キャラクター&開発コンセプト
日産・三菱ジョイントベンチャーの第二弾
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デイズ ルークス(左)と同ハイウェイスター
2014年2月13日に発売された日産「デイズ ルークス」は、いわゆる“スーパーハイトワゴン”の軽自動車。「デイズ」(2013年6月発売)をベースに、全高を高くし、室内空間を拡げ、両側スライドドアを装備したモデルであり、三菱のeKスペースとは兄弟車の関係。日産にとっては2013年3月に販売終了となっていたルークス(スズキ パレットのOEM車)の後継車になる。
デイズ同様、企画と開発は日産と三菱の合弁会社である株式会社NMKV(2011年設立)が行うが、実際の設計・開発は三菱が担当し、生産も三菱の水島製作所(岡山県倉敷市)で行われる。基本的にはデイズ/eKワゴンと同様に、デイズ ルークス/eKスペースも同じクルマだが、一部の意匠、バッジ類、ラインナップ、装備設定などが異なる。
月販目標はデイズルークスが5000台、eKスペースが2500台
現在、軽自動車の市場は、ハイトワゴン(ワゴンR、ムーヴ、N-WGNなど)とスーパーハイトワゴン(タント、スペーシア、N-BOXなど)が大きく二分する状況。デイズに関しても、月販目標はデイズの8000台に対して、デイズ ルークスは5000台を設定。後者は発売一ヶ月で2万8000台を受注した。
また、デイズシリーズ全体の販売も好調で、2014年上半期(1~6月)の実績は9万8789台となり、軽の販売ランキング(通称名別)ではシリーズ合計でだが、タントに次ぐ2位となっている。
広告キャッチコピーは、「ようこそ、MOMをWOW!にする軽へ」。タントなどと同様、ターゲットは子育て中の女性がメイン。
なお、三菱 eKスペースの月販目標は2500台。eKシリーズ全体の2014年上半期実績は3万3701台となっている。
NMKVだけではない日産の軽自動車
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日産 MOCO(写真は2013年10月のマイナーチェンジで追加設定された「ドルチェ」シリーズ)
最近まで自社製の軽がなかった日産は、スズキや三菱からOEM供給を受けており、2014年7月現在もスズキから、モコ(MRワゴン)、NV100クリッパー リオ(エブリイワゴン)、商用バンのNV100クリッパー(エブリイ)、軽トラのNT100クリッパー(キャリイ)のOEM供給を受けている。
なお、現在は三菱も、スズキからOEM供給を受けており、軽乗用ではタウンボックス(エブリイワゴン)、軽商用ではミニキャブバン(エブリイ)、ミニキャブトラック(キャリイ)、普通車ではデリカD:2(ソリオ)がスズキ製になる。
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こちらはデイズとデイズ ハイウェイスター
■過去の新車試乗記
日産 デイズ ハイウェイスター G (2013年7月)
価格帯&グレード展開
127万5480円からスタート。ターボ車はハイウェイスターのみ
全車ジヤトコ製副変速機付CVTで、エンジンは自然吸気(49ps、6.0kgm)とターボ(64ps、10.0kgm)の2種類。
計6グレードで、エントリーグレードの「S」(127万5480円)、中間グレード「X」(137万7000円)、「ハイウェイスターS」(149万9040円)、「ハイウェイスターX」(156万8160円)、「ハイウェイスターX Gパッケージ」(164万0520円、試乗車)、そしてターボ車の「ハイウェイスター ターボ」(178万4160円)というラインナップ。4WDは11万7600円高。
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日産 デイズ ルークス ライダー
また、日産の関連会社であるオーテックジャパンは、ハイウェイスターベースのカスタムモデル「ライダー」(173万0160円~)を用意している。
ボディカラーはモカブラウン(試乗車)など全8色。デイズシリーズ専用色としてアゼリアピンクなどがあるが、eKシリーズと共通するカラーも多い(カラー名称は全て異なる)。
パッケージング&スタイル
ハイウエイスターが主力
ボディ外板やライト類は、eKスペースと基本的に共通。逆にデイズ ルークス専用になるのは、フロントグリル、バンパー、バッジ類など。デザイン開発は、まず日産と三菱がスケッチを出し合い、それをベースに三菱のデザイン部門がブラッシュアップして、それぞれを作リ分けるという具合に、実作業は三菱側で行われている。
eKスペースのカスタムにはデリカD:5のようなフロントグリルが備わるなど、標準車とカスタムでかなり雰囲気が違うが、デイズ ルークスの場合は、標準車とハイウェイスターで大きく印象が変わらない。それでも後者には、LEDポジショニングランプ付ヘッドライト(ディスチャージ標準)、大型バンパー、エアロパーツ等が装備される。
