轟朝幸教授による講演が行われ、テーマは「公共交通維持活性化のための情報インフラ整備 -交通ビッグデータの活用-」。 日本大学理工学部交通システム工学科・轟朝幸 氏将来に渡る日本の課題である地域活性化や高齢化社会への対応、低酸素社会への対応として、ITSを駆使した先進モビリティが果たす役割は大きい。特に地域活性化について、その鍵となるのは、過度のクルマ依存を是正し、公共交通の利便性を高めて利用者数を増やすこと、とする見解が紹介された。 また講演では、お隣の韓国が実施した公共交通サービス向上施策が映像で紹介された。自治体(ソウル市)が主体となり、日本では考えられないほどドラスティックな改革を断行した成果が紹介されており、その手法を単純に真似ることはできないものの、たいへん参考になるケースのひとつと言えるだろう。 最後に、いわゆるビッグデータの利活用における検討課題も挙げられた。ビッグデータは個人情報の集積であり、その取り扱いには十分な注意が必要であるだけでなく、一部の大企業を除いて、ビッグデータ分析技術もまだまだ成熟しているとは言い難い状況にある。こうした状況を踏まえ、ビッグデータ利活用に挑戦する自治体等を適切に調整、あるいはエスコートできる「アドバイザー」の役割を持った存在が重要である、と語っている。 中部地区のみならず日本のITSを牽引してきた愛知県ITS推進協議会は今年で創設18年目を迎えるが、ITSが果たすべき役割はまだまだ多く残されている。特に昨年、閣議決定された「世界最先端IT国家創造宣言」中にある「交通事故による死亡者数を2018年までに2,500人以下に抑える」という挑戦的な目標は、必ず達成しなければならない重要な課題のひとつだ。ITSのさらなる挑戦と技術革新を続けることで、きっとそれは可能になるはずだ。 【安原武志(DAYS Inc.)】

トヨタ、新型レクサス「NX」を発表:MOTOR DAYS ピックアップニュース

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トヨタ自動車は2014年7月29日、レクサスブランドの新型車「NX」を発表した。中部地区での発表会が行われたミッドランドスクエア(名古屋市中村区)からリポート。

RXより一回り小さい高級コンパクトSUV

レクサス初のプレミアムコンパクトSUVとなる「NX」。その原型となるコンセプトカー「LF-NXハイブリッド」が登場したのは2013年のフランクフルトモーターショーで、同年の東京モーターショーでは2.0リッターターボエンジンの搭載を想定した「LF-NX ターボコンセプト」としてお披露目された。市販車としては2014年4月の北京モーターショーでワールドデビュー。レクサスのクロスオーバーSUVとしては、RXに続くモデルとなる。 開発コンセプトは「プレミアム アーバン スポーツギア」で、都市に似合うスポーティでカッコいい高級SUVといったところ。見どころは大胆な形状のブリスターフェンダーを持ったエクステリアデザインで、フロントには片側3灯のフルLEDヘッドランプやレクサス共通のスピンドルグリルが採用されている。現行ISの流れを汲むものだが、SUVとしてはかなりアグレッシブなデザインだ。
 
ボディサイズは全長4630mm×全幅1845mm×全高1645mmと、RX(4770×1885×1690mm)より一回り小さい。また、ベースを同じくする現行ハリアー(4720×1835×1690mm)と比べても、ショート&ローとなる。ホイールベースはRX(2740mm)より80mm短く、ハリアーと同じ2660mm。 なお、インテリアに関しては、タッチパッドでポインターを動かす新型リモートタッチが採用されている。

レクサス初の2リッター直4ターボを採用

NX200tの2リッター直4ターボ「8AR-FTS型」
パワートレーンは、レクサス初の2リッター直4ターボ「8AR-FTS型」(238ps、35.7kgm)+6ATと、現行ハリアーにも搭載されている2.5リッター直4「2AR-FXE型」+モーターのハイブリッド(システム出力は197ps)の2種類。ターボ車の方は「NX200t」、ハイブリッドは「NX300h」と呼ばれる。 注目はやはり新開発のターボエンジンで、ツインスクロールターボチャージャーに直噴およびポート噴射を組み合わせた燃料噴射システム「D-4ST」、そして水冷エキゾーストマニホールド一体シリンダーヘッド、オットーサイクルからアトキンソンサイクルへの切り替えも可能にするデュアルVVT-iWなど、新技術を数多く投入している。ボアピッチこそ既存の直4エンジンと同じだが、ブロックからすべて新開発。トヨタにとってはガソリンエンジンでは初の直噴ターボであり、そして久々のターボエンジンとなる。
 
NX300hの2.5リッター直4「2AR-FXE型」
駆動方式はターボ車とハイブリッド車共に、FFとAWD(後者は後輪をモーターのみで駆動するE-Four)を用意している。 JC08モード燃費は、ターボ車が12.4km/L(AWD)~12.8km/L(FF)、ハイブリッド車は19.8km/L(AWD)~21.0km/L(FF)。

ターボ車は428万円から、ハイブリッド車は492万円から

 
価格はNX200tが428万円~518万円。ハイブリッド車はそれより64万円高い492万円~582万円。プリクラッシュセーフティシステム+全車速追従機能付レーダークルーズコントロール(アイドリングストップとの連携機能付)は全車オプションだが、価格は6万4800円に抑えられている。 生産はトヨタ自動車九州の宮田工場で、月販目標台数は700台。すでに6000台ほどの受注があり、ターボ車とハイブリッド車の比率は当初の想定通り、半々とのこと。 ライバル車には、アウディ Q3、Q5、BMW X3、メルセデス・ベンツ GLAなどを想定している。

デイズのコメント

短時間ではあるが、NX200tに試乗出来た。他社のターボ車にない独特の軽快な加速感が印象的。ボディがコンパクトに感じられ、街中でも乗りやすい
ついにトヨタからも、2リッターターボエンジンが登場。いよいよトヨタも過給によるダウンサイジングの流れに抗えないということだろう。また、先行受注でガソリン車が半数というのは、いくら燃費がいいとはいえ、ユーザーもハイブリッド車の「あの走行フィール」にちょっと飽きが来ているということの証左ではないだろうか。
 

トヨタ ヴィッツ 1.3F:新車試乗記

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キャラクター&開発コンセプト

マイナーチェンジで「キーンルック」や新開発1.3リッターエンジンを採用

2014年4月にマイナーチェンジして発売されたヴィッツ
初代ヴィッツは1999年に欧州戦略車(欧州名はヤリス)としてデビュー。2005年には2代目に、2010年12月には現行の3代目に進化している。 今回試乗したのは、フルモデルチェンジから約3年半経った2014年4月21日にマイナーチェンジした最新のヴィッツ。いわば3代目後期型と言えるモデルだ。今回のマイチェンでは、最近のトヨタ新型車に倣って、フロントデザインに「キーンルック」を採用。内装もスポーティさや上質感を追求すべく、インパネなどが刷新されている。
 
新開発1.3リッター直4エンジン「1NR-FKE」
パワートレインは中核ユニットである1.3リッター直4エンジンを、従来の「1NR-FE」(95ps、12.3kgm)から新開発の「1NR-FKE」(99ps、12.3kgm)に換装。ハイブリッド車に用いられるアトキンソンサイクルを採用したほか、圧縮比を従来の11.5から13.5に高め、さらにクールドEGR、VVT-iE(電動連続可変バルブタイミング機構)などを新採用し、世界トップレベルの最大熱効率(使用した燃料の熱エネルギーのうち、動力を生み出すために有効に利用された熱量の割合)38%を達成している。 また、この1.3リッター車にはアイドリングストップ機能を全車標準化。これらによりJC08モード燃費は、従来の1.3リッター車(アイドリングストップ装着車)の21.8km/Lから25.0㎞/Lに向上している。

アイドリングストップ装着車を拡大。シャシーも細々改良

リアデザインについては、リアコンビランプの意匠変更など若干の改良に留まる
その他のエンジン搭載車もマイナーチェンジ。エントリーグレードの1リッター直3エンジンは従来と同じ1KR-FE型だが、アイドリングストップ装着車ではJC08モード燃費24.0km/Lを達成した。 また、1.5リッター直4エンジンのスポーティグレード「RS」では、CVT車にアイドリングストップ装着車が新設定され、JC08モード燃費を従来の18.8km/Lから21.2km/Lに改善している(アイドリングストップのない5MT車は17.2km/Lで変わらず)。 シャシーに関しては全グレードで、スポット溶接の増し打ち、床下補強材の大型化、ショックアブソーバーなど細々と改良。吸・遮音材、制振材を追加するなど、静粛性も高めている。また、VSC&TRCは今回から全車標準になった。 国内向けの生産は、従来通り豊田自動織機の長草工場(愛知県大府市)。販売はネッツ店になる。 月販目標台数は2010年12月発売時の1万台より少し下方修正して8000台。これは最近の実績ペースとほぼ同じだ。
 
vitz_01_3ed_2010.jpg 3代目ヴィッツ(2010年12月発売モデル)
■過去の新車試乗記 トヨタ ヴィッツ 1.3 U (2011年2月) ■外部リンク トヨタ自動車>プレスリリース>ヴィッツをマイナーチェンジ (2014年4月21日)
 

価格帯&グレード展開

1Lが115万5600円~。1.3Lが145万0145円~、1.5LのRSが183万1091円~

ボディカラーは全17色。写真は「ジュエラ」専用色のチェリーパールクリスタルシャイン
エンジンは前述の通り、1リッター直3(69ps、9.4kgm)、1.3リッター直4(99ps、12.3kgm)、1.5リッター直4(109ps、13.9kgm)の3種類(全て自然吸気、諸元はFF車のもの)。変速機は従来通り、RSの5MT車を除いて全車CVT(無段変速機)になる。 グレードもこれまで通り、ベーシックな「F」(1リッターと1.3リッター)、内外装がオシャレな「Jewela(ジュエラ)」(1リッターと1.3リッター)、オートエアコンなど装備充実の「U」(1.3リッターと1.5リッター)、スポーティな「RS」(1.5リッター)の4種類。
 
「RS」では巨大なメッシュグリルを新採用
また、下位グレードでも一部を除いて、LEDヘッドランプ(ロービーム)、スマートエントリーといった上級装備をオプションで選べる。前席サイド&前後カーテンシールドエアバッグ(6エアバッグ)は、全車4万3200円のオプション。 価格(消費税8%込)は、1リッター車が115万5600円~、1.3リッター車が145万0145円~。1.5リッター車のRSが、5MTは183万1091円で、CVTは191万4545円~。
 
ヴィッツ RS “G's”
また、ヴィッツ RSがベースのスポーツコンバージョン車「G's」もマイナーチェンジ。メーカーの生産ラインで架装するため、スポット溶接の増し打ち、センタートンネルブレース(補強材)の改良、リアフロアへのブレース追加、足回りや電動パワステの専用チューニング等など、手の込んだ作りになっている。こちらは5MTとCVT共に204万4145円~。
 

パッケージング&スタイル

「キーンルック」で、さらにカッコよく

試乗車のボディカラーはルミナスイエロー
今回大きく変わったのはフロント部分。最近のトヨタ車に多い「キーンルック」が採用され、ヘッドランプとフロントグリルによるV字型ライン、台形のロアラジエイターグリル、左右にスリットのあるフロントバンパー等により造形がダイナミックに、かつ男前になった。ちなみに3代目デビュー時の広告コピーは「カッコいい方が、いいじゃないですか。」だったが、今回こそまさにそんな感じ。
 
一方でリアは、リアコンビランプのレンズデザイン(外形は同じ)やナンバープレート上のガーニッシュ形状が手直しされた程度で、大きく変わらず。リアバンパーなどは今見ても空力的に攻めた形状だから、あえて変える必要はなかったということだろう。
 
ボディサイズ(RSを除く)はマイチェン前と変わらず、全長3885mm×全幅1695mm×全高1500mm、ホイールベースは2510mm。全長は初代ヴィッツより275mm、2代目より100mm大きいが、きっちり5ナンバー枠に収まっている。
 

インテリア&ラゲッジスペース

インパネデザインを刷新

インパネは全面変更。メーターとセンターコンソールに一体感を持たせたシンプルなデザインになった
室内の雰囲気はマイチェン前と似ているが、インパネ形状はまったくの別物。メーターデザイン、ドアトリム、シート表皮も新しくなった。マイナーチェンジとしては変化が大きい。 ただ、インパネのデザイン自体は、水平基調のオーソドクスなもので、マイチェン前よりむしろ普通になった。それにオシャレな内装を求めるなら「ジュエラ」が、スポーティな雰囲気を求めるなら「RS」や「RS “G's”」がある。
 
アイドリングストップ装着車にはTFT多機能情報ディスプレイが装備される (photo:トヨタ自動車)
ドライバーから見て目立つのが、メーター内に組み込まれたTFTのマルチインフォメーションディスプレイ(アイドリングストップ装着車に装備)。燃費情報がやたら細かく、平均燃費、区間ごとの燃費グラフ、過去の燃費記録、アイドリングストップ時間、エコ運転評価などなどが表示できるが、ちょっと多機能すぎる印象も。個人的には、100点満点のエコドライブ評価や、節約できた費用の表示などは不要な気がする。
 
中央席のヘッドレストと3点式シートベルトは全車標準になった。広さはそこそこで、ドア開口角は小さめ
運転席リフターとチルトステアリングは全車標準。テレスコはRSのみ
助手席前に大容量アッパーボックスを新設。助手席の買い物アシストシートはこれまで通り (photo:トヨタ自動車)
 
アジャスタブルデッキボードが上段の場合、後席の背もたれを倒すとフラットになる
アジャスタブルデッキボードが下段の状態。広さは欧州Bセグメント車と同等と思われる
床下は従来通りパンク修理キットが標準だが、テンパースペア(1万0800円)にも変更可
 

基本性能&ドライブフィール

エンジンやシャシーを文字通り“リファイン”

試乗したのは中間グレードの「1.3F」。新開発の1.3リッター直4エンジン搭載車で、車両本体価格(オプション含まず)は145万0145円。 街中を走る限り、ものすごく変わった、という感じはしない。1.3リッターエンジンは99psと12.3kgmを発揮し、車重は1000kg(試乗車はオプション装着で1020kg)だから、パワーウエイトレシオは約10kg/psとまずまず。体感的には1.5リッターくらいかな?と思ってしまうくらいだが、パワーで「おおー」と思わせるタイプではない。 逆にジワジワ来るのが、この自然吸気エンジンがアクセル操作に応じて、まさに「自然」にレスポンスし、シューンと淀みなく吹け上がってくれること。ガサツなところや、期待以上に鋭い反応がまったくなく、かといってトルク不足を感じさせることもない。直噴ターボに食傷気味のせいか、妙にこの自然さが気持ちよく感じられる。圧縮比13.5や、VVT-iE(電動連続可変バルブタイミング機構)が効いている感じ。
 
あと、街中でいいのは、アイドリングストップからの再始動がスムーズなこと。始動時のショックは皆無で、クランキング音も注意していないと聞こえないほど静か。また、アイドリングストップ時間も長く、炎天下でエアコンを使用していても(試乗した「F」はマニュアルエアコンだが)、毎回1分以上停止し続けてくれた。再始動時には「エアコン優先」とメーターに理由が出たから、外がもう少し涼しければもっとアイドリングストップし続けたと思う。エアコンオンだと30秒ほどでエンジンが掛かってしまうパッソと差を感じてしまった。

乗り心地やハンドリングのネガも解消

試乗した「1.3F」のタイヤは175/70R14。「U」は175/65R15、「RS」は195/50R16が標準
乗り心地もいい。いかにもトヨタ車らしく、何の不満もなくスムーズに走るし、段差を乗り越える時も軽くトンッと受け止めてやりすごしてくれる。乗り心地は、ゴルフ7並みとはもちろん言えないが、明らかに現行ポロより前後左右にフラットで、滑らか。これは高速域でもそうだ。 ハンドリングも3年前に比べてずいぶん良くなった。当時はリアの限界こそ高いものの、フロントの接地感が曖昧で、アンダーステア感が強かったが、今回のモデルはリアの安定性はそのままに、思った通り気持ちよく曲がる。どんどんペースを上げていくと、最終的にはフロントとリアがスキール音を立て始めるが、流れ方が斬新的で、不安がない。やっぱりこうだよね、と思わせる。タイヤがいちおうエコタイヤ(BSのエコピア)なので、全車標準のVSC&TRCが最終的には介入してくるが、それに頼っている感じはない。

高速道路も限りなくスムーズ

100km/h巡航時は1800回転くらいまでドロップする(アクセル開度が小さい場合)
一番印象が良かったのが高速道路での走り。もちろん、日本の高速道路くらい余裕で走るのは当たり前だが、滑らかな直進安定性、中立付近で座りのいいステアリングの感触、滑らかな乗り心地、抵抗感なくタイヤが転がっていく感じなどがいい。 100km/h巡航時のエンジン回転数は1800~2000回転くらい。加速時に3500回転くらいまで回しても、ノイズレベルが大きく変わらないので静かに感じられる。風切り音やロードノイズも気にならない。静粛性は高いと思う。 絶対的なパワーや加速力は1.5リッター(109ps)のRSに及ばないが、多くの人が1.3リッターで十分と思うのでは。むしろ気になるのは、ハイブリッド車のアクアだろう。アクアのエンジンは1.5リッター(74ps)で、システム出力はヴィッツ1.3と同等の100ps。車重はヴィッツより約100kg重い約1.1トンになる。

試乗燃費は11.9~18.2km/L。JC08モード燃費は25.0km/L

タンク容量は42リッターで、もちろんレギュラー仕様。しかしレギュラーでもリッター170円とは!
今回はトータルで約700kmを試乗。試乗燃費(車載燃費計)は、いつもの一般道、高速道路、ワインディングを走った区間(約90km)が11.9km/L。続けてさらに走った区間(約470km)が12.3km/L。そして一般道をエコ運転して走った区間(約25km)が16.3km/L、高速道路を80~100km/h+αで巡航した区間(約200km)が18.2km/Lだった。JC08モード燃費は25.0km/L。 ちなみに、3年前にヴィッツ 1.3U“スマートストップ パッケージ”で約500km走った時の試乗燃費は12.6~17.4km/L(JC08モード燃費は20.6~21.8km/L)で、今回と大差なし。また、2年前にアクアで約370km走った時の試乗燃費は16.8~23.2km/L(JC08モード燃費33.0~35.4km/L)で、約5km/Lほどの差が出た。 燃料タンク容量は42リッターで、アクア(36リッター)より6リッター多い。実質的な航続距離は500~600kmといったところか。
 

ここがイイ

マイチェンで高まった完成度。違和感のないアイドリングストップなど

時間をかけて、細かいところまで改良された走行性能。エンジンのパワー感やレスポンス、ハンドリング、乗り心地、静粛性など、隅々までネガが潰され、リファインされている。 同様に、違和感がまったくないアイドリングストップ機能。アイドリングストップなんて要らないという人は今でも多いと思うが、これならまず不満は出ないのでは。最近は走行中でも減速時に10km/h前後以下でエンジンを止めるものが増えているが、ヴィッツの場合は完全に停止してから止まる。燃料消費を抑えるという点では、停車する前にエンジンを止めた方が理にかなっているが、感覚的にはこの方が違和感はないなぁというのが率直な印象。 1リッターのパッソと比較するのはアンフェアだが、ほぼ同じ大きさのトヨタのコンパクトカーなのに(パッソはダイハツ製だが)、乗り味の差は大きい。ヴィッツでも1リッター車は先代パッソと同じエンジンだが、走りの性能は明らかにヴィッツの方が上(ただし室内はパッソの方が広々している)。主力価格帯は違うが、この前乗ったパッソ(1.0X “Lパッケージ”)と今回乗ったヴィッツ(1.3F)の価格差は約15万円だ。

ここがダメ

ヴィッツならではの魅力が分かりにくい。先進安全装備の不備

いかにもトヨタ車らしくカイゼンされ、完成度が高まっているが、ここがすごい!と誰もが思えるポイントが分かりにくい。外観デザインは確かに良くなったが、カッコいいクルマは他にもある。また、価格差はあるが、身内にはアクアという同サイズのハイブリッド車もある。ヴィッツならではの、あるいはエンジン車ならではの魅力が欲しい。 プリクラッシュセーフティシステムなど、衝突被害を軽減するための安全装備が用意されていないこと。また、これだけ高速道路で楽に巡航できるのだから、車間制御機能を持つクルーズコントロールがないのは残念。普通のクルーズコントロールも未設定だが、それよりレーダーやカメラなどを使ったクルーズコントロールを希望したい。

総合評価

マイチェン前よりずいぶん良くなった

3年ぶりに乗ったヴィッツだが、欧州車風のしっかりした足で、パワーも実用車としてまあ過不足なし。1300でも、昔の1500みたいに感じられる。マイチェン前よりずいぶん良くなった感触があり、第一印象から「これはなかなか良いなあ」と。試乗した1.3 Fは中間的なグレードだが、これで十分じゃないの、と思ってしまった。欧州車では一つのモデルライフの間に、たいてい一回大きく変わるが、欧州でも売られるヴィッツもそれに倣ったということだろう。本文にあるように、見えない部分もそうとう変わった。で、欧州車同様、後期モデルは前期モデルより大変よい、という印象になるわけだ。 前期型の試乗記で書いたように、当時まず不満に思ったのはインテリアだった。今回の後期型では質感がちょっと高くなっているし、2世代続いたセンターメーターをやめるにあたって、頑張ってデザインし過ぎた感があったインパネまわりも、今回のマイチェンで普通になった。普通になって悪くなることもあるが、今回は良くなったケース。保守的な方向で落ち着いてしまったのは、ちょっと残念ではあるのだが。 デザインといえば、新しいキーンルックも前期型のちょっと眠い顔より明らかに良いと思う。ただ、アクアも含めて、最近のトヨタ車はルックスがどうにも金太郎飴的だ。これがトヨタの顔という主張だと思うが、アクが強いだけに違和感がある人もいるだろう。同時に、次のモデル以降もキーンルックでいくとなると、制約の多いコンパクトカーのデザインとしては厳しいものがあるかもしれない。トヨタは車種が多いので、ルックスが統一された頃に飽きが来る、ということにならないといいのだが。

ハイブリッド車とのジレンマ

パワートレインも、新型エンジンやCVTのチューニングが功を奏して、「これは悪くないなあ」と思った。ワインディングでもちゃんと走るし、ファン・トゥ・ドライブとまではいかないが、それなりに楽しめる。むろん「VWの直噴ターボとDCTのような」ものではないが、小排気量NAとCVTの組み合わせとしては、かなりベストに近いのでは。今回は通常の試乗以外に、事務所を出てから名古屋市内の広い道路を走って、市街地のコインパーキングへ、そこを出てから高速道路で約60km移動し、帰りは高速道路を走らず、トヨタのお膝元である豊田市などの一般道をトロトロ走って名古屋まで帰るという100km以上のワンデイドライブをしてみた。取り回しが良くて疲れないし、アイドリングストップしてもFの場合はマニュアルエアコンなので設定通りの空調ができるし、何も不満らしい不満がなく一日走れた。普段乗りのクルマとしては本当に文句などないなあ、という実感をますます深めた。 いつものコースでの試乗燃費は、前期型と大差なかったが、走りに少し不満のあった前期モデルと、不満のない後期モデルで燃費が変わらないのは明らかな進化だろう。お金さえ出せば、もっと快適なクルマ、もっと面白いクルマなど、いろいろ選択肢はあるが、昨今の「高級」軽自動車と大差ない価格で買えるコンパクトカーとしては相当な「良品」になったと思う。日本車でも今後は「後期型がよい」ということが常識となっていくのだろうか。
 
そして、似たようなパワー数値で、確実に燃費がいいアクアとどっちを買おうか、なんて思う人もいるだろう。我々の試乗燃費での差は約5km/L。年間1万km走るとして、実燃費12km/Lで、ガソリン代が170円/Lだと、年間で約14万2000円かかる。アクアだと約10万円で、その差は約4万2000円。そして車両価格は、今回のヴィッツが約145万円で、アクアは中間グレードのSが約186万円だから、その差は約40万円。今の高いガソリン価格で計算しても、車両価格の差を埋めるには10年ほどかかる。ヴォクシー/ノアのハイブリッド車の売れ行きがやや鈍っているようだが、今回のヴィッツのように優秀なガソリン車が出来ると、ハイブリッド車との関係が難しくなる、というのがトヨタにとってはジレンマかもしれない。
 

トヨタ、プロボックス / サクシードをマイナーチェンジ:MOTOR DAYS ピックアップニュース

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トヨタは2014年8月6日、商用バンの「プロボックス」と「サクシード」をマイナーチェンジして発売した。内容的には、パワートレインやプラットフォーム前半を刷新するなど、いわゆるビッグマイナーチェンジになっている。中部地区での発表会が行われた中部経済産業局(名古屋市中区三の丸)からリポート。

CVTを採用し、2015年燃費規制に対応

プロボックス / サクシードは、カローラバン / カルディナバンの後継として2002年7月にデビュー。「ビジネスカーの革新」を謳うなど、商用バン専用にボディやプラットフォームを設計した画期的なモデルだった。以来12年間、目立ったマイナーチェンジもなく、商用バン市場の63%を占めており(2014年上半期、トヨタ調べ)、今やライバルは日産AD / ADエキスパート(OEM車としてマツダ ファミリアバン、三菱ランサーカーゴ)くらいしかない。 今回、12年ぶりにモデルチェンジした第一の目的は、2015年燃費規制をクリアすること。そのためにはパワートレインの刷新が必要となり、具体的には1.3リッターエンジンを従来の2NZ-FE型から、新しい世代の1NR-FE型(95ps、12.3kgm)に換装。また、変速機については1.5リッターエンジン(1NZ-FE型で、FF車の場合は109ps、13.9kgm)搭載車も含めて、従来の4ATおよび5MTを廃止し、CVT(無段変速機)を全車に採用した。併せてパワーステアリングは従来の油圧式から、電動式に変更されている。
 
これにより、JC08モード燃費は、1.3リッター車の場合、従来の15.4km/Lから17.6km/Lへと約14%向上。1.5リッター車の場合は、従来の15.4km/Lから18.2km/Lに、そして1.5リッターの4WD車は従来の13.4km/Lから15.8km/Lへと共に約18%向上した。これにより全車エコカー減税対象車となったほか、モード燃費ではライバルの日産AD(1.5リッター・FF車が17.4km/L、1.6リッター・4WD車は13.0km/L)を上回ることに成功している。

プラットフォーム前半を刷新しつつ、アッパーボディはキャリーオーバー

プロボックスの最上級グレード「F」
パワートレインの変更のため、ボディ前半には現行ヴィッツ等と同じプラットフォームが採用された。これにより、最新の歩行者保護対策にも対応。フロントのデザインも“ツール感覚”を重視したグリルレス風に変更されている。 一方でボディ後半、すなわちAピラーから後ろのアッパーボディやリアサスペンション周辺は、積載性や操縦安定性で定評のあった先代モデルのものをキャリーオーバー。よってプラットフォーム(前半)は変更されたが、リア外観はほとんど変更なしという、異例のモデルチェンジになっている。
 
シャシー性能も全体に底上げされた。フロントサスペンションの一新に伴い、前後のスタビライザーを強化してロールを抑制し、代わりにスプリングやダンパーのセッティングや細かなパーツを変更。フル積載時の操縦安定性を確保しながら、乗り心地の向上が図られた。 また、シートも新開発で、耐久性の高さ(へたりの少なさ)はそのままに、クッション形状やウレタンの変更、運転席リフターの調整幅アップ(31mm→60mm)などにより、座り心地を向上させている。また、休息時にも配慮し、リクライニング角度を水平に近い76度に拡大した。

ボディサイズや荷室はプロボックス/サクシードで共通に

ボディサイズは全長4245mm×全幅1690mm×全高1525~1530mm
全長は、先代のプロボックスが4195mm、サクシードがそれより約10cm長い4300mmだったが、新型ではボディが共通となり、その中間値である4245mmに統一。全幅の1690mmやホイールベースの2550mmは従来通りだが、最小回転半径は0.1メートル増えて4.9メートルとなった。全高は1525mm(4WDは1530mm)で、もちろん機械式立体駐車場もOK。 また、荷室長と最大積載量は、先代プロボックスが1810mmと400kg、先代サクシードは1830mmと450kgという具合に差別化されていたが(前身であるカローラバン、カルディナバンの名残り)、新型ではフル積載する機会が減っている昨今の使用状況を踏まえて、1810mmと400kgに統一された。それでも荷室には従来プロボックス同様に、みかん箱なら38個まで積載可能になっている。
 
荷室まわりは先代とほぼ同じ。荷室長は1810mmを確保
先代の途中まであった5ナンバーの乗用ワゴンはなく、新型は4ナンバー商用のみとなった。ただし最上級グレードの後席は、分離式ヘッドレストのダブルフォールディングタイプ(座面クッションの脱着も可能)になっている。 なお、日産AD / ADエキスパートのボディサイズは、全長4395mm×全幅1695mm×全高1500mm(4WDは1545mm)、ホイールベースは2600mmで、全長は新型プロサクより150mm長く、ホイールベースは50mm長い。最大荷室長は1830mm、最大積載量は450kg(4WD車は400kg)となっている。

引き出し式テーブルを大型化。紙パックも置けるドリンクホルダーを設置

ダッシュ上面も停車時に物が置けるようにフラットになっている
新型プロボックス / サクシードで注目すべき点は、一新されたインパネのデザイン。先代でインパネシフトがあった場所には、1リッター紙パック飲料が置けるセンタートレイ(照明付)が新設された。 また、ステアリングの左側には、携帯やスマホなどを置けるマルチホルダーを設置。さらにダッシュボードにはA4バインダーを横向きに置ける棚を用意した。
 
また、先代にも引き出し式のテーブルはあったが、新型ではノートPCやお弁当が置けるように、幅で80mm、奥行きで35mm拡大。標準サイズのiPadがちょうど置けるくらいの大きさになった。 さらには、今回からパーキングブレーキを足踏み式に変更したことに伴い、シート横にカバンを置けるようになるなど、ビジネスマンにとっては至れり尽くせりの仕様になった。

価格は131万7600円~。月販目標は合わせて4200台

ボディカラーには全6色を設定。写真は新規設定のライトグリーンメタリック
価格(消費税8%込)はプロボックスが131万7600円(1.3リッター・CVT車)からスタート。先代4AT車比では約10万円のアップとなった。1.5リッター車のみのサクシードは143万7382円から。VSC&TRCは全車標準になった。 販売チャンネルは従来通りプロボックスがカローラ店で、サクシードがトヨタ店とトヨペット店。生産もこれまで通り、ダイハツの京都工場(京都府乙訓郡大山崎町)で行われる。輸出はなく、完全に国内専用車。 月販目標台数は先代(デビュー時)はプロボックスが5000台、サクシードが2000台の計7000台だったが、新型はそれぞれ2600台、1600台の計4200台。

