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アウディ A3 スポーツバック 1.4 TFSI:新車試乗記

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キャラクター&開発コンセプト

ゴルフ7と同じMQBを採用

新型アウディ A3 (photo:アウディ ジャパン)
アウディ A3は、VWゴルフと主要メカニズムを共有するCセグメントカー。初代は1996年にデビューし、2003年には第2世代へ進化。2013年7月には累計生産300万台を達成したという。 そして今回、10年ぶりのフルモデルチェンジで登場したのが第3世代のA3。欧州では2012年秋に、日本では1年遅れの2013年9月17日に発売された。
 
プラットフォームはゴルフ7と共有。ホイールベースは先代より60mm伸びている
新型A3は現行の7代目ゴルフ(日本では2013年6月発売)と共に、VWグループの新しいモジュール戦略「MQB」に則って開発されたモデルで、プラットフォーム、パワートレイン、装備といった構成要素(モジュール)をゴルフなどと共有化。ホイールベースは先代より60mm拡大されたが、超軽量設計により車両トータルでは最大で60kg軽くなっている。燃費性能も向上し、JC08モード燃費では最高で20.0km/L(1.4 TFSI シリンダー オン ディマンド)を達成した。

3Gの通信モジュールを搭載。Googleアースの表示も可能に

Audi connectを搭載した新世代MMIを採用
新しいIT装備も、目玉の一つ。3G規格の通信モジュールを搭載した新世代のMMI(マルチメディアインターフェイス)ナビゲーションシステムを採用し、インターネット接続による情報サービス「アウディ コネクト(Audi connect)」を導入。これにより、市販車では日本で初めて車内でのWi-Fi接続を可能にしたほか、Google社が提供するGoogleアースやGoogleストリートビューの表示も可能としている。 ■過去の新車試乗記VW ゴルフ 7 (2013年8月)アウディ A3 スポーツバック 1.4 TFSI(2009年3月)アウディ A3 2.0 FSI スポーツ (2003年11月)
 

価格帯&グレード展開

308万円から、S3の544万円まで

アウディ A3 スポーツバック 1.8 TFSI クワトロ (photo:アウディ ジャパン)
日本仕様は5ドアのみで、ラインナップは以下の通り。エンジンは全て4気筒の直噴ターボで、1.4リッターが122psと気筒休止機構付の140psの2種類、1.8リッターで180psのクワトロ(フルタイム4WD)、そして2リッターで280psを発揮するS3 スポーツバックと、計4モデルがある。新型ゴルフにある1.2リッターはない。 ミッションは全車Sトロニックと呼ばれるDCT(デュアルクラッチトランスミッション)で、FFモデルが7速、クワトロが6速になる。

MMIは(S3を除いて)30万円のオプション

価格は308万円からだが、MMIナビゲーションシステム(30万円 ※S3は標準装備)や、衝突被害軽減機能(アウディ ブレーキガード)付のアダプティブクルーズコントロール(8万円)はオプション。それらを装備してゆくと、ゴルフ(249万円~。気筒休止機構付1.4リッターで299万円~)との差がどんどん開いてゆく。
 
車両協力:アウディ名古屋西
■A3 Sportback 1.4 TFSI  308万円 ※今回の試乗車 1.4 直噴ターボ(122ps、20.4kgm)+7DCT JC08モード燃費:19.5km/L ■A3 Sportback 1.4 TFSI with COD(cylinder on demand)  347万円  ※11月発売 1.4 直噴ターボ(140ps、25.5kgm)+7DCT JC08モード燃費:20.0km/L ■A3 Sportback 1.8 TFSI quattro  393万円 1.8 直噴ターボ(180ps、28.6kgm)+6DCT+4WD JC08モード燃費:14.8km/L ■S3 Sportback    544万円  ※11月発売 2.0 直噴ターボ(280ps、38.8kgm)+6DCT+4WD JC08モード燃費:13.9~14.4km/L
 

パッケージング&スタイル

デザインは見事にキープコンセプト

ボンネットやフロントフェンダーはアルミ製
約10年ぶりにフルモデルチェンジしたA3だが、最初は先代A3や現行A4と区別がつかなくて戸惑った、というのが正直なところ。見慣れてくるとそうでもないが、モデルチェンジでガラッと変える一般的なやり方とは対照的。ゴルフの場合、デザインを大きく変える、変えないを、一代おきに行う傾向があるが、今回のA3は「変えない」方向か。

外寸をキープしつつ、ロングホイールベース化

太いCピラーが特徴のゴルフに対して、大きく寝たリアウインドウやクォーターガラスの存在がA3“スポーツバック”らしいところ
全長は先代より35mm長いだけで、大差ないが、ホイールベースは60mm伸びている。プラットフォームを共有するゴルフ7と比べると、全長は60mmほど長いが、全幅は逆に15mmナロー。そんな数値通り、スタイリングは全体にスリークで、ゴルフより低くスポーティに見える。 試乗車はエントリーグレードで、16インチタイヤ(205/55R16)を履くが、上位グレードでは17インチ(225/45R17)を履くので、もうちょっと精悍さが増すはず。
 
 
    全長(mm) 全幅(mm) 全高(mm) WB(mm) 最小回転半径(m)
VW ゴルフ 7 (2013~) 4265 1800 1460 2635 5.2
アウディ A3(2013~) 4325 1785 1435~1465 2635 5.1
メルセデス・ベンツ Aクラス (2013~) 4290~4355 1780 1420~1435 2700 5.1
BMW 1シリーズ (2011~) 4335 1765 1440 2690 5.1
ボルボ V40(2013~) 4370 1785(1800) 1440 2645 5.2~5.7
トヨタ プリウス(2009~) 4460 1745 1490 2700 5.3
 

インテリア&ラゲッジスペース

デザインや作りはゴルフと全く異なる

試乗車はオプションでMMIナビ、パドルシフト、アドバンストキーを装備
インパネデザインはゴルフとはまったく違い、ダッシュボード上面は低く、全体的に複雑かつ微妙な造形でドライバーオリエンテッドになっている。一見、そう見えないところがデザインの妙。 そのダッシュ中央にはMMIナビの電動格納型7インチ液晶モニター(標準はナビ無しで5.8インチ)が突き出し、中段には最近流行りの?ジェットエンジン風エアコン吹き出し口が4つ並ぶ。今のTTにちょっと似た感じ。スイッチ類が少ないのは、MMIによって集約されているからだ。

【Audi connect】 3G通信モジュール搭載で、オンライン情報やGoogleアース等と連携

アウディのMMIは、走行中でも手元のコントローラーでブラインド操作が可能
話題のアウディ コネクトは、オプションのMMIナビゲーションシステム(64GBのSSDナビ)に、ソフトバンクの3G通信モジュールを搭載したもの。これによって、いくつかの情報サービス、例えばナビタイムが提供する天気予報、最寄りの駐車場、ガソリンスタンドとそのガソリン価格情報、そして読売新聞のニュースダイジェストなどが利用できる。
 
アウディ コネクトの各種情報コンテンツ
また、通常のナビ画面に代えて、衛生写真を使ったGoogleアースで地図表示もできる。これは日本での市販車では初。さらに、地図にアイコンが出るところに限られるが、Googleストリートビューの表示も可能になる。もちろん、こういったことはスマートフォンの方がより簡単に出来るわけだが、それが車載ナビとちゃんと連携するほか、MMIのコントローラーで走行中でも操作できるのが画期的な点。
 
地図表示をGoogleアースに切替えたところ。この状態だと施設情報は出ないが、ナビゲーションは普通にできる
最寄りのガソリンスタンドを価格の安い順に表示したところ。通販サイトみたい
新型のMMIコントローラー。ダイアル上の丸い部分はタッチパッドになっている

【Audi connect】 W-Fi接続はおまけ?

「設定」から「ネットワーク接続(Wi-Fi)」を選び(写真)、次の画面で「Wi-Fi設定」を選ぶと、ようやくアクセスポイント名やパスワードが表示される
アウディ コネクトのもう一つの売りは、日本で初めて、車内でWi-Fiによるインターネット接続を可能にしたこと。モバイル端末を8個まで接続できるという。ただし、利用できるデータ容量は月間400MBで、ヘビーなコンテンツを見るには心もない。Wi-Fi機能はあくまでオマケと思った方がよい。 なお、今回、手持ちのモバイル機器でWi-Fi接続を試みたところ、一般的な無線LANとは異なり、手動で車両独自のアクセスポイント名とパスワード(いずれも車両側の「Wi-Fi設定」画面に表示される)をモバイル端末に打ち込む必要があった。初心者が自力で設定するのは難しいかも。ちなみにデータ通信速度は、ネットワーク状態が「非常に強いレベル」で、下りが2.42Mbps、上りが2.22Mbpsと、一般的な3Gレベルだった。
 
アクセスポイント名やパスワードをスマホに入力する
通信費用は3年間無料。4年目以降の利用料はまだ決まっていないようだが(もちろん継続しないという選択も可能)、おそらくそう高額ではないだろう。
 
タッチパッドによって手書きで文字入力も出来るが、左手では難しい
Wi-Fiの通信速度を計測中
Google ストリートビューを表示したところ。地図上にアイコンが出た時のみ表示できる
 

ゴルフ譲りのパッケージング。作りは丁寧

エントリーグレード「1.4 TFSI」の標準ファブリックシート。オプションで電動レザーも選べる
着座位置は、このまま次期TTが作れそうなほど低く感じられるが、ダッシュ自体が低いので見晴らしは良く、頭や肩のまわりにも余裕がある。また、パワートレインを縦置きするA4と違って、センタートンネルの張り出しがなく、自然に左足が伸ばせるのが良い。 後席の空間はゴルフと大差ないが、荷室はゴルフに比べて1割ほど狭い。パーツなどは全くの別物で、ゴルフより丁寧に作りこまれている。MQBコンセプトは共通化というより、作り分けに有効なのかも。
 
荷室容量はゴルフ(380リッター)より1割少ない340リッター。最大1220リッター
フロアボードを上げると、左右のツメで自動的に固定される。スペアタイヤはなく、床下には小物スペースとパンク修理キット
後席はゴルフより頭上がややタイト。シート形状やドア開口部の形状も異なる。座面の下には蛍光色のエマージェンシーベストが入っていた
 

基本性能&ドライブフィール

1.4 TFSI(122ps版)は上品で穏やか

ゴルフ同様、新世代となったオールアルミ製1.4リッターDOHCターボ。これは気筒休止機能「レス」の方
試乗したのは、エントリーグレードの1.4 TFSI(308万円)。もう一つ上の1.4 TFSI シリンダー・オン・ディマンド(347万円)とゴルフのTSI ハイライン(299万円)は、共に気筒休止機構(負荷が小さい時に2番および3番シリンダーのバルブ駆動および燃料噴射を止める)を備えた1.4リッターターボ(140ps、25.5kgm)を搭載するが、このエントリーグレードは気筒休止機構を持たず、パワーも控えめ。最高出力は122ps、最大トルクは20.4kgm。
 
ライバル車同様、A3も電動パーキングブレーキを採用
走りだした時の第一印象は、やはり「ゴルフ7にそっくり」。街中を流す限り、これといって強い主張はなく、特にパワフルでもないが、十分なトルク感とレスポンス。相変わらずシャキシャキ変速する7速SトロニックことDCT、静粛性の高さ、乗り心地の良さなどなど、完成度の高さがビシバシ伝わってくる。一つ気になるのは、アイドリングストップ後の再発進時に一瞬の間(ま)が空くことだが、これは割とすぐに慣れる。ヒルホルダーがちゃんと働くので、坂道発進で落ちることはまずない。 とにかく、走りは全体に上品で、乗り心地も一昔前まで硬い硬いと散々言われていたアウディとは打って変わってしなやか。今やエコタイヤを履く日本のコンパクトカーより、日本の道に合っているかも。
 
試乗車はオプションでパドルシフトやステアリングスイッチを装備
車重は試乗車で1320kgで、先代1.4 TFSI(1380kg)より60kgも軽くなった。これぞMQBの恩恵らしい。ただしパワーウエイトレシオは先代1.4 TFSI(PWRは11.0kg/ps)と同等の10.8kg/psに留まる。ダッシュする時は(パドル装着車ならパドルで)2段ほどギアを落とし、アクセルべた踏みで上までしっかり回す必要がある。 一般道での常用回転域は、だいたい2000回転以下。この1.4 TFSI(122ps版)の場合、65km/hでやっとこさ7速トップに入るので(約1400回転)、合法的には一般道で7速に入ることはない。100km/h巡航は約2100回転でこなす。

シャシー性能に打ちのめされる

タイヤは最新のコンチプレミアムコンタクト、いつの間にか「5」
大人しく普通に走る限りは「いいクルマだなぁ」くらいの印象だが、そんな甘っちょろい感想で済まなくなるのが、ワインディングや高速道路を走った時。試乗した日は、雨が降ったりやんだりだったが、そんなことなどモノともせず、205/55R16のコンチプレミアムコンタクト5はアスファルトに張り付くようなグリップ感を発揮。この限界の高さは一体どこから来るのだと考え込んでしまうくらい、空恐ろしいほどの安定感を発揮する。 また普通なら、どアンダーが出そうな状況でも、しっかり舵が効くし、曲がった後もしれっと安定。LSD効果を発揮する電子デバイス(ESC)も装備されているが、そういうものに頼る感じもない。ちなみにA3のリアサスは、全車4リンクと呼ばれるマルチリンクになる(ゴルフの上級グレードと同じ)。このあたりは短時間のディーラー試乗では体感が難しいが、雨の日に高速道路やワインディングを走れば、ほとんどの人が体感できると思う。

試乗燃費は11.0~15.2km/L。JC08モード燃費は19.5km/L

指定燃料はもちろんハイオク。この日はリッター163円だった
今回はトータルで約250kmを試乗。参考までに試乗燃費(車載燃費計)は、いつもの一般道、高速道路、ワインディングを走った区間(約90km)が11.3km/L。また、一般道で、無駄な加速を控えて走った区間(約30kmを2回計測)が14.6km/Lと15.2km/L。計3日間のトータルは11.0km/Lだった。JC08モード燃費(試乗車)は19.5km/L。これらの数値は、以前試乗したゴルフ7のTSI ハイライン(試乗燃費10.9~15.1km/L、JC08モード燃費19.9km/L)と、ほぼ同等。
 