全高1775mmは、室内高1400mmのため
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全ピラーをブラックアウトした「グラスラウンドキャビン」、ウエストラインが後端でキックアップする「シュプールライン」などが外観の特徴
全高はデイズ/eK(1620mm)より155mm高い1775mm。これをライバル車と比較すると、低い方から、スペーシア(1735~1740mm)<タント(1750mm)<デイズルークス/eKスペース(1775mm)<N-BOX(1780~1800mm)という順になる。デイズルークスの全高が比較的高めなのは、室内高でクラストップ級の1400mm(N-BOXと同値)を実現するためだ。
ホイールベースは2430mmで、こちらもライバル車と比較すると、短い方からスペーシア(2425mm)<デイズルークス/eKスペース(2430mm)<タント(2455mm)<N-BOX(2520mm)という順。ちなみに、軽自動車で史上最もホイールベースが長いのは三菱 i(2550mm)だが、現在はEVのi-MiEVしか販売されていない。
インテリア&ラゲッジスペース
センタートンネルの張り出しがやはり気になる
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写真はエボニー内装のハイウェイスター。標準車はアイボリー内装
ファインビジョンメーターやタッチパネル式オートエアコンなど、デイズと共通の意匠は多いが、ダッシュボードは新規。広々感を演出すべく、ダッシュ上面はデイズより低く、フラット化。フロントウインドウの角度も立てられ、Aピラーはこのジャンルの定番である松葉のような2本タイプになっている。ただ、交差点での右折時には、意外に右Aピラーが視界のジャマになる。
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前席の着座位置はデイズより約30mm高い。チルトステアリング&シートリフター(ダイアル式)は全車標準
また、運転席で気になるのは、ベースとなったデイズ/eK同様に、センタートンネルが張り出していて、左足の置き場がないこと。これは三菱 i 譲りのエンジンを後方排気で搭載するため、エグゾーストや触媒のスペースが必要だからだ。
室内長(インパネから後席ヘッドレストまで)は、あくまでカタログ値によると、デイズルークス/eKスペース(2235mm)がクラストップなのだが、何となく前席(特に助手席)に関してはライバル車よりタイトに感じられる。
室内高はクラストップの1400mmを確保
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後席の前後スライド量はクラストップの260mm。窓にはスペーシア、タントに続いてロールサンシェイドを採用
スーパーハイトワゴンで期待される室内高は、タント(1365mm)<スペーシア(1375mm)<デイズルークス/eKスペース=N-BOX(1400mm)の順で、ここでもデイズルークスがクラストップだが、感覚的にはここも各車ほぼ横並び。むしろタントの方がなぜか広く感じられたりする。
また、乗降性の指標となるリアスライドドアの開口幅は、デイズルークス/eKスペース=スペーシア(580mmmm)<タント(605mm ※助手席側)<N-BOX(640mm)の順で、タントとN-BOXがリードしている。特にミラクルオープンドアを持つタントは、この項目では強い。
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後席を一番後ろにすると、かかとが座席下に当たってしまう
デイズルークス/eKスペースは、後席の前後スライド量をクラストップの260mmとし、運転席から後席の子供に手が届くように出来るのが売り。ただ、後席を一番後ろにスライドすると、座った時にかかとやふくらはぎが当たるので、実際には中間位置がベターだ。
ルームミラーに周辺モニター、天井にサーキュレーターを採用
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日産お得意のアラウンドビューモニター。小さくて少々見にくいが、主力グレードには標準装備
日産らしい装備は、デイズに続いて採用されたアラウンドビューモニター(三菱での名称はマルチアラウンドモニター)。ナビ装着車以外でも装備できるように、ルームミラーに表示するタイプで、下位グレード(SおよびハイウェイスターS)を除いて標準装備される。純正ナビ装着車であれば、ナビのモニターにも表示できる。
