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名古屋市中区新栄に「MINI 千種」がオープン:MOTOR DAYS ピックアップニュース

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株式会社ホワイトハウスは3月21日(金・祝)より、名古屋市中区新栄に、MINIの新車販売ディーラー「MINI 千種(ちくさ)」を新規オープンする。オープンを翌日に控えた20日に、関係者を招いて内覧会が行われた。

名古屋市中心部の千種エリアに立地

MINI 千種は、名古屋市の中心の一つである栄(さかえ)から西に約2kmの千種エリアに立地。名古屋市中心部を東西に横切るメインストリート、広小路通の交差点南に位置する。JRおよび地下鉄の千種駅から徒歩4分と交通アクセスに優れ、人通りの多いエリアでもある。
 
ビルの地上フロアに設けられた店舗内には、5台のMINIを展示できるスペースのほか、新車引き渡し専用の「ハンドオーバーエリア」、計4基のリフトや検査ラインを備えたワークショップエリア、そして8台分の来場者用駐車スペースを設けるなど、大都市中心部に新規で開設される輸入車ディーラーとしては異例の規模。また、今年から導入されたMINIの新しいグローバルCIに基づく家具が導入された日本初のMINI拠点となったほか、敷地内にペイントされた横断歩道(ビートルズの「アビイ・ロード」ジャケット写真をイメージしたという)や車止めのLED照明など、随所にMINI 千種ならではの特別な意匠も施されている。
 
MINI 千種を開設したホワイトハウスグループは、名古屋名東、名古屋守山、岡崎、NEXT 岡崎と、4店舗のMINI正規ディーラーを愛知県内で展開しており、今回のMINI 千種は5拠点目。同グループはMINI以外にも名古屋市内および近郊で、アウディ、BMW、プジョー、シトロエン、アルファロメオ、フィアット、ジャガー、ランドローバーなど多数の輸入車ディーラーを展開しているが、千種エリアへの出店は今回が初となる。 (丹羽圭@DAYS)
 
■MINI 千種 ・所在地:〒460-0007 名古屋市中区新栄3丁目20-23 ・ショールーム電話番号:052-261-3298 ・ワークショップ電話番号:052-261-3232 ・延べ床面積:297㎡(ショールーム)+ 299㎡ (ワークショップ)   ・新車展示台数:5台 ・ワークショップベイ数:4ベイ ・定休日:毎週水曜日 ・ショールーム営業時間:10:00-19:00
 
 
 
   
 

ホンダ ヴェゼル ハイブリッド:新車試乗記

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キャラクター&開発コンセプト

スシャリペティ風のクロスオーバーSUV

東京モーターショー2013に出展された時のホンダ ヴェゼル(参考出品車)
2013年11月に開幕した東京モーターショーでお披露目され、12月19日に正式発表、12月20日に発売された新型車ヴェゼル(Vezel)は、3代目フィットがベースの小型クロスオーバーSUV。 「センタータンクレイアウト」を採用するプラットフォームはフィット譲りだが、ボディサイズは二回りほど大きく、専用の内外装を採用。ホンダによれば、1980年代に一世を風靡した“スペシャリティモデル”を意識し、なおかつSUV、クーペ、ミニバンの要素も融合した全く新しいジャンルのクルマとのこと。車名ヴェゼルは、カットした宝石の小さな面「Bezel」と「Vehicle」を合わせた造語で、宝石の輝きのように「多面的な魅力と価値を持つクルマ」だという。
 
ハイブリッド車には、現行フィットハイブリッドの1.5リッターアトキンソンサイクルエンジン(110ps、13.7kgm)よりパワー重視の1.5リッター直噴エンジン(132ps、15.9kgm)に7速DCTを組み合わせた「スポーツ ハイブリッド i-DCD」を搭載。システム出力はフィットハイブリッドの137psから+15psの152psに向上。また、ホンダのハイブリッド車では初の4WDを設定した。JC08モード燃費は、プラグインハイブリッドなどを除くSUVで国内最高の24.2~27.0km/L(4WDは21.6~23.2km/L)を達成している。 また、純エンジン車には、フィットの上級グレードと同じ1.5リッター直4・直噴エンジン(131ps、15.8kgm)とCVT(無段変速機)を搭載。こちらにもFFと4WDがあり、JC08モード燃費はFFで19.2~20.6km/L、4WDで19.0km/Lとなっている。

販売目標は月間4000台

2014年12月に開催された名古屋モーターショーに出展されたヴェゼル ハイブリッド
国内向けは、フィットと同じ埼玉製作所の寄居工場で生産。販売目標は月間4000台。累計受注台数は2014年1月31日時点で、目標の8倍以上になる3万3000台を超えた。 ただ、2月10日にはフィットとヴェゼルの両ハイブリッド車に、7速DCTの1速ギアに関するリコール届出があった。販売実績(自販連発表)は、2013年12月:2207台(25位)、2014年1月:6235台(9位)、2月:4257台(22位)となっている。 なお、ヴェゼルはフィット同様、世界中で販売されるグローバルカー。国内からの輸出はなく、海外向けは北米、欧州、アジアで生産が行われる。 ■過去のニュースモーターデイズ>ホンダ、新型ヴェゼルを発表(2013年12月) ■過去の新車試乗記ホンダ フィット ハイブリッド (2013年11月) ■外部リンクホンダ公式HP>フィット、VEZELのリコール (2014年2月10日届出)
 

価格帯&グレード展開

純エンジン車が187万円~、ハイブリッドが219万円~

ボディカラーは全8色。写真はハイブリッド専用色のミスティグリーン・パール
1.5リッター直4の純エンジン車(CVT)と1.5リッター直4+モーターのハイブリッド車(7速DCT)があり、それぞれにFFと4WDを設定。価格はガソリン車が187万円~、ハイブリッド車が219万円~。純エンジン車とハイブリッド車は装備が異なるので単純には言えないが、「ハイブリッド代」はだいたい30万円くらいだ。 FFの21万円高(装備差を含む)になる4WD車には、現行CR-V譲りの新開発「リアルタイムAWD」を採用。ホンダ独自の電子制御多板クラッチ式4WDで、完全メカ式のビスカス式や従来のデュアルポンプ式4WDに比べて、制御自由度が高く、走破性が高まっている。

「あんしんパッケージ」は上位グレードに標準装備

エントリーグレードを除いて、最近のホンダ新型車に多い片側2灯LEDヘッドライト(ロービーム)を標準装備
低速域で自動ブレーキを作動させるシティブレーキアクティブシステムや、前席サイド&カーテンエアバッグをセットにした「あんしんパッケージ」は、エントリーグレード(ハイブリッド標準車やガソリン車のG)を除いて、標準装備。 一方、プローブデータ機能(インターナビ装着車から収集した交通情報や蓄積データを活用して案内等を行う機能)で定評があるHonda インターナビは全車オプションだが、通信費が3年間無料になるサービス「リンクアップフリー」が付いている。
 
Honda インターナビは、メーカーオプション。フリックなどスマホライクな操作が可能
【ガソリンエンジン車】 ・1.5L 直4・直噴DOHC(132ps、15.9kgm)・CVT ■G、X、S(FF)   187万~212万円 ■G(4WD)       208万円 【ハイブリッド車】 ・1.5L 直4・直噴DOHC(131ps、15.8kgm)・7速DCT ■標準グレード、X、Z(FF)        219万~250万円 ※今回の試乗車 ■標準グレード、X、X Lパッケージ(4WD) 240万~268万円
 

パッケージング&スタイル

SUVとクーペのクロスオーバー

試乗車のボディカラーはホワイトオーキッド・パール
「Dynamic Cross Solid」なるデザインコンセプトは、いまいち意味不明だが、要はSUVのような力強いロアボディとクーペ風のアッパーボディを組み合わせた、というもの。ホンダ自身はヴェゼルを、1980年代に一世を風靡した“スペシャリティ”の再現としており、全高はSUVにしては低めで、ルーフはBMWのX6みたいに後ろでスラント。フロントフェンダーの造形もかなりクーペっぽい。 もっとも、ホンダには北米で以前販売していた大型クロスオーバーSUV「アキュラ ZDX」(2009年~。2013年に販売終了)というモデルがあり、ヴェゼルのスタイリングはそれの小型バージョン風にも見える。

大きく見えて、意外にコンパクト

 
リアドアのアウターハンドルは、流行りのCピラー内蔵式で、2ドアクーペ風に見せる
全長4.3メートル、全幅1770mmのボディサイズは、フィットより二回りは大きく、ホイールベース80mmも長い。全高を除けばゴルフ7と同じくらい。SUVにしてはロー&ワイドゆえ、遠くから見ると実寸以上に大きく立派に見える。国内でのライバル車は、日産ジューク、デュアリスあたりだが、スバルのXV ハイブリッド、ゴルフ7、MINI クロスオーバー、マツダ CX-5あたりとも比較されそう。
 
アキュラ ZDX (2009年) (photo:Honda)
アキュラ ZDX (2009年) (photo:Honda)
最低地上高は185mm(FF)/170mm(4WD)。フィット(135/150mm)より20~50mm高い
 
    全長(mm) 全幅(mm) 全高(mm) WB(mm) 最小回転半径(m)
ホンダ フィット ハイブリッド(2013~) 3955 1695 1525 2530 4.9~5.2
トヨタ アクア (2011~) 3995 1695 1445 2550 4.8~5.7
日産 ジューク (2010~) 4135 1765 1565 2530 5.3
VW ゴルフ 7(2013~) 4265 1800 1460 2635 5.2
ホンダ ヴェゼル (2013~) 4295 1770 1605 2610 5.3
スバル XV ハイブリッド(2013~) 4450 1780 1550 2640 5.3
トヨタ プリウス (2009~) 4460 1745 1490 2700 5.3
マツダ CX-5(2012-) 4540 1840 1705 2700 5.5
 

インテリア&ラゲッジスペース

前席はスペシャリティ風。後席と荷室はフィット並みに実用的

タッチパネル式のオートエアコンは全車標準。助手席側ダッシュ前には、横長の吹き出し口、その名も「ワイドフローエアコン」を配置
アイポイントは一般的なセダンより約100mm、フィットより約60mm高いが、内装デザインもやはりスペシャリティ風。センタークラスターは運転席を向いて斜めになり、運転席と助手席の間に架かる「ハイデッキセンターコンソール」はS2000風でもあり、エクステリアの項で触れたアキュラ ZDX風でもある。 また、ドアトリムをソフトなクロス張りにしたり、センターコンソールの表皮をソフトパッドにするなど、触感にも配慮。また、国内向けホンダ車ではエリシオンの改良型以来だという電動パーキングブレーキ(オートブレーキホールド機能付)も採用されている。フィットベースであることを窺わせるものは、ほぼ皆無。 一方で後席は、外観から想像されるより広々。ホイールベースは現行フィットより80mmも長く、ゴルフ並みにあるので、フットルームもヘッドルームも十分。そして荷室も広い。駆動用バッテリーの存在を感じさせないパッケージングは見事。
 
サイドウインドウは小さめだが、後席の広さは不満なし。つま先は前席下に入り、若干のリクライニング調整も可能。チップアップ(座面の跳ね上げ)もできる
前席下には燃料タンクがあるが、ドライビングポジションは自然。チルト/テレスコ、ラチェット式シートリフターは全車標準
ハイデッキセンターコンソールの中は、収納スペース(LED照明やHDMI端子付き)。後方には大型のドリンクホルダーが備わる
 
荷室容量は404リッターで、Cセグワゴン並み。後席使用時でもゴルフバッグを3個が積めるとのこと
後席をダイブダウンすればフラットに。荷室高は83センチ(発表値)で、スポーツ自転車でも前輪を外せば、立てた状態で2台積める
ハイブリッドの荷室フロア後端には、ちょっとした床下収納スペース。そこから前に駆動用バッテリーが収まる
 

基本性能&ドライブフィール

ハイブリッドにもパワー重視の直噴エンジンを搭載

エンジンは全車1.5リッター直噴。ハイブリッド車には7速DCTを組み合わせた「スポーツハイブリッド i-DCD(Intelligent Dual Clutch Drive)が搭載される
試乗したのはハイブリッドの中間グレード「X」(235万円)に、オプションの17インチアルミホイール&タイヤ、インターナビ等を装着した仕様。 ホンダのハイブリッドと言えば、今でもエンジンとモーターが一体になったIMAを思い浮かべてしまうが、ヴェゼルや新型フィットのハイブリッドシステムは、「スポーツハイブリッド i-DCD」と呼ばれるもの。エンジン、モーターは独立しており、変速機はホンダ独自開発の7速DCT(クラッチ部分は独シェフラー社製)。これにより、モーターだけでの発進・走行が可能になっている。
 
このグラフは、ヴェゼルのハイブリッドシステムと2リッター純エンジン(自然吸気)を比較したもので、4000回転以下のトルクではハイブリッドが圧倒的に上回ることを示す
ただ、アクセルを踏み込んだ瞬間に分かるほど、ヴェゼルはフィットハイブリッドよりパワフルで、速い。エンジンは、フィットハイブリッドと同系の自然吸気1.5リッターDOHC(LEB型)だが、フィットハイブリッドが熱効率を重視したアトキンソンサイクルなのに対して、ヴェゼルのものは一般的なオットーサイクルの直噴。これによりエンジンの最高出力は110psから132psに、そして最大トルクは13.7kgmから15.9kgmにアップ。モーター(29.5ps、16.3kgm)自体はフィットハイブリッドと同じだが、システム出力は、フィットハイブリッドの137psに対して、「2.0Lエンジンに匹敵する」152psにアップしている。要するにヴェゼルは、燃費よりパワー重視だ。

メカメカした走りの割に、燃費もいい

プリウスやフィットハイブリッドと同じ電子制御セレクターを採用。手前に「スポーツ」モードのスイッチを配置
車重自体はFFの場合、フィットハイブリッドの1080~1160kgに対して、ヴェゼルは1270~1300kg。つまり、150kgくらい重いわけだが、パワー感はヴェゼルの方が明らかに上。特に、燃費優先の「ECON(イーコン)」モードを切ってノーマルモードで走ると、霧が晴れたようにパワートレインがリニアに反応し、キビキビ走ることができる。ヴェゼル、意外に速い。 さらにスポーツモードを選択すると、メーター照明色が赤になり、アクセルに対するツキも向上。高回転まで引っ張るようになる。ただ、こうなるとエンジン音がけっこうノイジーで、フリクション感も高まるため、そんなに楽しいわけではない。ノーマルモードで十分だ。 一方で、燃費の良さにも驚かされる。エンジンが暖まれば、EV走行を多用し、車載モニターの平均燃費はどんどん向上。と言っても、プリウスのように20km/L台も楽勝というわけではないが、DCTによるメカメカした走りで、街中でも14km/L台以上をキープできる。

ワインディングもスポーティに

車両協力:ホンダカーズ東海
足回りはいかにもホンダ車らしく、カチッと硬め。車重は試乗車で1300kgだが、しっとりとした重厚感よりも、軽快感の方が強い。目線が高めのシビックという感じか。リアサスペンションはフィットと同じトーションビームだが、その点は特に気にならない。コーナーではロール感があまりないまま、軽快に曲がってゆく。試乗車のタイヤはパッケージオプションの215/55R17(ダンロップ SPスポーツ MAXX 050)で、いわゆるエコタイヤのような情けなさはなかった。
 
高速道路もそつなく走り、静粛性も普通にいい。風切り音やロードノイズは、特に気にならなかった。100km/h巡航時のエンジン回転数は2000回転弱といった感じ。液晶ディスプレーに表示できる回転計は目盛りが荒くて分かりにくい。 なお、30km/h以下の低速で作動する「シティブレーキアクティブシステム」は上位グレードに標準装備されるが、ミリ波レーダーを使ったCMBSやACC(アダプティブ クルーズ コントロール)は未設定。このあたりは、おいおい用意するということのようだ。

試乗燃費は13.6~18.7km/L。JC08モード燃費はFFで24.2~27.0km/L

今回はトータルで約200kmを試乗。試乗燃費(車載燃費計)は、いつもの一般道、高速道路、ワインディングを走った区間(約90km)で13.6km/L。また、一般道を大人しく走った区間(約30km×2回)で18.5km/L、18.7km/Lだった。JC08モード燃費は、FFで24.2~27.0km/L、4WDで21.6~23.2km/L(いずれもグレードやオプションの有無で多少異なる)。 総じて、プリウスやアクア、フィットハイブリッドには及ばないが、無頓着に走っても14km/L前後はいくという印象。タンク容量は40リッターなので、航続可能距離は500~700kmくらいか。
 

ここがイイ

パッケージング、扱いやすいさ、パワー感、内装デザイン

フィット譲りのパッケージングは見事と言うしかない。駆動用電池を積んでいることなど忘れてしまうほど荷室は広いし、シートアレンジの自由度も高い。センタータンクレイアウトがハイブリッド車でここまで威力を発揮するとは、当のホンダも思っていなかったのでは。 扱いやすいボディサイズ。全幅は1770mmもあるが、狭い道でも気にならないし、小回り(最小回転半径は5.3メートル)もまずまず効く。
 
ノーマルモードやスポーツモード(つまりECON以外のモード)での、スポーティな走り。欧州車で主流の直噴ターボモデルあたりと比べると、もう少し突き抜けるようなパワー感は欲しいところだが、国産ハイブリッド車としては、かなり走りが楽しい方だと思う。これにはもちろん、ダイレクト感のある7速DCTが効いている。 ドアトリムに布を張るなど、質感や触感にこだわった内装。ウォークスルーは出来ないが、そういう実用性が欲しければ、次期フリードだってありますよ、ということだろう。大胆にスペシャリティに振ったのは良かったと思う。

ここがダメ

ジャマなAピラー、メーターの表示など細々

高めのアイポイントで見晴らしはいいが、交差点での右・左折などではAピラーがジャマで、横から近づいてくる歩行者や自転車が見にくい。超高張力鋼板(1500Mpa級のホットスタンプ材)を使って出来る限りAピラーを細くしたようだが、やはりまだ気になる。 メーターの右側にある液晶ディスプレイは切り替え式で、平均燃費、燃費履歴、ハイブリッドシステムのエネルギーフロー、アクセル開度グラフ、エンジン回転計などを表示できるが、逆に言えば平均燃費とエンジン回転計を同時に見ることは出来ない。特に常時見たいのは平均燃費と回転計なので、やはりエンジン回転計は、専用メーターを装備したいところ。中央のアナログメーターを回転計にし、速度をデジタルにしても良かったと思う。
 
また、パドルシフト操作時には、メーター内に使用中のギア段数が表示されるが、これはVWなどのように常時表示にしてもらいたい。せっかくの7速DCTなんだし。 インターナビはプログレッシブコマンダーを廃止し、スマホ風のタッチ操作になったが、スムーズにフリックできないなど、操作感はいまいち。多くのユーザーは、最新のスマホやタブレットの操作性を知っているので、今のレベルでは不満を感じると思う。これは多くの最新純正カーナビにも言えることだが。
 
フィットハイブリッドやオデッセイに続いてしつこく書くと、LEDヘッドライトはロービームのみで、ハイビームは黄色っぽい色調のハロゲンになってしまう。LEDロービームがとても明るいせいもあり、ハイビームに切り替える度に「こっちもLEDだったら」と思ってしまう。バイキセノンに加えて、ハイ/ローLEDも他社モデルで増えているので、早めに手当てして欲しい部分。

総合評価

“持ち上げ系”はカッコいい

ヴェゼルは世界戦略車だ。日本では昔あったスペシャリティカーの復活とアピールされているが、世界的に見ればスタイリッシュでコンパクトな街乗りSUVというのは、最も売れ筋のトレンド車。そうした目で見ると、なるほど、いかにもクラスレスに見える内装の質感など、世界で勝つためのものなのだな、と思える。もちろん、スタイリッシュでワイドなボディも、世界を見て作られているのだろう。全高にしても、一般的な日本のタワーパーキングには入らないなど、日本の都市部に住む人にはちょっと選びにくい部分がある。 それでも、その国際サイズゆえに、スタイリングは見事にカッコよく決まっている。コンパクトながら、ワイド&ロー(ローなわけはないが、そういう印象)なスタイルになった。それをそのまま最低地上高を上げて持ち上げる手法は、今やカッコよく見せるための定番でもある。VWのクロス系、アウディのオールロード系など、持ち上げ系のクルマはどれも、よりカッコよさが高まっている。人気のスバル XVも考えてみればインプレッサの持ち上げ系だ。ヴェゼルも第一印象で、これは売れる、と思ったが、実際、相当なヒット車になりつつある。

HR-Vの話

ホンダ HR-V (1998年) (photo:Honda)
また、ヴェゼルにはハイブリッド車もあるため、日本では、より売れ筋車になりえる。ライバル視されるスバルXV ハイブリッドより確実に燃費はいいし、日本ではクリーンディーゼル車よりポピュラー。近年、どうにも違和感があったホンダ車のインパネデザインは、ここに来てすっかりシンプルなものに戻ってきており、ヴェゼルのインテリアも素直にイイと思えるものになっている。居住空間やユーティリティにも不満がない。二重底になっていてサイズ違いの飲み物が置けるセンターコンソールのカップホルダーやら、使い勝手には疑問があるが、目新しいタッチパネルの操作系など、人目を引く装備もある。人の心をくすぐる演出は多彩だ。 たとえ斬新で意欲的なクルマを発表しても、時代にマッチしないと売れない。ホンダも時々そういう手痛い失敗をしてきた。例えばHR-V。「楽しさ創造車Jムーバー」第二弾(ちなみに第一弾はキャパ)という提案型のクルマとして、1998年に投入されたHR-Vのコンセプトは、今思うとほとんどヴェゼルと同じようなものだったと思う。「斬新なスタイルと優れたユーティリティ、爽快な走りをコンパクトなボディの中に実現し、世界最高水準の安全・環境性能を備えた新しいジャンルのクルマ」だった。街乗りで生きる、スタイリッシュな3ドア「持ち上げ系」の乗り物。自動車ジャーナリストは絶賛したのだが、日本ではあまり売れなかった(苦笑)。途中から5ドアも追加したのだが、2006年には販売を終了している。 その点、今回のヴェゼルはアルファロメオのような隠れ5ドア車でもあり、ミニバンブームが去って次のブームを求めている日本では、こういう持ち上げ系が流行りとなる可能性は高い。ポルシェ マカンの受注が好調なように、世界的にもこうしたコンパクトな持ち上げ系シティカーのニーズが高まっている。世界市場と日本市場がいよいよクロスし始めており、日本向けとか世界向けといった区別は、徐々に意味を持たなくなりつつある。このクルマはそういったことを象徴するのではないか。そしてベースはフィットゆえ、開発や生産の面でもホンダにとってはやりやすい部分がある。

さらにジャンルを超えたクルマに

とはいえ、一つ不満を言えば、あまりにまとまりすぎているという印象があることだ。アクが強くなく、どこから見ても優等生に見える。ジュークやXV、そして過去のHR-Vなどと、少し違うと思えるのがそのあたりだ。そして日本ではヴェゼルを蘇ったスペシャリティカーと言うのであれば、個性の部分はもう少し必要ではないか。かつてのスペシャリティカーは、がんばれば何とか手が届きそうな、皆の憧れの存在だった。2代目プレリュードなどは当時、いかにも遊び人的な、圧倒的な存在感を放っていたが、ヴェゼルは最近のホンダらしい落ち着いたクルマに見える。まあプレリュードのそれは、1980年代という時代の影響も大きかったのだろうが。 「ジャンルを超えて行け」というヴェゼル。内外装デザインの点では確かにそう。しかし今のパワーユニットのヴェゼルは、割に常識的。ホンダにはアコードハイブリッドという画期的なハイブリッドシステム車があるが、もしそれと同じようなパワーユニットがヴェゼルに載ったら、それこそがジャンルを超えたクルマになったように思う。
 

東京モーターサイクルショー 2014が開幕:MOTOR DAYS ピックアップニュース

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国内最大級のモーターサイクルイベント「第41回東京モーターサイクルショー」が2014年3月28日(金)に、東京ビッグサイトで開幕した。初日は初夏のように暖かい晴天に恵まれ、平日にも関わらず多くの人で賑わった。開催は30日(日)まで。ショーの様子を現地から駆け足でリポート!

国産車編

ホンダはNM4で、ヤマハはMT-09でお祭り状態

ホンダ MN4は大人気で、2台のうち1台はまたがることも可能だったが、近づけないほどの人だかり
ホンダは、1週早く開催された大阪モーターサイクルショーで世界初公開した市販予定車「NM4(エヌエムフォー)」を東京にも出展。「近未来」と「COOL」を開発テーマとした斬新なデザインの車体に、745cc 直列2気筒エンジンとDCT(デュアル・クラッチ・トランスミッション)を搭載。スリムな「NM4-01」と、リア両サイドに収納スペースを持つ「NM4-02」の2タイプを用意している。
 
ヤマハで注目を集めたのは新型3気筒モデルの「MT-09」と発売予定の2気筒モデル「MT-07」
ヤマハは、欧州では昨年秋から販売開始し、日本では4月10日に発売する846cc・3気筒ミドルクラスのスポーツモデル「MT-09」を強力にプッシュ。最新の3気筒モデルとしては、トライアンフ、MVアグスタに次ぐ参入となる。加えて、MT-09よりさらに軽量スリムな新開発の689cc・2気筒モデル「MT-07」 (市販予定車)も何台か用意し、スタンドで固定されていないMT-07にまたがって、その「軽さ」を体感できるコーナーも設けている。
 
ホンダの 「モンキー・くまモン バージョン」は、子供(とその親)に大人気
ヤマハは昨年末の東京モーターショーで好評だったボルト カスタム(参考出品車)の続編を出展。市販予定は「まったくない」とのこと
開発中の250ccスポーツモデル「R25」(参考出品)はレース仕様という設定で、ロッシのMotoGPマシンと共に展示
 
2月に満を持して国内販売が始まったスズキのフラッグシップ「隼(ハヤブサ)」。180km/h速度リミッターこそつくが、輸出仕様と同じ197psを発揮
カワサキは「実質的にフルモデルチェンジです」という新型エストレヤをアピール。雰囲気は従来モデルのまま
販売好調のニンジャシリーズは1000、400、250が揃い踏み。1000用のパニアケース(オプション)は新タイプとのこと

輸入車編

BMWはR nine T、ドゥカティは新型モンスター、トライアンフはデイトナ675Rなどなど

BMW R nine T。このデザインがグサッとくる人はかなり多いはず
BMWの注目モデルは、4月に発売されるネイキッドモデル「R nine T(アール ナインティ)」。メーカー自ら、カスタムされることを前提として設計したモデルで、フロントはBMW自慢のテレレバーではなく、一般的な倒立式フォークを採用。リアサブフレームも脱着・交換可能とするなど、カスタムマインド溢れる作りになっている。エンジンは新型R1200GS譲りの1170cc・空・油冷フラットツイン(110ps)。会場に用意された車両は、常にオシャレなミドル層に囲まれ、熱い視線を浴びていた。価格は190万円とネイキッドとしては高めだが、ヒットは間違いない。
 
ドゥカティ モンスター 1200S
ドゥカティは昨年11月のEICMAショーで発表した新型「モンスター 1200/1200S」や、フェイスリフトされた「ディアベル」シリーズ等を出品。また、同じイタリアのMV アグスタは、3気筒モデルのブルターレ 800をベースにしたモタードタイプの「リヴァーレ 800」や、同じくブルターレ をベースに、シートフレームを短縮し、リアタイヤを200サイズにアップした新ジャンルモデル「ブルターレ 800 ドラッグスター」などを出展。角度によっては入り口がないように見えるユニークな箱型のブースに、現行アグスタをほぼフルラインナップで展示した。 トライアンフは新型デイトナ675Rや新型ストリートトリプルRをはじめ、サンダーバードシリーズのニューモデル等を出展。英国のエースカフェと外装デザインでコラボしたデイトナ675Rなどで、トライアンフらしさを前面に押し出している。
 
MV アグスタ ブルターレ 800 ドラッグスター。ホイールベースを含めて車体はブルターレ 800に近いが、見た目の印象はかなり違う
トライアンフは新型「デイトナ 675R」を出展。675cc 3気筒エンジンは128psを発揮
トライアンフは「サンダーバード」シリーズにも新モデルを追加。左は「サンダーバード コマンダー」、右が「サンダーバードLT」
 

「春」の訪れと共に新型ベスパがデビュー

ベスパ プリマベーラ 125
イタリアのベスパからは、新型スクーター「プリマベーラ 125」がジャパンプレビューされた。イタリア語で「春」を意味する車名は、往年のベスパ名車の名を復活させたもの。最近、限定発売された超プレミアムスクーター、ベスパ946のスタイリングイメージを引き継いだ、いわば量産普及モデルだが、そのデザインは掛け値なしに魅力的。ブースにはその946もあったが、一瞬同じモデルに見えるほど。ちなみにプリマベーラもベスパの伝統に則り、主要アウターパネルはスチール製となっている(946はアルミ製)。
 
右はスタイリングイメージの元になった946。こちらも125ccだが、お値段は約120万円!
モト・グッツィは新型クルーザー「カリフォルニア 1400 カスタム」を展示。写真はオプションのパニアケース付
ハーレー・ダビッドソンはハーレー自ら開発したものとしては初のトライク「トライグライド ウルトラ」を展示。普通自動車免許で乗れる、本物のハーレー。すでに販売中
 
昨年から日本で正規販売を開始したヴィクトリーと、昨年フルモデルチェンジしたインディアン。ヴィクトリーは米国ポラリス社の二輪ブランドで、インディアンも現在は同社で開発・生産されるが、雰囲気やメカニズムはまったく異なる
新型インディアン。往年のインディアンを彷彿とさせる造形の空冷VツインはOHV。左はインディアン初のフルフェアリングモデル「チーフテン」
日本でも急激にシェアを拡大中のKTMは、いつも通りモータースポーツを前面に押し出す。写真は昨年(2013年)のMoto 3マシン「KTM M32 GP」。250ccの4ストローク単気筒
 
  (photo/text:丹羽圭@DAYS)

トヨタ ヴォクシー ハイブリッド V:新車試乗記

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キャラクター&開発コンセプト

超低床プラットフォームを採用。ハイブリッド車も用意

新型ヴォクシー/ノア。写真はいずれもハイブリッド
トヨタの5ナンバー・トール型7/8人乗りミニバン、「ヴォクシー」「ノア」が2014年1月20日、6年半ぶりにフルモデルチェンジして発売された。2001年に発売されたFFベースのヴォクシー/ノアを初代とすれば、新型は3代目。今回はモデルチェンジでは内外装デザインが一新されたほか、新型プラットフォームで超低床化を実現。また、同クラスで初の、本格的なハイブリッド車(2月24日発売)が用意された。 ハイブリッド車には、現行プリウス/プリウスα譲りの1.8リッター直4エンジン、モーター、ニッケル水素電池、リダクション機構で構成される「THS II」を採用し、JC08モード燃費23.8km/Lを達成。また、ニッケル水素電池を運転席・助手席の下に置くことで、シートアレンジや荷室スペースを損なうことなく、ハイブリッド化している。 一方、純エンジン車では、バルブマチックを改良した2リッター直4ガソリンエンジン(3ZR-FAE)や新開発のCVT(無段変速機)、アイドリングストップ機能を新採用し、同クラスのガソリン車でトップクラスのJC08モード燃費16.0km/L(FF車)を達成している。
 
駆動用バッテリーは前席下に配置。センタータンクならぬ、センターバッテリーレイアウト
生産はトヨタ車体の富士松工場(愛知県刈谷市)。販売はヴォクシーがネッツ店、ノアがトヨタカローラ店で、月間販売目標はヴォクシーが4600台、ノアが3400台の計8000台。ちなみに初代はノア/ヴォクシーの順で表記されていたが、現在では販売台数の多い順にヴォクシー/ノアと表記するのが通例。 消費税増税直前となった3月の販売実績は、それぞれ1万1937台(登録車で6位)、9841台(同9位)。計2万1778台という数字は、登録車ではフィット、アクア、プリウスに次ぐ4位に相当する。 ■過去のニュースモーターデイズ>トヨタ、新型ヴォクシーとノアを発売(2014年1月掲載) ■過去の新車試乗記【ヴォクシー関連】ニュース2代目トヨタ ヴォクシー ZS (2007年7月掲載)初代トヨタ ヴォクシー (2001年12月掲載)
 

価格帯&グレード展開

純エンジン車が税込224万2285円~、ハイブリッド車が293万1429円~

左端はスポーティ仕様のヴォクシー ZS(純エンジン車)
2リッター直4(CVT)の純エンジン車には、FFと4WD、7人乗りと8人乗りがあるが、ハイブリッド車はFFの7人乗りのみ。価格(消費税8%込み)はヴォクシー/ノア共通で、ガソリン車が224万2285円~、ハイブリッド車が293万1429円~。 また、新型は、車いすなどに対応したウェルキャブ仕様も充実しているが、それらは全て純エンジン車になる。
 
内装カラーはブラックが基本だが、純エンジン車のヴォクシーでは派手なオレンジ&ブラック内装(写真)、同ノアではベージュ&ブラック内装も選べる
■ヴォクシー/ノア (共通) 【純エンジン車 (FF/4WD)】 ・2.0L 直4(152ps、19.7kgm)・CVT  224万2285円~ 【ハイブリッド車(FFのみ)】 ・1.8L 直4+モーター(システム出力136ps) 293万1429円~
 

パッケージング&スタイル

ヴォクシーらしくも、デザインはシンプルに

初代ヴォクシーから始まり、同じネッツ店向けのヴェルファイアでも採用されている上下2段ヘッドライトは相変わらずで、トヨタがヴォクシーらしさとして挙げる「“毒気”のあるカッコよさ」を象徴。一方で、先代(2代目)にあった複雑な曲面や抑揚は目立たなくなり、スタイリングはシンプルで、好き嫌いが分かれないものになった。ある意味では初代のテイストに戻った感じもする。
 
なお、先代ノアは、親しみやすい大人しめのデザインになっていたが、新型ノアには「ミニバンの王道をいく“堂々感”を表現」すべく立派なグリルが採用され、結果的にヴォクシー/ノアの差は以前より詰まった印象。このあたりの作り分けは、現行クラウンのアスリートとロイヤルよりも巧みだ。 全体的には、ベルトライン(サイドウインドウ下縁の水平ライン)が60mm下がったのが大きなポイント。これにより運転席からの死角が減り、室内の開放感も高まっている。このあたりはセレナやステップワゴンといったライバル車の影響も大きいだろう。

基本は5ナンバーサイズだが、全長は100mmアップ

先代に比べて全長は100mm、ホイールベースは25mm延長。ただ、基本的には「5ナンバーサイズのトール型ミニバン」であることが売りなので、スポーティな外観のZS(全長4710mm、横幅1730mm)以外は、全長4695mm、全幅1695mmと、きっちり5ナンバー枠いっぱいに収まっている。
 
    全長(mm) 全幅(mm) 全高(mm) WB(mm) 最小回転半径(m)
ホンダ ステップワゴン(2009~) 4690 1695 1815~1830 2855 5.3~5.6
日産 セレナ (2011~) 4685~4770 1695~1735 1865~1875 2860 5.5~5.7
先代(2代目)トヨタ ヴォクシー(2007~2014) 4595~4640 1695~1720 1850~1875 2825 5.5
新型トヨタ ヴォクシー/ノア (2014~) 4695~4710 1695~1730 1825~1870 2850 5.5
トヨタ エスティマ (2006~) 4795~4815 1800~1820 1730~1760 2950 5.7~5.9
トヨタ アルファード (2008~) 4870~4885 1830~1840 1905 2950 5.7
 

インテリア&ラゲッジスペース

見晴らし良好。8インチタッチパネルを採用

ダッシュボードの一部に触感のいいファブリックを張るなど、質感も向上
初代から継続採用されてきたセンターメーターが今回廃止されるなど、内装デザインは外観以上にガラリと変身。新型ハリアーにも採用された「おくだけ充電」や、助手席正面に設けられたオープントレイなど、ユーティリティ装備も充実している。 また、先代より細くなったAピラーと、大きくなった三角窓、同じく大きくなったサイドウインドウによって死角が減り、交差点での右左折や駐車時などに、クルマの周囲を確認しやすくなったほか、後席の開放感も高まった。
 
ハイブリッド車では、プリウス等と同じように操作できる電子式シフトセレクターを採用
もう一つ、新型で印象的なのは、センターにドーンと配置されたタッチ式の高精細8インチワイドディスプレイ。ほぼiPad mini(ディスプレイサイズは7.9インチ)に相当する大きさで、当然ながらフリック、ピンチイン、ピンチアウトといったスマホ的な操作ができる。地図は従来のトヨタ車で見慣れたものなので、新鮮味はないが、操作性そのものは悪くない。 一方で、エアコン操作スイッチが流行りのタッチ式ではなく、昔ながらの?スイッチとされたことには深く安堵。やっぱり、ここはスイッチの方がいいと再認識。

超低床で「ノンステップ」化。2列目には横スライド&前後ロングスライド機能

 
キャビン部分のボディ骨格を一新したことで、パッケージングも抜本的に進化した。燃料タンクを超薄型にして、先台以上の低床フラットフロア化を実現。リアドア部分ではフロア地上高が先代より86mmも低い360mmになったことで、ステップを廃止。お年寄りでも、楽に乗り降りできるはず。 また、全高が先代より25mm低くなったのに、室内高は逆に60mm増えてライバル車に並ぶ1400mmに。これにより子供なら立ったまま、大人でも楽に中腰で移動することができる。
 
7人乗りには前後・左右スライド付のキャプテンシートを採用。サンシェイドもエントリーグレード以外に標準装備
また、7人乗りシート車(2-2-3人。ハイブリッド車は全てこれ)のセカンドシートには、横スライド機能(スライド量65mm)および超ロングスライド機能(同810mm)を新採用。これにより、キャプテンシート状態(センターウォークスルーが可能)、ベンチシート状態、2列目を後端に寄せたリムジンモードなどなど、様々なシートアレンジが可能になった。スライド操作も簡単で、座面横のレバーを軽く上げると前後スライド、さらに引き上げると横スライドができる。なお、先代にあった回転対座は廃止された。
 
ウォークスルーはこんな感じ。前席と2列目の行き来は無理ではないが、靴を履いたままではやりたくない感じ
サードシートはの座り心地や広さは、2人までなら問題なし。フットルームは先代の100mm増し。7人乗りなら、センターの見通しが効くので閉塞感もない
セカンドシートを一番後ろにした状態。サスペンションの張り出しを避けるため、横スライド機能で中央に寄せる
 

超低床を実現。2列目には横スライド&前後ロングスライド機能

セカンドシートを前に寄せ、サードシートを跳ね上げ、フロアボードを外した状態。床下収納の右にあるのは補機用の鉛バッテリー
サードシートは従来通り、ワンタッチで左右にフワッと跳ね上がるタイプを継続。跳ね上げた時に、シートがかさばらないのが自慢だ。 ちなみにセレナのサードシートも跳ね上げ式だが、あちらは独自のリンクでクォーターウインドウの視界を確保するのが売り(ただし跳ね上げ時の張り出しは大きい)。また、ステップワゴンは、以前は跳ね上げ式だったが、現行の3代目ではオデッセイのように180度反転して床下収納するタイプ。
 