また、今回の数値は、奇しくも前回試乗したクラウン マジェスタ(試乗燃費:11.0~15.5km/L、JC08モード燃費18.2km/L)とけっこう近かった。片や1.4直噴ターボのコンパクトカー、片や3.5リッターV6ハイブリッドの高級セダンと、まったくジャンル違いなので、比較してもしょうがないのだが。
 

ここがイイ

インターネットに繋がること。圧倒的なシャシー性能

とりあえず、クルマに通信モジュールを搭載することで、携帯電話などに接続しなくても、インターネットにつながること。実際に使ってみると、Googleアースなどにはつながるものの、インターネットにフルアクセスはできないし、通信モジュールが3Gで、またデータの容量制限もあることから、Wi-Fi機能は実用的とは言いかねる。とはいえ、日本市場における車載IT装備にとって、今回のアウディコネクトが行ったことは重要な一歩。こういうことを国産メーカーではなく、アウディにやられてしまうというところが、今の日本を象徴しているが、とにかくこの点は高く評価したい。以下、総合評価にて。 今回試乗したのは最もパワーのないエントリーグレードということで、パワーはちょうどいい(人によっては少し物足りない)レベルだったが、シャシー性能に関しては、打ちのめされるほどの衝撃を受けた。例のMQBコンセプトでもって、こういった性能が低コストで当たり前のように実現されるとすれば、今後さらにVWグループの独走を許すことになるだろう。

ここがダメ

変わった感じがしないスタイリング。やや割高感あり。実質上、使えないWi-Fi機能。

ブランニューの新型車としては、あまりにスタイリングが先代と変わらないこと。それがいいと言う人もいると思うが、もうちょっと個性や新しさを出しても良かったと思う。 試乗した1.4 TFSIは、車両本体価格こそ308万円だが、実はオプション込みだと365万5000円。これに自動ブレーキ付のアダプティブクルーズコントロール(8万円)や、電動レザーシート(28万円)を追加してしまうと、すぐに400万円を超えてしまう。作りの良さを見れば妥当な価格かもしれないが、新型ゴルフと比較してしまうと割高感は否めない。 通信モジュールは3Gで、Googleアースを見るくらいなら問題ないが、Wi-Fiでモバイル端末をインターネットに接続するとなると、通信速度の点でも、また月間400MBというデータ容量制限の点でも無理がある。ただ、この車載モジュールが3GではなくLTEになれば話は違ってくる。車載Wi-Fi機能はまだ始まったばかりということで、今後の展開に期待したい。 アウディ コネクトで様々な情報が表示されるのはいいが、音声読み上げもして欲しかった。技術的にはすでに可能なので、実現されるのはおそらく時間の問題だと思うが。

総合評価

燃費よりも走りが大事

新型A3はクルマを日常使いする人には、とても理想的なクルマに思える。まず、どんどんボディが幅広になるこのご時世に、全幅が1800mmを切っていることだけでも、たいへん喜ばしい。ゴルフのようにいかにもハッチバックというスタイルでなく、といってゴルフワゴンのように本格的なワゴンスタイルでもなく、それでいてワゴン風に見えるデザインは絶妙。こればかりは完全に好みの問題だが、先代が10年経っても商品価値をあまり落とさなかったのは、このスタイリングが評価されていたからだと思う。 それゆえだろう、今回のエクステリアデザインは、とにかくキープコンセプトだ。しかしあまりにキープコンセプト過ぎて、面白みに欠けるのは否めない。そもそもアウディのラインナップ全体が、おおむねサイズやパッケージングが違うだけで、デザイン的にはよく似ているし、同じモデルならモデルチェンジ後も大きく変わらないというのが一種のブランドアイデンティティになっているが、今回のA3はさすがにちょっと辛いと思う。デザインを見てカッコイイなと思って買い替える、あるいは新規で買う気になる人は少ないだろう。そこが微妙だ。
 
しかし何より走りだ。これはもう本文にある通り、ゴルフ7がベースなだけに、ただただ驚くしかない。どうしたらこんなに良くなるのかと考えると、ひとつには燃費スペシャルではなく、走りスペシャル的な作り方をしているからだと思う。チューニングを燃費側に振れば、もっとモード燃費は良くなると思うが、それよりもあくまで走りの心地よさを重視しているあたりが、日本のこのクラスのクルマとは大きく違うところ。やっと日本車が取り組み始めた直噴ターボによるダウンサイジングエンジンもすでに熟成の域に入り、DCTとあいまって、日本よりはるかに先行してしまっている。このあたりは本当にこのままで大丈夫か日本、と思ってしまうところだ。

クルマをIT化することの難しさ

その日本が本来なら、もっと先行しなくてはならないはずのクルマのIT化も、A3にすっかり先を行かれてしまった。通信モジュールを用意して、車内にWi-Fi環境を用意したことは画期的だ。今やどこでもWi-Fiという時代なのに、クルマの中だけはそれがなかったのだが、ついにそれが実現した。たったこれだけのことでも、その実現に尽力したインポーターは大変な労力を要したと想像される。しかも、たとえ3年間といえども通信料が無償なのは素晴らしいことだ。ちなみに、A3にsimを供給しているソフトバンクは、ホンダのインターナビにも3Gを提供しているが、こちらはフローティングカー情報など限定的な使い方になる。 車載ナビゲーションシステムがグーグルアースと連動したり、ストリートビューが表示できたりするのは夢が実現したようで喜ばしい。MMIコントローラーのダイアル上にあるタッチパッドも斬新だ。2回前の東京モーターショーで、コンセプトを見た記憶があるが、ついに実現してしまった。しかもちゃんと日本語に対応していて、左手の指で拙いひらがなを書いても、ちゃんと認識してくれた。助手席の人が右手で書けば、何ら問題なく実用になりそうだ。そういえば音声入力もかなり優秀で、長い住所を一発で聞き取ってくれた。 しかしこのような素晴らしさも、スマホでのテザリングが当り前の昨今では、喜ばしさも半減。グーグルとの連携も一部だけだ。利用できる一ヶ月のデータ量はあまりにも少ないし、通信速度も速くはない。使い方や設定も難しく、ITにかなり精通していないとすぐには使えないだろう。販売店もこれをサポートするのは大変ではないだろうか。
 
こうしたクルマのIT化は、実際のITの進化が速いため、クルマに機器を搭載した途端、どんどん古びていってしまうのが難だ。クルマの寿命に比べて、IT機器の寿命は圧倒的に短いゆえ、クルマというものとなじまない。特にここに来て、スマホが急激に進化・普及したことにより、世の趨勢はスマホベースで車内ITを再構築するという方向へ急速に向かっているようだ。スマホを全てのキーとして、それを操作しやすいようにディスプレイを特化させるという方向性が、今後の主流になるだろう。 しかし、そうすると自動車メーカーには何も恩恵がないことになってしまう。そのジレンマをどう解決するかが、今、各メーカーが苦悩しているところだ。その意味では、この画期的なA3のITも、数年後が心配になってくる。というより現時点でも、この程度の機能のために、相当に高価なこのシステムを購入する意味があるのだろうか、というのが本音だ。

ついにITでも先を越された

ただ、今までのクルマ向けITの中では最も意欲的なものであり、それをドイツ車がやってしまうというあたりに再び、日本、大丈夫かと思わざるをえない。A3が持つタッチパッドも、車内Wi-Fiも、通信モジュールも、グーグルの表示も、日本のメーカーが躊躇している間に、ひとまずドイツ車が先行してしまった。それも日本車のような上級車種ではなく、コンパクトカークラスに投入されている。このクラスのユーザーは上級車のユーザーよりもITに馴染みがある。メーカーはそこをきちんと理解して投入しているわけだ。 今から11年も前に発売されたトヨタ WiLL サイファの試乗記を読み返すと、この頃すでに、ものすごくITで先行しながら、結果的に大きな失敗(実質的にそうだろう)をしたことで、すっかり「日本のクルマとIT」が萎縮してしまったことが分かる。今、A3がやっているようなことは、すでに試みられていたのだが、性急すぎたのか、全くといっていいほど一般化しなかった。先ごろ、新型オデッセイの発表会で、ホンダは10年も前にプリクラッシュセーフティで先行したはずなのに、なぜそれが今のオデッセイでもさほど進化していないのか、というある記者の問いに「少しサボっていたのかもしれない」と苦笑交じりで伊東社長は答えていたが……。
 
日本車の場合、この10年で確かにモード燃費は凄まじい数値になったが、それ以外の部分(ダウンサイジングエンジン、ディーゼルエンジン、DCT、プリクラッシュセーフティなど)では、欧州車に遅れをとっていると思わざるをえない(もちろん、メーカーによっては健闘している分野もあるが)。そしてついにITでも先を行かれてしまった。同クラスの日本車では、A3はもはやどうにも越えられない。このクラスでせっかく買うならいいものを、と思うのであれば、A3はいの一番で候補に挙げられる。むろん、変わらぬスタイリングに共感できるのであればの話だが。
 

ホンダ フィット ハイブリッド:新車試乗記

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キャラクター&開発コンセプト

累計487万台の超グローバルカー

新型フィット ハイブリッド (photo:Honda)
2001年にデビューし、今や国内ではシビックに代わるホンダの主力コンパクトカーとなったフィット。累計販売台数はこの12年間で、国内だけで200万台以上。また、海外では欧州、北米、中国など123ヶ国で販売され、グローバルでの累計販売台数はすでに487万台(2013年5月時点)に達したという。 そして2013年9月5日に発表、9月6日に国内で発売された今回のフィットは3代目。新型は初代から2代目に引き継がれた、燃料タンクを前席下に置くセンタータンクレイアウトや、それを核とする高効率パッケージングを継承しつつ、車体、パワートレイン、デザインなど全てを一新している。

新開発「スポーツ ハイブリッド i-DCD」を搭載

スポーツ ハイブリッド i-DCDのレイアウト (photo:Honda)
先代同様、純粋なガソリンエンジン車も用意されるが、注目は今回で第2世代となるハイブリッド車。新開発の1.5リッター直4エンジン、ホンダ独自開発の7速DCT(クラッチは独シェフラー製)、リチウムイオンバッテリーなどで構成される新ハイブリッドシステム「スポーツ ハイブリッド i-DCD(インテリジェント・デュアル・クラッチ・ドライブ)」を採用することで、従来のIMAハイブリッドでは出来なかったモーターだけでのEV発進や広い領域でのEV走行、そして高効率化が可能になった。これによりJC08モード燃費は、これまで国内トップだったアクア(35.4km/L)を上回り、36.4km/Lを達成している。 ■外部リンク ・シェフラージャパンHP>ホンダの「i-DCD」で活用されるシェフラーの技術

初期受注は過去最高のペース

国内の販売計画台数は、先代の月間1万2000台を上回る1万5000台。生産は鈴鹿工場で始まるが、本格的な生産は7月に稼働開始した寄居工場(埼玉県大里郡寄居町)で行われる。 発売後約1ヵ月(10月7日時点)までの累計受注台数は、目標の約4倍となる6万2000台以上(うち70%はハイブリッド)。ホンダによれば、これは「過去最高ペース」だという。販売実績は10月に2万3281台となり、久々に登録車の販売トップを奪取。ここ1年ほど首位を独占していたプリウス(2万0886台)とアクア(1万9984台)を抑えている。
 
■外部リンク ・Honda>埼玉製作所寄居工場のオープンハウスを実施(2013年11月7日) ■過去の新車試乗記 ・ホンダ フィット シャトル ハイブリッド (2011年8月)ホンダ フィット ハイブリッド(2010年11月)2代目ホンダ フィット (2007年12月)初代ホンダ フィット (2001年7月)
 

価格帯&グレード展開

ハイブリッドは163万5000円~

パワートレインは1.3リッター、1.5リッター直噴、ハイブリッドの3種類。ラインナップは13G、15X、RS、ハイブリッドの4種類
パワートレインは、純エンジンの1.3リッター直4(CVTか5MT)、1.5リッター直4・直噴(CVTか6MT)、そしてハイブリッド(1.5リッター直4+モーター+7速DCT)の計3種類。 価格は1.3リッターが126万5000円~、1.5リッターが158万円~、スポーツグレードのRSが180万円、ハイブリッドが163万5000円~。 ただし、1.3リッター車やハイブリッド車のベースグレードは、オプション選択の余地がほとんどない上、燃料タンク容量が上位グレードより8リッターも少ない32リッターとなるなど、要はJC08モード燃費で国内トップを取るための燃費スペシャルになっている。実際に買う人はやはり少ないようで、ハイブリッドの初期受注を見るとベースグレードの割合は2%しかない。なのでハイブリッドは実質Fパッケージ付の172万円からスタートと考えた方がよい。
 
ボディカラーは全11色。写真はティンテッドシルバーメタリック
安全装備に関しては、新開発の「シティブレーキアクティブシステム」(低速域衝突軽減ブレーキ+誤発進抑制機能)と前席サイド&カーテンエアバッグが「あんしんパッケージ」(6万円)というオプションになる。VSA(車両挙動安定化制御システム)はガソリン車も含めて全車標準。 オプションは他に、3Gの通信モジュールを搭載するHonda インターナビ+リンクアップフリーが22万0500円、LEDヘッドライト(ロービーム)が6万5000円(上位グレードは標準装備)など。
 
フィット RS。132psの1.5リッター直噴エンジンを搭載する (photo:Honda)
■1.3L DOHC i-VTECエンジン(100ps、12.1kgm) ・13G(CVT/5MT)  126万5000円~174万9000円(FF/4WD) ■1.5L直噴DOHC i-VTECエンジン(132ps、15.8kgm) ・15X(CVT)   158万円~186万9000円(FF/4WD) ・RS (CVT/6MT)  180万円(FF) ■1.5L DOHC i-VTECエンジン(110ps、13.7kgm)+モーター(29.5ps、16.3kgm) ・Hybrid(i-DCD)   163万5000円~193万円(FF) ※今回の試乗車 ※ハイブリッドの4WDは12月発売予定
 