デイズのコメント

先代のインパネも画期的だったが、今回は大絶賛。先代の時も思ったが、このインパネのままの乗用車を出せば、一定の支持は絶対に得られるはず。「カッコいい」より「機能的」であることを求める人は、少なくないはずだ。というか、クルマの場合、機能性こそがカッコよいとも言えるのでは。 ■外部リンク ・トヨタ自動車>プレスリリース>プロボックスならびにサクシードをマイナーチェンジ (2014年8月6日) ■過去の記事 新車試乗記>トヨタ サクシード ワゴン (2002年8月掲載)
 

トヨタ、ランドクルーザー “70”シリーズを発売:MOTOR DAYS ピックアップニュース

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トヨタ自動車は2014年8月25日、ランドクルーザー“70”(ナナマル)シリーズの国内販売を10年ぶりに復活させ、期間限定で発売した。中部地区で発表会が行われたトヨタ博物館からリポート。

10年ぶりに国内販売が復活

ランドクルーザー“70”シリーズは、名車ランクル40(ヨンマル)シリーズの後継車として、1984年に発売。以来30年間、トヨタきってのヘビーデューティ本格4WD車として世界中で販売されてきた。その累計生産台数は、ランクル全体の約790万台のうち約146万台。日本国内での販売は、ディーゼルエンジンの排ガス規制などが理由で2004年に終了していたが、世界生産台数は2013年に過去最高を記録するなど近年は増える傾向にある。目下の主力市場はオーストラリア、中近東、アフリカなどで、鉱山や農漁業等でのワークホースとして、あるいは赤十字などによる災害・紛争地域での人員・物資の輸送手段として、絶大な信頼を得ている。
 
新型ランドクルーザー70 バン
そのナナマルが今回、国内で10年ぶりに“復活”したのは、一つにはファンの強い要望に応えるため。オーナーが所有する従来70シリーズの車齢が10年以上となり、販社からも復活を願う声が上がっていたという。また、トヨタとしても70シリーズの誕生30周年を機に、世界各地で活躍している70シリーズの良さを国内のユーザーにも知ってもらいたいという意図があるという。

シャシーはほぼ従来通り。新たにピックアップを設定

新型ランドルクルーザー ピックアップ
という事情で、約10年ぶりに国内で販売されるランクル70だが、車体まわりの基本設計は、ほぼ従来通り。すなわち、伝統のラダーフレーム構造、フロントがリジッド&コイルスプリング、リアがリジッド&リーフスプリングのサスペンション、パートタイム4WDというメカニズムを踏襲。「通常の乗用車をはるかにしのぐ耐久性基準」(小鑓 貞嘉チーフエンジニア)をクリアした車体になっている。
 
インストラクターによる同乗走行。平地の周回路では、軽く試乗も出来た。MTながら運転しやすいが、小回りはやや苦手か(最小回転半径は6.3~7.2メートル)
一方で内外装デザインは若干アップデート。海外仕様で行われてきたマイナーチェンジを反映して、エアバッグやABSも標準装備。インパネはオフロード走行時に車体の姿勢を把握しやすい水平基調のデザインになっている。 また、今回は4ドアバンに加えて、国内で初設定となるダブルキャブピックアップトラックを用意。後者はロングホイールベースに、最大5人乗りのキャビンと最大積載量600kgの荷台を備えている。
 
オプションで電動ウインチも用意。ワイヤー長は約34mで、3本掛けなら3トンまで対応 (photo:トヨタ自動車)
ボディサイズは、バンが全長4810×全幅1870×全高1920mmで、ホイールベース2730mm。ピックアップはそれより全長が460mm長くなり、全長5270×全幅1770×全高1950mm、ホイールベースは450mm長い3180mm。最低地上高は、バンが200mm、ピックアップが225mmとなっている。
 
対地障害角(バン/ピックアップ)はアプローチアングルが33/35度、ランプブレークオーバーアングルが26/27度、ディパーチャーアングルが23/25度
走破性に関しては、パートタイム4WD(すなわち4WDモード時は前後直結)に加えて、フロントおよびリアに電動デフロックをオプションで用意(5万4000円)。対地障害角も十分に取るなど、メカニカルな方法で高い悪路走破性を確保している。TRCやVSCなどの電子制御デバイスは、従来モデル同様、装備していない。 また、オプションでフロントバンパー内部にビルトインできる電動ウインチ(18万6840円)も用意し、スタックからの脱出などにも対応可能としている。

エンジンは4リッターV6ガソリン。ミッションは5MTのみ

エンジンは、国内販売終了時の4.2リッター直6ディーゼルに代えて、FJクルーザーや現行プラド用とチューニングは異なるものの、基本設計は同じ4.0リッターV6ガソリン「1GR-FE型」(70の場合は231ps、36.7kgm)を採用。ミッションは海外仕様と同じ5MTのみ。 FJクルーザーやプラドはレギュラーガソリン仕様だが、ランクル70はプレミアムガソリン仕様になり(もちろんレギュラーも使用可)、JC08モード燃費は6.6km/Lとなっている。 海外仕様からの変更は、燈火類や反射板など、わずかとのこと。今回のモデルには、30周年記念の専用エンブレム(ボディサイド両側)や専用本革キーボックス、専用本革車検証入れなどが備わる。

2015年6月までの期間限定販売。価格は350万円~

ピックアップはスチールホイール&チューブ式タイヤが標準(バンはアルミホイール&チューブレス) (photo:トヨタ自動車)
生産はトヨタ車体(株)の吉原工場(愛知県豊田市)。販売チャンネルはトヨタ店で、月販目標は200台。2015年6月30日までの生産分で受注終了となるので、計画通りであれば10ヶ月で計2000台を販売ということになる。 前述の通り、今回発売されるのは、4リッターV6ガソリン、5速MT、パートタイム4WD仕様のみで、価格(消費税8%込)はバンが360万円、ピックアップが350万円。いずれも乗車定員は最大5人で、商用車(1ナンバー)登録になる。ボディカラーには全7色を用意している。

ランクル200とプラドに特別仕様車を設定

一番手前は、ランドクルーザー特別仕様車「ZX“Bruno Cross”」
なお、今回同時に、ランドクルーザー(200系)の特別仕様車「ZX“Bruno Cross”」(Brunoはイタリア語でブラウンの意)と、ランドクルーザープラドの特別仕様車「TX“Argento Cross”」(Argentoはイタリア語で銀の意)も発売された。前者は4.6リッターV8ガソリンエンジンと6ATを搭載し、スーパークロームメタリック塗装のアルミホイールやプレミアムナッパ本革のシートを特別装備したもので、価格は684万3273円。
 
ランドクルーザープラド特別仕様車「TX“Argento Cross”」
プラドの特別仕様車は、2.7リッター直4ガソリン・4ATモデルをべースに、シート表皮やルーフレールをシルバー×ブラックの配色とし、ホイールに専用ダークグレーメタリック塗装を施したもので、価格は5人乗りが334万9963円、7人乗りが350万5091円。

デイズのコメント

(photo:トヨタ自動車)
10年前に販売休止となったクルマが甦るというのは、まさに前代未聞の出来事。10年間、海外で販売が続けられ、なおかつ海外ではマイナーチェンジ(主に安全系)を繰り返してきたゆえの奇跡だろう(区分としては商用車ということもあるが)。それにしても基本設計が30年以上前に行われたクルマが未だ通用するということは、クルマで進化した部分は結局、燃費と安全性だけということなのか、と思えてしまう。
 
(photo:トヨタ自動車)
■外部リンク トヨタ自動車>プレスリリース>ランドクルーザー“70”シリーズを期間限定発売 (2014年8月25日) ■過去の記事 新車試乗記>モデリスタ ランクル ネオクラシックPX10 (1997年10月掲載)
 
(photo:トヨタ自動車)
 

ダイハツ コペン ローブ:新車試乗記

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キャラクター&開発コンセプト

ボディ構造、デザイン、パワートレインを一新

新型ダイハツ コペン
2002年に発売された「コペン」は、軽自動車の2人乗りオープンスポーツカー。2012年にいったん生産を終了したが、2014年6月19日に今回の2代目が発売された。新型の開発コンセプトは「感動の走行性能」、「自分らしさを表現できるクルマ」だ。 具体的には、初代と同じく軽規格のボディに660ccのターボエンジンを搭載するFF車で、電動開閉式ハードトップ「アクティブトップ」を装備する。一方で、新型はオープンボディながら高いボディ剛性を確保するために、いわゆるモノコック構造でもなく、フレーム構造でもない新骨格構造「Dフレーム」を採用。プラットフォーム自体はミライースがベースだが、コペン専用に開発されたもので、先代に比べてボディ上下曲げ剛性を3倍、ねじれ剛性を1.5倍とするなど、劇的にボディ剛性を高めている。
 
ドア以外のボディ外板は樹脂製で、ディーラーで簡単に脱着が可能
同時に、ドア以外のボディ外板を樹脂製とするなど、“着せ替え”を可能とした内外装着脱構造「ドレスフォーメーション」を新採用。これにより軽量化したほか、外観デザインが異なるモデルを追加予定とするなど、先代にはなかった魅力を加えている。 初代のエンジンは4気筒ターボエンジンで、ミッションは4ATもしくは5MTだったが、新型は最新世代の3気筒ターボエンジンに、CVT(無段変速機)もしくは5MTを搭載。アイドリングストップ機能(CVT車のみ)も新採用し、JC08モード燃費25.2km/L(5MT車は22.2km/L)を達成している。

月販目標は700台で、コペン専用工場で生産

新開発の「D-Frame(Dフレーム」。フロアパネルやエンジンコンパートメント周辺はミライースをベースとするが、フロアにX字型や井桁型の補強を入れたり、ドア開口部周辺を新設するなど、ほぼ専用設計
先代の目標月販台数は500台だったが、新型は700台。生産は、先代コペンを生産していた大阪本社工場(大阪府池田市)の「エキスパートセンター」をリニューアルして作った「コペンファクトリー」で行われる。オーナーが希望すれば見学もできる“開かれた工場”となるのも新しい試みだ。 また、すでに予告されているように、2014年秋には外観デザインが異なる「X(クロス)モデル」が投入される予定。またさらに2015年の中盤には、先代のイメージに近い丸目ヘッドライトの「第3のデザイン」が発売される予定。 なお、初代コペンの累計販売台数(国内向け、2002~2012年)は5万7993台。また、主に欧州など海外でも販売されており、こちらは1300cc版も含めて約8000台が販売されたようだ。 ■過去の新車試乗記 ダイハツ コペン (2002年9月)
 
2011年の東京モーターショーで発表されたコンセプト「ダイハツ D-X(ディークロス)」
こちらは2013年の東京モーターショー。D-Xの発展版と言える「Kopen Xmz」(手前)と、市販第一弾のローブの原型である「Kopen Rmz」(奥)
2015年発売予定の「第3のデザイン」。ヘッドランプと外装を交換すればローブからの着せ替えも可能
 

価格帯&グレード展開

諸経費込みで200万円を超える

ボディカラーは全8色だが、ルーフはブラックのみ
新型コペンの第一弾として発売されたのは「ローブ」というモデル。グレード名は、ボディ骨格に外板を服のようにまとうことから、フランス語のRobe(服、ドレスなどの意)が由来とのこと。 全車ターボエンジン、電動開閉式ルーフ、16インチアルミホイールが標準装備で、価格(消費税8%込み)はCVT車が179万8200円、5MT車が181万9800円。標準はオーディオレスなので、ナビなどのオプションや諸経費を加えると総額は200万円を軽々と越える。 ちなみに初代は、2002年当時は一般的だった消費税(当時は5%)抜き表示で149万8000円だったが、今は消費税8%込みになるほか、LEDヘッドランプ、VSC&TRC、キーフリーシステムなどが標準装備なので、一概に高くなったとも言いにくい。
 
内装(ダッシュ、トリム、シート)色はブラウンが標準で、ブラックをオプションで用意
メーカーオプションには、2DINサイズのインパネオーディオクラスターやステアリングスイッチ(音量、選局、モード切替など)をセットにした「純正ナビ・オーディオ装着用アップグレードパック」(1万6200円)を用意している。デザイン的なシンプルさは失われるが、実用面を考えると同パックは必須だろう。実際、ナビの視認性は非常に良い。 あとは好みに応じて、シートやインパネがブラック基調になるブラックインテリアパック(3万2400円)、フォグランプ(1万0800円)などが選べる。
 

パッケージング&スタイル

第1弾は、奇抜なデザインで勝負

なにぶん、デザインコンセプトが発表されたのは2011年の東京モーターショーなので、この3年間でだいぶ目が慣らされた感じはあるが、率直に言って新型コペン、特にこのローブのデザインはかなり奇抜。初代コペンが1950年代のポルシェ 356Aに範をとった、お椀を伏せたようなクラシカルなカタチだったのとは全く異なり、好き嫌いを即座に迫るデザインになっている。
 
また、フロントのLEDポジションライトは「く」の字型に光る形状。リアコンビランプも、下方向にLEDランプが伸びるなど、これまで見たことのないライトデザインになっている(点灯時はダイハツのD、コペンのCの形で光る)。このあたりは、外観デザインが違うバージョンを用意しやすい「ドレスフォーメーション」ゆえの冒険だろう。ボンネットやトランクリッドの立体的な形状も、樹脂製ゆえに実現できたようだ。

外板はドアを除いて樹脂製

ボディサイズ(先代比)は全長3395mm(同)×全幅1475mm(同)×全高1280mm(+35)、ホイールベース2230mm(同)
新骨格構造「Dフレーム」がまとう外装は、計13個の樹脂製パーツから成る。ドアだけはスチール製だが、ボンネット、トランクリッド、ルーフはGFRP(ガラス繊維強化プラスチック)、前後フェンダー、前後バンパーはポリプロピレンとなり、専用のトルクスボルトで締結される。なお、ルーフのメカ部分は先代コペンのものを継承しているが、リアクォーターウインドウは廃止されている。 このようにスチール製の骨格に樹脂製アウターパネルを組み合わせた例は、過去にマツダのAZ-1やスマート ロードスターなどがあるが、メーカー自ら、着せ替えバージョンを発売する例は珍しい(AZ-1の場合は子会社のマツダスピードやM2が用意した)。
 
車両協力:名古屋ダイハツ
また、ダイハツとしては今後、軽自動車の軽量化を図る上で、外板の樹脂化を考えており(現行タントではすでにボンネットやフロントフェンダーが樹脂化されている)、新型コペンの外板樹脂化も、技術の先行投入という意味合いが大きいようだ。後で触れるが、燃料タンクもダイハツ初の樹脂製(すでに他社では珍しくない)になっている。
 

インテリア&ラゲッジスペース

インパネデザインはシンプル&斬新

試乗車はオプションの純正ナビ&取付キット付。これはこれで収まりは悪くない
一見して質感が向上したのが分かるインテリア。インパネの形状も先代のオーソドクスなものから、シンプルかつ斬新なものに変身。センターコンソールを上に向かって細くするなど、ユニークな形状になっている。これが可能になったのは前述のようにオーディオレスを標準とし、2DINスペースをオプションとする、という方法を採ったからだ。 CVT車のシフトゲートに全く照明がなかったり、電動ルーフの開閉スイッチとパワーウインドウのスイッチが同じセンターコンソールにあって紛らわしい、といった細かい点は気になるが、まぁこのあたりは慣れで解消できるもの。軽量スポーツカーに多少の不便さ、簡素な作りは付き物でもあるし。メーター視認性は、情報ディスプレイも含めて良好。ステアリングの質感、触感も良い。

横方向の余裕はある。頭上はややタイト

先代よりもフロントウインドウは寝ているが、オープン時の開放感は高い。ステアリングのチルトはあるが、テレスコやシートリフターは設定なし
横幅1475mmの軽自動車ゆえ、室内幅はカタログ値で1250mmしかなく、運転席に座ったままでも助手席ドアに手が届くほど。しかし、肩からドアまでの距離、いわゆるショルダールームは運転席と助手席、共に余裕があるため、旧軽規格(全幅1400mm未満)のビートやカプチーノにあった横方向の圧迫感はない。標準的な体格なら、2人乗りでもそれほど窮屈な思いはしないはず。これには、しっかりした作りのシートや静粛性など、動的な快適性の高さも理由としてある。 一方、室内高はけっこうギリギリで、特に乗り降りの際には、身長165センチ程度でも頭がルーフを擦ってしまう。おそらく、着座位置がそんなに低くないせいだろう。それでも、トール型が今や主流の軽自動車においては、圧倒的に目線は低い部類。そもそも、これ以上低いと、乗り降りが大変になるし、周囲からの圧迫感も強いし、衝突安全面でも不利になる。実用性を考えると、このくらいが常識的なレベルだ。
 
パワーウインドウと電動トップのスイッチはシフトレバーの横。トランクリッドと給油リッドのオープナーは鍵付き小物入れの中。ボンネットオープナーはグラブボックスの中にある
全車標準のオートエアコンは、室内が狭いせいもあってよく効く。エンジン始動スイッチはステアリングの左側。左右対称デザインなのは輸出対策か?
質感の高い自発光式メーターを採用。回転計は小さく、MTだと数字の読みにくさが気になるかも
 

クローズド時はゴルフバッグも可。オープン時の容量は少し拡大

オープン時の荷室は拡大。ただしルーフが邪魔で開口部が狭く、荷物を出し入れしにくいのが弱点
荷室はこの手の電動ハードトップ車の常で、クローズド時とオープン時では容量が大きく異なる。クローズド時はゴルフバッグが一つ、あるいは大型スーツケースが一つ収まるほど大きい。一方でオープン時は、ルーフがトランク内に収納されるため、ショルダーバッグが2つ入る程度で、しかも出し入れがしにくい。とはいえ先代よりもオープン時の容量は増えている。 トランクリッドを開ける時は、室内センターコンソールの小物入れ内にあるボタンを押すか、スマートキーを携帯した状態でナンバープレート上部に隠れているボタンを押すと、ロックが解除される。トランクリッドの開閉は重めだが、イージークローザーがあるので、力を入れなくても確実に閉まってくれる(ここは先代も同じ)。
 
電動トップが収まる部分と、それ以外のスペースを分ける収納式の仕切りがある
クローズド時ならゴルフバッグが一つ、もしくは大型スーツケースが入る
荷室の下には、車載工具とパンク修理キット。先代もスペアレスだった
 

基本性能&ドライブフィール

新型は出足からトルクフル

試乗したのはCVT車(179万8200円)で、純正ナビ等のオプション込みで210万円オーバーという仕様。 低めのシートに体を滑り込ませ、ステアリング左側のスタートボタンを押してエンジンを始動。「ブォォォン」と全く軽らしからぬ心地よい排気音が、凝った作りのステンレス製2本出しマフラーから吐き出される。つかみはOKという感じ。 出足からトルクが思いのほか分厚く盛り上がり、力強く加速。CVTにありがちなエンジン回転だけが先に上がるスリップ感はなく、リニアに速度を上げていく。言ってみればシフトショックのない6速ATみたいな感じ。
 
タントやムーヴなど、ダイハツの軽自動車に広く使われているターボエンジン「KF-VET型」。ただし圧縮比を0.5上げて9.5とするなどコペン専用にチューン
最高出力は64ps/6400rpm、最大トルクは9.4kgm/3200rpm。先代の4気筒ターボ(JB-DET型)は64ps/6000rpm、11.2kgm/3200rpmだったから、トルクで1割以上ダウンしているわけだが、実際のトルク感は明らかに新型の方が上。先代のエンジンは4気筒のショートストローク型で、なおかつ圧縮比も8.2と低く(新型は9.5)、低回転での力感に乏しかったが、新型は2000回転以下でもしっかりレスポンスする。一般道から高速道路まで、通常は2000回転以下で不満なく走り、加速する時も3000回転ほど回せば事足りる。 車重は先代4AT車(840kg)より30kg重い870kgだが、1.5~3倍という大幅なボディ剛性アップや衝突安全性の向上、装備の充実などを考えると、よくぞ抑えたと言える。トルクフルなエンジン、新型コペン専用にロックアップ率を上げたCVTのおかげで、車重が気になる局面は全くない。街中から高速道路まで、普通に走る分においては、パワートレインにまったく不満はないし、動力性能や余裕は一部のリッターカーを上回る感じすらある。

足はそうとう硬いが、ボディ骨格はガッシリ

フロントはストラット、リアはトーションビームと普通だが、前後に太めのスタビライザーを装備。ダンパーはショーワ製
ワインディングを走らせると、ハンドリングはなかなかいい。高まったボディ剛性、軽量コンパクトなボディ、低重心、吟味されたサスペンションなどが相まって、ミズスマシのような機敏なハンドリングが楽しめる。この感覚は、一般的なハッチバック車では決して味わえない。開発陣はフォード フィエスタの操縦性を参考にしたようだが、似てるなと思ったのはMINI、特に2シーターのMINI クーペ/ロードスターあたり。ただ、コペンの方がパワーはなく、速度も常識的な分、気楽に楽しめる。VSC&TRCは標準装備だが、ドライであれば強く介入してくることはほとんどない。 一方で、驚くのが、足回りの硬さ。スムーズな路面ならそんなに気にならないが、凸凹だらけの荒れた舗装路を走ると、サスペンションは慌ただしくバタバタし、最近のスポーツモデルでも記憶にないくらいのハードさを感じる。マツダ ロードスターでもこんなに硬くないんでは、という感じ。
 
タイヤサイズは165/50R16で(軽もついに16インチ)、専用チューンのブリヂストン ポテンザRE050A
ただし、その割に跳ねたり突き上げたり、コーナリング中に横っ飛びとかしないのは、サスペンションチューニングが行き届いているからだろう。前後ダンパーはショーワ製で、フロントにはフリクションコントロールシールを採用。前後サスのバンプストッパーはウレタン製と、なかなかマニアックな仕様。 また、先代コペンはボディの剛性感が低く、段差では強い突き上げが入ったり、コーナーでもすぐに限界に達したりと軽自動車感が拭えなかったが、新型はフロアの剛性感が格段に上がった。実際のところ、そういう状況だとボディ外板?がワナワナしたり、Aピラーがブルブルッと震えたりするのだが、それでも安心感が持続するのは、フロアなどの要の部分がガシッとしているから。曲げ剛性が3倍、ねじれ剛性が1.5倍という文句は伊達じゃない。
 
ワインディングでも、エンジンを上まで回さずに、低・中回転域のトルクで走らせた方が楽しめる。7速スーパーアクティブシフトなるマニュアルモードは使わず(シフトレバーのシーケンシャル操作のみ)、Sモードを選択するに留めて、ステアリングやペダル操作に専念した方がストレスなく走れる。パドルシフトはなくてもいいと思えた。 電動パワーステアリングは、速度が上がってくると手応えがグッと増すタイプ。ステアリングギア比は、ダイハツ車では最もクイックとのことだが、スポーツモデルとしては意外にスロー。ただし反応は正確だし、ボディ自体の動きがけっこうクイックなので、ステアリングの方はこれくらい穏やかな方がいい。 総じて、足の硬さは好みが分かれるところだが、シャシーの基本性能は高く、しかも誰もが楽しさを味わえて、安全性も高い。こだわりのあるスタッフが、時間をかけてじっくり煮詰めたことが伝わってくる。

実測で約15秒、手動ロック操作を含めれば約20秒でオープンに

電動トップの開閉は、シフトレバーをP(パーキング)に入れた時のみ可能。オープンにする場合は、まずフロントウインドウ上部の左右2ヶ所にあるロックレバーを手動で解除。このロック金具は先代コペン、そしてマツダのロードスター(初代NAや2代目NB)と同じものだ。 ロックを解除したら、センターコンソールのスイッチを押す。すると油圧でトランクリッドが持ち上がり、続いてルーフが2つに折り畳まれて、トランク内に収納される。トップの開閉時間はカタログによると約20秒だが、ボタンを押してから動作は完了するまでは約15秒。手動ロックの操作時間を含めると、確かに約20秒といったところか。
 
オープン走行時の印象は、左右席ヘッドレストの間にプラスチック製のウインドディフレクターがあるため、風の巻き込みは割と少なめ。特にキャビン中央の後方から巻き込んでくる風(これがオープンカーで一番気になる)は、かなり抑えられている。肩から下に当たる風も少ないと感じた。一方で、頭頂部に当たる風はけっこう多めなので、帽子は必須という感じ。 ただ、このあたりの印象は外気温に大きく左右されるので、冷気を感じやすい秋・冬に乗るとまた感じ方が違ってくるはず。ちなみにシートヒーターは運転席・助手席共に標準装備。

軽自動車きっての高速ツアラー

凝った作りのデュアルマフラーは標準装備。心地よい低音を響かせる
100km/h巡航時のエンジン回転数は、約2700回転。軽のCVT車だと、アクセルの踏み込みに応じてエンジン回転数が大きく上下し、一定の速度で走るのが難しい場合があるが、新型コペンの場合はエンジンにしっかりトルク感がある上、CVTのロックアップ感が強いので(CVTであることを忘れる)、とても巡航しやすい。 また、舗装状態のいい高速道路であれば、サスペンションの硬さもそれほど気にならない。静粛性も高いので、高速ロングツーリングも割と無理なくこなせると思う。何となく、モーターデイズで絶賛したダイハツ ソニカを思い出した。 空力性能については、リアの揚力を先代コペンに比べて約60%も低減したとのこと。そのせいか新型は高速走行時の安定感が高い。逆に言えば、先代コペンのボディ形状がいかにリフトしやすかったかということだが。車重が軽い軽自動車は、横風のほかに揚力の影響を受けやすいので、これはけっこう効いていると思う。 Cd値は未公表だが、先代に比べて約6%低減したという。軽スポーツの場合、前面投影面積がそもそも小さいので、絶対的な空気抵抗もかなり小さいはず。

試乗燃費は12.0~20.5km/L。JC08モード燃費は25.2km/L(CVT車)

タンク容量は30リッターで、もちろんレギュラーでOK
今回はトータルで約200kmを試乗。試乗燃費(車載燃費計)は、いつもの一般道、高速道路、ワインディングを走った区間(約90km)が12.0km/L。一般道をエコ運転して走った区間(約30km)が16.0km/L、一般道と高速道路を大人しく走った区間(約30km)は20.5km/Lまで伸びた。JC08モード燃費は試乗したCVT車で25.2km/L、5MT車で22.2km/L。 軽のターボ車というと、燃費はいまいちというのが一昔前までの印象だが、新型コペンはパワフルな割に燃費がよく、特に高速巡航時(80~100km/h)は20km/L台に入るなど低燃費。このあたりはミラ イース譲りのエコ技術が効いていそう。 なお、先代はJC08モードより数値が甘い10・15モード燃費でも、4AT車で15.2km/L(5MT車は18.0km/L)だったから、オートマ同士で比べると燃費は1.6倍以上も向上。また、前回試乗した新型ヴィッツ 1.3と比べると、試乗燃費やJC08モード燃費はほぼ同じだった。実用燃費は、おおむね最新のBセグコンパクトカーと互角と考えていいと思う。 なお、燃料タンクはダイハツ初の樹脂製になり、容量は先代の40リッターから30リッターに縮小されている。実用燃費が良くなっているので、航続距離は先代と同等以上ということだろう。
 

ここがイイ

ボディ剛性、静粛性、乗り心地、動力性能、燃費など全て大幅に良くなった

先代コペンに比べて、動的な質感が格段に上がったこと。先代は低回転域のパワーがない上に4ATであるなど、パワートレインが弱く、またボディ剛性もいまいち低くて、段差ではアクティブトップから音が出たり、ハンドリングや乗り心地に関してもベース車であるミラの延長線上という感じがあったが、新型はまったくの別物になり、いわゆる「いいクルマ」になった。トルクフルなエンジン、リニアなCVT、高いボディ剛性、吟味された足回り、静粛性の高さ、作りの良さなど、非常に高いレベルで仕上げられている。燃費も格段に良くなった。
 
そして900kgを切る車重、低い重心、硬められたサスペンションなどにより、ライトウエイトスポーツカーと呼ぶに相応しい機敏なハンドリングが体験できること。しかも、それを、維持費や信頼性についても心配の要らない新車の軽自動車で味わえる。 ヘッドルームを除けば、そんなに狭さを感じない室内。そして車内が狭いゆえ、クローズド時はもちろん、オープン時でもけっこうよく効くオートエアコン。ロックの解除は少々面倒だが、素早くスムーズに動くアクティブトップなど、細かいところまでよく作りこまれている。市販車に近いコンセプトカーが発表されてから、今回の発売まで3年ほど掛かっているが、じっくり時間をかけて開発したであろうことが、走らせてみるとよく分かる。

ここがダメ

山道でのブレーキタッチ。路面によっては気になる足の硬さ。電動トップの操作性

ワインディングを走った時に気になったのが、ブレーキペダルの初期タッチ。街乗りではほとんど気にならないが、コーナー進入時などに減速もしくはフロントに荷重を乗せるため、軽くブレーキペダルを踏んでも制動力が立ち上がらず、かなり奥まで踏んで初めて効き始める(ブレーキの効き自体はとてもいい)。メーカーの資料には、ブレーキのブースタマスターについて「特性最適化により、ストロークに応じたリニアな効きを確保」とあるのだが。試乗車固有のものだったかもしれない。 足回りに関しては、ライトウェイトスポーツカーでもあるし、好みの問題もあるが、おそらくほとんどの人が「そうとう硬い」と感じるはず。特に舗装の悪い田舎道での揺すられ感はそうとう大きい。先代(R56型)MINIで言えば、クーパーより明らかに硬く、クーパーSを超えるくらいの硬さ。Aピラーや外板はワナワナと震える一方で、ボディ骨格の剛性が高く、姿勢もフラットに保たれるので不快ではないが、舗装の悪い場所を日常的に走ることが多い場合は、けっこう気になりそう。これがライトウェイトスポーツだ、とも言えるのだが。
 
この手の背が低いスポーツカーの場合、乗降性の悪さはある程度仕方ないが、少し気になったのは、つま先がダッシュボード下部に引っかかりやすい点と、降りる際に手を付くことが多いサイドシルの樹脂カバーの剛性が足りず、ペコッとなること。ここはもう少しシッカリ感を持たせたい。 シートリフターがないのはいいとして(小柄な人でも上げる必要はほとんど感じないはず)、ステアリングがチルト(上下)調整だけで、テレスコ(伸縮)調整がないのはちょっと残念。スポーツ走行をする時は、もうちょっと手前に引きたくなる。 アクティブトップは機構的には先代とほぼ同じで、コストや車格を考慮すれば、これ以上の注文はつけにくいのだが、それでも改良の余地があると思ったのは、エンジンが掛かった状態でパーキングに入れないと開閉操作はできないこと。走行中は無理にしても、他社のオープンカーを参考に、もう少し作動条件を緩められればと思う。
 
また、クローズドにする場合、サイドウインドウを閉じる(上げる)ところまで連続して行ってくれないこと。そして開閉動作が終わった時の「ポーン」というお知らせ電子音が小さいこと(音量調整できるのだろうか?)。なので最後にパワーウインドウが閉まってくれると、お知らせ音が聞こえなくても、操作の完了が確認できていいと思う。 さらに言えば、ブラインド操作したくても、ルーフの開閉スイッチが分かりにくいこと。輸入車に多い最新のオープンカーは、気軽に屋根が開けられるよう、そして素早く閉じられるように、このあたりの操作がかなりスムーズに出来る。もう少し簡単に操作できるようになるといい。