基本性能&ドライブフィール

プリウス風にモーターで発進。街中では不満を感じさせない

PCU(パワーコントロールユニット)等を備えた、お馴染みのTHS II。代わりに鉛バッテリーは荷室床下に引っ越し
試乗したのはハイブリッド。パワートレインは基本的に現行プリウスと同じ「THS II (リダクション機構付)」で、制御面では車重の重いプリウスαに近く、最終減速比もαと同じローギアード。エンジンは1.8リッター直4で、駆動用バッテリーはプリウス/プリウスαなどと同じニッケル水素だ。 というわけで、発進直後はモーターだけで走り、途中からエンジンが掛かって加勢する感じはプリウスと似ている。エンジンはプリウスより早めに掛かるものの、アクセルを全開にしない限りは、モーターのトルクを活かしたスムーズで静かな発進・加速が可能。ハイブリッド車では各種ノイズが気になりやすいので、新型ではガソリン車も含めて、遮音/吸音材を入念に追加しているようだ。 ただ、車重は試乗車で1630kgもあり、プリウス(販売主力は1350~1400kg)より250kgほど、α(1450~1480kg)より150kgほど重い。このウエイトハンディは、ヴォクシーに乗った後、プリウスに乗るとはっきり実感できる。プリウスの走りはやはり格段に軽快で、「モーターで走る」感が強い。
 
それでもヴォクシーだけ乗る分には、少なくとも街中では車重の重さは気にならない。むしろ、純エンジン車のヴォクシーより穏やかで落ち着きのある走りに好感が持てる。このあたりの「日常域で何も不満を感じさせない」走りは、いかにもトヨタ車。さすがノアと合わせて年間約10万台を目標とするモデルだなと思わせる。 ちなみに、ハイブリッド車のシステム出力は136psで、パワーウエイトレシオ(PWR)は約12kg/ps。これは軽のターボ車とだいたい同程度で、実感もそんなところ。一方、2リッターの純エンジン車は152psあり、車重も若干(40~50kgくらい)軽いから、PWRは10.3~10.5kg/psに向上する。エンジンを回した時の絶対的なパワーでは、ガソリン車の方が上だ。

山道はそつなく。高速道路はやや苦手

ハイブリッド車のアルミホイールは専用の軽量タイプ。タイヤサイズは195/65R15で、試乗車はグッドイヤ-のデュラグリップ(DuraGrip)、他にヨコハマのブルーアース(BluEarth)もある
いちおうワインディングも少し走ってみた。結論から言うと、特に運転して面白いわけではないが、そつなく穏やかに走ってしまう感じ。さすがに山道では動きが重く、アンダーステアも強くて、ペースが上がらないが、それがかえって奏功し、割と平穏に走ってしまう。ボディの剛性感や足回りの動きも、常識的なペースなら特に不満はない。モーターによるトルクがあるので、コーナーからの立ち上がりはやはりスムーズで静かだ。先代みたいな「ミニバンなのにこんなに軽快に走る!」的な驚きはないが、ファミリー向けミニバンとしては納得できる落とし所にあると思う。 一方、高速道路では、車重の重さと空気抵抗が実感される。空気抵抗は速度の2乗に比例するが、ヴォクシーの場合は特に70~80km/hくらいから「抵抗感」が増してくる感じ。瞬間燃費計を見ていると、速度が上がるに従って、数値が落ちてゆくのがよく分かる。また、追い越し加速も得意ではない。ただ、乗り心地や静粛性は十分なレベル。後席の家族からも不満は出ないだろう。

試乗燃費は13.3~18.2km/L。JC08モード燃費は23.8km/L

指定燃料はもちろんレギュラー。タンク容量は55リッターと大きめ
今回はトータルで約200kmを試乗。試乗燃費(車載燃費計)は、いつもの一般道、高速道路、ワインディングを走った区間(約90km)で13.3km/L、一般道を大人しく走った区間(約30km)が18.2km/Lだった。JC08モード燃費は23.8km/Lで、これは純エンジン車(同16.0km/L)のおおよそ5割増になる。 総じて、渋滞では燃費が良くなり、高速道路だと燃費が伸びない傾向は、同じハイブリッド車のプリウス以上に顕著。高速走行時の燃費は、走り方によっては純エンジン車と大差ないかもしれない。
 

ここがイイ

とにかく街中で乗りやすく、燃費もいい。シートアレンジ

視界がよく、小回りもまずまず効くし、ボディサイズは5ナンバー枠でどこに行っても困らず、おまけにガソリンもなかなか減らない、という具合に、とにかく街中では乗りやすい。まるでコンパクトカーみたいに、気楽に乗れる。セレナやステップワゴンのいいところをしっかり取り入れ、マーケットリサーチも地道かつ計画的に行い、より良いものにするというトヨタの強みから生まれた好商品の典型。その完成度の高さは、ある意味ハイエースの境地に迫りつつあるかも。 ハイブリッド車に関しては、街中での静かでスムーズな走りと、やはり燃費の良さが、最大の長所。ライバル車にない最大の武器が、このハイブリッドだ。車両価格は純エンジン車に比べて若干高く、燃料費で元を取るのは難しいだろうし、後述する弱点もあるが、それでも選びたくなる魅力がある。また、駆動用バッテリーを前席下に配置したことで、ガソリン車に何ら遜色ないパッケージングを実現しているのも見事な部分。 運転席のヘッドレストが柔らか。これは他の日本車では感じたことのないもので、気持ちがいい。回転体座もなくなり、シートアレンジはほぼ完成の域に達した。また、7人乗りセカンドシートのスライド機構により、室内のアレンジはさらに自在になった。車中泊を想定したフルフラットができるのもいいところ。またこのスライド機構の操作性も秀逸。一つのレバーをいっぱいに引くだけで、シートが前後にも左右にも動くので、一瞬「斜めにも動くのか!」と勘違いしたほどw

ここがダメ

走行モード切替スイッチの位置。高速域が苦手

走行モードの切り替えスイッチ(EVモード、エコモード、パワーモード)が、ステアリングの裏側にあり、運転中はまったく見えないこと。開発途中まで装備するのを忘れていたのかと思えるほど、取ってつけたような場所にあり、試乗当初はスイッチの存在にすら気付かなかった。まあ、エコモードやノーマルモードに入れっぱなしでも問題はないのだが、深夜の帰宅時などに自宅近くでEVモードボタンを押したり、山道などでパワーモードを押したりする時に手探りになってしまうのは、やっぱり不便。 あと、8インチタッチパネルは、スマホ風に操作できるのが売りだが、走行中はピンチインやピンチアウトができない(従来通り「広域」「詳細」ボタンは機能する)。これは最近の他社モデルに採用されているタッチパネル式ナビも同じだが、これくらいのことは走行中でも出来るようにして欲しい。
 
本文でも触れたように、ハイブリッドの場合は、街中での走りと燃費は高評価できる反面、高速道路など速度域の高いところでは燃費が伸びず、絶対的なパワーも不足気味。何よりトヨタのハイブリッド車そのものという乗り味は、トヨタのどのクルマも同様で、面白みがない。 秀逸な7人乗りのセカンドシートだが、さらにもう一つ、座面のチップアップ機能があれば完璧だった(8人乗りのベンチシートにはある)。座面を跳ね上げてセカンドシートを前に寄せて、荷室をあと20センチ伸ばせたら、フラットなフロアは身長170センチの人が寝られる長さになる。

総合評価

ミニバン第2世代のためのミニバン

世の中はこのところ「走らないクルマ」の方向へ向かっているように思える。無論、必要にして十分な走りは確保されているが、昔のようには「走り」の性能が重視されなくなっているようだ。例えば、高速道路の流れる速度も、最近は制限速度程度に下がっているように見える。ごくわずかの、目を三角にして飛ばしているクルマを除けば、みなゆっくりと走るようになった。日本のクルマはかつて、150km/hでもラクラク巡航できる、そんな性能を目指していたものが、いまやもうそんな性能は必要なくなっているのかもしれない。また、自動車メーカーもそんな感覚を持っているようだ。ミニバンにも走りを、と初代や2代目ヴォクシーでは走りの性能をウリの一つとしていたものだが、今回の3代目ヴォクシー、特にハイブリッドでは、もうそういう流れにはない。ミニバンらしく大人しく走り、その代わりに静粛性や快適性、燃費性能をより高める方向の仕立てだ。 新しいヴォクシーは基本、そんなクルマになった。ヴォクシーの主な顧客である子育てファミリー層は、ミニバン第2世代。ミニバンで育った子どもたちが大人になり、ミニバンで子育てする時代に入っている。彼らはクルマ好きな、あるいは走り好きな第1世代のミニバン乗りとは異なり、クルマ嫌いではないものの、クルマを道具としてしか見ていない。今回のヴォクシーはそういう人達に向けて作られている。かつての走り好きなお父さん(第1世代)にスポーツカーの代わりに乗ってもらうための作りではなく、道具としてどこまで使いやすいか、快適かという点に主眼が置かれている。ミニバンに走りを求めることなど、いよいよ過去の寓話になったと言ってもいいだろう。

絶対的にハイブリッド有利

2007年に先代のヴォクシーが登場した時には、3年も経ったらハイブリッドが投入されて、最強のミニバンになるだろうと予測したが、現実には6年半もの時がかかった。次世代になって、やっとハイブリッドが投入されたわけだが、なんでこんなに時間がかかったのか。それはガソリン車しかない先代でも十分に売れていたからだろう。特にワルなムードのあるヴォクシーは、ファミリーイメージのセレナやステップワゴンが嫌なお父さんにはマストなアイテムだった。マイルドヤンキーが日本を支配しているというマーケティング論が最近ウケているようだが、ベストセラーカーのヴォクシーはワルなムードを好むマイルドヤンキーなお父さんに支持された。そのためミニバンにはワルっぽい雰囲気が大事だなあと、真面目なトヨタの開発陣は学んだようで、今回はノアまで悪っぽくしてしまった。ただ、こうなるとマイルドヤンキーではないお父さんには買いづらいクルマになってしまったように思える。ヴォクシーは仕方ないが、せめてノアを大人しいデザインにして欲しかった。そうすればマイルドヤンキーではない感性を持つ層にも売れるクルマになったと思うのだが。そこはちょっと残念に思える。 そんな先代がハイブリッドなしでも売れていたとはいえ、さすがにもうフルモデルチェンジの時期となり、優秀なハイブリッドシステムがある以上、ハイブリッド化せねばならないのがトヨタの宿命だろう。そこで出来上がったのが、悪顔をしたエコな優等生という今回のヴォクシーだ。ハイブリッドは実質30万円ほど高いので、それを燃費の良さで取り戻せるのかという論議はこれまでもあったが、今やその論議は不毛だと思う。数年後に売るとなればハイブリッドの方がいい値がつくし、長く乗れば乗ったで、いずれガソリン代で元を引く。絶対的にハイブリッド有利。それゆえ今後トヨタ車は、ますますハイブリッド比率が高まっていくことになるはず。それはトヨタ(と日本人)にとって果たして幸福な状態なのだろうかという危惧はちょっとあるのだが。

高齢者受けする大人しい顔が欲しい

さて、ヴォクシーの場合は、これまでも後出しじゃんけんのタイミングでフルチェンジしてきた。今回もステップワゴンやセレナのいいとこ取りとなっている。超低床フロアはステップワゴンだし、視界の広さはセレナだ。全長も両ライバル車を追って5ナンバー枠いっぱいに伸ばしてきた。これに、両車にはないフルハイブリッドシステムを載せたのだから、商品性は一番高くなる。キャプテンシートのシートアレンジも、他を寄せ付けない完成度で、ついに回転対座を廃止したこともポジティブに評価できる。また、跳ね上げた時にかさばらないサードシートは、セレナや床下格納式のステップワゴンを研究した結果だろう。さらにセンターメーターといった「過去の先進性」の呪縛もすっぱり切り捨て、ただただスタンダードな使いやすさを追求している。ミニバンとしては、本当にいいところだけでできたクルマだ。最新最良のミニバンと断言できる。 ところで、ミニバンといえばファミリーのクルマということになっているが、今どき貴重な5ナンバーサイズでもあり、今後は高齢者ドライバー向けのクルマとしてもいいのではないか。これ一台あれば老後生活はなんでもできる。キャンパー的にも使えるし、ハイエースみたいに何でも積めて、郊外ライフのツールとしても使い勝手バツグンだ。一般的には、ミニバンをやめてセダンやスポーツカーに乗るというのが高齢者とされているが、実際には老後の生活に最も便利なのはこうしたミニバン。そのまま乗り込める車椅子仕様もあるし。 今後高齢者になる世代は、過去にミニバンに乗り慣れたミニバン第1世代であり、ミニバンの便利さをよく知っている。昔はジジババと子供を一緒に乗せるためにミニバンを買ったものだが、今は経済的余裕のあるジジババが、子供夫婦や孫を乗せるためにミニバンを買うというのもありだろう。そうであれば経済的余裕のない若い世代は、安いトールタイプ軽自動車を買えばいいのだから。
 
先代ヴォクシーが発売された当時は、曲線を多用したボディラインに少し違和感を覚えたが、新しいヴォクシーは素直なラインで面が構成されており、スタイリング的には誰も不満ないはず。となると、なおさら新型ヴォクシー/ノアの派手なグリルまわりが気になる。落ち着いたルックスがほしい。高齢者受けする大人しい顔があるといいのに。マイルドヤンキーに寄りすぎているのが、重ね重ね残念なところだ。 ヴォクシーは、日本専用車ながら台数が売れるために存在が許され、世界では売れるはずがないとされているクルマだ。しかし同様の成り立ちの軽自動車と同じで、日本では最も使いやすい類のクルマである。日本という特殊な市場で育まれたこのクルマではあるが、今後、世界に打って出ることは無理なのだろうか。こんないい製品でありながら、世界に通用しないということが、今の日本の不幸だと思う。

プジョー 2008 シエロ:新車試乗記

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キャラクター&開発コンセプト

208ベースのアーバン・クロスオーバー

プジョー 2008 (photo:PCJ)
プジョー 2008は、Bセグコンパクトカーの208をベースに開発された都市型の小型クロスオーバーSUV。プジョー言うところの“アーバン・クロスオーバー”。4桁車名としては、過去の1007、4007(日本未導入)、現行の3008、4008(日本未導入)、5008に続くモデルになる。 欧州では、2012年9月のパリモーターショーでコンセプトカーとしてデビューし、2013年5月から販売を開始。2014年2月には累計生産台数が早くも10万台を超える大ヒットになっている。 日本では、2013年11月に開幕した東京モーターショーで初公開され、2014年2月15日に発売された。今のところ生産はフランスのミュルーズ工場で行われており、日本仕様も同工場製。2014年内には中国で、2015年には南米ブラジルでも生産が始まる予定。

日本向けは1.2リッター3気筒と5速セミAT

(photo:PCJ)
日本仕様のエンジンは208譲りの新世代1.2リッター直列3気筒・自然吸気。変速機には208にも追加設定された「5速ETG(エフィシェント・トロニック・ギアボックス」こと、5速セミATが組み合わされ、2ペダルが主流の日本市場に対応している。ストップ&スタート機能(アイドリングストップ機能)も採用され、JC08モード燃費は19.4km/Lを達成している。 ■過去の新車試乗記プジョー 208 アリュール (2013年1月)
 

価格帯&グレード展開

プレミアムが253万円、ガラスルーフ付のシエロが278万円

試乗したのはパノラミックガラスルーフを装備したシエロ
駆動方式は本国仕様を含めてFFのみ。日本仕様は1.2リッター3気筒(82ps、118Nm)と5速セミATの組み合わせになる。 グレードは、16インチアルミホイールやパドルシフト、ファブリック&テップレザー(合成皮革)のコンビシート等、一通り装備の揃った「プレミアム」(253万円 ※8%消費税込み、以下同じ)と、それにパノラミックガラスルーフ(電動シェイド付)、アルカンタラ&テップレザーのコンビシート、パフォーレーテッド加工された本革ステアリングなどを追加した「シエロ」(278万円)の2種類。価格差は25万円あるが、パノラミックガラスルーフを除けば外観に差はない。
 
ボディカラーは全6色。内装色はブラックとブラウンの2色があるが、シエロはブラウンのみになる。 7インチ・タッチスクリーンは全車標準だが、ナビ機能は販売店オプション(約18万円)。標準のタッチスクリーンを活かしながら、日本専用開発のパナソニック製ナビ機能を組み込む形になる。
 

パッケージング&スタイル

全高は立体駐車場OKの1550mm

ボディサイズはベースとなった208に比べて、全長こそ200mm長いが、1740mmの全幅や2540mmのホイールベースは同じ。実は208の5ドアとは、ドアパネルも共通だ。全長が4160mmに収まるなど、SUVとしてはかなりコンパクトで、日本の都市でも使いやすい、まさに都市型クロスオーバーになっている。 また、全高も208より80mm高いだけの1550mmで、日本の一般的な機械式立体駐車場にぴったり収まる。同ジャンルの日本車が軒並み1550mmを超える中、ここは2008の大きなセールスポイント。なお、最低地上高は150mmと、対地クリアランスはそこそこに留まる。 デザイン的には、SUV風の厚みのあるスタイル、アンダーガード付の前後バンパー、ルーフレールなどの専用パーツによって、クロスオーバーらしさを実現。中でもユニークなのが、ルーフの左右両端に設けられた「ルーフウェイブ」と呼ばれるデザイン処理。Bピラーより後ろのルーフ両端が一段高くなっているが、ルーフの中央は低いまま。プジョーによれば、RCZのダブルバブルルーフにインスパイアされたもの、とのこと。
 
 
    全長(mm) 全幅(mm) 全高(mm) WB(mm) 最小回転半径(m)
プジョー 208 (2012~) 3960 1740 1470 2540 5.3
VW クロスポロ (2010年~) 4000 1710 1520 2470 4.9
ルノー キャプチャー(2014~) 4125 1780 1565 2605
日産 ジューク (2010~) 4135 1765 1565 2530 5.3
プジョー 207 SW (2008~2012) 4150~4165 1750 1535 2540 5.3
プジョー 2008 (2014~) 4160 1740 1550 2540 5.5
VW ゴルフ 7(2013~) 4265 1800 1460 2635 5.2
ホンダ ヴェゼル (2013~) 4295 1770 1605 2610 5.3
スバル XV ハイブリッド(2013~) 4450 1780 1550 2640 5.3
 

インテリア&ラゲッジスペース

インパネはほぼ208譲り。小径ステアリングの上からメーターを見る

インパネデザインは、ほとんど208と共通。楕円タイプの小径ステアリングを採用し、その上から運転席正面のメーターを見るところも一緒で、やはり208と同じように最初は戸惑う。とりあえずシートリフターやステアリングのチルト/テレスコでポジションを決めた後、メーターが見えるようにステアリングを微調整する、という手順がお勧め。 試乗車は上級グレードのシエロで、インパネやシートの一部にテックレザーという素材が張られている。厚めのパッドが入っていて押すとソフトだが、触感はサラサラしている。新しい素材を果敢に車内に持ち込むところがフランス車らしい。

7インチタッチパネルは標準。ナビはオプションで用意

 
メーターの周囲はブルーのLEDで縁取られる。明るさは調整可能で、オフにも出来る
208同様に、ダッシュボード中央の特等席には、7インチのタッチパネルを配置。このあたりは、今のトレンドをしっかり抑えている。ナビゲーションシステムは販売店オプションで、デフォルトでは「ナビ」ボタンをタッチすると画面が真っ暗になってしまう。なのでナビ機能はぜひ欲しいところだが、約18万円と高価。 操縦桿をイメージしたというデザインのサイドブレーキは、ちょっと引きにくい。シエロにはパノラミックガラスルーフが備わるが、プレミアムの方にも天井にLEDライトによるデザイン的な遊びがあり、退屈させない。
 
シエロにはパノラミックガラスルーフが備わる。なお、電動サンシェイドはネット式で、障子のように光を薄く通すタイプ
夜には、パノラミックガラスルーフの両端にLEDのアンビエンスランプが灯る (photo:PCJ)
プレミアムの場合は、レーザー加工した天井に仕込まれた「LEDトラック」と呼ばれる左右4本のラインが光る (photo:PCJ)

後席はワンタッチで格納。積載性は207SW的

シエロのシートは、アルカンタラとテップレザーのコンビ
さすがフランス車、フロントシートの座り心地は文句なし。一方で、リアシートの形状が平板なのは、畳んだ時の収納性を重視しているから。背もたれを前に倒すと、連動して座面も沈み込み、荷室フロアをツライチになる。このあたりは、先代207ベースのステーションワゴン、207SWの実質的な後継者であることを窺わせる部分。208ベースのSWは、今のところ本国でも登場していない。 実際、荷室容量は208より26%増えてCセグメント並みの360リッター。拡大時はワゴン並みの1172リッターになる(208は285~1076リッター)。また、奥行きは208より150mm延びて、最大160センチほど。また、リアゲートの敷居や荷室フロアが低く、荷物の積み下ろしもしやすい。
 
後席はスペース的には不足ないが、シート形状は平板で、背もたれは立ち気味
荷室フロアにはステーションワゴン風に5本のレールが走り、開口部にはステンレス製のシルガードが備わる
スペアタイヤはフランス車に多いフルサイズではなく、テンパータイプ(コンチネンタル製)
 

基本性能&ドライブフィール

3気筒エンジンは意外にトルクフル

エンジンは前述の通り、208と同じ1.2リッター直列3気筒。流行りの直噴ターボではなく、自然吸気だが、最新のダウンサイジング&レスシリンダーの思想を採り入れたもの。アイドリングストップ機能も付いている。 最高出力は208と同じ82ps、最大トルクも同じ12.0kgm。一方、車重は208の3気筒モデルより50kg増えてプレミアムでは1140kg、シエロでは1160kg。パワーウエイトレシオ的には、約14kg/psとけっこう辛い数字だが、これがなかなかどうして、よく走る。予備知識がないと、ターボかなと思うくらい、特に中速域ではトルクフル。3気筒の振動も、ほとんど気にならない。
 
エンジンは新開発の1.2リッター3気筒「EB2型」。自然吸気で、82psを発揮する
タイヤ外径が大きくなった分を相殺すべく、208よりも最終減速比は低められており(4.538 → 4.692)、1速での発進は十分に力強い。また、2速、3速でのフリクション感のない、息の長い加速感も、208同様にとても気持ちよく、「いいクルマ」感がある。このあたりは、スペックだけで分からない部分だ。ちなみにこれと同じパワートレインは、208/2008と同じタイミングで、シトロエンのC3/DS3にも搭載されている。

セミATには慣れやコツが必要

セミATゆえ「P」レンジはない。エンジン始動時は手動で「N」にする必要があるなど、フィアット500などとは微妙に操作方法が異なる
一方で、多くの人が最初に戸惑うのは、セミAT独特のマナーだろう。資料によれば、このETG5に合わせて、TCU(トランスミッション・コントロール・ユニット)と電動アクチュエーター(ザックス製)も新開発されたようだが、大ざっぱな印象を言えば、日本でも以前販売されていたプジョー 1007やシトロエン C2、あるいは最近のフィアット 500(デュアロジック)や、スマートのセミATと比べても、特に大きな進化を感じさせない。2速にシフトアップする際に「息継ぎ」するところや、交差点で徐行してから再加速する際に一瞬ギアを迷うところも相変わらずだ。
 
低燃費モデルであることを示す「eVTi」バッジ。「e」はefficient(高効率)とecological(エコ)、VTi は可変バルブタイミング機構とインジェクションの意(photo:PCJ)
また、この5速ETGには、フィアット系のデュアロジックと違って、電子制御クラッチによる擬似クリープ機能が備わるが、そこで気になるのは、ブレーキを離してから動き出すまでにタイムラグがあること。もちろん坂道発進では、ヒルスタート アシスタンス(いわゆるヒルホルダー)が作動し、2秒間ブレーキを保持して、ずり下がりを防止してくれるが、傾斜センサーが感知しない緩い坂道では、ブレーキを離すとクルマが少し後退してしまう。すぐに擬似クリープが働き、クルマはゆっくり前進し始めるのだが、慣れるまでちょっとヒヤッとする瞬間だ。 一番困るのは、上り勾配の駐車場にバックで入れる時だろう。慣れていないと、落ちたり動き出したりを繰り返すことになる。右足でアクセルペダルの踏み加減を調整しながら、上手に半クラッチ状態を作り出すのがコツだ。

重心が高まったネガはある。高速巡航は気持ちいい

タイヤはミシュラン エナジーの16インチ。グリップ性能は十二分
ワインディングでは、トルクフルなエンジン、伝達ロス感のないミッション、ガッチリしたボディや足回り、205/55R16のミシュラン、クイックな電動パワステなどによって、軽快に走る。もうちょっとSUV的に穏やかな方がいいと思うが、ESPが作動するところまでは、そう簡単にはいかない。サスペンション形式は208と同じで、Bセグでは一般的な、フロントはストラット、リアはトーションビーム。ダンパーは伝統通りプジョー内製になる。乗り心地は硬めだ。 細かいことを言えば、重心が高い分、相対的にトレッド(フロントは1480mm、リアは1485mm)は、狭く感じられる。つまり、踏ん張ってる感、路面をしっとり捉える感は、ベースとなった208の方が上だ。また、パドルシフトを引けば「ブオン!」とブリッピングして見事にシフトダウンしてくれるが、5速ゆえステップ比は大きめで、特に2速へのシフトダウンがまま決まらないのは、他の5速セミAT車と同じ。
 
100km/h巡航時のエンジン回転数は、208と大差なく、5速トップで3000回転弱(2950回転くらい)。数値的には高めだが、エンジン自体はスムーズで静かに回るし、パワー的にもこれくらいは回したいところ。風切り音やロードノイズも気にならないし、直進安定性や乗り心地も悪くない。何より、セミATならではのダイレクト感、フリクション感のなさは、高速道路を流す時も気持ちがいい。 ただ、さすがに82psしかないので、高速での追い越し加速や急勾配は苦手。最高速(欧州仕様)は172km/hとのこと。

試乗燃費は12.0~15.6km/L。JC08モード燃費は18.5km/L

指定燃料はプレミアムで、タンク容量は50リッターと大きめ。航続可能距離は少なくとも500km以上はいきそう
今回はトータルで約200kmを試乗。試乗燃費(車載燃費計)は、いつもの一般道、高速道路、ワインディングを走った区間(約90km)が12.0km/L。また、一般道を大人しく走った区間(約30km)が15.6km/L。また、参考ながら高速道路を80~100km/h+で走った区間(約35km)が17.5km/Lだった。JC08モード燃費は18.5km/L。 総じてオートモードで走ると好燃費だが、マニュアルモードでブンブン回して走ると伸び悩む傾向。ただ、最高出力がしょせん82psなので、無闇にアクセルを開けても、出力相応に燃料消費は少ない。
 

ここがイイ

日本にジャストのボディサイズ。エンジン。7インチディスプレイの標準化

SUVとしては最もライト級のボディサイズ。一時は3ナンバーが当たり前になるなど、肥大化が嘆かれた欧州製コンパクトカーだが、その一派であったプジョーから、日本の同クラス車よりコンパクトなモデルが出るとは。本文で触れたように、全高は機械式立体駐車場OKの1550m。日本車で全高が1550mm以下に収まるのは、スバル XVくらいしかなく、しかもルーフレール非装着車に限られる。 208同様に、トルクフルで滑らかに回る3気筒エンジン。モアパワーということであれば、同じ3気筒でも新型フィエスタのようにターボを装着したいところだが、自然吸気の方がメカニズム的にはシンプルだし、燃費的にも有利。日本車にとってもベンチマークになり得るエンジンだ。 大型タッチスクリーンをダッシュボード中央に配したインパネデザインは、今のトレンドをしっかり抑えたもの。208の日本発売時には間に合わなかったナビゲーション機能も、販売店オプションで用意された。 一昔前からプジョー・シトロエンが積極的に採用しているコーナリングランプは、相変わらず便利。40km/h以下の速度域で(つまり主に市街地走行中)、ステアリング操作やウィンカー操作に応じてコーナー内側のフォグランプが点灯するという単純なものだが、これが意外に心強い。

ここがダメ

万人向けとは言えないセミAT。メーターレイアウト。ナビ機能の値段

これまで208には4ATか、5/6MTしかなかったので、今年から208と2008にAT限定免許で乗れる5速セミATが採用されたのは良いニュースだが、緩やかな坂道発進で落ちてしまう点や、傾斜のある駐車場でのバックのしにくさは、トルコンATしか乗ったことのない人にはハードルが高い。同じくセミATが主力のフィアット500はコンスタントに売れ続けているが、2008は500のようにキャラクターで売る商品ではなく、やはり乗りやすさや実用性でも訴求したい。 208と同じで、シートとステアリングを理想的な位置に合わせると、たいていの場合、ステアリングがジャマでメーターが少し隠れてしまう。なので多くの人は少し妥協して、ステアリングをちょっと下げることになるはず。ホンダの場合、一時期シビックや2代目インサイトなどでデジタル速度計をステアリングの上から見る位置にレイアウトしていたが(回転計はステアリングの内側に見える)、今ではすっかり止めてしまったし、トヨタもセンターメーターを止める方向にある。ステアリングの小径化は、一つの理想だが、現実にはちょっと無理があるようだ。 ナビゲーション機能がオプションで用意されたのはいいが、これが約18万円と高いこと。日本専用にパナソニックが開発したことで割高になったようだが、消費者心理としてはせめて10万円くらいに抑えるか、いっそ標準装備にして欲しいところでは。ナビ無しでは、せっかくのタッチパネルがもったいない。 ラテン車(フランス車、イタリア車)らしく、給油キャップは相変わらず鍵を差して開けるタイプで、やっぱり面倒。

総合評価

セミATにはもうちょっと洗練が必要

ちょっと古い資料になってしまうが、プジョーが2005年に発表した調査結果では、AT(トルコンAT、CVT、セミAT)車の比率は、日本の92%を筆頭に、北米90%、豪州・東南アジア・中東70%となっている。一方で、欧州は平均で14%と当時もMT天国で、中国も15%だ。欧州の国別では、スイスが27%とAT比率が比較的高く、ドイツ・スウェーデン20%、イギリス・オランダ14%だが、フランス・イタリア・スペインなどラテン系は4~6%に留まり、ギリシャはなんと2%しかない。 日本の場合はというと、自販連が乗用車市場(軽自動車と輸入車を除く)のデータを出しているが、約30年前の1985年には、ATが48.8%だったものが、20年後の2005年には96.6%(プジョーの調査とは異なっている)になり、2011年にはついに98.5%にまで高まっている。 以下は、当時のプジョーオフィシャルwebマガジン(2005年4月)からの引用だ。 ---PSAグループの製品戦略部門(DSPG)でギアボックスとトランスミッションを担当するリーダー、ティエリー・ノダンは指摘します。 「ヨーロッパでAT車の普及が進まない最大の原因は、そのイメージにあるのです。ドライバーのほとんどはAT車について深い知識を持っていません。彼らは“AT車は燃費が悪く、性能が低い”というネガティブなイメージを持っているのです。(中略)AT車を試乗したドライバーはその性能に満足し、“AT車は性能が悪い”という先入観から解放されるという結果が導き出されています」(引用ここまで)。
 
欧州の人々は、MTの方が燃費が良くてエコだと思っている(たぶん今も)。それはつまり安くクルマに乗れるということ。そういう人たちを納得させるには、「マニュアルトランスミッションベースのオートマチックトランスミッション」と言った方がよく、なるほどそれで欧州の少なくとも小型車では、トルコンATやCVTよりも、セミAT、そして現在急速に普及しつつあるDCTの開発が進んだのだと考えることもできる。 そういう事情から、2008にもセミATが採用されているのだが、日本人の98.5%はトルコンATやCVTで何の不満もない人たちなので(ここ笑うところです)、このセミATの挙動にはちょっと不満が出てしまうかもしれない。我々も3気筒・セミAT車のスマートには日常的に乗っていたので、それなりに慣れているつもりだが、当時のスマートにはアイドリングストップがなかった。一方で、信号などで止まるとアイドルストップし、スタート時にエンジンを始動するところから始める2008には、もうちょっと洗練が必要な気がした。

今後は中国がクロスオーバー車の主戦場

しかし2008、スタイリングはカッコいいし、3気筒エンジンも素晴らしい。クロスオーバーというのは、いつになっても今ひとつピンとこない呼び方なので「持ち上げ系」と言ってみたりするが、スバルのXVやホンダ ヴェゼルなど、「持ち上げる」とカッコよくなるということは、これまでに散々書いてきた。日本の女性もこの手のクルマは昔から大好きで、なんとなく強そうとか、丈夫そうとか、安全性が高そうとか 小さくてもクラスレスっぽいとか、なんとなくプレミアム感があるとか、クルマ好きでない人でもクロスオーバー車には価値を見出している、という印象がある。スズキ ハスラーの大人気もそれを象徴しているだろう。 そういった女性目線で言えば、男性はスポーツカーよりクロスオーバーに乗ってた方がモテるということだし、女性も自分で乗るなら、小さめのクロスオーバーがいいと思っている、ということになる。日本でも今後はどんどん増えてブームとなりそうだ。2008のようなクルマは、日本車にはまだそう多くない。昔はトヨタ RAV4などのヒット車もあって、この分野は本当は日本車が先行していたはずだが、いつの間にか形勢が逆転してしまっているように見える。
 
クロスオーバー車をカッコよく思うのは世界共通のようで、ウォール・ストリート・ジャーナルによると、中国でもSUVの人気が高くて、各国メーカーによるSUV市場争奪戦が繰り広げられているそうだ。つまり、今後は中国こそがクロスオーバー車の主戦場。そういえばPSAは今年2月に中国・東風汽車からの資本受け入れを決めた。30億ユーロ(約4200億円)規模を増資し、その一部を東風と仏政府が引き受けるとの報道だ。 中国で人気のSUVに搭載されるトランスミッションは、トルコンATかDCTか。中国のATが今どうなっているのか、今後どうなっていくのか、そんな資料は見あたらなかったが、10年前はまだMT比率の高かった中国で、欧州のようにDCTやセミATが主流になったりするのは、日本車にとっては嬉しくない状況だろう。
 
まあ、そんなダイナミックな世界の動きとは別に、この2008に関する些細な話をひとつ。それは、タイミングベルトが10年18万km保証(無交換でいい)という、かつての欧州車を知る身としては夢の様な話になっていること。ただこれ、トタル(フランスのオイル会社)の指定オイルを使用した場合の保証とのこと。これも中国へトタルがさらに進出するための方策か? PSAもなかなかやるな、というようなことを春先の平和な日本の片田舎で2008に乗りながら、漠然と考えていたのだが…。

トヨタ、パッソをマイナーチェンジ:MOTOR DAYS ピックアップニュース

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トヨタは2014年4月14日、コンパクトカーの「パッソ」をマイナーチェンジして発売した。中部地区での発表会が行われた中部経済産業局(名古屋市中区三の丸)からリポート。

新開発1リッター3気筒エンジンで、ガソリン登録車トップの27.6km/Lを達成

パッソ X“G package”
パッソは、トヨタとダイハツが共同開発したコンパクトカーで、トヨタの登録車では最小モデル。今回、同時にマイナーチェンジしたダイハツの「ブーン」とは、兄弟車の関係にある。初代パッソ/ブーンは2004年にデビュー、2010年に今の2代目にフルモデルチェンジしていた。 今回のマイナーチェンジでは、1リッター3気筒“高熱効率・低燃費”エンジンの搭載が最大のニュース。これは従来1リッター3気筒をベースに、圧縮比の向上、低フリクション化、バルブタイミング最適化を行い、さらに昨今流行りのクールドEGR、エキゾーストマニホールド一体型シリンダーヘッド等を新採用したもの(エンジン形式は従来通り1KR-FE)。最大熱効率37%を誇る。
 
1リッター3気筒エンジンは69ps、9.4kgmを発揮。ミッションはもちろんCVT
また、減速時のエネルギーをバッテリーに貯める回生機能の強化や、エアロバンパー等による空力性能の向上を行ったほか、1.0リッター・2WD車(エントリーグレードを除く)に停止前に約9km/hからエンジンを停止するアイドリングストップ機能を標準装備。これらによりJC08モード燃費は、ガソリンエンジン登録車トップの27.6km/L(従来モデル比で30%向上)を達成している。 なお、パッソには1.3リッター直4エンジン(1NR-FE)搭載車もあるが、こちらはひとまず従来エンジンのままだ。

バンパーを一新。ハナに「シンジュパールマイカ」ルーフを用意

パッソ +Hana (2トーンカラー仕様)
もちろん内外装デザインもマイナーチェンジ。従来通り、通常モデル(XとG)と、女性向けの「+Hana」の2つの仕様が用意されたが、それぞれバンパーのデザインが一新されたほか、「+Hana」にはオプションで「シンジュパールマイカ」塗装のルーフを持つ2トーンカラー仕様を設定。ボディカラーは通常モデルに新色「ルリマイカメタリック」(上写真)を含む10色を設定、+Hanaには新色「サクラパールマイカ」(右写真)を含む9色を設定している。
 
生産は従来通りダイハツ本社の池田工場(大阪府池田市)で、月販目標台数は5000台(ブーンは未発表)。なお、2代目デビュー時の月間目標はパッソが6500台、ブーンが800台だった。 価格(消費税8%込)はパッソが109万8655円~で、+Hanaは135万5891円~。ブーンは1リッターのみで126万3600円~。

デイズのコメント

パッソ +Hana 。写真のボデイカラーはウグイスミックス(ウグイスメタリック×シンジュパールマイカ) (photo:トヨタ自動車)
今やライバルは軽自動車となったこのクラス。普通車から軽へのダウンサイジングを阻止すべく、モード燃費の向上を徹底した。実燃費でも軽を凌ぐ可能性は高い。軽の自動車税が10800円に上がれば、1000ccクラスとの差額は年間2万円を切るため、優位性を主張できそう。女性向けのハナに用意されたツートーン塗装も軽に負けないための装いと言えるだろう。 ■過去の記事 新車試乗記>トヨタ パッソ 1.0+Hana (2010年4月掲載)
 

ジャガー Fタイプ コンバーチブル:新車試乗記

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キャラクター&開発コンセプト

EタイプのDNAを受け継ぐ2シータースポーツ

「Fタイプ」は、ジャガーの歴史的名車である「Eタイプ」(1961~75年)のDNAを受け継ぎ、約50年ぶりに開発された2シータースポーツカー。2012年9月のパリモーターショーで世界初公開され、日本では2013年5月に発売された。 ボディタイプには、電動ソフトトップのコンバーチブルと、遅れて2013年秋に発表(日本では2014年夏からデリバリー開始)されたクーペの2種類。ボディ骨格は、ジャガーが得意とするオールアルミ合金製モノコックで、搭載されるエンジンは3リッターV6 スーパーチャージャー(340ps、45.9kgm、もしくは380ps、46.9kgm)と5リッターV8 スーパーチャージャー(495ps、63.7kgm、もしくは550ps、69.3kgm)の2種類。トランスミッションは全車、ZF製のトルコン8速ATで、駆動方式はもちろん後輪駆動(FR)になる。
 

価格帯&グレード展開

オープンは977万円~、クーペは823万円~

2013年5月の発売以降も、V6スーパーチャージドの高性能版(380ps)やクーペが加わり、2014年4月現在は、以下の計7モデルをラインナップする。 単純計算すると、コンバーチブルはクーペの154万円高。また、V6とV8の価格差はおおよそ300万~450万円もあり、その間をV6の高性能版が埋める感じになる。 また、高級スポーツカーのお約束通り、オプションも豊富。上位グレードではカーボンセラミックブレーキなど、オプションだけで軽く300万円を超える仕様もあり得る。
 
【コンバーチブル】 ■F-Type コンバーチブル    977万円 3リッターV6 SC(340ps、45.9kgm)   ■F-Type S コンバーチブル   1183万円 3リッターV6 SC(380ps、46.9kgm)   ■F-Type V8 S コンバーチブル  1286万円 5リッターV8 SC(495ps、63.7kgm) 
 
日本では2014年夏からデリバリーが始まるFタイプ クーペ (東京モーターショー 2014)
【クーペ】(2014年夏にデリバリー開始) ■F-Type クーペ     823万円 3リッターV6 SC(340ps、45.9kgm)   ■F-Type S クーペ    1029万円 3リッターV6 SC(380ps、46.9kgm)   ■F-Type R クーペ    1286万円 5リッターV8 SC(550ps、69.3kgm)  
 

パッケージング&スタイル

小さく見えるが、超ワイド

ボディはジャガー自慢のオールアルミ製モノコック
第一印象は、とりあえず「カッコいい」だ。往年のEタイプをモチーフにしたロングノーズ、ショートデッキの流麗なスタイリングは、FRスポーツの王道を行くもの。また、フロントの丸っこいラジエイター開口部も、何となくEタイプっぽい。 リアは、切り詰めたオーバーハング、ディフューザー形状のバンパー、V6モデルではセンターデュアルマフラー、太ももの筋肉のように盛り上がったリアフェンダーで構成され、イタリア車にも通じる華やかさを感じさせる。ロー&ワイドなのはもちろん、全体に小さくコンパクトに見えるのが特徴だ。
 
実際に外寸をチェックすると、全長の4470mmは短いが、全幅は1925mmと思った以上にワイドで、実にジャガーの旗艦スポーツ、XKRよりも幅広い。ただし最小回転半径は5.2メートルとコンパクトカー並みに収まっている。
 
リアスポイラーは100km/h以上で上昇。最大120kgのダウンフォースを発生させる
ロングノーズ、ショートデッキ、盛り上がったリアフェンダー、切れ上がったテールはEタイプ譲り
キャンバス製の電動トップは、走行中(50km/h以下)でも約12秒で開閉できる
 
    全長(mm) 全幅(mm) 全高(mm) WB(mm) 最小回転半径(m)
ジャガー Eタイプ シリーズI (1961) 4450 1660 1220 2440
ポルシェ ボクスター <981型> (2012~) 4375 1800 1280 2475
ジャガー Fタイプ コンバーチブル (2013~) 4470 1925 1310 2620 5.2
ポルシェ 911シリーズ <991型>(2012~) 4500 1810~1880 1295~1305 2450
フェラーリ カリフォリニア(2009~) 4575 1910 1325 2670
ジャガー 2代目XK シリーズ(2006~) 4790 1895~1915 1320~1330 2750 5.3
 

インテリア&ラゲッジスペース

インパネはシンプルさを追求

8インチタッチスクリーンを持つナビは標準装備
内装デザインもEタイプの現代版たるべく、FRスポーツカーの王道を行くシンプルなもの。ドライバーの眼前に配した二眼メーターやD型ステアリングも、デザイン自体はごくシンプル。シフトレバーもジャガーお得意のロータリー型ではなく、一般的なスティック型になっている。シンプルさの追求は、より多くの風量が必要になると、ダッシュボード上面からせり上がってくる空調吹き出し口の設計に表れている。

荷室容量は196リッター、クーペなら407リッター

電動シートは標準装備。乗降性は悪くないが、ドアが長い(先端が張り出している)ことに注意
それから、Fタイプで面白いのは、ドアのアウターハンドルの仕組み。リモコンキーでアンロックするとカシャッとノブが飛び出し、ロックするとカシャッと引っ込むタイプで、走り出した時も自動的にカシャッと引っ込む。空力性能に優れる、というのが売り。 コンバーチブルの場合、購入にあたって割り切りが必要なのは、積載性だ。室内には、助手席を除いて、ほとんど手荷物の置き場がないし、トランク容量も196リッターに留まる。ちなみにボクスターのリアトランクは130リッター(フロントは150リッター)、マツダ ロードスターNC型は150リッター。ゴルフバッグは、一つならギリギリ載るかも、というレベル。なお、リアゲートを持つクーペなら、約2倍の407リッターになる。
 
アンロック状態のドアハンドル。試乗車はオプションのスマートキー付で、リクエストスイッチがある
電動シートの操作スイッチはメルセデスのようにドアトリムに配置
試乗車はフラットボトム形状のスポーツステアリング(パドルシフト付)を装備
 
コンバーチブルのトランク容量は196リッター。黒いのはパンク修理キットと取扱説明書
前後重量配分を適正化するため、トランク床下にバッテリーと、なんとウインドウォッシャータンクも配置
センターコンソールにはCDスロットやUSB端子等も装備
 

基本性能&ドライブフィール

エンジン始動で咆える!