パッケージング&スタイル

デザイン激変。ボディサイズはほぼキープ

パッケージングは基本キープコンセプトだが、スタイリングの印象は激変。先代はサンダーバード2号みたいな太めの砲弾型で、造形もシンプルだったが、新型はエッジの効いた太めのステルス機風。 中でも今のところ賛否分かれているのがフロントフェイス。ブラックアウトしたグリルはアシモみたいに見えなくはないが、見慣れるまで時間が掛かりそう。
 
全高がアクアより80mmも高いのは空力面で大きなハンディだが、燃費で互角としたのは立派
こういったデザインは、同社の新しいデザインコンセプト「エキサイティング H デザイン!!!」から生まれたもので、ワクワクするデザインを目指し、あえて「チェンジ!」を狙ったようだ。先回取り上げた新型アウディA3とはまさに真逆。 ボディサイズは全長3955mm(+55)×全幅1695mm(同)×全高1525mm(同)、ホイールベース2530mm(+30)。先代より若干長くなったが、全長4メートル未満と5ナンバー枠をキープした。このあたりは、今でも年間20万台売れる国内市場を配慮したものだろう。
 
 
    全長(mm) 全幅(mm) 全高(mm) WB(mm) 最小回転半径(m)
ホンダ フィット ハイブリッド(2010~2013) 3900 1695 1525 2500 4.9
ホンダ フィット ハイブリッド(2013~) 3955 1695 1525 2530 4.9~5.2
VW ポロ(2009~) 3995 1685 1460~1500 2470 4.9
トヨタ アクア (2011~) 3995 1695 1445 2550 4.8~5.7
 

インテリア&ラゲッジスペース

熟成されたセンタータンクレイアウト

質感がぐっと高まったインパネ。写真は合皮&ファブリックシート仕様のLパッケージ
インパネもエクステリア同様に、エッジを効かせたダイナミックな造形。ただ、先代がかなり未来的だったので、新型は割とオーソドクスにも見える。流行りのタッチ式空調パネル(オートエアコン仕様のみ)などはあるが、奇抜なところはない。 広い室内空間や多彩なシートアレンジは相変わらず。燃料タンクを前席下に配置する「センタータンクレイアウト」を踏襲しつつ、プラットフォームを一新。ホイールベースを30mm伸ばし、荷室より後席を重視するといった微修正を行っている。また、燃料タンクがボディ後部にないため、駆動用バッテリーをリアに積むハイブリッドでも、同クラスのガソリン車に居住空間や積載性で負けていない。
 
ハイブリッドでも中央の速度計はほぼ同じ。右側に燃費情報やバーグラフ式回転計などを表示可能
ホイールベースは30mm増だが、タンデムディスタンス(前・後席間の距離)は80mm増えた。シート形状も改良され、座り心地も良い
運転席ハイトアジャスターはパッケージオプションに含まれる
 
後席を重視したため、荷室容量はハイブリッドで先代の341リッターから314リッターに減少。それでも同クラスのガソリン車より広い
ハイブリッドの場合、床下収納は折り畳み傘が入る程度
チップアップ(写真)、ダイブダウンといったシートアレンジは歴代フィット譲り
 

基本性能&ドライブフィール

THS IIよりメカメカしている

新開発の1.3リッターや1.5リッターの純エンジン車も気になるが、今回試乗したのはハイブリッド。 ハイブリッドにはスマートキーが全車標準。スタートボタンはステアリングの左側にあり、「フィットってグローバルカーなんだなぁ」と改めて感じながら始動。と言っても、エンジンが掛かるわけではなく、またトヨタ車のようにメロディが流れるわけでもなく、フィットのハイブリッドシステムは静かに目覚める。 メーターで「READY」の表示を確認したら、電制シフトレバーを「右に倒し、下げる」とD(ドライブ)に入る。単に「下げる」だけだとDに入らない。
 
ハイブリッド専用の電制シフトセレクター。操作感はプリウスと似ている
アクセルを踏み込めば、モーターでスムーズに発進。じわじわ踏めば、モーターだけで40km/hくらいまで加速してくれるが、グイと無頓着に踏めばすぐにエンジンが加勢する。とはいえ、エンジンはいつの間にか掛かる感じで、注意していないと分からない。 面白いのはトヨタのTHS IIに比べて、メカメカした感じが強いこと。これはミッションが無段変速ではなく、7速DCTだからだろう。とはいえ、変速はすごく滑らかで、シフトアップの瞬間はやはり注意していないと分からない。せっかくの7速DCTなので、このあたりはぜひメーターにギアインジケーターを標準装備して欲しいところ(できれば常時表示のアナログ回転計も)。なお、ハイブリッドの場合、パドルシフトはRS風のエアロパーツや16インチタイヤを履く「Sパッケージ」(193万円)のみになる。

メカ凝りまくりだが、完成度は最初から高い

フィット ハイブリッドのエンジン性能曲線図。システム出力は137ps。システム最大トルクの170Nm(17.3kgm)は発進直後から約5500回転まで一定に発揮する (photo:Honda)
先代ハイブリッドはインサイト譲りの1.3リッターエンジンで始まり、後からCR-Z譲りの1.5リッター(ハイブリッド RS)が追加されたが、新型は1.5リッターのみ。しかしエンジンはそれとは別物で、アトキンソンサイクルの新開発1.5リッターDOHC i-VTECエンジン(110ps、13.7kgm)になる。 今回のi-DCDは、それに高出力モーター(29.5ps、16.3kgm)を内蔵したホンダ独自開発の7速DCTと、リチウムイオン電池を組み合わせたもの。さらに回生効率を高める電動サーボブレーキやフル電動のエアコンコンプレッサーも採用され、プリウスやアクア同様、いわゆる「ベルトレス」になった。この超量産車でやれることを全部やり、しかもいきなり自社初の7速DCTをハイブリッドに投入するところが、いかにもホンダらしい。
 
車両協力:ホンダカーズ東海
それでいて完成度は高く、街中を走る限り、気にところは特になし。ステアリングは意外に重め、乗り心地はちょっと硬めかなぁ、と思うくらい。ハイブリッド車の場合、エンジンが静かな分、ロードノイズが目立つものだが、それも気にならないレベル。 逆に言えば、すごく凝りまくったパワートレインの割に「ウォー、すげー」感はないのだが、つまりはそれくらい普通のクルマとして乗れるということ。
 
情報ディスプレイを切り替えて、液晶バーグラフ式の回転計を表示することもできる
気になったのは、駐車する時などに坂道でバックする際、ブレーキを離すと下がってしまい、かといってアクセルを踏むとドンッと唐突に動いてしまうことがあること。ヒルスタートアシストは全車標準なので、前進の坂道発進なら下がらないのだが……。トルコンがない頃の、昔のCVT車(6代目“ミラクル”シビックとか)を思い出した。

ワインディングでもホンダらしく

主要グレードは185/60R15タイヤとスチールホイールが標準(アルミはオプション)。ハイブリッドのSパッケージとRSのみ、185/55R16+アルミが標準になる
ワインディングを走ると、足回りが硬めである理由がよく分かる。ホンダ車らしく、ロール感は小さく、スイスイ曲がるのが面白い。意図的に鋭くステアリングを切っても、ちゃんと曲がるのは、全車標準のVSAの成せる技だろう。おかげでエコタイヤ(ヨコハマのブルーアース)のグリップにも不足を感じなかった。一方で、腰高感はそれなりにあるし、ドイツ車みたいにボディがガッチリというわけでもないが、欧州Bセグメントのライバル車と比べても、操縦安定性に不満はないと思う。 100km/h巡航時は、メーターを見るとだいたい2000回転くらいで回っている。高速走行時に少し気になったのは、ある程度の速度域から、フロントガラス越しにザワザワと風切り音が高まること。これが静かだと「いいモノ感」が一気に高まりそうなのだが。

試乗燃費は17.4~29.5km/L。JC08モード燃費は31.4~36.4km/L

バイオ混合ガソリン対応のステッカーを我々が見たのは、少なくとも日本車では初めて
今回はトータルで約200kmを試乗。参考までに試乗燃費(車載燃費計)は、いつもの一般道、高速道路、ワインディングを走った区間(約90km)が17.4km/L。一般道で、無駄な加速を控えて走った区間(約30kmを2回計測)が26.2km/Lと29.5km/Lで、計2日間のトータル(撮影のための移動を含む)は19.3km/Lだった。 ちなみに、1年半前に試乗したアクア(16インチタイヤ仕様)の試乗燃費は16.8~23.2km/Lで、370km走ってのトータル燃費は18.3km/Lだった。僅差でフィット ハイブリッドが勝ったが、とりあえず互角と言っていいと思う。
 
たまたま信号で並んだボルボ V40と2ショット
客観的な評価としてJC08モード燃費は、フィッ トハイブリッドが36.4km/L(標準グレード)~33.6km/L(中間グレード)~31.4km/L(Sパッケージ)。これに対してアクアは、35.4~33.0km/Lで、やはり互角と言っていいだろう。 なお、ハイブリッドの燃料タンク容量は、標準グレードが32リッターで、それ以外のグレードが40リッターになる(1.5リッターガソリン車や1.3リッターの4WD車などと同じ)。40リッターなら、航続距離は平均燃費20km/Lとしても約800kmに及ぶ。
 

ここがイイ

燃費だけじゃないこと

初代から始まったセンタータンクレイアウトは新型フィットでも継承されている (photo:Honda)
相変わらず他車を寄せ付けない優れたパッケージング。後席をチップアップした時の、高さが128センチもある空間、あるいは後席をダイブダウンした時の広大な荷室空間、そしてシートアレンジの簡単さなどは、基本的に初代から変わっていないが、実際これ以上改良しようがないほどシンプルで使いやすい。最近は何かと燃費ばかりが注目される新型車だが、フィットの場合は燃費だけでなく、こうした高効率パッケージングが商品力に大きく貢献している。

ここがダメ

燃費スペシャルによる無意味な燃費競争

ちょっとすっきりしないのは、ハイブリッドのベースグレード(1.3リッターガソリンのベースグレードである13Gもそうだが)の燃料タンク容量が32リッターしかないこと。装備的には運転席ハイトアジャスターやドアミラー電動格納、後席分割などがないこと以外、ま、これでいいか、と思えるグレードだが、わざわざタンク容量を8リッター減らしたのは、JC08モード燃費対策以外の何ものでもない。実はハイブリッドの場合、ベースグレードはパッケージングオプション付の主力グレードより、諸々の軽量化で50kgも軽くなっている。これにより、ハイブリッド(のベースグレード)のモード燃費は国内最高の36.4km/Lとなったわけだが、そこまでする意味があるのか。標準グレードを買おうとする場合は、おそらく店頭で説明があるはずだが、これが将来、中古車になった場合に、買ってから初めてタンク容量が少ないことに気付く人もいるだろう。いくら燃費が良くても、32リッターは少ないと思う。
 
本文で触れたように、坂道だとバックでの微調整がしにくいこと。今から思えばサイドブレーキを使うと良かったかもしれないが、そんな技が使えない一般ドライバーのことを考えれば、改良ポイントの一つだと思う。 オプションのLEDヘッドライトはとても明るいが(装着率も高いようだ)、ハイビームは普通のマルチリフレククター式ハロゲン。おかげで色合いや照度でLEDとの落差が激しく、ハイビームにする度にガッカリしてしまう。6万5000円と安いので文句は言えないが、買ってから早々にハイビーム側を“ライトチューン”する人が増えそう。

総合評価

「一番じゃなくちゃダメなんですか」

最近、新車がまたまた良くなってきている。ちょっと前、フィットだと6年前に2代目が出たあたりで、もうクルマとしては十分じゃないかと思ったりしたものだが、ここに来て新型フィットはさらにもう一段、いや三段くらい上がってきた。正直なところ、普通の人なら先代でも特に不満はないはずだ。しかし、燃費がもっといいクルマが他社から出てきたというあたりが、分かりやすく2代目への不満になってしまう。それゆえ、とにかく燃費競争に勝利することが、メーカーにとっても分かりやすい商品価値の訴求方法になってしまっているのが昨今だ。燃費を向上させるためには、全てを新開発するしかない。ということで、今回はハイブリッドシステムをすっかり変更し、ガソリンタンクを小さくする裏技を使ってまで、燃費競争に勝利した。しかし記録が塗り替えられるのも世の常で、すぐにライバルが巻き返してくる。こうなると「一番じゃなくちゃダメなんですか」と言いたくなる。
 
まあ企業としては一番を取ろうとしないと、どんどん取り残されていってしまう。その結果、昨今クルマはすべてが素晴らしい燃費を誇るようになってきた。めでたし、めでたし。が、しかしほんとにそうなのか、とついへそ曲がりになってしまうのは、どうも欧州のクルマが燃費スペシャルではなく、クルマの本質を追求する方向で、どんどん良くなっていることを実感しているからだ。フィットもたぶん、ポロあたりに負けないように意識して開発しただろう。確かにポロより優れているところは多いが、乗ってすぐに、これはいいクルマだなあ、と直感的に思えるまでには至っていない。

名車シティの末裔として

まあそうはいっても、クルマはそんな感覚的な商品ではなく、実利でなんぼという商品でもある。このサイズで、これだけの居住空間を持つパッケージングの巧みさは、古今東西で随一と言えるものだし、DCTと組み合わされたハイブリッドシステムも、オリジナリティにあふれている。むろん燃費の良さは他の追随を許さない。走りだって、同クラスでは一、二を争うだろう。燃費を気にせずにガンガン走ると、さすがホンダというスポーティさがちゃんとある。クルマのすべてが高いところでまとめられているのだ。これ1台で日常使いから長距離移動まで不満なくこなし、人も5人乗れて、荷物も相当に積める。体を斜めにすれば、荷室で車中泊だってできそうだ。このサイズに、実用車に必要なすべてが詰まっていると言えるだろう。
 