総合評価

「楽しさ」だけでなく「楽さ」もある

過去にも書いたような気がするが、かつてホンダ ビートが登場した時、迷うことなく注文を入れた(実はあまりの納車の遅さに結局キャンセルしたのだが)。その頃、所有していた家族用のワンボックスワゴンに、自分が楽しむためのオープンKスポーツを加えるのは、お金の自由がきかない子育てサラリーマンにとって最良の選択に思えたものだ。 時は流れたが、今もそういう状況はそう変わってはいないだろう。いや、昨今はタントのような軽のトールワゴンという子育て用の最強カーが存在するだけに、これにKスポーツを加えれば、昔より更にローコストでファミリーカーとスポーツカーの2台を所有できるわけだ。3年前の東京モーターショーに新型コペンのコンセプトカーが出た時、お金の自由が効かないクルマ好きサラリーマンは密かに歓喜したに違いない。それには先代コペンが「スポーツカー」として楽しむには、ちょっと不満があるクルマだったというのもある。
 
試乗してみると、新しいコペンは本文に書いたとおり十分にスポーツカーとして楽しめる能力を持つことが分かった。また、オープン時の開放感が高いだけでなく、風の巻き込みもそこそこあるため、逆にオープン走行という非日常が楽しめることも分かった。それでいて、ひ弱な現代人が耐えられるだけの快適性も担保されている。例えば子供を預けて、夫婦でデートに出かけた時、いくらスポーツモデルとはいえ、あまりにハードなクルマでは興ざめするはず。奥さんを怒らせないだけの快適性がなかったら、あるいはたまには奥さん自身が運転できるイージーさがなかったら、このクルマの購入ハードルは高くなるだろう。そうした「楽さ」は、このクルマの購入者のかなり多くを占めると思われる熟年層のためにも必要なことだ。

外板交換で可能性が広がる

そんなコペンに関して、なにより画期的なのが、外板を交換できる点だろう。実は今回の試乗中、外観デザインがいまいち気に入らないという声をけっこう聞いた。普通のクルマであれば、それでアウトだが、コペンの場合は外板の変更によって、クロスオーバー風のXモデル、丸目ヘッドライトのモデルと、さらに2つのタイプを追加することが決まっている。個人的には試乗車よりXモデルがデザイン的に気に入った。しかも素晴らしいことに、買ったあとでも交換によって外観を変えることができるという。これは自動車史上、革命的な出来事といって言いだろう。 飽きたら、あるいは古びたら、別の新しいデザインに変更できるのは、気に入ったクルマに長く乗るために、またお金をセーブするためにも実に喜ばしいことだ。さらに、今後は多くのクルマで外板が樹脂化するのは間違いなく、その意味でも先進的な試みだ。これを実現するために新概念の骨格構造(Dフレーム)まで新たに作ったダイハツの意気込みに、大きな拍手を贈りたい。 法的にどうなのかまだ分からないが、展開によってはサードパーティが外板パーツを作ることも盛んになるだろう。すでに外板パーツの製作に必要な情報を、アフターパーツメーカーに公開するという取り組みも発表されている。その場合、軽の枠にとらわれないデザインができるなら、相当かっこいいスタイリングが可能になるはずだ。デザイン的にコペンが苦しいのはやはり全幅の狭さだから、その枠を超えたカタチをサードパーティが提案できるなら、より魅力的なファンカーの世界がやってくるはず。むろん全幅が枠を超えれば、軽の特典はなくなってしまうが。今回のコペンでは購入者の工場見学など、クルマをより愛せるための、これまでにない取り組みを提案しているが、カスタムに関しては、まだ具体的な提案はないようだ。今後はだんだんと、その方向にも取り組んでもらいたい。

コペンに隠された、ひそやかな提案

ダイハツはタントという、ある意味でクルマとは呼べないような「家族用の乗り物」を作り上げ、大ヒットさせた。その一方で、クルマ好きに対しては、その罪滅ぼしの意味を込めてなのか、走り曲がり止まり、楽しんで愛でるというクルマの本質そのものを持つコペンを作り、果敢に提案している。しかもKカーという、経済性の高い日本の国民車規格の中で、この対極に位置する2台を作り上げたのだ。それは今後、世帯収入が上がらないだろうと言われる日本社会で、お金をかけずに日常生活を楽しむという、これからのひとつの生き方を予測してのことだろう。それは希望と野望渦巻く都会生活ではなく、copen.jpでも表現されているように、クルマを必需品とするスローな地方の生活であり、社会のあり方に対する控えめな提案でもあるようだ。 ダイハツは大阪郊外という田舎(失礼)で、日本人の行く末(と自社の行く末)を考えている。熟年層なら特に分かると思うが、かつては郊外での暮らしにおいて、クルマは愛すべき人生の相棒であり、それゆえに愛着に満ちた存在だった。しかし今は、若者を中心に単なる移動ツールとされてしまっている感が強い。が、それではクルマ産業が支える日本経済の未来はけして明るいとは言えない。高級車ではない身近な日本車をもう一度愛でる事ができるようになれば、日本社会はなんとか持ちこたえるのではないか。実はそんな大仰な意図を隠し持つ画期的なプロダクトがコペンだと思う。このクルマにぜひ成功してもらい、他のメーカーもそれに追従してもらいたいものだ。そう、タントのように。
 

自動車の個人売買&個人交換の支援専門サイトがオープン:MOTOR DAYS ピックアップニュース

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自動車の個人売買&個人交換の支援専門サイト「カエルナラ」

株式会社CAS(静岡県浜松市・代表取締役/外山克好)は、自動車の個人売買や交換取引の支援サイト「カエルナラ」を正式にオープンさせた。手放したい車両の登録や、売買成約手数料等を無料とすることで、利用者の拡大を目指す。

 
自動車の個人売買&個人交換の支援専門サイト「カエルナラ」

4月からの消費税アップに加え、来年度にも再度消費税アップが予想されるなか、売買時に課税対象とならない「個人売買」がいま、注目を集めている。日本よりも付加価値税が高い諸外国ではすでに個人売買が盛んなこともあり、支援専門サイトのニーズは日本でも今後高まるとみて開設に踏み切った。

サイト内では、自らが所有する自動車を登録し、それを見た別のユーザーとの直接取引をサポートするほか、相手所有車両との交換を実現するためのサービスも盛り込まれている。個人売買や交換などの一連の取引過程はすべて無料で行えるほか、有料オプションとして名義変更等の手続き代行サービスや決済代行サービスが用意されている。

これまで自動車の個人売買は、煩雑な手続きの問題等もあり、一部のマニアを除くと広く一般に認知されていなかったのが現状だ。しかし、売買時の様々なハードルを下げる支援専門サイトの登場で、自動車の個人売買は今後、日本でも当たり前の商取引の一形態として認知が進みそうだ。

カエルナラ公式サイト

名古屋スバルが新型WRX S4、新型WRX STI、新型サンバーの発表会を開催:MOTOR DAYS ピックアップニュース

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スバル車を愛知県下で販売する名古屋スバル自動車は2014年9月5日、先の8月25日に発表・発売された新型「WRX S4」と「WRX STI」、および9月2日に発表・発売された新型「サンバートラック」の発表会を行なった。また併せて、公道を使ったEyeSight(ver.3)の体感試乗会を関係者向けに開催した。会場となったトヨタ博物館(愛知県長久手市)からリポート。

【新型WRX S4】「乗り手を選ばない万能型スポーツセダン」

スバルにおける「走りのフラッグシップモデル」であるWRXシリーズ。その新型WRX S4の商品コンセプトは、「乗り手を選ばない万能型スポーツセダン」。つまり従来のWRX STI Aライン(2.5ターボの5AT仕様)の後継とも言えるモデルだ。
 
具体的には、300ps/5600rpm、400Nm(40.8kgm)/2000-4800rpmを発揮する新世代の2リッター水平対向直噴ターボエンジン“DIT"や、従来型の高トルク対応リニアトロニックをベースに変速レスポンスを高めた「スポーツリニアトロニック」(CVT)を搭載。走行モードを選択できる「SI-DRIVE」も採用し、JC08モード燃費13.2km/Lの燃費性能を実現している。 ボディサイズは全長4595mm×全幅1795mm×全高1475mm。ホイールベースは従来モデルより25mm長い2650mmで、後席フットルームを拡大。また、Aピラー根元を200mm前に出すことなどでスポーティなスタイリングや良好な視界を得ている。
 
また、カラー認識を行う最新の「EyeSight(ver.3)」をWRXシリーズで初めて搭載。レヴォーグ同様、電動パーキングブレーキや、操舵アシストを行うアクティブレーンキープも採用した。 販売目標台数は月400台。価格は「WRX S4 2.0GT EyeSight」が334万8000円、「WRX S4 2.0GT-S EyeSight」が356万4000円。
 
なお、今回の発表会では新型レヴォーグやWRX S4に採用されている新型EyeSight(ver.3)の体感試乗会も開催された。トヨタ博物館を発着点とし、参加者が自らハンドルを握り、一般道や高速道路を走るもので、新型EyeSightによる全車速追従機能付クルーズコントロールのほか、車線逸脱を防ぐためにステアリングアシストを行う操舵支援機能「アクティブレーンキープ」の機能を体感する機会が設けられた。

【新型WRX STI】EJ20型ターボエンジンと6MTを搭載

WRX S4と同時に発売された新型WRX STIは、WRXシリーズのトップモデル。ボディサイズはS4と同じだが、パワートレインは全く異なり、スバルがWRC参戦時代から連綿と進化させてきた2.0リッター水平対向ターボエンジン「EJ20型」を搭載し、308ps/6400rpm、422Nm(43.0kgm)/4400rpmを発揮。ミッションは従来型をベースに改良・強化した6速MTのみになる。
 
また、WRX STI専用装備として、センターデフの制御特性を自由に選べるマルチモードDCCD(ドライバーズコントロールセンターデフ)を従来モデルから継続採用。足回りも当然ながら専用チューンになり、WRX STI専用倒立式フロントストラットサスペンションのほか、上級グレードの「タイプS」にはブレンボ製ブレーキ等が装備される。 WRX STIの目標販売台数は月250台。価格は標準の「WRX STI」が379万0800円、「WRX STI Type S」が411万4800円。

【新型サンバートラック】室内が広くなり、乗り降りも楽に

スバルは2012年に軽自動車の開発・生産から撤退しており、8代目となる新型サンバーも、今回同時に発売された新型ダイハツ ハイゼットのOEM車になる。 新型ハイゼット同様、新型サンバーの売りは、女性や高齢者への拡販を図るべく、快適性や乗降性を高めたこと。具体的にはキャビンを広くし、運転席シートのスライド量を増やすなどして居住性を改善。また、ドア開口角をクラストップの67度に拡大し、さらにステップ高も低くして乗り降りしやすくした。また、助手席トレイ&センタートレイを採用するなど、収納スペースも充実させている。
 
ボディの耐久性も向上した。防錆鋼板をアッパーボディ全面に採用したほか、飛び石による塗装のはがれに伴う錆の発生を防ぐため、フロントパネルを樹脂製に変更。また、荷台フロア長は先代より10mm長い2030mmとなり、ライバルであるスズキ キャリイに並んでいる(ホンダ アクティは1940mm)。

【新型サンバートラック】ボディカラーが一挙に拡大。燃費も向上

オプションのカラーパックで選べるブルー・マイカメタリック。WRブルーマイカに似ているが、サンバー専用色ではない
農業女子に支持を得るべく、ボディカラーも豊富に用意。これまでの白やシルバーだけでなく、新型は標準のホワイト以外に、7色から選べるカラーパックを、エアコンやパワステ付の上級グレード「TC」(96万4440円~)にオプション設定(受注生産)。「乗用車感覚で普段でもお使いいただける軽トラック」としたという。用意されたボディカラーはハイゼットと同じで、標準のホワイト以外は、ブライトシルバー・メタリック、ミストブルー・マイカメタリック、ライトローズ・マイカメタリック、ブラック・マイカメタリック、ブルー・マイカメタリック、トニコオレンジ・メタリック、オフビートカーキ・メタリックとなる。 フロントサスペンションの改良によってノーズダイブを抑制するなど、操縦安定性も向上。一方で、軽トラックで重視される最小回転半径は3.6メートルとクラストップレベルとしている。
 
水平基調のインパネは道具感満載。シフトレバー横のドリンクホルダーには新型プロボックス同様に?1リッター紙パック飲料も入る
快適装備も充実しており、パワーウインドウや集中ドアロック、撥水加工シート、プライバシーガラス、ABSや助手席エアバッグなども設定。56km/hオフセット衝突にも対応し、運転席エアバッグは全車標準になっている。 また、圧縮比アップや電子制御スロットル、バッテリー充電制御などの低燃費技術により、燃費を向上。2WD・MT車ではクラストップのJC08モード燃費19.6km/Lを達成。また、ハイゼットと共に軽トラックで初の4速ATも採用され、2WD・4AT車では従来比で約2割増しの同18.4km/Lに向上した。
 
フロントデザインはハイゼットと共通だが、なぜかかつてのスバル製サンバー似
新型サンバートラックの目標販売台数は月850台。ちなみに新型ハイゼット トラックは月5000台で、トヨタからも同日にOEM車のピクシス トラックが発売されている。これらの生産は全てダイハツ九州(株)の大分(中津)工場で行われる。 価格はハイゼットと同じで、2WD・5MT車が65万3400円~、2WD・4AT車が75万0600円~、AWD・5MT車が80万4600円~、4WD・4AT車が90万1800円~。

デイズのコメント

ダブルレーンチェンジ限界侵入速度(米国コンシューマー・レポート誌調べ)では、ポルシェ 911 カレラSをも凌ぐというWRX STI のハンドリング性能はオソロシイ進化だが、何より内装の質感が上がったことこそが、WRXシリーズでは重要なことかも。これで特にS4は、大人の選択肢になり得るモデルとなったはず。
 
また、「道具としてのクルマ」度が更に向上したサンバーは、4ATを選べば乗用としても十分使えそう。S4とサンバーの2台所有ライフは、熟年層にとって理想の組み合わせだろう。2台買っても、カレラSの半値以下だ。
 
■外部リンク 富士重工業>プレスリリース>新型「WRX S4」を発表 (2014年8月25日) 富士重工業>プレスリリース>新型「WRX STI」を発表 (2014年8月25日) 富士重工業>プレスリリース>新型「サンバートラック」を発表 (2014年9月2日) ■過去の記事 新車試乗記>スバル インプレッサ WRX STI Aライン 4ドア (2010年11月掲載)
 

VW ポロ TSI コンフォートライン:新車試乗記

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キャラクター&開発コンセプト

いわゆる後期型にマイナーチェンジ。新世代エンジンを搭載

1975年に登場した「ポロ」は、VWのBセグメントコンパクトカー。世界累計販売台数は同社の大黒柱であるゴルフ(累計3000万台以上)のおおよそ半分となる1400万台以上。また、3代目(1996年~)から本格的に導入された日本でも累計販売台数は約22万台で、ゴルフに次ぐ量販モデルになっている。2009年にデビューした現行モデル(6R型)は5代目にあたる。
 
今回の新型ポロ。外観ではヘッドライトやフロントグリル等のデザインが変更された (photo:VGJ)
そんなポロが2014年8月25日にモデルチェンジした。いわゆる後期型へのマイナーチェンジで、基本設計や全体のスタイリングは従来モデルを踏襲している。 今回の改良ポイントは、まず主力の1.2リッター直噴ターボ「TSI」エンジンを、ゴルフ7と同世代の後方排気・DOHC・4バルブユニットに変更したこと。これに伴いパワーステアリングは従来の電動油圧式から電動式(EPS)になるなど周辺メカニズムもアップデート。JC08モード燃費も約5%向上している。

ミリ波レーダーを全車標準化

tsi_00.jpg 5代目ポロ前期型(写真はTSI ハイライン)
もう一つのポイントは、ゴルフ7に続いてミリ波レーダーを全車標準としたこと。これにより衝突被害を軽減・回避するプリクラッシュブレーキシステム「フロントアシストプラス」が、Bセグメント車では異例の全車標準になったほか、上級グレードには「ACC(アダプティブクルーズコントロール)」も標準装備になった。 さらに、事故時の二次衝突被害を軽減・回避するマルチコリジョンブレーキシステムやドライバー疲労検知システムも全車標準とするなど、ゴルフなどの上級モデルに迫る安全装備を備えたのが大きな特徴だ。 ■過去の新車試乗記 VW ポロ TSI ハイライン (2010年7月)
 

価格帯&グレード展開

標準グレードは223万9000円で、ACCもオプションで用意

標準グレードのTSI コンフォートライン (photo:VGJ)
今回日本に導入されたのは、1.2リッター直4ターボの7速DCT仕様のみで、標準グレードの「TSI コンフォートライン」(223万9000円)と上級グレードの「TSI コンフォートライン アップグレードパッケージ」(249万5000円)の2種類。 全車標準となる装備は、プリクラッシュブレーキシステム、マルチコリジョンブレーキシステム(衝突や追突時の衝撃をエアバッグセンサーが検出すると自動で車両を10km/h以下になるまで減速させる)、ドライバー疲労検知システム、新世代のインフォテイメントシステム“Composition Media”(CDプレーヤーやBluetooth対応オーディオなど)、Start/Stopシステム(アイドリングストップ機能)、レザーステアリングなど。また、標準グレードでもACCパッケージ(6万4800円)を選べば、ACCとパドルシフトが付く。

上級グレードは249万5000円で、ACCやアルミホイールが標準

上級グレードのTSI コンフォートライン アップグレードパッケージ (photo:VGJ)
標準グレードより25万6000円高いアップグレードパッケージでは、ACCに加えて、固定式コーナリングライト、オートライト、レインセンサー、オートエアコン、リヤビューカメラ、パドルシフト、アルミホイール、自動防眩ルームミラー等が標準になる。 そしてさらにオプションで、前席をアルカンターラ&レザレット(合成皮革)のスポーツシートに格上げすることもできる(16万2000円)。
 
オプションの純正ナビ「714SDCW」は、従来の712SDCRの後継機
ナビは全車オプション。VW純正ナビ「714SDCW」(クラリオン製)は、2DIN型の7インチタッチパネルタイプで、従来の純正ナビにクラウド音声認識、フリック操作、地図更新などの新機能を追加したもの。標準グレードではリヤビューカメラとACCパッケージとセットで29万4300円、上級グレードでは19万9260円で装着できる。
 

パッケージング&スタイル

全長4メートル未満、全幅1.7メートル未満をキープ

ヘッドライトは全車マルチリフレクター式のハロゲン
ボディサイズは前期型とほぼ同じで、全長3995mm×全幅1685mm×全高1460mm(純正ナビ装着車は全高1470mm)、ホイールベースは2470mm。今どきの欧州Bセグでは珍しく、日本市場のことを考えたかのように全長4メートル未満、全幅1.7メートル未満に収まっている。 ちなみにゴルフ7は、全長4265mm×全幅1800mm×全高1460mm、ホイールベース2635mmだから、ポロの方が一回り以上小さく、最小回転半径もゴルフの5.2メートルに対して4.9メートルに収まっている。狭い場所に駐車する時は、当然ながらポロの方が気楽だ。

フロントを中心にデザイン変更。ボディカラーも充実

リアは、リアコンビランプ(内部のレンズ形状)、バンパー形状(リフレクターも追加された)などが変更された程度
ボディパネルのいわゆる板金部分はほぼ従来のままで、意匠変更されたのは上下フロントグリル、前後バンパー、ヘッドライト、テールランプ、アルミホイールもしくはホイールキャップの意匠といったところ。特に印象が変わったのはフロント部分で、ヘッドライトユニット内部のリフレクターが丸型からシャープな形状になったほか、ロアーグリルにはウイング形状のメッキモールが入った。要するに、ゴルフ7に似たデザインになった。 そして新型で嬉しいのは、ボディカラーがカラフルになったこと。従来モデルはVW定番のソリッド色が中心で、いまいち選択肢に乏しかったが、今回はポロ専用色ではないものの、サンセットレッドメタリック(ゴルフカブリオレにあった)、高級感のあるトフィーブラウンメタリック(現行ビートルの色と同じ)、コーンフラワーブルー(up!の色と同じ)など、全8色が用意されている。
 
シックなトフィーブラウンメタリックは前期型ポロにはなかったタイプの色
写真はコーンフラワーブルーの車両に、オプションのサイドスカートや16インチアルミ、ドアサイドモール等を装着したもの
テーマカラーのサンセットレッドメタリック
 

インテリア&ラゲッジスペース

ステアリングやメーターを、ゴルフ7と同タイプに変更

写真は純正ナビ&ACCパッケージ装着車
内装でまず気づくのは、ステアリングホイールがゴルフと同タイプになったこと。具体的にはスポーク部が光沢のあるブラックになり、リム形状は6時部分が少しフラットなDシェイプになった。また、ACC装着車には、ACC、オーディオ、情報ディスプレイを操作するためのスイッチがスポーク部に装着される。
 
中央の液晶パネルが拡大された新型メーター。左にはアナログの水温計、右には燃料計が新設された
そしてメーターパネルもゴルフと同タイプに変更された。メーター中央の液晶パネルにACCの動作状態が表示できるようになり、代わりに今まで液晶表示だった燃料計が右の速度計内に移設され、アナログ式に変更された。 その他の変更点は、DSGのシフトレバーがゴルフ7と同タイプになったり、ドアトリムにクローム調モールが入ったり、シートファブリックの生地が変わったり、といったところ。質感は確かに上がったが、空間自体は従来通り。
 
後席も従来通り。欧州Bセグ車としては広い方だが、ゴルフと比べると足元やヘッドルームはタイト
シートはファブリックが変更された。全体に小ぶりだが、座り心地は良く、疲れにくい
純正ナビ装着車にはリヤビューカメラ“Rear Assist”が備わる。ポロでは意外にも初採用 (photo:VGJ)
 
荷室容量は引き続き280L(後席使用時)~952L(拡大時)。床は上下2段階で調整可(写真は上げ底)
床下も従来と同じで、パンク修理キットと小物収納スペースが備わる
新型ポロに全車標準の新世代インフォテイメントシステム “Composition Media”。6.5インチタッチスクリーンで、オーディオを操作できる (photo:VGJ)
 

基本性能&ドライブフィール

ピークパワーは一割ダウン。実用域のレスポンスは文句なし

エンジンは従来と同じ1.2リッター直4ターボながら、搭載方向が前後180度反転し、DOHC・4バルブ化。エンジン型式は従来のCBZから、新しくCJZになった。
今回は、御殿場で行われたプレス向け試乗会に参加した。 基本的にはマイナーチェンジなので、走り出した時の第一印象は、前期型の1.2 TSIエンジン搭載車とよく似ている。エンジンは排気量1197cc、直4・直噴ターボ(ボア71.0mm×ストローク75.6mm)という点こそ変わっていないが、従来のSOHC・2バルブからDOHC・4バルブになり、しかも前方排気からゴルフ7と同じ後方排気に変更。圧縮比は10.0から10.5にアップされている。 しかし最高出力は従来の105ps/5000rpmから、90ps/4400-5400rpmに、最大トルクは175Nm (17.8kgm)/1550-4100rpmから、160Nm (16.3kgm)/1400-3500rpmへと、つまりそれぞれ1割ほどダウンしている。これはおそらく、日本市場には欧州にある同型エンジンの110ps仕様ではなく、(燃費のいい?)90ps仕様が導入されたからだろう。発生回転域を見ると、要するにピーク域を富士山の頂上のように削り、フラットにしたという感じ。
 
パドルシフトは標準グレードではACCとセットでオプション、上級グレードでは標準装備だが、まぁ無くてもいいかな、という感じ
実際のところ、常用回転域でのパワーダウン感はまったくなく、むしろ改めてポロ 1.2 TSIエンジン搭載車の走りっぷりの良さに感心してしまう。車重は前期型より30kg重いが(装備増加が主な要因とのこと)、それでも1130kgしかない。これは1.2リッターエンジン(105ps、17.8kgm)を搭載するゴルフ7より110kg軽く、ザ・ビートルより170kg、同カブリオレより250kgも軽い。 確かに105psの前期型ポロと比べると、エンジンをブン回した時の速さは目減りした気もするが、依然として動力性能はまったくもって十分。特に今回のように2速、3速を使うタイトなワインディングでは、コーナーを立ち上がる度に絶妙なトルク感とレスポンスが楽しめる。 そして、おなじみ7速DSGの変速レスポンスは、相変わらず文句の付けようがない。ギア比は前期型と全く同じで、箱根の山道にほぼドンピシャに思えたが、このあたりの印象にも全域で鋭いレスポンスを見せるエンジン特性が効いている。

パワートレインの良さが、ハンドリングの印象を引き上げる

タイヤは全車185/60R15が標準で、試乗会場にあった車両はスチールホイール車も含めてコンチプレミアムコンタクト2だった
足回りに関しては、特に改良されたというアナウンスはなし。それでも乗り心地については、前期型の途中(2012年)で追加された低燃費モデル(アイドリングストップ等を装着)のTSI コンフォートライン BMT(ブルーモーションテクノロジー)と比べると、ポンポンと跳ねるような動きがなく、ロードノイズも明らかに静か。ただし、この印象は試乗車のタイヤがいわゆるエコタイヤではなく、コンチネンタルのプレミアムコンタクト2だったおかげかも。ちなみにモーターデイズで4年前に試乗した前期型TSI ハイラインも同じプレミアムコンタクト2だったので、それと比べると大きな差はないかもしれない。 ハンドリングもなかなかいい。もちろんゴルフ7ほどのしなやかさはないし、腰高な印象も依然としてある。また、例えばスイフトスポーツのように、リアを絶妙に滑らせて曲がっていくようなスポーティさも持ち合わせていない。しかしそこはFF車のハンドリングで定評のあるVW。ステアリングを切ればちゃんとグイグイ曲がってくれるし、リアも落ち着き払ってそれに付いていく。そしてアクセルを踏めばすぐに脱出加速に移るので、フラストレーションを感じるスキがない。その点ではパワートレインの出来の良さがハンドリングの印象を引き上げている。プレミアムコンタクト2のグリップ感も十分で、走行後タイヤを触ったら、けっこう粘着感があった。 なお、パワーステアリングはこれまでの電動油圧式(電動ポンプで油圧を起こすタイプ)から、モーターで直接アシストする電動パワステ(EPS)になった。すでに成熟技術であるEPSゆえ、操舵感はごくごく自然で、もちろん燃費性能の底上げにも貢献しているはず。また、従来型は車外にいると、ステアリング据え切り時などに電動ポンプがウィーンウィーン言ってたが、その音が消えた。

高速道路は常用域で不満なし。高い速度域はやや不得手

(photo:VGJ)
2区間だけながら、高速道路も走ってみた。100km/h巡航では当然ながら、直進安定性、乗り心地、静粛性はまったく問題なし。正直なところ、これくらいの速度域なら、この日、名古屋から御殿場までの往復で乗ったレクサス NX200tに遜色ないとさえ思ってしまった。 ただしポロの方は速度域が高くなるに連れて上下動、いわゆるバウンシングが大きくなる傾向があり、この点ではフラット感がどこまでも持続するゴルフ7と明らかに差がある。もちろん、日本の高速道路ならポロの性能でも十分だが。そして今回の目玉であるACCは、ポロの場合だと最高160km/hまでセット可能なようで(設定画面で確認)、新東名など流れが速い場所でも活用しやすい。 ちなみにUK仕様の最高速は183km/hで、0-100km/h加速性能は10.8秒。前期型TSI ハイラインは(105ps)は190km/hと9.7秒だったからパワー相応にダウンしたわけだが、新型の動力性能もまったくもって十分。トルク重視の直噴ターボとパワーバンドを外さない7速DCTのおかげで、いつでも胸のすく加速が味わえる。とても1.2リッターとは思えない。 ちなみにUK仕様にはこの他に、自然吸気1.0リッター3気筒ガソリンの60ps版(最高速161km/h)、その75ps版(同174km/h)、そしてターボディーゼルの1.4 TDI 90ps版(同183km/h)もあるが、これらは5速MTのみ。しかし1.2 TSIの110ps版(196km/h)や、150psの1.4 TSIを積むブルーGT(220km/h)には7速DCTがあるので、特に後者は日本にも導入されるかもしれない。

JC08モード燃費は約5%向上して22.2km/L

最後にJC08モード燃費を見てみると、前期型TSI ハイライン(アイドリングストップ未装備)が19.4km/L、前期型TSI コンフォートライン BMT(アイドリングストップ標準装備)が21.2km/Lだったのに対して、新型は22.2km/Lを達成。アイドリングストップ装着車同士で比べると、伸び代は約5%だ。 実用燃費は、前期型TSI ハイラインやBMTモデルに試乗した時の実燃費を目安にすれば、11~17km/L台といったところか。「踏むか踏まないか」で、けっこう差が出るタイプ。従来通り指定燃料はプレミアムで、タンク容量は45リッターになる。
 

ここがイイ

プリクラッシュブレーキやACCの採用。「クルマ」としての素晴らしい完成度

全長4メートル、全幅1.7メートル未満に収まるコンパクトカーながら、完璧とも思えるパワートレインとシャシー性能を併せ持つポロに、ついにプリクラッシュブレーキシステムやACCが装備され、日本においては必要十分かつ理想的なコンパクトカーになったこと。もはやゴルフは贅沢品である。 スタイリングもいい。ゴルフは現行の7で明らかにスタイリッシュ感が増したが、この5代目ポロのスタイリングは4年前に当時のゴルフ6よりいいと書いたくらいで、今のゴルフ7と並べても、まるで古さを感じさせない。新しいボディカラーにも魅力的な色が揃っている。 そして何より、若い女性だけに乗らせておくにはもったいないほど、走りが素晴らしい。クルマ好きの男性も「しょせんポロ」などと思わず、一度試乗してみるべき。特に1.2リッターTSIエンジン搭載車はベストバランス。現行ポロが登場してから早5年経つが、走りに関しては今でもBセグメント車のベンチマークだと言い切れる。
 
オプションの純正ナビについては、ひと世代前のものを別のVW車で個人的に使用しているが、オーディオからナビまで過不足ない性能と、変に凝っておらず実に使いやすい操作性を備えていて、スマホナビではなく車載専用ナビがあるべきところに収まっていることの便利さを実感している。むろんバックカメラの利便性は言うまでもなく、コンパクトカーと言えども日常使いのクルマにはやはりあるべき装備だ。そして従来型ナビで課題だった地図更新も今回から可能になった。純正ナビは車両価格からするとやや高価ではあるが、満足度は高いと思われる。