試乗したのはV6 スーパーチャージド。走行中(50km/h以下)でも12秒で開閉できるソフトトップを開け放ち、始動ボタンを押すと、タコメーターの針がレッドまで振り切れ、「バウォォォン!」とエンジンが咆える。もちろん、エンジン回転が本当に振り切れてるわけではなく、演出として針がスイープしているだけだが、深夜や早朝のお出かけでは、近所にちょっと気を使いそう。 ゆっくり走っている間も、ジャガー製V6スーパーチャージド・エンジンは、ウウウウと不敵に唸っているが、運転操作に特別難しいことは何もない。街中では、ZF製の8速AT(8HP)によって滑らかに、従順に走ってくれる。そして赤信号で止まれば、アイドリングストップ。今やポルシェやフェラーリですら、アイドリングストップするのだから驚くべきことではないが。
 
シフトレバーは通常のスティックタイプ。ESPオフスイッチの右側にアクティブ スポーツ エグゾーストのONスイッチがある
横幅が1925mmもあるので、狭い道では気を使うが、最小回転半径も5.2メートルしかなく(フィット RSと同じだ)、全長が短いので、取り回しは意外にいい。一つ困るのは、フロントオーバーハングが長いせいか、フロントバンパーの下にあるスポイラー(黒の樹脂)がスロープや段差で簡単に擦ること。ここは消耗品?と思って諦めるしかない。

スイッチONで、F1風サウンド

もちろんFタイプは、カッコよくて乗りやすいだけのスポーツカーではない。アクセルペダルを軽く踏み込めば、パワートレインは即座に反応し、エンジンサウンドが迫力を増す。そのまま右足を踏み込めば、「クォォォン」という快音を響かせながら一気に6000回転オーバーまで吹け上がり、鋭く加速。こうなるともうアクセルを踏み込みたい、という誘惑に抗えない。さすがジャガー、これは確かに獰猛。 しかもセンターコンソールにある「アクティブ スポーツ エグゾーストシステム」のスイッチをオンにすると、バイパスバルブが開き、エンジンサウンドの音量が上がるだけでなく、重低音に変化する。車外ではそんなでもないが、キャビンの中には爆音に近い快音が朗々と響き渡り、アクセルオフでは「バ、バ、バ、バッ!」とアフターバーンの音が炸裂する。まるで、F1の2.4リッターV8のサウンドを生で聞いているみたい。というわけで、Fタイプは音だけでも、けっこう舞い上がってしまう。

パワーは十分。ただし車重は重い

V6標準車はセンター出しマフラー。同モデルの場合、アクティブスポーツエグゾーストシステムは37万円のオプション
V6スーパーチャージドの最高出力は340ps、最大トルクは45.9kgm。一昔前なら途方もないパワーで、数字的には現行の911カレラ(3.4リッター自然吸気)の350ps、39.8kgmに匹敵する。ただ、一方で車重は1730kgもあり、911カレラ カブリオレより約250kg、同じオープン2シーターのボクスターより実に約300kgも重い。Fタイプはオールアルミ製ボディだが(911やボクスターは基本的にスチール)、それが体感できるほど実際の「軽さ」に結びついていない感はある。 また、ZFの8速「クイックシフト」ATは、滑らかさよりダイレクト感を重視したもの。何となくレクサス IS-Fや現行IS350の8速AT(アイシンAW製)に似ていて、ロックアップを効かせてリニアにパワーを伝達し、シャキシャキと変速するが、その度合いはよく出来たDCTほどではなく、時にタイムラグが、時にはガツッとシフトショックがある。

高速オープン走行は、まさに非日常

標準タイヤは18インチ(245/45ZR18、275/40ZR18)だが、試乗車はオプションの19インチ(245/40ZR19、後 275/35ZR19)で、銘柄はピレリ Pゼロ。さらに20インチ(255/35ZR20、295/30ZR20)も選べる
ワインディングや高速道路も走ってみたが、これくらいの高性能車になると、一般道で出来るのは味見程度。ボディの剛性感は、オープンボディとは思えないほど高く、大きな入力があっても全くビクともしない。 V6標準モデルのダンパーは非可変式だが(上級モデルは電子制御ダンパー付)、前後ダブルウイッシュボーンの足回り(アーム類は鍛造アルミ製)は異様にガッシリしていて、コーナリング中でもタイヤが常に「正しく」設置しているのが手に取るように分かる。車重が重くなってしまったのは、このシャシーを手に入れるためだったのかと思える。 ちなみに前後重量配分は、試乗車の場合、53:47(920kg+810kg)。トランスアクスルではないFR車としてはバランスがよく、実際コントロールもしやすい。
 
高速道路ではオープンでも走ってみた。フロントウインドウが短く、ウインドウディフレクター類がないので、風の巻き込み(頭の後ろから吹いてくる)は現代のオープンスポーツとしては強く、少なくともアウディTTロードスターやボクスターよりビュービュー来る。とはいえ、耐えられないほどではないし、ガシッとしたボディから来る安心感は高い。F1風サウンドと風切り音にさらされるオープン走行は、まさに非日常という感じ。 ちなみに最高速と0-100km/h加速(UK仕様)は、コンバーチブルの標準車が260km/hと5.3秒、高性能版のS(380ps)が275km/hと4.9秒、V8モデルが300km/hと4.3秒。 ちなみに、669万円のボクスター(PDK)は262km/hと5.5秒、1434万円の911カレラカブリオレは284km/hで4.6秒、2360万円もする911ターボカブリオレは315km/hと3.3秒。

試乗燃費は7.5~8.2km/L。JC08モード燃費は9.8km/L

指定燃料はもちろんプレミアムで、タンク容量は70リッター。満タンで1万円(お釣りなし)は仕方ないところ
今回はトータルで約250kmを試乗。試乗燃費(車載燃費計)は、いつもの一般道、高速道路、ワインディングを走った区間(約90km)で7.5km/L。また、一般道を大人しく走った区間(約30km)が8.2km/Lだった。JC08モード燃費は9.8km/L。総じて、エンジンを歌わせる走りだと5~7km/L台だが、郊外の一般道や高速道路をのんびり流すだけなら8~9km/L台、という印象だった。 なお、他グレードのJC08モード燃費は、V6・380ps仕様が10.6km/L(なぜか340ps仕様よりいい)、V8モデルは8.1km/L。
 

ここがイイ

剛性感の高いシャシー。エンジンサウンド。素早く開閉できる電動ルーフ

オープンボディであることを感じさせない、ものすごく剛性感のあるボディ。足回りもよく、前後とも接地感は抜群にある。 演出たっぷりのサウンドは、確かに快音。フェラーリ要らず。かなりアドレナリンが出る。 走行中でも50km/hまで、12秒で開閉可能な電動オープン。このあたりはポルシェのボクスターや911 カブリオレにほぼ並んだ。また、オープン時の開放感も高い。若干、風の巻き込みは多めだが、それもオープンらしさの証。

ここがダメ

両極端な面があるエンジン。アルミにしては重い車重。コンバーチブルの積載性

V6スーパーチャージドは、ゆっくりエコでも走れるが、そうするとトルク感がなく、面白みがなくなる。かと言って、回すとかなり激しくなる。中間がなく、ちょっと両極端な印象。飛ばすとエンジンが刺激的で、心拍数がけっこう上がるのは「ここがイイ」に入れるべきか。あと、エンジン始動時のバオンは、気になる時もある。静かに始動できるモードも欲しい。 8速ATは、減速時に燃料噴射をセーブするため、律儀にシフトダウンするが、その際に少し滑らかさを損なうことがある。また、全開加速時のシフトアップでガツンと来るのはスポーティと言えばスポーティだが、DCTがショックレスでシフトアップするのと比べてしまうと、どうかなという感じ。また、マニュアル操作でのシフトダウン時には、ブリッパーで回転合わせするが、その際に回転を上げすぎて、スムーズに回転がつながらないことがある。もう少しミッションの制御は詰める余地がある印象。 本文でも触れたように、軽快なスタイリングやイメージに対して、1730kgという車重はやはり重い。オールアルミボディでもあるし、ピュアスポーツ(とジャガーは言っていないが)を謳うならば、もう少し軽さが欲しい。 コンバーチブルの場合、積載性が低い。ボクスターのリアトランクは130リッターだが、浅くて広く、開口部も広く、フロントにはもうひとつ150リッターのトランクがある。ただ、クーペであれば、ケイマンより積める。 これも本文で触れたが、フロントスポイラーはかなり擦りやすい。多少擦ってもいいやと割りきって乗ることになると思うが、擦りにくいのに越したことはない。

総合評価

Fタイプを買える人

ジャガー Fタイプ、欲しいよなあ、と思う。V6でも1000万円のスポーツカー、しかもオープン。これに乗れる人ってどんな人なんだろう、と庶民感覚ではあらためて思う。資本金一億円以上の会社の役員における平均年収は1150万円というデータがある。給与所得者は大企業でも意外につつましい。このクラスではちょっと買えないか。でも自営業者なんて人は、儲かれば青天井に金ができるので、Fタイプでも「一番高いV8を持ってこい」ということになるはず。もちろん、こういう人はなんだって買えるだろう。 ちなみに平成24年日本人全体の給与所得者4555万人のうち、年収が1000万円から1500万円の人は129万人、1500万円から2000万円の人は26万人、2000万円を超える人は16万人いる。つまり1000万円以上の人は、全体のわずか3.9%だ。とはいえ、これが夫婦共稼ぎでとなると、倍増まではいかなくても相当プラスされるだろう。それは結構な人数だと思う。自営業者と合わせれば数百万人の人たちは、まあこの1000万円しないFタイプのV6なら十分買えそうだ。
 
あとは遺産相続か? 日本の60代以上が持つ金融資産は840兆円という巨額で、個人金融資産の60%にも達するという。となれば相続税を払わなくてはならないくらいの額を、子や孫が相続した場合、Fタイプくらいなら買ってもよさそうだ。そういう人はかなりいるし、遺産を消費することで日本経済は活性化する(あまりそういうことが多いと国債を支えきれず破綻するという話もあるが)。まあそれらに該当しない庶民的には宝クジかな。テレビCMでやってるように、6億円当たったら、Fタイプでもフェラーリでも買えるだろう。 などと考えると、案外、Fタイプを買えそうな人は日本中にいるものだ。そこで買う人の気持ちになって想像をたくましくしてみよう。Fタイプでも、V6コンバーチブルだったらポルシェ ボクスターがやっぱりライバル。ボクスターは一見安いが、オプションをつけていくと、すぐに1000万円になってしまう。という点で価格的にはいい勝負。では並べて置いてみた場合、どうか。これはエキゾチックな分、Fタイプに分がありそう。華はボクスターよりFタイプにある。ただ、積載性はボクスターに分があるから、ゴルフや旅行などによく行く人ならそちらを選ぶことになる。しかし、2シーターオープンを持ってる人は、他にもクルマがあると思うので、そう悩む必要などないだろう。実際にふだん2シーターオープンに乗ってみると、手荷物をいちいちトランクに入れなくてはならないのが面倒。これはFタイプでもボクスターでも、しょせん同じことだ。

オープンの快感はオープンモデル以外では楽しめない

走りはピュアスポーツとして考えると、より軽量でミッドシップのボクスターに分があるように見えるが、サーキットで競い合いなどせず、公道で楽しむ限りは、共に不満などあろうはずはない。Fタイプの V6モデルの場合は、本文でも書いたとおり、低回転域のトルクがもうちょっと欲しくなってしまうのだが、これはやはり上級グレードに圧倒的なV8モデルがある以上、差別化としては致し方ないところか。絶対的な性能を求めるだけでなく、街中をトロトロ走るのであれば、V8の方がかえってふさわしいと思われる。しかし逆に言えば、V6はガンガン飛ばして楽しいモデルだ。凄まじいというほどのパワーではないので、エンジンを回すことが楽しめる。まあ、そこは免許証との折り合いをつけてもらわないといけない領域になってはしまうが。V6は飛ばして(エンジンを回して)楽しいモデルである。そこが重要。そして燃費だって性能の割にはいいほうだ。 Fタイプの場合、スタイリング的にはクーペに、より魅力があるように思われる。特にあの個性的なリアスタイルにはグッと来るし、いわゆるハッチバックだから実用性も高く、価格も150万円ほど安い。しかし、やはりコンバーチブルは屋根を開け放った時の非日常感が、クローズドタイプの倍なんてものではなく、それこそ何倍もの快感を得られる。走行性能はいろんなクルマで楽しめる類のものだが、オープンの快感はオープンモデル以外では楽しめない。しかも昔のオープンカーは、オープン走行のために大変な労力を要したものだが、今ならボタン一つの全自動で10秒ほどもあればいい。この素早さや簡単さを獲得したのは、ここ数年の話。ボクスターだって2011年まで販売していた先代モデルまで、ロックは手動だったのだ。これは昨今の大きな進化だろう。また、特にFタイプはスクリーンの上端がかなり前方にあって頭上に迫っておらず、開放感が高い。ここは素晴らしいメリットだ。やはりコンバーチブルの方がクーペより購入後の満足感は高いと思われる。
 
ということで、Fタイプ、年収1000万円超の人には、おすすめできるクルマだ。それでも一つ難があるとすれば、日常的に乗り回すにはちょっとつらいことか。いや、クルマとしては別に乗り回せるのだが、営業活動や冠婚葬祭には、さすがにちょっと乗って行きづらい。またオープンモデルは乗ってる人や室内が丸見えなので、クローズドモデルよりちょっと気を使う必要もある。あと花粉症の人もダメか。よく、日本ではオープンにする機会が少ないなどという人がいるが、屋根を低速で走行中に10秒前後で開閉できるタイプであれば、日本でもオールシーズン楽しめることは保証しておきたい。これから夏の昼間はやや厳しいが、夜、山中で止めて満天の星を眺められるのはオープンだけの特権なのだから。Fタイプはステイタスのためではなく、純粋に人生の楽しみとして乗るクルマだ。そこをいいと思ったら、どうぞ、すぐディーラーへ足をお運びいただきたい。あ、年収1000万円でなくても試乗はダイジョウブですから。
 

トヨタ、ヴィッツをマイナーチェンジ:MOTOR DAYS ピックアップニュース

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トヨタは2014年4月21日、コンパクトカーの「ヴィッツ」をマイナーチェンジして発売した。中部地区での発表会が行われた中部経済産業局(名古屋市中区三の丸)からリポート。

1.3リッター車でアトキンソンサイクルや「VVT-iE」を採用

ヴィッツは1999年にデビュー。初代は欧州戦略車として登場し、2005年には2代目に、2010年12月には現行の3代目に進化している。 フルモデルチェンジから約3年半で行われた今回のマイナーチェンジでは、新開発の1.3リッター直4エンジン(1NR-FKE)に、プリウスなどのハイブリッド車で採用しているアトキンソンサイクルを採用。圧縮比は13.5に高められ、さらにクールドEGR、VVT-iE(電動連続可変バルブタイミング機構)なども採用し、世界トップレベルの最大熱効率(※)38%を達成。アイドリングストップ機能も装備することで、JC08モード燃費で従来モデル比+3.2km/Lの25.0㎞/Lを達成。これにより、1.3リッター・FF車はエコカー減税の免税(100%減税)対象車になった。 ※熱効率:使用した燃料の熱エネルギーのうち、動力を生み出すために有効に利用された熱量の割合
 
ボディカラーではルミナスイエロー(写真)など7つの新色を採用。全17色を用意した
また、1リッター直3エンジンや1.5リッター直4エンジンも改良され(後者にもアイドリングストップ装着車を設定)、燃費を向上。変速機はこれまで通り、RSの5MT車を除いて全車CVT(無段変速機)になる。 シャシーに関しては、スポット溶接の増し打ち、床下の補強材の大型化、ショックアブソーバーの改良などを実施。吸・遮音材、制振材を追加するなど、静粛性も向上させたという。VSC&TRCは全車標準になった。

「キーンルック」を採用。内装も細かく改良

フロントデザインには、ここ最近のトヨタ新型車に見られる「キーンルック」を採用。ヘッドランプと一体で構成されるV字ライン、台形の開口部や左右にスリットを設けたフロントバンパーなど、最近のSAIやオーリスに通じる造形になった。また、リアコンビランプなどのデザインも手直しされている。スポーティグレードの「RS」では巨大なメッシュグリルが採用された。
 
インテリアでは、インパネの表面処理や加飾、シート表皮、メーターデザインなどを変更。助手席前に大容量アッパーボックスも新設定された。アイドリングストップ装着車には、燃費情報などを表示するTFTディスプレイが採用されている。

価格は115万5600円~。RSは183万1091円~

ヴィッツ RS “G's”
グレードは従来同様に、ベーシックな「F」、オシャレな専用内装などを持つ「Jewela」、装備充実の「U」、スポーティな「RS」の4種類。 価格(消費税8%込)は、1リッター車が115万5600円~、1.3リッター車が145万0145円~。1.5リッター車のRSは、5MTが183万1091円、CVTが191万4545円~。
 
ヴィッツ RS “G's”。G's専用スポーティシートはホールド性が高く、なかなかの仕上がり
また、ヴィッツ RSをベースに、メーカーの生産ラインで架装されるスポーツコンバージョン車「G's」もマイナーチェンジ。スポット溶接増打ちに加えて、センタートンネルブレース(補強材)の改良、リアフロアへのブレース追加、足回りや電動パワステの専用チューニング等が施された。こちらは5MTとCVT共に204万4145円~。 販売は従来通りネッツ店で、月販目標台数はデビュー時の1万台より少し減って8000台。

デイズのコメント

雨の中、RS(写真)と1.3リッター車のCVT仕様に、短時間ながら試乗できた。RSはもちろん、1.3リッターの方もよく走る
新しいエンジンを載せて、いよいよ一部グレードで100%減税を達成したヴィッツ。ちょい乗りしてみれば特に不満のないクルマではありました。とはいえ、どんどん派手になるグリルの意匠を含め、ちょっと内弁慶なところが気になるかと。このクラスの輸入車、燃費以外の部分でなんかスゴイことになっているので。       ■過去の記事 ・新車試乗記>3代目トヨタ ヴィッツ 1.3 U (2011年2月掲載)
 

ルノー キャプチャー インテンス:新車試乗記

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キャラクター&開発コンセプト

「冒険」がテーマの小型クロスオーバーSUV

ルノーの小型クロスオーバーSUV「キャプチャー」は、2011年に同名のコンセプトカーとして登場。5ドアとなった市販バージョンは欧州では2013年にデビュー。日本では同年末の東京モーターショーで公開された後、2014年1月に受注を開始し、2月27日に発売された。ルノーにとっては、コレオス(2009年~)に続くクロスオーバーSUVになる。
 
ルノー キャプチャー コンセプト(東京モーターショー 2011)
ベースはルノー・日産グループのBプラットフォームで、現行ルーテシア(2013年~)やジューク(2010年~)等と共通。また、日本仕様のパワートレインは現行ルーテシアの標準モデルと同じで、1.2リッター直4・直噴ターボとゲトラグ製6速DCT(デュアル クラッチ トランスミッション)の組み合わせになる。
 
市販バージョンのキャプチャー(東京モーターショー 2013)
デザインについても、現行ルーテシア同様、新しくルノーのデザインチーフとなったマツダ出身のローレンス・ヴァン・デン・アッカー氏が担当している。その車両コンセプトは、ルノーの新しいデザイン戦略「サイクル・オブ・ライフ」に則ったもので、ライフステージの2番目とされる「Explore(冒険)」。 生産はスペインのバリャドリッド(Valladolid)工場で行われる。 ■関連記事新車試乗記>ルノー ルーテシア(2014年1月)
 

価格帯&グレード展開

256万9000円~で、2トーン仕様は10万3000円高

今回試乗したインテンス 車両協力:ルノー名古屋東
欧州仕様も含めて、駆動方式はFFのみ。欧州には0.9リッター直3ターボ(90hp、13.8kgm)や1.5リッター直4ディーゼルターボ(90hp、22.4kgm)があるが、日本仕様は1.2リッター直4ターボ(120ps、19.4kgm)、変速機はルノー言うところの6速EDC(エフィシェント デュアル クラッチ)、いわゆるDCT(デュアル クラッチ トランスミッション)になる。 グレードと価格(消費税8%込み)は、16インチアロイホイール等を備えた標準グレード「ゼン(Zen)」(256万9000円)と、17インチブラックアロイホイール、2トーンカラー、着せ替え可能な2トーンの「ジップクロスシート」、プライバシーガラスを備えた「インテンス(Intens)」(267万2000円)の2種類。価格差は10万3000円しかないので、人気はインテンスに集中しそう。
 
こちらはブラックルーフのインテンス。ボディカラーはブルーメディテラネ
ボディカラーは5色(オレンジ、アイボリー、ブラウン、ブラック、ブルー)で、インテンスの場合はルーフがアイボリーもしくはブラックの2トーンカラーになる。ゼンの単色と合わせると、カラーコーディネイトは全部で10通り。 全車、フロントのLEDポジションランプ、オートエアコン、クルーズコントロール、ESC(横滑り防止装置)は標準装備。一方、2DINスペースに装着できるオーディオやナビは、販売店オプションになる。社外品でも装着できるが、純正品ならステアリング裏に生えているサテライトスイッチやバックカメラ(インテンスに標準装備)が使用可能になる。 ■キャプチャー ゼン     256万9000円 ■キャプチャー インテンス  267万2000円 ※今回の試乗車
 

パッケージング&スタイル

ボディカラーも個性的

小型SUVジャンルでは、日産ジュークに並んで個性的なキャプチャー。デザイン的には確かに現行ルーテシアのSUV版という感じだが、インパクトはルーテシアより強いかも。フロントに堂々と据えられたルノーの菱型マークや、グリルとつながった切れ長のヘッドライト、いかにもモデラーが粘土をこねて生み出したようなボディサイドの造形が面白い。ちなみにフロントフェンダーは樹脂製だ。
 
強い個性を引き立てているのが、ビビッドなボディカラー。試乗車はオランジュ ルシオン(ルシオン地方のオレンジ)に、イヴォワール(アイボリー)のルーフという組み合わせ。ルーフがパキッとしたホワイトではなく、クリーム色に近いアイボリーなのがオシャレ。 ボディサイズに関しては、全長と全幅は現行ルーテシアと大差ないが(それぞれ+30mm)、最低地上高が70mm高く(115mm→185mmmm)、全高は120mm高くなっている。つまりボディの「厚み」自体は、おおよそ50mm増しに過ぎない。
 
    全長(mm) 全幅(mm) 全高(mm) WB(mm) 最小回転半径(m)
VW クロスポロ (2010~) 4000 1710 1520 2470 4.9
ルノー ルーテシア (2013~) 4095~4105 1750 1435~1445 2600
MINI クロスオーバー (2011~) 4105~4120 1790 1550 2595 5.8
ルノー キャプチャー(2014~) 4125 1780 1565 2605
日産 ジューク (2010~) 4135 1765 1565 2530 5.3
プジョー 2008 (2014~) 4160 1740 1550 2540 5.5
ホンダ ヴェゼル (2013~) 4295 1770 1605 2610 5.3
 

インテリア&ラゲッジスペース

着せ替えできる「ジップシートクロス」を採用

「インテンス」には着せ替えシートクロスが備わるほか、吹き出し口がクロム仕上げになる。ナビはオプション
インテリアで目を引くのが、線ファスナーと面ファスナー(いわゆるベルクロ)で脱着・交換可能な「ジップシートクロス」(インテンスのみ)。「取り外してご家庭で洗濯」も可能で、もちろんアクセサリー(6万1560円)で、異なるデザインのシートカバーも用意されている。 あと、現行ルーテシアに続いて、ルノーが10年以上前から採用していたカードキーの施解錠ボタンが、日本でもやっと使用可能になった(これまでは電波法の兼ね合いで使えないようになっていた)。ただ、乗り降りの度にカード型リモコンを取り出してボタンを押すのは意外にやりにくい。
 
フロントシートはルーテシアとほぼ同じに見える。リクライニングはダイアル式
「ジップシートクロス」はファスナーで簡単に脱着可能
カードキーをセンターコンソールに挿入し、隣のボタンを押すとエンジンが始動する
 

快適な後席。荷室もアレンジ多彩で大容量

リアシートは160mmの前後スライドが可能(写真は一番後ろ)
2605mmのロングホイールベースは、ルーテシアとほぼ同じ。リアシートはクッションに厚みがあり、背もたれの角度も適切で、つま先も前席の下にしっかり入るなど、居住性はまずまず。フロントシート背面にはラバーバンドゴムを使った「コードポケット」があり、個性的なアクセントになっている。 荷室はシンプルながら、様々な工夫が施されている。バンパーレベルは高めだが、それに合わせてフロアボードを上段にセットすれば、畳んだリアシートまでフラット化が可能。また、リアシートは160mm前後スライドし、荷室と後席のスペース配分を変えることできる。座面が左右一体なので、前後スライドも左右一体でしか出来ず、またスライド操作に力が要る点も惜しいが、まぁ実際のところ、動かす必要がある時はほとんどないのでは。
 
荷室容量はフロアボードが上段で377リッター、後席を前に寄せた状態で455リッター
フロアボードを下にセットして、後席を畳んだところ。最大容量は1235リッター
ルーテシアのスペアタイヤは吊り下げ式だが、キャプチャーは床下にテンパー式を搭載
 

基本性能&ドライブフィール

パワートレイン関係はルーテシアと同じ

カードキーをセンターコンソールに差し込み、始動ボタンを押せばクククッと軽快なクランキング音でエンジンに火が入る。P位置なら、ブレーキを踏んでいなくてもエンジンが掛かってしまうのに、ちょっとびっくり(かなり珍しい)。 走リ始めの第一印象は、目線の高さを除けばルーテシアとほぼ一緒。エンジンは、新型ルーテシアと同じ1.2リッター直4の直噴ターボ。最高出力は120ps/4900rpm、最大トルクは排気量2.0リッター並みの19.4kgm/2000rpmを発揮する。車重はルーテシアより60kgほど重い1270kgだが、その差はほとんど気にならない。ちなみに排気量は、VWのポロやゴルフ7の1.2直噴ターボ(105ps、17.8kgm)と同等だが、ピークパワーはそれらを上回る。 ルノー言うところのEDC(エフィシェント デュアル クラッチ)ことDCTは、ライバルのVW車より1速少ない6速。電子制御クラッチによるクリープは、VWのDSGと同じくらい自然で、違和感はない。
 
エンジンはルーテシアと同じ「H5F型」と呼ばれる1.2リッター直噴ターボ。ボンネット前端の裏側に歩行者保護用のクラッシュボックスが設けられている
一方、変速レスポンスはルーテシア同様、おっとりしたもの。アクセルをぐいっと踏んでも、いったんタメを作ってから穏やかに反応。VWのDSGのような素早いレスポンスを期待すると、ちょっと肩すかしを食らう。ルノーとしてはトルコンATのような感覚を狙っているのだろう。 なのでキャプチャーでは、2000~3000回転くらい低い回転でエンジンを回しながら、ゆったり走らせるのがいい。そうすると、1.2リッターとは思えないトルクフルな走りが楽しめる。 アイドリングストップはルーテシア同様、設定なし。おかげでエンジン再始動時の遅れやショックという問題は免れている。ハンドブレーキのところには「ECOモードスイッチ」があり、それをオンにすると燃料消費を最大で10%抑えるらしいが、同時にエアコンの風量もガクンと落ち、冷媒のコンプレッサーも止まってしまうので、すぐに車内が暑くなってしまう。夏場はちょっと使えそうにない。

山道や高速道路もそつなく

シャシーは定評のあるルーテシアがベースで(フロントはストラット、リアはトーションビーム)、ワインディングでも当然ながら、そつなく走る。試乗したインテンスのタイヤは17インチ(205/55R17、ミシュラン プライマシー3)で、グリップ感は十分。電動パワステは軽めで、少し切った時(微舵域)の反応が曖昧だが、いたずらにクイックにはなっていない。 ルノーらしいと思ったのは、サスペンションを比較的ストロークさせる方向であること。このあたりは上手いなぁという感じ。負荷をかけていっても、挙動が大きく出る前にESCが作動して、スムーズな走りを途切れさせない。電子制御技術の進化が体感できる。
 
100km/h巡航時のエンジン回転数は、約2250回転。ロングホイールベースやワイドトレッド、しっかりしたタイヤなどのおかげか、高速域でも重心の高さを感じさせない。風切り音は100km/hくらいからザワザワ言い出すが、不快なほどではない。 また、ルーテシア同様、高速域ではじわじわとだが、速度の伸びがいい。最高速は欧州仕様車の発表値で192km/hとあるが、確かにそれくらいは出そう。ちなみに同じエンジンを積むルーテシアの最高速は199km/hだ。

試乗燃費は11.1~11.8km/L。JC08モード燃費は未発表

指定燃料はプレミアム。今回入れたハイオクはリッター167円だった
今回はトータルで約170kmを試乗。試乗燃費(車載燃費計)は、いつもの一般道、高速道路、ワインディングを走った区間(約90km)が11.1km/L。また、一般道を大人しく走った区間(約30km)が11.8km/L。高速道路(約20km)は区間が短いので参考値だが、16.7km/Lだった。JC08モード燃費は未発表。総じて、普通に走れば10km/Lはまず割らないという印象。
 

ここがイイ

個性的な内外装デザイン。トルクフルなエンジン。運転のしやすさ

個性的なエクステリアデザイン。やっぱりフランス車のこの「変さ」(フランスではこの変さが「普通」なのだろうか?)は貴重。内装を見ても、ファスナーで着せ替えできるシートが面白い。これなら社外メーカーも、いろいろなカラーリングのシートカバーを作りやすいのでは? 自分で服を縫ってしまう器用な女性なら、自作できるかも。 常用域のトルクがあるエンジン。打てば響くようなレスポンスや俊敏な吹け上がりはないが、のんびり走らせる分には悪くない。2000~3000回転くらいで流す時のトルク感ある走りは、なかなか気持ちがいい。 電子制御クラッチによるクリープも、ちょっと弱めだが、自然。トルコンATからの乗り換えでも、運転はしづらくないと思う。また、運転姿勢はややアップライトで、ステアリングコラムがやや下に位置するが、ステアリングのチルト/テレスコ、シートリフターの調整幅が広く、小柄な女性でも不満のないポジションがとれると思う。 ルノー自慢のカードキーのドア施解錠ボタンが、デフォルトで使えるようになった。ただ、カードキーはカード入れなどに入れっぱなしにしておきたいから、これでスマートキー機能が使えれば言うことはない。

ここがダメ

インパネの質感。ライバル車に少々ひけをとるレスポンスや燃費。エコボタン。

内装の質感は、「スペシャリティ」を謳うホンダ ヴェゼルや、質感にこだわったプジョー 2008と比べると、ちょっと差を感じるところ。試乗車はナビやオーディオが未装着だったせいもあるが、インパネまわりにもう少し華が欲しい。 VWの直噴ターボ+DSG車と比べると、レスポンスで少々見劣りするところ。また、実用燃費は悪くはないが、飛び抜けて良くもなく、特にハイブリッドのヴェゼルあたりと比べてしまうと分が悪い。また、ECOモードスイッチをオンにすると、エアコンの風量がガクンと落ちて、効かなくなってしまうのはちょっと極端だ。

総合評価

独創のセンス

一目見て「まあ、なんて素敵なクルマなんでしょ」と、まあ誰もが(特に女性)が思うことだろう。デザインは例の(マツダから移籍した)ローレンス・ヴァン・デン・アッカー氏。マツダで散々カッコいいクルマを作って、今はルノーでまたまたカッコいいのを作って、という誰もが認める凄腕デザイナーだ。「持ち上げ系」はただですらカッコいいのに、なんとスタイリッシュなこと。ボディサイドの下部がブラック処理され、えぐれているように見えるあたりは、もう独創というか独走、ぶっちぎりのセンス。そして上級グレードのツートン処理もいい。一時期のフランス車は独創性で売っていたものの、独創=独善とも言うべきポピュラリティのなさで、まあ、それがマニアウケしたものだが、一般には、特に日本ではとても受け入れられなかった。ルノーでもアヴァンタイムは今でも欲しくなるほど独創的な(独善的な)クルマ。フランス車好きにはたまらないのだが……。そんな伝統は今もシトロエンは維持しているように思えるが、ことルノーやプジョーはこのところ、いい意味で独創的かつポピュラーなカッコよさを持ったクルマを連発していて、これはもうマイリマシタとしか言えない。
 
インテリアの方は特に奇をてらっていないものの、「シートカバー」は斬新なアイデア。冬は冷たく、夏は熱くなるレザーシートに今ひとつメリットを見いだせない身としては、このシートは理想のものと思う。カスタムカーの世界では、今やシートカバーは当たり前のアイテムだが、革風が主流だ。逆にこうしたファブリックの着せ替えシートカバーの質のいいものは、今後もっとアフターパーツとして出てきてもいいのじゃないかと思う。その昔、もう30年も前のことだが、タータンチェック柄やギンガムチェック柄の布シートカバーを当時のビニールシートによくかぶせたもの。それはそれでけっこうおしゃれだったように記憶しているのだが、今やすっかり廃れてしまっている。ここに来て、ルノーからこうした提案が出てきたわけだが、このあたりはやっぱり日本車にもがんばってもらいたいと思うところだ。

日本車とはまったく違うところへ行っちゃった

最近は私的にも1.2リッターターボとDCTのクルマを日常の足にしているが、低回転でトルクがあるのがなんと言ってもいいところだと思う。ピークパワーではなく、日常的に使う低回転域でのトルク感こそ、普段使いのクルマには重要だと思う。キャプチャーも2000回転ほど回せば最大トルクが出るわけで、日常的な乗りやすさや走りやすさ、もっと言えばそこに快感があって、普通に走って楽しい。そこが素晴らしいところだと思う。 で、エンジンを回してもそんなにパワーは出ないので、逆にぶん回して楽しめる。しかもキャプチャーは足がしっかりついてくる。なんだかもう、日本車とはまったく違うところへ行っちゃったなあという感じだ。そして、キャプチャーの場合はアイドリングストップもついてないから、より違和感がない。また、エコボタンは押した途端、エアコンがセーブされて、4月の試乗時の気温ですらいきなり暑くなったので、オーナーになったらエコボタンは使わないと思う。冬場には意味があるかもしれないが、4月になればもうエアコンが欲しくなる日本では、今のようなエコボタンはなくてもいいと思った。
 
ただ、そうなると燃費的(環境的)には確かにちょっと不利だとは思う。4月になって、ガソリンは消費税と温暖化対策税でダブル増税され、さらには総額にも消費税がかかるという信じられない二重課税によって、このところハイオクに至ってはリッター170円オーバーも珍しくない。こうなると、例えば同クラスのヴェゼル ハイブリッドあたりが気になってしまうところ。最悪の数字が出ると思われる我々の試乗燃費でヴェゼルは13.6km/L走ったが、キャプチャーは11.1km/L。ヴェゼルは(ハイブリッド車が得意とする)一般道を走ったら、もっともっと伸びるはずなので、下手したら18km/Lくらいはいきそうだ。しかもレギュラーガソリン。フランス車はこの点で日本車にはやっぱり勝てそうもないけど、あちらさんはハイブリッドなので車両価格はけっこう高くて225万円する。こちらはこのカッコ良さで、低回転トルクが気持よくて267万円だから、まあ買う気になればそう悩むような差ではない。キャプチャーで月800km走るとしたらガソリン代は1万2000円くらいか。ヴェゼルだと8000円くらい? 4000円程度の差なら、キャプチャーの気持ちいのいい走りを買いたいと思うのだが。