初代ホンダ シティ(1981年) (photo:Honda)
ところでフィットは、前身であるロゴの後継車だが、ロゴは2代目シティの後継車だ。つまり3代目フィットはシティの末裔ということになる。初代シティは、欧州でもジャズの名で販売されたようだが、フィットも欧州ではジャズという名で販売されている(北米ではフィット)。1981年に登場した初代シティのインパクトはすごかった。「トールボーイ」なるコンセプトで、それは3代目フィットにも通じているのだが、シティが出た頃のホンダのデザインは独創的で、日本車としてはぶっとんだものだった。 そんな昔のホンダデザインと比べると、新型フィットのデザインは頑張っているのだろうけれど、今ひとつに見える。キープコンセプトで、サイズ制約があって、これ以上どうしろというのか、というのも分かるが、例えばリアのオーバーハングが真横からだと長くなったように見えて、リアビューが重たく見えるあたりが気になってしまう。シティは2代目、そしてロゴと代を重ねるごとに、スタイリングの魅力を失っていったが、フィットも3代目であれば、逆にホンダらしい飛び抜けた個性を見せて欲しかった。ホンダの場合、ヒット作の3代目はパッケージングから大きく変えてくることが多かったが、今回そうでないのはホンダが変わったのか、それとも受け入れる市場が変わったのか。あるいはその両方かもしれない。

確かにスーパーカブ的ではある

さて、今回のフィットはホンダによると、4輪のスーパーカブだという。北米では1960年代に、ビーチボーイズのブライアン・ウイルソンがスーパーカブをイメージした「リトルホンダ」という曲を書いて、自身のバンドや他のバンドの演奏でヒットさせている。当時の北米でスーパーカブがどういうイメージの乗り物だったのかはよく分からないが、今の日本でスーパーカブと言えば、タフで便利な日常の足というイメージだろう。「最初に手に入れた原動機のついた乗り物はスーパーカブだった」と書けるとカッコイイのだが、個人的にはそれはスズキ バーディーだった。自分が乗ったバーディーは2サイクルだったが、コンセプトはスーパーカブと同じといっていい。16歳の少年は、ロータリー式3段シフトを駆使し、荷台にたくさん荷物を縛り付けて、どこへでもこのバイクで出かけたものだ。当時はノーヘルでも合法。スピードは出ないが、その自由さと風をきる気持よさは忘れられない。 当然ながらフィットはそれよりはるかに、移動するリーズナブルな道具として完璧な乗り物だ。そしてファン・ファン・ファンな雰囲気もある。その点はたしかにスーパーカブだ。ただしクラスを超えた品質感や走りの感動を求めた商品ではないわけで、そこを間違えてはいけないだろう。欧州車の一部には、すでにクラスを越えてしまっているものもある。それに比べてフィットは、良くも悪くもスーパーカブ的スタンスのクルマということ。
 
走り、燃費、パッケージングなどなど、総合点においては、こと日本では他の追随を許さない出来だ。6万円という比較的安価な価格で、大衆車クラスに自動ブレーキが設定されたこともめでたい。結果、購入した多くの人が満足するだろう。そのあたりのこと全てが、欧州車とは違う日本車・ホンダ車としてのアイデンティティだと言われれば、その通り。プレミアムコンパクトではないのだから、震え上がるような出来の良さを期待するほうが間違っている。ただ、世界の小型車が燃費よりクラスレスな良さを追求する方向へ向かっているかに見えるだけに、つい心配になってしまう。価格を考えろ、クラスを考えろ、というのはよく分かるのだが……。
 

東京モーターショー 2013 開幕:MOTOR DAYS ピックアップニュース

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国内最大のモーターショーである「第43回 東京モーターショー2013」が2013年11月20日、東京ビッグサイト(東京都江東区)で、報道関係向けに開幕した。一般公開は23日(土)から12月1日(日)まで。

日産は2台のコンセプトカーでサプライズ

日産 IDx フリーフローとIDx ニスモ
開幕初日のサプライズは、何と言っても日産の2台のコンセプトカー、「IDx(アイディーエックス) フリーフロー」と「IDx ニスモ」。日産はモチーフについて具体的に説明していないが、全長約4.1メートル、全幅約1.7メートルという5ナンバーボディや2ドアセダンスタイルは、箱スカやケンメリ、シルビアといった日産FR車のDNAを感じさせるもの。 もう一つの目玉は、次世代EVのコンセプト「ブレードグライダー」。ルマン24時間にも参戦した「日産デルタウイング」を彷彿とさせるナローなフロントトレッドとワイドなリアトレッドによる三角翼形状のボディ、中央に運転席を置いた3シーターレイアウトが特徴で、異次元のコーナリング性能などドライビングならぬ「グライディングプレジャー」を追求したという。市販車では、ガラリとスタイリングを変えた新型エクストレイル(12月に発売予定)が注目を集めていた。
 
日産 ブレードグライダー
日産 IDx ニスモ
日産エクストレイルは人だかりが多く、こんな感じ
 
日産 プレスリリース 日産 プレスリリース(IDx関連)

トヨタは次世代タクシー、レクサスは新型クーペやSUV

トヨタ JPN TAXI コンセプト
今年のトヨタは昨年と同じ「FUN TO DRIVE, AGAIN.」をテーマに、次世代燃料電池自動車の「FCV コンセプト」(世界初出展)や、日本のための次世代タクシー「JPN TAXI コンセプト」を出展。パワートレインは、LPGのハイブリッドとのこと。また、パーソナルモビリティ「i-ROAD」やオープンFRスポーツ「FT-86 オープン コンセプト」も展示された。ブース内に再現された“TOYOTOWN”も面白い。
 
レクサス LF-NX(コンセプト)
また、レクサスからは、世界初公開の新型スポーツクーペ「RC」や新開発2.0リッターターボエンジンを搭載した小型クロスオーバーSUVコンセプト「LF-NX」が出展された。
 
アクアを生産するトヨタ自動車東日本が提案するコンセプトカー。手前はアクア エア。奥はアクア G スポーツ。SUV風のアクア クロスもあった
ブース内のTOYOTOWN。(笑福亭)鶴瓶の蝋人形?がいてびっくり
レクサス RC。3.5リッターV6エンジン車と2.5リッターハイブリッドがある模様
 
トヨタ プレスリリース レクサス プレスリリース

ホンダはS660とNSX。そしてS360も

ホンダ NSX コンセプトとS660
「枠にはまるな。」をテーマとするホンダブース。4輪モデルでは、次世代スーパースポーツの4WDミッドシップ ハイブリッドモデル「NSX コンセプト」もさることながら、やはり軽オープンスポーツのコンセプト「S600 コンセプト」が主役。一昨年のショーでコンセプトモデル「EV-STER」として発表されたものの発展版で、今回のモデルはEVではなく、より現実的な660ccのエンジン車という想定になる。
 
ホンダ NSX コンセプト
二輪は市販車・参考出品車を中心に盛りだくさん。左端はビッグマイチェンしたCBR250R
当時の図面をもとに、ほぼ一から再現したというS360。極めて美しい仕上がり
 
ホンダ プレスリース

スズキは小型SUVコンセプトなど多数出展。マツダは新型アクセラをアピール

スズキ ハスラー(Hustler)
スズキブースの主役は、軽のクロスオーバー「ハスラー」。ワゴンRベースで、発売は間近のようだ。そしてそれをベースにしたコンセプト「ハスラークーペ」も面白い。もっとコンセプトカーっぽい「クロスハイカー」は車重は810kg、1リッター3気筒エンジン搭載という小型クロスオーバー。また、小型オフローダーの「エックス・ランダー」はジムニーベースのシャシーに1.3リッターエンジンと小型ハイブリッドシステム、自動制御マニュアルトランスミッションを搭載したモデル。いずれも軽の規格をはみ出るが、次期ジムニーへの模索かも。
 
スズキ エックス・ランダー(X-Lander)
スズキ ハスラークーペ(Hustler Coupe)
588cc 直列2気筒ターボエンジンを搭載した「リカージョン(Recursion)」
 
スズキ プレスリリース

三菱はワールドプレミア3台を投入。ダイハツは次期型コペン

三菱 コンセプト XR-PHEV
三菱はワールドプレミアとなる3台のコンセプトカーを出展。写真の「コンセプト XR-PHEV」(XR:クロスオーバー ランナー)は、1.1リッター直噴ターボエンジン、モーターなどで構成されるFFタイプのPHEVシステムを搭載した次世代コンパクトSUV。 ダイハツブースの主役は、次期コペンの最新バージョン。樹脂製アウターパネルで簡単に着せ替えできることをアピールすべく、今回はスタイリッシュな「Rmz」とタフなイメージの「Xmz」の2タイプを展示する。
 
ダイハツ コペン future included Rmzおよび Xmz
三菱 コンセプト ARは、1.1リッター直噴ターボのマイルドハイブリッドを搭載した小型MPV
マツダは市販車の新型アクセラを中心にブース展開
 
三菱 プレスリース ダイハツ プレスリース マツダ プレスリリース

スバルは新型レヴォーグを初公開

スバル レヴォーグ(市販予定車)
スバルは、新型スポーツツアラーの市販予定車「LEVORG(レヴォーグ)」を世界初公開。新開発の1.6リッター水平対向直噴ターボ"DIT"エンジンや次世代アイサイトを搭載するモデルになる。さらに同1.6リッター直噴ターボのプラグインハイブリッド車「ヴィジヴ エボリューション コンセプト(Viziv Evolution Concept)」、都市型SUVの「クロス スポーツ デザイン コンセプト(Cross Sport Design Concept)」、7人乗りの「クロスオーバー セブン コンセプト(Crossover 7 Concept)」など、スバルの未来を予告する3つのコンセプトモデルを出展する。
 
スバル ヴィジヴ エボリューション コンセプト
スバル クロス スポーツ デザイン コンセプト
スバル レヴォーグ(市販予定車)
 
スバル プレスリース

輸入車は新型MINI、ポルシェ マカン、BMW i3、i8などなど

新型MINI クーパー S
輸入車は米国ビッグスリーやイタリア車の姿がなかったが、その他の主要メーカーが揃った。市販車で注目のモデルは、新型が本国で発表されたばかりの新型MINI。幅がわずかに1.7メートルを超えたが、コンパクトさは相変わらず。センタースピードメーターが廃止されたインパネを覗きこむ姿が目立った。市販車で他に注目は、ポルシェの新型ミドルクラスSUV「マカン」、ジャガーの新型「Fタイプ クーペ」など。BMWからは日本でも来年から市販される電動モデル「i3」と「i8」が登場している。
 
ポルシェ マカン
ルノーブースで異彩を放ったのが新しいデザイン戦略を形にした「デジール」
広大なVWブースだが、目立ったのは新型ゴルフ ヴァリアント
 
BMW i8。1.5リッター直3ターボのプラグインハイブリッドで、価格は1917万円
BMW i3。170psのモーターを搭載し、最大約200kmの航続距離を持つ。価格は499万円で、発電用エンジン付(後続距離は最大約300km)は546万円
ジャガー Fタイプ クーペ
 
水平対向2気筒エンジンの新型「R nineT」。BMWモトラッドの90周年記念車
ヤマハは話題の3気筒モデル「MT-09」などを出展
カワサキの新型Z1000。4灯LEDを採用した、尖ったデザインで勝負
 
ヤマハ ボルト カフェ(BOLT Cafe)
ヤマハの690cc 2気筒スポーツバイク「MT-07(エムティーゼロセブン)」
カワサキの3輪電動ビークル。ホイールベースや乗車姿勢などが自在に変形する。「金田のバイク」のカワサキ版?
 
ヤマハ プレスリリース カワサキ プレスリリース (text&photo:丹羽 圭@DAYS)

名古屋モーターショー、12/12(木)-15(日)に開催:MOTOR DAYS ピックアップニュース

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topimage_1.gif中部地区最大のモーターショーとなる「第18回 名古屋モーターショー」が12/12(木)~15(日)に、ポートメッセなごや(名古屋市港区金城ふ頭)にて開催される。

過去最多の47ブランドが出展。米国メーカーやイタリアンブランドも

ホンダ S660 コンセプト
今年の名古屋モーターショーには、先に閉幕した東京モーターショーで話題となったコンセプトカーや市販予定車を中心に、4輪・2輪メーカーの最新モデルが一堂にそろう。また、今年の東京モーターショーに出展のなかった米国の主要メーカー(GM、フォード、クライスラー・ジープ)やイタリアの主要ブランド(フィアット、アバルト、アルファロメオ、フェラーリ、ランボルギーニ、マセラティなど)、そして輸入バイクブランドも出展。同ショーでは過去最多の47ブランドが集まる。
 
フォード フィエスタ
また、ITS(高度道路交通システム)の特別企画展、最新エコカーやバイクの試乗会、ステージショーなどのイベントも行われる。 ■第18回 名古屋モーターショー ・日時:12/12(木)~15(日) 9:00~18:00 ※12(木)は10:00~ ・場所:ポートメッセなごや(愛知県名古屋市港区金城ふ頭2-2) ・入場料:大人 1500円(前売 1200円) 、中学・高校生 700円(前売 500円)、小学生以下 無料 ・名古屋モーターショー公式サイト
 
スズキ ハスラー クーペ
主な出展ブランドと車両は以下の通り(50音順)。 ■4輪(国産車) スズキ / スバル / ダイハツ / トヨタ / 日産 / ホンダ / マツダ 三菱 / レクサス
 
フェラーリ F12 ベルリネッタ
■4輪(輸入車) アウディ / アストンマーティン / アバルト / アルファロメオ  キャデラック / クライスラー / ジープ / シトロエン / シボレー  ジャガー / スマート / テスラ / BMW / フィアット / フェラーリ  フォード / フォルクスワーゲン / プジョー / ベントレー / ポルシェ  ボルボ / マクラーレン / マセラティ / MINI / メルセデス・ベンツ ランドローバー / ランボルギーニ / ルノー / ロータス
 
スズキ リカージョン(Recursion)
■2輪(国産車) スズキ / ホンダ (ヤマハとカワサキは試乗のみ) ■2輪(輸入車) アプリリア / インディアン / ヴィクトリー / MVアグスタ / ドゥカティ トライアンフ / モト・グッツィ  (ハーレーダビッドソン、BMW、ロイヤルエンフィールドは15日の試乗のみ)
 