ここがダメ

ステアリングスイッチが使いにくい

気になったのはゴルフ7同様、ステアリングスイッチの使いにくさ。ACC(オン/オフ、速度調整、車間距離調整)、オーディオ(音量、選局など)、情報ディスプレイ(燃費表示など)などを操作するスイッチが小さく、しかも直感的に分からない感じで配置されている。例えば、オーディオの音量スイッチはステアリングの左スポークにあるが、選局スイッチは右スポークにあるところや、ACCが左側のスポークにあり、つまり面倒な速度設定などを左手でやることになる点など。また、老眼だとステアリングスイッチの小さな絵文字は、かなり読みにくいはず。機械に弱い人の場合、ACCはちょっと使いこなせないかもしれない。 マーケティング的に、コンパクトカー=女子のクルマという呪縛に囚われ、今も抜け出せていないこと。今までの購入者の半数は女性ということで、今回も30代女性をメインターゲットにしているが、一方でポロのコンパクトカーとしての本質的な良さに気づいている男性は購入しづらいように思える。ポロを検討したけど、結局up!を買ってしまったという実例を知るだけにちょっと残念だ。

総合評価

明確に抜いたと言えるクルマはおそらくない

ポロは2009年のワールド・カー・オブ・ザ・イヤー、欧州カー・オブ・ザ・イヤーを受賞しており、モーターデイズでもイヤーカーとして絶賛して早5年。その間にたくさんのコンパクトカーが登場したけれど、ポロを明確に抜いたと言えるクルマはおそらくないのでは。それはVWも分かっているようで、まだ十分通用するとばかりに今回、ビッグマイナーで登場させてきた。最も大きなトピックはプリクラッシュセーフティやACCといった部分。ボディの衝突安全性などはすでに十分だったが、プリクラッシュセーフティの方は、日進月歩で進化や普及が進んでいる。このシャシーのまま、あと数年売るためには、ここはどうしても手を付けざるをえないところだ。 で、そのプリクラッシュセーフティ装備は、試せていないのでよくは分からない。でも試せる部分であるACCの性能は、やっぱり素晴らしいと思った。いつも書くことで恐縮だが、欧州車は100km/h超の速度域(ポロの場合は160km/hまで)でもちゃんとACCが機能するが、日本車の場合はだいたい115km/h程度までしか設定できない。別に速度違反を推奨するつもりもないし、欧州のような高速道路の流れを望んでいるわけでもないが、日本の高速道路で流れに乗ってACC(トヨタなどではレーダークルーズと呼ぶ)を使うとなると、115km/hまででは何かと「不便」なことが多いのは、おそらくもう多くの人が体験済みだろう。
 
昔は使ったことのない人が多くて、この話も伝わりにくかったが、いまなら賛同してもらえるはずなので、くどいと言わずに読んでもらいたい。最近の高速道路の自然な流れは最高で120km/hちょっとあたりまでの速度を上限として、速くなったり遅くなったりする。つまり日本車もあと10km/h高めに設定できれば、レーダークルーズで流れについていける。115km/hという半端な設定によって、せっかくのハイテクが意味のないものとなっていると思うのだが。120km/hという速度は、今の高速道路とクルマの性能を鑑みれば、けして危険とは思えず、それはまた警察もお目こぼししてくれる速度域でもあると思う(自動速度取締機だって光らない)。 制限速度以上は出してはいけないという原理原則に基づくのであれば、上限を100km/hにするのが筋というもの。いっそそれならあきらめもつく。さらに言えば国産車はだめで、なぜ輸入車なら115km/h以上の設定ができるのか。そのあたりも全く一貫性がない。いずれにしても今回、ポロのACCは使い物になるが、試乗会まで乗っていったレクサス NXのレーダークルーズコントロールは今ひとつ使い物にならないことを再確認した。これは日本社会の残念なところを象徴している事例、とまで言いたい。

末恐ろしいクルマが現実に

ポロに関しては2009年当時、さらに進化したら末恐ろしいクルマになると書いたが、先進安全装備を搭載したことで、ついに末恐ろしいクルマが現実のものとなったわけで、今でも文句なく最高のコンパクトカーと断言できる。例に出して申し訳ないが、ちょっと前に乗った現行ヴィッツ後期型の「ここがダメ」には、プリクラッシュ系装備がないこと、と書いた。そして総合評価では長距離を乗った上で「これは悪くないなあ」としたが、1.2リッターターボと7速DCTのポロに関しては、ちょっと乗っただけで「やっぱりこれはいいなあ」と思ってしまった。その上でプリクラッシュ装備も搭載されているわけだし。 ヴィッツの場合、次のフルチェンジモデルでは当然ながらプリクラッシュ系装備を載せてくるはず。しかし今回のポロは、現行モデルのビッグマイナーで次期モデルの装備を先取りしている。そういったところこそ、日本車がどうしても欧州車の後塵を拝してしまう部分だろう。むろんヴィッツは150万円ほどで、今回のポロはACC付で250万円ほどと値段がすごく違うから仕方ないとも言えるが。欧州であれば、それほど大きな価格差はないだろう。
 
ポロに追いつけ、追い越せのメーカー各社が、このあと数年でどこまで追い上げるかが、コンパクトカー好きとしては楽しみなところ。まずは昨日受注開始したデミオがポロを超えたか、そこが楽しみだ。レーダークルーズコントロールはどうやら載っていないようだが。 おそらくポロも次のモデルでは全幅が広くなるはずだから、その意味では今回がナローボディのポロを手に入れるラストチャンスかもしれない。女性はもちろん、男性でもコンパクトカー好きなら、買うのは今でしょ(すでに死語かw)と言いたい。
 

レクサス NX200t “Fスポーツ” AWD:新車試乗記

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キャラクター&開発コンセプト

レクサス初のコンパクトSUV

2013年 東京モーターショーで発表されたLF-NX ターボコンセプト
2014年7月29日に発売された「NX」は、レクサス初のコンパクトクロスオーバーSUV。ミドルクラスSUVのRXシリーズより、一回り小さいモデルになる。 NXの原型と言えるのは、2013年秋のフランクフルトモーターショーで登場したコンセプトカー「LF-NXハイブリッド」。同年の東京モーターショーでは次世代2.0リッターターボエンジン搭載との触れ込みで「LF-NX ターボコンセプト」を発表。そして2014年4月に北京モーターショーで初めて市販モデルが発表された。
 
新型レクサス NX200t(市販車)
開発コンセプトの「Premium Urban Sports Gear」は、直訳すれば、高級感があり、都会的で、スポーティなギア(格好いい道具)。プラットフォームは現行3代目ハリアー(2013年12月発売)がベースで、すなわちエンジン横置きのFFもしくは4WD。世界的に拡大している高級コンパクトSUV市場に投入するモデルで、ライバル車としてはアウディのQ3、Q5、BMWのX1、X3、レンジローバー イヴォーク、メルセデス・ベンツ GLAなどが想定されている。

レクサス初のガソリンターボ、そしてハイブリッドの2本立て

新開発2リッターターボエンジンを搭載したNX200t (photo:トヨタ自動車)
先行するライバル車に対抗すべく、新型NXではレクサス初のガソリンターボエンジンとなる新開発2.0リッター直4ターボ(8AR-FTS型)の「NX200t」と、現行ハリアー譲りのハイブリッドシステム、すなわち2.5リッター直4(2AR-FXE型)+モーターの「NX300h」をラインナップする。 生産はトヨタ自動車九州(株)の宮田工場で、月販予定台数は700台。 なお、発売から約1ヶ月後までの初期受注台数は累計約9500台に達し、内訳はガソリン車とハイブリッド車でほぼ半々ずつとのこと。
 
現行ハリアーと同じハイブリッドシステムを搭載したNX300h (photo:トヨタ自動車)
■過去のニュース トヨタ、新型レクサス「NX」を発表 (2014年7月) ■過去の新車試乗記 トヨタ ハリアー (2014年2月) レクサス RX450h (2009年2月) レクサス RX350 (2009年2月)
 

価格帯&グレード展開

ターボ車は428万円~、ハイブリッド車は492万円~

NX200t Fスポーツ。写真は3眼フルLEDヘッドランプ装着車(Fスポーツではオプション) (photo:トヨタ自動車)
ラインナップは前述の通り、2.0リッター直4ターボ(238ps、35.7kgm)+6ATの「NX200t」、そして2.5リッター直4+モーター(システム出力197ps)の「NX300h」の2本立て。 それぞれFFとAWD(4輪駆動)があるが、300hのAWDに関しては後輪をモーターのみで駆動する電気式AWD「E-Four」になるのでプロペラシャフトはない。 価格は200tが428万円~518万円で、300hはそれより64万円高い492万円~582万円。ちなみにハリアーは自然吸気2リッターガソリン・CVT車が約280万円~、ハイブリッド車(AWDのみ)が約370万円~とNXよりかなり安いが、エンジン車同士ではパワートレインが全く異なるし、ハイブリッド車同士では装備等が大きく異なる。
 
NX300h Fスポーツ。写真はロービームのみLEDヘッドランプのタイプ (photo:トヨタ自動車)
プリクラッシュセーフティシステム+全車速追従機能付レーダークルーズコントロール(アイドリングストップとの連携機能付)は全車オプション(6万4800円)。ボディカラーは計10色で、新色のソニッククオーツや、試乗車のソニックチタニウム(現行GSと同じ色)など質感の高い色が揃う。
 

パッケージング&スタイル

“ジャパンクール”なカッコ良さ

片側3灯のフルLEDヘッドランプ(標準装備ないしオプション)やスピンドルグリルは、ISとの共通性を感じさせる。試乗車はFスポーツ
「プレミアム アーバン スポーツギア」を目指したスタイリングは、今風に言えば“ジャパンクール”なカッコ良さを持つもの。各部のモチーフは現行ISに通じるが、NXはコンパクトSUVという比較的新しいジャンルゆえか、セダン系にありがちなコンサバの壁を突き抜けた感じ。それでいて大人っぽい高級感もあり、ちゃんとレクサスしている。中でも目を引くのが、昔風にブリスターフェンダーと呼びたくなるフェンダーフレアで、ガンダム的でもあり、また往年のセリカ GT-FOURも彷彿とさせる。

全幅は日本市場に配慮して1845mm

NX200tにはデュアルマフラーカッターが、300hには同じ場所にテールフィンが備わる
ボディサイズは全長4630mm×全幅1845mm×全高1645mmで、RX(4770×1885×1690mm)より140mm短く、40mmナローで、45mm低いなど、全ての点で一回り小さい。 また、ベースが同じ現行ハリアー(4720×1835×1690mm)と比べても、90mm短く、45mm低くて、やはりショート&ロー。ホイールベースはハリアーと同じ2660mm。 一方、ライバルのQ5やX3と比べると、全長や全高は似たようなものだが、全幅はQ5、X3、イヴォークが1900mmあるのに対して、NXのそれはQ3、X1、GLAと同等の1845mmに収まっている。これは日本の機械式立体駐車場に対応するためとのこと。
 
 

インテリア&ラゲッジスペース

高級感に加えて、遊び心も盛り込む

インパネもエクステリアに負けず劣らずダイナミック。レクサスらしい質感を備えながら、畳み掛けるように新しい意匠を盛り込んでいる。新型リモートタッチの使いにくさは気になるが(後述)、一方でエアコン等の操作には流行りの液晶タッチパネルではなく、昔ながらのスイッチを使う。コストは掛かっても、こちらの方が操作しやすいということか。
 
センターコンソールの蓋を外せば手鏡に。「おくだけ充電」はレクサスでは初採用
また、センターコンソールのニーパッドにはスーパースポーツのLFAに使われているLEXUS刻印入りのキャップボルトをあしらうほか、センターコンソールの蓋が手鏡になるといった女性に受けそうな遊びもある。かつてのスペシャリティクーペ的なノリを感じさせる。
 
新型リモートタッチは、ポインターを動かすとタッチパッド自体が振動するフィードバック機能を備える
カラーヘッドアップディスプレイは、速度、エンジン回転数、ナビ情報、エコ運転インジケーター、車線逸脱警報などを表示
Fスポーツ用のスポーツシート。ベンチレーション機能を最強にすると9月でも寒いくらいに涼しい
 
後席使用時でもゴルフバッグを横向きに3個、その上に1個の計4個を積める
オプションで電動リクライニング&電動格納機能付リアシート、そして電動リアゲートを用意
後席は下手な中型セダンより広く、乗り降りしやすい。電動リクライナーのスイッチは座面横
 

基本性能&ドライブフィール

ターボっぽくないターボ

トヨタにとっては2007年に終了した「3S-GTE」以来のガソリンターボ。ボア×ストロークは3Sと同じ86.0mm×86.0mmのスクエア
試乗したのはターボエンジンのNX200t(AWD)。 「8AR-FTS」と呼ばれる2.0リッター直4エンジンは、ツインスクロールターボチャージャーに加えて、ターボ用に新開発した直噴+ポート噴射併用システム「D-4ST」、可変角を拡大して通常のオットーサイクルから燃費重視のアトキンソンサイクルへの切り替えを可能にした「Dual VVT-iW」(iWはintelligent Wide)、さらに水冷エキゾーストマニホールド一体シリンダーヘッドや水冷インタークーラーなどの新技術を山盛り、てんこ盛りにしたもの。ボアピッチこそ既存のAR系エンジンと同じだが、ブロックからすべて新開発とのこと。気になるスペックは、最高出力238ps、最大トルク350Nm (35.7kgm)となかなかハイパワー。
 
ただ、実際に走らせて意外なのは、思ったほどターボっぽくないこと。VWやアウディ、BMWといった今どきの直噴ターボ車と比べてもターボ感はない方で、自然吸気ですと言われたら、そうですかと信じてしまいそう。エンジンサウンドは、オーディオスピーカーによる「アクティブサウンドコントロール」(200t、300h共にFスポーツに装備)で演出されているようで、どこまで“本物”か分からないが、音も何となく自然吸気エンジンっぽい。
 
走行中に見る余裕はないが、メーター中央の液晶ディスプレイにはブーストメーターも表示できる
全開加速を試みればシューンと高回転まで爽やかに回りきり、それなりに速いが、「うわ、はえーな」と驚くほどではない。車重はAWDでオプション満載の試乗車で1820kgあり、パワーウエイトレシオは7.65kg/psとまずまず。 変速機はターボエンジン用に改良された6速ATで、パドルシフトのほか、コーナリング中の変速制御を最適化する「G AI-SHIFT制御」も採用されている。しかしスペック的には率直なところ、欧州車でスタンダードになっている8速ATや9速AT、7速DCTと比べて見劣りするところ。

ワインディングもスポーティに破綻なく走る

Fスポーツには減衰力が従来の9段階から30段階で可変するようになった新開発のNAVI・AI-AVS(Adaptive Variable Suspension system)や、サスペンション基部を左右でつなぐパフォーマンスダンパーを標準装備。足回りも専用チューニングで、タイヤはFスポーツの場合、標準はサマータイヤの235/55R18になるが、試乗車が履くオプションのFスポーツ専用アルミでは、なぜか225/60R18になる。 ワインディングでは今どきのクロスオーバーSUVらしく破綻なく走る。普通なら強いアンダーステアに陥る状況でもよく曲がるし、姿勢変化も少ない。また、試乗車はAWDゆえ、ホイールスピンもほとんど全くない。NX200tのダイナミックトルクコントロールAWDは、ステアリング操舵量まで検出しながら前後100:0~50:50までトルク配分を可変するもので、パワーを完全に手なづけている。
 
試乗車はオプションのFスポーツ専用アルミと225/60R18(BS デューラー H/L)装着車
また、NXのボディはいわゆる線レーザーではないが、スポット溶接より細かいピッチで溶接できるレーザースクリューウェルディングや、パネルを面接合することで振動減衰効果もあるという構造用接着剤を使ったもの。ドイツ車の巌(いわお)のような感じとは違うが、剛性感は確かにある。 ただ、欲を言えばもう少しパワー感とか、鋭い身のこなしが欲しくなる。この感じはドライブモードセレクトで「SPORT S+」を選んでもあんまり変わらない。少なくともISやGSほど過激に変化しない。また、山道ではエンジン回転がドロップしがちで、もしミッションが8速だったらどうだったかも気になる。

レーダークルーズの設定は115km/hまで

今回は名古屋・御殿場間の往復などで、東名や新東名を600km以上を走行。100km/h巡航時のエンジン回転数は約1800回転で、ペースを上げても静粛性や直進安定性は変わらず、しれっと高速巡航してくれる。何の不満もない一方で、胸のすく加速感とか、ものすごい直進安定性とか、ものすごい静粛性とかいった際立った印象が残らない。 オプションの全車速追従機能付レーダークルーズコントロールは、前回のVWポロ試乗記でも触れたように、速度設定は115km/hまで。ちなみにNXのレーダークルーズコントロールは、レクサス車で初めてアイドリングストップとの連携機能を備えていて、渋滞時などに車両が停車するとアイドリングストップを行うだけでなく、前車の発進を感知してエンジンが自動で再始動する。
 
プリクラッシュセーフティシステムは、ドライバーが全くブレーキ操作を行わない場合、例えば先行車20km/h、自車50km/hの場合(つまり相対速度差30km/h)であれば、衝突回避もしくは被害軽減を行うとのこと。また、ドライバーがブレーキを踏んだ時にはプリクラッシュブレーキアシストが作動し、例えば先行車20km/h、自車80km/h(相対速度差60km/h)では、最大60km/h程度まで減速するという。前者は主に脇見運転を想定したものだが、後者はブレーキ性能をちゃんと引き出すと同時に、ドライバーの技量を補なうもの。緊急時にブレーキペダルを全力で“蹴飛ばすように”踏むのは誰もが必ず出来ることではないので、あれば心強いと思う。 また、同じくオプションのステアリング制御付LDA(レーンディパーチャーアラート)は、車線をカメラで読み取り、逸脱を警告するだけでなく、車線内に留まるように操舵アシストまで行う。技術的には特に新しくはなく、アシスト力も注意していないと気づかないくらいの強さだった。最近乗った例では、スバル レヴォーグのEyeSight(ver.3)に備わるステアリング制御の方が、より強くアシストしてくれる気がする。

試乗燃費は8.1~11.8km/L。JC08モード燃費(NX200t)はFFが12.8km/L、AWDが12.4km/L

タンク容量は60リッター(300hは56リッター)。指定燃料は200tがハイオクで、300hはレギュラーでOK
今回はトータルで約800kmを試乗。試乗燃費(車載燃費計)は、いつもの一般道、高速道路、ワインディングを走った区間(約90km)が8.1km/L。一般道を大人しく走った区間(約30km)が8.9km/L、名古屋-箱根間の往復で高速道路(約500km)およびワインディング(約60km)を走った区間(計580km)が10.1km/L、高速道路で80~100km/hで大人しく走った区間(約150km)が12.0km/Lだった。 撮影を含めたトータル燃費は、車載燃費計によると9.4km/L。合計で約90リッターのハイオクガソリン(リッター180円~185円)を消費し、約1万7000円が飛んだ。
 
棒グラフは、おおむね今回の試乗における燃費推移。10km/L台は高速道路でないと難しい
JC08モード燃費は、試乗したAWDが12.4km/Lで、FF車が12.8km/L。これは、プレミアム指定のRX350(8.8~9.1km/L)より約4割も良く、レギュラー指定のRX270(10.0km/L)より約3割良い。ただし、その上を行くのがハイブリッドの300hで、FF車は19.8~21.0km/L、AWDでも19.6~19.8km/Lと良く、しかも指定燃料はレギュラー。というわけで計算上は200tより64万円高い300hを買っても、8万~9万km走ればいちおうチャラになるはず。
 

ここがイイ

第一にスタイリング。そして待望のターボが出たこと

独創的でアグレッシブなスタイリング。最近のトヨタ車の中でもベストかもと思う。身も蓋もないことを言えば、デザインがNXの売れている最大の理由だと思う。 トヨタ久々のガソリンターボエンジンにより、やっと過給ダウンサイジングの流れに乗ったこと。ユーザー的にも、快適性は従来のV6エンジン車とまずまず同等で、燃費は3~4割良く、このカッコいいスタイリングと手頃なボディサイズ、そして高級SUVとしては妥当な価格のクルマが手に入るようになったわけで、売れているのも当然だろう。

ここがダメ

今ひとつ印象の薄い走り。使いにくい新型リモートタッチ

トヨタが満を持して出したと言うべきターボ車ゆえ、つい走りに期待してしまったが、ファン・トゥ・ドライブ感はやや淡白で、クルマ好きや欧州車好きが唸るような種類ではないこと。また、スペック面では8速ATの採用が見送られたこと。普通に走る限り、6速でもネガティブな印象はないが、8速なら高速燃費の底上げも出来たはずだし、ステップ比も小さくなってワインディングでの走りはよりスポーティになったはず。何より新型車なのに、欧州のライバル車に最初から段数で負けているのが残念。
 
リモートタッチは、とりあえず現状では従来型の方が良かったのに、という印象。確かにタッチパッドは文字入力も出来るし、アウディなども採用しているから今後発展する可能性はあるが、従来のジョイスティック的に動くコントローラーを指先で動かすタイプの方が、操作感は良かった。そもそも右ハンドル車で乗る日本の場合、タッチパッドを左手で操作するのは、根本的に無理がある(左利きにはいいかもしれないが)。従来型リモートタッチをもっとカイゼンするという手もあったと思う。
 
レーダークルーズコントロールの設定速度は、前回のポロ試乗記でも触れた通りで、もう少し引き上げてもいいのでは。国内業界のリーダーであるトヨタには、何とか“自主規制”見直しの音頭取りをして欲しいところ。 細かい話だが、最近のレクサス車に採用されるアナログ時計は、今回のNXでも光が差し込む日中などに見にくかった。アナログ式のまま、運転中でも瞬時に時間が分かるデザインにすべき。

総合評価

不況などどこ吹く風

4月の消費税増税以降、景気はやや悪化という観測もある一方で、株価は円安効果などで好調なようだが、実際のところ、景気がいいという感覚は全くない。とはいえNXは「7月29日の発売から9月3日までの約1ヶ月間で、累計約9500台、月販目標700台の約14倍となっている」というプレスアナウンスがあり、また新型ハリアーの方も愛知県726万人をテリトリーとする名古屋トヨペットの場合、発売された昨年12月から今年8月末までの受注が7779台で納車が5222台、つまり納車待ちがまだ約2500台もある状況だという。どちらも高額車であり、不況などどこ吹く風という感じに見える。 スポーツカーと違ってSUVは法人需要も多いだろうから、全て個人が買っているわけではないはずだが、それにしてもたいした売れ行きだ。特にNXはアグレッシブなデザインでカッコ良く、試乗中もある人から「儲かってますねえ」と嫌味を言われたほど。「いや、試乗車ですから」と言い訳したが、それくらい人目につくクルマで、そういう目にも耐えられる、儲かってますと言える人が相当数いるわけだ。これをアベノミクスの成功と捉えるか、貧富の差が広がっていると捉えるかは、なかなか興味深いテーマだが、さて。
 
NXも売れているが、ポルシェのマカンもずいぶん受注があるとのこと。こうしたコンパクトサイズのプレミアムSUV人気を支えているのは、やはり女性ではないか。多くの女性がSUV好きだが、レクサス RXあたりでも日本で使うにはかなり大きいので、ちょっと普段使いには辛いところだった。それはポルシェのカイエンあたりも同様。だからコンパクトなNXやマカンが売れることになる。購入するのは男性が多いはずだが、実際は奥さんが乗るというパターンでは。NXのインテリアはリッチ感十分で、ファッショナブルな女性ならまず気にいるはず。走りの方は…これはもう普通に街乗りするには十分だろう。クルマに対してウルサイ方々には色々突っ込みどころもあるかもしれないが、女性の足としてはまあ文句はないと思う。 レクサスというブランドも、クルマウルサ方にとって最高級ブランドというまでには、まだまだ至ってはいないが、こと日本の奥様になら高級ブラントとして十分に成立している。NXは登場してまだ間もないが、目を引くスタイリングもあり、セダンやスポーツカーは好きじゃないけどSUVなら乗りたい(しかも安心な日本車で)という、ちょっとリッチな奥様方垂涎のクルマになっていることが、今の売れ行きを支えている、と言ってもいいのでは。本当はトヨタ初の小排気量ターボの出来はどうよ、走りはどうよ、とシビアに考えたいところだが、まあそれは売れ行きとはまったく関係ない。そのあたりがクルマという商品の面白くも難しいところだ。

リモートタッチは現時点ではスマホにかなわない

ただ、そんな奥様にも気になるところはあるはず。それが新しいリモートタッチだ。これまで日本車で一番良い操作系だと絶賛してきたレクサス(一部トヨタ車にもあるが)のリモートタッチだが、今回の新型はちょっと厳しいと正直思ってしまった。タッチパッドながら、指先にフィードバック(振動)があるという、これまでPCの世界でも存在していない独特の操作感は、どうにも違和感があった(フィードバックの強度は調整できるが)。何よりこのインターフェイスは左ハンドル車が前提ではないかと思う。右手操作であれば、あるいは左利きであれば、かなり評価は変わるはず。左手ゆえ思うように操作できないもどかしさは、現状ではこのクルマの価値をかなり下げている。難しいとは思うが、右ハンドル車なら右手で操作できる位置に持ってくることも考えてもらいたい。その場合でも助手席用には今の位置に必要なので、右ハンドル車は2つ用意することになってしまうが…。 ナビとの対話形式で目的地設定ができるエージェント機能も、スマホ(グーグル)の音声認識があまりに正確で実用的なだけに、どうにもまだるっこい。トヨタ自動車がある名古屋駅前ミッドランドスクエアの横に「ウインクあいち」というセミナー等がよく催される新しいビルがあるが、これをどうしても音声認識してくれなくてまいった。もちろん有人オペレータにもつなげられるが、スマホでは一発で音声認識して即、道案内が始まる。それをそのままナビ画面に表示してもらえた方がどれほど楽かと思ってしまった。ビッグデータの恩恵を享受できる新スマートG-BOOKもまだNXには載せられていない。渋滞情報もVICSよりグーグルマップの方が正確に思えた。 また、飲食店など近隣の施設ガイドも現時点ではスマホにかなわないと思った。特にスマホは個人の嗜好に合わせてパーソナライズされるが、同じレベルまでカーナビを成長させるには結構な手間がかかるはず。人によるコンシェルジュサービスがかなりの部分、音声自動対応に置き換えられているので、よりスマホとの差を実感してしまった。また、安全運転のためには仕方ないのだが、走行中には目的地設定などの操作が中断してしまうのも難しい課題だと思う。
 
ブランド力、デザイン力で相当な力をつけてきたレクサスだが、もうひとつの柱であったハイテク・IT部分では、もはや多くのクルマやモバイル機器に追いつき追い越せ状態にあるように思う。最新のレクサス車なのに、その装備で「来るべき自動運転の世界」をイメージさせてくれないのは、メーカーばかりではなく、お役所のせいもあるだろうが、かなり残念だ。また販売に結びつきにくい、ガジェットオタク向けとも言えるような機能に力を入れても仕方ない、というのも分からなくはないが、先端技術は日本のお家芸だったはずで、クルマでもその部分で負けたらこれまた残念。 などと言っている場合ではない、スマホ事業も苦しいというソニー凋落(2015年3月期の見通しが2300億円もの赤字だという)のニュースを見たのは奇しくも韓国製のスマホだったのだから。気がついたら日本製ではないクルマに乗っているという時代が来るのは、あまり想像したくないと思う。そんな中で、トヨタ(とそのグループ)は希望の星なのだから、ぜひともがんばってほしい。

ジープ ラングラー アンリミテッド スポーツ:新車試乗記

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キャラクター&開発コンセプト

2007年に3代目へ。2012年に新世代V6と5ATを搭載

今回試乗したラングラー アンリミテッド(2014年モデル)
ジープ ラングラーは1987年に登場したクロスカントリー4WD。角目ヘッドライトの初代(1987~1996年)はYJ型、 丸目に戻った2代目(1996~2006年)はTJ型と呼ばれるが、今回取り上げるのは2007年にデビューした3代目で、JK型(この世代からJが先)と呼ばれるモデル。 JK型ラングラーは、伝統の2ドア・4人乗りモデルに加えて、本国では2代目の2004年モデルから追加され、日本ではJK型で初めて正規販売された4ドア・5人乗りロングホイールベース版「アンリミテッド」の2ボデイをラインナップしている。今回は2014年モデルのアンリミテッドに試乗した。

【Jeep】 1941年に軍用車として誕生。民生用CJからラングラーに進化

ウィリスMB(1941~1945) (photo:フィアット クライスラー ジャパン)
Jeepは1941年に米軍向けの多目的車両として誕生。正式名称はウィリスMB(ウィリス製)もしくはフォードGPW(フォード製)だが、兵士の間で自然発生的にジープと呼ばれるようになった。名称の由来には諸説あるが、多目的(General Purpose)の頭文字GPがなまったという説が有力。 このジープをウイリス社が第二次大戦が終わった1945年から民間向けに販売。このCJシリーズ(シビリアン ジープの意)が徐々に快適性や動力性能を高めながら進化し、その発展版として1987年に登場したのがラングラーだ。
 
2代目TJ型ラングラー(1996~2006年) (photo:フィアット クライスラー ジャパン)
なお、この間にメーカーは、最初のウィリス(1944~1953年)、カイザー(1953~1970年)、AMC(1970~1986年)、クライスラー(1987年~)と目まぐるしく変遷。しかし吸収・合併を繰り返しながらも、ジープは黒字部門として生き残り、現在のフィアット・クライスラー下でも重要なブランドになっている。ブランドスローガンは「go anywhere, do anything(どこへでも行ける、何でもできる)」。 ラングラーの生産は現在、かつてウィリス・オーバーランド社の本拠があった米国オハイオ州トレドで行われている。 ■関連記事(新車試乗記) ・トヨタ ランドクルーザー “70”シリーズ (次回掲載予定) ・ランドローバー ディフェンダー ステーションワゴン 110 (2013年10月掲載)トヨタ FJ クルーザー (2011年1月掲載)ハマー H3 (2008年1月掲載)
 

価格帯&グレード展開

2012年モデルから新型3.6リッターV6エンジンと5速ATを搭載

ラングラー アンリミテッド。写真はフェンダーやハードトップがボディ同色になるサハラ (photo:フィアット クライスラー ジャパン)
現行モデルは全てハードトップ仕様で、2ドアの「サハラ」、アンリミテッドの「スポーツ」および「サハラ」の3グレードを用意。サハラはタイヤが18インチになり、フェンダー&ハードトップがボディ同色になる。 駆動方式はパートタイム4WD、すなわち通常は2WD(FR)で走り、悪路走行時に前後直結の4WDにするタイプ。 日本仕様のパワートレインは、JK型デビュー当初は3.8リッターV6・OHV(199ps、32.1kgm)と4速ATだったが、2012年モデルから新世代の3.6リッターV6・DOHC(284ps、35.4kgm)と5速ATになった。なお、本国では6MTが標準で、日本にも2007年に悪路走破性を高めた硬派モデル「ルビコン」に6MTが設定されたが、現在はラインナップされていない。
 