もう一つの目玉は、天井に据え付けられた「リヤシーリングファン」(三菱での名称はリヤサーキュレーター)。エアコンで冷えた前席周辺の空気を後席に送るためのもので、まぁ言ってみればエアコンと併用する扇風機のようなもの。こちらもSおよびハイウェイスターSを除いて標準装備になる。
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リヤシーリングファン(三菱名はリヤサーキュレーター)。手動ながら3段階で調整できる
(photo:日産)
このリヤシーリングファンにより、後席乗員の体感温度は、後席ロールサンシェードとの相乗効果で、最大4度Cほど下がるとのこと(外気温35度C、室温28度C、エアコン風量Mid、リヤシーリングファン風量Highの場合)。
荷室開口部の広さは平均的
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後席は背もたれを倒すと自動的にロックが解除され、座面ごと持ち上がり、足元に格納できる。ちょっとしたコツが必要
各モデルの方向性を示しているのが、荷室まわりの数値。特に家具など大物の積みやすさを左右する荷室開口部の数値は以下の通りで、高さ方向で優秀なのはスペーシアとN-BOXだ。逆にミラクルオープンドアを持つタントは、この項目では無理に勝負していないのが分かる。デイズルークス/eKスペースは平均的だが、やや開口部(敷居)やフロアが高めの印象。カタログ写真のように、一般的な27インチ自転車(車輪が簡単に脱着できないタイプ)を積むのは、実際にはけっこう大変だろう。
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スペアタイヤはなく、全車パンク修理キットを標準装備する
■荷室開口高(小→大):タント(1045mm)<デイズルークス/eKスペース(1080mm)<スペーシア(1110mm)<N-BOX(1200mm)
■荷室開口幅(小→大):N-BOX(1055mm)<タント(1080mm)<デイズルークス/eKスペース(1090mm)<スペーシア(1130mm)
■荷室開口地上高(低→高):N-BOX(480mm)<スペーシア(535mm)<タント(595mm)<デイズルークス/eKスペース(600mm)
基本性能&ドライブフィール
NAモデルのパワーウエイトレシオは約19.4kg/ps
試乗したのは自然吸気モデル(NA)の最上グレード「ハイウェイスターX Gパッケージ」(車両本体 164万0520円)。エンジンはNAだが、15インチタイヤ&アルミホイールなどの外観や、細々した快適装備はハイウェイスター ターボ(178万4160円)とほぼ一緒というモデル。
エンジンは基本的にデイズと同じで、三菱 i (エンジン車は2013年に販売終了)のエンジンをFF向けに転用した直列3気筒DOHC「3B20」型ユニット。NAの場合は、49psと6.0kgmを発揮する。同じNAでも、N-BOX(58ps、6.6kgm)、スペーシア(52ps、6.4kgm)、タント(52ps、6.1kgm)と比べると、ピークパワーでは水を開けられている。車重はデイズより約100kg重い950kg(試乗車)で、パワーウエイトレシオは約19.4kg/ps。発売当初のデイズ/eKのNAモデルは明らかにパワー不足だったこともあり、これではいかにも苦しい感じがする。
最終減速比ローギアード化や「バッテリーアシスト」で動力性能を確保
しかし、そこは日産/三菱側も把握しており、デイズルークス/eKスペースではしっかり対策。まず、NAモデルでは、初期デイズでは4.283だった最終減速比を4.575に変更(6.8%もローギアード化)。これで最終減速比は、スズキのスペーシア(4.572)とほぼ同じになった。
さらにエンジンは、吸気ダクトの設計変更やフリクション低減を行ったほか、減速エネルギーでニッケル水素電池に充電し、オルタネーターの負担を減らす「バッテリーアシストシステム」(三菱名はアシストバッテリー)を新採用するなど、大掛かりな改良を実施。なお、これらの改良は、この6月から7月にマイチェンした現行デイズ/eKにも実施済みだ。
実際のところ、これらの改良(特にギア比)は大きく、デイズ ルークスの体感的な動力性能は、先週乗ったタントのNAモデルと較べても互角か、少し上回るレベル。と言っても、五十歩百歩の違いではあるが、アクセルベタ踏みなら約6500回転までブン回り、それなりに元気に加速してゆく。
そして変速機はスズキの軽で定評のあるジヤトコ製の副変速機付CVT。変速比が4.007~0.550と超ワイドなので、発進時には低いギア比で駆動力を確保し、巡航時には高いギア比でエンジン回転数を落とし、燃料消費や騒音を抑える。穏やかに発進した場合は、副変速機がハイ側に切り替わる時に、ガクンと加速感が鈍るのが気になるが、大人しく走れば、1500~3000回転の範囲で粛々と走ることができる。