クルマを持つこと自体が「大いなる意思」

昨年から輸入車が売れてるのは、どうせ乗るなら個性的なクルマに乗りたいという人が多いからだと思う。足にするなら何だっていいが、300万円近いお金を出すなら個性的で気に入ったクルマに乗りたいもの。3月の反動で4月の販売がどれくらい落ち込んでいるか、まだ数字が出ていないが、一時的に落ちたとしても輸入車人気は堅調のはず。社会が二極化して、お金がある人とない人に分かれてきているというのもあるが、お金だけじゃなく、どうせ乗るならこだわりのクルマを、という人と、クルマなんかなんでもいいという人との二極化もまたかなりの勢いで進んでいるからだ。足なら本当にどんなクルマでも昨今は不満などないし、経済的に乗りたいというだけなら選択肢はいくらでもある。でもちょいとこだわった場合は、やっぱ輸入車がいいなあと、最近の新型車に乗るたびに思う。 経済的・環境的と言えば、エコカー減税やら補助金やらも車種によって相当な違いをみせるので、ヴェゼルとの比較も先ほどのように単純に車両価格だけで考えられないのは仕方ない。よく言われる「フランス車は下取りが云々」もあるので、まあキャプチャーが経済的に分が悪くなるのは致し方ないが、重要なのは「どうせ乗るなら、こだわりのクルマ」の部分だろう。都市部ではクルマはなくてもいいという選択肢まであるわけで、クルマを持つということ自体が「大いなる意思」だ。そこでは走りの満足や所有することの満足に加え、自己表現に対する満足も重要。それを満たせるのは、どうしてもキャプチャーのような輸入車になってしまうのではないか。アッカー氏がデザインするクルマはもう国産車からは出てこないのだし。
 

マセラティ ギブリ S:新車試乗記

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キャラクター&開発コンセプト

3代目は4ドアスポーツセダンに

新型マセラティ ギブリ
2013年4月の上海モーターショーでデビュー、日本では2013年12月にデリバリーが始まったマセラティ「ギブリ」は、同社の旗艦セダンである現行の6代目クアトロポルテ(2013年~)より一回り軽量コンパクトな高級4ドアスポーツセダン。 初代ギブリ(1966~73年)や2代目ギブリ(1992~97年)は、2ドアの高級FRスポーツだったが、16年ぶりに復活した今回の3代目はそれらと異なり、「マセラティ史上初」と謳われる4ドアミドルクラスセダンに変身している。
 
現行の(6代目)マセラティ クアトロポルテ(2013年~)
新型の特徴は、クアトロポルテより一回り小さなボディサイズによる取り回しの良さ、マセラティユーザーの裾野を拡げる1000万円前後の戦略的な価格、現行クアトロポルテに続くAWD(4輪駆動)の設定など。日本仕様にはクアトロポルテで先行採用された新世代3リッターV6直噴ツインターボエンジンと8速ATを搭載。最高速は「S」のFRモデルで285km/hに達する。
 
マセラティ レヴァンテ
なお、マセラティの年間世界販売台数は2012年には6307台、2013年には1万5400台だったが、同社は2015年までに5万台体制とする計画。それに向けて投入された新世代モデルの第1弾が現行クアトロポルテで、第2弾が新型ギブリ。第3弾はスポーツラグジュアリーSUVの「レヴァンテ」となる予定。 なお、国内での販売実績は2012年が311台で、2013年が491台。2014年は1000台を目指している。 新型ギブリおよび新型クアトロポルテのエンジンはフェラーリのマラネロ工場製だが、最終組立は、伝統のモデナ工場に続いて、2013年1月にトリノ近郊のグルリアスコで稼働開始した「アッヴォカート・ジョヴァンニ・アニェッリ」工場で行われている。

「ギブリ」の歴史をおさらい

初代マセラティ ギブリ(1966~73年)。生産台数は約1300台で、その1割は写真のスパイダーが占める
ギブリ(Ghibli)とはイタリア語で、アフリカ北部でサハラ砂漠から吹く熱風のこと。第二次大戦中のイタリア軍用機には同名のモデルがあり、そこから「スタジオ・ジブリ」が命名されたのは有名な話。なお、地中海を越えてイタリアに吹き付ける時にはシロッコという名前に変わる。 1966年にデビューした初代ギブリは、4.7もしくは4.9リッターのV8エンジンをフロントに搭載したFRスポーツクーペ/スパイダー。当時のマセラティにとっては最も豪華で高性能なスポーツモデルだった。デザインはカロッツェリア・ギア在籍時のジョルジェット・ジウジアーロ。1973年に生産終了し、後継は同じくFRのカムジンや、当時流行のミッドシップレイアウトを採用したボーラなどが担った。
 
2代目マセラティ ギブリ(1992~97年)
1992年に19年ぶりに復活した2代目ギブリ、通称ギブリIIは、1980年代のマセラティを代表するビトゥルボ系の最終完成形とも言えるモデル。ボディタイプは2ドアクーペのみで、迫力あるスタイリングはマルチェロ・ガンディーニがデザインしたシャマル(1989~96年)のイメージを引き継いでいた。エンジンはビトゥルボから発展したV6ツインターボ。1997年に生産終了し、その跡は同じくV6ターボの「3200GT」が継いでいる。
 

価格帯&グレード展開

834万円からスタート。Sが967万円、AWDが1039万円

車両協力:マセラティ 桜山
欧州にはマセラティ初のディーゼル車(3リッターV6で、275psと61.2kgm)もあるが、日本に導入されるのはガソリン車のみ。手始めに、3リッターV6ガソリン・ツインターボエンジン(410ps、56.1kgm)を搭載した「ギブリ S」と、それに電子制御多板クラッチ式のAWDシステムを組み合わせた「ギブリ S Q4」の2モデルが導入された。価格(消費税8%込み)はそれぞれ967万円と1039万円。
 
AWDシステムは、8ATの後方に電子制御多板クラッチを置いたもので、通常は0:100のFR状態だが、状況に応じて(いわゆるオンデマンドで)最大50:50まで駆動配分を行う
また、5月9日には、同じ3リッターV6ツインターボながら、330psと51.0kgmにデチューンした「ギブリ」も追加。こちらはFRのみで834万円。 なお、ハンドル位置は、当初は左のみだったが、5月以降は「S Q4」を除いて右も選択可能になった。 ちなみに、クアトロポルテ(SおよびS Q4)は、同じエンジンのギブリ Sより約300万円高く、3.8リッターV8ツインターボのGT Sは、さらに約500万円高くなる。 ■ギブリ       834万円 ■ギブリ S     967万円 ※今回の試乗車 ■ギブリ S Q4  1039万円 ■クアトロポルテ S      1265万円 ■クアトロポルテ S Q4    1363万円 ■クアトロポルテ GT S    1769万円
 

パッケージング&スタイル

いわばクアトロポルテのWBショート版

今でこそ4ドアクーペ的なスタイリングは珍しくないが、それを昔からクアトロポルテでやっていたのがマセラティ。長くうねるようなボンネットとフロントフェンダーに始まり、伝統のトライデント(三叉の銛)マークが備わるCピラー、そして引き締まったリアエンドまで続く流れるようなデザインは、イタリアンデザインの真骨頂。ドイツ車的なメカっぽい冷たさがなく、動物的な柔らかいラインで構成されている。ただ、ある程度見慣れないと、クアトロポルテと一瞬で見分けるのは難しい。
 
ボディサイズについても、全長はクアトロポルテより300mmも短かく、ホイールベースは170mmも短いが、新型ギブリがコンパクトかと言えば、さにあらず。全長はほとんど5メートルで、全幅はクアトロポルテとほぼ同じ1.95メートル。つまりギブリは、言ってみればクアトロポルテのショートホイールベース版とも言える。全長だけで言えば、クラウンマジェスタやフーガ ハイブリッドと同じくらいだ。
 
ボディはクワトロポルテと共通のスチールモノコックで、ドアやボンネットはアルミ製
リアエンドの造形から、空力にも気を使っていることが分かる。Cd値(空気抵抗係数)は0.31
こちらはクアトロポルテ。ギブリとは、ホイールベースの長さや各部のデザインが異なるのが分かる
 
    全長(mm) 全幅(mm) 全高(mm) WB(mm) 最小回転
半径(m)
日産 フーガ ハイブリッド(2010~) 4945 1845 1500~1510 2900 5.6
トヨタ クラウン マジェスタ(2013~) 4970 1800 1460 2925 5.6
マセラティ ギブリ(2013~) 4970 1945 1485 3000
日産 シーマ(2012~) 5120 1845 1510 3050 5.8
レクサス LS600h(2012~) 5090~5210 1875 1465~1475 2970~3090 5.7~5.9
BMW 7シリーズ(2009~) 5070~5230 1900 1475~1490 3070~3210 5.5~6.1
メルセデス・ベンツ Sクラス(2013~) 5120~5295 1900~1915 1495~1500 3035~3165 5.5~5.8
マセラティ クアトロポルテ(2013~) 5270 1950 1470 3170 5.9
 

インテリア&ラゲッジスペース

イタリアンデザインと最新インターフェイスを融合

クアトロポルテよりコックピット感を強めたというインパネ。写真の内装色はクオイオ(Cuoio)と呼ばれるブラウン
イタリア製高級車御用達のポルトローナ・フラウ社製レザー内装で仕立てられたインテリア。この豪華な内装だけで、車両価格1000万円は仕方あるまいと思わせる。ダッシュセンターに上品に据えられたアナログ時計の盤面やメーター、情報ディスプレイまでをマセラティ・ブルーで統一。天井やピラーは手触りのいいアルカンターラ張りになっている。試乗車のウッドパネルは「ラディカ」と呼ばれる艶消しタイプだが、オプションで艶ありのウッドやカーボンタイプも選べる。
 
マセラティと言えば、伝統のマセラティクロック
一方では、最新トヨタ車にも負けない大型8.4インチのタッチパネルとナビ(パナソニック製)を装備(さすがにフリックやピンチイン/ピンチアウトは出来ないが)。新世代の電子制御シフトセレクター(少し慣れが要る)や電動パーキングブレーキも当然のように採用されている。また、スマホを入れるのにピッタリなセンターコンソールの小物入れには、親切にオーディオ入力端子やUSBを備える。日本車顔負けの気配り上手。 なお、ギブリは、欧州の衝突安全テストであるユーロNCAPで最高評価の5つ星を獲得したほか、独自の評価基準で知られる米国のIIHS(道路安全保険協会)では衝突安全で最高ランクの「トップセーフティピック」に選ばれている。 ■IIHS-HLDA>評価>2014 マセラティ ギブリ
 
パドルシフトは固定式。ステアリング裏側にもスイッチ(オーディオの音量、選局など)があり、慣れると使いやすい
ステアリングコラムは電動。少なくとも左ハンドル仕様なら、ドライビングポジションはばっちり決まる
後席はけっこうタイト。前席下につま先は入るが、足は組めないかも。サンルーフ付だと天井も低め
 
オーディオ&ナビはスマホライクな操作こそ出来ないが、パナソニック製だけに使いやすい
トランク容量はクラス相応の500リッター。後席背もたれは60:40の分割可倒式
床下にはスペースセーバー式のスペアタイヤ(175/55R18)を搭載
 

基本性能&ドライブフィール

サウンド控えめで、オトナな雰囲気

試乗したのは「ギブリ S」のFRモデル。輸入車でも最近少なくなった左ハンドルにちょっと戸惑いつつ、ポルトローナ製レザーシートに体をそっと乗せ、スタートボタンを左手で押すと、ズワンとエンジンが掛かる。とはいえ、先日のジャガー Fタイプよりもエンジン音は控えめ。 あいにく試乗初日は雨。最初はスーパースポーツ並みの横幅(狭い裏道ではフロント左右のセンサーがピーピー鳴る)に気圧される。が、走り始めると意外に乗りやすく、すぐに馴染んでくる。エンジンやステアリングの反応が穏やかで、運転する方を緊張させない。走行中のエンジンサウンドも基本的には控えめで、オトナな雰囲気。ちゃんとチョイワル(半死語?)仕様になっている。
 
アイドリングストップ機能は未装備。なので赤信号で止っても、エンジンはウウウとかすかに唸っている。このあたりはちょっと古典的だが、純エンジン車ゆえの安心感はある。 乗り心地は後席だと揺すられるが、ドライバー目線で言えば適度にスポーティで、いい感じ。サスペンションは前がダブルウィッシュボーン、後ろがマルチリンク。電子制御可変ダンパーを装備し(試乗車はオプションのアクティブ・スカイフックサスペンション付)、スポーツ設定もあるが、ほとんどの場合はノーマルのままで十分だ。

0-100㎞/h加速は5.0秒、最高速は285km/h

パドルシフトは固定式で、ステアリングを回しながらでも見失わない。回転合わせも完璧に行う
エンジンはマセラティ・パワートレインが開発し、フェラーリのマラネロ工場で生産されるバンク角60度の3.0リッターV6ツインターボ。1980年代のビトゥルボ(Biturbo=ツインターボ)や、V6ツインターボという点は1990年代のギブリ II と同じだが、中身はもちろん最新鋭。最新の直噴システム、2基のパラレルターボ、4本連続位相可変カムシャフトなどを採用し、410ps/5500rpm、550Nm/1650rpmを発揮する。ちなみに、「S」の0-100㎞/h加速と最高速(発表値)は、それぞれ5.0秒と285km/hで、AWDの「S Q4」では4.8秒と284km/h。330psのスタンダードモデルでも5.6秒と263km/hを誇る。 実際、アクセル全開時のパワー感はスペック通りで、1980kg(試乗車)のボディを羽根が生えたように加速させる。さらにスポーツモードでは、エンジンやミッションの制御マップが変わるほか、「マセラティ サウンド タンク」のバイパスバルブが開き、エンジン音も獰猛に変化。V8のような甲高いソプラノではなく、男性的なテノールサウンドになる。また、レッドゾーン手前の自動シフトアップ時に出る、ボボボッとこもった独特の音も迫力。
 
電子制御タイプのシフトレバーは、操作方法が微妙に独特。少し慣れを要する
感心したのは、クワトロポルテに続いて採用されたZF製の8速AT「AT8-HP70型」の完成度。今やこのクラスでは標準になった感もある8速ATだが、ギブリのものも変速が滑らかで、エンジンとのマッチングもいい。ギア比は下の方がクロスしていて、上の方がかなりハイギアード。つまり、街乗りや山道ではこまめなシフトで最適な回転域をキープし、高速巡航時には低い回転で燃費を稼ぐ。少なくともこのクラスに8速ATはマストと思わせる完成度。

人間の感覚に合ったハンドリング

試乗車のタイヤは、Sに標準の18インチ(前235/50R18、後275/45R18)。銘柄はイタ車らしくピレリ Pゼロ。ブレーキキャリパーは前後ともブレンボ製
新型ギブリの真価は、ワインディングでよく分かる。やや繊細な感じがした先代クアトロポルテに比べて、ボディの剛性感は飛躍的に高まり、まったくもってガシッとしたものになったが、FRらしいナチュラルなハンドリングはそのまま。電動パワステに妙なクイック感はなく、ドライバーの思った通りに反応する。ギブリに、速度感応式の可変ギアレシオ機構といったものはない。 トランスアクスル(エンジンとミッションの搭載位置を離したもので、フロントエンジン車の場合はリアにギアボックスを搭載する)ではないが、前後重量配分(車検証数値)は52:48(1030+950)と良好。後席に人が乗ったら、ちょうど50:50になりそう。加えて、ロッキングファクターが加速時35%、減速時45%という設定のLSDも標準装備するおかげで、いかにもFR車らしくコントロールできる。今回の試乗はヘビーウエットで、アクセルを踏み過ぎると550Nmのトルクに耐えかねてリアが滑り始めるが、特に怖さはなく、すぐにESPが挙動を止めてくれる。マセラティの開発ドライバーが、このクルマを振り回しながらテストしている様子が目に浮かぶ。人間の感覚や主導権を重視したハンドリングが、いかにもイタリア車らしい。
 
100km/h巡航時のエンジン回転数は、8速トップでたった約1350回転。おかげで、どうかすると100km/hでもトップに入らず、そこでスポーツモードを選ぶと5速まで落ちる。そんなわけで、日本の法定速度下では少々使い切れない感はあるが、欧州や北米なら、この高速型のギアリングは燃費や静粛性にかなり効くはず。 なお、他メーカー車でも普及し始めているオートマチックハイビームは、街中ではなかなかハイビームになってくれない面があり、それはギブリでも同じだが、ライトレバーを引くと簡単にシステムをオフにできるので、そんなに困らなかった。郊外では適切にハイ・ローを切り替えてくれて便利だ。

試乗燃費は6.4~7.8km/L。6km/L台はほぼ確実

今回はトータルで約250kmを試乗。試乗燃費(車載燃費計)は、いつもの一般道、高速道路、ワインディングを走った区間(約90km)で6.4km/L。また、一般道を大人しく走った区間(約30kmを4回)が6.6km/L、7.0km/L、7.6km/L、7.8km/Lだった。撮影のための移動を含めた総平均は6.2km/L。総じて実用燃費はあまり上下しないタイプで、ラフに乗らない限り6km/L台という感じ。 SとS Q4のJC08モード燃費は未発表だが、追加されたスタンダードの「ギブリ」では7.6km/Lと発表された。 指定燃料は当然プレミアムで、タンク容量はクアトロポルテと同じ80リッター。
 

ここがイイ

ハンドリング、能ある鷹は爪を隠す的な雰囲気。ハードの完成度

今どき珍しいほど素晴らしくナチュラルなハンドリング。FR好きなら絶対に気に入ると思う。また、普段はジェントルで、排気音も控えめだが、踏めばズバッと加速するターボエンジン。能ある鷹は爪を隠す的なクルマ。4ドアセダンの高級セダンらしく、普段使いから高級ホテルまで、どこにでも乗っていける。大人しく走れば、燃費もパワーと車重の割にいい。 シャシーにしても、エンジンにしても、8速ATにしても、ハードウエアの完成度が高い。不思議なくらい最初から完成度が高く、とにかく生煮え感がない。

ここがダメ

ミドルとはいえ大きい。先進安全装備の不備など

クアトロポルテより全長は短く、その分小回りは効くはずだが、やはり大きい。特に横幅は走るだけならそんなに気にならないが、駐車する時にはそれなりに場所を選ぶ。また、フロントのナンバー位置が低くて、段差や傾斜で擦りやすいのには気を使った。 電子制御シフトレバーの操作感がやや独特で、例えばDからPにシフトする場合などは、「ロック解除ボタンを押してから」動かさないと、実際にはロックが解除されずRに入ってしまうので、注意が必要。また、ウインカーレバーがパドルシフトより向こうにあり、指が届きにくいのも気になった。 エアコンをオートモードにしておくと冷え過ぎたり、暑くなったりと、温度設定が微妙に難しい。マニュアルモードの方が使いやすいかも。 後席は決して広くないので、後席を頻繁に使うなら、クアトロポルテの方が良い。 クルマとしてはドイツ車にも負けないが、高級車にとって今後の課題である先進安全装備や、ナビを中心としたITS系装備については、やはりまだまだ。衝突回避系のシステムくらいはさすがに欲しくなる。

総合評価

想定外の楽しさ

マセラティと言えば、最近は「フェラーリのエンジン」を載せたセダンというイメージがあるが、新型ギブリのエンジンもフェラーリのマラネロ工場で生産されている。とはいえ、やはりV6ターボだから、そこに例のフェラーリサウンドはない。おおかた1000万円もするクルマなので、特別な何かを期待してしまうのは致し方ないところか。 走らせても、これが案外普通の高級車で、乗り手をビビらせるほどのオーラはない。こと一般道では特に気持ちが高ぶることはなく、ちょっと見かけることのない、人と違うクルマに乗っているという満足感こそあっても、1000万円なら、もっと別の手もあるかな、なんて一瞬思ってしまったくらいだ。高速走行に不満はないものの、日本の高速道路での速度域くらいでは胸が踊ることはない。 ところが、これをいったんワインディングに持ちこみ、スポーツモードにすると、その巨体に見合わない素晴らしいスポーツ走行を楽しませてくれる。いわゆるサーキットで速いタイプではなく、ワインディングを優雅かつ軽快に、いや、優雅ではなく、心躍る気分にさせてくれるタイプ。クラウンマジェスタより全幅が145mmも広いことなんて微塵も感じさせない軽快感や一体感はどうだ。それまではマセラティのセダンなのだから、そのブランド力でどんな用途にも使える高級車なんだな、くらいに考えていたのだが、スポーツ走行がこんなに楽しいのは想定外。もちろん、このクラスを買うようなお金持ちの場合、優雅な高級セダンと、純粋なスポーツモデルの両方を所有して乗り分けるのが普通なのかもしれない。しかしまあ1000万くらいがクルマ用の予算かな、という人なら、このクルマ一台でどんなシーンでも不満なく乗れるのでは。
 
いや、本来こういう4ドアスポーツセダンは、様々なシーンでマルチに楽しめるべきものだろう。スタイリングを愛で、ブランドを誇り、走りを楽しむ。無論、乗っている間、常に目に入るインテリアの上質感には誰も不満を言うまい。このスタイリングも古臭く言えば4ドアハードトップ。「あの頃」のちょいバブルな雰囲気もあったりして、それが今、案外「ナウい」のでは。 とか何とか書いていたら、5月9日になって「Eセグメント戦略価格モデル」として834万円のスタンダードモデルも登場した。これくらいの価格だったら、ポルシェ ケイマンあたりを買うよりイイかも、なんて思えてくる。実用性にしても、豪華さにしても、上なのだから。 で、肝心の仮想敵であるEクラスや5シリーズ、さらにはA6、それとレクサスGSあたりを思えば、色っぽさでは完全に上。昨年2013年には国内で491台を売り、今年2014年には倍増の1000台を目指すというマセラティ ジャパンにとっては、なるほど、これは確かに戦略的なモデルだ。販売店の体制も大攻勢をかけているようで、今年は金沢とか浜松といった地方都市にも進出し、日本国内に6店が新規オープンするという(計22拠点になる)。マセラティ全体では2015年に年間生産5万台達成が目標らしい。となれば、米国や中国を含めた世界市場では4WDモデルこそが重要だろうし、日本でも金沢など多くのエリアが4WDを求める降雪地帯だ。

高速道路にもプレミアムなパスを

先日、新東名を走っていたら、また新たなオービスが設置されていた。覆面パトカーも多いようで、この素晴らしい道を、設計速度以下の100km/hに制限して取り締まりを強めている。一部のトンネルなど、わざわざ2車線に狭めているし。ギブリ Sの285km/hなどという最高速は、もはや日本では実質的な意味を持たない(これはまあ、他のクルマでも誇っているものではあるけれど)。すでに国産メーカーなどは最高速を抑えて、ひたすら燃費と安全を追求する方向に開発が向かっている。一方、ギブリは日本の道では意味が無いほど素晴らしい走行性能を持つが、ハイオクガソリンがリッター170円オーバー時代に実燃費は総平均で6.2km/Lだ。それを悪しく言うつもりはない。マセラティを買えて、燃費を気にせず乗れる人は(アベノミクス的に言えば、これは消費を活性化させる「いい人」なのでは?)、それなりにお金を使って(税金もたくさん払って)、世に貢献しているわけで、であれば新東名の制限速度を高く設定してくれるとか、何かメリットを与えてもいいと思う。
 
炎上しそうな話を書くと、政治的には今後さらに二極化を進めようとしているわけで、ならば税金を沢山収めている人にはそれなりのメリットを与えることで、もっと日本は国際社会で優位に立てるのではないだろうか。遊園地の中には、お金を出せば待ち時間が短くて済むパスを用意するところもあるわけで、それを高速道路にも適用したらどうだろう。それでこそ輸入高級車がもっと売れ、日本でもそれに負けない高級な高性能車が作られ、そして日本経済が世界に対抗できるようになっていくのでは。そういったことも、そろそろ考えるべき時だろう。今期も最高益を出したトヨタあたりが、法人税減税と合わせて高速道路にもプレミアムなパスを、などと言い出してくれないものかと夢想する。新東名など、もともとはトヨタが平均150km/hで走れるクルマを開発して売るために建築計画促進に力を尽くしたという噂もあるくらいなのだから。亡くなった豊田英二さんに生前お会いした時、雑談の中でだが、「新東名ができたら東京と豊田(トヨタ本社間で約300km)はうちのクルマなら2時間だわな」と言っていた。いまの状況を英二さんも草葉の陰で嘆いているに違いない。
 

日産 スカイライン 350GT ハイブリッド タイプSP:新車試乗記

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キャラクター&開発コンセプト

海外名はインフィニティ Q50

新型スカイライン 350GT HYBRID Type SP
2013年11月11日に発表、2014年2月に発売された新型「スカイライン」は、1957年デビューの初代から数えて13代目。 ご存知の通りスカイラインは、2001年発売の11代目(V35型)から海外ではインフィニティ G35と呼ばれるモデル(12代目のV36型ではG37に進化)。その後継モデルとして2013年夏に米国で発売されたのがインフィニティ Q50であり、その国内版が今回の新型スカイライン。内外装の一部バッジやハンドル位置を除いて、ほぼインフィニティのまま販売される。

全車ハイブリッドでスタート。世界初のステアリング・バイ・ワイヤーを採用

エンジンとミッションの間に乾式クラッチとモーターを配置。ミッション(7AT)は「トルコン抜き」で使う
Q50では、従来の3.7リッターV6ガソリンエンジン「VQ37VHR」等も継続されるほか、欧州向けにはダイムラー(メルセデス・ベンツ)製2.2リッター直4ディーゼルターボも用意される。 一方、国内向けスカイラインは、ひとまずハイブリッドのみ。フーガ ハイブリッドと同じ3.5リッターV6エンジン「VQ35HR」の1モーター・2クラッチ式ハイブリッドが搭載される。車両型式は「HV37」。
 
ダイレクト アダプティブ ステアリング(DAS)。ステアリングシャフトとギアボックスの間にはクラッチがあり、通常走行時にはこれが切り離される
もう一つ、大きな技術トピックは、市販車で世界初の“ステアリング・バイ・ワイヤー”技術「ダイレクト アダプティブ ステアリング(DAS)」を採用したこと。通常走行時、ステアリングと前輪は機械的に直結しておらず、電気信号によって操舵される。 生産は、シーマなど日産の高級車を主力とする栃木工場(栃木県河内郡上三川町)。米国に続いて欧州などにも輸出される。国内での月間販売目標は、先代の1000台から大幅に下方修正されて200台。
 
skyline_02fuga_hybrid_200.jpg 日産 フーガ ハイブリッド
■過去の新車試乗記 ・日産 フーガ ハイブリッド(2010年12月掲載)日産 スカイライン クロスオーバー 370GT(2009年9月掲載)日産 スカイライン 350GT Type SP(2007年1月掲載)
 

価格帯&グレード展開

ひとまずハイブリッドのみで462万4560円~

ボディカラーは全8色。写真はラディアント・レッド・パールメタリック
新型スカイラインはひとまず、3.5リッターV6エンジンのハイブリッドモデル「350GT ハイブリッド」のみでスタート。このパワートレイン自体は、現行フーガ ハイブリッドとほぼ同じものだ。 今回のニュースは、日産のハイブリッド車で初の4WDモデルが用意されたこと。前輪への駆動力はプロペラシャフトの途中から取り出され、電子制御トルクスプリット4WD「アテーサE-TS」により、適宜フロントに分配される。
 
内装色は全グレードでブラックとベージュ(写真)の2色を用意。タイプPとSPは本革シートになる
【FRモデル】 ■350GT HYBRID       462万4560円 ■350GT HYBRID Type P  500万2560円 ■350GT HYBRID Type SP  541万5120円 ※今回の試乗車 【4WDモデル】 ■350GT FOUR HYBRID      490万5360円 ■350GT FOUR HYBRID Type P  528万3360円 ■350GT FOUR HYBRID Type SP  569万5920円

V36型は2.5リッターを継続販売。307万5840円~

V36型スカイラインは、250のみ継続販売される
なお、純エンジン車については、先代V36型スカイラインの2.5リッターV6モデルが継続販売される。「250GT」「250 Type S」「250GT FOUR」の3グレードで、価格は307万5840円~358万9920円(以下、全て消費税8%込み)。 なお、ルノー日産とダイムラーの間では各種ガソリンエンジンの共同開発が進んでおり、Q50にも2リッター直4ターボが搭載される予定。
 

パッケージング&スタイル

外観はほぼインフィニティ Q50

ヘッドライトやフォグランプなど燈火類は全てLED
外観でまず思うのが、やはりフロントのバッジまでインフィニティ Q50と同じになったことだろう。Q50と異なるのは、リアにインフィニティおよびQ50のバッジがなく、「SKYLINE」と入ることくらい。ここまで一緒なら、いっそリアも一緒で良かったのでは、という気もする。 あと、外観で印象的なのは、ボディパネルの質感がえらく高いこと。塗装は水研ぎ工程こそないものの、シーマと同じ栃木工場の職人が手がけているという。デザインに関しては、ちょっとBMW風でもあり、レクサスGS風でもあり、ジャガーXF風でもあり、先回試乗したマセラティ ギブリ風(リアフェンダー)でもあるが、暗いところで見たら一瞬、直6最後のR34型スカイラインの面影がよぎった。

全幅は50mmアップ。サイズ的にはGSが近い

ボディカラーは全8色で、試乗車はテーマカラーのHAGANEブルー
ボディサイズは全長4800mm×全幅1820mm×全高1440mm。先代より全幅は50mmほどワイドになったが、ホイールベースは変わらず2850mm。BMWのアクティブハイブリッド3やレクサス IS300hより一回り大きく、むしろGSハイブリッド(300h/450h)に近い。 なお、Cd値(空気抵抗係数)は0.26を達成。ボディ底面のフラット化などにより、前後ゼロリフトを実現したとのこと。
 
タイプSPはフロントバンパーが専用デザインになる
リアには日産のバッジも、インフィニティのバッジもない。ガーニッシュにSKYLINEと入る
ネガティブからポジティブに変化するショルダーラインがポイント
 
    全長(mm) 全幅(mm) 全高(mm) WB(mm) 最小回転
半径(m)
BMW アクティブハイブリッド 3 (2012~) 4625 1800 1440 2810 5.4
レクサス IS300h(2013~) 4665 1810 1430 2800 5.2
レクサス HS250h(2013~) 4710 1785 1495 2700 5.6
日産 スカイライン セダン V36型 (2006-) 4755~4780 1770 1450~1465 2850 5.4~5.5
日産 スカイライン ハイブリッド(2014~) 4800 1820 1440 2850 5.6
レクサス GS300h/450h (2012~) 4850 1840 1455 2850 5.1~5.3
トヨタ クラウン ハイブリッド(2012~) 4895 1800 1450-1460 2850 5.2
ホンダ アコード ハイブリッド(2013~) 4915 1850 1465 2775 5.7
BMW アクティブハイブリッド 5(2012~) 4915~4920 1860 1475 2970 5.7
日産 フーガ ハイブリッド(2010~) 4945 1845 1500~1510 2900 5.6
 

インテリア&ラゲッジスペース

内装もほぼQ50を踏襲

スイッチ類はドライバーが姿勢を変えずに操作できる650mmの範囲内に集中して配置
室内で真っ先に目に入るのが、ステアリングセンターパッドのインフィニティマーク。右ハンドルである点や、国内専用の180km/hメーターを除けば、内装もほぼインフィニティ Q50のままに見える。デザイン的にも、国内向けセダンにありがちなコンサバ感はなく、男性的で囲まれ感が強い。
 
センターコンソールには8インチ&7インチのツインディスプレイを装備
見どころは、センターコンソールのツインディスプレイ。上部にはナビやテレビなどを映す8インチタッチパネルを、下部には空調やオーディオ操作パネル等を表示する7インチタッチパネルを装備。8インチの方は、マルチファンクションスイッチでの遠隔操作に加えて、スマホ風の操作も可能。また、空調とオーディオに関してはリアルなスイッチも残されてる。
 
着座感は割とタイトだが、シートのホールド性は特に高くない。先代に比べて肩まわりは20mm広いとのこと
左は走行モード選択用の「ドライブモード セレクタースイッチ」、右はナビ等を操作する「マルチファンクションスイッチ」
マグネシウム製のパドルシフトはコラム固定式で、タイプSPに標準装備
 
トランク容量は400L。ゴルフバッグはギリギリ4セット積めるようだ。トランクスルーは不可
全車ランフラットタイヤなので、スペアタイヤやパンク修理キットはない
後席の座り心地は良好。ホイールベースは先代と同じだが、足もとは少し広くなった。窓は全開する
 

基本性能&ドライブフィール

世界最速のハイブリッド。システム出力は364ps

試乗したのは最上級グレードの「タイプSP」(FR)。価格は541万5120円。 パワートレインは2010年のフーガ ハイブリッドに続いて、旗艦セダンの4代目シーマにも搭載された3.5リッターV6のハイブリッド。日産言うところの1モーター2クラッチ方式ハイブリッドシステム「インテリジェントデュアルクラッチコントロール」。 細かいことを言うと、フーガ ハイブリッドは昨夏のマイナーチェンジで、モーターのトルクアップに伴い、システム出力が若干向上していて(360ps→364ps)、これがほぼそのまま新型スカイラインに搭載されている。
 
構造的には、306psと35.7kgmを発揮する自然吸気3.5リッターV6エンジンと、68psと29.6kgmを発揮するモーター(駆動と発電を行う)があり、その間に電子制御の乾式単板クラッチを挟んで、状況に応じてエンジンとモーターを断続するというもの。 その後方には、トルクコンバーターを省いた7速AT(もともとクラッチを内蔵していて、これが第2のクラッチ)があり、そこからプロペラシャフトが伸びて後輪を駆動する。駆動用バッテリーは、フーガ&シーマハイブリッド同様、高効率のリチウムイオン電池になる。
 
駆動力は、エンジン→乾式クラッチ→モーター→7速AT→プロペラシャフトという順で伝わる
車重はFRモデルで1760~1800kgと、フーガハイブリッド(1820~1870kg)より大人1人分軽く、シーマ(1930~1950kg)より3人分軽い。パワーウェイトレシオは一連の日産FRハイブリッド車で初の5kg/ps切り(4.95kg/ps)。0-100km/h加速は4.9秒で、3リッターV6のパナメーラ S E-ハイブリッド(5.5秒)より速く、ケイマンSのPDK(4.7~4.9秒)並みのダッシュ力を誇る。 実際のところ、アクセルを踏んだ瞬間は思ったほどガツンと来ないが、いったん加速体制に入ると火がついたように速い速い。まったく淀みなくグングン速度計の針が右に傾いてゆく。エンジンはVQだが、V6独特のドゥルドゥル感はなく、かすかにクォーンという音を響かせる。車内で聞こえるエンジンサウンドに関しては、オーディオスピーカーを使った「アクティブノイズコントロール」で快音成分を強調しているらしい。

乗り心地も超スムーズ

ボディサイズはクラウンより100mmほど短いが、最小回転半径は5.6メートルと大きめで(クラウンは5.2メートルしかない)、取り回しは可も不可もなく、というレベル。先代にあった電子制御の4輪操舵システム(4WAS)は廃止されている。ただ、日産FRモデル独特のタイト感は相変わらずで、いったん運転席に座ると、ボディの大きさをあまり感じない。 プラットフォームは現行フーガのホイールベース短縮版で、先代V36より剛性アップと軽量化を実現。特にフロント部の剛性強化によって、操舵初期の車体変形を抑制し、操縦性を向上させたという。リアサスペンションは完全新開発で、ダンパーとスプリングが同軸配置になった。 また、最近よく聞くのがアルミホイールの剛性アップによる操縦性や乗り心地の改善だが、新型スカイラインでもスポーク部の剛性強化によって、ロードノイズや振動の遮断性を向上させたという。また、低回転走行時にエンジンから発生するこもり音を、オーディオスピーカーから出す逆位相の制御音で消音する「アクティブノイズコントロール」も採用されている。
 
リアサスペンションは新開発で、ダンパーとスプリングが同軸配置になった。アームはアルミ製
まあ実際のところは、個々の技術がどの程度効いているかは、レス状態と比べられないので分からないが、静粛性はエンジン音、ロードノイズ、風切り音、すべての点で文句ない。このあたりはさすが、世界でドイツ御三家と戦う日本車。 また、乗り心地もまったく問題なし。タイヤは全車ランフラットで、空気が完全に抜けた状態でも、80km/hで150km走行できるという。試乗したタイプSPは、下位グレードに標準の17インチではなく、19インチ(245/40RF19)を履いていた。電子制御ダンパーなど無くてもOKなのは、やはりシャシー全体がいいからだろう。

世界初のステアリング・バイ・ワイヤーを採用

一番の関心事は、やはり世界初のステアリング・バイ・ワイヤー「ダイレクトアダブティブステアリング(DAS)」ではないかと思う。ステアリングシャフトは念のため残されているが、イグニッションをオンにすれば、ステアリングシャフトに内蔵されるクラッチで機械的な接続を解除。これにより通常時は、電子信号のみが前輪に伝えられ、完全に電動で操舵される。目的は「応答遅れのないシャープなハンドリング」や「高い直進安定性」だ。 肝心の印象はというと、スタンダードモードなら、まったく違和感はなく、ごく自然。ただし、よく観察すると、凸凹や轍(わだち)だらけの道でもハンドルが取られたり、嫌なキックバックが出たりしないことが分かる。これはハンドルが前輪に直接つながっていない上に、微妙な修正舵が瞬時に自動的に行われているからだと考えられる。 一方で、良くも悪くもDASをはっきり体感できるのは、スポーツモードを選択した時。ステアリングレスポンスは超クイックというか、超ビンカンになり、ハンドルを切った瞬間にピクッと反応、ズワッと前輪が切れる。例えるなら、マグネットコーティングしたガンダムみたいな感じ? というわけで、これは斬新と言えば斬新だが、実際にはあまりにも反応がいいため、ステアリング操作に気を使う。特に困るのはワインディングを走る時で、速い操舵に対してVDCのブレーキ制御が敏感に介入してくるので、かえって走りがギクシャクしてしまう。高速コーナーではいざ知らず、少なくとも日本の狭い山道ではスタンダードモードの方が断然走りやすい。
 
「アクティブレーンコントロール」のイメージ図。ステア・バイ・ワイヤならでのアクティブな操舵支援が可能
また、このDASの機能を利用して、車線(白線)に対する車両の向きをデジタルカメラで読み取り、70km/h以上でタイヤの角度と操舵反力を微調整する世界初の技術「アクティブレーンコントロール」も全グレードに採用。これまであったレーンキープシステムより、よりアクティブに(能動的に)操舵する。ただ、今回の試乗では、制御をはっきり体感することはなかった。 なお、ヘッドライトはハイ/ロー共にフルLEDで、流行りのハイビームアシスト(ハイとローの自動切り替え)も装備。ヘッドライト関係の最新技術を全部載せしたもので、実際のところ配光は常に適切に行われ、夜間走行はとても楽だった。 安全性能に関しては、ボディ主要骨格に世界初となる1.2GPa級の高成形性超高張力鋼板を採用。全車6エアバッグを標準装備し、世界最高水準の衝突安全性能を実現したとのこと。また、タイプPとSPではミリ波レーダーを搭載し、約60km/hでも衝突回避が可能なエマージェンシーブレーキを装備している。

試乗燃費は9.6~13.5km/L。JC008モード燃費はGS450hと互角

今回はトータルで約250kmを試乗。試乗燃費(車載燃費計)は、いつもの一般道、高速道路、ワインディングを走った区間(約90km)が9.6km/L。また、一般道を大人しく走った区間(約30km×2回)が2回とも13.5km/L。区間は短いが、高速道路をインテリジェントクルーズコントロール(114km/hまで設定可能)を使って流した区間が約14km/Lだった。実用燃費は、ライバルのV6エンジン・ハイブリッド車と大差ないと思う。 JC08モード燃費は、FRモデルで17.8~18.4km/L、4WDで16.8~17.0km/L。指定燃料はプレミアムで、タンク容量は70リッター。
 