ジープ ラングラー(2ドアモデル)。写真は2007年モデル (photo:フィアット クライスラー ジャパン)
ラングラー最強(つまりジープ最強)の悪路走破性を持つルビコンは、日本にもこれまで何度か正規導入されており、平行輸入車(特に6MT車)も多数入っている。ルビコンとはカリフォルニア州レイクタホ近くの、“オフロード界のニュル”とも呼ばれる全長35kmのトレイルコースのことで、ジープが昔から走破テストに使っていることでも有名。 全車右ハンドルで、オフロード用のプログラムを持つESPも標準装備。2014年9月現在のラインナップと価格(消費税8%込み)は以下の通りで、特別仕様車も販売中。
 
2013年に国内限定100台で販売されたアンリミテッド ルビコン 10th アニバーサリー エディション (photo:フィアット クライスラー ジャパン)
【2014年モデル ラングラー & ラングラー アンリミテッド ※2014年9月現在。特別仕様車を除く】 ■ラングラー サハラ  379万0800円 ■ラングラー アンリミテッド スポーツ   379万0800円 ■ラングラー アンリミテッド サハラ    409万3200円         ※レザーシート装着車   425万5200円 ■ラングラー アンリミテッド Altitude Edition(限定200台) 429万8400円
 

パッケージング&スタイル

昔ながらのアイテム満載

全長は2ドアが4185mm、写真のアンリミテッドが4705mm。全幅1880mm×全高1845mmは共通
デザインは「Jeep」そのもの。ヘッドライトは元祖ジープやCJ系と同じ丸目で、昔ながらのガラスレンズ。通称7スロットフロントグリルも元祖ジープから受け継いでいる。そして平面ガラスのフロントウインドウ、樹脂製の別体式オーバーフェンダー、アウターヒンジで開くドア、ゴム製バンドで止めるボンネットなど、昔ながらのアイテムを挙げていくとキリがない。 一方でJK型からは、フロントグリルの角度が少し寝て、ちょっと現代的に変化。また、JK型からは「ジープ フリーダム トップ」と呼ばれる3ピース構造の樹脂製ハードトップを採用。これはフロントシート上部の右および左パネル、そしてリアパネルの3つで構成されており、フロント片側だけ外すこともできる。

JK型で一気に大型化。アンリミテッドはさらに520mm長い

ボディサイズはJK型で一気に大きくなった。元祖ウイリスMBの大きさは、軽自動車のジムニーくらいだったが(全長は約3.4メートル)、CJシリーズで徐々に大型化。CJ-7から2代目TJ型ラングラーまでは成長がほぼ止まっていたが、JK型では全長が280mmほど長くなり、ホイールベースも50mm延長。全幅は一気に140mmも増えて、1880mmのアメリカンサイズになった。 さらにJK型のアンリミテッドでは、ホイールベースが2ドアモデルより520mm伸びて2945mmもあり、全長も同じく520mm伸びて4705mmになった。おかげで最小回転半径は7.1メートルもあるが、後で触れるように、実際に乗ってみると意外に取り回しは悪くない。
 
フロントウインドウは、工具を使えば畳むことが可能(その際、公道走行は不可)
ボンネットはゴム製のバンドで止める。オプションでキーロックも装備可
最低地上高は2ドアが225mm、アンリミテッドが220mm
 
    全長(mm) 全幅(mm) 全高(mm) WB(mm) 最小回転半径(m)
ウィリス MB(1941~1945) 3359 1575 1772 2032
初代YJ型ラングラー(1987~1995) 3860~3890 1720 1830 2375 5.15~5.3
2代目TJ型ラングラー(1996~2007) 3865~3915 1740 1765~1800 2375 5.2
3代目JK型ラングラー
(2007~)
4185 1880 1845~1865 2425 6.0
トヨタ FJ クルーザー (2010~) 4635~4670 1905 1840 2690 6.2
3代目JK型ラングラー アンリミテッド
(2007~)
4705 1880 1845 2945 7.1
トヨタ ランドクルーザー 70 バン (2014) 4810 1870 1920 2730 6.3
トヨタ ランドクルーザー 70 ピックアップ (2014) 5270 1770 1950 3180 7.2
 

インテリア&ラゲッジスペース

ジープらしさを残しつつ、近代的に

助手席側アシストハンドルには「Jeep SINCE 1941」のロゴが入る。よく見るとフロントガラスにもジープのイラストが2ヶ所ある
ドアを開けた瞬間、おおっと思うのはドアストッパーがナイロン製のヒモであることだが、これは昔のジープ同様にドアを簡単に外せるようにするため。ただ、建てつけはしっかりしていて、かなり乗用車的。乗り降りもサイドステップを使えば、割とすんなり出来る。 切り立ったダッシュボード、天地の狭い平面ガラス、ところどころ見える鉄板こそ無骨だが、運転席からの眺めは思いのほか近代的。他のジープ車と共通のステアリングにはオーディオやクルーズコントロールのスイッチも備わるし、今やオートエアコンも全車標準。フロントシートも乗用車に遜色ない。一つ面食らうのはアクセルペダルが遠いことだが、これについては後で詳しく触れる。
 
センターコンソールには2DINワイドスペースを用意。その下にパワーウィンドウスイッチがある
室内3ヶ所のルームライトは、写真のメーター照度調整スイッチでもオン・オフできる。ここでオンにすると点きっぱなしになるので注意
前席はリフターとスライド機構の調整幅が広く、何とか好みのポジションが取れる
 
 

アンリミテッドは後席と荷室のスペースを大幅アップ

アンリミテッドの後席は3人掛け。スペースは問題ないが、背もたれはやや立ち気味
ホイールベースが520mm長いアンリミテッドの場合、後席スペースは問題なし。ただし背もたれが立ち気味で、リラックスして座れないのが惜しいところ。なお、フロアカーペットは簡単に外せるので、床の排水栓を外せばジャブジャブと水洗いも可能。 リアシートの背もたれを倒せば、ヘッドレストが自動的に折れ曲がり、ステーションワゴン的なフラットな荷室が現れる。最大容量は約2000リッター。この荷室にはフリーダムトップの収納袋や、片側がカーペット、片側がゴム製のフロアマットも標準で付いている。
 
後席はワンタッチで畳めて、ヘッドレストも自動的に折れ曲がる。床下収納もある
リアゲートを開くと、それで押さえられていたガラスハッチがフリーになり、跳ね上げることが出来る
ハードトップは3分割の樹脂製。フロントの片側だけ外すことも出来る
 

基本性能&ドライブフィール

2012年モデルでパワートレインを一新

試乗したのは2014年モデルのアンリミテッド スポーツ。 走りだした瞬間、「ああ、そういえばダッジ ナイトロもそうだったなぁ」と思い出したのは、アクセルペダルの遠さ。シート位置をブレーキペダルで合わせると、アクセルペダルをつま先で踏むことになる。慌ててシートを調整し直すと、シートスライド量がナイトロの時より大幅に増えているようで、足がちゃんと届くようになった。ステアリングはチルト(上下調整)だけだが、こちらは特に問題ない。
 
クライスラーの新世代V6クラスを担う3.6リッター “ペンタスター”エンジン (photo:フィアット クライスラー ジャパン)
3.6リッターV6の通称「ペンタスター」エンジンは、オールアルミのDOHC・4バルブで、吸排気VVT付きの新世代ユニット。グランドチェロキーには2010年から、ラングラーには2012年から搭載されている。 従来の3.8リッターOHV(199ps、32.1kgm)に比べて、最高出力は約40%増の284ps、最大トルクは約10%増の347Nm (35.4kgm)を発揮する。同時にATは4速から5速に格上げ。パワートレインは、2011年までとは別物と言ってもいいかもしれない。

低回転でも高回転でも気持ちいい

OHVからDOHCにはなったが、そこはアメリカンV6。低回転のトルクは相変わらずリッチで、2000回転も回せば街中から郊外まで、気持よく走ってくれる。久々に食べたステーキみたいに美味しい。また、マウントがしっかりしているのか、アクセルを煽っても、トルククリアクションでボディを揺することがなくなった。得たものはあっても、失ったものはない。 そして最新のDOHCユニットらしく、レスポンスはけっこうシャープ。レッドゾーン手前まで引っ張っぱると、284psの額面通り、シュヴァーンと気持よく吹け上がる。動力性能は4リッターV6(276ps)・5ATのFJクルーザーとおそらく同等で、感覚的には先日のNX200tより速く感じてしまった。車重は1.8トンくらいかなぁと思ったら、アンリミテッドは2ドアモデルより160kg重くて2020kgもある。
 
助手席ドアにはフロント左側の死角を常時映すモニターを全車に装備
ちなみにパワーウエイトレシオは、ラングラー2ドアが6.6kg/ps、FJクルーザーが7.0kg/ps、アンリミテッドが7.1kg/ps、NX200t AWDが7.6kg/psという順で並ぶ。ちなみに次週取り上げるランクル70は、バンが9.2kg/ps、ピックアップが9.6kg/ps。 あと、街乗りで感心したのは、見晴らしが良くて、意外に運転しやすいこと。最小回転半径はアンリミテッドだと7.1メートルもあるが、実際には駐車時やUターンでも、普段より一回多く切り返して済むレベル。ステアリングは軽いし、左前の死角を常時映しているモニター(けっこう便利)もあるしで、意外に困らない。アルファードあたりと大差ない感覚で運転できると思う。

乗り心地も操縦安定性も期待以上

タイヤはその名もグッドイヤーのラングラー。オールシーズンのM+Sが標準
乗り心地も思った以上に良かった。サスペンションは前後リジッドのコイルスプリングで、シャシーはもちろんラダーフレームだが、剛性がやたら高いのか、ブッシュやスプリングの設定がいいのか、路面からのショックがマイルド。ラダーフレームのリジッド車にありがちなユサユサ感やフラフラ感もない。先代ラングラーのオーナーが現行モデルに乗ると快適性の高さに驚くそうだが、さもありなん。 ワインディングでも、特に速いとか楽しいとかはないが、2H(FR状態)でまったく問題なく走ってくれる。と簡単に書いたが、この手のクロカン4WD車で、これはなかなかのもの。ペースを上げても安心感は変わらず、メーター内の警告灯でESPが時々介入しているのが知れる程度。おそらくワイドトレッドや、アンリミテッドの場合は超ロングホイールベースが効いていると思う。

これならロングドライブも大丈夫

2012年から5ATを採用。副変速機は「2H、4H、N、4L」で、通常は2Hで走る
高速道路も問題なし。100km/h巡航は約1900回転で、このくらいの速度でクルーズコントロールを使ってユルユル走らせるのが一番気持ちいい。そこはさすがアメ車。 直進安定性も良く、その気になれば心拍数を上げずに120km/h程度でも巡航できそう。路面から強い入力があると、たまに足がグニャッとよれる感じがあるが、特に不安はなく、車線変更も安心して行える。ラダーフレームのリジッド車では最良の部類だと思う。 また、屋根がFRP製だったり、室内のところどころに鉄板がむき出しだったりするのに、車内は不思議なくらい静か。エンジン音、風切り音、ロードノイズがほとんど気にならない。ちなみに先代ラングラーから乗り換えた人は「これで高速道路でも普通に話ができる」と言うらしい。長距離ドライブにも、乗用車に近い感じで行けると思う。

オフロード性能も盤石。マニアには「ルビコン」を用意

写真は2007年モデル (photo:フィアット クライスラー ジャパン)
悪路走破性については、スペックをおさらい。サスペンションは5リンクのコイルリジッドで、駆動系には第2世代の「コマンドトラック 4×4システム」を装備する(ルビコンを除く)。これはパートタイム4WDだが、走行中でも2Hから4Hへ切替ができる。さらに、岩場や泥濘などの極悪路用には4Lモード(変速比は2.717)も備える。また、リアデフには「トラックロック」と呼ばれる機械式LSDも標準装備する。最低地上高は220mm(2ドアは225mm)、渡河性能は最大48センチとのこと。
 
それでも物足りないマニアには、ジープ最高の走破性を誇る「ルビコン」がある。こちらは同じパートタム4WDでも、「ロックトラック 4×4システム」を装備。これは「トゥルロック」と呼ばれる電子制御ロッキングデフ(ボタンでオン・オフが可能)をリアだけでなく、フロントにも装備するほか、前輪のストロークを28%増加させる電子制御式フロントスウェイバー ディスコネクティングシステム(前輪のスタビライザーをスイッチ一つで外せる)や、通常モデルの2.717:1に対して4:1になるローレンジを装備するなど、ジープ随一のオフロードスペックが与えられている。
 
 

試乗燃費は6.9~9.5km/L。JC08モード燃費は7.5km/L(アンリミ)

アンリミテッドのタンク容量は85リッター(2ドアは70リッター)
今回はトータルで約200kmを試乗。試乗燃費(車載燃費計)は、いつもの一般道、高速道路、ワインディングを走った区間(約90km)が6.9km/Lで、実はこの後に試乗したランクル70と奇しくも全く同じになった。また、空いた一般道を大人しく走った区間(約30km)が8.5km/L、高速道路を80~100km/hで大人しく走った区間(約30km)が9.5km/Lだった。指定燃料はアメ車らしくレギュラーでOK。 なお、JC08モード燃費は2ドアモデルが7.9km/Lで、アンリミテッドが7.5km/L。ちなみに今夏、再販されたランクル70はプレミアム指定で6.6km/Lとなっている。
 

ここがイイ

快適性、操縦安定性、静粛性の高さ。近代的なパワートレイン。運転しやすい

ラダーフレームのリジッド車としては、例外的に直進安定性が高く、ワインディングも不安なく走り、静粛性も望外に高いこと。これなら、高速ロングドライブも無理なくできる。 今や日本車では絶滅しそうな大排気量V6エンジンによる、低回転でまったり、高回転でシューンと鋭く回る感じは、やはり悪くない。また、ボディ剛性が高いせいか、舗装の悪いところを走ってもボディのワナワナ感や足回りのバタバタ感がほとんどないこと。燃費も車重2トン、排気量3.6リッターのクルマの割に悪くないし、レギュラー仕様なのもこのご時世ではありがたい。 最小回転半径はアンリミテッドで7.1メートルもあるが、意外に取り回しがいいこと。バックする時はバックモニターもないし、スペアタイヤの分が出っ張っているから要注意だが、しょせん全長はアンリミテッドでも4.7メートルとマークX並み。一般的な駐車スペースにもちゃんと収まってくれる。 デザインの面白さ、構造のシンプルさ。例えば、ドアが取り外し可能とか、フロントウインドウが畳めるといったところは、もう日本車では許されないだろうし、次期ラングラーでも難しいかも。ローテクな作りが、商品の魅力になっている。

ここがダメ

アクセルペダルの遠さ。後席背もたれの角度

アクセルペダルが遠いこと。女性で小柄な人はちょっと運転が難しいかも。ただ、幸いフロントシートはかなり前の方にスライドできるので、身長160センチ程度でも足は届く。それに、ブレーキペダルには普通に足が届くので、ペダルを踏み間違える可能性はまず無さそう。 また、左ハンドルのメインのクルマを右ハンドルにしたことで、案の定このクルマも左足を置くスペースがかなり苦しいのだが、これはシートを前に出して(このクルマはずいぶん前に出せるのがありがたい)、左足を奥まで伸ばすことでかなり狭い感じは解消された。こうすればアクセルにも足が届く。その意味で右ハンドルも足の長い欧米人向けの作りであり、欧米人体型であれば足もとの狭さは案外気にならないのかもしれない。これは発見だった。
 
後席の背もたれ角度が立ち気味で、大人が長時間過ごすにはちょっと辛そう。空間的には広いし、乗り心地もまずまず良く、静粛性も高いだけに、ちょっと惜しい。あとほんの少し角度が寝るといいのだが。

総合評価

オフロード車の代名詞

「ジープ」はもはや「永遠のアイコン」と言えるのでは。誕生から73年も走り続けているわけで、これより長生きしている人はそう多くないし、今生きている人にとっては、物心ついた時にすでにジープというものが存在していた。しかもかなりの知名度を持って。 現在80歳代の人なら進駐軍=ジープだろうし、60歳代以降の人なら、豊かなアメリカ、あこがれのアメリカを象徴するものの一つと感じているのではないか。戦後にノックダウン生産されていた三菱ジープは、自衛隊から報道各社まで、あちこちで使われたため、災害の記憶とともに脳裏にその姿が残っているはず。50代以上の日本人には結構身近な存在で、タフなところがカッコいい、オフロード車の代名詞がジープということになる。
 
デザイン的にも、VWビートルを真似てスバル360ができたように、日本のオフロード車はジープのコピー車と言えるだろう。初期のトヨタ ランドクルーザーは明らかにジープのイメージを踏襲しているし、スズキ ジムニーの初代LJ10型などは、ほぼウイリスMBのコピーに見える。型番にもJがつくし。 実際のところ、ラダーフレームに車輪を吊るし、エンジンと駆動系を載せてカバーし、乗車スペースを用意してフェンダーをつければ、だいたいこういう形になってしまうが。要はこのカタチ、兵器由来の究極の機能美だ。それゆえ、いつになっても古びることなく、変わらぬ魅力を保っている。つまりは最近の若い人にもウケるということになる(特に最近は戦車好きが多いようだし)。 ラングラーはそういうジープ本来の危うく美しいデザインを引き継ぎ、さらに昇華させている。例えばビートルは、ニュービートルでリバイバルし、ザ・ビートルではそれをさらに現代的にブラッシュアップした。MINI やポルシェ 911も同様で、過去のデザインアイコンをキープし続けているゆえに、今も人を引きつけ続けているわけだ。ラングラーの場合もこのデザインこそ、まずは最大の魅力だろう。

見た目から想像するより、はるかに快適

走らせてみれば、さすがに2007年のフルモデルチェンジや、2012年のマイナーチェンジが効いていて現代のクルマになっていると思った。見た目から想像されるより、はるかに快適で、乗り心地もよく、静粛性も高い。メーカーが標榜するようにオフロードでは無敵なのだろうが、オンロードでもこれなら毎日乗ってもいい。以前ダッジ車やクライスラー車でも見た助手席ドアのモニター画面など、いまだ無粋なフェンダーミラーをつけているクルマたちに部品供給したくなるほど有効だと思う。実燃費だってレギュラーガソリンで7km/Lくらい走るなら、このサイズを考えればまったく不満とはならないと言っていいのでは。 デザインよし、走りよし、そしてどことなくプリミティブで、それゆえ乗って楽しい。屋根を外せること、その気になればドアだって外せること(公道は走れない)、カーペットを外せばフロアを水で丸洗いもできるなど、ヘビーデューティーなこと、この上ない。ジープといえば往年の戦争ドラマ「ラットパトロール」だが、このラングラーも後部座席に銃座を据えつければ、そのまま戦場で活躍できそう。こうした「イメージとしての武器感」は日本車では感じられないこと。それがジープ(特にウイリスMBを始祖に持つラングラー)の永遠に続く魅力だと思う。
 
近い将来、次期型にモデルチェンジすると思うが、様々な現代の安全基準や環境問題をクリアしようとすると、おそらくもうこういうクルマという訳にはいかないだろう。まだ当分なくなることはないとは思うが、大排気量V6は今や風前の灯だし。なのでVWポロ同様、買うなら今でしょ(すでに死語かw)と言っておきたい。とはいえ、このところ次モデルより今のモデルを買っておくべきとよく思うのは、我々が退化しているからなのか、クルマの進化がいまいちだからなのか、どちらなのだろう。
 

トヨタ ランドクルーザー “70”シリーズ ピックアップ:新車試乗記

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キャラクター&開発コンセプト

10年ぶりに国内販売を再開。ただし2015年6月までの期間限定

1984年に発売された初代“70” (photo:トヨタ自動車)
2014年8月25日に発売されたランドクルーザー“70”(ナナマル)シリーズは、国内販売を10年ぶりに復活させたモデル。 もともとは、名車ランクル40(ヨンマル)の後継車として1984年にデビュー。途中から乗用ワゴンモデルとして「プラド」を派生させる一方で、本流の70は30年間にわたり、トヨタきってのクロスカントリー4WD車として世界中で販売。ただし日本国内での販売は、ディーゼルエンジンの排ガス規制などの理由で2004年に終了していた。
 
今回発売された“70”シリーズ (photo:トヨタ自動車)
その70の国内販売が10年ぶりに再開されたのは、トヨタによれば、まずファンの強い要望に応えるためとのこと。従来70の車齢が10年以上となり、ユーザーや販社からも復活を願う声が上がっていたという。また、トヨタとしても70の誕生30周年を機に、世界各地で活躍している70の良さを国内のユーザーにぜひ知ってもらいたい、という意図もあるという。 さらには環境・安全基準が今後さらに厳しくなる中、海外向け70を国内で販売するのは今が最後のチャンスということもあるようだ。ゆえに国内販売は、発売から約10ヶ月後の2015年6月30日生産分で終了する。

基本設計は以前とほぼ同じ。ピックアップを新たに導入

車体まわりの基本設計は、販売終了前と基本的に同じ。ただし、2007年にフロントまわりをマイナーチェンジしており、外観もヘッドライトが角目になるなど大きく変わっている。また、今回は4ドアバンに加えて、国内では初となるダブルキャブピックアップトラックがラインナップされた。 エンジンは、現行70用で日本の排ガス規制を唯一パスする4リッターV6ガソリンエンジン(1GR-FE型)を搭載。また、AT仕様も海外向けにないため、5MTのみが導入される。海外仕様からの変更点はサイドアンダーミラーの追加や反射板など、わずかとのこと。
 
シャシーは伝統のラダーフレーム構造で、「通常の乗用車をはるかにしのぐ耐久性基準」(小鑓 貞嘉チーフエンジニア)を確保。サスペンションは前後リジッドで、フロントがコイルスプリング(1999年以降)、リアがリーフスプリング。駆動方式はパートタイム4WDで、オプションで電動デフロック(前後)が用意されている。 生産はトヨタ車体(株)の吉原工場(愛知県豊田市)。販売チャンネルはトヨタ店で、月販目標は200台。2015年6月30日までの生産分で終了するため、10ヶ月で計2000台の計画だったが、フタを開けてみれば発表から一ヶ月後の9月24日時点で、受注は早くも約3600台(バンが約2700台、ピックアップが約900台)を突破している。

世界のランクル70 販売状況

左は初めてランドルクルーザーを名乗った25型(写真は1957年式のFJ25)。右は1960年から84年まで販売された40型(写真は1974年式のFJ40)
現在、トヨタのランドクルーザーは、旗艦モデルの200系、150系プラド、そして70系の3シリーズで展開中。約60年の歴史を持つランクル全体の累計生産台数(今回の70発売時点)は約790万台だが、そのうち70は約146万台(ランクル全体の18.5%)を占める。また、2013年の世界生産台数では、ランクル全体の約35万6000台のうち、70は過去最高の7万6827台(同21.6%)が販売されたとのこと。 近年の主力市場は、中近東(2013年は4万4875台)、アフリカ(同1万4411台)、オーストラリア(1万3110台)で、これらが9割以上を占めており、砂漠地帯、鉱山、農漁業等でのワークホースとして、あるいは災害・紛争地域で赤十字や国連などの人員・物資輸送手段として活躍している。
 
70系の世界販売台数推移。国内販売終了後も、世界販売は順調に伸びている
■関連記事 ・ニュース>トヨタ、ランドクルーザー “70”シリーズを発売 (2014年8月) ■関連記事(新車試乗記) ・ジープ ラングラー アンリミテッド (2014年9月掲載)ランドローバー ディフェンダー ステーションワゴン 110 (2013年10月掲載)トヨタ FJ クルーザー (2011年1月掲載)モデリスタ ランクル ネオクラシック PX10 (1997年11月掲載)
 

価格帯&グレード展開

バンが360万円、ピックアップが350万円

“70”シリーズ バン (photo:トヨタ自動車)
今回発売されたのは、4リッターV6ガソリン、5速MTのパートタイム4WD仕様。ボディタイプは4ドアバンに加えて、海外では2012年から販売されているスーパーロングボディのダブルキャブピックアップ(国内初導入)をラインナップする。
 
“70”シリーズ ピックアップ (photo:トヨタ自動車)
価格(消費税8%込)はバンが360万円、ピックアップが350万円。いずれも乗車定員は最大5人で、商用車(1ナンバー)登録になる。また、今回のモデルには、30周年記念の専用エンブレム(ボディサイド両側)や専用本革キーボックス、専用本革車検証入れなどが備わる。ボディカラーはバンとピックアップ共通で全7色。
 
オプションの電動ウインチ (photo:トヨタ自動車)
全車、オーディオやナビは販売店オプション(スピーカーと電動アンテナは標準装備)。メーカーオプションとして、前後の電動デフロック(5万4000円)、フロントバンパー内にビルトインできる電動ウインチ(18万6840円)、寒冷地仕様(4320円)を用意している。
 

パッケージング&スタイル

全長はバンが約4.8m、ピックアップが約5.3m

試乗したのはピックアップ。セミロングボディの4ドアバンに対して、こちらは全長が460mm長く、ホイールベースが450mmも長いなど、文字通りのスーパーロングボディ。そこに最大5人乗りのキャビンと最大積載量600kgの荷台を備えるほか、商用車用スチールホイールとチューブタイヤを履く超ヘビーデューティな仕様になっている。ただし、全幅はオーバーフェンダーがなく、バンより100mmナロー。
 
前述のように、2007年のマイナーチェンジでフロントまわり(ボンネットも含む)のデザインが一新されているが、全体の雰囲気は1984年に70が登場した時から、そんなに大きく変わっていない。 また、ピックアップの場合、ボディサイズはかなり巨大だが、似たような寸法のディフェンダーやハマー、ラングラーが街中でそれなり人目を引くのに対して、こちらはまったくと言っていいほど注目を浴びない。要するに見た目が小型トラックっぽいからだと思うが、これはちょっと意外だった。
 
発表会場にあった白のピックアップ。かなり貨物トラックっぽくなる
右のバンと比べると、後輪がリアドより後ろに移動しているのが分かる
こちらはバン。色はベージュマイカメタリック (photo:トヨタ自動車)
 
    全長(mm) 全幅(mm) 全高(mm) WB(mm) 最小回転半径(m)
トヨタ FJ クルーザー (2010~) 4635~4670 1905 1840 2690 6.2
ジープ ラングラー アンリミテッド
(3代目JK型、2007~)
4705 1880 1845 2945 7.1
トヨタ ランドクルーザー 70 バン (2014) 4810 1870 1920 2730 6.3
トヨタ ランドクルーザー 70 ピックアップ (2014) 5270 1770 1950 3180 7.2
 

インテリア&ラゲッジスペース

近代化されつつ、随所に80年代テイストも残る

2007年にマイチェンされたインパネ。デザインはオフロード走行時に車体の姿勢を把握しやすいように水平基調になっている
インパネも現代的にアップデートされており、今やダブルエアバッグ、パワーウインドウ(前後)、電動リモコンドアミラー(電動可倒はしない)も標準装備。シフトレバー横の無骨なドリンクホルダー(正式名はフロントコンソールボックス)も便利そう。 一方で、各部のレイアウトは昔とよく似ているし、マニュアルエアコンの操作パネルやゴム製ブーツに包まれたシフトレバー、そして灰皿などは昭和レトロな感じ。
 
ナビ(販売店オプション)は最新だが、空調パネルや灰皿はレトロ。その右はアンテナの昇降スイッチ
別体式のリモコンキーが付属する。ボタンが大きいのは手袋対策だろう。もちろん集中ドアロック連動
かなり乗用車っぽくなったシート。シートリフターはないが、ステアリングにチルト&テレスコ調整が付く
 

使える後席。乗降性も意外に良好

意外に座り心地のいい後席。ここのドア内張りにも灰皿が備わる
ピックアップで意外に良かったのが、後席の座り心地。足下は広いし、背もたれの角度はちょうどいいし、視界はいいしで、けっこうリラックスして座れる。また、パワーウインドウもほぼ全開。乗り心地はかなりバスっぽいが、空間としては不満がない。 乗降性もフロント、リア共に意外に良好。ドア開口部が広い上に、幅広のサイドステップがあるので、両手が塞がっていても、大人男性ならすんなり乗り込める。もちろん、片手でピラーのグリップに捕まれば、小柄な女性でも乗り降りは普通にできそう。
 

ピックアップの最大積載量は600kg

ピックアップの荷台長は1520mmで、軽トラック(だいたい2000mm弱)より短めだが、荷台幅は1600mmと、それより200mmほど幅広。また、最大積載量は5名乗車時でも600kgあり、軽トラック(350kg)よりかなり余裕がある。
 
バンの荷室。後席タンブル格納時の荷台長は1365mm。最大積載量は5名乗車時が350kg、2名乗車時が500kg (photo:トヨタ自動車)
リアウインドウは襖のように左右にスライドして開く
後席は背もたれが水平に倒れるほか、タンブル格納も可能(バンとピックアップ共通)
 

基本性能&ドライブフィール

日本仕様は4リッターV6ガソリン

カバーがないため、Vバンクがよく見える。ボンネットはすごく重く、かなり頑丈そう。海外向けはここに4.5リッターV8ターボディーゼル(1VD-FTV型)等が押し込まれる
試乗したのはピックアップ。クラッチペダルを一杯に踏み込んでキーを回すと、4リッターV6・DOHC「1GR-FE」型エンジンに、クククク、グォーンと火が入る。トヨタのガソリンV6と言えばこのGR系だが、4リッターは現行のFJクルーザーや150系プラドと同じで、排気量としてはGR系で最大。ただし仕様はFJクルーザー/プラド用とは異なり、VVT(可変バルブタイミング機能)が吸気側のみになるほか、最高出力はFJクルーザー/プラドの276ps/5600rpmに対して231ps/5200rpm。最大トルクは38.8kgm/4400rpmに対して36.7kgm/3800rpmと、より低回転型になっている。 クラッチは特に重くないが、それなりに踏みごたえがある。運転姿勢はややアップライトで、見晴らしは良好。視点の高さはちょうどハイエースや小型トラックと同じくらいで、宅急便のドライバーとすれ違う時には思わず、ご苦労さんです、と目で挨拶しそうになる。

1400回転くらいがスイート

ストロークの大きな、しかしゲート感覚は明瞭なシフトレバーを1速に入れてクラッチペダルから足を浮かすと、70はあっけなくユルリと発進する。エンストさせる方が難しいと思うくらいよく粘り、アイドリングを下回る700回転からでも車体を前に押し出す。 ただし1速で引っ張ると変速時にギクシャクするので、早めにシフトアップした方が何かとスムーズ。2000回転まで引っ張ってシフトアップすると1400回転にポトリと落ちる感じで、すぐに4速までシフトアップ。特に4速で1400回転、50km/hくらいでユルユル走るのが一番楽でいい。5速の1000回転(約40km/h)でもスムーズに走る。 2000~3000回転をキープすれば交通の流れをリードできるし、必要とあらば231psを発揮する5200回転まで一気に引っ張ることも出来る。ただ、3000回転を超えると、大排気量V6のエンジン音と、ウォーンというギアノイズ(懐かしい)が高まり、少々うるさくなってくる。トラックとかバスほどではないが、音質としてはあんな感じに近い。

リーフリジッドの乗り心地

乗り心地は50km/hくらいまでなら滑らかで、昔のランクルやクロカン4WD車と比べれば、ずいぶん乗用車っぽくなったと言えるかも。アッパーボディの剛性感はかなり高く、ボディがガタガタ震えることはほとんどない。 ただし、やはりサスペンションは前後リジッドで、特にリアはリーフスプリング(板バネ)のスタビライザーレスということもあり、舗装が荒れたところや、高い速度域では、それなりにユサユサ、縦揺れ、横揺れが出てきて、バスっぽい乗り心地になってくる。ユサユサ感は、明らかに先週試乗したラングラー(前後コイルスプリング)より大きい。 操縦安定性は、普通に走る分には問題ないが、リサーキュレーティングボール式のステアリングがかなりスローで、コーナーや交差点に乗用車のような感覚で入ってしまうと、ステアリング操作が追いつかずに慌てることになる。また、路面の凹凸に律儀に反応してステアリングがとられるので、それを適当にいなして走るというテクニックも、当たり前に要求される。

小回りは苦手。ピックアップはウエットグリップに注意

ピックアップはスチールホイール&チューブ式タイヤが標準(バンはアルミホイール&チューブレス)
最小回転半径は4ドアバンなら6.3メートルだが、ピックアップは7.2メートルもあり、小回りははっきり言って効かない。これは先週のラングラー アンリミテッド(最小回転半径7.1メートル)より0.1メートル大きいだけだが、70ではステアリングがスローで切り遅れがちになり、2回くらい切り返すことが多かった。慣れてくると、しっかり速度を落とし、一呼吸早めにステアリングを切るようになる。 また、ピックアップの場合は、ライトトラック用のチューブタイヤ(7.50R16LT TG21、ダンロップのSPクオリファイア)を履くため、ウエットグリップの低さには要注意。当たり前かもしれないが、これは乾燥路なら普通にグリップする一方で、ウエットグリップは極端に低く、特に白線の上では全くと言っていいほどグリップしないので、ABSが作動して制動距離が伸びてしまう。慣れるまでは余裕を持って減速しておく必要がある。
 
なお、バンの方は、アルミホイールと一般的なチューブレスの265/70R16 (ダンロップ・グラントレックAT20)を履くので、グリップだけでなく操安の印象もそれなりに違うと思われる。 80km/h巡航時のエンジン回転数は約1900回転で、100km/h巡航なら約2400回転。2000回転を越えるとエンジン音やギアノイズで騒々しくなるし、また乗り心地もバタバタし始めて、直進安定性にも気を使う。平穏に走るなら80km/hくらいがいい感じ。 ただ、馬力は231psもあるので、その気になれば速度計の上限である200km/hは無理にしても、けっこうスピードは出そう。ちなみに海外の紛争地域では安全確保のため、ある程度のトップスピードは必要らしい。

前後デフロックを装備可能。悪路走破性はFJクルーザーより上?