トヨタ FT-86 オープン コンセプト
ニッサン ブレードグライダー
ホンダ NSX コンセプト
 
スズキ エックス・ランダー(X-Lander)とエクストリガー(左)
ダイハツ コペン future included Rmzおよび Xmz
三菱 コンセプト AR
 
スバル レヴォーグ
スバル クロス スポーツ デザイン コンセプト
マツダ アクセラ
 
アウディ RS7 スポーツバック
アストンマーティン V12 Vantage S
シボレー コルベット(C7)
 
ジャガー Fタイプ クーペ
BMW コンセプト M4 クーペ
テスラ モデル S
 
VW ゴルフ ヴァリアント
ランボルギーニ アヴェンタドール LP700-4
ルノー デジール(DeZir)
 
インディアン チーフ ヴィンテージ
MV アグスタ F3 800
スズキ Vストローム 1000 ABS
 

名古屋モーターショー開幕:MOTOR DAYS ピックアップニュース

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中部地区最大のモーターショー「第18回 名古屋モーターショー」が12/12(木)、ポートメッセなごや(名古屋市港区金城ふ頭)で開幕した。初日は平日にも関わらず、2万6300人(主催者発表)の多くの人で賑わった。開催期間は12/15(日)まで。

過去最多の47ブランドが出展。輸入車もほぼ勢揃い

ホンダブースは、4輪・2輪共に、ほぼ東京モーターショーと同じ内容
今年の名古屋モーターショーには、先に閉幕した東京モーターショーで話題となったコンセプトカーや市販予定車を中心に、国産メーカーだけでなく、多くの輸入車ブランドが出展。また、東京では出展が見送られたGM(シボレー、キャデラック)、フォード、クライスラーといった米国メーカーも日本発売前の最新モデルを出展するなど、力のこもった内容となった。
 
新型シボレー コルベット(C7)。6.2リッターV8・OHVで460ps(Z51は466ps)を発揮
また、同じく東京では出展のなかったフェラーリ、ランボルギーニ、マクラーレンは、最新スーパースポーツを出展。フェラーリ F12 ベルリネッタ、ランボルギーニ アヴェンタドール LP700-4、マクラーレン MP4-12C スパイダーおよびクーペ、アストンマーティン V12 Vantage Sなどが並び、スーパーカーショーさながらの情景となった。
 
新型フォード フィエスタ。1リッター3気筒ターボエンジン(エコブースト)を搭載
マクラーレン MP4-12CおよびMP4-12C スパイダーの豪華2台揃い踏み
フェラーリ 458 スパイダーとF12 ベルリネッタ
 

軽のエンジンを搭載したケータハム セブン 130が登場

ケータハム セブン 130。来場者の「パワステは?」という質問に、「アシストという言葉は忘れてください」というスタッフ
一方で、小粒ながら注目を浴びたのが、日本で発表されたばかりの「ケータハム セブン 130」。エンジンはスズキの軽自動車用660cc ターボだが、英国ケータハム社が開発した、れっきとした正規モデル。日本の軽自動車枠に収めるため、トレッドは若干狭められているが、見た目は従来のケータハム セブンのまんま。エンジンは64psだが(最大トルクは10.6kgm)、車重は490kgと軽く、その車名は車重1トンあたりの馬力が約130psであることに由来する。最高速は160km/hとのこと。
 
発売間近のスズキ ハスラー。東京モーターショーに続いて、名古屋でも大人気
もともとは日本市場に合わせてケータハム社が開発したものだが、欧州ではエミッションの関係で税制面で有利になる国があり、チューンを高めた同160や165は、すでにとても人気があるという。130の日本での価格は349万6500円。 この他にも、ITS(高度道路交通システム)の特別企画展、最新エコカーやバイクの試乗会、ステージショーなどのイベントが行われる。
 
VW、アウディ、ポルシェの各ブースも、規模こそ小さいものの、内容は東京モーターショーに近い
■第18回 名古屋モーターショー ・日時:12/12(木)~15(日) 9:00~18:00 ・場所:ポートメッセなごや(愛知県名古屋市港区金城ふ頭2-2) ・入場料:大人 1500円(前売 1200円) 、中学・高校生 700円(前売 500円)、小学生以下 無料 ・名古屋モーターショー公式サイト
 
スバルは新型レヴォーグのほか、7人乗りの「スバルクロスオーバーセブンコンセプト」などを出展
輸入バイクもトライアンフ、ドゥカティ、インディアンなどが出展。写真はモト・グッツィの新型クルーザー「カリフォルニア 1400 カスタム」
スズキの2輪コンセプト「リカージョン」。そばにいた説明員の方は、何とこのモデルのデザイナーだった。開発者と話が出来るのも、モーターショーならでは
 
東京でお披露目された次期MINIの代わりにくまモンやアヒルが登場
カスタムカーなどが集まる1号館にあったのが独G-Techが手がけたアバルト 500ベースのコンプリートカー「G-Tech スポーツスター GT」。いわゆるチョップドルーフで、お値段は658万円(190ps仕様)~
屋外のB級グルメコーナーも楽しい。モーターデイズのオススメは鎌倉のローストビーフ丼。わさび付は100円増しだけど美味しい
 

スバル、新型「レヴォーグ」のプレ内示会を開催:MOTOR DAYS ピックアップニュース

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名古屋スバル自動車、岐阜スバル自動車、三重スバル自動車の3社からなるスバル東海グループは12月13日、名古屋モーターショーを開催中のポートメッセなごや(名古屋市港区)にて、2014年春に発売する新型スポーツツアラー「Levorg(レヴォーグ)」のプレ内示会を関係者向けに開催した。

レガシィ ツーリングワゴンの代わりとなる国内専用モデル

スバル商品企画本部 プロジェクトゼネラルマネージャーの熊谷泰典氏
レヴォーグは、東京モーターショー2013で世界初公開された、スバル言うところの新型“スポーツツアラー”。現行の5代目レガシィは北米市場など海外では販売絶好調だが、日本市場ではボディサイズが大きすぎるなど、スバル自身も「ユーザーのニーズを100%満たすことには限界がある」という認識に至っていた。そこで新たに国内専用モデルとして開発されたのが、今回のレヴォーグ。排気量とボディサイズの二つをダウンサイジングしているのが特徴だ。
 
レヴォーグが発売される来年は、初代レガシィ誕生から25周年
日本国内ではレガシィ ツーリングワゴンの実質的な後継であり、それはスバルの歴代看板モデルであるレオーネ(Leone)、レガシィ(Legacy)に引き続き、「Le」で始まる車名にも表れている。ちなみに、「vo」はRevolution(変革)、「rg」はTouringから取ったとのこと。スバルとしては1989年に登場して大ヒットし、「ツーリングワゴン」という名前を定着させた初代レガシィ同様の革新性を新型レヴォーグに込めているようだ。 富士重工業 スバル商品企画本部 プロジェクトゼネラルマネージャーの熊谷泰典氏は、プレ内示会の壇上で「名前が耳慣れないという声もあるが、こうした由来もあり、子供の名前と同じでしばらくすれば定着すると思う」と語った。

経済性重視の1.6リッター直噴ターボ車を新採用

エンジンは2種類。新開発の1.6リッター直噴ターボは、日本車ではまだ少ない本格的ダウンサイジングエンジンになる
エンジンは、従来からあるパワー志向・ハイオク仕様の2.0リッター水平対向4気筒 直噴ターボ(300ps、40.8kgm)に加えて、新たに燃費性能を重視し、レギュラーガソリン仕様とした新開発の1.6リッター水平対向4気筒 直噴ターボ(170ps、25.5kgm)を採用。後者には、スバルの直噴ターボエンジン車では初めてアイドリングストップ機能が採用されている。 ミッションはいずれもリニアトロニック(CVT=無段変速機)で、2.0リッターの方は8速マニュアルモードを備えたスポーツリニアトロニックになる。駆動方式は全車AWD。 JC08モード燃費(プロトタイプ参考値)は、2.0リッター車が13.2km/Lで、1.6リッター車では17.4km/Lを達成。また、1.6リッターモデルの場合、EyeSightのACC機能を使って100km/hで高速道路を巡航すると、航続距離は燃料満タン(約60リッター)で1000km以上に及ぶという。

ボディサイズは先代レガシィ並みに戻る

ボディサイズ(参考値)は、全長4690mm×全幅1780mm×全高1490mm、ホイールベース2650mmで、現行レガシィ ツーリングワゴンに比べて、全長は100mm、ホイールベースは100mm短い。結果的に、前後方向の長さに関しては、ほぼ先代レガシィ(2003~2009年)並みに回帰した。 一方で荷室容量については、現行ツーリングワゴンと同等の522リッターを確保。スタイリングや外観の質感についても、ボディサイドに抑揚を与えるなど注力したという。

EyeSight(ver.3)を採用。ストップランプを認識し、危険回避アシストも行う

もう一つのニュースは、第3世代の「EyeSight(ver.3)」を初搭載したこと。ステレオカメラによる画像認識範囲を、約40%広角かつ遠方に拡大したほか、これまでのモノクロ認識からカラー認識にバージョンアップ。これにより前方の認識性能が向上し、前走車のストップランプや赤信号の認識も可能になった。また、衝突回避もしくは衝突被害の軽減を行う「プリクラッシュブレーキ」も、前走車(もしくは前方の障害物)との相対速度が最大約50km/hまで向上している。
 
また、衝突可能性が高い場合には、ステアリング制御による「危険回避アシスト」も新しく行うようになったほか、車線逸脱の抑制を行う「アクティブレーンキープ」機能も新採用。約65km/h以上で全車速追従機能付クルーズコントロールを使用して走行する場合は、車線内中央を走行するようにステアリングアシストを行う。 ペダルの踏み間違いよるAT誤発進抑制制御については、これまでのように前進だけでなく、後退にも働くようになった。つまりバックに入れたままアクセルを踏み間違えた場合でも、後方に障害物があれば、急バックが抑制される。 先行予約の受付は2014年1月4日から始まるが、発売は2014年春の予定。今のところ価格や仕様詳細は未発表。
 

デイズのコメント

日本のステーションワゴン好き、そして旧レガシィ好きには待望の車種が登場。ほぼ先代レガシィのコンセプトとサイズ感で、インテリアの質感を上げ、エンジンをダウンサイジングして燃費も良くしたとなると、これはもう死角なし。好評のEyeSightもカラーカメラにバージョンアップした。はっきり言って相当売れるはず。このため、インプレッサやXVといった既存モデルの受注に、生産が追いつかない現在の状況に拍車がかかりそう。ワゴン好きとしては、正座して正式発表を待ちたいクルマだ。
 

ホンダ、新型ヴェゼルを発表:MOTOR DAYS ピックアップニュース

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ホンダは2013年12月19日、フィットベースの新型クロスオーバーSUV「ヴェゼル(Vezel)」を発表した。発売は12月20日から。中部地区での発表会が行われたウェスティンナゴヤキャッスル(名古屋市西区)からリポート。

現代のスペシャリティモデルを目指す

ヴェゼルの開発を担当した本田技研の森下尚久氏(左)と国内販売部部長の加藤成昭氏
新型ヴェゼルは、先の東京モーターショーで参考出品車として公開されたクロスオーバーSUV。プラットフォームやパワートレインは今の3代目フィットがベースだが、ボディサイズは二回りほど大きく、スポーティさや上質感を大きく向上。また、1.5リッター直噴エンジンと組み合わせたハイブリッドシステムの採用や、ホンダ初となるハイブリッド車への4WDの設定など、大きく異なるモデルになっている。 ボディサイズは全長4295mm×全幅1770mm×全高1605mm、ホイールベース2610mm。フィット(3995×1695×1525mm、2530mm)よりかなり大きいが、SUVとしては全高が低く、しかも後方でスラントするルーフなど、スタイリングはクーペ風。ホンダ自身は、今回のヴェゼルを、SUV、クーペ、ミニバンの要素を融合した全く新しいクルマだとしている。
 
また、プレゼンテーションでは、1980年代のアコードインパイア(直列5気筒エンジンを搭載したモデル)やプレリュードが引き合いに出され、当時一世を風靡した“スペシャリティモデル”のような魅力を目指したという説明があった。 それがよく分かるのがインテリア。特に「ハイデッキセンターコンソール」と呼ばれる、運転席と助手席を完全に分ける大型のセンターコンソールはいかにもクーペ風で、スペシャルな雰囲気。また、国内向けホンダ車ではエリシオンのマイチェンモデル以来となる電子制御パーキングブレーキやオートブレーキホールド機能が全車標準となった。
 
逆に後席や荷室では、広さを追求。フィット譲りのセンタータンクレイアウトによって、フィット同様にチップアップ(後席座面が跳ね上げる)&ダイブダウン(背もたれを倒すと、足もとに後席全体が沈み込む)を完備。ハイブリッドでも十分な積載性を確保している。 ボディカラーはハイブリッド専用色でテーマカラーのミスティグリーン・パールなど全8色。片側2灯のLEDヘッドライト(ロービーム)は上位グレードに標準装備される。

ハイブリッドに直噴エンジンを採用

ハイブリッドには、現行フィットの純ガソリン車に採用されている1.5リッター直噴エンジン(132ps、15.9kgm)に、モーターと7速DCTを組み合わせた「スポーツ ハイブリッド i-DCD」を採用。現行フィットハイブリッドの1.5リッターアトキンソンサイクルエンジン(110ps、13.7kgm)に比べて22psパワフルなため、システム出力もフィットハイブリッドの137psから15ps増しの152psに向上している。また、JC08モード燃費はプラグインハイブリッドなどを除くSUVでは国内最高の27.0km/L(ハイブリッドのFF標準車)を達成した。

ホンダで初めてハイブリッドに4WDを設定

写真は東京モーターショーに出展された時のもの(参考出品車)
また、FFに加えて、ホンダのハイブリッド車では初の4WDも用意。4WDシステムはホンダ独自の電子制御式「リアルタイムAWD」となる。なお、フィットハイブリッドにも今月中に4WDが追加設定される予定。 ガソリン車には、フィットと同じ1.5リッター直噴エンジン(131ps、15.8kgm)を採用。こちらにもFFと4WDがあり、ミッションはCVTになる。JC08モード燃費はFF車で20.6km/L。
 