    エンジン モーター システム
出力(ps)
JC08
モード
燃費(km/L)
最高出力(ps) 最大トルク(kgm) 最高出力(ps) 最大トルク(kgm)
ホンダ アコード ハイブリッド(2013~) 143 16.8 169 31.3 199 30.0
トヨタ クラウン ハイブリッド(2012~)
レクサス IS 300h(2013~)
レクサス GS300h(2013~)
178 22.5 143 30.6 220 21.4~23.2
アウディ A6 ハイブリッド(2012~) 211 35.7 54 21.4 245 13.8
BMW
アクティブハイブリッド 3(2012~)
306 40.8 54 21.4 340 16.5
BMW
アクティブハイブリッド 5(2012~)
306 40.8 54 21.4 340 13.6
レクサス GS450h(2012~) 295 36.3 200 28.0 348 18.2
日産 スカイライン(2014~)
※モード燃費はFRモデルの数値
306 35.7 68 29.6 364 17.8~18.4
日産 フーガ ハイブリッド(2010~)
※スペックは2013年7月のMC以降
306 35.7 68 27.5 364 17.8~18.0
 

ここがイイ

盛りだくさんの最新技術。良くなった燃費

いろんな最新技術が盛り込まれているが、そんなことを気にせず走らせれば、とても快適で、速くて、燃費もよくて、実用性もそこそこ高い高級セダンになっていること。先代スカイライン 370GTのセダン、そして特にクーペはすごくいいクルマだった印象があるが、実用燃費はそれなりだった。新型ではその唯一の弱点がなくなったわけで、性能面では本当に死角がなくなった。 本文にあるとおり、それら最新技術は今後のクルマを示唆する重要なものが多い。日本専用車ではなく、世界に向けて売りだされるクルマに対して、意欲的に新技術が投入されたことの意味というか、意義は大きい。

ここがダメ

スポーツモード時のDAS。価格。足踏み式パーキングブレーキ

DASについては本文でも触れたように、また、あちこちでも書かれているように、スポーツモードでの設定は過激過ぎ。初物ゆえ、あえて違いを分かりやすくしたようだが、もう少しマイルドな設定の方が良かった。 パドルシフトはタイプSPに標準装備されるが、変速レスポンスがいまいち遅い上、自動シフトアップもしなくなるため使いにくい。マニュアルシフトしなくても十分に速いので、パドルシフトは特に必要ではなく、その点ではタイプPで十分。 燃費は従来モデルの2倍くらい良くなったが、車両価格は100万から150万円ほど高くなり、試乗したトップグレードでは約540万円と、すっかり高級車になってしまった。同等性能のGS450h(724万1143円~)より安いとはいえ、「スカイライン」としてはあまりに高いかも。これが「インフィニティ G50」だとすれば、また受け止め方が違うのかもしれないが……。
 
超ハイテク&ハイブリッド車となった新型スカイラインだが、パーキングブレーキはなぜか足踏み式。理由はいろいろあるだろうが、今やゴルフですら電動パーキングブレーキ。この超ハイテクなスカイラインであれば、やはり当然、電動化(つまり自動化)して欲しかった。だからといって、すごく不便なわけではないが、上位グレードに装備されるインテリジェントクルーズコントロールも、電動パーキングブレーキがないため、停車時には制御がいったん切れてしまう。 左ハンドル車をメインに開発したせいか、右ハンドル車の左足スペースはやや狭め。気にならないといえば気にならないのだが。

総合評価

「スカイライン」というブランド

世の中、ブランド論はいまだ盛んで、伝統的な高級ブランドというものには、大きな価値があるようだ。その価値は実際の機能とは別の、付加価値とも言うべきもの。時計で1万円も出せば、電波ソーラーで、そこそこかっこいい物が買えて、機能的には十分以上なのだが、時間の正確さではその1万円時計にかなわないブランドウオッチに、何十万円ものお金を出す皆さんがたくさん存在する。機能ではなく、その歴史とかデザインとか、要するに伝統あるブランドというものに、価格に見合うものがあるということだろう。 日本の製品はそのあたりがどうも不得手なようで、ブランドに関してはいまだ弱いままのように見受けられる。ユニクロだって一つのブランドだが、それは高級とはまた違う意味でのブランドで、最近はあのソニーだってそんな感じになっちゃっているのではないか。 そしてクルマの場合はどうだろうか。日本のクルマにブランド力はあるのだろうか。ユニクロ的なブランド価値はあっても、高級ブランドと呼ぶのはなかなか難しいというのが、やはり実態では。レクサスが頑張っているが、まだまだというのが衆目の一致するところではないかと。
 
そんな中、スカイラインというブランドというか車名には、なんだか少し他のクルマとは違う価値が、特に日本国内ではあるように見える。歴史とかデザインとか、まあ伝統というものが、日本車では珍しくあるように思える製品だ。ノスタルジックカーショーなどを見れば分かるように、強烈なスカイラインマニアという人もいるようだし、「スカイラインという名をつけた名車」はこれまで何台も生まれてきている。 そんな「スカイラインという名をつけたクルマ」がまた一台登場した、というのが今回の試乗車ということになる。でもこれ、実際にはインフィニティ Q50の日本仕様なわけだ。スカイラインというのは、あくまで日本で売るためのマスコットネームみたいなもの。脈々と続くスカイラインの伝統、などという文脈では捉え切れないクルマであることは間違いないだろう。 ただ、このクルマがスカイラインと名乗ったがゆえに、日本では注目を浴びていることは事実。こんなのはスカイラインじゃないとか、直6が懐かしいとか色々言う人もまわりに多く、いやこれこそが新しい今のスカイラインなのだから受け入れるべきだなんていう人もいたりして。いや、昔スカイラインに乗ってたし、同じ名前を名乗っているなら一度乗ってみるかなんて人もいるので、実際の売れ行きにもこの名前はかなり影響しそうだ。

今回のスカイラインは最新スマホ

まあ、スカイラインという名前に関してはそれくらいにしておいて、ではクルマとしてどうかという話だが、これがなかなか意欲的な、いや革新的なクルマであることは間違いない。特にステアリング・バイ・ワイアに関しては、ついに来たかという感じ。しかし初物ゆえの今一つ感は、特にスポーツモードで感じざるを得なかった。人間の感性の先を行くステアリング制御という感覚は、スポーティさを逆に削いでいるようにすら思えた。いや、ドライバーの能力が高ければ、あるいはサーキットのような非日常的な速度域であれば、素晴らしいのかもしれない。ただ、大した速度は出せない日本の高速道路、大した速度域ではないいつものワインディング、そして、大したことのないウデのドライバーにとっては、優秀すぎるその人工的なスポーティさについていけなかった。ノーマルモードだと違和感なく楽しめたので、ステアリング・バイ・ワイアの問題ではなく、スポーツモードの制御プログラムを頑張りすぎたというところか。車載ディスプレイ上で、ステアリング制御やエンジン・ミッション制御など別々に設定してパーソナルモードを作ることもできるので、そこで自分好みに作ればいいのかもしれない。こんなことが自在にできること自体、従来のクルマにはない画期的なものだろう。
 
何にしろ、自分でクルマのハンドリング(および、その他の走行制御プログラム)を手軽にセットできるクルマがついに登場したことは、クルマがロボット化する過程としては画期的なこととして、高く評価したい。ディスプレイをタッチしながら、チョイチョイチョイとチューニングできてしまうわけで、これぞ求めていた未来のクルマ像だと思う。むろんハイブリッドであることも重要で、そのおかげでこれだけ走るクルマでありながら、実燃費は10km/L近いわけだ。ただただ燃費重視のハイブリッド車ではない点でも評価したいところ。というようなことを、スカイラインという名前で世に注目してもらって広く知らしめられるとしたら、これはなかなか素晴らしいことでは。愛のスカイラインやケンメリしか知らないオジサンたちも一度試してみるべし。ただ、なんか難しくてよく分からないという人の方が多いような気もするが。黒電話からスマホに変えるようなものなのだから。 そう、黒電話とまで遡らずとも、ガラケーで特に世の中は問題ないようで、この先もガラケーは相当数が残るという予測もある。スマホじゃなくても問題なく生きていけるわけで、クルマもまあ、ここまでハイテクでなくてもいいのでは、という話にもなるだろう。しかし、いずれ一見ガラケーのようなスマホが出てくると思うし、同様にまるで旧車のようなハイテク車もでてくると思う。ただ今回のスカイラインは最新スマホのようなもの、なので、ちょっと抵抗のある人が多いかもしれない。
 
いずれにしてもこのスマホ、じゃなかったスカイラインの主戦場は、スマホ同様に日本ではなく世界だ。そしてそれを作っているのは、(またも炎上覚悟で)誤解を恐れず言えば、日本のメーカーとはなんだか言いづらくなってきた日産。むろん日産車の世界販売台数はルノー車の2倍もあるし(2013年は日産が510万台、ルノーが263万台)、対等な関係の企業連合ではあるが、実際には日産のほうが大きな企業だ。しかしゴーン氏が日産の経営を立て直した(と一般にはされている)ように、どうも最近の日産は、日本のメーカーというより世界のメーカーという感覚が強く感じられる。そしてこのQ50/スカイラインにも、いずれダイムラーとの技術提携によるエンジンが載せられるなど、自動車産業再編の波は凄まじい。トヨタとBMWの技術連携など、自動車業界こそグローバリゼーションの最先端。その渦中にあって、ルノー日産連合が創りだした最新のハイテクカーがインフィニティ Q50、日本名スカイラインであるということだろう。日本産業の全額出資会社として昭和9年(1934年)に出来た「日産自動車株式会社」は、ノスタルジーの彼方の話。スカイラインという名もそれと同じことというわけだ。ノスタルジーに生きる時代ではないことは分かっていても、ノスタルジーに浸りたいのもまた人間の悲しい性ということなのだが…。
 

フォルクスワーゲン ゴルフ GTI:新車試乗記

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キャラクター&開発コンセプト

動力性能と環境性能を高めた7代目GTI

新型ゴルフ GTI (photo:VGJ)
欧州では2012年秋に、日本では2013年6月に発売された7代目ゴルフ(ゴルフ7)。今回試乗したのはその高性能グレードで、日本では2013 年9月25日に発売された「ゴルフ GTI」。初代ゴルフから続く伝統のGTIも、今回で7代目になる。 新型GTIのエンジンは、先代に引き続き2リッター直4の直噴ターボ(EA888型)。最高出力は先代から9psアップの220ps、最大トルクは25%アップの350Nm(35.7kgm)になった。 トランスミッションも先代同様、「DSG」こと6速DCT(デュアルクラッチトランスミッション)。アイドリングストップ等の環境技術「ブルーモーション テクノロジー」が採用され、燃費は先代(10・15モード燃費で13.0km/L)から大幅アップの、JC08モード燃費15.9km/Lを達成している。 また、VWグループ全体で車両の構成要素を共有化するモジュール戦略「MQB」により、GTIでは「フロント アシスト プラス」(プリクラッシュブレーキシステム)や「ACC」といった先進安全装備が標準装備になっている。

バランス重視の大人なクルマに

初代ゴルフ GTI (photo:VGJ)
一方、GTIの上をゆく超高性能4WDモデル「ゴルフ R」の新型も、先代に引き続き登場(日本では2014年2月20日に発売)。これによりゴルフシリーズにおける新型GTIの立ち位置は、トータルバランスを重視した一種の上級グレード的なものに変化している。VWの言葉を借りれば、「静粛性、快適性も併せ持ち、日常ユースからスポーツ走行まで、幅広くこなすパフォーマンスカー」。 なお、初代ゴルフGTIは1975年にデビュー。フォルクスワーゲン グループ ジャパン(VGJ)によれば、以来37年間の累計世界販売はGTIだけで190万台、日本での販売台数は1985年に2代目GTIの正規販売が始まってからの統計で(それまでは並行輸入だった)、約5万台とのこと。 ■過去の新車試乗記7代目VW ゴルフ TSI ハイライン (2013年8月)5代目VW ゴルフ GTI (2005年10月)
 

価格帯&グレード展開

GTIは383万3000円。ちなみにRは529万8000円

純正ナビ「ディスカバー プロ」はオプション (photo:VGJ)
2014年5月現在、ゴルフ7のラインナップは以下の通り(価格は消費税8%込みの新価格)。 欧州向けGTIには6MTもあるが、日本仕様は6速DSGのみ。ハイライン同様、ACC(アダプティブクルーズコントロール)やパドルシフトを標準装備するほか、LEDポジションランプ付バイキセノンヘッドランプ、LEDフォグランプ、前後パークディスタンスコントロール、225/45R17タイヤ(ハイラインと同サイズ)なども標準で備える。
 
GTIにオプションで用意される電動レザーシート (photo:VGJ)
逆にGTIでもオプションになるのは、純正ナビゲーションシステム“Discover Pro”(18万3600円)、電動パノラマスライディングルーフ(12万9600円)、レザーシート+運転席パワーシート(27万円)、電子制御ダンパーのDCC+225/40R18タイヤ(21万6000円)など。 また、GTIより150万円ほど高い「R」には、ナビ、R専用の電動レザーシート、DCCなどが標準装備になり、「4MOTION」ことハルデックス式の4WDシステム等が搭載される。 なお、ゴルフ6ベースのゴルフカブリオレ(2011年発売)や、同じくハードウエア的にはゴルフ6に近いシロッコ(2009年発売)は、すでに日本では販売終了している。
 
新型ゴルフ GTI (photo:VGJ)
■ゴルフ GTI   383万3000円 ※今回の試乗車 ・2.0L 直4ターボ(220ps、35.7kgm)+6速DSG ・JC08モード燃費 15.9km/L
 
新型ゴルフ R (photo:VGJ)
■ゴルフ R    529万8000円 ・2.0L 直4ターボ(280ps、38.7kgm)+6速DSG ・JC08モード燃費 14.4km/L
 

パッケージング&スタイル

伝統を継承しつつ、よりアグレッシブに

ボディサイズは普通のゴルフとほぼ同じで、全長4275mm×全幅1800mm×全高1450mm、ホイールベース2635mm。ボディ幅はほぼクラウン並みだが、全長は相変わらずコンパクト。プリウス(4480mm)より20cmも短いし、最小回転半径も5.2メートル(プリウスと同値)しかない。ボディ側面の張り出しは少ないので、慣れてしまえば全幅もそんなに気にならない。
 
GTIの証は、伝統的なハニカム(蜂の巣)形状のラジエイターグリル、GTIバッジ、GTI専用の縦型LEDフォグランプ、赤いライン、赤いブレーキキャリパーなど。特に今回のGTIでは、赤いラインがヘッドライトレンズにまで入る。また、ボディカラーが黒だと目立たないが、フロントバンパーには1980年代スーパーカー風?(テスタロッサとか)のスリットも。 リアバンパーも専用で、マフラーは2本出し(ちなみにRは2本出し×2の4本出し)。タイヤはハイラインと同じ225/45R17サイズ(試乗車)が標準だが、オプションのDCCパッケージ装着車では225/40R18タイヤ&18インチホイールに格上げされる。
 
 

インテリア&ラゲッジスペース

伝統のタータンチェック内装

D型のステアリングは、GTIのロゴプレートの入った専用品。もちろんパドルシフト付
試乗車はファブリックシートの標準仕様。赤白タータンチェックの柄、そしてレカロ風のカチッとした座り心地は、初代GTIから連綿と受け継がれてきたもので、これぞまさに伝統というヤツ。なぜドイツ車にタータンチェックなのかは長年の疑問なのだが。 また、夜間はドアの内張りとサイドシルに、フロントグリルの意匠と呼応した赤いラインがLEDで光る。質実剛健とは昔の話で、今のVWは演出上手。なお、ゴルフRではこのLED照明がブルーになる。
 
リアシートも当然タータンチェック。ノーマルゴルフのブラック内装より明るくてオシャレ
標準ファブリックシートの座り心地は、歴代GTIに似てカチッとしながらも柔らかく、気持ちいい
新世代のステアリングスイッチは小さく多機能で、慣れるまで少々難解
 
トランク容量はクラス最大級の380リッター。シンプルな形状で使いやすい
後席は背もたれをパタンと倒すだけで畳める。床下に18インチのテンパースペアを搭載
エンジン始動スイッチはアウディと同じでシフトレバーの横。パーキングブレーキは電動
 

基本性能&ドライブフィール

やんちゃな感じは皆無

試乗したのは、オプションがほとんど装着されていない標準仕様。 エンジンはVWでは2リッターTSIエンジンと呼ぶ、直4・直噴ターボ。型式名「EA888型」で、先代GTIやアウディの2.0 TFSIにも搭載されていたものだが、これは直噴とポート噴射のデュアルインジェクションを採用した最新バージョン。
 
(photo:VGJ)
馬力は先代GTIより9psアップして220ps/4500-6200rpm。最大トルクは7.1kgm(70Nm)、つまり25%もアップして350Nm(35.7kgm)/1500-4400rpmを発揮する。 それでもノーマルモードで走る分には、それほど荒々しさはない。上にはポルシェが開発したと言われるゴルフ Rが控えるせいもあるだろうが、GTIは大人しく走る限り1.4 TSI ハイラインと大差ない素振りで、穏やかに走る。ただ、DCCのない試乗車の場合は、10mmダウンのGTI専用サスペンションのおかげで低速で少々揺すられるのが、それっぽいくらい。
 
GTIのエンジン性能曲線。出力、トルク共に頂上部は平ら (photo:VGJ)
ノーマルモード(メーター内にD1、D2……と表示)とエコモード(同じくE1、E2……と表示)のいずれでも、赤信号で止まれば即座にアイドリングストップ。再始動は素早く、ショックも小さいなど、このあたりの完成度も高い。ただ、信号待ちの間、ブレーキペダルを踏んでいなくても停止状態を保持してくれる「オートホールド」機能を使うと、発進時のスムーズさが少し損なわれるので、これを使うかどうかは好み次第になる。

パワー感がまったく途切れない

アクセルを踏み込めば、そこはやはり2リッターTSIエンジン。エンジンが鞭打たれたように素早く反応し、「ボォーーー」と一気に6000回転オーバーのレッドゾーンまで吹け上がり、「ボン!」と「合いの手」を入れながら瞬時にシフトアップする。この感覚は、VWグループの直噴ターボ+DCT車に共通するもの。 車重は各種装備が増えているにも関わらず、先代より10kg減って1390kgで、パワーウエイトレシオは6.3kg/ps。加えて、出力ピーク域が幅広いエンジン特性と、完璧な仕事をするDSGのおかげで、加速中にパワー感がまったく途切れないのがすごい。 そして、スイッチ一つでクルマの性格がガラリと変わるのも、現代的なところ。エコやノーマルモードでも十分に速いが、スポーツモードだと速さや鋭さが格段に増し、意図的にアクセルを素早く踏み込むと、1速では適度にホイールスピンさせつつ、打ち出されるように加速する。0-100km/h加速性能は、1.4 TSI ハイライン(8.4秒)より1.9秒速い6.5秒。ちなみにフルタイム4WDのRは、さらに1.6秒速い4.9秒と、ポルシェのボクスターSやケイマンS並みの速さになる。

山道でパーフェクトな走り

心底すごいと思うのが、ワインディングでの走り。このMQBシャシーは、すでにゴルフ7のハイラインやアウディ A3で体験済みだが、今回のGTIはよりパワフルなおかげで高いシャシー性能を十全に引き出すことができる。 電動パワステは、VW初のプログレッシブステアリング、つまり切り込むほどギア比が速くなるタイプで、ロック to ロックは従来の2.75回転から2.1回転にクイック化。しかし違和感はまったくなく、大小どんなコーナーでも、ステアリングを切れば自然にノーズがインを向き、ごくスムーズに旋回する。つまり、アンダーでもなければオーバーでもなく、妙にクイックでもなければ、ダルでもないという絶妙な反応で、お手本中のお手本という感じ。また、ESPと連携して作動する電子制御式デフ「XDS」の効果もあって、トルクステアは少なくとも乾燥路では、ほとんどまったくない。
 
レッドゾーンは6000回転から始まるが、実際には7000回転付近まで一気に吹け上がる
また、街中で硬めと感じた標準サスペンションも、ワインディングではまるで日本の山道でテストしたみたいにドンピシャではまる。結局のところ、走りを究めれば、ニュルブルクリンクでも日本の峠でも通用する、ということか。 トランスミッションは先代同様、湿式クラッチの6速DSG(いわゆるDCT)。VWやアウディで主流になってきた7速ではなく、6速のままだが、このギアリングがまた日本の狭い山道にはドンピシャではまる。スポーツモードなら加速時に上までしっかり引っ張り、減速時にはドライバーの意思を読み取るようにシフトダウン。仮にマニュアルモードでも、レブリミットに達すれば自動シフトアップするなど、あらゆる点で使いやすく、まったくストレスがない。

0~160km/hで追従走行。最高速は246km/h

100km/h巡航時のエンジン回転数は約1800回転
高速道路では、速度を問わず、乗り心地、静粛性、すべて不満ない上、ミリ波レーダー式のクルーズコントロール、ACCで停止状態から最高160km/h(Rでは250km/hらしい)の範囲で、車速を自動制御してくれる。高級車ならまだしも、これがゴルフで出来るとは。 なお、GTIの最高速(メーカー発表値)は246km/hで、1.4 TSI ハイラインの212km/hを大幅に上回る。ちなみにRは250km/hでリミッターが作動する。

試乗燃費は8.8~12.0km/L。JC008モード燃費は15.9km/L

指定燃料はプレミアムで、タンク容量は50リッター。なお、Rだけは燃費の悪さをカバーするのと4WDの駆動系を迂回するためだろう、専用の55リッタータンクになる
今回はトータルで約250kmを試乗。試乗燃費(車載燃費計)は、いつもの一般道、高速道路、ワインディングを走った区間(約90km)がけっこう飛ばして8.8km/L。また、一般道をノーマルモードで大人しく走った区間(約30kmを2回)が2回とも12.0km/L。区間距離が短いので参考ながら、高速道路をエコモードで、ACCを使って80~100km/L+で流した区間が約14km/Lだった。 JC08モード燃費は15.9km/L。ちなみに普通のゴルフは、1.2 TSIモデル(コンフォートラインなど)が21.0km/L、1.4 TSIモデル(ハイライン)が19.9km/L、2.0 TSI・4WDのRも意外に悪くなくて14.4km/L。
 

ここがイイ

まったく文句なしの完成度

嗜好を入れず、冷静に評すると、今まで乗ってきた試乗車の中で、おそらく最高の一台。FFのCセグメントカーでも、ここまで出来ることを証明したハイレベルなシャシー性能。この点は現行ゴルフ7、特にTSI ハイラインあたりでも体感できるが、GTIにはそのシャシー性能を存分に活かせるエンジンがある。トータルでのパフォーマンスは、もうまったく文句をつけられないレベル。

ここがダメ

慣れが必要なステアリングスイッチ、ナビがオプションであることなど

特にないが、重箱の隅をつつけば、ステアリングスイッチが小さく、使いにくいこと。ゴルフ5や6までのスイッチとは場所がまったく変わってしまったし、スイッチの数や機能も増えたので、慣れるまで時間がかかると思う。機械モノが苦手な女性は、使いこなせないかもしれない。 純正ナビ「ディスカバー プロ」はオプションだが、やはりこのご時世、標準で装備されるべき。ただ、ゴルフ7の日本導入当初、設定が見送られていた純正ナビ(アイシン製)は、オプション設定されてからも初期トラブルが多かったようだ。やはりインフォテイメントシステムとして統合されたものを、日本市場に適合させるあたりに難しさがあるのだろう。

総合評価

何でもこなせる「究極のFF車」

 
実はもう今回の試乗車に関しては「べた褒め」以外に表す言葉がない。もう褒めて褒めて褒めまくりたい。それくらい褒めると、褒め殺しで逆効果になりかねないので、ちょっと冷静になると、実用的でコンパクトな素晴らしいパッケージングのボディに、小排気量エンジン(まあ2リッターあるが、性能からすれば十分小さい)+ターボの素晴らしいパワーユニットが載り、文句なしのDCTや見事な電子制御で、街乗りからスポーツ走行まで何でもこなせる「究極のFF車」と言える。これこそが日本車にない要素の集大成。普通のゴルフ7で座り心地が気になったシートも、今回試乗したGTIでは全く気にならなかったし、伝統のチェック柄シートがノスタルジーをかきたててくれるし、なんだかもう、ホントに。 個人的に比較してみたのは、ザ・ビートル カブリオレを先日購入した後も、なぜかまだ所有している2代目(8J型)アウディTT ロードスター(2008年式のFF。欲しい人がいましたら、ご連絡ください。そろそろマジで手放そうかと思ってます)。エンジンはGTIとほぼ同じ2リッターターボだが、正直な話、TTは買ってからクワトロの方がいいと思った。2008年のTT 2.0 TFSI クワトロ試乗記をご覧頂きたいが、やはり2リッター直噴ターボの大トルクは、少なくとも初期8J型TTのFFでは受け止めきれていない。アクセルを煽ればホイールスピンしまくり。まあそれをいなしながら走るのも楽しいし、だいたいがオープン走行をのんびり楽しむために買ったので文句はないのだが。しかし2012年頃からTTの2.0 TFSI が、日本ではクワトロのみの設定になっているのは、なるほど理解できるところだ(代わりにTTのクーペには1.8リッターターボのFF車が設定されている)。 ということで、ゴルフのFFに、初期8J型TT(200ps、28.5kgm)よりさらにパワフルな2リッターターボ(220ps、35.7kgm)が載れば、TTのFFと同じようなことになりそうだが、さすがにゴルフ7は進化している。ゆっくり走ればトルクフルかつ柔軟で、アクセルを急に踏んでターボがグッと効き始めてもタイヤが暴れることはなく、素晴らしい加速を見せる。そこに過剰さはなく、しかしながらTT並みに速い。しかもTTのような実質2人乗りではなく、普通の5ドアハッチバックだから、使い勝手は素晴らしくいい。値段もこの性能の輸入車としては、そう高いものでもない。

制限速度の範囲内でも楽しめる

乗っていないので想像でしか書けないが、新型ゴルフ Rの場合はもっとリアルスポーツカー的なんだろう。第5世代というハルデックスの4MOTIONは、TT クワトロ同様に(あるいはそれ以上に)、大パワーを確実に路面に伝えるはず。そしてRの開発に携わったというポルシェ自身のモデル、例えばケイマンあたりならカモれる速さを持っているはずだ。でもまあそんな性能も、走るところのない日本では「反社会性でいく」か、「サーキットに行くか」でしか発揮できない。200km/h以上の巡航性能を利用しようにも、出来そうな道はあるにはあるが、日本ではそれはしてはいけないことになっているのだから。 まあそれは今回のGTIでも同じかもしれない。ただ、GTIなら街中でもそのスポーティな身のこなしや雰囲気を楽しめるし、日本のちょっとしたワインディングでも、普通の7より次元がひとつ上の走りを楽しませてくれる。もちろん飛ばさなくても、つまり制限速度の範囲内でも、そのトルクフルな感覚は十分に気持ちいい。ゴルフ7はFFのコンパクトカーとして世界一と言えそうだが、GTIはその一つ上の領域に位置して、これまた世界一と言える。こうなると個人的にはヴァリアントのGTIが欲しい。あるいはカブリオレのGTIとか。もし出たら、買ったばかりのビートルを手放してしまいそうだ。

いまだに「追いつき、追い越せ」

以前にも書いたが、日本車はまたゴルフに追いつき、追い越せをスローガンにしなくてはいけなくなった。40年前と同じ。もちろん燃費ではすでに追い越している。でも、走る、止まる、曲がるでは、またもゴルフの、VWの後塵を拝することになってしまったのが、このGTIでよりはっきりした。いや最近はこれに「安全・安心・ツナガル(IT化)」が加わるわけだが、その部分でもプリクラッシュブレーキにマルチコリジョンブレーキ(事故後の自動減速)、そしてACCまですでに載せているのが今のゴルフシリーズ。まあそうは言っても、大方の日本人にとっては、こんなすさまじいまでの高性能より、燃費がどれだけいいかの方が重要なのも確か。民度の差なんていうと、また怒られそうだが、「知らぬが仏」は「幸せ」とある意味イコールとも言えるわけだから、まあいいかと思うしかない。 ただ、ゴルフ7の販売は消費税増税の件もあり、発売1年にしてはやや減速気味という。そう聞くと、このクルマの素晴らしさをもっと多くの人に知ってもらいたいと思わずにいられない。サザンオールスターズを使った初期キャンペーンによって、一時的なフルモデルチェンジ告知には成功したと思うが、本質自体は伝わっていないことで、かえってゴルフ7が正しく認知されないままになっているのでは、などと考えたくもなる。中日文化センターで「今買うべきクルマ」という講座を月に一回行っているのだが、聴講に来ていただいた方(主に熟年世代以上)と話すと、やはり圧倒的に情報が不足しているように思える。大都会以外に住む多くの人にとって必需品であるクルマの情報を、もっと分かりやすく「誰にでも」伝えられる方法はないものか、とあらためて考えてしまった。
 

「ITSあいち県民フォーラム2014」レポート:ITS DAYS

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6月2日(月)、名古屋市中区・栄ガスビル5Fにて「ITSあいち県民フォーラム2014」が開催された。テーマは「オープンデータ・ビッグデータの利活用の推進と安全・安心な愛知づくり」。基調講演では三菱総研・村上文洋氏が登壇したほか、経済産業省中部経済産業局、三重県、株式会社パスコの三者による事例報告がそれぞれ行われた。 【基調講演】

「オープンデータ・ビッグデータのITSへの活用」 株式会社三菱総研総合研究所 社会ICTソリューション本部 主席研究員 村上 文洋 氏

株式会社三菱総研総合研究所 社会ICTソリューション本部 主席研究員 村上 文洋 氏 「オープンデータ」「ビッグデータ」がどのような社会変化を起こすのかについて、分かりやすい実例を挙げながら解説。2013年6月に閣議決定された「世界最先端 IT 国家創造宣言について」では、公共データの民間開放を推進することで、オープンデータの利用ニーズ喚起や新しいビジネスモデルの構築推進が明言されている。オープンデータ推進のための環境整備や取り組みを通じて、私たちの暮らしや世界の変革につながる様々な具体事例が紹介された。 【事例報告】

(1)「オープンデータ化による社会課題解決とビジネス展開」 経済産業省 中部経済産業局 地域経済部 情報政策室長 長谷川 貴弘 氏

経済産業省 中部経済産業局 地域経済部 情報政策室長 長谷川 貴弘 氏 日本が推進するIT戦略(世界最先端 IT 国家創造宣言、等)と、中部地区におけるIT戦略「中部IT融合」というキーワードを軸に、ビジネス展開における経産省のポリシーと具体的なサポート業務が紹介された。ビッグデータ・オープンデータ取り扱い時のプライバシー情報の取扱いガイドライン整備等、行政による環境整備が急がれており、また実際にオープンデータを活用した民間事例報告も行われた。

(2)「三重県におけるICT、ビッグデータ・オープンデータを活用した産業活性化の取組について」 三重県 雇用経済部 雇用経済総務課 宮崎 達哉 氏

三重県 雇用経済部 雇用経済総務課 宮崎 達哉 氏 三重県の行政トップである鈴木知事はオープンデータ利活用に積極的なIT通だが、講演では三重県の名所、特産品PRや地域振興におけるオープンデータ活用事例が紹介された。まだ課題も多く、実際の利活用はまだまだこれから、といった印象ではあるものの、オープンデータ・ビッグデータ利活用推進協議会等を通じた三重県の今後の取組みに注目していきたい。

(3)「公共及び民間におけるオープンデータの活用」 株式会社パスコ システム事業部 コンサルティングサービス部 部長 橘 克憲 氏

株式会社パスコ システム事業部 コンサルティングサービス部 部長 橘 克憲 氏 地理空間情報(測量)技術&処理技術を通じて情報サービスを行う(株)パスコ。行政が保有する様々な公共情報がオープンデータ化されることで、いままでにない、まったく新しい情報サービス提供の実証実験が紹介された。また民間企業が保有するビッグデータも取り入れて処理することで、さらに精緻な情報サービスをエンドユーザーに提供していこうとする同社の姿勢が分かりやすく紹介された。 【安原武志(DAYS Inc.)】

MINI クーパー:新車試乗記

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キャラクター&開発コンセプト

すべてを一新。最新技術を採用した第3世代

新型MINI(F56型)のクーパーとクーパーS (photo:BMW AG)
欧州では2013年秋に、日本では2014年4月12日に発売された新型MINI(ハッチバック)は、「BMW MINI」としては、2002年登場の初代(R50、R53型)、2007年登場の第2世代(R56型)に続く第3世代。開発コード名は、最新のBMWブランド車と同じ「F」から始まる「F56型」になった。

全車ターボエンジンに。クーパーは3気筒

 
右からクラシック(ローバー)MINI、初代BMW MINI(R50型)、2代目(R56型)、そして今回のF56型 (photo:BMW AG)
新型MINIは、基本コンセプトや基本デザインを先代から継承しつつ、外装、内装、プラットフォーム、パワートレインなどのハードは全て一新。先代と同じパーツは一つもない、まったく新しいモデルになった。 特にエンジンは、BMWブランド車でも今後共有してゆく新開発1.5リッター3気筒・直噴ターボ(クーパー)や、2.0リッター4気筒・直噴ターボ(クーパーS)を新採用。加えてAT車にもアイドリングストップ機能を新採用することで燃費性能を改善した。また、衝突被害軽減ブレーキ(自動ブレーキ)、ACC(アクティブ・クルーズ・コントロール)などの先進安全装備も新採用するなど、安全装備もアップデートされている。
 

価格帯&グレード展開

クーパーの6ATで280万円。Sは52万円高

新型MINI クーパー (photo:BMW AG)
今回、日本に導入されたのは、1.5リッター直3ターボの「クーパー」(6MTと6AT)と、2リッター直4ターボの「クーパー S」(6MTと6AT)。従来はクーパー=自然吸気、クーパー S=ターボという図式だったが、新型はすべてターボになった。 価格(消費税8%込み)は以下の通りで、クーパーより52万円高いクーパーSには、新開発のナビゲーションシステム、クーパーより1インチアップの16インチホイール、LEDフォグ・ライト&ヘッドライト等が標準装備になる。また、オプションも相変わらず豊富で、今回はついにヘッドアップ・ディスプレイや電子制御可変ダンパー、自動操舵付のパーキング・アシスト(縦列駐車のみ)まで、クーパーとクーパーSの両方に用意された。まるで高級車。 なお、欧州では2014年3月に1.2リッター直3ターボ(欧州仕様で102ps、18.4kgm)の「ワン(One)」が発表されており、日本でも今秋には追加されるはず。欧州には1.5リッター直3ディーゼルターボもあるが、こちらの導入計画はない。
 
新型MINI クーパーS (photo:BMW AG)
■MINI Cooper  1.5L 直列3気筒ターボ(136ps、22.4kgm) 266万円(6MT)/280万円(6AT) ※今回の試乗車 JC08モード燃費:19.2km/L(6MT)/17.9km/L(6AT) ■MINI Cooper S  2.0L 直列4気筒ターボ(192ps、28.6kgm) 318万円(6MT)/332万円(6AT) JC08モード燃費:15.8km/L(6MT)/17.6km/L(6AT)
 

パッケージング&スタイル

ボディパーツを一新。よりスポーティに

素人目には「どこが変わったの?」と言いたくなる外観だが(実際、取材中にそう言われた)、先代と同じパーツは一つもない。具体的には、先代ではアッパーとロアーで別々だったフロントグリルは、新型では上下一体型の現代的なデザインになり、ノーズは歩行者保護対策で先代よりすっと伸び、ボンネットも厚みを増している。また、LEDヘッドライト装着車にはLEDのデイライトリングが備わるようになった。
 
ドアや前後フェンダーといったボディパネルも、抑揚がS字になって表情豊かに。またリアも明確に先代とは異なり、リアコンビランプが一回り大きくなって、愛嬌のある形になった。細かいところではリアの「MINI バード・ロゴ」がリアゲートパネル直付から、ライセンス・フィニッシャー配置になったり、側突対策でBピラーが太くなったりしている。全体的には、よりスポーティになり、Cd値も0.28(クーパーSは0.31)と、最新エコカーレベルに向上した。

MINIもついに3ナンバー幅に

プラットフォームは完全に別物で、ボディサイズは全高を除いて、全体に少しずつ大きくなった。クーパーの全長は95mm伸びて3835mmになり(クーパーSは115mm伸びて3860mm)、ホイールベースは30mm伸びて2495mmに。また、これまで5ナンバー枠に収まっていた全幅は40mm増しの1725mmと、ついに3ナンバー幅になった。おかげでMINI(小さい)という感じは少し薄れ、ほぼ現代のBセグメントカー並みのサイズになった。
 
 
    全長(mm) 全幅(mm) 全高(mm) WB(mm) 最小回転半径(m)
VW up!(2012~) 3545 1650 1495 2420 4.6
MINI ハッチバック
(R56型 2007~2014)
3740~3745 1685 1430 2465 5.1
MINI クーパー
(F56型 2014~)
3835 1725 1415 2495 5.15
MINI クーパーS
(F56型 2014~)
3860 1725 1430 2495 5.15
VW ポロ 3995 1685 1475 2470 4.9
MINI クロスオーバー
(R60型 2010-)
4105-4145 1790 1550 2595 5.8
MINI ペースマン
(R61型 2013~)
4120-4135 1785 1525-1530 2595 5.8
 

インテリア&ラゲッジスペース

センターメーターを廃止。機能性重視で模様替え

新型MINIでは、センターメーターならぬセンターディスプレイがインパネの中心に据えられた
インパネで従来モデルと違うのは、まず例の大型センタースピードメーターが消えたこと(デザイン的には面白かったが、視認性はまったく考慮されていなかった)。これに伴い、スピードメーターは運転席正面に移動。インパネ中央には代わりに、ナビゲーション・システム用の8.8インチワイドディスプレイが埋め込まれた(クーパーではオプション)。 また、ナビ装着車にはBMWで言うところのiDrive コントローラーに相当する「MINI コントローラー」が備わる。デザインはMINI専用で、地図のスクロール、拡大・縮小が出来るほか、文字の入力なども出来る(左手なので難しいが)タッチパッドも備える。
 
オプションの電動昇降式ヘッドアップ・ディスプレイ(車速、ナビの案内、オーディオ等を表示) (photo:BMW AG)
機能的になったと言えば、パワーウインドウの開閉スイッチがセンターコンソール配置のトグル式から、一般的なドア配置になったのも大きな点。ドアのアウターハンドルも新設計で、使い勝手は明らかに良くなった。また、「コンフォート・ゴー」と呼ばれるスマートキーも採用され、エンジン始動・停止はセンターコンソールの赤いトグルスイッチ(ジャガーみたいに赤い照明が明滅している)で行うことになった。 パッケージング面では、後席と荷室が従来モデルに比べて明らかに広くなり、4人乗りコンパクトカーとしては常識的な実用性を得た。MINIがミニじゃなくなることには賛否もあるだろうが、こういった進化は、少なくとも新規カスタマーには歓迎されそう。
 
ナビゲーションシステムはクーパーではオプション(17万8000円)、クーパーSでは標準装備
センター・ディスプレイの周囲には各種操作に応じて照明が変化するLEDリングが備わる
運転席正面のメーターは速度計が主役で、タコメーターは左脇に配置。燃料計は右側のバーグラフで表示
 