悪路走破性については、スペックでチェック。まず駆動方式についてはパートタイム4WD、つまり通常時はトヨタ流の表記で言うとH2(ハイモードのFR)で走り、悪路でのみ前後直結のH4もしくはL4に切り替えて走るというもの。ローモードの副変速比は2.488:1となる(ちなみにFJクルーザー/プラドは2.566:1、ラングラーは2.717:1、同ルビコンは4:1)。
 
さらに70にはメーカーオプションで前後アクスルに電動デフロックも5万4000円で装備できる。これがあるとないとでは走破性が大きく違ってくるので、極悪路を走る可能性があるなら装着しておくべきだろう。 最低地上高はバンが200mm、ピックアップはホイールベースが長い分、ランプブレークオーバーアングルを稼ぐためだろう、5mm増しの225mm。対地障害角(バン/ピックアップ)は、アプローチアングルが33度/35度、ランプブレークオーバーアングルが26度/27度、ディパーチャーアングルは23度/25度。参考までに、この項目で優秀なFJクルーザーは、それぞれ34度、28.5度、27度だ。
 
ちなみにFJクルーザーも副変速機付のパートタイム4WD車であり、オプションでリアデフロックや、電子制御デバイスのA-TRAC(アクティブトラクションコントロール)、そしてクロールコントロールも装備できる。一方、70にはABSはあるが、電子制御デバイスは一切ない。なので開発者に「FJクルーザーの走破性も(70に負けないくらい)高いのでは」と尋ねたが、「いや70にはフロントにもデフロックが付けられる」と強調された。 また、70には工場オプションで、フロントバンパー内部にビルトインできる電動ウインチ(18万6840円)も装着できる。ワイヤー長は約34メートルで、付属のリモコンで車内からの操作も可能。3本掛けなら3トンまで対応するとのこと。スタックした時にも、これで自車を引き上げることが出来る。

プレミアム指定で、試乗燃費は6.7km/L。JC08モード燃費は6.6km/L

今回はトータルで約250kmを試乗。車載燃費計がないため、満タン法で計測した試乗燃費は、いつもの一般道、高速道路、ワインディングを走った区間(約90km)が6.9km/L、そして撮影を含めたトータルでは約42リッターを消費して約6km/Lだった。JC08モード燃費はだいたい同じで、6.6km/L。 タンク容量はバンとピックアップ共に130リッターもあるので、実質6km/Lだったとしても航続距離は700km程度にはなるはず。
 
ピックアップの場合、給油キャップは鍵式でむき出しのタイプ。キャップが閉まっていなくても鍵が抜けるので、締め忘れに注意
なお、同じ1GR-FE型のFJクルーザー/プラドはレギュラーガソリン仕様だが、70はハイオク仕様になる。これは70用のエンジンが海外仕様のままだからだ(特にガソリン車の需要が多い中東向け)。カタログには「レギュラーガソリンをお使いになることもできます」とあるが、「その場合、エンジン性能を十分に発揮できません」と但し書きがつく。
 

ここがイイ

新車で買える本物のレトロ車。圧倒的な信頼性、一生モノ感など

新車で手に入るヴィンテージ。先週試乗した現行の3代目ラングラーは今どきのSUVに進化していたが、こちらは依然ワークホースそのもの。「昭和」の質実剛健なメカニズムと雰囲気を備えたクルマが、しかも「信頼の」トヨタ車で新車で買えるというのは、ほとんど奇跡。また、商品企画としても示唆するところは大きい。 今や国内では絶滅寸前のトルクフルなV6エンジン。今どき4リッターのV6ガソリンで、しかもハイオク仕様。そのリッチな低回転トルクを5速マニュアルで引き出して1500回転くらいで楽しむのは、ある意味、かなり贅沢では。トルクがあるので、ギアの一速とばし変速も可能。
 
意外に快適なリアシート。クッションを長くしたり、低反発パッドを採用するなど、シートは前席を含めてかなり改良されているようで、このあたりはちゃんと最新の基準になっている。 1ナンバーということで毎年車検にはなるが、自動車税などは安いし、耐久性と信頼性でこれ以上のクルマはそうそうない。そしておそらく純正パーツの価格も高くないはず。そして、まだ生産中のクルマであり、海外向けは当分絶版にもなりそうにないから、欠品が出るのは当分先だろう。熟年層はもちろん、20代の人が買っても、一生モノとして無理なく維持できるのでは。

ここがダメ

あくまでも今どきのSUVを基準にすると、本文でも触れたように乗り心地や操縦性は全体的にトラック的。昔の前後リーフリジッド車より洗練されているはずだが、ユサユサ感は確実にある。また、高速道路の追越車線を走るのは性能的には無理ではないが、やはり今どきのSUV的な余裕はない。 ステアリングがスローなせいもあり、曲がる度にクルクル回していると、だんだん疲れてくる。意識的に戻す作業が必要だし。ついでに言えば、5MTのシフトレバーはストロークが長くて、だんだんメンドくさくなる。そしてクラッチも最初はそんなに重くないが、これも渋滞にはまってしまうとボディブローのように効いてきそう。 ピックアップの場合、ダブルキャブゆえ荷台は軽より狭いし、荷台が高いので荷は積みにくい。ボディサイドは出っ張りがないので、ほぼ見切り通りだが、小回りが効かないから日本の狭い道では持て余すと思う。ゆえに(北海道などでは別だが)一般的な「日本の」農作業向けではない。 本文でも触れたように、ピックアップの標準タイヤは、ウエット路面では(乗用車感覚で言うと)驚くほどグリップしないので要注意。まぁ、70のピックアップを買うようなマニアなら「分かってる」話だと思うが。

総合評価

笑いが止まらない、なんてことはたぶんない

新たに開発するまでもないが、わずかながら需要がある。であれば一旦販売中止したものを復活させてしまえ。これは中小企業ならありそうな話だが、いまや巨大企業である日本の自動車メーカーがやるなど、ほぼありえないことだ。トヨタの場合、販売復活車としてはシエンタという先例がある。2003年に発売されたシエンタだが、2010年に一旦生産と販売を終え、翌年に復活した。こういう例はあるものの、販売終了後10年もたって復活するなんてことは、普通はありえないこと。その点で70は奇跡のクルマといえそうだ。ランクルの開発生産母体であったアラコがトヨタ車体と合併してちょうど10年。もしかするとこの復活劇には、そのアニバーサリー的な意味あいもあるのかもしれない。 70は国内では販売されていなかったが、海外では継続していたわけで、その間に少しずつ進化もしていた。日本で走っている70は、新しくても10年前のクルマであり、最も古いものはすでにポンコツの域に達しつつある。それゆえ、70にずっと乗り続けたいから、新車があったらまた欲しい、というマニアが2000人くらいいるはず。そんなマーケティングを誰かがしたのだろう。そして今の海外仕様なら、ほとんど手を加えなくても国内販売が可能だから、トヨタとしてもそれならば、ということになったのだろう。実際に発売してみたら想定の倍近く売れて、これは笑いが止まらない、なんてことはたぶんない。マニアックな古いクルマゆえ、売るにはそれなりに面倒が伴うはずだから。それでもマニアの手に渡るよう、手間ひまかけて再び発売してくれたことは、クルマ文化の復権を願う豊田章男社長の意思が、何らかのカタチで反映しているはず。ありがたいことだと思わねばなるまい。

本当の自由とはこういうもの

ただ一方で、来年になったら各種規制に合わなくなるから、今のうちに売ってしまえという側面をもつ商品でもあるわけで、それをどう考えるかだ。思うに、一律に規制して、こういうクルマを売れなくしてしまうことの方に問題があるのではないか、と。古いクルマが一概に全て危険ではないだろうし、排ガス問題にしても、こういうクルマの数はたかが知れている。新車優遇のためか旧車に高い税率をかけ、ディーゼルとなればヒステリックに規制する。そんなことより、こういう趣味のクルマを寛容して多彩なクルマ文化を持続させる、そんな日本でありたいと思う。 実際、この70、乗りやすさとはまったく無縁で、とにかく古臭い。久々に乗りにくいクルマだと思った。もちろんMTだし、ハンドリングにはいわゆるオツリがあるから、必要なだけ切って、必要なだけ戻すという作業をしないといけない。昔のクルマを知っていれば何とか乗れるが、若い人が初めて乗ると、そうとう厳しいのでは。それゆえ、そういうクルマを乗りこなし、オフロードでも自在に操れるようになれば、これは面白いだろう。20年も前の四駆ブームの頃、当時の70やパジェロなどの、今思えば古臭い四駆でオフロードを走るのはずいぶん楽しかったものだ。クロールコントロールの付いたランクル200なんかでは味わえない、自分でクルマを動かしてるという達成感を得られる。その分、リスクもなくはない。そんなクルマを買うのであれば、それはまさに自己責任。本当の自由とはそういうものだろう。

実用車というか、生活道具

とはいえ、実際にオンロードを走っていると、やっぱりトヨタ車だなと思うことも事実。走りにはほとんど刺激がなくて、無味無臭な感じ。この感覚はやはり70年代、80年代のトヨタ車のものだ。ジープ ラングラーやランドローバー ディフェンダーのような、良い悪いを越えた個性みたいなものは感じられない。逆に言えば、それゆえ世界で今も「実用車」として使われ続けているのだろう。世界の辺境地域では、クセがなくて乗りやすく、丈夫で、壊れてもメンテがしやすいランクル70は、実用車というか、生活道具そのもののはず。壊れたとしても取っておいた廃車からパーツを外して移植すれば、また問題なく動き出す、といったタフさが、今だに過酷な環境下の世界中で使われ続けている理由のはずだ。 先週のジープ ラングラーには軍用車的なイメージがあったが、ランクルは赤十字車両に象徴される平和な道具の印象が強い。しかしひとたび戦争となれば、丈夫で乗りやすいランクルは、十分に戦力の一つとなるのかも。そんな使われ方など、日本では将来にわたってありえないと思いたいのだが。
 

ケータハム セブン 160:新車試乗記

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キャラクター&開発コンセプト

スズキ製エンジンを積む軽規格のセブン

ケータハム セブン160 (photo:Caterham Cars)
「セブン160」は、英国ケータハム社の「セブン」シリーズに、スズキ製の軽用660ccターボエンジンを搭載した軽規格のセブン。モデル名は、ケータハム流の命名法に基づき、車重1トンあたりの馬力、約160psから由来する(正確には80ps/490kgで、約163ps)。 プロトタイプの「セブン165」は、2013年9月にフランクフルトショーでデビュー。市販車であるセブン160の生産は、英国にて2014年2月にスタートした。つまり今回のセブン160は日本専用車ではなく、欧州市場でも販売される。
 
(photo:Caterham Cars)
当初、日本では軽の自主規制値である64psの「セブン130」として2013年12月1日に発表されたが、2014年4月1日には本国仕様と同じ80psの「セブン160」として再発表された。企画・開発は日本の輸入元であるケータハムカーズ・ジャパン主導で始まったという。 いずれにしてもセブン160は、全幅を1470mmにナロー化するなど車体寸法も日本の軽自動車規格を満たしており、ナンバーは黄色ナンバー。自動車税などの諸費用も軽乗用車(5ナンバー)と同じになる。

パワートレインは現行ジムニー譲り

(photo:Caterham Cars)
エンジンは現行JB23型ジムニーのK6A型ターボを採用。現行ワゴンR等と同じ最新のR06A型でないのは、縦置き用の5速ギアボックスやプロペラシャフト等の一式も流用するためで、リアアクスルはDA64型エブリイから流用する。これらは全てスズキから正式に供給される。 最高出力は軽の自主規制64psを上回る80psを発揮。車重は490kgなので、パワーウエイトレシオは約6.1kg/psとなり、0-100km/h加速6.9秒、最高速160km/hを誇る。しかし最大の魅力は、セブンならではの痛快な操縦性だ。ケータハム社ではセブン160を「初期セブンのパイオニア精神を体現」し、「低価格で、最も環境に優しいセブン」であるとしている。 スズキから供給されるパーツ一式は、ひとまず150台分とのこと。日本では2014年9月時点で80台を超える受注があり、欧州でも税制などの点で有利な国・地域で人気があるため、すでに1年分のバックオーダーを抱えているという。 ■過去の新車試乗記 ・ケータハム セブン ロードスポーツ 200 (2011年7月掲載)
 

価格帯&グレード展開

価格は394万2000円。ウインドスクリーンやヒーターも、オプション

セブン160の価格(消費税8%込)は394万2000円。“軽自動車”としては高いが、ケータハムの現行ラインナップでは一番安い。 5速MTのみで、14インチスチールホイール&タイヤが標準。ウインドスクリーン、ソフトトップ(幌)、ドアはセットオプションで24万9000円。また、ヒーターも5万8400円のオプションになる。 その他のオプションは、トノカバー(3万3000円)、スペアホイール&キャリア(8万6400円)、サーキットロールバー(5万7200円)、4点式ロードハーネス(3万1800円)など。上級モデルで選べて、セブン160で選べないのは、6速ギアボックスやLSDなどだ。
 
今回の試乗車はオプションのウインドスクリーン、ドア、ヒーター、レザーシート等を装着した仕様
ボディカラーも自由自在。標準は無塗装アルミボディに、ノーズコーンと前後フェンダーをブラック、レッド、グリーン、イエローのいずれかで塗装するものだが、オプションでボディ全体もペイントできる。最もマニアックなのは、無塗装アルミボディのヘアライン仕上げで、作業一式で43万2000円。 なお、ケータハムの現行ラインナップ(公道仕様)は、以下の通り。現在、上級モデルのエンジンは全てフォード製で、セブン250は1.6リッター直4“シグマ”エンジン(120ps)を、中間モデルのセブン350は2.0リッター直4“デュラテック”エンジン(175ps)を搭載。セブン480は240psの自然吸気2リッターを積む“最強の自然吸気セブン”で、0-100km/h加速3.4秒を誇る。また、CSR 300はプッシュロッド式フロントサスと独立懸架式リアサスを備えたSr.6シャシーになる。 ■Seven 160   0.66L 直3ターボ(80ps) 394万2000円 ■Seven 250    1.6L 直4(120ps)    475万2000円 ■Seven 350    2.0L 直4(175ps)    583万2000円 ■Seven CSR 300 2.0L 直4(175ps)    691万2000円 ■Seven 480    2.0L 直4(240ps)    777万6000円
 

パッケージング&スタイル

ボディサイズは原点回帰

今どきの軽よりはるかに小さいセブン160。全長は他のセブンと同じ3100mmだが、これは今の軽規格(3400mm未満)よりずっと短い。また、全高に至っては1090mしかない。 全幅は、現行セブンで一般的な1575mmから、専用のフロントサイクルフェンダーとリアフェンダーを新規で起こし、軽規格枠内(1480mm未満)の1470mmに収めている。フロントトレッドはもともと狭いため、フロントのダブルウイッシュボーン サスペンションは従来通りでOK。リアはエブリイ譲りのアクスル一式を流用するため、ちょうど軽の枠に収まった格好。
 
マフラーはサイド出しで保安基準をクリア。ハイマウントストップランプはロールバーに装着
ただ、ロータス セブン(ケータハム セブンの原型)も初期モデルの全幅は1400mm前後しかなく、タイヤも細かったから、その意味ではセブン160で原点に戻ったとも言える。 ボディ構造は従来通り、スチール製パイプフレームにアルミパネルを貼ったもの。いたってシンプルだが、少量生産向きだ。
 
全長3100mm×全幅1470mm×全高1090mm、ホイールベース:2225mm
ドアを外した状態。乗員は後輪の直前に座る形になる
ドアを装着したところ。この状態がセブンで一番快適
 

インテリア&ラゲッジスペース

乗り降りや眺めは、いつものセブンと同じ

ウインドスクリーンはオプション。標準仕様は風を跳ね上げる「エアロスクリーン」のみ
ステアリングとシートを踏みつけないように、アルミパネルをまたいで左足、右足、お尻の順で運転席に体を滑り込ませるのは、これまで通り。オープン状態なら大変ではないが、幌を閉めていると、どうやって乗ったらいいかそうとう悩む。 ドアは蝶番に上から差し込まれているだけなので、簡単に脱着可能。閉める時は、スナップボタンで止めて終わりだ。鍵なんて、もちろんない。ドアを外したまま走行することもできる。
 
試乗車はオプションのレザーシート付
コックピットに収まってしまえば、意外と快適。シートは前後スライドが可能で、身長165センチ程度でも一番前に出せば、ペダルに何とか足が届く。なお、フットルームは狭く、乗り降りの際に内装を傷つける可能性があるので、ソールの硬い革靴やハイキングブーツは不可だし、だからと言って裸足もノンサーボのブレーキペダルを踏み切れないのでNG。細めのスニーカーやドライビングシューズが良い。
 
燃料計、水温計、油圧計、各種シーソースイッチ、タンブラースイッチが並ぶ。キーはダッシュボードの下に差す
ウインカーは、ダッシュボード上のタンブラースイッチで行う。手が届きやすいので、割とすぐに慣れる
モトリタ製の超小径ステアリングの奥に速度計(260km/h)、回転計(8000rpm)を配置
 

基本性能&ドライブフィール

「軽に乗っている」感がない

エンジンとミッションはスズキ製だが、インタークーラー、オイルパン、ECU制御マップなどはケータハム製になる
試乗したのは、9月にやっと日本上陸した量産初期ロットの一台。前述のような手順で運転席に体を滑り込ませ、ダッシュボード中央下のキーをひねり電源をオンにすると、イモビライザーの赤い表示灯が点滅。それが消えるのを待ってキーをさらにひねると、キュキュキュ、グオンとK6A型エンジンに火が入る。エンジン本体やサイドマフラーから放たれるサウンドはけっこう大きめで、意外や軽っぽくない。ジムニーっぽいと思ったのは、スロットルを煽った時の重々しいレスポンスや、回転落ちの遅さくらいだ。
 
かつてスズキ軽の大半を支えたK6A型エンジン(今はジムニー、エブリイ、キャリイ等のみ)。直列3気筒DOHC・4バルブ・ターボ、ボア×ストローク:68.0×60.4mm
ジムニーと同程度に軽いクラッチペダルを離すと、セブン160は軽々と動き出す。気難しさはまったくない。ステアリングはもちろんノンパワー、いわゆる“重ステ”だが、据え切りでも全く重くなく、むしろ飛ばした時の方が重さを感じる。ロックtoロックは約1.8回転とのこと。 5速MTのシフトレバーは、ジムニー用のシャフトを切り詰めているため、シフトストロークが異様に短く、操作力も重め。シフトストロークの短さで定評のあるモデル(例えばホンダ ビートやS2000、マツダ ロードスターなど)と比べても短く感じる。ただし、ゲート感覚は明瞭で、今回の試乗中にもミスシフトは一度もなかった。

車重はジムニーの半分。カプチーノより200kgも軽い

運転席からでもサイクルフェンダーの動きがよく見える
エンジンは2000回転でも粘るが、自然と3000回転以上をキープすることに。そのあたりの中回転域では、トルクフルで非常に乗りやすい。660ccの非力感はなく、走りだした瞬間から“軽”であることを忘れる。 エンジン、ミッション等は現行JB23型ジムニー譲りで、リアアクスル一式はDA64型エブリイ譲り。5速MTのギア比も、ジムニー/エブリイと全く同じだ(1速5.106、2速3.017、3速1.908、4速1.264、5速1.000)。ただし、最終減速比はジムニー/エブリイの4.300では低すぎるだろうとのことで、3.909のファイナルをスズキが用意してくれたらしい。どうやら、何かの輸出モデル用のファイナルギアを復刻生産したようだ。
 
タイヤは155/65R14と細め。伝統の英国Avonだが、ごく普通のZT5というコンパクトカー用タイヤ
最高出力は本来の64psから80psに25%アップ。最大トルクは107Nm (10.9kgm)。3000~4000回転くらいのトルクフルな感じはジムニーに似ているが、速さはもちろん段違い。なにしろ車重はジムニーの半分しかなく、バブル期の軽スポーツ「ABC」3兄弟(AZ-1、ビート、カプチーノ)で一番軽量だったカプチーノ(690~700kg)と比べても200kg、つまり大人3人分も軽い。 パワーウエイトレシオはトヨタ 86(6.2kg/ps)と同等の6.1kg/ps。また、0-100km/h加速は86(6MTで7.6秒)を上回る6.9秒を誇る。まぁ実際には、そこまでの体感的な速さはないが。そもそも風の巻き込みがほとんどないドア装着状態で走っても、スピード感は「普通のクルマ」に比べて尋常ではなく、少なくとも公道では、常識的な速度で満足できてしまう。

ドア無しで走るとノーヘルバイク状態

5速トップでの100km/h巡航は、約3600回転くらい。軽でおなじみの140km/h速度リミッターはなく、最高速は160km/hとのこと。そこまで出すと、風の巻き込みとか、どうなっちゃうんだろうか。 それでも、ドアを付けた状態なら100km/hでも意外に穏やかなもので、けっこう快適。逆にドアなしで走った場合は乱流が激しく、風切り音や排気音が暴力的に高まり、非常に疲れる。まさにノーヘルでバイク状態。ドア無しで高速道路を走るなら、最低でもゴーグル、出来ればシールド付のヘルメットが要る。 なお、オプションでビニール製の幌も装着できるが、なるべく雨の日には乗りたくないもの。天候を選ぶところは、オートバイに近い。

フロントは軽快。路面のギャップは苦手

ハンドリングに関して、まず何より楽しいのは、フロントの軽快な動き。小径ステアリングを45度ほど切ると、目の前に見えるサイクルフェンダーが動き、続いてノーズがスーッと、あるいはズワっとインを向く。これはセブンならではの面白さで、何度やっても飽きない。また、セブン160の場合はエンジンが軽く、タイヤが細い分、フロントの動きはより軽快かも。 一方、160独特のところは、リアの動きが意外に重々しいこと。基本的にはステアリングを切って切って曲がっていくアンダーステア傾向で、上手な人がサーキット等で乗らないとスライドには持ち込めなさそう。ブレーキを遅らせてもリアが出る素振りはなく、むしろフロントがロック気味になり、アンダーが強まる。逆に言えば、スピンしそうな気配はなく、かなり安定サイド。
 
なお、ホイールベースは他の現行ケータハムと同じ2225mmで、トレッドとの比率から言うと、かなりロングホイールベースであるのも、ハンドリングに影響しているはず。ちなみにカプチーノはたった2060mm、初代NA型(ユーノス)ロードスターでも2265mmだ。 また、途中、2名乗車でワインディングを走ってみたら、車体が落ち着き、トラクションもかかって、より楽しく走ることができた。前後重量配分は49:51(240kg+250kg)とのことだが、もう少しリア寄りの方が、あるいは前後にもっと荷重が掛かった方がバランスがいいのかもしれない。
 
フロントはケータハム製のダブルウイッシュボーン。ダンパーはビルシュタイン製
少し気になったのは、ギャップへの対処。フロントはさすがケータハム自慢のダブルウイッシュボーンで、まったく問題ないが、リアは一瞬鋭く突き上げたりしてドキッとする。リアサスは現行セブンで主流のド・ディオン式リジッドではなく、エブリイ譲りのライブアクスル・リジッドになる。 ブレーキはノンサーボ(真空倍力装置なし)で、フロントがAP製キャリパーのディスク、リアはドラム。普通に走る限り、問題なく止まってくれるが、さすがにサーボ付のような初期制動力はなく、下り坂などでブレーキが遅れた時にはドキッとする。また、タイヤが155/65R14と細い上、フロント荷重が小さいせいか、けっこうロックもしやすい。もちろん、ABSなんてものはない。

燃費はかなり良さそう

タンク容量は36リッターと大きい。指定燃料はオクタン価95+以上ということで、プレミアムになる
今回は試乗燃費は取っておらず、JC08モード燃費も未発表。そこで参考ながら、同じK6A型ターボエンジンを積むスズキ車のJC08モード燃費を見てみると、現行JB23型ジムニーの5MT車(車重980~990kg)は14.8km/Lで、DA64型エブリイの2WD・5MT(車重930kg)は16.4km/Lだ。 また、同じくK6A型ターボを積む後期型カプチーノ(EA21R型、1995~98年、車重690kg)は、10・15モード燃費で20.0km/L。セブン160の場合、空気抵抗は大きいが、車重が490kgと超軽量な上、パワステやエアコンもないので、実用燃費はかなり良さそうだ。
 

ここがイイ

軽自動車感のない初めての軽スポーツ

軽らしさを感じさせない乗り味。運転席に座った瞬間から軽自動車に乗っている感がなく、走り始めると「軽」ではなく、「セブン」に乗っている感がさらに強まる。軽自動車という感じがしない初めての軽自動車。 ドアを装着して走れば、かなり快適と言っていいこと。ドライバーに牙を剥くほどのパワーもないから、安心感もある。そして燃費もいい。車両価格はそれなりにするから、エントリーモデルというよりツーリングに気楽に行けるセブンという感じか。 スズキの量産エンジンを使うという商品企画としての面白さや将来性。日本人にとっては、まさに身近なエンジンであり、スズキ製そのもののパワートレインに関しては、全国津々浦々のモータースでもメンテナンス可能だろう(専用のダイアグによる故障診断などディーラーでしか出来ない部分はあるが)。 そしてなんといっても、プリミティブなスポーツカーらしさ。ドアを外して乗った時のむき出し感、カートのような低さ、重くダイレクトなステアリング。決して簡単ではない操作が、走る実感をバイクのように否応なしに押し付けてくる。これはセブンだけが残している「クルマの本質」という部分だろう。

ここがダメ

冷静に考えると、軽である必然性が弱い

冷静に考えれば、車両本体の400万円に、もう100万円出すと1.6リッターの普通車セブンが買えるわけで、「セブンだけど軽」という心情的な気楽さ、面白さ、家族など周囲へのエクスキューズが、選ぶときの理由として大きいクルマではある。 試乗車はドアを付けた状態で走ると10月初旬の涼しい日でも、走行中はかなり暑くなった。ヒーターに温度調整などというものはなく、基本的にオン/オフしかないが、オフにしても中のフラップが閉じるわけではないので、ヒーターコアの暑い空気が走行風に押されて車内に入ってきてしまうようだ。おそらく冷却水がヒータコアへ循環しないようにすれば(室内に開閉弁があるようだ)、大丈夫だと思うが。 ものすごく面白い反面、昨今のよく出来たスポーツモデルと比べると、走りはかなり体育会系。昨今のクルマをテニスとするなら、試乗車の場合はラグビーとかだろうか。か弱い男子や婦女子にはとても薦められない。

総合評価

30年前のリベンジ?