ホンダでは初採用のリアクティブフォースペダル
安全装備に関しては、上位グレードに30km/h以下の低速で自動ブレーキが作動するシティブレーキアクティブシステムを含む「あんしんパッケージ」を標準装備。ただし今のところ、ミリ波レーダーを使ったCMBSやACCの設定はない。 その他、新しい技術としては、燃費によい運転をアクセルペダルの反力で知らせる「リアクティブフォースペダル」をハイブリッド全車に採用。雪道など滑りやすい路面では、アクセルの踏み込みすぎをペダル反力で抑制する。

ガソリン車が187万円~、ハイブリッドが219万円~

車名のヴェゼルとは、カットした宝石の小さな面「Bezel」と「Vehicle」を合わせた造語とのこと。宝石の輝きのように「多面的な魅力と価値を持つクルマ」という意味を込めたという。 生産はフィットと同じで、埼玉製作所の寄居工場。ヴェゼルは北米、欧州、アジアなど全世界で生産・販売される予定のグローバルモデルで、日本から輸出する予定はない。国内の販売目標は月間4000台だが、当面は目標を大きく上回りそうだ。 価格はガソリンのFFが187万~212万円、4WDが208万円。ハイブリッドのFFが219万~250万円、4WDが240万~268万円。

デイズのコメント

10分ほどだが、ハイブリッドに試乗できた。自然なトルク感や滑らかな変速はフィットハイブリッドに近いが、内装の質感は明らかに高く、静粛性も上。後席の乗り心地はやや硬めだった
コンパクトでありながら、スタイリッシュな外観デザイン、今までのホンダとはちょっと違うシンプルなデザインのインパネ、ドア内張り全体を柔らかな布パッドでくるんだ上質な室内など、一見して「これは売れるなあ」と素直に思えるクルマだ。パワートレインもハイブリッドを前面に押し出したことで、ポストプリウスを探す現ハイブリッドユーザーの代替え需要も取り込めそう。ホンダとしてはHR-V(1998~2006年)のことはもう忘れたいようだが、SUVというより新ジャンルの乗り物を提案したという点ではかなり近いのでは。しかし今度は成功するだろう。
 

マツダ アクセラ ハイブリッド:新車試乗記

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キャラクター&開発コンセプト

3代目はガソリン、ディーゼル、ハイブリッドの3つで展開

新型アクセラセダンとアクセラスポーツ (photo:Mazda)
アクセラは、アテンザやデミオと共に、マツダの「Zoom-Zoom」戦略を担ってきたCセグメントモデル。2003年に初代がデビューして以来、世界120ヶ国で370万台以上を販売するなど(2013年3月時点)、今やマツダの販売台数の3割を超える基幹モデルだ。海外名は「Mazda3」。 今回発売されたのは3代目で、2013年10月10日にガソリン車とハイブリッド車の受注受付を開始し、11月21日に発売された。
 
アクセラハイブリッドは、トヨタのハイブリッド技術を使ったモデルの第一弾 (photo:Mazda)
なお、2010年3月にマツダは、トヨタからハイブリッド技術のライセンス供与を受けることで合意しており、今回のアクセラハイブリッドはそれを初めて商品化したもの。さらに年明けの1月には、CX-5やアテンザで好評の2.2リッターディーゼルターボエンジン搭載車も加わる。 「ガソリン」「ディーゼル」「ハイブリッド」と3種類のパワートレインを同一モデルで備えるのは、輸入車では、BMWの3シリーズや5シリーズ、メルセデス・ベンツのEクラスがあるが、国産メーカーでは初めて。ただしアクセラの場合、ハイブリッドは国内専用車になる。

魂動デザイン、先進安全装備、マツダ コネクトを採用

前方をミリ波レーダー、カメラ、近赤外線レーザーレーダーで、後方を準ミリ波レーダーで監視する先進安全技術「i-ACTIVSENSE」 (photo:Mazda)
新型アクセラは、CX-5やアテンザに続いて、車両全体で環境性能などを追求する「SKYACTIV(スカイアクティブ)技術」や、新しいデザインテーマ「魂動(こどう)」を全面採用するモデルの第3弾になる。 さらに、アテンザに続いて先進安全技術「i-ACTIVSENSE(アイ・アクティブセンス)」を採用するほか、新開発のカーコネクティビティ システム「MAZDA CONNECT(マツダ コネクト)」をマツダで初めて採用し、走行しながらでもIT機能を安全に利用できるインターフェイスを提供している。 国内向けの生産はこれまで通り、アテンザと同じ防府工場(山口県防府市)で行う。同工場の年産可能台数は36万台で、その9割以上が輸出される。国内の販売計画台数は月間3000台。
 
東京モーターショー 2013にて
なお、発売から約一ヶ月後の12月19日時点での累計受注台数は、その5倍以上の約1万6000台と発表された。現時点で注文した場合の納期は、ハイブリッドが1月下旬以降、ガソリンとディーゼルが3月下旬以降とのこと。現時点ではガソリンが全体の66%を占める。 ■過去の新車試乗記(マツダ アクセラ関連)マツダ アクセラ スポーツ 20S i-stop (2009年8月)マツダスピード アクセラ(2006年9月)マツダ アクセラ (2003年11月)
 

価格帯&グレード展開

トップモデルは、298万2000円のディーゼル

2.2リッターディーゼルターボを搭載するマツダ アクセラスポーツ XD(2014年1月発売予定) (photo:Mazda)
パワートレインはガソリンエンジン(1.5と2.0)、ディーゼルエンジン(2.2ターボ)、ハイブリッド(2.0ガソリン+モーター)の3種類。変速機は6ATに加えて、6MTも多くのグレードで選べるのがマツダらしい。なお、1.5ガソリンエンジンは新開発のフル「スカイアクティブ」ユニットで、変速機は従来のCVTに代えて、このクラスの国産車では異例の6ATに変更されている。 ボディタイプは5ドアハッチバックの「スポーツ」と4ドアセダンだが、2リッターガソリンとディーゼルはハッチバックのみ、ハイブリッドはセダンのみ、4WDはスポーツの1.5リッター・6ATのみと、少し選択肢が限られる。
 
電動レザーシートを備える「Lパッケージ」の内装。写真のオフホワイトか、ブラックから選べる (photo:Mazda)
価格は1.5ガソリンが171万1500円から、2.0ガソリンが220万5000円から、ハイブリッドが237万3000円から。そして2.2ディーゼルターボ(XD)が6MT・6AT共に298万2000円で、一番高い。「ディーゼル=最上級モデル」という設定が新鮮。 ■アクセラスポーツ(5ドアハッチバック) 【1.5リッター直4+6AT/6MT】  171万1500円~ 最高出力111ps 最大トルク14.7kgm JC08モード燃費17.8~19.4km/L
 
新型マツダ アクセラスポーツ (photo:Mazda)
【2.0リッター直4+6AT】   220万5000円~ 最高出力155ps 最大トルク20.0kgm JC08モード燃費18.4~19.0km/L   【2.2リッター直4ディーゼルターボ+6AT/6MT】  298万2000円 最高出力175ps 最大トルク42.8kgm JC08モード燃費19.6km/L(6AT)
 
アクセラハイブリッドはセダンのみ (photo:Mazda)
■アクセラセダン(4ドアセダン) 【1.5リッター直4+6AT/6MT】  171万1500円~ 最高出力111ps 最大トルク14.7kgm JC08モード燃費17.8~19.6km/L ■アクセラハイブリッド(4ドアセダン) 【2.0リッター直4+モーター】  237万3000円~ ※今回の試乗車 システム最高出力136ps JC08モード燃費30.8km/L
 

パッケージング&スタイル

小さなボディでアテンザのカッコ良さを再現

ボディカラーは全8色。写真は特別塗装色のスノーフレイクホワイトパールマイカ
今回試乗したのはハイブリッドで、ボディは自動的に4ドアセダン。CX-5やアテンザに続く「魂動デザイン」の第3弾ということで、スタイリングは一見「ミニアテンザ」風。ただしボディサイズが違うだけに、全体に伸びやかなアテンザに対して、アクセラでは凝縮感が追求されている。実際には、アテンザより小さいとは言え、セダンだとBMWの3シリーズに迫る大きさなのだが。

セダンとハッチバックでリアドアを共通化

ホイールの意匠までガソリン車と同じなので、リアのバッジを見ないとハイブリッドだと分からない
また、単なる偶然だろうが、2700mmのホイールベースやハッチバックの全長は、現行プリウスと全く同じ。ハッチバックでもハイブリッドが選べたら、プリウスやCT200hとモロに競合しそう。 面白いのは、フロントドアだけでなく、リアドア(サイドウインドウも含む)も、セダンとハッチバックで共通であること。こういうケースは極めて珍しいが、開発していく過程で、一緒でいいじゃん、ということになったようだ。確かに。
 
アクセラセダン。Cd値は0.26 (photo:Mazda)
アクセラスポーツ。Cd値は0.28 (photo:Mazda)
アクセラスポーツ。 (photo:Mazda)
 
    全長(mm) 全幅(mm) 全高(mm) WB(mm) 最小回転
半径(m)
VW ゴルフ 7(2013~) 4265 1800 1460 2635 5.2
レクサス CT200h(2011~) 4320 1765 1450~1460 2600 5.0~5.2
スバル XV ハイブリッド(2013~) 4450 1780 1550 2640 5.3
トヨタ プリウス (2009~) 4460 1745 1490 2700 5.3
マツダ アクセラ スポーツ(2013~) 4460 1795 1470 2700 5.3
マツダ アクセラ セダン(2013~) 4580 1795 1455 2700 5.3
BMW 3シリーズ セダン(2012~) 4625 1800 1440 2810 5.4
 

インテリア&ラゲッジスペース

内装もクーペのようにスポーティ

7インチディスプレイや一眼メーターを中心に、シンプルかつスポーティ、そして機能的にデザインされたインパネ
インテリアもマツダらしくスポーティ。ダッシュボードのカウルが低く、Aピラーが手前に立ち、しかもフロントドアのウエストラインが古典的なスポーツカーように抉られているので、まるでFRのスポーツセダンやクーペのような印象を受ける。 また、ここ数年、マツダ車に乗るたびに言っているが、質感もずいぶん高くなったが、このあたりは海外でVWのゴルフ7とまともに戦うクルマである以上、半ば必然か。実際のところ、全体のクオリティレベルは欧州車風。
 
試乗車は電動レザーシート(シートヒーター付)を装備する「Lパッケージ」付。オフホワイトも選べるが、これはブラック
初代ロードスターの開発時に初めて使われたキーワード「人馬一体」を目指したというドライビングポジションは、確かにいい。前輪を50mm前方に配置することで自然なペダルレイアウトを実現したほか、先代よりAピラーを100mm後退させて優れた視界を確保したとのこと。座り心地も秀逸で、ドラポジ自由度も高い。ここも欧州車レベル。

OSレベルからアップデートできる「マツダコネクト」

視線移動の少なさ、アイコンやフォントの視認性にこだわった7インチディスプレイは、15Cを除いて標準装備
新型アクセラで初めて採用されたのが、マツダ独自のITインターフェイス「マツダ コネクト(MAZDA CONNECT)」。これはマツダの「Heads-Up Cockpit(ヘッズアップ コックピット)」、つまり顔をちゃんと前に上げて、わき見をせずに運転する、というコンセプトに沿ったインターフェイスだ。 具体的には、ダッシュ中央の7インチディスプレイをほぼ全車標準化し、ナビゲーションなどの各種操作をセンターコンソールのコマンダーコントロールで可能にしたもの。要はBMWのiDriveやアウディのMMIのマツダ版。操作感は双方の最新バージョンのいいとこ取りをして、さらに日本人にも馴染みやすいように改良したという感じ。
 
コマンダーコントロールの操作は、少し慣れが必要な部分もあるが、おおむね良好
また、時流に遅れず、スマートフォンとブルートゥースで連携させ、インターネット経由で利用できる各種サービスもそれなりに充実。高級オーディオ大手の米国ハーマン社が運営するWebコンテンツ「Aha」を使えば、世界中4万局以上のインターネットラジオ局にアクセスできるほか、Twitterの新着ツイートやFacebookのニュースフィードの音声読み上げ、Facebookの「いいね!」や音声メッセージ投稿機能なども利用できる。
 
「アクティブ・ドライビング・ディスプレイ」と呼ばれるヘッドアップディスプレイ。車速の他、ナビの誘導矢印、緊急性の高い警告などを表示
また、ナビゲーションシステムは、販売店オプションのナビゲーション用SDカード(3万5000円)をセットして利用する。地図自体は海外で開発された独特のものだが、年1回、3年まで無料更新可能とのこと。 ナビを含めて、マツダ コネクトは「古くならないシステム」を目指し、スマートフォンやインターネットの各種サービスやシステムの進化に合わせて、OSレベルからアップデートできる仕組みとのこと。ここに来て、車載ITは次のフェイズに入った、と思わせる。
 
ハイブリッドのトランク容量は312L。ちなみにガソリン車のセダンは419L、スポーツは364L(4WDは362L)
ハイブリッドは駆動用バッテリーを搭載するため、トランクスルーはできない(ガソリン車は可能)。床下はパンク修理キットと小物入れ
後席は、スペース、座り心地、着座姿勢、乗降性など、全ての点で不満なし。ゴルフと十分に戦える
 

基本性能&ドライブフィール

動力性能はプリウスとほぼ互角

ハイブリッドシステムはプリウスと同じだが、エンジンはマツダ自製。エンジンベイに収まるため、給排気系や補機類も再設計されている
今回はマツダ初のハイブリッド車のお手並み拝見、ということで、アクセラハイブリッドに試乗。 前述の通り、ハイブリッドシステムの動力分割機構、モーター(82ps、21.1kgm)、バッテリー(ニッケル水素)といったハード部分は、トヨタから供与されたもので、具体的には現行プリウスやレクサス CT200hとギア比も含めて同じ。スロットルペダルも、アクセラの純エンジン車ではオルガン式なのに対して、ハイブリッド車にはスロットルセンサーごと、プリウスと同じ吊り下げ式に変更されている。ただ、ペダルレイアウトに関してはマツダ流にかなりチューニングしたようで、特に気になるところはない。
 