乗降性は相変わらずだが、先代に比べて明らかに広くなり、座り心地も良くなった後席。乗車定員はこれまで通り4名
クーパーも同Sもファブリックシートが標準(柄は異なる)。リクライナーは従来の内側ではなく、クロスオーバーと同じ外側配置になった。
MINI コントローラー。ダイアル(回す、押す、など)、タッチパッド、各種ショートカットキーを備える
 
トランク容量はクラス最小レベルだった先代(160リッター)から51リッター増えて211リッターに
クーパーの場合は、パンク修理キットを標準装備し、ランフラットはオプションになる
エンジン始動・停止はトグルスイッチで行う。横に並ぶのはアイドリングストップオフボタンやDSCオフボタンなど
 

基本性能&ドライブフィール

1気筒減っても、トルクは約4割増

今回メインで試乗したのはクーパーの6AT(車両本体価格280万円)。 エンジンは1.5リッター直3の直噴ターボ。3気筒と言うと、コスト重視のエントリーユニットかと思いがちだが、この1.5リッター3気筒エンジンは、現行3シリーズにもいずれ縦置化されて搭載されるという本気ユニット。ハイチューン版(231ps、32.6kgm)は、プラグインハイブリッドのスーパースポーツであるBMW i8にも搭載される。また、1気筒あたり500ccのモジュラーユニットなので、もう1気筒足せば新型クーパーSの2リッター直4ターボになり、倍の6気筒にすると現行BMWの3リッター直6ターボになる。 とはいえ3気筒のクーパーでも、最高出力は136ps、最大トルクは22.4kgm(220Nm)とけっこうハイパワー。特にトルクは先代クーパー比で約4割増しにもなり、1.6リッタースーパーチャージャーだった初代BMW MINIのクーパーS並み。技術の進歩はすごい。車重はMTで1170kg、ATで1200kg。

クーパーでもパワーに不満はない

走りだすと、2000~3000回転くらいでは、言われなくても「3気筒かなぁ」と思わせる細かい振動やノイズは若干ある。日本車の3気筒リッターカーほど振動は大きくないが、フォード フィエスタ(1リッターターボ)やプジョー208(1.2リッター3気筒NA)と比べると、排気量が大きい分、目立つ感じ。ただし乗っているうちに慣れてしまう。そして信号待ちでは、すかさずアイドリングストップ。このあたりも新型MINIならではの部分だ。再始動もスムーズで素早い。あと、電動パワステはずいぶん軽くなった。 期待以上だったのは、トルクの力強さ。従来MINIの1.6リッターNAもトルキーなエンジンだったが、最新のダウンサイジングターボには敵わない。トルクにモノを言わせて、2000回転くらいでもドコドコドコと軽く走ってしまうし、こういう走り方だと燃費も伸びる。最高出力も136psと十分で、パワーウエイトレシオも8.8kg/psを誇る。本気で走らせると、かなり速い。クーパーでも、パワーに不満を覚えることはまずないと思う。
 
また、ターボエンジンとのマッチングがいいせいか、いい仕事をするのが、先代から継続する6AT。心なしか従来型6ATよりフリクション感が少なく、変速レスポンスも速く感じられる。ブリッピングでの回転合わせも、派手ではないが、そつなく決める。なお、走行モードをスポーツ、MID(中間)、グリーン(燃費重視)から選べる「MINI ドライビング・モード」という機能もオプションであるが、試乗車には付いていなかった。 ちなみに、0-100km/h加速性能(メーカー発表値)は、ワンが9.9秒(MT)と10.2秒(AT)、クーパーが7.9秒(MT)と7.8秒(AT)、クーパーSが6.8秒(MT)と6.7秒(AT)。クーパーとクーパーSは、ATの方が0.1秒速い。

少し大人になった「ゴーカート・フィーリング」

ワインディングへ行くと、シャシーも新しくなったことが体感できる。BMW MINIと言えば、「ゴーカート・フィーリング」と称する機敏なハンドリングが売りだが、2代目ではそれがやや穏やかになり、新型ではさらに落ち着きが増した印象。試乗したのがクーパーで、15インチの標準タイヤを履く仕様だったせいか、ステアリングを切った時の反応はずいぶん穏当になり、コーナリング中に段差で横っ飛びするようなこともなくなった。 ただ、試乗車が履くハンコックの175/65R15 エコタイヤ(Kinergy eco)は、グリップ性能や横剛性が低く、ちょっとペースを上げるだけでオーバーステア気味にリアが流れ、それをDSCで抑える感じが強い。もうちょっとグリップが欲しいところで、その点ではオプションの16インチ(195/55R16)や17インチ(205/45R17)がベターかも(18インチも選べる)。また、オプションで電子制御可変ダンパー「ダイナミック・ダンパー・コントロール」(7万7000円)も用意されているが、これはかなり走りに振ったハードな設定になるようだ。 あと、乗り心地に関しては、「当たり」自体はずいぶん柔らかくなったが、凹凸に応じて上下動するのは気になるところ。また、大きな段差ではハーシュネスも入る。これも装着タイヤによって多少印象が変わるかもしれない。

直3ターボの実力は、高速道路で知るべし

新型クーパーの実力を知るなら、高速道路での試乗が手っ取り早い。すでにクーパーでも動力性能は十分と書いたが、高速道路を走らせると、十分どころか十二分以上なことが分かる。100km/h巡航時のエンジン回転数は6速トップで約2100回転。そのあたりの回転域だと、多少3気筒っぽい振動とノイズを感じさせるが、アクセルを踏み込むや否や、4気筒エンジンに遜色ないスムーズさとパワーで、爽快に加速してゆく。これだけ走るなら、クーパーSは要らないと思えてしまう。静粛性(エンジンからのノイズ、ロードノイズ、風切り音など)も、まったく問題ないと思った。 ちなみに最高速(メーカー発表値)は、ワンが195km/h(MTとAT共通)、クーパーが210km/h(同じ)、クーパーSが233km/h(AT)、235km/h(MT)。 ただ、高速道路でも気になったのは、タイヤのグリップ感や接地感がやや薄いこと。もともとMINIは直進安定性を売りとしないが、高速域でそれを保つのに少し気を使うほか、小刻みな上下動も気になった。この傾向はオプションの17インチ仕様でもあるようだ。 その他、安全装備の充実も、新型MINIの大きなポイント。衝突被害軽減ブレーキ(自動ブレーキ)や前車接近警告機能といった、このクラスの最新モデルに欲しいものが標準装備になったほか、オプションでACC(BMWではアクティブ・クルーズ・コントロールと呼ぶ)も選択できる。

試乗燃費は11.0~16.9km/L。JC008モード燃費は17.9km/L

今回はトータルで約200kmを試乗。試乗燃費(車載燃費計)は、いつもの一般道、高速道路、ワインディングを走った区間(約90km)が11.0km/L。また、一般道と高速道路をそこそこ飛ばした区間(約30km)が14.4km/L、一般道を大人しく走った区間(約30km)が16.9km/Lだった。 JC08モード燃費は、試乗した6ATが17.9km/Lで、6MTなら19.2km/L。ちなみにクーパーSでは、6ATが17.6km/L、6MTが15.8km/L(ATの方が低燃費)。指定燃料は当然プレミアムで、タンク容量はクーパーが40リッター、Sが44リッターだ。
 

ここがイイ

あらゆる点で実用性が高まった

ボディサイズが大きくなり、MINIがミニじゃなくなったとも言えるが、実用車である限り、やはりこれくらいの大きさ、広さはあった方が、実用面での不満はないと思われる。まぁ、狭さをものともしないエキセントリックなところがMINIの売りでもあるが、とりあえず今回も正常進化と言えるのでは。 ナビのディスプレイが理想的な配置になったこと。センターメーターの廃止は、デザイン的には賛否あると思うが、機能性の向上を天秤にかければ、従来MINIのオーナーでも割とすんなり納得できるのでは。ただ、運転席正面のメーターに限れば、従来のタコメーター&デジタル速度計の方が見やすかった気もするが。 iDrive同様、MINI コントローラーの操作には多少の慣れが必要だが、走行中でも大半の操作ができるのは、この手のインターフェイスならでは。また、アウタードアハンドルの形状変更やパワーウインドウスイッチのドアへの移設も明らかに良くなった部分。

ここがダメ

オートライトは必須。慣れが要る純正ナビ&オーディオ。クーパーの標準タイヤ

ライトスイッチは、BMWなど欧州車に多いインパネ配置のダイアル式になったが、ダッシュボードのかなり下の方にあり(ドライバー右膝のあたり)、高速道路のトンネル出入口などでのオン・オフ操作は、手探りになってしまう。オプションのオートライトは必須だ。 純正ナビ(クーパーではオプション)はやはり選んでおきたいが、それを操作するMINI コントローラーは、iDrive同様、やはり慣れが必要。特にオーディオ関係の操作は、ラジオのAM/FMの切り替えが面倒で、選局もしにくかった(ドイツ車では珍しくないが)。 本文でも触れたように、クーパーに標準の175/65R15サイズのエコタイヤは、MINIらしいハンドリングのほか、安定性や乗り心地を損なっている印象を受けた。見栄えだけではなく、走りを重視するならオプションの16インチや17インチ(ランフラットになる)も選択肢に入れたいところ。

総合評価

「昔は良かった」式の話はかんべんしてほしい

MINI、ビートル、911、500(チンクチェント)は、今も昔の姿で出ていますという御三家ならぬ御四家だ。中でもビートルと911の最新型(それぞれThe Beetle、991)は、性能を向上させながら、明らかにスタイリッシュになった。手前味噌だが、The Beetleに関しては発表当時から、なんだか先代(New Beetle)とは大違いだぞと思ってたが、現物を見ているうちにとうとう買ってしまったくらいだ。ワイド感が増してて妙にカッコいいと思うのは、オーナーゆえの目の曇りだろうか。もはや全幅は1825mmもあり、ミラーも出っ張っていて、ワイドトレッドで、ヘタするとタワーパーキングに入らないくらい。同様に991も、ずいぶん幅広く大きくなったが、これまたずいぶんカッコよくなった。基本的なカタチはオリジナルと同じでも、サイズの制約を緩めれば、レトロなデザインでもカッコよくできるわけだ。 で、今回のMINIだが、もちろん悪くない。デザインは一見変わらないように見えるほど、まさにMINIだし、改良点は本文で書いたようにたくさんあって、「今の」クルマになっている。センターメーターを廃止するなど、古き良きモチーフは消えているが、それは911やビートルも同じようなもの。クルマは進化してなんぼだと思うので、全面的に支持したい。往年のクラシックカー好きは嘆くかもしれないが、クラシックカー好きはホントのクラシックカーを手に入れて趣味で愉しむべき。「昔は良かった」式の話はかんべんしてほしいもの。

微妙ながら、重要な変化

ということで、新しいビートルに満足している身としては、MINI好きが今度のMINIを買ったら、きっと満足できるはず、と言いたいところだが、2、3、気になることがないでもない。ひとつは試乗したのがクーパーの標準(15インチタイヤ)仕様だったせいか、MINI特有のゴーカートフィーリングが少し大人しくなったように思えたこと。それはクルマとしては正常進化だが、今までのMINIのイメージとはちょっとばかり違う感じ。難しい注文だが、ゴーカートフィーリングを残しつつ、より洗練させることは、シャシーが様々に流用されるであろう昨今はやはり難しいことなのだろうか。 それからサイズアップはしたものの、その外観からMINIらしい低く構えた印象は少し失われたように思えたこと。例えば先代より大きくなったフロントグリルは、ボンネットと共に位置も高くなったように見えるが、グリル位置が低いクラシックMINIや先代MINIの方が安定感があってカッコよく見える気がする。
 
左から今回のF56型、先代R56型、先々代R50型、そしてクラシックMINI (photo:BMW AG)
そしてフロントフェンダーの峰が曖昧になったことも、微妙ながら重要な変化だろう。衝突安全や歩行者保護のためにボンネットが伸び、厚みを増して、大きく形状改良されたのだろうけど、911やビートル同様、MINIもオリジナルデザインの大きな特徴がフェンダーの峰にあった気がするのだ。 というようなことを除けば、あとはいいのではないかと思う。センターメーターの代わりにディスプレイを入れるのは当然だと思うし、そこではMINI Connectedでもって、Facebookからツイッターまでやれるようだ。まあiPhone専用のようなのでアンドロイド派としては関係ないのだけど。ヘッドアップディスプレイとか、衝突被害軽減系の安全装備とか、やっぱり最新車はいい。

日本のレトロデザインカーはあり得るか

(photo:BMW AG)
私はビートルを買ったし、友達は先代ベースだが、MINI クラブマンを買った。お金持ちの知り合いは911を買っているし、昔の憧れだったクルマが、今こうして最新型で買えるってことは、歳をとった者にとってはすごくありがたいこと。となれば、日産スカイラインだってハコスカみたいなカタチのままモダナイズしたモデルなら、月販目標200台なんてことはないと思うし、ハコスカにステアリング バイ ワイアが搭載されてたりしたら、それこそ面白い。日本の自動車産業も、もう50年以上やっているのだから、そろそろ新しいデザインのクルマにばかり、こだわらなくてもいいんじゃないのか。そういえば日産は先のモーターショーに、レトロなデザインのIDxフリーフローやiDX ニスモを出してたけど、あれはショーモデルで終わってしまうのだろうか。 しかし、市販するにあたって障壁となるのは、ハコスカが日本のクラシックアイコンであって、世界のクラシックアイコンではないことなのだろう。グローバルなクルマを作らなくてはならない昨今だが、世界のアイコンとなった日本の古いクルマとなると、なかなか見当たらない。トヨタ 2000GTや日産のZはどうだという声も聞こえてきそうだし、マツダ ロードスターもデビュー以来、そろそろクラシックアイコンの仲間入りできるくらいの時間が経過しているから、こういったあたりに期待するしかないか。とはいえ、日本人による、日本人のための、日本人が愛するレトロデザインカーが出てくる可能性は、今のところ残念ながら低い。グローバルで売れるレトロデザインカーは羨ましいなあと思いつつ、新型MINIと自分のThe Beetleに和んだ2014年の初夏であった。
 

ホンダ N-WGN G:新車試乗記

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キャラクター&開発コンセプト

目指したのは「日本のあたらしいベーシック」

ホンダ N-WGN カスタム(東京モーターショー 2013)
2013年11月20日に発売されたホンダの「N-WGN(エヌ ワゴン)」は、2011年末に発売された「N BOX(エヌ ボックス)」から始まる新世代軽自動車「N」シリーズの最新モデル。ホンダ自身は、N BOX、その派生モデルのN BOX +(プラス)、そしてN-ONE(エヌワン)に続くNシリーズの第4弾としている。 目指したのは、軽乗用車の『新しいベーシック』。ジャンル的には軽市場で最もボリュームが大きいハイトワゴンクラスで、ライバルはスズキ ワゴンR、ダイハツ ムーヴ、日産 デイズ、三菱eKワゴンなど。また、2014年4月にはライフの販売が終了しており、N-WGNはその実質的な後継モデルでもある。

従来型エンジンに新技術を投入

プラットフォームはNシリーズ共通。センタータンクレイアウトを採用する (photo:Honda)
プラットフォームは従来Nシリーズと共通で、燃料タンクを前席下に置く「センタータンクレイアウト」を採用。一方でエンジンは、従来Nシリーズの「S07A」型を大幅に改良して採用。1気筒あたり2本のインジェクターを配するツインインジェクションシステム(軽自動車初)や、冷却性の高いナトリウム封入排気バルブ(軽自動車初で、ホンダの乗用車としても初)などを、自然吸気とターボの全車に採用している。新技術の狙いは、ストレスのない走りと低燃費を両立することで、JC08モード燃費は自然吸気モデルで29.2km/Lとした。 なお、この改良型エンジンは、昨年12月からはN-BOXに、今年5月からはN-ONEにもマイナーチェンジで採用されている(マイナーチェンジ以降、N BOXはハイフン付のN-BOXと表記される)。

販売目標は月1万2000台。Nシリーズの4割を担う

月販目標は、現在ホンダの軽で一番売れているN-BOXの1万5000台(昨年11月のマイナーチェンジ時点で発表されたもの)に次ぐ1万2000台。なお、N-ONEの目標台数は、発売当初の月1万台から、5月には4000台に下方修正されている。 発売後約1ヵ月までの累計受注台数は、目標の約2倍となる2万4000台を超え、発売後約2ヵ月では5万台を超えた。これまでの販売実績は、11月:2910台(軽で13位)、12月:8600台(同7位)、1月:1万7855台(同2位)、2月:1万9254台(同3位)、3月:2万3929台(同4位)、4月:6558台(同10位)、5月:7978台(8位)。 生産は他のNシリーズと共に、鈴鹿製作所(三重県鈴鹿市)で行われている。 ■過去の新車試乗記ホンダ N-ONE (2012年12月)ホンダ N BOX (2012年2月)
 

価格帯&グレード展開

自然吸気は116万3314円~、ターボは138万8572円~

ホンダ N-WGN(標準モデル)。標準車のボディカラーは7色で(カスタムも含めると全11色)、写真はチェリーシェルピンクメタリック (photo:Honda)
他のNシリーズ同様、N-WGNも標準車(N-WGN)と精悍な「N-WGN カスタム」の2本立て。その両方で、自然吸気エンジン車(58ps、6.6kgm)と「ターボ・パッケージ」と呼ばれるターボ車(64ps、10.6kgm)が選べる。つまり羊(標準車)の皮をかぶった狼?(ターボ車)が可能。 スマートキー、オートエアコン、VSA(横滑り防止装置)、Honda スマートキーシステムは全車標準。変速機は全車CVTで、4WDは約11万4000円高。 また、エントリーグレードの「G」でも、30km/h以下で作動する赤外線レーザー式の「シティブレーキアクティブシステム」(自動ブレーキ)や、サイド&カーテンエアバッグ(計6エアバッグ)をセットにした「あんしんパッケージ」を6万円高で装備できる(上位グレードは標準装備)。
 
N-WGN カスタムのボディカラーも全7色で、写真はプレミアムゴールド パープル・パール (photo:Honda)
さらに標準車のGに約12万円足せば、ディスチャージヘッドライト(ハイ/ロー)付のG・Aパッケージが買えるし、そこからさらに約6万~10万円足せば、ターボ車も買える。価格差が微妙なので悩ましい。 ホンダの発表によると、標準車とカスタムの販売比率は今のところ半々で、G・Aパッケージが全体の約半数を占める。ターボは全体の1/4程度だ。売れ筋の価格帯は130万~140万円台といったところか。
 
インパネは標準車がブラック&ベージュで、カスタム(写真)はブラック&バーガンディ (photo:Honda)
なお、5月15日には、標準車のG・Aパッケージをベースに、専用インテリアなどを採用した特別仕様車「コンフォートパッケージ」が追加設定されている。 ラインナップと価格(消費税8%込み)は以下の通り。 ■N-WGN 【自然吸気エンジン(58ps、6.6kgm)】 ・G  FF:116万3314円~、4WD:128万6743円~ ・G・Aパッケージ    FF:128万5715円~、4WD:140万9142円~ ・コンフォートパッケージ   FF:132万円、4WD:144万3429円 【ターボ車(64ps、10.6kgm)】 ・G ターボパッケージ  FF:138万8572円~、4WD:151万2000円~ -------------- ■N-WGN Custom 【自然吸気エンジン(58ps、6.6kgm)】 ・G   FF:137万3143円~、4WD:149万6572円~ ・G・Aパッケージ FF:149万1429円~、4WD:161万4858円~ 【ターボ車(64ps、10.6kgm)】 ・G ターボパッケージ  FF:155万3143円~、4WD:167万6571円~
 

パッケージング&スタイル

小さなステップWGN風

外観デザインは、何となくミニ「ステップWGN」風。ホンダのショールームで、同じボディカラーの現行ステップWGNと一緒に並んでいると相似形のように見える。Cピラー付け根の黒いスリット風処理も、ステップWGNにあるスライドドアのレールがモチーフか?
 
ボディサイズは軽自動車の掟通り、全長3395mm、全幅1475mm。ホイールベースはNシリーズ共通で、軽(FF車)では最長の2520mm。最小回転半径(FFで4.5メートル、4WDで4.7メートル)も他のNシリーズと共通だ。
 
一方で、全高は1655mmで、N-ONE(1610mm)より少し(45mm)高く、N-BOX(1770~1790mm)よりずいぶん(120mmくらい)低い。つまり、パッケージング的にはN-ONEに近く、N-BOXとは全く異なる。ライバル車との比較では、ワゴンRより15mmほど高く、ムーヴやデイズ/eKワゴンより35mm高いといった程度で、大差はない。
 

インテリア&ラゲッジスペース

Nシリーズの質感と広さに、独自の工夫をプラス

N-WGN(標準車)の内装色はブラック&ベージュの2トーン
今や軽の質感や広さは一部のリッターカーを超えるレベルで、中でもNシリーズはレベルアップの牽引者と言える存在。N-WGNの内装も、これ単体で見れば、しょせん軽と思う人もいるかもしれないが、国産リッターカーと較べれば力の異様な入りっぷりが理解できる。ドアの閉まり音も、軽とは思えないくらいしっとりしている。 スイッチ類などN-BOXやN-ONEとの共用パーツもチラホラ目に入るが、ダッシュボードはN-WGN専用。センターの引き出し式トレーなど、新しい工夫も盛り込まれている。
 
センターの引き出し式トレーは、車内ランチに便利
中でもN-WGN独自の部分は、Nシリーズで初めて採用されたリアシートスライド機能(前後200mm)と後席下に靴や傘を置けるリアシートアンダートレイ。同じセンタータンクレイアウトのフィット、N-BOX、N-ONEの場合は、後席の座面を跳ね上げるチップアップ機能などを売りとしているが、N-WGNではあえてそれを封印。特に後席下のアンダートレイは、今までありそうで無かったもので、便利そうだ。
 
背もたれはダイブダウンで格納できる。フィットのようなチップアップ機能はない
後席はリクライニング&前後200mmスライドが可能(写真は後端)。座面下には傘や靴を置ける
シートはクッションが分厚い。運転席ハイトアジャスター(ラチェット式)は上位グレードのみ
 
写真は後席を後端にした状態。この場合でもA型ベビーカーが収納できる
後席を畳んだ状態。絶対的な容量より、日常での使いやすさを重視した印象
センタータンクレイアウトとスペアタイヤレスにより、深さ290mmの床下収納スペースを確保
 

基本性能&ドライブフィール

ツインインジェクターとナトリウム封入排気バルブを採用

試乗したのはN-WGN(標準モデル)のエントリーグレード「G」(自然吸気エンジン車、車両本体価格116万3314円)。 エンジンはこのN-WGNから導入された改良型のS07A。前述の通り、ポート噴射ながらツインインジェクションシステムを採用し(3気筒なのでインジェクターは計6本)、合わせてナトリウム封入排気バルブも採用。軽にあるまじき贅沢な技術が奢られている。
 
ツインインジェクションシステムのイメージ (photo:Honda)
ツインインジェクターはトヨタのD-4Sのように、ポート噴射と直噴の併用で使われる場合もあるが、これはポート噴射のまま、インジェクターを各気筒に2本配置することで、直噴並みの燃焼効率を得ようというもの。同様のものは、現行スイフトの1.2リッター「デュアルジェットエンジン」等にも見られるが、軽では初だ。
 
ナトリウム封入バルブ説明図。異常燃焼の原因となる熱は、バルブステム内のナトリウムを通じて冷却される (photo:Honda)
ナトリウム封入排気バルブは、技術的には大昔からあるものだが(大戦中の零戦でも採用)、市販車では一部の高性能車(古くはアルファロメオのジュリア、日本車ではR32 スカイラインGT-Rなど)でしか見られないもの。軽での採用はもちろん今回が初。金属ナトリウムは約98度Cで液体化して熱流動性が高まることから、結果として排気バルブ近辺の温度を下げ、ノッキングの発生を抑制する。これによりN-WGNの自然吸気エンジンは、圧縮比を従来の11.2から11.8にアップ(ターボエンジンは従来と同じ9.2)。クラス最高レベルの58ps、6.6kgmのパワーを確保している。

トルクアップを実感。ただし回すとノイジー

これにより、アクセルをことさら踏まなくても力強く走るようになったのは確かで、そういった特性に合わせて走らせる、つまりアクセルをベタ踏みせず、低回転のトルクで走らせると、エンジンの進化が実感できる。ちなみに、試乗した自然吸気エンジン車(FF)の車重は820kgで、N-ONE比だと20~30kg軽いだけだが、N-BOX比だと130~140kgも軽い。 一方で、出足や全開加速に限って言えば、印象は従来N-ONEの自然吸気モデルと大差ない感じ。変速機はCVT(無段変速機)なので、せっかちにアクセルを踏み込めば回転数を即座に高めてノイジーに加速する。このあたりはN-BOXやN-ONEの自然吸気モデルの延長線上にある。 なお、今回からCVTの最終減速比はハイレシオ化され(巡航時のエンジン回転を下げるため)、その分、発進時のギア比も高くなっているようで、それによる発進時のトルクダウンは、トルコンのトルク増大効果でカバーしているとのこと。 アイドリングストップは全車標準。改良前のN BOXやN-ONEのターボには無かったが、N-WGNからはターボ車にも装備されている。また、走行中でも減速時に車速が10km/h以下になるとエンジンを止める機能も新採用。作動はスムーズで、エンジン停止状態からの坂道発進もVSAによるヒルスタートアシスト機能で器用にこなす。

Nシリーズ共通の素性を受け継ぐ

シャシーに関しては、N-ONEと同様に重厚で、Nシリーズ共通の軽自動車離れ感、クラスレス感がある。基本的にかなり余裕のあるシャシーだなぁという印象。サスペンションは、フロントに低フリクションタイプのリバウンドスプリン付ショックユニットを採用するなど、N-WGN専用に手が入っている。 ただ、それでも、徹底的にアンダーステア寄りというハンドリング特性は、N-BOXやN-ONEと同じ。試乗したのがフロントスタビライザー無しの標準モデルだったせいもあるが(ターボ車やN-WGN カスタム全車にはスタビが標準装備になる)、コーナーではやはり曲がらない印象が強い。ハンドリングにこだわるなら、スタビ装着車が気になるところ。なお、VSA(車両挙動安定化制御システム)は全車標準だが、負荷をかけても介入を体感することはほとんどない。
 
乗り心地は、重厚感のあるシャシー、2520mmのロングホイールベース、分厚いシートなどのおかげで特に不満はないが、大きな段差では、鋭い突き上げと上下動が生じる。また、高速巡航ではもう少し滑らかさが欲しいと思った。 静粛性は、従来NシリーズのNAモデル同様、高回転時の金属音(おそらくCVTのノイズ)が、相変わらず気になるところ。完成度の高いNシリーズにあって、最も気になるのがこの点だと思う。また、大人しく低回転で巡航する時は、若干ロードノイズが目立つ。なお、遮音・吸音材は標準車とカスタムで仕様が異なり、後者にはルーフや前後ドア内にインシュレーターが追加されている。つまり同じ自然吸気エンジン車でも、カスタムの方が静かな可能性が高い。

試乗燃費は15.6~22.3km/L。JC08モード燃費は29.2km/L

今回はトータルで約200kmを試乗。試乗燃費(車載燃費計)は、いつもの一般道、高速道路、ワインディングを走った区間(約90km)が15.6km/L。また、一般道を無駄な加速を控えて走った区間(約30km)が20.6km/L。さらに一般道と高速道路(いずれもほぼ直線路)を走った区間(約25km)が22.3km/Lだった。いずれもECONはほぼオン、エアコンはオンで走った。 総じて、特にエコ運転しなくても17km/L前後で走るなど実用燃費は優秀で、それでいてトルクフルなのがN-WGNのいいところ。エンジンの改良は、走りと燃費の両方で実感できると思う。 JC08モード燃費は、試乗した自然吸気モデルのFF車が29.2km/Lで、ターボのFF車が26.0km/L。タンク容量は全車30リッター。
 

ここがイイ

スペック主義ではないところ。傘置き場の採用

低速トルクがあるので、アクセルを軽く踏む程度でちゃんと走ってくれるし、燃費も十分にいいこと。つまりそんなに「我慢」しなくても好燃費で走ってくれる。また、JC08モード燃費は29.2km/Lと優秀だが、クラストップを目指したものではなく、おかげでクルマ作りに「無理」が感じられない。エンジン屋ホンダの意地と見識が感じられる。 後席スペースを最大にした状態でも、荷室にベビーカーを積めるスペースを残すなど、ユーザー目線のパッケージング。燃費にしろ広さにしろ、数値競争になりがちな軽だが、このあたりは軽というジャンルが新たなフェイズに入ることを期待させる。 後述するが、標準車でもターボが選べること。ターボ=スポーティな外観(スティングレーとかハイウェイスターとか)じゃなくて、普通の外観デザインでターボであることは、今後の軽のあり方として当たり前であるべき。 また、JNCAPで5つ星という評価も軽の衝突安全性に対するネガティブなイメージを消す。さらにVSAは全車標準で、6エアバッグなどのあんしんパッケージも全グレードで装着できる(エントリーグレードにもオプション設定し、それ以外で標準装備)。つまり安全装備に関しては、普通車に遜色ないこと。
 
(photo:Honda)
ホンダ独自のセンタータンクレイアウトを活かしつつ、チップアップの代わりにリアシートアンダートレイを採用したこと。傘や靴の置き場にこの手があったか。どうってことないアイディアに見えるが、実はセンタータンクレイアウトじゃないとスペース的に採用が難しいもの。傘置き場、どのクルマにももっと積極的に工夫してつけるべきだ。 あくまでカタログで確認しただけで実際に試していないが、iPhoneと組み合わせるディスプレイオーディオ(6万円ほどと低価格)はかなりよさげ。車載ディスプレイはiPhoneのインターナビポケットというアプリを表示するだけで、余計なことはしない。アプリは3年間は無料で使える。SiriやオーディオもiPhone側が受け持つ。やっとここまで来たかという感慨がある。アンドロイド版も欲しいところだが…。

ここがダメ

高回転時のノイズ。標準車Gの乗り心地、人によってはドラポジ

本文でも触れたように、アクセルを踏み込んで全開加速を試みると、とたんに喧しくなること。ノイズの発生源はおそらくCVTから。まぁ、アクセルを踏み込まなければ(飛ばさなければ)気にならないのだが。 乗り心地は街乗りレベルでは問題ないが、試乗車(非カスタムの自然吸気モデル)の場合、大きめの段差やうねりを乗り越える時に大きめのバウンドや突き上げが生じる。また、高速道路で80~100km/hで巡航する際、平滑な路面でも小刻みな上下動が絶えないのもちょっと気になるところ。フロントにスタビが付くターボ車やN-WGN カスタムなら、もう少し落ち着きが増すかも。 シート自体は立派で、シートリフター非装着のベースグレードでも、小柄な人なら違和感ないポジションがとれるが、体格や好みによってはちょっと収まりがよくない。ステアリングが遠めで、それを嫌ってシートを前にすると足元が狭くなるし、座面の角度も調整したくなった。なお、上級グレード(G・Aパッケージ以上)には運転席ハイトアジャスターが備わるが、もともと座面はかなり高めなので、あまり必要ないかも。

総合評価

エンジンで追いついた

売れまくっているN-BOXの場合、デビュー当時の試乗ではデザインやパッケージングは評価できたが、やはり走り、特にNAの走りに関しては今ひとつ感が拭えなかった。例えば先行するライバル車が、当時もうNAで問題ないんじゃないの、というくらい力強かったのに対して、ホンダはまだその点では追い付いていないかなと思ったものだ。 しかし今回、N-WGNのNAモデルに乗って、その印象はかなり変わった。本文にあるようにエンジンは大きく改良され、自然吸気でクラス最高レベルの58ps、6.6kgmのパワーを確保。これならホンダもNAで十分だなあ、と思うまでになっていた。さすがホンダ、進化が速い。N-BOXもN-ONEも、エンジンが改良された現行モデルに乗ると、かなり印象が異なるだろう。
 
ということで、これまでモーターデイズで高く評価してきたスズキの軽自動車に、いよいよホンダも追いついてきたな、というところ。いや、すでに追い抜いているところもある。言うまでもないが、軽は確かに2強時代から3強時代に入っているわけだ。 また、絶対的な販売台数から言えば、軽こそが日本のクルマ、になりつつある。そしてまもなくダイハツから新型コペンが出て、ホンダからS660が出るとなると、スズキからもカプチーノ後継が出るかも。そういう点でも軽が楽しみなことになってきた。スズキの軽エンジンを載せたケータハムも早く試乗しないとね。

軽は生活必需品

そんなふうに再び黄金時代を迎えつつある軽だが、ここまで良くなると、またぞろ、税制問題がゴチャゴチャとしてきている。スズキの修会長じゃないが、東京23区や名古屋、大阪の一部以外に住んでる人にとって、クルマは、そして軽は、まさに生活必需品だ。それにまた重税をかけるというのは、取りやすいところから取るという都会の役人(や運転手付き政治家)の発想そのもの。クルマ産業に食わせてもらっている日本社会なのに、ますますクルマ離れさせる施策なんて、「貴様らはわが日本国のことを真剣に考えているのか」と怒鳴りたくもなる。高額になってきたガソリンの二重課税、車歴13年超えの旧車への重課税など、私的にもすでに色々と増税がボディブローとなってきている。クルマ関連の税制は本当にもう一度全て見なおして、スッキリ、あくまで「ユーザー寄り」のものにしてもらいたいものだ。それが日本国のためだと思う。
 
話をN-WGNに戻そう。N-WGNの場合、一番難しいのは出来の問題より、その立ち位置だろう。軽を買う場合は、生活の必需品とはいうものの、それなりにそのモデルを選ぶ理由付けが欲しい。たとえばスズキ ハスラー。試乗記でも書いたが、これ、いいオッサンが「まあこいつならいいか」と普通車からダウンサイジングできるクルマだ。ホンダだったら、それは今ならN-BOXあたりだろうし、N-ONEのような「プレミアムな軽」もある(余談だが、噂の絶えないチョップトップバージョンは本当に出るのだろうか。出たらかなり売れるのでは)。一方でN-WGNは、真面目に作られているのはよく分かるが、そういう華というか、お目立ち度というか、理由付けの部分がちょっとばかり不足気味かと思う。そしてN-WGNをホンダのベーシックな軽と位置づけるなら、現状の価格設定(生産コスト)はけっこう高めであり、頑張っても100万円を切って売るようなことは難しいだろう。よく出来ているクルマだけに、そのあたりが販売的に難しいと思うところだ。

軽から税金を巻き上げるな

ターボによるエンジンのダウンサイジングという欧州車のやり方が、日本車で最もうまくいってるのが皮肉にも「ガラ軽」だ。今回はターボに試乗していないが、おそらくリッターカーを超える性能や相応の燃費をたたき出すはず。特にN-WGNの場合は、外観は標準車でも、中身はターボにすることが可能であり、それは他のメーカーにも波及して欲しい部分だ。 いずれにしても、フォルクスワーゲンが世界の国民車として完璧とも思えるゴルフ7を作ったように、3強(むろんそれ以外のメーカーでもいいい)が、360時代から脈々と続いてきた軽規格の完成形として、完璧な日本の国民車(ドイツ語でフォルクスワーゲン)を作ってくれることを大いに期待したい。そして日本国はそんな国民車から、さらに税金を巻き上げようなどとしないでほしいものだ。
 

ジープ チェロキー ロンジチュード:新車試乗記

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キャラクター&開発コンセプト

チェロキーの5代目(KL型)。エンジンは横置に

新型ジープ チェロキー(KL型)
北米では2013年11月に、日本では2014年5月17日に発売された新型ジープ チェロキー(KL型)は、フィアット クライスラー社のミドルクラスSUV。チェロキーとしては5代目だ。 新型チェロキーは、ジープブランド車では初めてフィアットとクライスラーが共同開発したプラットフォームを採用。エンジンは歴代チェロキーの縦置きから横置きに変わり、チェロキー初のFF車も設定。プラットフォーム自体はアルファロメオのジュリエッタと基本設計を共有する。ただしハイ/ロー2速のトランスファーやデフロック機能を備えた4WD車も用意するなど、ジープらしさは健在だ。

9速ATを搭載。燃費性能は3~5割アップ

2代目XJ型チェロキー。世界中で大ヒットし、日本では一時期ホンダディーラーでも販売された
エンジンは新開発の「タイガーシャーク」こと自然吸気2.4リッター直4と、「ペンタスター」こと自然吸気3.2リッターV6の2本立て。前者はフィアットが開発したマルチエア(後述)を採用したもので、後者は現行グランドチェロキーやラングラー用3.6リッターV6の縮小版になる。 トランスミッションには現在トルコンATで最多段の9速ATを採用。これはZFが開発したもので、レンジローバー イヴォークの2014年モデルにも搭載されている。
 
3代目KJ型チェロキー(写真は米国仕様のリバティ)
これらの要素により、JC08モード燃費は8.8~10.4km/Lとなり、先代KK型3.7リッターV6・4ATモデルよりも、同じV6同士なら約30%、新しい直4モデルなら約55%も向上している(日本仕様JC08モードで比較)。もちろん燃費性能だけでなく、斬新なデザイン、先進安全装備の充実なども、新型の大きな売り。 生産は米国オハイオ州のトレド工場(Toledo North Assembly Plant)。広告キャッチコピーは世界共通で「Built Free」。直訳すれば、自由な発想で作られた、といったところか。
 
4代目KK型チェロキー
なお、初代チェロキーは、ジープ ワゴニアから派生したSJ型(1974~83年)からスタート。2代目のXJ型(1984~2001年)は、スクエアかつモダンなデザインで米国だけでなく、欧州や日本でも大ヒットした。3代目KJ型(米国名リバティ、2002~07年)は、一転して丸みを帯びたデザインを採用。4代目KK型(同じく米国名リバティ、2008~2013年)では、再びスクエアなデザインに戻っていた。
 

価格帯&グレード展開

計3グレードで、379万0800円からスタート

今回試乗したロンジチュード。2.4リッター直4のFF車になる
日本仕様は計3グレード。自然吸気2.4リッター直4・SOHCエンジン(177ps、23.4kgm)のFFモデル「ロンジチュード」、自然吸気3.2リッターV6・DOHCエンジン(272ps、32.1kgm)を積むクロカン系4WDモデルの「トレイルホーク」、同じく3.2リッターV6・4WDながら高級志向の「リミテッド」というラインナップ。なお、ロンジチュードは英語で経度や縦を意味するが、新型チェロキーのエンジンは縦置き(longitudinal)ではなく横置き(Transverse)になる。 海外仕様には6MTもあるが、日本仕様は全車9速AT。

32万4000円のセーフティパッケージは必須

こちらはトレイルホーク。大径タイヤ、オーバーフェンダー、専用サスペンション、2速PTU(ローギアモード)などを備え、高い悪路走破性を誇る
ロンジチュードとトレイルホークは、メーカーオプションで「セーフティパッケージ」(32万4000円)を用意。装備内容は、オートハイビームヘッドライト、ミリ波レーダーによるアドバンストブレーキアシスト、ACC(アダプティブクルーズコントロール、※ストップ&ゴー機能付)、車線逸脱警報システム、前面衝突警報システム、走行中に斜め後方を監視するブラインドスポットモニター、後退時に接近してくる他車を検知するリアクロスパスディテクション、バックカメラ、縦列/並列パークアシスト、運転席8ウェイ電動シート&電動ランバーサポート、パワーリフトゲートなどなど。これで最新の先進安全装備が全部載せとなる。
 