もう30年ほども経つだろうか。愛知県は知多半島の付け根にある東海市に、ある中古車屋さんがあったが、当時そこの社長はなかなかのやり手で知られていた。その頃、はっきりとは覚えていないが、その店がホンダディーラーになった頃だったと思う、50ccミニカーがブームになり、社長は一台のミニカーを作った。それは“スーパーセブン”そっくりの50ccミニカーだった。もちろんロータスやケータハムのライセンスはないが、それはまさにセブンの雰囲気を伝えるマシンで、知り合いがその広報をしていたこともあり、当時取材に行った記憶がある。残念ながら乗った記憶はないのだが、カッコよさはなかなかのものだった。当時は本物のセブンなど高嶺の花というか、若造には現実感のない乗り物だったが、これなら買えるかも、なんて思ったりしたものだ。このクルマが何台売れたのか、儲かったのか、あるいは損したのかは知らないが、そんなクルマが30年も前に愛知県で作られたのだった。 当時、富山県の光岡自動車も、同じようなクラシックスタイルの50ccミニカーを作っていたが、それから10年ほどたってミツオカはセブンそっくりのゼロワンを作り、国内10番目の自動車メーカーとなってしまった。オロチなど、ミツオカのその後はよく知られているが、この50ccケーターハムを作った会社がどうなったかはあまり知られていない。いや、実はものすごく知られている。この会社こそ独立系のホンダ販社「ホンダベルノ東海」で、後に現在の上場企業「VTホールディングス」となった。その社長が今も現役GT300クラスレーシングドライバーでもある高橋一穂氏であり、高橋社長が若き日に作ったのが、50ccのセブンだったのだ。
 
VTホールディングスはホンダ、日産、フォードといった数多くの国内ディーラーを始め、海外でのディーラー展開や中古車輸出、ロータスやノートン(2輪車)の輸入元、レンタカーから不動産までと多角的にビジネスを展開している。名古屋界隈では、ここ30年で最も成功した自動車販売業者と言える会社だ。 さて、ケータハムの輸入元であるケータハムカーズ・ジャパンは、セブン160の開発に大いに関わったという。しかし小さな会社では、金ばかり食う車両開発など簡単にできるわけもない。これを支えたのが親会社の理解だろう。ケータハムカーズ・ジャパンはエスシーアイという会社で、そしてこの会社はVTホールディングスの100%出資子会社である。これで見えてくるものは…、セブン160こそ、高橋社長による30年前のリベンジ、そしてトップダウンで作られたもの、なのではないか。あくまで想像だが、そんなふうに思えてくる。

スズキにとっても格好の実験素材

もちろん、動力部分を供給しているスズキもまた、たいしたもの。鈴木修会長以下、いい意味で中小企業魂があるスズキゆえに、こういうことができたのだろう。また、スズキ自身も本当はこういう軽スポーツを作りたいのではないだろうか。もちろんビジネスとして難しいのは分かっているが、そんな気持ちが裏に隠れたトップダウンがここでもあったのではないか、などとこれまた想像してしまう。 むろん担当者レベルでは大変な努力があったはずだが、今回はトップが理解しているからこそ、こんな夢のようなクルマが出来上がったわけだ。しかも、自主規制である64psの壁が、例外的にせよ破られた。もうちょっとパワーを出せたら軽自動車はすごいものになるとは思っていたが、それをこのクルマは実際に思い知らせてくれる。まったく軽自動車らしくないパワー感は、もちろん車重の軽さも効いているわけだが、スポーツカーとして不満のないところでは。また、セブン160はスズキにとっても格好の実験素材になるだろう。このエンジンで往年のフロンテクーペあたりをリメイクしたら、それこそもう即買いなのだが。 そんな奇跡のように出来上がったセブン160だが、価格ばかりはいかんともしがたい。庶民には手が出しづらい軽自動車だ。とはいえ、ちょっとしたお金がある人なら、案外高くないのかもしれない。お金持ちはシビアだから、あまり乗らない普通車の維持費はすごい無駄に思えるはず。しかしセブン160はなんといっても軽自動車だから、維持費はお金持ちにとってゼロにも等しい。という意味で、まさに「おもちゃ」として買えるだろう。庶民には高値だが、お金持ちにとってはおもちゃ。それによって成り立つ、これがセブン160というクルマだ。 かくして庶民には高すぎるこの価格も、それゆえこのクルマが経営的に成立するとしたら、悪い話ではないと思う。量販で採算がとれるとも思えないコンセプトだし。今のところ生産予定は事実上150台ということなので、お金持ちはぜひ買っておいて欲しい。そしていずれ庶民のために手放してもらいたいものだ。

ベーシックな軽スポーツぞ、い出よ

50ccのセブンが作られた時代から、軽という絶対的な大衆車にスポーツカーがあったらいいなと思ってきた。それこそがスポーツカーの大衆化だ。バブルの頃、ホンダ ビート、スズキ カプチーノ、マツダ AZ-1というクルマがあって、そんな夢が実現してきたと舞い上がったが、結局のところ後継車はないまま。しかしこれらは今も根強い人気がある。 それを受けてか、最近は軽のスペシャリティがやっと出始めた。先日乗ったダイハツ コペンあたりはいいセンを行っているし、まもなく新しいホンダの軽スポーツも出る。とはいえ、それらはセブン160ほどではないが高価で、そこがちょっと残念だ。つまりは、あまりお金のない老いも若きもが、クルマの楽しさを味わい尽くせる、量産型で安価、ベーシックな軽スポーツぞ、い出よ、ということ。もちろんそこには80ps程度のエンジンを願いたい。「こういった楽しいクルマをスズキやホンダあたりが作れないものなの」というレーシングドライバー高橋社長からの密かなメッセージが、セブン160には込められているのかもしれない。むろんこれも想像だが。
 

MINI クーパー SD クロスオーバー:新車試乗記

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キャラクター&開発コンセプト

日本向けMINIでは初のクリーンディーゼル

今回マイナーチェンジしたMINI クロスオーバー (写真は海外仕様 クーパーS ALL4) (photo:BMW AG)
MINI クロスオーバー(R60型、欧州名MINI カントリーマン)は、欧州では2010年春、日本では2011年1月に発売された4ドアモデル。また、2013年にデビューしたペースマン(R61型)は、それを2ドア化した兄弟車だ。 そのクロスオーバー/ペースマンが日本で2014年9月8日にマイナーチェンジし、同時に国内向けMINIでは初のディーゼルエンジン車が追加された。 搭載されるディーゼルエンジンは全て2リッターだが、チューンは2種類あり、クーパーDでは112ps(82kW)と27.5kgm(270Nm)を、高性能モデルのクーパーSDでは約3割増しの143ps(105kW)と約1割増しの31.1kgm(305Nm)を発揮する。

燃費は従来ガソリン車より約2割アップ

同時に、DPF(粒子状物質除去フィルター)やNOx(窒素酸化物)吸蔵還元触媒等を採用することで、日本のポスト新長期規制をクリア。いわゆる“クリーンディーゼル”ということで、取得税および重量税は免税、自動車税は75%減税になる。 JC08モード燃費は、クーパーDで16.3km/L、同ALL4(4WD)で15.6km/L、クーパーSDでは16.6km/Lを達成(全車6AT)。従来ガソリン車と比較すると、2割ほど(それぞれ16.4%、22.8%、18.6%)向上しており、加えて燃料単価が安い軽油であることも魅力になる。 なお、日本車からもマツダのアクセラ、デミオと、コンパクトクラスのクリーンディーゼル車が登場しているが、輸入車のコンパクトクラスでは今回のMINI クロスオーバー/ペースマンが初のクリーンディーゼル車になる。 ■過去の新車試乗記 ・MINI ワン クロスオーバー (2011年4月掲載) ■過去の新車試乗記(クリーンディーゼル車) ・マツダ アクセラ スポーツ XD (2014年3月掲載)マツダ アテンザ XD (2013年2月掲載)BMW 320d ブルーパフォーマンス (2013年1月掲載)マツダ CX-5 XD (2012年5月掲載)
 

価格帯&グレード展開

ディーゼルは全て6ATで、341万~387万円

今回試乗したのは高性能版のクーパーSD 車両協力:MINI名古屋名東
今回導入されたディーゼル車はクロスオーバーが3モデル、ペースマンが1モデルの計4モデルで、すべてAT車(トルコン6AT)。 価格はクロスオーバーおよびペースマンのクーパーD(FF)が341万円、クロスオーバーのALL4(電子制御4WD)が362万円、高性能版のクーパーSD(FF)が387万円。 なお、従来1.6リッターガソリンターボを搭載していたクーパー ALL4の6AT(6MTはNAで、6ATだけターボだった)や、クロスオーバーのクーパーSはドロップした。JCWモデルに変更はない。現行ラインナップは以下の通り。
 
【クロスオーバー】 ■One    1.6L(98ps、153Nm)・・・275万円(6MT) / 288万円(6AT) ■Cooper   1.6L(122ps、160Nm)・・・308万円(6MT) / 321万円(6AT) ■Cooper D    2.0Lターボディーゼル(112ps、270Nm)・・・341万円(6AT) ■Cooper D ALL4 2.0Lターボディーゼル(112ps、270Nm)・・・362万円(6AT) ■Cooper SD   2.0Lターボディーゼル(143ps、305Nm)・・・387万円(6AT) ■JCW ALL4    1.6Lターボ(218ps、280/300Nm)・・・460万円(6MT) / 477万円(6AT) 【ペースマン】 ■Cooper    1.6L(122ps、160Nm)・・・308万円(6MT) / 321万円(6AT) ■Cooper D    2.0Lターボディーゼル(112ps、270Nm)・・・341万円(6AT) ■Cooper S    1.6Lターボガソリン(184ps、240Nm)・・・362万円(6MT) / 375万円(6AT) ■JCW ALL4    1.6Lターボ(218ps、280/300Nm)・・・460万円(6MT) / 477万円(6AT)
 

パッケージング&スタイル

デザイン変更はごくわずか

BMWは“モデルチェンジ”と呼ぶが、今回はあくまでマイナーチェンジで、デザイン変更はごくわずか。ボディサイズも同じで、クロスオーバーの場合は全長4105mm(試乗したSDは4120mm、JCWは4145mm)×全幅1790mm×全高1550mm、ホイールベース2595mm。ペースマン共々、もはや“ミニ”じゃないという意見もあるが、これでもゴルフ7より全長は100mm以上短く、全幅は10mm狭い。
 
外観デザインの変更点は、例えばフロントグリルが、クーパーでは3つだった横桟が1つになり、クーパーSでは横桟なしから横桟1つになった、という具合。またフォグランプもLED化されたようだ。 また、ガソリン車とディーゼル車の見分け方は、リアエンブレムの「D」もしくは「SD」バッジの有無くらいで、それよりエンジン音を聞く方が手っ取り早い。
 
なお、試乗車はオプションのブラック・デザイン パッケージ装着車で、ヘッドライトがブラック・リフレクターとブラック・リング付になるほか、アンダーガード風フィニッシャー、18インチホイール等が装着されている。ボディカラーはブレイジング・レッド(メタリック)。
 

インテリア&ラゲッジスペース

内装もほぼ従来通り。R56と同じ意匠が残る

センターメーター(速度計)や円盤型キー、ウインカーレバー先端を回すタイプのライトスイッチなど、R56型と同じ意匠が残る
インテリアの変更点もごくわずか。センターメーター(速度計)および回転計の文字盤が、従来の白から黒系(アンスラサイト)に変更されたほか、インテリア・サーフェス(加飾パネル)の面積が若干拡大された程度。また、3年前の発売当初はクロスオーバーでも4人乗り(後席がラウンジシートになる)を選べたが、現在は5人乗りのみ。ペースマンは従来通り4人乗りのみだ。 主力のF56型3ドアモデル(先日5ドアも追加された)では、速度計がドライバー正面に移動したが、クロスオーバーでは従来のセンター配置のまま。ただし、速度はドライバー正面の回転計内にデジタル表示できるので、これはこれで困ることはない。ナビゲーションシステムは従来通り、販売店オプションになる。
 
ヒップポイントはセミトールワゴン風に高く、着座姿勢はアップライト。乗り降りも自然にできる
iPhoneホルダーや眼鏡ホルダー等をワンタッチで脱着できるセンターレールは標準装備
 
現在、クロスオーバーは5人乗りのみ。ただし中央席をアームレストにすれば2人掛け風になる
背もたれは40:20:40の可倒&リクライニング機能付で、座面は60:40で前後に13cmスライド可
 
トランク容量は後席位置によって350~450Lで可変。床下収納もある
後席格納時はほぼフラットになり、容量は最大1170L。フロア奥行きは150センチ程度
 

基本性能&ドライブフィール

2000~4000回転でほぼ全域をカバー

試乗したのは「クーパー SD クロスオーバー」(387万円)。円盤型キーをダッシュにカシャッと差し込み、その隣のボタンを押すと、キキッとスターターが回り、ガラガラガラと紛うことなきディーゼルエンジンの音が響き始める。いや、これは窓を開けている時で、車内はグッと静かだが、やはりステアリングには微振動が伝わってくる。
 
1995cc・直4ディーゼルターボは、カプセル状のエンジンルームに搭載される。下の写真はエンジンカバーを外した状態
このエンジンは、基本的にはBMWの320dやX3 20d、523dなどと同じN47型ユニットの横置き・デチューン版。それらは184psと38.7kgmを発揮するが、クーパーSDでも最高出力143psをわずか4000rpmで、最大トルク31.1kgm(305Nm)を1750-2700rpmで発生する。 アクセルを踏み込めば、グォーーッという力強い音と共に分厚いトルクが立ち上がり、試乗車で1420kgのボディを軽々と動かす。そして3000回転くらいかなと思って回転計に目を落とすと、わずか2000回転しか回っていない。そんな具合に加速中以外は、だいたい2000rpmくらいのことが多い。 だからここ一番の時でも、3000回転も回せば十分。その気になれば4000回転以上までスルリと回り、時に4500回転くらいまで回るが、そこまで回す必要は滅多にない。このエンジンはほとんど全ての仕事を2000回転から4000回転でこなしてしまう。
 
また。6速ATの変速プログラムは、仮にマニュアルモードでも1800回転以下に落ちるようなシフトアップや、4000回転を超えるようなシフトダウンを拒絶する。パドルシフトも付いていたが、ほとんど必要ないと思った。 ゆえに80km/h巡航は5速で2000回転、100km/h巡航は6速で約2000回転。そして150km/hには3000回転で、最高速(UK仕様、6AT)の196km/hには4000回転弱で到達するはず。パワーウエイトレシオは約10kg/psに過ぎないので、追越加速に鋭さはないが、マラソン選手のように穏やかな呼吸のまま、ズンズン増速していくのが実に頼もしい。

段差への対応はやや気になる点

試乗車のタイヤはオプションの225/45R18(BSのデューラーH/P スポーツ ランフラット)。タイヤのグリップに不足はなく、ロードノイズもうるさくない
一方で、どう表現すればいいか難しいのがシャシー関係。一般的な道路を一般的な速度で走る限り乗り心地はスムーズだが、段差や荒れた舗装に遭遇すると、かなり鋭いハーシュネスが発生し、ステアリングにもドキッとするくらいのキックバックが入る。特に試乗車の場合は、クーパーSDに標準の205/55R17ではなく、オプションの225/45R18タイヤ(BSのデューラーH/P ランフラット、ポーランド製)を履いていたことが関係しているかもしれないが。 ハンドリング自体は悪くなく、と言って、山道を走らせて面白いタイプではないが、DSCを作動させながら破綻なく走ってくれる。特に低速コーナーからの脱出時に、パンチのあるトルクでグワッと立ち上がってくれるところは快感。これは交差点などから普通に加速する時でも味わえる。 直進安定性は、この手のクロスオーバーSUVとしては平均的なところ。風切り音は徐々に高まるが、ロードノイズは静か。エンジン音も速度に関係なく一定で、気にならない。ただ、スタイル相応に腰高感があるのと、舗装が荒れたところでのマナーはやはり気になる点。

試乗燃費は12.7~18.0km/L。JC08モード燃費は16.6km/L

今回はトータルで約250kmを試乗。車載燃費計による試乗燃費は、いつもの一般道、高速道路、ワインディングを走った区間(約90km)が12.7km/L、郊外の一般道や高速道路を走った区間が16.4km/L、高速道路の80~100km/h巡航区間が18.0km/Lだった。タンク容量は47リッターなので、高速道路なら無給油で600~700kmくらいは行けそう。
 
給油リッドには、これでもかというくらい「軽油」の注意書き
JC08モード燃費は、クーパーDが16.3km/Lで(ALL4は15.6km/L)、クーパーSDが16.6km/Lと、よりパワフルなSDの方がなぜか少し良い。DとSDのギア比は全く同じで、車重も大差ないので、空力や転がり抵抗の差だろうか。 なお、資源エネルギー庁の発表(10月8日時点)によると、全国の平均燃料価格は、ハイオクが176.8円、レギュラーが166.0円、軽油が144.4円。つまり、あくまで現時点だが、軽油はハイオクと比べて約18%安く、レギュラーと比べても約15%安い、ということになる。
 

ここがイイ

ディーゼルらしくトルクフルなエンジン

いかにもディーゼルらしく、中回転域でトルクフルな2リッターディーゼルエンジン。BMWの320dなどに比べるとデチューンされているが、エンジン自体のパフォーマンスは十分。マツダのCX-5やアテンザ、アクセラが積む2.2ディーゼルは思ったほど低回転でドカンとトルクを出すタイプではなく、ガソリンエンジンのようにスムーズに高回転まで回るタイプだが、それとは対照的。どちらがいいかは好みだが、ディーゼルらしさで言えば、BMWの方が味が濃い。

ここがダメ

荒れた路面への対処

エンジン自体はディーゼルエンジンとして文句なしだが、本文で触れたように、段差や荒れた路面などへの対処は、仕様にもよるが、乗り手の好みをかなり選ぶと思えた。320dやCX-5 XDであれば、シャシーに関しても好みを超えた説得力があるのだが。 ナビシステムは従来モデルや先代R56型同様、センターメーターに組み込むタイプのものが日本仕様にはなく、ディーラーオプション等で取り付けることになりそう。BMW車ではiDriveで操作する車載ナビの標準装備化が進んでおり、また新しいF56型MINIもその方向にあるだけに、ちょっと古さを感じてしまう部分。もちろん、スマホナビで十分という人には関係ない話だが。

総合評価

バリエーションの多さはクラシックMINI譲り?

パッと見、正直なところ、やはり大きいなぁ、このMINI、と思う。まあこれはクロスオーバーが出た時にも思ったし、もっといえばクラシックミニがMINIになった時にも思ったこと。いまさらそれを言っても仕方ないことではある。ただ、クロスオーバーの場合、デビューから3年たっても側面にドアが4枚あるスタイリングが、いまだ目に馴染んだ気がしないのだが……。 しかしまあ考えてみればクラシックミニだって、ずいぶんとバリエーション豊富なクルマだったから、現代のMINIがそうであっても何らおかしくはない。クラシックミニには、ワゴン、バン、トラック、そしてライレーやウーズレーのような3ボックスセダンなど、ボディタイプが豊富にそろっていた。さらに、コーチビルダーの手でオープンも作られ、モークというバギー車っぽいというか、ジープ風のクルマまでが作られた。となれば、現代のMINIはクーペやロードスター、クロスオーバーまでが出そろって、バリエーションがクラシックミニ並になってきたということか。枠にとらわれず自由なのがMINIというクルマのいいところで、クロスオーバーに馴染めないないなどというのは、ジジイの戯言かもしれない。
 
あと、現行MINIに不足してるとしたら、MINIより小さいMINIだろう。そう言えばクラシックミニにも、日本の業者がクラシックミニのボディを切断して中抜きでつなぎ、超ショートホイールベースにした「ミニミニ」という一種のジョークカーがあった。さしずめ3年前に発表されたMINIのロケットマンコンセプトがそれに近いだろうか。スマートやiQがビジネス的にもう少し成功すれば本当に市販されるかも。もはやなんでもあり、がMINIだ。 とにもかくにも、一つの車名やブランドを使ってバリエーションを増やしていくのは、欧州車においては今や確信的かつ定番なやり方になってきているようだ。元来スポーツクーペであるはずのアウディTTですらが、新型では5ドアハッチバック、さらにはクロスオーバーSUVといったボディタイプまでショーに登場してきている。これはさすがに勘弁してくれと思うのだが、考えてみれば全く新しいクルマを作るより、こうしたバリエーションの増殖の方が、ビジネス的には比較にならないほど低リスクということなのだろう。かくしてTTのセダンとかTTのトラックも作られるのだろうか(苦笑)。こういうのはなぜか日本車では真似していないところでもある。

トルクを得ながら、セーブマネー

さて、日本においてはいよいよこれからと言ってもいいクリーンディーゼルをコンパクトSUVに載せて、MINIというデザインテイストとブランドで包むこのクルマには、間違いなく一定の需要がある。特にトルク感に関しては、昨今多い小排気量ガソリンターボより明らかに豊かだから、高回転まで使って飛ばさない人が多い日本市場では好ましいと思う人が少なくないだろう。排ガスのクリーンさも、もはや問題ないのであれば、高くてもこちらを買いたいと思う人は少なからずいるはず。こうして日本でも何割かのクルマがクリーンディーゼル車に置き換わることは、原油を効率的に利用するにあたってガソリン一辺倒にならないという点でも悪いことではないはずだ。
 
そのクリーンディーゼルに関してだが、まず経済性というか、安く乗れるかについて。以前試乗したMINIクロスオーバーのベーシックなワン(ガソリン車)の試乗燃費が9.8km/Lで、今回の試乗車は12.7km/Lだった。ハイオクガソリンが170円、軽油が140円で単純に比較すると、1kmあたりガソリン車は約17円 ディーゼル車は約11円となる。かなりの差だ。クリーンディーゼルの場合は様々な助成金もあるから、こと日本においては車両価格差は、ある程度の距離を走ればすぐに元がひける。ディーゼルのトルクを得ながら、さらにセーブマネーとなるわけで、試乗車で感じた多少の振動や音を気にしないのであれば、予想されるさらなる消費増税でますます高まりそうな燃料費を考えると、悪くない選択ということになる。 一方で環境面については、ディーゼル先進地域である欧州では都市部を中心にネガティブな報道も出始めている。PM2.5よりもっと細かいPM0.5という物質も問題になってきているようだ。ディーゼル車比率が半分以上ともなれば、さすがにそれに伴う問題も出てくるだろう。CO2は確かに減っているのだが、それだけが全てではないということ。世の中の事象で、どちらかが絶対に正しいということはないと思うので、ガソリン車もディーゼル車もいいところを認め、バランスよく使い、共にさらにクリーンになっていくということが重要だ。
 
日本の場合は、石原元都知事のヒステリックなキャンペーンもあって、乗用車のディーゼル比率は極端に低くなった。この反ディーゼルキャンペーンでは、一気に一つの方向へ振れてしまう国民性みたいなものを感じてしまった。クルマはもちろん、人間の存在自体も、絶対的に環境に優しいものではないのだから、重要なのはバランス感覚だろう。そうでないと、危険で環境に悪いクルマというものは規制してしまえ、などという極論がまたぞろ出てこないとも限らない。新聞など大手マスコミは70年代、80年代にそれに近い論調でクルマタタキをしてきたように思う。今ほんとうに大事なのは、世界的規模で持続可能で平和な社会を作ること。クルマ、そして移動する自由こそは人にとって、なくてはならないものなのだから。そういう意味でこのクルマがもっと売れ、極端に走りがちな日本でも、クリーンディーゼル車比率がもう少し高い、バランスのとれた社会になってもらいたいものだ。
 

レクサス、新型車「RC」「RC F」を発売:MOTOR DAYS ピックアップニュース

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トヨタは2014年10月23日、レクサスの新型スポーツクーペ「RC350」と「RC300h」、および高性能クーペ「RC F」を発売した。中部地区での発表会が行われた同社の名古屋オフィス(ミッドランドスクエア内)からリポート。

「エモーショナルな走り」を象徴するモデル

レクサス RC開発主査の草間栄一主査
レクサスブランドにおいて「エモーショナルな走り」のイメージを牽引すべく投入されたのが、今回のRCとRC F。レクサスとしては4年前に販売終了したSC以来の、そして現在唯一のクーペ専用モデルになる。レクサス インターナショナルの山本 卓氏は、久々にクーペを投入した理由について「クーペを(ラインナップに)持っているのはラグジュアリーブランドとしては常識」とする。 「アヴァンギャルドクーペ」をテーマにしたRCの外観デザインは、2013年の東京モーターショーで初公開された時とほぼ変わらず。スポーツクーペらしい優美なスタイルに、例のスピンドルグリルも自然に収まるなど、高い完成度を見せる。 ボディサイズは全長4695mm×全幅1840mm×全高1395mm、ホイールベース2730mm。プラットフォームはフロント部がGS、センターフロア部がオープンボディ用に剛性の高いIS C、リアがISをベースに開発したもので、実質的にRC専用開発だ。
 
レクサス RC300h
内装に関してはサポート性を高めるために表皮一体発泡シートを標準装備。また、NXに続き、タッチパッド式のリモートタッチを採用した。 ラインナップは、自然吸気3.5リッターV6エンジン(318ps、38.7kgm)+8速ATの「RC350」と、2.5リッター直4エンジン+モーター(システム出力220ps)のハイブリッド車「RC300h」の2モデル。JC08モード燃費はそれぞれ9.8km/L、23.2km/L。また、スポーティな“Fスポーツ”も用意されている。

RC Fは477psの5リッターV8を搭載

レクサス RC Fと矢口幸彦 主査
一方、RC Fは、普通のRCとは一線を画し、「高性能クーペ」「本格的プレミアムスポーツカー」を謳うモデル。その開発テーマは、「走りを楽しみたい人なら誰でも、運転スキルに関係なく笑顔になれるスポーツカー」。IS Fに続き、RC Fの開発主査を務めた矢口幸彦氏は、「サーキットは公道の延長線上であり、高性能を安全に楽しめる場所」とし、「全てのドライバーにこのクルマの醍醐味を感じていただけるよう設計した」と言う。
 
ブレーキキャリパーは前後ブレンボ製のモノブロック。フロントは対向6ピストン、リアは対向4ピストンで、ディスク径もそれぞれ380mm、345mmと大きい
RC Fのエンジンは先ごろ生産終了したIS F用ユニットを改良し、最高出力を最終モデル特別仕様車比で47psアップした自然吸気5リッターV8(477ps、54.0kgm)。トランスミッションもIS Fと同じ8速ATだが、変速時間を0.1秒に短縮したほか、各種走行モードをさらに改良したという。また、FR車では世界初という駆動力制御システム「TVD(Torque Vectoring Differential)」も採用されている。ちなみにJC08モード燃費は8.2km/L。 RCをベースとするものの足回りは専用設計。矢口氏によれば、最初に目標とする性能に合ったタイヤ(前255/35ZR19、後275/35ZR19)を決めてから、シャシーを開発したという。ベンチマークは市販車ではなく、IS Fベースで開発されたレーシングカー、IS F CCS-R(サーキットクラブスポーツレーサー)だったとのこと。
 
レクサス RC F
ボディサイズはRCとの比較で、全長が+10mm、全幅が+10mm、全高が-5mm。エクステリアでは専用デザインのフロントグリル、バンパー、フロントフェンダー、速度感応式リアウイング等を採用。フロントフェンダーのエアアウトレットと一体になったサイドロッカーモールも専用品。マフラーはIS Fを彷彿とさせる4本出しになっている。また、パッケージオプションでカーボン製のボンネット、ルーフ、リアウイングなども用意される。 また、内装もヘッドレスト一体型ハイバックスポーツシート(座り心地は秀逸)、ステアリング、メーターなどがRC F専用品になる。

RCが596万円~、RC Fが953万円~

レクサス RC F
価格はRC350が596万円~678万円、RC300hが565万円~629万円。そしてRC Fが953万円、同カーボンエクステリアパッケージ装着車が1030万円。 生産はトヨタ自動車の田原工場(愛知県田原市)で、国内の月販目標台数はRCが80台、RC Fが30台。 海外については、RCは月1600~1700台を目標に、北米など各国へ順次投入する予定だが、欧州と中国は検討中。RC Fは世界同時発売で、月340~350台をほぼ全世界に投入する予定という。 また、RC Fに関しては、FIA(国際自動車連盟)のGT3ホモロゲーションを取得した車両を開発し、ニュルブルクリンク24時間レースや日本のSUPER GT(GT300)などに参戦するチームへ供給する予定。

デイズのコメント

重要なのは同じカタチをしていても、中身は別物であること。チョイノリして、RCはラグジュアリークーペ、RC Fは街乗りも大丈夫なスポーツカー、というあたりを確認できた。RC Fはトヨタにとって久々の、本気の高性能スポーツカーだと思う。それゆえ、ライバル車とのシビアな戦いが待ち構えているはず。健闘を祈る。
 
■外部リンク ・レクサス>プレスリリース>スポーツクーペRCを新発売 (2014年10月6日)レクサス>プレスリリース>高性能クーペRC Fを新発売 (2014年10月6日)
 

トヨタ、新型ミニバン「エスクァイア」を発売:MOTOR DAYS ピックアップニュース

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トヨタ自動車は2014年10月29日、5ナンバークラスの新型ミニバン「エスクァイア」を発売した。中部地区での発表会が行われた同社の名古屋オフィス(ミッドランドスクエア内)からリポート。

ヴォクシー/ノアがベースの上級ミニバン

新型エスクァイアは、今年1月にフルモデルチェンジしたヴォクシー/ノアをベースに、高級感ある内外装を与えた上級ミニバン。トヨタによれば、これまで高級感をあまり重視してこなかった5ナンバーミニバン市場に投入する「新上級コンパクトキャブワゴン」ということになる。コンパクトキャブワゴンとは、5ナンバークラスの箱型ミニバンのことで、日産セレナやホンダ ステップワゴンが競合車だ。 また、トヨタブランド車の販売チャンネルは現在、トヨタ店、トヨペット店、カローラ店、ネッツ店の4つだが、エスクァイアはそのうちトヨタ店とトヨペット店に投入される。ノアはカローラ店、ヴォクシーはネッツ店なので、これでトヨタの全チャンネルが、基本設計を同じとするコンパクトキャブワゴンを扱うことになった。

ワンランク上の高級感

(photo:トヨタ自動車)
基本的なメカニズムやスペックはヴォクシー/ノアと同じで、エスクァイアでも2リッターガソリン車と1.8リッターのハイブリッド車、そして7人乗り(2列目キャプテンシート)と8人乗り(2列目ベンチシート)を用意。室内寸法やシートアレンジ、燃費数値なども変わらない。 ただしエクステリアは、クラウン マジェスタを思わせる縦基調のT字型メッキフロントグリルを採用するなどで「ワンランク上の高級感」を表現。ボディサイドにはステンレスベルトモールやメッキ加飾のドアハンドルを採用し、バックドアにも専用のメッキ加飾が入る。 インテリアには、一部グレードでインパネからドアトリムにバーガンディ色の合成皮革をあしらうほか、黒木目調加飾やメタル調の加飾を採用。シートにはホワイトのステッチが入った合成皮革(夏は熱くなく、冬は冷たく感じにくい昇温降温抑制機能付)、もしくは手触りのいい消臭機能付ファブリックを採用するなど、上質感を高めている。

月販目標は4000台。価格はヴォクシー/ノアの約15万円高

シートアレンジはヴォクシー/ノアと同じ。7人乗りには、2列目に超ロングスライド&横スライド機構付のキャプテンシートを採用 (photo:トヨタ自動車)
生産工場は、ヴォクシー/ノアと同じトヨタ車体の富士松工場(愛知県刈谷市)。月販目標は、ヴォクシー(4600台)/ノア(3400台)の計8000台に対して、4000台。 ちなみに2014年度上半期(4~9月)の登録車ランキングでは、ヴォクシーが4位(月平均 約1万0500台)、ノアが9位(同 約6000台)と絶好調で、エスクァイアを加えた3兄弟車を合わせると、1位のアクアに匹敵する月2万台超えの可能性もある。 価格は2リッターガソリン車が262万2857円~、1.8リッターのハイブリッド車が304万3543円~。ヴォクシー/ノアより約15万円高くなる。 なお、エスクァイア(Esquire) と言えば、米国の老舗高級男性誌が有名だが、語源は中世ヨーロッパの「従騎士」とのこと。今回は「一つ上を目指す方にふさわしい」との理由でネーミングされたという。よく見ると、フロントエンブレムは騎士の盾と矛などがモチーフになっている。 また、広告キャラクターには米国生まれのスーパーヒーロー「バットマン」を起用する。こちらもよく考えると、ダークナイト(Dark Knight)ということで、騎士つながり。