ハイブリッド用に改良されたマツダ製2リッター直4ガソリンエンジン。直噴システムや吸排気VVTを備えた贅沢なユニット (photo:Mazda)
一方で、エンジンはプリウスやCT200hだと1.8リッター直4だが、アクセラにはマツダ自製の2リッター直4・直噴ユニットをハイブリッド用に改良して採用。最高出力を純エンジン車の155psから、プリウスやCT200hと同じ99psに、最大トルクを同じく20.0kgmから14.5kgmにデチューンしているのは、余分な開発工程を省き、トヨタのハイブリッドシステムと問題なくマッチングさせるためだという。とはいえ、ここに自製エンジンを使うところが、「スカイアクティブ」を提唱しているマツダの意地か。
 
スカイアクティブ-ハイブリッドシステム (photo:Mazda)
プリウスに似た電制シフトセレクターをDに入れて走りだせば、やはりプリウスに似た感覚で、するすると力強く走りだす。アクセルを深く踏み込めば、いつの間にかエンジンが掛かってブォーンと加速するところも、おおむね同じ。システム出力はプリウスと同じ136psで、車重もほぼ同じ1390kgだから、まあ当たり前か。 ただ、プリウスより排気量が200cc多い分、エンジンが掛かってからの力強さは若干上かも。また、加速感を自然にするなど、マツダ独自のチューニングは入念に行われたらしい。とはいえ、3代目プリウスと直接比べなければ、感覚的にはほぼ互角と思える。

あ、この瞬間がマツダらしい

ハイブリッドのシフトセレクターはプリウスに似た電子制御式。パーキングはボタン操作
しかし、100メートルも走らないうちに、パワートレインの印象より先に意識が行ったのは、ガシッと座りのいい電動パワステや、やはりガシッととしながらも、同時にしなやかな足回りから来る感覚。ちょっと走るだけでそんなこと分かるのか、と思うかもしれないが、パワートレインの印象が似ているだけに、かえって違う部分が目立つ。あ、この瞬間がマツダだね、という感じ。 ワインディングへ行くと、この差はもっと顕著。簡単に言って、プリウスは基本的にドライバーの意志で積極的に曲げにくいクルマだが、アクセラハイブリッドは他のマツダ車同様、最初はびっくりするくらい、よく曲がる(特にプリウスを基準にすると)。
 
ハイブリッドのタイヤは全車205/60R16で(1.5ガソリン車と同サイズ)、試乗車はBSのエコピア。グリップはまあ十分だが、17インチ仕様も欲しいところ
もっとも、マツダに言わせれば、新型アクセラでは、自然なコーナリングを実現するため、旋回初期にドライバーの予測以上にヨーが発生しないように「ため」を作った、とのこと。ただ、それはあくまで従来マツダ車を基準とした話だろう。 あと、回生協調ブレーキの制動フィールもすごく自然。プリウスなどトヨタのハイブリッド車だと「あ、回生してるな」と意識するのだが、アクセラハイブリッドは試乗中にほとんどまったく意識しなかった。このあたりのチューニングも、操作フィールにこだわるマツダらしいところ。

ハンドリングがいいだけに

一方で気になったのは、プリウス同様、アクセルを離しても、ほとんどエンブレが効かないこと。エンブレが効くはずの「B」レンジでも思ったほど強く作用しないので、ブレーキを上手に使わないとコーナー進入時に前輪に荷重を載せることが難しい。この点はプリウスだと諦めもつくが、アクセラの場合はハンドリングが良いだけに、ドライバーが純エンジン車と乗り方を変えないと、おっとっと、となる。 また、このシャシーにして、パドルシフトはおろか、スポーツモードがないのも惜しい。もちろん、意図的にプッシュせず、ちょっと速いペースで走るくらいなら、何の不満もなく走れるのだが。 逆に好印象だったのは、シャシー性能の高さ。これは、最大トルク42.8kgmのディーゼルターボ車もある新型アクセラならではの余力か。ボディのガッシリ感、しなやかに動くサスペンション、ロードノイズや風切り音の小ささなど、一クラス上の余裕が感じられる。

試乗燃費は14.8~25.4km/L。JC08モード燃費は30.8km/L

今回はトータルで約200kmを試乗。参考までに試乗燃費(車載燃費計)は、いつもの一般道、高速道路、ワインディングを走った区間(約90km)が14.8km/L。一般道で、無駄な加速を控えて走った区間(約30kmを3回計測)が22.5km/L、23.3km/L、25.4km/Lだった。 ハイブリッドの場合、JC08モード燃費は全車30.8km/Lで、これはプリウス(エントリーグレードのLは32.6km/Lだが、主力は30.4km/L)と互角。燃料タンク容量もプリウスと同じ45リッターだから(純エンジン車は51リッター)、航続距離もだいたい同じだろう。
 

ここがイイ

シャシー、スタイリング、マツダ コネクトの可能性

気持ちのいいハンドリングと乗り心地の良さを両立した足回り。このクラスのセダンでは珍しくズングリ感のないスタイリング。快適性の高さ。プリウス同様、燃費の良さ。また、正直なところ、ガソリン車ならどうかと試乗したくなったし、来年発売のディーゼルもそうとう楽しみ。 OSからアップデートが可能だというマツダ コネクトの先見性と可能性。

ここがダメ

スポーツモードが欲しかった。ハイブリッドの場合、先進安全装備の未設定

メリハリのある運転スタイルと相性がいいシャシーと、メリハリのないトヨタのハイブリッドシステムとが、いまいちマッチしていないこと。スポーティに走ろうとした場合、シャシーはマツダらしく応えてくれるが、パワートレインはやはり大ざっぱに言えばプリウス的。せめてCT200hみたいに、スポーツモードやパドルシフトが欲しかった。 今のところ、今回試乗したアクセラハイブリッドに関しては、低速(4~30km/h)での衝突回避・被害軽減を行うスマート・シティ・ブレーキ・サポート(SCBS)&AT誤発進抑制制御、もしくはミリ波レーダーを使ったスマート・ブレーキ・サポート(SBS)&マツダ・レーダー・クルーズ・コントロール(MRCC)の設定がないこと。これらは「スポーツ」の上位グレードには標準装備になる。

総合評価

この方法をどんどん真似ればいい

トヨタのハイブリッドシステムが、他メーカーのクルマに載るのは、国内では初めてのはず(海外では日産、フォードの例がある)。これから自社でハイブリッドシステムを一から開発するなんてのはムダなことだから、こういことは他社でもどんどんやればいい。10年後にパワートレインの主力がどうなっているかなんて分からないのだし。燃費にこだわるユーザーをハイブリッド車で満足させ、その傍らで、走らせて楽しいクルマを欲するユーザーを重視していくことが、ひとつの生きる道のはず。マツダはそれを選び、その結果が今回の試乗車ということになる。
 
車両価格がガソリン車より高く、8万kmくらい走らないと元が引けないというハイブリッド車だが、カタログ値や燃費競争、流行、税制などに煽られて動く日本のマーケットをかんがみると、作らなければ致し方なしということ。新型アクセラの立ち上がり一ヶ月の受注台数は約1万6000台だが(目標は月販3000台)、ガソリン車66%、ディーゼル車15%、ハイブリッド車19%と、ハイブリッドばっかりになっていないのはマツダファンの心意気を見た感じだ。また、ハイブリッド比率を今後も約20%とすると、月販わずか600台のために新たにハイブリッドを開発するわけにはいかないから、やはり今回の選択は正解だった。こうなれば独自のハイブリッドを持たない他社も、この方法をどんどん真似ればいいと思う。
 
で、このクルマ、パワートレインはエンジン以外、プリウスとほぼ同じだが、マツダらしいスポーティ感を実現しているあたりは立派なもの。乗って楽しいハイブリッド車、軽快感があるハイブリッド車が欲しいなら、このアクセラはおすすめだ。 ところでこのアクセラ、じっと見るとなかなかいいスタイリングで、サイズもそこそあるのだが、路上では意外に小さなクルマに見えてしまう。その昔、丸い(曲線の)クルマと四角いクルマ論争があったと思うが、丸いクルマは小さく見えがちで、分が悪かった。ゴルフ7など、妙に四角くて、存在感がある。おそらくアクセラは海外の路上では映えるクルマだが、こと日本市場ではもうちょっと造形に主張があってもよかったと思う。

マツダ コネクトは今後に期待

高評価したいのがマツダコネクト。これもまた海外市場で他メーカーと張り合えるよう、海外メーカーと似たような仕組みを用意し、それをそのまま日本に持ち込んだというものだろう。タッチパネルではない操作系はロジカルであり、日本のカーナビのようなアバウトさはない。スマホが一般化したように、やがてカーナビはこういうものへ集約していくのかもしれない。 ただ、率直に言って現時点での使い勝手は今ひとつだ。特に気になったのが地図。デザインとして外国人がロジカルに日本地図を再現したようで違和感があり、コンビニなどのタウン情報が少ないのも不便。情報豊かなGoogle Mapを表示したくなってしまうが、それはできない。また、運転席正面のヘッドアップディスプレイも必要性を感じなかった。日本では流行らない装備だ。ネットラジオも普段聴いている放送が聴きたいだけなのだが……。それでもこれを評価するのは、今後の可能性の部分。改良がすすめられ、その恩恵を既存ユーザーも受けられるというのは、全く新しいこと。今後に期待したい。

海外向けを日本向けに仕様変更

アクセラに乗ってみると、アクセラそのものは日本向けではなく、海外に向けて作られているということがつくづく実感された。海外で現地のクルマに対抗できるまでに仕立てられたクルマゆえ、日本ではまるで輸入車のようだ。家電でもそうだが、海外向けを日本向けに仕様変更した、という商品が増えているが、クルマもそうなってきたということだろう。その仕様変更の最たるものが、アクセラの場合は国内専用となるハイブリッドと言えるかもしれない。 逆に、欧州車を好むようなクルマ好きからすれば、アクセラの魅力はガソリン車、そしてディーゼル車にあるように感じられる。ただ、世の中はクルマ好きで成り立っているわけではないので、ハイブリッド車も必要であり、そこは日本市場に強いトヨタの力を借りて実現させたマツダ。中小メーカーはこうじゃなくちゃ、とそのしたたかさに拍手を送りたい。
 
今年はスバルがトヨタと協業して86/BRZを出し、日産・三菱はデイズとekワゴンで、そしてマツダもハイブリッド限定だが、こうしてトヨタと組んだ。完全独立独歩でやる日本のメーカーは、いよいよホンダくらいか(スズキも?)。やがてくる再編の激動期に向け、いよいよ一歩踏み出したというのが今年のような気がする。やがてクルマがロボットになった時、果たして日本のメーカーはどれだけ生き残っているのだろうか。
 

ルノー ルーテシア インテンス / RS:新車試乗記

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キャラクター&開発コンセプト

デザイン、エンジン、ミッションなど全てを刷新

新型ルノー ルーテシア
欧州では2012年秋にデビュー、日本では2013年7月に発表され、9月に発売された新型ルーテシア(海外名クリオ)は、Bセグメントのコンパクトカー。初代は1990年の登場で、今回のモデルは4代目にあたる。日本ではややマイナーな存在だが、欧州では極めてポピュラーなモデルで、グローバルでの販売累計は1200万台を超える。また、1991年には初代が、2006年には3代目が欧州カー・オブ・ザ・イヤーを受賞している。 クリオ4こと4代目ルーテシアの特徴は、2010年のパリモーターショーで発表されたコンセプトカー「デジール」で提示されたデザインや、新開発の直噴ターボエンジン、同じく新開発の6速DCT(デュアル クラッチ トランスミッション)の採用など、抜本的かつ多岐にわたるもの。ルノーの方向性や世界戦略を示す重要なモデルになっている。

新型RSも登場。直噴ターボ、6速DCT、5ドアを採用

新型ルノー ルーテシア RS
2013年11月には、200psを発揮する1.6リッター直4・直噴ターボエンジンを搭載した新型ルノースポール(以下RS)も日本で発売された。歴代ルーテシアRSは、3ドアハッチのMTのみだったが、新型は5ドアハッチの6速DCTのみとなり、5ドアと2ペダル志向が強い日本市場には相性のいいモデルになっている。 生産はトルコのバルサ(Bursa)工場をメインに、フランス国内のフラン(Flins)工場でも行われるが、RSだけは名門アルピーヌの本拠だったフランス北部のディエップ工場で最終組立が行われている。
 
2010年に発表されたコンセプトカー「デジール(DeZir)」(東京モーターショー2013にて)
■過去の新車試乗記ルノー ルーテシア RS (2010年2月)3代目ルノー ルーテシア (2006年4月)2代目ルノー ルーテシア (1999年2月)
 

価格帯&グレード展開

全車に直噴ターボ、6速DCT、5ドアを採用

普通のルーテシアの場合、ボディーカラーは全7色。インテンスの場合、ホイールカラーもコーディネイトできる
従来は3ドアと5ドアを用意するのが習わしだったルーテシアだが(欧州にはエステートもある)、新型は今のところ欧州でも3ドアのみ。 欧州には1.5リッター直4ディーゼルターボや新開発の0.9リッター直3ガソリンターボ(90ps)も投入されているが、日本市場にはその4気筒版となる1.2リッターガソリンターボ(120ps)を導入。また、RSには日産の横浜工場で生産される1.6リッター直4ターボ(200ps)が搭載される。 トランスミッションはRSを含めて6速DCTのみになった。ハンドル位置はすべて右になる。先代ルーテシアは4ATだったし、一昔前までRSは左ハンドル・MTのみだったので、隔世の感がある。

199.8万円からスタート。RSは299万円~

RSのボディカラーは5色。写真はデジールのカラーを再現したルージュ フラム メタリック
価格は、16インチスチールホイールを履き、リア窓が手回しになるエントリーグレード「アクティフ」(受注生産)の199万8000円からスタート。中間グレードの「ゼン」(215万円)をはさみ、17インチアルミ、オートエアコン等を標準装備し、内外装カラーをコーディネイトできる「インテンス」(238万円)が上級グレードとして用意される。 RSには、日常ユースに合ったサスペンション設定の「シャシー スポール」(299万円)と、サーキット走行までカバーするサスペンション設定やステアリングギア比を持つ「シャシー カップ」(309万円 ※ジョン シリウス メタリックのみ324万円)の2種類を用意。前者はシルバーの17インチホイールと205/45R17タイヤ、後者はブラックの18インチホイールと205/40R18タイヤを履く。
 