最上級グレードのリミテッド
最上級グレードのリミテッドなら、それら先進安全装備は標準で、オプションとしては「ラグジュアリーパッケージ」(21万6000円)を用意している。その内容はプレミアムナッパレザーシート、蒸れを防ぐベンチレーテッドフロントシート、コマンドビュー デュアルペインパノラミックサンルーフ(大型電動ガラスサンルーフ)など。 ボディカラーはトゥルーブルー、ブライトホワイトなど全5色。ラインナップと価格(消費税8%込み)は以下の通り。 ■Longitude  2.4L 直4+9AT (FF)   379万0800円  ※今回の試乗車 ■Trailhawk  3.2L V6 +9AT (4WD)   429万8400円 ■Limited   3.2L V6 +9AT (4WD)   461万1600円
 

パッケージング&スタイル

四角から丸へスタイリングは激変

新型チェロキーの変化を象徴するのが外観デザイン。ロンジチュードのボディサイズは全長4630mm×全幅1860mm×全高1700mm、ホイールベース2700mmで、先代KK型と全長、全幅、ホイールベースでは大差ないが(それぞれ+130mm、+75mm、+5mm)、全高だけは一気に120mm低くなり、全体のシェイプも「四角から丸へ」激変した。 中でも目を引くのがフロント部分。ヘッドライトに見えるのは、実はLEDクリアランスランプで(海外ではデイライト)、本当のヘッドライトはフロントバンパー配置になる。この辺のアイディアは、日産ジュークと同じだ。
 
そしてジープ伝統の「7本スロットグリル」は従来の絶壁調から、クーペみたいなボンネット一体型になり、ノーズ全体はロー&ワイド、そして長くなった。全長が延びた分のほとんどはフロントオーバーハングが占める。 サイドに関しても、ベルトラインは緩やかに弧を描き、コジャレたキャラクラーラインが入るなど、すっかり洗練された(ちょっとアルファロメオ風?)。伝統的なジープの無骨さは、トレイルホークを除けばほとんど見当たらないが、一方でいわゆる戦隊物のような未来感は強まっている。
 
 

インテリア&ラゲッジスペース

すっかり都会的かつ便利に

日本仕様は「Uconnect(ユーコネクト)」と呼ばれる最新メモリーナビシステム&8.4インチタッチパネルが全車標準
インテリアもすっかり今どきのクロスオーバーSUV風。まず、運転席によじ登る感じがなくなり、ごく自然に乗り込めるようになった。ドア開口面積や開口角度も大きいので、後席の乗り降りはミニバン並みに楽。 インパネはどちらかと言えば欧州車風で、アメ車風の大ざっぱな感じはない。電動パーキングブレーキが採用されるなど、多くの日本車より進んでいる部分もある。なお、ステアリングの裏にボタンがあるので、シフトスイッチかと思ったら、オーディオ操作ボタンだった。
 
センターコンソールにはUSB(iPhone等に対応)、SDなどの端子を用意
一方でアメ車っぽいのはシート関係。クッションは柔らか目で、座面が分厚く、ちょっとばかりペダルが遠い。あとフットレストがなく、左足で踏ん張るところがなくて心もとない。そして独特の甘い匂い。アメリカのどこへ行っても漂っている、あの匂いがある。束の間のアメリカ旅行気分。 なお、衝突安全性に関しては7エアバッグを標準装備。米国道路安全保険協会(IIHS)で最高レベルの「トップ セーフティピックス+」や、欧州ユーロNCAPで最高評価の5つ星を獲得。北米では衝突安全評価の良否が販売に直結するので、このあたりは抜かりがない。
 
後席は前後スライドや、背もたれを倒すと沈み込むダイブダウン機構を備える
後席はミニバンのような空間、座り心地、乗降性を持つ。ドア開口角の大きさが印象的
写真はロンジチュードのファブリックシート。セーフティパッケージ装着車は電動シートになる
 
ステーションワゴンのような荷室。左側のバッグはオプションの工具セット
ロンジチュードはパンク修理キットを、トレイルホークとリミテッドはフルサイズスペアを標準装備
セーフティパッケージ装着車ならリアゲートは電動になる。あればあったで便利
 

基本性能&ドライブフィール

直4・FF仕様のロンジチュードに試乗

2.4リッターエンジンは、マルチエアシステムを搭載。クライスラー車ではダッジ ダートに次いでの採用
試乗したのは、FF車の「ロンジチュード」。車両本体は379万0800円だが、セーフティパッケージ装着車は411万4800円。 2.4リッター直4・SOHCエンジンは、通称「タイガーシャーク」と呼ばれる新世代ユニット。一番の特徴は、FIATパワートレインが開発し、フィアット500 ツインエアやアルファロメオ ジュリエッタでも採用されている電動油圧式可変バルブシステム「マルチエア」を採用している点。排気バルブはカムシャフトで駆動するが、吸気バルブの方は排気側カムシャフトで発生させた油圧を使って電子制御する電気油圧式で、これによりBMWのバルブトロニックのように(仕組みは全く異なるが)、吸気量をスロットルバタフライに代わってコントロールする。ただ、ツインエアやジュリエッタのようなターボではなく自然吸気だ。最高出力は177ps、最大トルクは229Nm (23.4kgm)。 昨今の直噴ターボエンジンに慣らされた身からすると、2000回転を割るような低回転でのトルク感は薄めだが、アクセルを踏み込めばシュゥーーンと軽く吹け上がり、1730kgのボディを軽快に加速させる。過去のチェロキーのように、トルクリアクションでボディを揺すったり、多めのトルコンスリップでルーズに加速したり、なんて感じはなく、乗り味もまったくユサユサしない。当前と言ってしまえば当然だが、新型チェロキーは完全に現代のクロスオーバーSUVになっている。

9速ATを使い切れない

そんなわけで、いかにも普通に走ってしまうロンジチュードだが、意外だったのは、街中では低めのギアで割と引っ張る傾向(3000回転以上とか)が強いこと。それでいてアクセルを抜けばシフトアップして回転を下げようとするので、エンジン回転が上下しがちになる。燃費よく走らせるには、アクセル操作にちょっとした気遣いが必要だ。 また、アイドリングストップ機能はないため、それによって生じる始動ショック等の煩わしさはないが、この直4エンジンの場合、アイドリング振動やノイズが車格の割に大きめで、少し気になってしまう。この点はV6の方がいいかも。 さらにワインディングや高速道路で気付いたのが、9速ATのギアリングが日本の道に合っていないこと。各ギア比(V6も共通)は以下の通りで、9速もあるのに全体にステップ比が大きい。 ■1速4.700、2速2.842、3速1.909、4速1.382、5速1.000、6速0.808、7速0.699、8速0.580、9速0.479 (最終減速比は、直4・FF仕様が3.734、V6・4WD仕様が3.251)
 
つまりイメージ的には、一般的な6速ATに、超ハイギアードな7速、8速、9速を足した、という感じか。これにより、少なくとも2.4リッターエンジン車だと、一般道ではせいぜい5速か6速にしか入らない。 また、高速道路でも100km/h巡航で8速、約1650rpmという感じで、9速トップにはどうしても入ってくれない(試乗した2.4リッターの場合)。それどころかアクセルを少し踏むと、7速に落ちてしまう。9速をキープするには120km/h以上の車速が要りそう。 ちなみに米国のフリーウエイでよく見られる制限速度は75mph(約121km/h)で、ユタ州など一部地域では80mph(129km/h)もある。つまり米国でなら、合法的に、そして有効に9速ATが活かせそうではある。

「Jeep」の名に恥じない悪路走破性

チェロキー トレイルホーク(写真は北米仕様)
試乗したのはFFのロンジチュードだが、4WDモデルのオフロード性能にも触れておく。3.2リッターV6のトレイルホークとリミテッドの4WDシステムは、電子制御のオンデマンド式だが、そこはジープ。一般的なオンデマンド式4WDとは一線を画し、様々な装備を備えている。 その一つがリアアクスル分離機能。これにより、乾いた高速道路などでは完全に前輪駆動で走って燃費を稼ぐ一方、必要に応じて後輪にトルク配分を行っている。 もう一つジープらしいのが、ハイ/ロー2速のパワートランスファーユニット(PTU)を装備すること。いわゆる副変速機で、通常のHighギア(1.000)に対して、2.917の4Lowモードを備える。FFベースのSUVでは極めて珍しい。この4Lowモード時の2.917というギア比は、現行ジープで最も走破性が高いラングラー ルビコン(4.000)に次ぐ低さ。普通のラングラーは2.72だ。「ジープのファンはローギアモードの威力をよく知っているので、新型チェロキーにもそれがどうしても必要だった」とは開発者の弁。この4Lowモード時には前後のプロペラシャフトがロックされるため、パートタイム4WD車の4Lに匹敵する駆動力を発揮する。 また、4WD車(リミテッドとトレイルホーク)には、オート、スノー(雪道)、サンド/マッド(砂地/泥道)といった状況に応じて最適な走行モードを選べる「セレクテレイン システム」も標準装備。トレイルホークにはロック(岩場)モードもある。これはランドローバーで言うところのコマンドシステム的なもの。 さらに、ジープと言えば、伝統のクロカンコース「ルビコン トレイル」で車両開発を行うことで知られるが、そこでの走破性を証明するのが「トレイル レイテッド(Trail Rated)」バッジ。これを新型チェロキーで唯一持つトレイルホークには、さらにヘビーデューティな装備が奢られている。
 
その一つが、泥道や雪道などの急坂を登る際に、後輪の駆動力を確保するロッキングリアディファレンシャル(機械式のLSDではなく、ブレーキ制御式のようだ)。これを備えたトレイルホークの4WDシステムは「Jeep アクティブドライブロック」、ない方は「Jeepアクティブドライブ II」(リミテッドに採用)と区別されている。 トレイルホークにはさらに、悪路の下り坂に加えて、上り坂でも1~8km/hの速度を自動的に維持し、ドライバーがステアリング操作に専念できるようにする「セレクスピード コントロール」が装備される。これはトヨタの現行ランドクルーザー(200系)に搭載されている「クロールコントロール」と同種のもの。 さらにタイヤは、ロンジチュードの225/60R17やリミテッドの225/55R18に比べて、外径が一回り大きく、幅も一回りワイドになる245/65R17タイヤになる。また、これを収めるため、樹脂製オーバーフェンダーが装着され、最低地上高は40mm増して220mmになる。 その結果、トレイルホークのアプローチアングルは29.9度、ランプブレークオーバーアングルは22.9度、ディパーチャーアングルは32.2度を確保。渡河水深限界値は508mmとなっている。

試乗燃費は7.3~10.0km/L。JC08モード燃費は10.4km/L

アメ車で嬉しいのはレギュラー仕様が多いこと。タンク容量は60リッター
今回はトータルで約250kmを試乗。試乗燃費(車載燃費計)は、いつもの一般道、高速道路、ワインディングを走った区間(約90km)が7.3km/L。また、一般道を無駄な加速を控えて走った区間(約30km×4回)が9.3km/L、9.4km/L、9.5km/L、10.0km/Lだった。総じて街中でゴー・ストップが多い場合の実用燃費は7km/L台かな、という印象。 JC08モード燃費は、試乗したロンジチュードが10.4km/L、3.2リッター4WDモデルが8.8~8.9km/L。先代KK型チェロキーのJC08モードは6.7km/Lだったので、いちおう3~5割増くらいにはなっている。指定燃料がレギュラーなのは嬉しいところだ。
 

ここがイイ

明らかにクルマとして進化した。最新の先進安全装備

かつてのXJ型やKJ型チェロキーはもちろんのこと、先代チェロキーと比べても、段違いで「乗用車」になっていること。要するに、普通の感覚で運転できる。大多数のユーザーにとっては、新型の方が快適に乗れるはずだし、燃費もずいぶん良くなった。 セーフティパッケージを選べば、STOP&GO機能付、つまり全車速対応のACC(ミリ波レーダー式のクルーズコントロール)や自動ブレーキシステム、車線逸脱警告システム、後方監視システム、パーキングセンサーと連動した自動ブレーキシステム、そして縦列/並列駐車時にステアリング操作を自動でやってくれるパークセンス(これは他社のものと同様、実際にはセットが面倒で実用的ではないが)、オートハイビームなど、最新レベルの先進安全装備が付いてくること。チェロキーを買うなら必須オプションで、実際の装着率も100%に近いとのことだ。

ここがダメ

エンジンと9速ATのマッチング

日本の法定速度では9速ATをまったく使い切れないこと。100km/hで走ってもトップギア(9速トップ)に入らないクルマに乗ったのは今回が初めて。これは本文にもある通り、ギアリングにも要因はあるが、さらに言えば2.4リッターエンジンと9速ATのマッチングが今ひとつ良くないせいもあると思う。低回転からトルクフルな2リッター直噴ターボなどと一緒になれば、ガラリと印象が変わりそう。 左サイドのドアミラーには、サイドカメラが装備されているが、その映像をナビモニターに表示するには、タッチパネルで操作する必要があるため、走行中にとっさに表示するのが難しい。いっそ専用モニターにするという手もあったと思う。 オートエアコンの自動温度調整は、始動直後がやや不安定で、暑かったり、寒かったり。放っておくと、適正な温度になるが、ちょっと癖があった。 ドライビングポジションはアメ車独特で、座面がやや高く、ペダルがやや遠め。乗っていると慣れるが、小柄な人はちょっとつらいかも。左足もとにフットレストがなく、踏ん張れないのもちょっと気になった。

総合評価

日本でも売れたXJ型チェロキー

日本でチェロキーといえば、アメリカンSUVとしては空前の大ベストセラーとなった2代目XJ型を思い出す。日本デビューの1985年以降、その角張ったスタイリング、扱いやすいコンパクトなボディサイズ(年式によって異なるが、全長4400mm×全幅1770mm×全高1650mm前後)で人気となり、1990年代の四駆ブームに乗っただけでなく、途中から投入された4リッターエンジン、米車初の右ハンドル、手頃な価格も追い風になって、日本市場に定着してよく売れた。なにせ1994年頃には300万円を切る価格のモデルもあり、しかもまだ自社のSUVを持っていなかったホンダのディーラーでも販売されたので、なんと年間1万1000台を売った。これは昨年の例だとVWポロ並みの販売台数だ。ホンダがジープを売るなんて、今では想像もできない話だが。 それだけ売れたから、街中でもよく見かけたし、昨今でもまだ走っているのを見かける。XJチェロキーが開発された1980年代初め、ジープブランドはAMC(アメリカン・モーターズ)傘下にあり、さらにそのAMC株の半分近くをルノーが持っていた。その意向もあって、こうしたコンパクトな「欧州でも乗れるジープ」が作られたようだ。とはいえ、売れた最大の原因はそのスタイリングと言ってもいいだろう。当時ちょっとだけ乗ったことがあるが、オンロードでの走りや快適性には、正直なところ取り立てて見るべきところはなかった。それでも売れまくったのは、クルマはやっぱり見た目が大きいということなのだろう。

世界の主流はこっち

今回の新型チェロキーも、巡り巡って欧州の意向が反映したモデルだ。AMCはすでになく、ジープブランドはクライスラーへ行き、そしてそのクライスラーもフィアットへと、まあ流れ流れてどこへ行くというのがジープブランドの歴史。しかし今回、そのフィアットの影響もあって、スタイリッシュな欧州風SUVとなったのは、ある意味では幸いなことだったと思う。「クルマはやっぱり見た目が全て」だとしたら、XJ型とは正反対の方向であっても、この流麗なスタイリングは結構ポイントが高い。カッコいいと思う。グリルにはちゃんとアイデンティティが生きているし。ここに来て、いよいよ角ばったSUVはクラシックカーの世界のもの(XJ型もすでにその仲間入り)と言える。また、いつも書くようにSUVはオンオフを問わないスーパーカー。新型チェロキーでもそこはきちんと押さえていて、オンロードでの走りや快適性はもちろん、本格的なオフロード性能を備えたグレードも用意されている。本来の「ジープ」というブランドを愛する人にも、おおむね好評なようだ。
 
新型は当然ながら米国や欧州での衝突安全評価もトップクラス。先進安全装備も満載で、その部分でも文句はあるまい。燃費は際立って良くはないが、ボディサイズからすれば、まあ妥当なところだし、先代KK型より飛躍的に良くなっている。また、レギュラーガソリンでOKというのは、ガソリン価格が高騰する中、嬉しいところだ。本文にあるように、9速トップはさすがに日本の道では宝の持ち腐れになりかねないが、トヨタ流に言えば、アメリカ車だからアメリカの道を知っている、ということだろう。また当然、欧州では9速ATにそれなりのメリットがあるだろうから、そちらこそが世界の主流ということになる。いよいよ日本の常識は、世界の非常識ということ。新型チェロキーも新東名が全線片側3車線で作られ、設計速度通りの速度規制であれば、もっとエコなクルマとして評価できるかもしれない。高速域で燃費性能を改善できる最新装備が、宝の持ち腐れとなりかねない日本の現状、こんな皮肉な話もないだろう。
 

トヨタ パッソ 1.0X “Lパッケージ”:新車試乗記

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キャラクター&開発コンセプト

マイナーチェンジで新開発1リッターエンジンを採用

パッソ 1.0X “G package”
トヨタ「パッソ」は、トヨタがダイハツと共同開発したコンパクトカー。ダイハツの「ブーン」とは兄弟車の関係にある。 初代パッソ(XC10型)とブーンがデビューしたのは2004年で、現行の2代目(XC30型)には2010年にフルモデルチェンジしている。今回試乗したのは、2014年4月14日に発売されたマイナーチェンジモデルだ。
 
パッソ 1.0 +Hana
今回のマイナーチェンジでは、1リッター3気筒“高熱効率・低燃費”エンジンを新採用。これまで通りエンジン型式は「1KR-FE」型で、排気量も変わらず996cc、馬力(69ps)や最大トルク(9.4kgm)も変わっていないが(発生回転数は異なる)、一方で、急速燃焼のための高タンブルポート、圧縮比アップ(10.5→11.5)、低フリクション化、クールドEGR、エキゾーストマニホールド一体型シリンダーヘッド、アトキンソンサイクルの採用等により、最大熱効率(使用した燃料の熱エネルギーに対して走行のため有効利用された熱量の割合)を37%まで向上させている。 また、販売主力の1.0リッター・2WD車(エントリーグレードを除く)には、停止前でも約9km/h以下からエンジンを停めるアイドリングストップ機能を標準装備。さらにブレーキエネルギー回生機能(減速時のエネルギーを電力に変えてバッテリーに貯める機能)の強化や、空力性能の向上も行っている。変速機は従来通りCVT(無段変速機)になる。
 
passo_02pr_eng150.jpg 今回改良された1.0リッター3気筒ガソリンエンジン「1KR-FE」
これらの結果、JC08モード燃費(1リッター・FF車)は、マイチェン前の21.2km/Lから約30%向上し、純ガソリンエンジン登録車でトップの27.6km/Lをマークしている。 なお、トヨタはこの新開発1リッターエンジンの他に、最大熱効率38%を達成した改良型1.3リッター直4エンジン(1NR-FKE)も発表しており、4月21日にマイナーチェンジしたヴィッツに搭載しているが、パッソの1.3リッター車にはひとまず従来エンジン(1NR-FE)が継続採用されている。 生産は従来通り、ダイハツ本社の池田工場(大阪府池田市)。販売チャンネルはトヨタカローラ店で、月販目標台数は5000台(ブーンの目標は未発表)。なお、2代目デビュー時の目標は、パッソが6500台、ブーンが800台だった。購入層の8割は女性とのこと。
 
ダイハツ ブーン(マイナーチェンジ後)
■過去のモーターデイズ新車試乗記 ・2代目トヨタ パッソ 1.0+Hana (2010年4月)初代トヨタ パッソ (2004年7月) ■外部リンク ・トヨタ自動車>プレスリリース>パッソをマイナーチェンジ(2014年4月14日)
 

価格帯&グレード展開

109万8655円からスタート。販売主力は125万7709円~

パッソ 1.0X。ボディカラーはキナコメタリック
ラインナップはほぼ従来通り、1リッター直3(69ps、9.4kgm)の「1.0X」、1.3リッター直4(95ps、12.3kgm)の「1.3G」、女性向けの「+Hana」(1リッターと1.3リッター)。 価格(消費税8%込)は、オーディオ、アイドリングストップ機能、樹脂製ホイールキャップ等を省いた営業車的なグレード「1.0X “Vパッケージ”」の109万8655円からスタートするが、一般ユーザーには「1.0X」の125万7709円からがメインになる。 さらに細かく見ていくと、キーフリーシステム(いわゆるスマートキー)が付いた「1.0X “Lパッケージ”」が129万3055円、それにメッキ加飾を内外装に加えた「1.0X “Gパッケージ”」が135万6873円。1.3リッター直4エンジン車「1.3G」が147万1745円。4WD車(1リッターのみ)は各グレードの約14万円~15万円高。 なお、ダイハツ ブーンは1リッターのみで126万3600円~。

+Hanaでは2トーンカラーも選べる

パッソ +Hana 。写真のボデイカラーはウグイスミックス(ウグイスメタリック×シンジュパールマイカ)
一方、+Hanaは135万5891円からスタート。こちらは、丸みのあるアッパーグリルや笑っているように見えるロアーグリルで「かわいらしさを表現」。ヘッドライトは専用のプロジェクター式(ただしディスチャージはオプション)で、リアコンビランプはピンクの入ったクリアレンズ仕様になる。さらにドアミラーやドアハンドルは、シンジュパールマイカで塗装され、よく見れば車名エンブレムも専用書体になる。 ボディカラーは従来通り、「ユキ」「ベニ」「キナコ」「カガミ」(シルバーのこと)などの和名で、標準モデルには新色「ルリマイカメタリック」を含む10色を用意。 そして+Hanaには、新色「サクラパールマイカ」を含む9色を用意するほか、今回からオプションで、ルーフや樹脂キャップ等を「シンジュパールマイカ」で塗り分ける2トーンボディカラーが選べるようになった。2トーンを合わせると、ボディカラーは全部で15通りになる。
 

パッケージング&スタイル

標準車と+Hanaで異なるデザイン

試乗したのは標準車の1.0X “Lパッケージ”
標準モデル(XとG)と+Hanaでデザインが異なるのは従来通り。今回のマイナーチェンジではフロントデザインを変更し、両者をさらに差別化。撮影・試乗した標準車のフロントバンパーは台形グリルのスポーティなデザインとし、上級グレードにはメッキ加飾を加えて質感を向上。ヘッドライトはエッジのある形状のマリチリフレクター式ハロゲンになる。

すでにトヨタ最小に非ず

写真のボディカラーはアズキマイカ
ボディサイズはほとんど変わらず、全長3650mm×全幅1665mm×全高1535mm、ホイールベースは2440mm。ヴィッツ(3885×1695×1500mm、2510mm)より一回り小さいが、iQ(2985~3000×1680×1500mm、2000mm)よりは断然大きい。初代パッソと言えば「トヨタ最小」がキャッチコピーだったが、今やトヨタブランドにも軽自動車があり、まったく最小ではなくなっている。
 
2代目+Hana 前期型(2010年)。ウグイスメタリックは4年前にもあった
2代目+Hanaの現行型。バンパー形状が異なり、表情が柔和になっている
サイドやリアに関しては、マイチェン前後の差はわずか
 

インテリア&ラゲッジスペース

基本デザインはそのままに、カラー等を変更

標準車のインパネ。ナビは販売店オプション(写真はG-Book MX Proモデル)
インパネは基本的に従来のまま、今回のマイナーチェンジでは内装色を変更。標準車(写真)はモカ、+Hanaはエボニーブラウンとベージュの2トーンとし、またメーターもそれぞれ専用色とするなど、細かく変更されている。 男子目線でも相変わらずいいなと思うのは、ザックリした触感のシート素材(標準車はジャージ、+Hanaはジャガード織物/ジャージ)、ゆったり座れるフロントベンチシート(標準車の上位グレードと+Hanaに装備)、ダッシュボードの棚、買い物フック(180度反転して格納できる)、後席のロングクッションモードなど。質感は際立って高くないが、和めるインテリアになっている。
 
リアシートもソファ的に快適。2段階リクライニングや3人分のヘッドレストを装備
ステアリングチルト機能は全車標準だが、シートリフターは上位グレードのみになる
助手席前には買い物フックやティッシュボックスを置ける棚を装備 (photo:トヨタ自動車)
 
ロングクッションモードから後席の背もたれを倒せば、荷室をほぼフラットに拡大可能
全車スペアタイヤを標準装備する
ロングクッションモード。足元に荷物を置きたくない女性に好評 (photo:トヨタ自動車)
 

基本性能&ドライブフィール

排気量なりの余裕がある

試乗したのは、1リッター直3の「X “Lパッケージ”」(車両本体価格129万3055円)。 試乗車はキーフリーシステム付き。リクエストスイッチを押して解錠し、本来はキーを差し込むところにあるノブを回すと、キキッとスターターが回ってエンジンが始動する。ヴィッツなどと違って、スタートボタンはないが、これはこれでオーソドクスで安心感あり。 走り自体は、大ざっぱに言えば従来の1リッター3気筒とそう大差ない。最高出力は69ps、車重は910kgで、パワーウエイトレシオは13.2kg/ps。スペック的には軽のターボ車とどっこいどっこいだ。 それでも1リッターの3気筒ゆえ、気筒あたりの排気量は332ccと大きいし、71.0×83.9mmのロングストローク型だから、一発一発のトルク感はある。スムーズとは言えないが、ドコドコッと力強く加速するのは悪くないし、自然吸気だからターボラグもない。軽のターボ車と比べると、排気量1.5倍分の余裕は確かにある。

ウインカー作動音はピッコ、ピッコと可愛らしいもので、なんとなくプジョー・シトロエンのスモールカーを思わせる
いわゆる音・振の改善は今回の改良項目に挙がっていないが、心なしか3気筒エンジンの振動・ノイズは減った感じはあり、アイドリング時や低回転でもそんなに気にならない。 減速時には約9km/h以下でアイドリングストップ機能が作動し、走行中にエンジンが停まる。同様のシステムを採用する最新の軽自動車同様、一旦停止時には少し煩わしいが、まぁこれは慣れるだろう。 ただ、エアコン使用時のエンジン停止時間が短いのはけっこう気になった。エアコンオフなら1分以上は止まったままだが、エアコン使用時は長くてもおおむね30秒くらいでエンジンが始動してしまう(エアコンによる負荷が小さい6月の夜間でも同じ)。そのため信号待ちの途中でエンジンが掛かってしまうことが多く、その度にキキッとクランキングノイズを聞かされるのが少々煩わしかった。

走りの安定感はこれまで通り

意外に悪くないのが、ワインディングでの走り。アンダーステア一辺倒ではなく、グリグリ曲がってくれるし、急なステアリング操作をしても、リアがちゃんと粘ってくれる。全車標準のVSC&TRCもほとんど介入してこない。ただ、似たようなことを4年前にも書いているから、これはもともと2代目パッソのシャシーに備わっていた素質だろう。あと、割と大径の165/65R14タイヤ(ダンロップのエナセーブEC300)のおかげもあるかも。 今回は梅雨時ということで、何度かゲリラ豪雨に遭遇した。その時に気になったのは、ルーフをバラバラバラッと叩く雨音がかなり大きいこと。このクラスのコンパクトカーではある程度、仕方のないものだが、トタン屋根の下にいるようで少々不安を覚えた。また、タイヤがホイールハウス内で水を跳ね上げるスプラッシュ音もやや大きめだが、このあたりもクラス相応と考えるべきか。

試乗燃費は13.5~20.3km/L。JC08モード燃費は27.6km/L

今回はトータルで約290kmを試乗。試乗燃費(車載燃費計)は、いつもの一般道、高速道路、ワインディングを走った区間(約90km)が13.5km/L。主に一般道をエコ運転に努めた区間(約30km×2回)が20.0、20.3km/Lだった。また、撮影や所要で走った時(普通に足として乗った時)の実用燃費は13~14km/L台で推移した。 JC08モード燃費は、試乗した1リッター・FF車で27.6km/L。タンク容量は40リッターと大きく、もちろんレギュラーガソリンでOKだ。
 

ここがイイ

乗りやすさ、ベンチシートなど

アクセルを踏めば小気味良く加速し、軽いハンドルを切れば、クルクルと小回りが効く。街中で乗りやすく、楽で便利。実用燃費もそこそこ良く、場所や走らせ方にもよるが、軽のターボ車と同じくらいの燃費で走ると思う。 ソファのようなシート。前後席ともクッションは分厚く、サイズもたっぷり。大きめのアームレスト、後席に3人分ついたヘッドレスト、オシャレでざっくりした風合いのファブリックなどなど、シート関係はなかなかいい。 ドアの閉まり音。バシャッと閉まると安っぽくて興ざめだが、パッソのドアは意外にもバスっと重厚に閉まる。シートと合わせて、気持ちのいい部分。

ここがダメ

エアコンオン時のアイドリングストップ時間の短さ。自動ブレーキの採用見送り

本文でも触れたように、エアコン使用時のアイドリングストップ時間が短すぎる。エアコンをオンにしていると、せいぜい30秒か、それ以下でエンジンが再始動してしまい、けっこう煩わしい。最近の他社アイドリングストップ装着車と比べても短い印象で、もうちょっと長くして欲しいと思った。 また、最近の国産CVT車全般に言えることだが、ブレーキング中に停止直前で制動力が変化すること。燃料噴射を出来る限り止めて、燃料消費を抑えるという意図は分かるが、もう少し自然であって欲しい。 自動ブレーキなどの先進安全装備が見送られたこと。トヨタは現在、低価格車に普及している衝突回避・被害軽減ブレーキ(ほとんどは30km/h以下で作動)よりも高い速度域で作動するシステムを2015年に向けて開発中とのこと。なるほど確かに30km/h以下でしか作動しないシステムは有効性に疑問が残るところではあるが……。
 
試乗車のナビ・オーディオは音量調整もタッチパネルで行う。操作性は正直いまいち
販売店オプションの純正ナビ・オーディオ(G-BOOK mX Proモデルで24万5160円もする)は、操作性がいまいち。全てタッチパネル式で、音量調整やミュートがしにくい、ラジオ周波数のチューニングや新規登録がしにくいなどの点が気になった。いまだにカセット、CD、ガラ携の方はフラストレーションが溜まるかも。オプション選択時にはご注意を。 標準車の外観デザインはまとまっていると思うが、女子に訴えるべき+Hanaは、日産マーチを意識したのだろうか、ちょっと男子には良さが分からない。また、このボディ形状でルーフをホワイト(シンジュパールマイカ)にするのは、あまり似合わないと思う。手頃なコンパクトカーとしてバランスよく出来ているだけに、あとはMINIやフィアット 500に対抗できる魅力的なデザインがあれば大ヒットも夢ではないと思うのだが。 内装も機能的で悪くないが、雨染みがついたようなドアインナーパネルは今回も継承された。好評だったのなら、やはり我々のセンスに問題があるということか。

総合評価

軽と比べても意外に高くない

本来パッソは打倒軽自動車という立ち位置のクルマだった。その軽自動車を今ではトヨタディーラーも売っているのだが、そんなトヨタの軽を街中で見ることはほとんどない。あるいは気がつかないだけか? パッソと同じトヨタディーラーで売られている軽乗用車といえば、ピクシス エポック(ミラ イースのOEM)とピクシス スペース(ムーヴ コンテのOEM)だ。 ではトヨタユーザーが、トヨタディーラー(カローラ店)でパッソにしようか、軽にしようかと思った時、性能的にはピクシス スペースのターボ車(カスタムRS)が検討されるだろう。NAの軽ではリッターカーのパッソに動力性能で見劣りするからだ。ピクシス スペースの車両価格は153万7715円で、JC08モード燃費は24.0km/L。試乗車のパッソだと129万3055円で、モード燃費は27.6km/L。装備はピクシス スペースの方が充実しているが、それでもパッソの方が圧倒的に安く、モード燃費もいい。また、購入時の値引き情報に詳しい某誌のデータでは、値引きもパッソの方がいいようだ。
 
トヨタ ピクシス スペース
一方、自動車税は1リッターエンジン車の年間2万9500円に対して、軽乗用車は7200円と圧倒的に安い。そのことが日本で軽が売れている理由の一つだ。他に、任意保険料や車検費用(重量税など)、パーツ代なども軽の方が安いので、トータル維持費では軽に軍配が上がるかもしれない。とはいえ軽の上位モデルと比べると、パッソの場合は意外に高くないのが分かる。となると、トヨタの軽があまり走っていないのも納得できるところか。その意味では今でもパッソは、iQを除けばトヨタ最小のクルマということになるだろう(iQが今やキワモノ扱いになってしまっているのはザンネン至極)。

「女子の足」としてなら十二分

ところで、軽だけは乗らない、乗らせないという人は今でもけっこう多く、そういう人がこのクルマの存在を支えていると思う。例えば年頃の娘にコンパクトなクルマを買ってやろうというお父さんなど、普通車なら軽より安全なはず、と思っている人は少なくない。それは大いなる幻想だと思うし、パッソには衝突回避・被害軽減ブレーキも今のところ設定されていないのだが。そしてそんなお父さんの背中をさらに一押しするのは、比較的安い車両価格と軽を上回る燃費性能だ。パッソはそうして月間5000台が売れることになる。 今回はエンジンが変わって、確かにモード燃費は一部の軽自動車を超えるところまで良くなった。それでいて軽のターボ車より感覚的には余力のある走りを実現しており、コンパクトカーとしてほぼ文句なしの一台になっている。キーンとした顔をしている昨今のトヨタ車と違って、ダイハツが作るせいか、おっとりとした和み系の顔つきなのも好感が持てるところ。実用上不満のない室内空間があり、+Hanaなら昨今のトレンドであるツートーン塗装も選べるので、「女子の足」としてなら十二分なクルマだろう。 もちろん、考えてみれば登場からすでに4年経ち、昔ならフルモデルチェンジの時期。4年前のモデルゆえ、ハードウエア的にはちょっと古臭い部分もないとは言えない。ただ、今後も「日本の女子向けコンパクトカー」というスタンスに甘んじるのであれば、全面改良でシャシーをこれ以上良くするなど、もはやあまり意味のないことかもしれない。実際に走ってみても、このクラスとしては特に不満などない。つまり目的に沿った小型車としてはマイチェン前でもまずまず完成しており、今回はさらに燃費も良くなった。初代パッソも6年のインターバルでフルモデルチェンジしているので、今の2代目も今回エンジンを新たにしたことで、これからまた2年売られるのだろう。

トヨタだからこそ、突き抜けて欲しい

ただ、厳しい規格の中で考えつくされ、作り込まれた昨今の軽自動車と比べると、なんとなくルーズというか、緊張感が感じられないという印象も一方ではある。軽自動車という出来すぎなほどのコンパクトカーがあるがゆえだ。また、日本国内の足としてなら十分と言えるクルマだが、欧州製コンパクトカーなどに乗ったことがある人には、凡庸な印象を与えてしまうのはちょっと残念。そこの部分の位置づけが難しいのは分かる。分かるが、そこを突き抜けて欲しい。 先日、トヨタは燃料電池車(FCV)の市販化を発表した。ハイブリッド車で世界に先行したように、FCVでも他をぶっちぎるつもりなのだろう。ちなみにEVは今のところ航続距離や充電インフラなどの点で買う気になれないが、FCVはかなり欲しいと思っている。世界最先端のクルマを世界で最初に出すあたり、さすがはトヨタ。そんな最先端のクルマづくりをしているトヨタの、一番ベーシックなクルマがパッソだ。だからこそデザイン、走りの質感、内装の質感などで、明らかに軽を超えた魅力が欲しい。意欲的に作られたiQが販売で苦しんでいるという現実を乗り越え、多分2年後には出るだろう次期モデルでは、小さかろうと、ガソリン車だろうと、さすがはトヨタという意欲的なクルマを見せて欲しいものだ。
 

MINI 刈谷が愛知県刈谷市にオープン:MOTOR DAYS ピックアップニュース

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名古屋市を中心に輸入車正規ディーラーを運営するホワイトハウスは2014年7月5日、同社のMINI正規ディーラーとしては7店舗目となる「MINI 刈谷 / MINI NEXT 刈谷」を愛知県刈谷市に新規オープンした。 刈谷市はデンソー、アイシンなどの本社が集まる、自動車産業の中心地。ショールームは自動車ディーラーが立ち並ぶ国道155号線沿いにあり、幹線道路である国道23号線からもアクセスしやすい場所にある。
 
ショールーム内には4台のMINIが展示可能で、MINI HUBと呼ばれるラウンジスペースや、顧客への新車引渡し専用スペース「ハンドオーバーエリア」も設置。サービス・ワークショップは4基のサービスベイや車検ラインを備える。また、敷地内には認定中古車を取り扱うMINI NEXT 刈谷も併設されている。 ホワイトハウスグループのMINI事業は、2002年にMINI 名古屋名東、MINI 名古屋守山、MINI 岡崎の3店舗でスタート。2012年には認定中古車を扱う独立店舗のMINI NEXT 岡崎を、2014年春にはMINI 千種と、独立店舗のMINI NEXT 名古屋名東をオープンするなど、MINI事業の拡充を進めている。今回のMINI 刈谷のオープンによって、同社は東名古屋の一部から西三河エリア、知多半島エリアをカバーすることになる。
 
■MINI 刈谷 / MINI NEXT 刈谷 ・住所:〒448-0044 愛知県刈谷市池田町2丁目203番地 ・ショールーム電話番号:0566-24-3298 ・ワークショップ電話番号:0566-24-5532 ・延べ床面積:1153㎡(全体)/ 227㎡(ショールーム) ・新車展示台数:4台 ・ワークショップベイ数:4ベイ ・定休日:毎週水曜日 ・ショールーム営業時間:10:00-19:00 ・HP http://kariya.mini.jp/
 
 

ダイハツ タント X “SA”:新車試乗記

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キャラクター&開発コンセプト

3代目に進化したスーパートールワゴンの先駆者

新型ダイハツ タント
ダイハツの軽乗用車「タント」は、2003年にデビューしたスーパートールワゴン。それまで軽の主流だったトールワゴンの上を行く、スーパートールというジャンルを切り拓いたパイオニアだ。2007年に登場した2代目では助手席側のBピラーをなくした「ミラクルオープンドア」を採用し、子育て世代の女性を中心に人気を得た。 今回試乗したのは、2013年10月3日に発売された3代目タント。新型では基本性能や安全性能を高めたほか、ミラクルオープンドアの使い勝手、室内の広々感、開放感をさらに追求。また、NAエンジン車ではミラ イースで培った低燃費技術を使い、JC08モード燃費28.0km/L(先代は25.0km/L)を達成している。

2014年上半期の販売実績は1位

初代タント(2003年)
販売目標台数(タントエグゼを除く)は月間1万2000台。ちなみに初代デビュー時の目標は5000台で、2代目デビュー時は8000台だったから、モデルチェンジの度に約1.5倍ペースで増えている計算になる。 新型のこれまでの販売実績は、3月の3万0686台をピークに、毎月2万台前後をコンスタントに販売し、昨年12月から6月まで軽自動車で連続1位となっている。 また、2014年上半期(1~6月)の販売台数は13万5688台で、普通車を含む新車乗用車(通称名別)で1位となった。2位以下は、アクア(12万3637台)、フィット(12万1764台)、プリウス(10万3974台)、日産デイズ(9万8789台 ※デイズルークスを含む)となっている。
 
2代目タント(2007年)
■過去の新車試乗記 2代目ダイハツ タントカスタム (2008年3月) 初代ダイハツ タント (2003年12月) ■外部リンク ・ダイハツ>プレスリリース>「タント」フルモデルチェンジ(2013年10月3日)※PDF
 

価格帯&グレード展開

120万3429円からスタート。ターボは141万9429円から

遅れて追加された標準車のターボ(タント Xターボ)。専用メッキグリルやフォグランプを装備
従来通り、大人しいデザインの「タント」(120万3429円~)、精悍な印象の「タントカスタム」(151万2000円~)の2本立て。ミッションは全車CVT(無段変速機)で、アイドリングストップも全車標準になる。 エンジンは自然吸気(52ps、6.1kgm)と、今回DVVTの採用や圧縮比アップ(9.0→9.5)などの改良を受けたターボ(64ps、9.4kgm)の2種類。ターボ車は発売当初、タントカスタムだけだったが、すぐに普通のタントでも選べるようになった。タントのターボは141万9429円から、タントカスタムのターボ(グレード名は「カスタム RS」)は162万5143円から。

全グレードに「スマートアシスト」(5万1428円高)を設定

タントカスタムは大型グリル、LEDヘッドランプ、LEDリアコンビランプ、リアスポイラーを装備。RS(写真)は15インチタイヤ(165/55R15)を履く
CMでおなじみの“スマアシ”こと、低速域衝突回避支援ブレーキ、誤発進抑制制御機能、先行車発進お知らせ機能、VSC&TRCをセットにした「スマートアシスト(SA)」は、全グレードに5万1428円高で設定。あと、スライドドアは下位グレードが手動で、中間グレードが左側電動(オプションで両側電動も可)、上位グレードは両側電動が標準になる。4WDは12万4457円高。 ボディカラーは、タントが全10色、タントカスタムが全7色。
 

パッケージング&スタイル

フロント部のパネルやバックドア等を樹脂製に変更

デザインは基本的にキープコンセプト。ある程度見慣れないと、先代(2代目)と区別がつかないが、見比べるとボディパネルやライト類などの立体感が強まり、全体的に質感も上がっているのが分かる。 技術面で面白いのは、ボンネット、フロントフェンダー、バックドア、フューエルリッド、レールカバーが樹脂製になったこと。従来の鉄製パーツに比べて、約10kg軽くなったという。また、フロントの外板が全て樹脂になったことで、歩行者保護性能もアップ。バックドアの樹脂化により、開閉が楽になっている。
 
全高(全車共通)は全高1750mmで、スペーシア(1735~1740mm)より少し高く、デイズルークス/eKスペース(1775mm)やN-BOX(1780~1800mm)より少し低いが、大差はない。 ホイールベースは、先代(2代目)タントや先代(4代目)ムーヴでは2490mmまで伸びたが、現行ムーヴ(2010年12月発売)や新型タントでは少し戻って2455mm。ちなみにスペーシアはもっと短かく、2425mm。現在、軽のFF車で最長のホンダ Nシリーズが2520mmだ。
 
水色が樹脂化されたパーツ。指で押すとボヨンと凹むので、それと分かる
側突対策で、助手席側ドア内には通常鋼板の3倍以上の強度を持つ超高張力ハイテン材製のピラーが内蔵される
真横からだと新旧の区別が難しい。新型はリアコンビランプが縦型になった
 

インテリア&ラゲッジスペース

視界良好、乗り降り良好

先代のインパネも立派だったが、新型ではさらに質感が上がった印象。また、センターメーターが継続採用されているのも嬉しいところ。センターメーターはドライバーから離れる分、見にくくなる場合もあるが、タントの場合は文字を大きくすることで視認性を確保している。
 
ミラクルオープンドアのインパクトは大。室内高は小学4年生の平均身長と同程度
そして相変わらず見晴らしも抜群。ダイハツによれば、普通に運転姿勢をとったまま、車体の周囲30センチ圏内に立つ高さ1メートルのポール(6歳児の身長に相当)を直視できるとのこと。助手席側のサイドミラーには、左後方の死角を映すサイドアンダーミラーも付属している。 室内の広さも圧倒的で、ドライバー頭部からフロントガラスまでのヘッダ距離は、先代より12cm増えて87cmとなり軽で1位。ヘッドクリアランスも先代比2cm増しの23cmで1位、カップルディスタンスも112cmで1位とのこと。
 
助手席シートのショルダー部には後席への出入りで便利な乗降グリップ付
助手席の前後スライド幅は先代より10cmも増えて38cmになった
後席は前後に24cmスライドする。格納式ドアサンシェードも装備
 
後席を格納すれば、普通自転車も積載可能とのこと(けっこうギリだが)
後席はスライド位置を後端にし、座面下のストラップを引っ張ると、ダイブダウン格納できる
全車スペアタイヤレスで、床下にパンク修理キットを搭載する
 

基本性能&ドライブフィール

パワーはギリギリだが、女子ならちょうどいい?