デイズのコメント

(photo:トヨタ自動車)
「日本も、私もこれからだ」という30代、40代のマイルドヤンキーなお父さんにピッタリのクルマ。とにかくでっかいグリルを付けると高級になるという、あまりに分かりやすいコンセプトは、現行クラウン以降のトヨタの悪しき慣習、ではなく、良き伝統となっている。しかしよくこの車名が登録できたものだとそこは感心する。これでヴォクシー、ノア、エスクァイア3車の台数を合算すると、アクアを越えて日本で一番売れてるクルマとなるかもしれない。 ■参考記事 新車試乗記>トヨタ ヴォクシー ハイブリッド V(2014年4月4日掲載) ■外部リンク トヨタ>プレスリリース>新型エスクァイアを発売 (2014年10月29日)
 

メルセデス・ベンツ C180 アバンギャルド:新車試乗記

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キャラクター&開発コンセプト

約50%がアルミ製の軽量高剛性ハイブリッドボディを採用

新型Cクラス セダン (photo:メルセデス・ベンツ日本)
7年ぶりにフルモデルチェンジし、ドイツ本国では2013年12月に発表、日本では2014年7月11日に発売された新型Cクラス(W205型)。Cクラスとしては4代目だが、前身の「190」(1982年~1993年、W201型)を含めると累計1000万台以上を世界で販売したモデルの最新型だ。 新型の開発コンセプトは「アジリティ&インテリジェンス」。それを実現するために「素材選びから設計、製造工程に至るまであらゆる部分にメルセデスが誇る最先端技術を投入した」としている。 具体的には、ボディシェルのアルミニウム使用率を約50%まで高めた軽量高剛性アルミニウムハイブリッドボディを採用。ボディの大型化にも関わらず、ホワイトボディ自体は先代より約70kg軽量化された。また、同ボディの製造工程では、アルミニウムとスチールのコンポーネントを重ね合わせ、そこに高速でリベットを貫通させて接合する「ImpAcTインパクト(Impulse Accelerated Tacking)」接合方式を世界で初めて量産車に採用している。 また、ボディの軽量化に併せて、小排気量ターボによるエンジンのダウンサイジング化を推進。JC08モード燃費を先代比で最大30%以上アップするなど(C180 アバンギャルド同士の比較)、燃費性能も向上させている。

ミリ波レーダーやステレオカメラで「部分自動運転」を実現

新型Cクラス ステーションワゴン (photo:メルセデス・ベンツ日本)
インテリジェンスに関しては、快適性が安全性に寄与するという思想に基づき、ミリ波レーダーセンサーとステレオカメラによって「部分自動運転」を実現するなど、「インテリジェントドライブ」と総称される先進安全技術を採用。具体的には「ディストロニック・プラス(ステアリングアシスト付)」、「BASプラス(飛び出し検知機能付ブレーキアシスト・プラス)」、「リアCPA(被害軽減ブレーキ付後方衝突警告システム)」、「アクティブレーンキーピングアシスト」などの先進安全装備を採用した。 なお、2014-2015年の日本カー・オブ・ザ・イヤーでは1位マツダ デミオ(423点)と僅差の2位(404点)だったが、輸入車では1位となり、先代や先代後期型に続いて「インポート・カー・オブ・ザ・イヤー」を受賞した。 なお、2014年10月1日には新型のステーションワゴン(S205型)が日本でも発表され、受注受付が始まった。こちらは6年ぶりのフルモデルチェンジになる。ワゴンの納車は2014年11月末から始まる予定。 ■過去の新車試乗記 メルセデス・ベンツ C200 CGI BlueEFFICIENCY (2010年2月掲載) メルセデス・ベンツ C200 コンプレッサー (2007年8月掲載)
 

価格帯&グレード展開

セダンは419万円~、ワゴンは442万円~

今回試乗したのはセダンのC180 アバンギャルド AMGライン
欧州には1.6リッター直4ディーゼルターボや2.2リッター直4ディーゼルターボ、同ディーゼルターボのハイブリッド車(C300 BlueTEC Hybrid)もあるが、日本仕様はひとまずガソリンの4気筒直噴ターボ車のみ。セダンとワゴン両方に、1.6リッターの「180」(156ps、25.5kgm)、そして2リッターの「C200」(184ps、30.6kgm)と「C250」(211ps、35.7kgm)がある。 また、例のごとく内外装等の意匠や装備違いで、標準車、アバンギャルド、スポーツの3種類を用意。アバンギャルドにはさらにAMGスタイリングパッケージ、18インチホイール、レザーシート等などのセットオプション「AMGライン」(35万円)を用意している。 先進安全装備をひとまとめにしたレーダーセーフティパッケージは、C180と同アバンギャルドにオプション(19万5400円)で、C200アバンギャルド以上に標準装備。クラス初採用のエアサスペンション(装備名はAIRMATICアジリティパッケージ)は、C200 アバンギャルドにオプション設定(AMGラインに含まれる)、C250スポーツに標準装備される。
 
【セダン】 ■C180          1.6L 直4ターボ  419万円 ■C180 アバンギャルド  1.6L 直4ターボ  467万円 ■C200 アバンギャルド  2.0L 直4ターボ  524万円 ■C250 スポーツ     2.0L 直4ターボ  644万円 【ステーションワゴン】 ■C180          1.6L 直4ターボ  442万円 ■C180 アバンギャルド  1.6L 直4ターボ  528万円 ■C180 スポーツ     1.6L 直4ターボ  573万円 ■C200 アバンギャルド  2.0L 直4ターボ  559万円 ■C200 スポーツ     2.0L 直4ターボ  604万円 ■C250 スポーツ     2.0L 直4ターボ  724万円
 

パッケージング&スタイル

全幅は1810mmに。ただし小回り性能は不変

スタイリングは新型Sクラスをそのままスケールダウンしたような感じ。Aクラス派生の4ドアセダンであるCLAにも似ているが、Cクラスの方が明確にロングノーズで、リアウインドウの角度も立っているなど、セダンらしいカタチになっている。 ボディサイズは、Dセグメントで最もコンパクトだった先代から一気に拡大。全長で95mm、全幅で40mm、ホイールベースで80mm大きくなり、全長4690mm(AMGラインは4715mm)×全幅1810mm×全高1435mm、ホイールベース2840mmとクラス最大級に成長した。
 
Cクラスよ、お前もか、という感じだが、今やFFベースのAクラスに4ドアセダン(CLA)やクロスオーバー(GLA)まである状況を見ると、Cクラスが上級移行するのは仕方ないところ。ちなみにCLAのボディサイズは新型Cクラスより全長で50mm、全幅で30mm、全高で5mm、WBで140mm小さく、すなわち先代Cクラスに近い。
 
一方で、相変わらず素晴らしいのは、最小回転半径がわずか5.1mしかないこと。これはCセグメントのコンパクトカー並みで、ちなみにCLAも同値だ。他のメルセデスFR車と同様、縦列駐車ではフロントノーズが真横に動くような感覚が味わえる。 なお、試乗車はアバンギャルド AMGライン仕様で、AMGスタイリングパッケージ(前スポイラー、サイド&リアスカート)、18インチAMG 5スポークアルミホイール、Mercedes-Benzロゴ付ブレーキキャリパー等を装備。ボディカラーはメタリックのオプシディアンブラック。
 

インテリア&ラゲッジスペース

質感大幅アップ。IT装備も充実

アバンギャルド AMGライン仕様は、レザーARTICO AMGスポーツシート、AMGスポーツステアリング、レザーARTICOダッシュボード、ブラックアッシュウッドインテリアトリム、アナログ時計などを装備する
インパネデザインも新型Sクラスと同じ方向。ステアリングホイールはぐっと小さくなり、質感は大幅にアップした。また、シフトレバーはようやくSクラスやEクラス等と同じ電子制御コラムレバーの「ダイレクトセレクト」になり、AクラスやBクラスにも追いついた。ただ、従来とは操作性やスイッチの場所がかなり異なるので、旧いメルセデスに慣れている人はしばらく戸惑うかも。
 
Cクラスにもようやく採用されたダイレクト セレクト。ドアを開ければ必ずPに入るので、無人でクルマが動き出すことはない
コマンドシステムは、高精細の8.4インチワイドディスプレイや80GB HDDナビを採用し、高い視認性や操作レスポンスを確保。操作性はやや難解だが、スマホを使いこなすような人ならストレスを感じないで済むと思う。 室内空間、特に後席は広くなった。気になるのは後席の乗降時に頭がルーフに少し当たること、そして3名乗車は厳しいことくらいか。
 
新世代のコマンドシステムは全車標準。マウス形状の上面はタッチパッドになっている
コマンドシステムのメインメニュー(フェイバリット)を表示した状態。走行中でもかなりのことが操作できる
 
乗降時に頭がひっかかるが、2名乗車なら頭から足もとまで広さは十分。背もたれ角度も自然
ステアリング位置は電動で調整できる(C180標準車を除く)
 
荷室容量は445L。背もたれは3分割可倒式(40:20:40)で、トランク側のレバーで倒せる
床下には折畳式収納ボックスとファーストエイドキットを装備。タイヤは全車ランフラットで、スペアや修理キットはない
 

基本性能&ドライブフィール

第一印象は「軽い」

C180の1.6リッター直4ターボ。ボア×ストローク:83.0×73.7mmのショートストローク型で、圧縮比は10.3。最高出力:115kW(156ps)/5300rpm、最大トルク:250Nm (25.5kgm)/1200-4000rpm
試乗したのは売れ線モデルの一つ、C180 アバンギャルド (467万円)にAMGライン(35万円)を装着したもの。エンジンは1.8リッター、ではなく、A/Bクラスでお馴染みの1.6リッター直4・直噴ターボの縦置きバージョン。先代C180の1.8ターボと同じ156psと250Nmを発揮し、しかも最大トルクの発生回転数は先代C180の1600~4200rpmから1200-4000rpmに下がっている。先代C180のエンジンもダウンサイジングターボだったが、今回はさらに200cc小さくなったわけだ。 走りだしの第一印象は「軽い」。現行のA180やB180は出足で少しもたつく印象があったが、C180では全くそんな気配はなく、1速、2速と軽快に加速してくれる。さすがアルミニウムハイブリッドボディと思ったりもするが、装備満載の試乗車(というか日本仕様)の場合、車重は1540kgと先代と大差ないレベルなので、これはパワートレインやシャシー系など様々なものの相乗効果だろう。 トランスミッションは、A/Bクラスだと7速DCT(7G-DCT)だが、新型Cクラスは従来通り7Gトロニックこと7速トルコンAT。出足はトルクコンバーターによるトルク増大効果があるはずだし、変速スピードもDCTにそんなに見劣りしないレベル。A/BクラスのDCTは、トルコンATっぽく滑らかに変速するタイプだから、結果的にシフト感覚はよく似た感じだ。
 
アジリティ セレクトの「インディビジュアル」設定画面
C180の場合、パワーウエイトレシオは約10kg/psなので、絶対的に速くはないが、先代や先々代の直4スーパーチャージャー“コンプレッサー”と比べれば、俊敏に加速する。まぁこれで物足りない人は、2リッターターボのC200(184ps、300Nm)とか、C250(211ps、350Nm)を選べば、ということだし。これら3種類ある4気筒ターボエンジンは、電子制御できっちり20kW(27~28ps)と50Nm(5.1kgm)ずつ差別化されている。 また、新型Cクラスでは、センターコンソールの「アジリティ セレクト」スイッチで、走行モードの選択ができる。大人しい方から「エコ」「コンフォート」「スポーツ」「スポーツ+」で、さらに「インディビジュアル」では、アクセルレスポンス、シフトプログラム、ステアリング特性、サスペンション特性(エアサスのAIRMATICアジリティパッケージ装着車のみ)を別々に設定可能。エコでも十分に走るが、普段はコンフォートあたりを選んで、必要に応じてパドルシフトを使うのが走りやすい。

足回りいろいろだが、今回は「スポーツサスペンション」仕様

ハンドリングや乗り心地については、サスペンションの仕様が新型Cクラスには大きく分けて3種類ほどあり、それがけっこう印象を大きく左右するようだ。一番ベーシックなのは、「アジリティ コントロールサスペンション」と呼ばれる仕様。これは路面からの入力に応じてオイル流量をパッシブに変更し、減衰力を調整するセレクティブダンピングシステムを備えたもの。標準タイヤは16インチ(225/55R16)か、アバンギャルド用の17インチ(225/50R17)になる。 試乗したC180 アバンギャルド AMGラインに装備されるのは、アジリティ コントロールサスペンションをベースに、スプリングとダンパーをハードセッティングとした「スポーツサスペンション」。車高は1センチダウンし、タイヤは18インチ(前225/45R18、後245/40R18)になる。 そして新型Cの売りである電子制御エアサスペンションの「AIRMATICサスペンション」(AIRMATIC アジリティパッケージ)がある。これはC180では選べず、C200 アバンギャルド AMGラインとC250 スポーツに標準装備。なお、タイヤはグレードに関係なく、全車ランフラットだ。
 
試乗車のタイヤは前225/45R18、後245/40R18のコンチスポーツコンタクト5
というわけで、今回のインプレッションは、あくまで金属スプリングの「スポーツサスペンション」仕様について。まず当然ながら、一般道での普通の路面ではスムーズに走り、特に不満はない。ランフラット特有の硬い感じもそんなに気にならない。サスペンションはフロントが新開発の4リンク、リアが5リンク(マルチリンク)だ。 ただ、路面が荒れたところや段差では、凹凸に反応してボディがけっこう上下する。このあたりはメルセデス・ベンツの鷹揚な乗り心地に親しんできたユーザーだと「あれっ?」と思いそう。ボディが軽くて硬い感じが、サスペンション(タイヤを含む?)の硬さで強調される感じ。 ハンドリングは、スポーツサスペンション(ステアリングレシオもよりダイレクトな設定)のせいもあってか、初期のBMWアクティブステアリングほどではないが、かなりクイック感がある。舵角に応じてギア比を可変する「ダイレクトステアリング」は、最初の交差点でちょっとハンドルを戻したくなるほど機敏に反応し、開発テーマの「アジリティ(機敏さ)」を良くも悪くもはっきり体感できる。この印象は例のアジリティーセレクトでステアリング特性がコンフォートになるモードを選んでも大きく変わらなかった。
 
100km/h巡航は約1800rpm。写真はディストロニック・プラス使用中
速度域が上がってくると、このステアリングのクイックさが気になってくる。ステアリングを軽く握っているだけでまっすぐ走っていくというよりは、ちょっと手に汗握る感じ。また、このスポーツサスペンションは高速域でも硬く、路面が荒れたところではそれを強く感じさせる。また、横風対策のため、ESPのブレーキ制御で直進安定性をサポートするという「クロスウインドアシスト」が全車標準になっているが、大型トラックの横を走る時やトンネル出口などでは、もう少しスタビリティ感と鈍感さが欲しいと思ってしまった。 100km/h巡航時のエンジン回転数は、7速トップで約1800rpm。本国仕様を参考にすれば、最高速は223km/h、0-100km/hは8.5秒だ。ちなみにC200ではそれぞれ235km/hと7.3秒、C250は250km/h(リミッター作動)と6.6秒になる(いずれも7AT仕様)。

各種レーダーセンサーとステレオカメラで周囲360度を監視

「アジリティ」と並ぶ、新型Cクラスのメインテーマが「インテリジェンス」。ドライバーの疲れを最小限に抑える快適性が安全なドライブに貢献するという思想により、メルセデス・ベンツではこれらの技術をまとめて「インテリジェント ドライブ」と呼んでいる。具体的には、昨年デビューした新型Sクラスとほぼ同じ内容の安全装備が新型Cクラスに降りてきている。 その目玉である「レーダーセーフティパッケージ」を支えるのが、数々のセンサー類。クルマの周囲360度をカバーすべく、ラジエイターグリル奥には200m先まで監視する77GHz 中・長距離レーダーを、フロントおよびリアバンパー側面には25GHzの短距離レーダーを、リアバンパー中央の25GHzマルチモードレーダーを、と計6個のレーダーセンサーを搭載。さらにフロントウインドウ内側には、車両前方を広範囲で認識し、特に約50mの範囲内は3Dで捉えるステレオマルチパーパスカメラを装備する。このへんの装備てんこ盛り感がいかにも高級車らしい。
 
写真一番下のレバーがディストロニック・プラスの設定レバー。直進時はステアリングリムに隠れて見えない。先端を回して、先行車との距離を調整できる。設定速度は最高200km/hまで
そして、これらのセンサーから得たデータを統合して、先行車両、横切る車両、後方車両、対向車、歩行者などを検出し、状況によってアクセル、ブレーキ、ステアリングを自動でアシストする「部分自動運転」を実現した、と公言してしまうのが、ドイツのメーカー、メルセデス・ベンツらしいところだ。 結果として得られる機能自体は、その精度レベルを別にすれば、すでに他社で実現されているものに近いとも言えるが、例えばCクラスの「ディストロニック・プラス(ステアリングアシスト付)」は、前走車への追従制御などがスムーズで、実用性は非常に高い。また、Cクラスではステレオマルチパーパスカメラによって車線のカーブと先行車両を認識し、コーナーでもステアリング操作をアシストしながら追従するとのことだが、これははっきり体感するチャンスが無かった。
 
フロントウインドウ上部内側に装備されたステレオマルチパーパスカメラ
また、「アクティブ レーン キーピングアシスト」は、ステレオマルチパーパスカメラで車線を読み取り、車線を逸脱するとステアリングを断続的に微振動させて警告するほか(路肩の白線に乗ったときのような振動が出る)、片輪に軽い補正ブレーキをかけて車線内に戻そうとする機能。ピーピーと警告音が鳴るものはうるさくて切ってしまうことが多いが、これはそんなに気にならないのがいい。補正ブレーキについては、よく分からなかった。 そのほか、前方を横切るクルマや歩行者などを検知して警告し、ブレーキアシスト等を行う「BASプラス(飛び出し検知機能付ブレーキアシスト・プラス)」。さらに、衝突に備えて乗員の姿勢を最適化するPRE-SAFE機能を作動させ、最終的には自動緊急ブレーキを作動させる「PRE-SAFEブレーキ(歩行者検知機能付)」。あるいは追突に備えてリアを監視し、ハザードランプ点灯、シートベルト巻き上げ、玉突き衝突を防ぐためのブレーキ制御などを行う「リアCPA(被害軽減ブレーキ付後方衝突警告システム)」も装備している。

ナイトドライブもより安全に

上位グレードは電子制御のフルLEDヘッドライトで、照射範囲を自動的に変更する
夜間の視界に関しては、上位グレードにフルLEDヘッドライトを採用。Cクラスのものは「LEDインテリジェントライトシステム」と呼ばれるタイプで、車速などの走行状況に応じて配光パターンを自動で変更してくれるお利口さんだ。 また、それとセットで「アダプティブハイビームアシスト・プラス」を採用。これはステレオマルチパーパスカメラで前方を監視し、対向車や先行車を検知すると、それらの車両にハイビームが当たらないよう自動的に照射範囲を制御するもの。また、道路標識などにハイビームが反射すると、自動的に減光して眩惑も防止するという。 Cクラスのものは他社の類似装備に比べて、最新型だけに制御がきめ細かく、少なくとも常識的な速度で走る限りは、真っ暗な田舎道や高速道路などで上手に前方を照らしてくれる感じがした。気になったのは、ハイビームに切り替わるのが時に遅いことや、とっさに手動でハイビームに切り替えにくいことだが、この装備の目的は他車に迷惑をかけず、可能な限りハイビームを使って危険を早期発見することなので、その点ではかなり完成度の高いものになっている。

試乗燃費は10.3~12.1km/L。JC08モード燃費は17.3km/L

タンク容量は66リッターで、もちろんハイオク指定
今回はトータルで約280kmを試乗。車載燃費計による試乗燃費は、いつもの一般道、高速道路、ワインディングを走った区間(約80km)が10.3km/L、郊外の一般道を走った区間(30km×2回)が11.2km/L、12.1km/L、高速道路を走った区間(約100km)が12.1km/L、うち80~100km/hで走った区間(約50km)が13.6km/Lだった。また、280kmトータル(撮影用の移動を含む)での試乗燃費は10.4km/Lだった。 JC08モード燃費は17.3km/L。冒頭で触れたように、モード燃費は先代C180(13.2~14.4km/L)比で最大30%以上アップしている。タンク容量は66リッターなので、高速ロングドライブなら600kmは走れるはず。
 

ここがイイ

鉄壁の先進安全装備。完成度の高いディストロニック・プラス

イージス艦を思わせるような、と言うと大げさだが、鉄壁な防御システム、ならぬ安全装備。レーダーセンサーやステレオカメラなど、センサー類をこれでもかと満載し、全方位を監視する考え方は、まさにドイツ的な完璧主義。目下、先進安全装備は各メーカーがしのぎを削るところで、もちろん見据えるのは「完全自動運転」だが、とりあえずこのクラスでは現時点で最も安全なクルマの一つと思わせる説得力がある。 また、普段でも恩恵にあずかれるディストロニック・プラスの完成度や実用性も高く、それだけでも「最新のC」を買う意義はある。 走りだした瞬間から感じられる「軽い」感じ。好みによっては、もう少し重厚感が欲しいとも言えるが、とりあえず1.6リッターでもかったるい感じはない。7速ATも変速スピードについてDCTに迫るものがあるし、DCTにわずかながら生じるギクシャク感や坂道発進でのもたつきもない。

ここがダメ

薄まった鷹揚さ。スポーツサスペンションの乗り味

新型のテーマである「アジリティ&インテリジェンス」は見事に実現されているが、一方でメルセデス・ベンツ特有の鷹揚さ、穏やかさが薄まったように思われること。特にダイレクトステアリングのレスポンスはクイック過ぎ。せっかく電子制御で特性を変更できるのだから、せめてコンフォートモードはもっと穏やかに振った方が(あるいは「コンフォート+」みたいなモードも用意するとか)、従来メルセデス・ベンツユーザーもホッと出来ると思う。 すでに他の媒体でも書かれているように、グレードや仕様によってシャシーの印象がかなり違うこと。今回モーターデイズで試乗したのは1.6ターボのC180 アバンギャルド AMGラインだったが、パワー的には2リッターのC200やC250がいいだろうし、足回りはC200 アバンギャルド以上に設定されるエアサス仕様が本命かもしれない。ただ、これらの乗り味の違いは、実際に高速道路などでしっかり乗ってみないと体感しにくいので、カタログや商談だけで選んでしまうとユーザーの期待とは異なるグレードにミスリードしかねないかも。少なくとも今回のスポーツサスペンション仕様は、内外装デザインだけで選ばれることも多いと思うので、もう少し穏やかな乗り味でも良かったのでは、と思える。

総合評価

全部のせ状態がデフォルト?

本文にあるように、その基本設計やスペック、装備内容を確認していけば、現時点でこのクラスでは総合的に見て、世界最高レベルのクルマと言えるだろう。AクラスからCLAが生まれたことで、ヒエラルキーの関係から少し大きくなったサイズも、今となっては妥当なものと言えるし、内装の質感も試乗車に関しては全く不満はなかった。また、14年前に出た先々代W203や、7年前の先代W204でも感じた「初期モデルの、もうちょっと感」は、今回の試乗車にはなく、先代後期モデルで標榜した「メルセデス史上最高のCクラス」というキャッチコピーは、このモデルで再び使えるのではと思う。COTYの投票ではデミオが僅差で勝って、幸いにも?2年連続で輸入車が1位とならなかったが、日本のクルマはもう当分敵わないのではと思うほど、このドイツ車の内容は濃い。 ただ、今回の試乗車については、期待とやや異なる部分もあった。どうやら仕様によってかなり印象が違うようで、特に乗り心地はエアサスこそが今回のスタンダードなのかもしれない。要するに新型Cクラスは基本フル装備で乗るべきクルマなのではないか、と思うのだ。ラーメンフリークが使う言葉で言えば「全部のせ」がデフォルト。そこから何かを減らしていったものが、下位グレードということなのだろう。その分、価格的メリットはあるのだが。
 
そうは言ってもボディは軽量ハイブリッド構造に刷新され、数々の安全装備も採用されたのだから、最新のメルセデスが提案する自動車の基本というものはよく分かる。そうした基本となる姿に、装備を足して設計上の理想を追求したのが上級グレードであり、そこからユーザーによっては必要のないものを引いていったのが下位グレードということでもあるだろう。 いろいろ言われるサイズにしても、確かに少し大きくはなったが、今やフルラインナップと言えるほどの車種を揃えるメルセデスなのだから、サイズで選ぶなら他をどうぞ、ということになる。CLAはそういう人のためのクルマになりえるはず。

格子グリル+フードマスコット仕様も

そんな新しいCクラスだが、特に外観のデザインというものが、このクルマの好き嫌いを分けそうだ。彫りが深いというか、複雑なラインで構成されたフロント周りやサイドビュー、やや尻下がりにも見えるリアビューなどは、好みが分かれると思う。特に先代の後期からすっかりメインになってしまったアバンギャルドマスクは、先代よりさらに大きなスリーポインテッドスターが鎮座しているだけに、これはちょっとと思う人もいるだろう。ドイツ本国には普通の格子グリル+フードマスコットの伝統的ルックスのモデルがあるようなので、日本でもぜひそれを選べるようにしてもらいたいものだ。 同様にインパネ周りも先代のデザインと比べると、かなりアバンギャルドだ。特に巨大なディスプレイが真ん中に独立して鎮座しているあたりは、欧州車のトレンドであるとは思うが、日本人的な感性だともうちょっと何とかならないものか、と思ってしまう。現にSクラスの場合はメータークラスターの中に巨大なディスプレイを入れてスッキリまとめている。むろんその方法は相当コストがかかるはずなので、Cクラスでは無理かもしれないが、せっかくここまでハイテクにこだわった作りなのだから、ぜひやって欲しかったと思う。新しいアウディTTはメーターパネル全体が液晶パネルで、そこにナビ地図も映し出せる。メルセデスにはアウディに先駆けて、このクラスで実現して欲しかった。
 
日本車の場合はタッチパネル式が再び主流となりつつあるが、欧州車の場合はメルセデスのコマンドシステムのようなリモコン操作型が主流なだけに、ディスプレイをメーターパネルと一体化させることが比較的簡単にできるはずだ。その意味では、現状ではまだ手放しに使いやすいとは言い切れないコマンドシステムもやがて陽の目を見ると思う。一方で、日本車はついこの前まで車載ナビにも使いやすいリモコンを持つタイプが多かったのだが、ユーザーにおもねったためか、すっかりその部分が退化してしまった。そのつけはいずれ来るはず。Cクラスに関しては、先代のようにまた7年作られるとしたら、今回もモデルライフの途中でインパネ周りは大きく変更されるはず、と予言しておきたい。

求む、クリーンディーゼルの、アバンギャルド顔でないCクラスワゴン

そして、ついにセンターコンソールからシフトレバーが消えた運転席に座り、コマンドシステムでナビを設定し、指先でダイレクトセレクトを操作してスタート。日本車と違って速度の設定範囲が広いディストロニック・プラスにゆだねて「部分自動運転」していると、これは確かに程よいサイズのインテリジェントカーであるなあと思う。最高級車でなくても、大きなクルマじゃなくてもインテリジェントカーなのだ。 ただ、このクラスであれば、やはりパーソナルな雰囲気のあるステーションワゴンが魅力的だ。比較的コンパクトで、「インテリジェント」なワゴンの選択肢は少ない。その意味ではセダンではなく、やはりワゴンこそがCクラスの本命ではないか。ワゴンのスタイリングは、とてもバランスが取れていて美しいと思う。やがて日本にも導入されるであろうクリーンディーゼルが載ったCクラスワゴン、それのエアサスで最上級グレードで、さらにアバンギャルド顔でないモデルなら欲しいなあと思う。ただその場合、車両本体価格は700万円を越えるはずで、このクラスとしてはあまりに高い。そこをどう考えるかだろう。
 

日産 セレナ ハイウェイスター、買い得感の高い特別仕様車を発売:リリース情報

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日産自動車は、『セレナ』に特別仕様車「ハイウェイスター エアロモード」を設定し、11月13日より発売すると発表した。価格は276万1560円から311万5800円。 ハイウェイスター エアロモードは、スタイリッシュで魅力的なアイテムを採用しながら、リーズナブルな価格設定としたモデル。10月1日に発売した「ハイウェイスター Vセレクション+セーフティ」や、「ハイウェイスターG」をベースモデルに設定する。 特別仕様車は、フロントプロテクターを標準装備し、よりシャープなエアロフォルムを実現。プロテクターには透過式のLEDイルミネーションが組み込まれており、夜間でもスタイリッシュなフォルムをアピールする。 また、専用のダーククロムグリルや、内装にワンポイントで採用したグロスブラックの専用パワーウインドウスイッチフィニッシャーにより、シックでスポーティな商品にトータルコーディネートした。 特別仕様車は、「LEDヘッドランプ」「ワンタッチオートスライドドア」「16インチアルミホイール」を標準装備した「ハイウェイスター Vセレクション+セーフティ S-ハイブリッド」もベース車のひとつとして設定。同グレードの場合、基準車の「ハイウェイスター S-ハイブリッド(2WD)」に対して、総額29万1000円分の装備を12万円高で標準装備しており、17万1000円割安で購入できる。

キャデラック SRXクロスオーバー、特別仕様車ブリリアント スポーツ発売:リリース情報

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ゼネラルモーターズ・ジャパンは、キャデラック『SRXクロスオーバー』に特別仕様車「ブリリアント スポーツ」を設定し、11月1日より20台限定で販売を開始する。 特別仕様車は、プラチナアイスとセーブルブラックの2色(各色10台)を用意。フロント&リアバンパーガードやアシストステップなどのカスタム・アクセサリーキットとCUE統合制御ナビゲーションを特別装備する。 価格はSRXクロスオーバー ブリリアント スポーツ ラグジュアリーが538万円。さらに電動サンルーフやHIDヘッドライトなどを装備するSRXクロスオーバー ブリリアント スポーツ プレミアムが668万円。

VW シャラン、特別限定車 グレンツェン2 を発売:リリース情報

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フォルクスワーゲン グループ ジャパン(VGJ)は、『シャラン TSI コンフォートライン』をベースに、商品力を高めた特別限定車「シャラン グレンツェン2」を設定し、10月28日より販売を開始した。 ボディカラーは、ピュアホワイトとディープブラックパールエフェクトの2色を用意。限定台数は各色150台の計300台。価格はベース車両と同額の418万9000円。 シャラン グレンツェン2は、昨年11月に導入し「シャラン・グレンツェン」の第2弾となる特別限定車。スマートエントリー&スタートシステム「キーレスアクセス」と電動式の「パワーテールゲート」など、利便性の高いアイテムを特別装備する。 またエクステリアは、15個のLEDポジショニングランプが個性的なフロントマスクを演出する「バイキセノンヘッドライト」と新デザインの17インチアルミホイールを採用する。
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