これでもう少しパワーがあれば、という人にはターボが理想だが、ハイウェイスター ターボだと178万4160円もしてしまうのが辛いところ。
乗り心地は良好。ただしロール感は大きめ
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標準タイヤは155/65R14だが、ハイウェイスターのGパッケージ(試乗車)とターボのみ165/55R15
乗り心地に関しては、ライバル車と較べても悪くない。一方、ロールはけっこう大きめで、ステアリングを素早く切ると、けっこうグラっと来るタイプ(現行タントより明らかに大きく感じる)。試乗車の場合はターボと同じ15インチタイヤが踏ん張ってくれるため、不安な挙動は出ないのだが。
残念なのは、デイズ ルークスの場合、VDC(ビークルダイナミクスコントロール)がNAモデルには装備されないこと(ターボ車には標準装備)。eKスペースでは、NAモデルでも標準車のエントリーグレードを除いて標準装備なのだが……。ライバル車でもオプションないし標準装備だ。
高速道路では明らかにパワー不足
高速道路に関しては、まず本線に合流する時の加速がかなり緩慢。文字通り、put the pedal to the metal (床までアクセルペダルを踏み抜く)という感じで、速度計の針が上がっていくのを気長に待つ感じになる。
100km/L巡航は2500回転くらいでも可能と言えば可能だが、なにぶんパワーがないので、80~100km/h巡航でも、流れや勾配の変化に応じて2000~4000回転くらいの範囲で絶えず上下してしまう。また、エンジン回転数と車速がリンクしていないので、速度を一定に保つのが難しく、アクセル開度をかなり意識的に調整しないと、いつの間にか車速が落ちてしまう。思わずクルーズコントロールが欲しいと思ってしまった。
その気になれば、最高速は実質120km/Lくらいか。タントより頑張ってくれる感はあるが、実質的にはそう大差ないと思う。
試乗燃費は11.9~18.1km/L。JC08モード燃費は26.0km/L
今回はトータルで約230kmを試乗。試乗燃費(車載燃費計)は、いつもの一般道、高速道路、ワインディングを走った区間(約90km)が11.9km/L。また、主に一般道を走った区間(約60km)が13.3km/L、一般道をエコ運転で走った区間(約60km)が18.1km/Lだった。総じて、燃費に頓着せずに乗ると、だいたい12~13km/L台かな、という印象。
なお、JC08モード燃費(FF車)は、NAモデルが26.0km/Lで、ターボ車(アイドリングストップが付かない)は22.2km/L。ちなみにライバル車は、N-BOXが25.2km/L(ターボ車は21.6~23.4km/L)、タントが28.0km/L(ターボ車は26.0km/L)、スペーシアが27.8~29.0km/L(ターボ車は26.0km/L)。
ここがイイ
初期デイズからの進化。ライバル車と互角のシートアレンジ、快適装備など
昨年乗ったデイズと比べると、パワートレインなど多くの点で明らかに進化していること。詳しくは総合評価で。
素晴らしいスペース効率は、軽が今後、タウンコミューターとしてさらに理想的な乗り物に進化する可能性を示していると思いたいところ。そんなスーパーハイトワゴンの選択肢をルークスがまたひとつ増やしてくれた。これからの進化が楽しみだ。
スーパーハイトワゴンとしては、ひと通り揃っているシートアレンジ。自転車もとりあえず載せられる。また、前にも後ろにも引き出せる助手席シートアンダーボックスはいいアイデアで、ゴミ箱としても使えそう。助手席シートバックテーブルは3kgまでOKで、乳幼児用ドリンクマグ対応。タブレット端末も立てかけられるなど後席の子供にはウケが良さそう。大人にとっても後席テーブルは何かと便利なはず。
軽でありながら、リヤシーリングファンやロールサンシェード、オプションの後席専用モニターなどで、まさにミニバンライクな後席空間が得られる。友達の家のミニバンに乗った子どもが、「うちのクルマにもあるよ」と思えるのは重要。
ここがダメ
前席足元の狭さ。NAモデルにVDCがないこと。自動ブレーキの未採用など
本文でも触れたように、センタートンネルが出っ張っており、ドライバーは左足の置き場がない。また、ベンチシートは男性でも座面が前後に長過ぎるように感じられるほか、ダイアル式のシートリフターを使ってもフィット感が得にくい。
なぜかVDCがNAモデルに一切用意されていないこと。eKスペースの方はNAモデルでもオプション設定があるのだが……。いわゆる横滑り防止装置(ESC)は、軽自動車でも新型車への義務化が2014年10月から始まり(継続生産車は2018年2月以降)、すでにライバル車でもオプションないし標準装備化が進んでいる。実際、これだけ重心の高いクルマなので、高速域での緊急回避では冷やっとする挙動が出かねない。また。VDCは積雪路での走破性も高めてくれるというメリットもある。