ボンネットは樹脂製(量産実用車ではかなり珍しい)。フロントフェンダーも樹脂製になる
試乗したのは自然吸気エンジンの「X」の“スマアシ”付き(X “SA”)。売れ筋グレードの一つで、車両本体価格は約140万円。 道路に出て、さっそくアクセルを踏み込めば、低・中回転域を使って、やんわりと加速。CVTにありがちなスリップ感はあまりなく、エンジン音やCVTのベルトノイズもよく抑えられている。ただ、動力性能はギリギリという感じ。自然吸気エンジンの場合、最高出力は52ps/6800rpm、最大トルクは6.1kgm/5200rpmで、車重はムーヴより100kg以上重930kg。パワーウエイトレシオは17.9kg/psとけっこう厳しい数値になる。
 
とはいえ、多くの女性、特に子育て中の女性目線で言えば、これくらいがちょうどいい、かも。実際、通の流れに乗れないようなことはないし、アクセルをべた踏みにしてもスピードが出過ぎる心配はない。 ただ、上り坂では明らかに駆動力不足を感じる。新採用の登坂変速制御により、登坂路ではエンジン回転を高めに維持するらしいが、実際のところ、絶対的なパワー不足をカバーするには至らない。東京都心などにある勾配10%以上の急坂(名古屋にもけっこうある)では、アクセル全開で登っていくことになる。もちろん、そこが車道であれば、登れない坂はないが。 それでも、エンジンを高回転までワンワン回す感じではないので、遅さに慣れれば、ある意味、平和。確かに子供と一緒なら、これくらいがちょうどいいのかも。

クランキング音が静かに。スマアシの効果も実感

アイドリングストップは全車標準。新型タントの場合は、走行中でも9km/hから停止する制御で、確かに止まる直前でエンジン音がすっと静かになる。嬉しいのは、ダイハツ車の弱点でもあったエンジン始動時のクランキング音が、ぐっと静かになったこと(ダイハツによればクラストップレベルになったという)。再始動も素早いので、アイドリングストップしていることはほとんど意識に上らない。 なお、試乗した日は気温が30度Cを超えるような蒸し暑い日だったが、タントではエンジン始動時に、エアコンが自動的に内気循環に切り替わるせいか、アイドリングストップ中でもあまり暑さを感じなかった。 また、スマートアシストの低速域衝突回避支援ブレーキ機能は、他社のものより積極的に作動するタイプ。試すつもりはなかったが、何度かピピッと警告音が鳴り、自動ブレーキが作動しかけるところまでいった(アクチュエーターが作動するのが分かる)。また、同じくレーザーレーダーを利用した先行車発進お知らせ機能も積極的に作動。前のクルマが発進していなくなると、ピピッと警告音を鳴らすもので、基本的にはアテにするものではないが、これはこれで便利。

操縦安定性は意外に良好

タイヤは155/65R14で、ダンロップのエナセーブ EC300(イーシーサンマルマル)
感心したのが、運転感覚や視界がかなり自然なこと。初代タントでは無闇に天井が高く、窓も無闇に大きくて、金魚鉢の中にいるような不自然さがあったし、走行中にグラグラ揺れる感じも気になったが、そのあたりは2代目でずいぶん改善され、この3代目でほぼ解消されている。もちろん、後発のライバル車もその辺はしっかり押さえているのだが。 ワインディングでの操縦安定性も、見た目から想像できないほどちゃんとしている。ステアリングを意図的に速く切り込んでもグラっとならず、自然に旋回。さらにプッシュすれば、スアマシ装着車にセットで付いてくるVSC&TRCがいい感じで介入し、過大なアンダーステアや唐突な挙動を防いでくれる。 こういった操安の良さは、エントリーグレードを除いて全車標準になったフロントスタイビライザーや、全てのFF車に標準装備になったリアスタビライザー、それにボディ剛性のアップなどで、いわゆる「ロール剛性」が高まったおかげ。ダイハツによれば、操安性や乗り心地はムーヴやミラ イース並みとのこと。確かに日常的な速度域での走りは、とてもバランスよくまとまっている。

高速道路は80km/hで走るのがベスト

一方、高速道路では、速度域で大きく印象が変わってくる。走行車線を80km/h巡航する分には、エンジン音も静かで、乗り心地も悪くない。燃費もかなり良さそう。 ただ、それ以上の速度域になると、速度に比例して深いアクセル開度が必要になり、結果としてエンジン回転が高まり、同時に風切り音も高まり、足回りのバタつきも増えてくる。いろんな面で100km/hまでの公道ベストならぬ法定速度ベストで考えてある感じ。性能的には120km/h巡航も可能だし、最高速も130km/hくらいは出ると思うが。 ちなみにCVTの変速比は3.327~0.628(5.298倍)で、ホンダ N-BOXの5.46倍とは大差ないが、スズキや日産/三菱が使うジヤトコ製副変速機付CVTの約7.28倍とは大きな差がある。このレシオカバレッジの狭さがタント(自然吸気モデル)の場合、パワー感や高速域での静粛性・燃費性能でハンディとなっている感じはある。

試乗燃費は13.5~17.3km/L。JC08モード燃費は28.0km/L

今回はトータルで約160kmを試乗。試乗燃費(車載燃費計)は、いつもの一般道、高速道路、ワインディングを走った区間(約90km)が13.5km/Lで、奇しくも前回のトヨタ パッソ(ダイハツ ブーン)とまったく同じだった。また、主に一般道と高速道路(80~100km/h)をエコ運転で走った区間(約40km)は17.3km/Lだった。 印象としては60~80km/h程度で穏やかに走れば、好燃費が期待できるが、高速域は伸びなくなってくる。と言っても、やはりパワーが絶対的に少ない分、燃料消費も絶対的には少ないのだが。 なお、自然吸気モデルのJC08モード燃費は28.0km/L(ちなみにパッソ 1.0は27.6km/L)。タンク容量は30リッターだ。
 

ここがイイ

日常域に的を絞った製品作り。スマートアシストの全車設定

小さな子供、あるいは高齢者のいる家庭の、日常の足として徹底的に作りこまれたパッケージングやユーティリティ、そしてファミリーカーらしい穏やかな内外装デザイン。走る、止まる、曲がるといったクルマの基本性能も、毎日の行動半径が十数km以内に収まるような使い方なら全く問題ないレベルにまとめられている。これまでも日常ユースに的を絞ったクルマはあったが、新型タントは完全に日常、そして近所での移動に焦点を定めており、しかもその範囲において、完成度が恐ろしく高い。まさに目標直撃型の製品。売れているのもよく分かる。 自然吸気モデルの場合、いわゆる「クルマ」として見ると、動力性能の低さは否めないが、子供を乗せて運転する女性が不満なく乗れるレベルの性能や快適性をキープしているのは、ある意味見事。また、ボディ剛性のアップ、外板樹脂化による軽量化、サスペンションの改良など、エンジニアリング的にも、見るべきところは多い。こんな風に開発費をつぎ込めるのも、売れているクルマゆえだろう。 今ではパレット、N-BOX、デイズルークス/eKスペースといったフォロアーが登場しているが、そこで俄然、武器となるのが先代から採用されたミラクルオープンドア。先代登場時にはそこまでやる必然性はないように思えたが、ここに来て、それは有無を言わせない差別化アイテムとなっている。必要かどうかはともかく、とりあえず「これがあったら便利かも」と買い手に思わせる装備は強力。 スマートアシストは、低速での自動ブレーキや先行車発進お知らせ機能、誤発進抑制制御機能、さらにVSC&TRCなどもセットで、5万1428円というバーゲンプライス。どれも普段から頼りにすべき装備ではないが、一回でも事故を防げれば、それで元がとれる。絶対に装着すべき。

ここがダメ

NAモデルの動力性能

自然吸気エンジン車の場合、動力性能は遠出にはちょっと厳しいレベル。山間部や高速道路を走る機会、あるいは毎日の走行距離が多い人には、ターボ車をお勧めしたい。 静粛性や乗り心地に関しても、60~80km/hくらいまでなら問題ないが、それ以上になると動的質感が物足りなくなってくる。確かに合法的な範囲では問題ないわけだが、これをよしとすると、これまでのクルマの進化は何だったんだということにもなり、心境としては複雑なところ。 試乗車に装着されていた6.2インチディスプレイのスマホ連携メモリーナビ(8万3160円のメーカーオプション)は、フリック操作やピンチ操作が可能な最新型だが、他のメーカーオプションナビ同様、それらの操作は走行中は不可。また、画面の反応もいまいちで、最新スマホやタブレット並みとはいかない。

総合評価

使い勝手において、まさに究極の軽

軽自動車は、基本的には日本国民のためのクルマとして生まれ、育ってきた。現在、新車販売の4割を占めていることは、その結果と言ってもよく、あまりお金のかからない生活の足として日本人のインフラそのものとなっている。特にトール系ワゴンは、その占有面積から考えると驚くべき室内空間を持つだけでなく、街乗りから高速走行までNAエンジンでもほぼ不満なく走れるようになっている。 そんな軽自動車の中で、現在一番売れているのが、この新型タントだ。いや、軽の中でどころか、2014年上半期の車名別新車販売台数では、堂々の一位。今や日本一売れているクルマである。同じ占有面積なのに、トール系よりさらに広い室内空間や、軽で唯一ミラクルオープンドアという秘密兵器を持つこのクルマは、その使い勝手において、まさに究極の軽と言ってもいいだろう。 実際、そのパッケージングは見事と言うしかないし、2代目で登場したミラクルオープンドアは3代目ではさすがに諦めるのでは、と言われていたが、装備したまま先代の様々な弱点を解消したことは、日本の(ダイハツの)技術の勝利だろう。世界のどこにもこんなクルマはないのだから。ジャパンオリジナルそのものだ(いまのところ日本でしか通用しないガラパゴス車でもあるが)。決められた枠の中で、究極を追求するのがうまいという、まさに日本の匠技を象徴するクルマでもある。 さらに今回はアイドリングストップ機能や自動ブレーキといった装備の、いわゆる「全部入り」も用意された。こうした環境・安全への取り組みは素晴らしいと絶賛しておきたい。乗った時の金魚鉢に入っている感覚もなくなったし、走りながらボディを振っても、ぐらりと揺れることもなくなった。インテリアの質感は高いし、センターメーターの視認性を含めて運転席での使い勝手は抜群にいい。広さだけでなく、こうした部分が3代目の良さだろう。

「走る軽なんか別にいらないよ」というニーズ

ただ動力性能についてはずいぶん割り切ったなとも思う。というのも、本文の通り、あまりに走らないのだ。このパッケージングや装備だと、車重はこれ以上軽く出来ないが、かといって走りを追えば燃費は悪化する。となれば一番使われる速度域に特化させようという結論になったのだろう。このクルマの場合、日常のタウンユースが大半と思われるゆえ、低速域ではそれなりにトルクフルに感じられるが、高速側は本当に必要最低限の性能を残しただけ。ゆえに感覚的なギャップが大きい。高速道路では、まるで制限速度80km/h時代の軽に戻ったようで、長い上り坂では一人乗りでも100km/hを維持するのが難しい。この動力性能は、まさに割り切った、というしかなく、「もうNAで十分」とはとても言えない。エアコンも同様で、本来クルマとしては外気導入がデフォルトであるべきだろう。しかし、内気循環をデフォルトにしてアイドリングストップ時の室温変化を抑えている。ここもある種の割り切りだろう。 とはいえ、ここまで割り切った走りでも売れるということは、コモンセンスとしてはこれでいいということなのだろう。昨年、日産デイズのNAに乗った時もパワー不足を感じたが、デイズ/eKの場合は希望すれば制御プログラムの書き換えをディーラーが行ってくれるようだ(なお、すでに現行デイズは7月に、eKは6月にマイナーチェンジしている)。しかし、書き換えを求めるユーザーは多くないとのこと。周知が徹底していないだけかもしれないが、軽の走りはこんなものと思っている人、あるいはこれで文句ないという人が多いということなのだろう。これまでどんどん良くなってきた軽自動車を高く評価してきただけに、日本一売れているクルマだけど走りはこんなものだよ、と思われてしまうのは、なんかものすごく悔しい気がする。
 
とはいえ、走る軽なんか別にいらないよという人々がものすごくたくさんいるわけで、そうした世の中のニーズに適確に応じた、ダイハツのマーケティングの勝利だろう。これではちょっと、という人のためにはターボ車が用意されているわけだし。標準モデルでもターボ車が用意されているのは、そういうことなのだろう。つまり軽自動車として理想的な一台を求めるのではなく、ニーズに応じて様々な性能から選ぶ時代に、軽自動車も入ったということか。ダイハツは軽で最高燃費性能を更新したミライースとか、オープンスポーツのコペンとか、まったく異なる性格の軽も出して、まさに目的別に作り分けられた軽をラインナップしている。タントに関しては走りよりスペースという作りで結果的に大成功を収めた。こうした展開は今後、他のメーカーにも広がっていくのだろうか。 付け足しだが、このクルマで高速道路を走るときは、マナーを守ってほしいものだ。追い越し車線は追い越し時以外には走らないというマナーだ(というか法規。知り合いの女子はその昔、追い越し車線を法定速度内でずっと走るのが違反だと知らなかった)。それからきついと思った坂道では登板車線を走る、抜けないのに無理に追い越しをしないなどなど。サグ渋滞の原因にもなりかねないと思うので、そこはぜひ意識的に走ってほしいものだが、さて…。
 

日産 デイズ ルークス ハイウェイスターX Gパッケージ:新車試乗記

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キャラクター&開発コンセプト

日産・三菱ジョイントベンチャーの第二弾

デイズ ルークス(左)と同ハイウェイスター
2014年2月13日に発売された日産「デイズ ルークス」は、いわゆる“スーパーハイトワゴン”の軽自動車。「デイズ」(2013年6月発売)をベースに、全高を高くし、室内空間を拡げ、両側スライドドアを装備したモデルであり、三菱のeKスペースとは兄弟車の関係。日産にとっては2013年3月に販売終了となっていたルークス(スズキ パレットのOEM車)の後継車になる。 デイズ同様、企画と開発は日産と三菱の合弁会社である株式会社NMKV(2011年設立)が行うが、実際の設計・開発は三菱が担当し、生産も三菱の水島製作所(岡山県倉敷市)で行われる。基本的にはデイズ/eKワゴンと同様に、デイズ ルークス/eKスペースも同じクルマだが、一部の意匠、バッジ類、ラインナップ、装備設定などが異なる。

月販目標はデイズルークスが5000台、eKスペースが2500台

現在、軽自動車の市場は、ハイトワゴン(ワゴンR、ムーヴ、N-WGNなど)とスーパーハイトワゴン(タント、スペーシア、N-BOXなど)が大きく二分する状況。デイズに関しても、月販目標はデイズの8000台に対して、デイズ ルークスは5000台を設定。後者は発売一ヶ月で2万8000台を受注した。 また、デイズシリーズ全体の販売も好調で、2014年上半期(1~6月)の実績は9万8789台となり、軽の販売ランキング(通称名別)ではシリーズ合計でだが、タントに次ぐ2位となっている。 広告キャッチコピーは、「ようこそ、MOMをWOW!にする軽へ」。タントなどと同様、ターゲットは子育て中の女性がメイン。 なお、三菱 eKスペースの月販目標は2500台。eKシリーズ全体の2014年上半期実績は3万3701台となっている。

NMKVだけではない日産の軽自動車

日産 MOCO(写真は2013年10月のマイナーチェンジで追加設定された「ドルチェ」シリーズ)
最近まで自社製の軽がなかった日産は、スズキや三菱からOEM供給を受けており、2014年7月現在もスズキから、モコ(MRワゴン)、NV100クリッパー リオ(エブリイワゴン)、商用バンのNV100クリッパー(エブリイ)、軽トラのNT100クリッパー(キャリイ)のOEM供給を受けている。 なお、現在は三菱も、スズキからOEM供給を受けており、軽乗用ではタウンボックス(エブリイワゴン)、軽商用ではミニキャブバン(エブリイ)、ミニキャブトラック(キャリイ)、普通車ではデリカD:2(ソリオ)がスズキ製になる。
 
こちらはデイズとデイズ ハイウェイスター
■過去の新車試乗記 日産 デイズ ハイウェイスター G (2013年7月)
 

価格帯&グレード展開

127万5480円からスタート。ターボ車はハイウェイスターのみ

全車ジヤトコ製副変速機付CVTで、エンジンは自然吸気(49ps、6.0kgm)とターボ(64ps、10.0kgm)の2種類。 計6グレードで、エントリーグレードの「S」(127万5480円)、中間グレード「X」(137万7000円)、「ハイウェイスターS」(149万9040円)、「ハイウェイスターX」(156万8160円)、「ハイウェイスターX Gパッケージ」(164万0520円、試乗車)、そしてターボ車の「ハイウェイスター ターボ」(178万4160円)というラインナップ。4WDは11万7600円高。
 
日産 デイズ ルークス ライダー
また、日産の関連会社であるオーテックジャパンは、ハイウェイスターベースのカスタムモデル「ライダー」(173万0160円~)を用意している。 ボディカラーはモカブラウン(試乗車)など全8色。デイズシリーズ専用色としてアゼリアピンクなどがあるが、eKシリーズと共通するカラーも多い(カラー名称は全て異なる)。
 

パッケージング&スタイル

ハイウエイスターが主力

ボディ外板やライト類は、eKスペースと基本的に共通。逆にデイズ ルークス専用になるのは、フロントグリル、バンパー、バッジ類など。デザイン開発は、まず日産と三菱がスケッチを出し合い、それをベースに三菱のデザイン部門がブラッシュアップして、それぞれを作リ分けるという具合に、実作業は三菱側で行われている。
 
eKスペースのカスタムにはデリカD:5のようなフロントグリルが備わるなど、標準車とカスタムでかなり雰囲気が違うが、デイズ ルークスの場合は、標準車とハイウェイスターで大きく印象が変わらない。それでも後者には、LEDポジショニングランプ付ヘッドライト(ディスチャージ標準)、大型バンパー、エアロパーツ等が装備される。

全高1775mmは、室内高1400mmのため

全ピラーをブラックアウトした「グラスラウンドキャビン」、ウエストラインが後端でキックアップする「シュプールライン」などが外観の特徴
全高はデイズ/eK(1620mm)より155mm高い1775mm。これをライバル車と比較すると、低い方から、スペーシア(1735~1740mm)<タント(1750mm)<デイズルークス/eKスペース(1775mm)<N-BOX(1780~1800mm)という順になる。デイズルークスの全高が比較的高めなのは、室内高でクラストップ級の1400mm(N-BOXと同値)を実現するためだ。 ホイールベースは2430mmで、こちらもライバル車と比較すると、短い方からスペーシア(2425mm)<デイズルークス/eKスペース(2430mm)<タント(2455mm)<N-BOX(2520mm)という順。ちなみに、軽自動車で史上最もホイールベースが長いのは三菱 i(2550mm)だが、現在はEVのi-MiEVしか販売されていない。
 

インテリア&ラゲッジスペース

センタートンネルの張り出しがやはり気になる

写真はエボニー内装のハイウェイスター。標準車はアイボリー内装
ファインビジョンメーターやタッチパネル式オートエアコンなど、デイズと共通の意匠は多いが、ダッシュボードは新規。広々感を演出すべく、ダッシュ上面はデイズより低く、フラット化。フロントウインドウの角度も立てられ、Aピラーはこのジャンルの定番である松葉のような2本タイプになっている。ただ、交差点での右折時には、意外に右Aピラーが視界のジャマになる。
 
前席の着座位置はデイズより約30mm高い。チルトステアリング&シートリフター(ダイアル式)は全車標準
また、運転席で気になるのは、ベースとなったデイズ/eK同様に、センタートンネルが張り出していて、左足の置き場がないこと。これは三菱 i 譲りのエンジンを後方排気で搭載するため、エグゾーストや触媒のスペースが必要だからだ。 室内長(インパネから後席ヘッドレストまで)は、あくまでカタログ値によると、デイズルークス/eKスペース(2235mm)がクラストップなのだが、何となく前席(特に助手席)に関してはライバル車よりタイトに感じられる。

室内高はクラストップの1400mmを確保

後席の前後スライド量はクラストップの260mm。窓にはスペーシア、タントに続いてロールサンシェイドを採用
スーパーハイトワゴンで期待される室内高は、タント(1365mm)<スペーシア(1375mm)<デイズルークス/eKスペース=N-BOX(1400mm)の順で、ここでもデイズルークスがクラストップだが、感覚的にはここも各車ほぼ横並び。むしろタントの方がなぜか広く感じられたりする。 また、乗降性の指標となるリアスライドドアの開口幅は、デイズルークス/eKスペース=スペーシア(580mmmm)<タント(605mm ※助手席側)<N-BOX(640mm)の順で、タントとN-BOXがリードしている。特にミラクルオープンドアを持つタントは、この項目では強い。
 
後席を一番後ろにすると、かかとが座席下に当たってしまう
デイズルークス/eKスペースは、後席の前後スライド量をクラストップの260mmとし、運転席から後席の子供に手が届くように出来るのが売り。ただ、後席を一番後ろにスライドすると、座った時にかかとやふくらはぎが当たるので、実際には中間位置がベターだ。

ルームミラーに周辺モニター、天井にサーキュレーターを採用

日産お得意のアラウンドビューモニター。小さくて少々見にくいが、主力グレードには標準装備
日産らしい装備は、デイズに続いて採用されたアラウンドビューモニター(三菱での名称はマルチアラウンドモニター)。ナビ装着車以外でも装備できるように、ルームミラーに表示するタイプで、下位グレード(SおよびハイウェイスターS)を除いて標準装備される。純正ナビ装着車であれば、ナビのモニターにも表示できる。 もう一つの目玉は、天井に据え付けられた「リヤシーリングファン」(三菱での名称はリヤサーキュレーター)。エアコンで冷えた前席周辺の空気を後席に送るためのもので、まぁ言ってみればエアコンと併用する扇風機のようなもの。こちらもSおよびハイウェイスターSを除いて標準装備になる。
 
リヤシーリングファン(三菱名はリヤサーキュレーター)。手動ながら3段階で調整できる (photo:日産)
このリヤシーリングファンにより、後席乗員の体感温度は、後席ロールサンシェードとの相乗効果で、最大4度Cほど下がるとのこと(外気温35度C、室温28度C、エアコン風量Mid、リヤシーリングファン風量Highの場合)。

荷室開口部の広さは平均的

後席は背もたれを倒すと自動的にロックが解除され、座面ごと持ち上がり、足元に格納できる。ちょっとしたコツが必要
各モデルの方向性を示しているのが、荷室まわりの数値。特に家具など大物の積みやすさを左右する荷室開口部の数値は以下の通りで、高さ方向で優秀なのはスペーシアとN-BOXだ。逆にミラクルオープンドアを持つタントは、この項目では無理に勝負していないのが分かる。デイズルークス/eKスペースは平均的だが、やや開口部(敷居)やフロアが高めの印象。カタログ写真のように、一般的な27インチ自転車(車輪が簡単に脱着できないタイプ)を積むのは、実際にはけっこう大変だろう。
 
スペアタイヤはなく、全車パンク修理キットを標準装備する
■荷室開口高(小→大):タント(1045mm)<デイズルークス/eKスペース(1080mm)<スペーシア(1110mm)<N-BOX(1200mm) ■荷室開口幅(小→大):N-BOX(1055mm)<タント(1080mm)<デイズルークス/eKスペース(1090mm)<スペーシア(1130mm) ■荷室開口地上高(低→高):N-BOX(480mm)<スペーシア(535mm)<タント(595mm)<デイズルークス/eKスペース(600mm)
 

基本性能&ドライブフィール

NAモデルのパワーウエイトレシオは約19.4kg/ps

試乗したのは自然吸気モデル(NA)の最上グレード「ハイウェイスターX Gパッケージ」(車両本体 164万0520円)。エンジンはNAだが、15インチタイヤ&アルミホイールなどの外観や、細々した快適装備はハイウェイスター ターボ(178万4160円)とほぼ一緒というモデル。 エンジンは基本的にデイズと同じで、三菱 i (エンジン車は2013年に販売終了)のエンジンをFF向けに転用した直列3気筒DOHC「3B20」型ユニット。NAの場合は、49psと6.0kgmを発揮する。同じNAでも、N-BOX(58ps、6.6kgm)、スペーシア(52ps、6.4kgm)、タント(52ps、6.1kgm)と比べると、ピークパワーでは水を開けられている。車重はデイズより約100kg重い950kg(試乗車)で、パワーウエイトレシオは約19.4kg/ps。発売当初のデイズ/eKのNAモデルは明らかにパワー不足だったこともあり、これではいかにも苦しい感じがする。

最終減速比ローギアード化や「バッテリーアシスト」で動力性能を確保

しかし、そこは日産/三菱側も把握しており、デイズルークス/eKスペースではしっかり対策。まず、NAモデルでは、初期デイズでは4.283だった最終減速比を4.575に変更(6.8%もローギアード化)。これで最終減速比は、スズキのスペーシア(4.572)とほぼ同じになった。 さらにエンジンは、吸気ダクトの設計変更やフリクション低減を行ったほか、減速エネルギーでニッケル水素電池に充電し、オルタネーターの負担を減らす「バッテリーアシストシステム」(三菱名はアシストバッテリー)を新採用するなど、大掛かりな改良を実施。なお、これらの改良は、この6月から7月にマイチェンした現行デイズ/eKにも実施済みだ。
 
実際のところ、これらの改良(特にギア比)は大きく、デイズ ルークスの体感的な動力性能は、先週乗ったタントのNAモデルと較べても互角か、少し上回るレベル。と言っても、五十歩百歩の違いではあるが、アクセルベタ踏みなら約6500回転までブン回り、それなりに元気に加速してゆく。 そして変速機はスズキの軽で定評のあるジヤトコ製の副変速機付CVT。変速比が4.007~0.550と超ワイドなので、発進時には低いギア比で駆動力を確保し、巡航時には高いギア比でエンジン回転数を落とし、燃料消費や騒音を抑える。穏やかに発進した場合は、副変速機がハイ側に切り替わる時に、ガクンと加速感が鈍るのが気になるが、大人しく走れば、1500~3000回転の範囲で粛々と走ることができる。 これでもう少しパワーがあれば、という人にはターボが理想だが、ハイウェイスター ターボだと178万4160円もしてしまうのが辛いところ。

乗り心地は良好。ただしロール感は大きめ

標準タイヤは155/65R14だが、ハイウェイスターのGパッケージ(試乗車)とターボのみ165/55R15
乗り心地に関しては、ライバル車と較べても悪くない。一方、ロールはけっこう大きめで、ステアリングを素早く切ると、けっこうグラっと来るタイプ(現行タントより明らかに大きく感じる)。試乗車の場合はターボと同じ15インチタイヤが踏ん張ってくれるため、不安な挙動は出ないのだが。 残念なのは、デイズ ルークスの場合、VDC(ビークルダイナミクスコントロール)がNAモデルには装備されないこと(ターボ車には標準装備)。eKスペースでは、NAモデルでも標準車のエントリーグレードを除いて標準装備なのだが……。ライバル車でもオプションないし標準装備だ。

高速道路では明らかにパワー不足

高速道路に関しては、まず本線に合流する時の加速がかなり緩慢。文字通り、put the pedal to the metal (床までアクセルペダルを踏み抜く)という感じで、速度計の針が上がっていくのを気長に待つ感じになる。 100km/L巡航は2500回転くらいでも可能と言えば可能だが、なにぶんパワーがないので、80~100km/h巡航でも、流れや勾配の変化に応じて2000~4000回転くらいの範囲で絶えず上下してしまう。また、エンジン回転数と車速がリンクしていないので、速度を一定に保つのが難しく、アクセル開度をかなり意識的に調整しないと、いつの間にか車速が落ちてしまう。思わずクルーズコントロールが欲しいと思ってしまった。 その気になれば、最高速は実質120km/Lくらいか。タントより頑張ってくれる感はあるが、実質的にはそう大差ないと思う。

試乗燃費は11.9~18.1km/L。JC08モード燃費は26.0km/L

今回はトータルで約230kmを試乗。試乗燃費(車載燃費計)は、いつもの一般道、高速道路、ワインディングを走った区間(約90km)が11.9km/L。また、主に一般道を走った区間(約60km)が13.3km/L、一般道をエコ運転で走った区間(約60km)が18.1km/Lだった。総じて、燃費に頓着せずに乗ると、だいたい12~13km/L台かな、という印象。 なお、JC08モード燃費(FF車)は、NAモデルが26.0km/Lで、ターボ車(アイドリングストップが付かない)は22.2km/L。ちなみにライバル車は、N-BOXが25.2km/L(ターボ車は21.6~23.4km/L)、タントが28.0km/L(ターボ車は26.0km/L)、スペーシアが27.8~29.0km/L(ターボ車は26.0km/L)。
 

ここがイイ

初期デイズからの進化。ライバル車と互角のシートアレンジ、快適装備など

昨年乗ったデイズと比べると、パワートレインなど多くの点で明らかに進化していること。詳しくは総合評価で。 素晴らしいスペース効率は、軽が今後、タウンコミューターとしてさらに理想的な乗り物に進化する可能性を示していると思いたいところ。そんなスーパーハイトワゴンの選択肢をルークスがまたひとつ増やしてくれた。これからの進化が楽しみだ。 スーパーハイトワゴンとしては、ひと通り揃っているシートアレンジ。自転車もとりあえず載せられる。また、前にも後ろにも引き出せる助手席シートアンダーボックスはいいアイデアで、ゴミ箱としても使えそう。助手席シートバックテーブルは3kgまでOKで、乳幼児用ドリンクマグ対応。タブレット端末も立てかけられるなど後席の子供にはウケが良さそう。大人にとっても後席テーブルは何かと便利なはず。 軽でありながら、リヤシーリングファンやロールサンシェード、オプションの後席専用モニターなどで、まさにミニバンライクな後席空間が得られる。友達の家のミニバンに乗った子どもが、「うちのクルマにもあるよ」と思えるのは重要。

ここがダメ

前席足元の狭さ。NAモデルにVDCがないこと。自動ブレーキの未採用など

本文でも触れたように、センタートンネルが出っ張っており、ドライバーは左足の置き場がない。また、ベンチシートは男性でも座面が前後に長過ぎるように感じられるほか、ダイアル式のシートリフターを使ってもフィット感が得にくい。 なぜかVDCがNAモデルに一切用意されていないこと。eKスペースの方はNAモデルでもオプション設定があるのだが……。いわゆる横滑り防止装置(ESC)は、軽自動車でも新型車への義務化が2014年10月から始まり(継続生産車は2018年2月以降)、すでにライバル車でもオプションないし標準装備化が進んでいる。実際、これだけ重心の高いクルマなので、高速域での緊急回避では冷やっとする挙動が出かねない。また。VDCは積雪路での走破性も高めてくれるというメリットもある。 同様に、軽でも当たり前になりつつある衝突被害軽減ブレーキは、オプションでいいからあると良かった。ライバル車が低速度域の衝突軽減ブレーキを格安でオプション設定しているのを見ると、ちょっと差を感じてしまう。日産自身、この7月から普通車のノートでフロントカメラ式の「エマージェンシーブレーキ」(クルマだけでなく歩行者も検知する)を無償で装備できるキャンペーンを始めている。軽であっても、というか軽でこそ、まずは「ぶつからない」クルマを目指して欲しい。
 
本文でも触れたように、ハイウェイスターでしかターボ車が選べないこと。ライバル車でも最近は標準車にターボを用意するのが普通になっている。ハイウェイスターのターボは車両だけで約180万円もしてしまうので、もう少し手頃な価格のターボ車が欲しいところ。 売りの一つであるリヤシーリングファンだが、今回のように外気温が36度Cにもなると、エアコン全開でも天井付近の空気は暖かく、当然ながら後席にも「温風」が送られてしまう。見た目がエアコンなので、つい冷たい風が出てくるのを期待しまうわけで、なんとかエアコンの冷気をここから出せなかったものか……。 流行りのタッチパネル式エアコンはやはり操作しにくい。温度調整するだけでも視線移動量がけっこう大きいので、走行中の操作には不安を感じた。これはタッチパネルを採用する他社の新型車も同様。 アラウンドビューモニターは「念のための確認」としては確かに便利だが、駐車時にはどこを見たらいいのか迷ってしまう。身も蓋もないことを言えば、バックモニターがあれば十分だと思う。

総合評価

わずか1年でずいぶん良くなった

先週のダイハツ タントに続いて、NAエンジンのスーパーハイトワゴンに乗ったわけだが、第一印象は、「なかなか走るし、ベース車のデイズに比べて、ずいぶん良くなっているな」というもの。ちょうど一年前に乗ったデイズの印象が「かなり遅いなあ」というものだっただけに、それより約100kg重くなったにも関わらず、わずか1年で「街乗りならこれでいいか」というところまで改良しているのは、たいしたものだ。さすが日本車だと思う。 なお、マイナーチェンジ前のデイズ/eKでも、希望すればパワートレインの制御プログラムの書き換えをディーラーが行ってくれるが、デイズは7月に(eKは6月に)マイナーチェンジしており、そちらはもう書き換えの必要はない(本文にあるようにNAモデルの最終減速比は6.8%もローギアード化され、全車にバッテリーアシストシステムも追加されている)。
 
JC08モード燃費は26.0km/Lで、昨年乗ったデイズ(当時29.2km/L、マイナーチェンジ後は30.0km/L)ほど良くはないが、今回の試乗燃費では昨年のデイズを若干ながら上回った。100kgも重くて、空気抵抗も増えて、しかもよく走るのに、実用燃費が悪くなっていないのは、ものすごい勢いで改良されている証拠だろう。 先週書いたように、タントは確信犯的に「走り」よりも、広さや独自のドア構造による使い勝手を重視している。また、ライバルとなるN-BOX、スペーシアは高速走行を含めて、走りでもそうとう頑張ってる。そこでデイズ ルークスはというと、高速での走りはちょっと辛いかなという感じで、やはり一般道での走りを重視したチューニングだ。 また、空間の広さに対する妙な違和感、左右に車体を振ったときのグラグラ感などは、ライバル車ではかなり解消されている部分であり、デイズルークスはやはりメーカー(日産・三菱)にとっての第1世代という印象が否めない。スズキにとって、このジャンルの第2世代モデルであるスペーシアなどは、デイズ ルークスより車重が100kgも軽いなど、やはり一日の長がある。

こうなると買いどきが難しい

いずれにせよ、車重が増えるスーパーハイトワゴンは、どのメーカーのモデルでもNAエンジンならタウンユース中心の利用がおすすめ、というのが現状だろう。とはいえ今後も「進化」を期待できるのが、このカテゴリーだ。現状は街乗りなら不満なしというところだが、これまでのように時を経るごとにどんどん良くなっていくはず。しかも今後はフルモデルチェンジではなく、短いサイクルのマイナーチェンジを繰り返すことによって変わっていくはずだ。デイズ ルークスでも、いずれはVDC装着車の拡大や、衝突被害軽減ブレーキの採用などが行われるだろう。こうなると、なかなか買いどきが難しいが。 ところでエクステリアについては、ツートーン塗装の用意があると、より女性に受けるのではと思う。ハイウェイスターは日産のアイデンティティともいうべきメッキグリルギラギラルックスゆえ、男性購入比率がかなり高そうだ。そこをアピールしたいのはよく分かるし、現実に売れてもいるが、さらに売れるためにはメインターゲットの女性にウケがいいツートーンなど、カワイイ系の強化が必要だと思う。ハイウェイスターではない標準車でもルックスはかなり男っぽい気がするのだが、いかがだろう。
 
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