同様に、軽でも当たり前になりつつある衝突被害軽減ブレーキは、オプションでいいからあると良かった。ライバル車が低速度域の衝突軽減ブレーキを格安でオプション設定しているのを見ると、ちょっと差を感じてしまう。日産自身、この7月から普通車のノートでフロントカメラ式の「エマージェンシーブレーキ」(クルマだけでなく歩行者も検知する)を無償で装備できるキャンペーンを始めている。軽であっても、というか軽でこそ、まずは「ぶつからない」クルマを目指して欲しい。
本文でも触れたように、ハイウェイスターでしかターボ車が選べないこと。ライバル車でも最近は標準車にターボを用意するのが普通になっている。ハイウェイスターのターボは車両だけで約180万円もしてしまうので、もう少し手頃な価格のターボ車が欲しいところ。
売りの一つであるリヤシーリングファンだが、今回のように外気温が36度Cにもなると、エアコン全開でも天井付近の空気は暖かく、当然ながら後席にも「温風」が送られてしまう。見た目がエアコンなので、つい冷たい風が出てくるのを期待しまうわけで、なんとかエアコンの冷気をここから出せなかったものか……。
流行りのタッチパネル式エアコンはやはり操作しにくい。温度調整するだけでも視線移動量がけっこう大きいので、走行中の操作には不安を感じた。これはタッチパネルを採用する他社の新型車も同様。
アラウンドビューモニターは「念のための確認」としては確かに便利だが、駐車時にはどこを見たらいいのか迷ってしまう。身も蓋もないことを言えば、バックモニターがあれば十分だと思う。
総合評価
わずか1年でずいぶん良くなった
先週のダイハツ タントに続いて、NAエンジンのスーパーハイトワゴンに乗ったわけだが、第一印象は、「なかなか走るし、ベース車のデイズに比べて、ずいぶん良くなっているな」というもの。ちょうど一年前に乗ったデイズの印象が「かなり遅いなあ」というものだっただけに、それより約100kg重くなったにも関わらず、わずか1年で「街乗りならこれでいいか」というところまで改良しているのは、たいしたものだ。さすが日本車だと思う。
なお、マイナーチェンジ前のデイズ/eKでも、希望すればパワートレインの制御プログラムの書き換えをディーラーが行ってくれるが、デイズは7月に(eKは6月に)マイナーチェンジしており、そちらはもう書き換えの必要はない(本文にあるようにNAモデルの最終減速比は6.8%もローギアード化され、全車にバッテリーアシストシステムも追加されている)。
JC08モード燃費は26.0km/Lで、昨年乗ったデイズ(当時29.2km/L、マイナーチェンジ後は30.0km/L)ほど良くはないが、今回の試乗燃費では昨年のデイズを若干ながら上回った。100kgも重くて、空気抵抗も増えて、しかもよく走るのに、実用燃費が悪くなっていないのは、ものすごい勢いで改良されている証拠だろう。
先週書いたように、タントは確信犯的に「走り」よりも、広さや独自のドア構造による使い勝手を重視している。また、ライバルとなるN-BOX、スペーシアは高速走行を含めて、走りでもそうとう頑張ってる。そこでデイズ ルークスはというと、高速での走りはちょっと辛いかなという感じで、やはり一般道での走りを重視したチューニングだ。
また、空間の広さに対する妙な違和感、左右に車体を振ったときのグラグラ感などは、ライバル車ではかなり解消されている部分であり、デイズルークスはやはりメーカー(日産・三菱)にとっての第1世代という印象が否めない。スズキにとって、このジャンルの第2世代モデルであるスペーシアなどは、デイズ ルークスより車重が100kgも軽いなど、やはり一日の長がある。
こうなると買いどきが難しい
いずれにせよ、車重が増えるスーパーハイトワゴンは、どのメーカーのモデルでもNAエンジンならタウンユース中心の利用がおすすめ、というのが現状だろう。とはいえ今後も「進化」を期待できるのが、このカテゴリーだ。現状は街乗りなら不満なしというところだが、これまでのように時を経るごとにどんどん良くなっていくはず。しかも今後はフルモデルチェンジではなく、短いサイクルのマイナーチェンジを繰り返すことによって変わっていくはずだ。デイズ ルークスでも、いずれはVDC装着車の拡大や、衝突被害軽減ブレーキの採用などが行われるだろう。こうなると、なかなか買いどきが難しいが。
ところでエクステリアについては、ツートーン塗装の用意があると、より女性に受けるのではと思う。ハイウェイスターは日産のアイデンティティともいうべきメッキグリルギラギラルックスゆえ、男性購入比率がかなり高そうだ。そこをアピールしたいのはよく分かるし、現実に売れてもいるが、さらに売れるためにはメインターゲットの女性にウケがいいツートーンなど、カワイイ系の強化が必要だと思う。ハイウェイスターではない標準車でもルックスはかなり男っぽい気がするのだが、いかがだろう。