車両協力:ルノー名古屋東
■ルーテシア ・アクティフ  199万8000円(受注生産) ・ゼン     215万円  ・インテンス  238万円 ※今回の試乗車 ■ルーテシア RS ・シャシー スポール 299万円 ・シャシー カップ  309万~324万円  ※今回の試乗車
 

パッケージング&スタイル

これなら5ドアでもいい

17インチタイヤ(205/45R17)を履くインテンス。ドアパネルおよびフェンダーの抑揚に注目
前述のように、新型ルーテシアは5ドアのみ。5ドアで統一する方向は、アルファロメオの現行ジュリエッタなどと同じで、世界的な流れだ。リアドアのアウターハンドルをピラーにビルトインし、一見3ドア風に見せる手法は最近では珍しくないが、そもそもスタイリング自体がかなりスポーティ。3ドア好きでも、「これなら5ドアでもいいか」と思わせるスタイルになっている。 なお、先代RSは微妙にオーバーフェンダーだったが(RS専用のダブルアクスル ストラットサスペンションを収めるため)、新型RSのそれはベース車と同形状になっている。

デザインしたのは、あの人

RSにはF1のフロントウイングをモチーフにしたフロントバンパーが備わる。写真はシャシーカップ仕様
エクステリアデザインは、フロントフェイスからサイド、ルーフラインに至るまで、表情豊かで、抑揚も大きい。ライバル車の一つであるポロが地味で、無愛想に見えてしまうほどだ。 新型ルーテシアのデザインをディレクションしたのは、すでに各媒体で話題となっているように、2009年にルノーに入社し、前任のパトリック・ル・ケマン氏に代わってデザイン部門のトップとなったオランダ出身のローレンス・ヴァン・デン・アッカー氏。実は同氏、以前はフォードなどに在籍し、2009年までマツダで「Nagare」などのコンセプトカーを手がけてきた人。そう言われみると、何となく現行マツダ車の面影があるような……。日本人としてはちょっと複雑?
 
写真のボディカラーはジョン エクレール、つまりエクレア(稲妻という意味もある)の黄色
RSにはディフューザー形状のリアバンパーやツインマフラーが備わる。メガーヌRSより派手かも
ホイールベースはBセグ車としては最長レベル
 
    全長(mm) 全幅(mm) 全高(mm) WB(mm) 最小回転半径(m)
ホンダ フィット ハイブリッド(2013~) 3955 1695 1525 2530 4.9~5.2
VW ポロ(2009~) 3995 1685 1460~1500 2470 4.9
トヨタ アクア (2011~) 3995 1695 1445 2550 4.8~5.7
ルノー ルーテシア(2013~) 4095 1750 1445 2600
ルノー ルーテシア RS(2013~) 4105 1750 1435 2600
VW ゴルフ 7(2013~) 4265 1800 1460 2635 5.2
 

インテリア&ラゲッジスペース

ルノーらしさを踏襲。RSにはオレンジの差し色

ブラック基調が標準になる普通のルーテシア。インテンスではカラーコーディネイトも可能
インテリアもダイナミックかつシンプル。VWに対抗すべく、質感は必然的に上がっているが、ルノー車らしい丸みのあるモチーフもしっかり継承されている。内装カラーはブラックが標準だが、上級グレードのインテンスでは、ボディカラーによっては内装トリム(ダッシュボード上部、シート地やドアトリムの一部)やアルミホイールの一部に、ルージュ(赤系)、ブルー、マロン(茶系)といったカラーがあしらわれる。
 
RSには専用装備のほか、オレンジ色のアクセントが入る
RSに関しては、専用ステアリング、パドルシフト、専用スポーツシートなどが装備される。ちなみにチタン製パドルシフトは、日産GT-Rからの流用品とのこと。これもルノー・日産アライアンスによる恩恵か。MT用のシフトレバーやクラッチペダルがないのが、ちょっと淋しかったりして。
 
後席の格納はシングルフォールディング(背もたれが倒れる)のみ。段差はあるが、これはこれでありか
後席は先代と大差なく、CセグとBセグの間といった感じ。4エアバッグ標準装備で、ユーロNCAPでは最高評価の5つ星を獲得
ステアリングにはチルトに加えて、先代にはなかったテレスコ(伸縮調整)が採用された
 
荷室容量はBセグ車でトップクラスの300リッター。RSはパンク修理キットになる
RSのリアシート。シート地やシートベルト以外は基本的に同じ
RSのスポーツシートは、メガーヌRSほどではないが、高いサポート性を持つ
 
普通のルーテシアには、フランス人好みの吊下式スペア(フルサイズの185/65R15)を装備
標準装備のオーディオは流行りのタッチパネル操作。ただしサテライトスイッチも装備する
ルノーお得意のカードキーを採用。コンソールに差してボタンで始動する
 

基本性能&ドライブフィール

「直噴ターボ+DCT」感は控えめ

ルーテシアの1.2リッター直噴ターボ。ついにチェーン駆動になった
今回は1.2ターボのルーテシア(インテンス)と1.6ターボのルーテシア RS(シャシーカップ)に試乗した。 まずは普通のルーテシアから。エンジンは新開発の1.2リッター直4・直噴ターボで、最高出力はメーカーが主張するように1.6リッター並みの120ps/4900rpmを発揮。また、最大トルクは2リッター並みの19.4kgm/2000rpmを誇る。それぞれ発生回転数が異様に低いのは直噴ターボならでは。
 
普通のルーテシアには、センターコンソールに「ECO」ボタンが備わる。かなり大人しくなるが、通勤なら十分かも
6速EDC(エフィシェント・デュアル・クラッチ)と呼ばれるミッションは、要するにフォードやボルボなどでおなじみのゲトラグ製6速DCT。それらと同じで、発進、加速、変速といった一連の動作は、よく言えば6速ATみたいにスムーズだが、VWのDSGみたいな鋭いレスポンスやダイレクト感はない。予備知識なしで乗った場合は、DCTであることに気付かないかも。
 
試乗したインテンスは17インチタイヤを履くが、乗り心地はまったく問題ない
車重はこのインテンスで1210kgだから、パワーウエイトレシオは約10kg/ps。街中での加速感は数値から想像される通りで、国産車で言えば1.5リッタークラスのコンパクトカーに近い。 直噴ターボだが、ターボラグは皆無で、出力特性は自然吸気エンジンみたいに超フラット。それはいいのだが、一方で体感的なパワー感は期待されるほどではなく、吹け上がりはやや重々しい。パワートレインに関しては、同じ1.2ターボのポロ TSI ハイラインやコンフォートライン(105ps、17.8kgm、車重1100kg)に、ちょっとまだ譲るという印象。エンジン特性に加えて、車重が少し重いせいもあるかも。

高速域では、さすがフランス育ち

一方で。思わず見なおしてしまったのが、高速道路での走りっぷり。まずエンジンが、低回転型っぽいカタログ数値とは裏腹に、高回転域で実によく伸びる。最高速(発表値)は199km/hとのことだが、確かに頑張ればそれくらい出そう。 でもって、直進安定性やフラット感も高い。プラットフォームは先代のキャリーオーバーだが、リアサスがトーションビームでも、ここまでやれるのかという感じ。シャシーはポロに勝っている、と思う。ハイスピード域では風切り音がザワザワと高まってくるが、このクラスでは許容すべきレベル。フランスの高速道路(オートルート)は制限速度が130km/hだが、そのあたりで巡航するには何の不満もない。ちなみにクルーズコントロールは全車標準だ。

RSは200ps!だが、メガーヌRSほど激しくない

RSの1.6直噴ターボ「M5M」は、実は日産ジューク ターボに搭載されているMR16DDTをベースにしたもの。生産も横浜で行われる
RSに乗り換えると、まず専用チューンのボボボン!という排気音が頼もしい。メガーヌ RSのスポーツモードほではないが、ルノー・スポールらしい体育会系の音が心をくすぐる。 RSの1.6リッター直4・直噴ターボエンジンは前述の通り日産製だが、専用チューンとのこと。最高出力は200ps/6000rpmで、1.2ターボの6割7分増。最大トルクは24.5kgm/1750rpmで、同じく2割6分増になる。パワーウエイトレシオ6.4kg/psという数値は、ゴルフ6のGTIに匹敵する。
 
RSには「ECO」ボタンの代わりに、「スポーツ」ボタンが備わる。
ミッションは1.2ターボと同じ6速DCTで、変速フィーリングも一緒。後で各ギア比を比べたら、最終減速比も含めてまったく同じだった。 ただ、RSには出力特性や変速プログラムを変更できる「RSドライブ」が備わり、ノーマル、スポーツ、長押しでレースと3つの走行モードを選択できる。レースは、シフトチェンジが0.15秒まで短縮され(ただし自動シフトアップはしなくなる)、ESCの作動も解除される自己責任モード。またスポーツとレースでは、発進前の静止状態でエンジン回転数を2500回転で保持する「ローンチコントロール」も使える。
 
とはいえ、その印象は、スペックほど暴れん坊ではなく、ちゃんと手なづけられたもの。ブレーキ制御を使って差動制限を行う「R.S.デフ」が効いているのか、トルクステアもほとんどない。メガーヌRSのスポーツモード(265psで、PWRは5.4kg/ps)のように、「クルマに技量を試される」感がないのは、MTではなく、2ペダルだからか。 ちなみに、先代ルーテシアRSの自然吸気2リッター直4エンジンは、202ps/7100rpm、21.9kgm/5400rpmという高回転型。新旧の差はいろいろあるが、そのうちの一つは先代だとパワーバンドをキープするために、特に山道では上までぶん回す必要があったのに、新型ではそのへんがズボラでもOKになったこと。もちろん、ここでもMTからDCTになったことが効いている。

針の目を通すハンドリング

シャシーカップは黒の18インチホイールに、ダンロップのスポーツMAXXを履く
RSには、専用セッティングのスプリングやHCC(ハイドロリック・コンプレッション・コントロール)なる専用ダンパーが装備されるが、試乗車はよりハードな「シャシーカップ」仕様。シャシースポールに比べて3mmローダウンされ、フロントサスは27%、リアは20%ハードになるほか、ステアリングギア比がよりクイックになり、さらにパッツンパッツンに引っ張った205/40R18タイヤを履く。 コーナーでの身のこなしは、普通のルーテシアとは別物で、シャープかつダイレクト。ステアリングとフロントノーズが直結しているみたいに動くのが面白く、やはりルノーの高性能モデルはハンドリングマシンだと思い知らされる。また、この針の目を通すようなハンドリングを知ってしまうと、シャシーカップを選びたくなる。これに比べてシャシースポールは明らかに姿勢変化を許すセッティングになるようだ。 また、シャシーカップでも乗り心地は特に悪くない。ボトミング特性に優れたHCCのおかげか、段差などで突き上げが気になることもほとんどなかった。後席は分からないが、助手席から乗り心地に不評が出ることは多分ないと思う。 そんなわけで、高速道路での走りは余裕に決まっている。最高速は先代の225km/hを上回り、230km/h(UK仕様)とあった。 ただ、やはり排気量は1.6リッターということで、メガーヌRSやゴルフGTIのような2リッターターボ車に比べると、エンジンをブン回して、一生懸命走る感はある。静粛性も、ギア比が同じせいもあってか、1.2ターボと大差なく思えた。

試乗燃費(1.2ターボ)は11.9km/L。指定燃料はもちろんハイオク

今回は2台合わせて、トータルで約200kmを試乗。試乗燃費(車載燃費計)は普通のルーテシアだけで行い、いつもの一般道、高速道路、ワインディングを走った区間(約90km)で11.9km/Lだった。これはかなり飛ばしての数値なので、大人しく走ればもっといいはず。JC08モード燃費は、いずれも未発表。 燃料タンク容量は、このクラスでは標準的な45リッター。指定燃料はいずれもハイオク。
 

ここがイイ

デザイン、シャシー、RSの乗り心地

スタイリングはこのBセグメントで出色の出来。あれほど質感高く、知的に見えたポロが、新型ルーテシアと較べてしまうと、ずいぶん退屈に見えてしまう。デザインコンセプト通り、「恋に落ちる」かどうかはともかく、少なくともライバル車のデザインが前より色あせて見えかねないのは確か。 今後、ルノー全車で統一されていくというフロントグリルは、さすがに最初からデザインされただけに、カングーのような違和感がない。また妙な威圧感なしに、見事にブランドを主張しているのはさすが。 高速道路での走りっぷり。シャシーはこのクラスではベストの一つだろうし、1.2リッターのターボエンジンも高速域では期待以上の仕事をきっちりこなす。 乗り心地のいいRSの足。スポーティ=硬いといまだ思っている人が多いが、シャシー性能が高まれば、乗り心地も良くなる。街乗りでもまったく問題ない。

ここがダメ

内装あれこれ、日本のナンバーの位置

好みの問題かもしれないが、フローティングタイプ(浮いているように見える)のセンターダッシュパネルをクロームメッキで縁取っているのは、なんだかちょっと安っぽく見える。また、RSの内装にはメガーヌRSにある、えも言われぬスペシャル感というか、いっちゃてる感が欲しかった。確かにスポーツシートがあり、オレンジのアクセントも効いているが、もう少し硬派でも良かったと思う。それからフランス車ではいつものことだが、ペットボトルの置き場がない。ドアポケットにねじ込めばなんとかなるのは分かったのだが。 明らかに変だと思ったのは、リアゲートを閉める時に手を掛ける部分の凹みが、手が引っかからない形状になっていること。仕方ないので、リアゲートのヘリに手をかけて締めることになった。要改善。 フロントの日本のナンバープレート位置に違和感がある。本国の細長いものなら、この位置でいいが、日本のナンバーならもうちょっと位置を上げないと。スタイリングが見事なだけに惜しい。後付パーツが出てくるとは思うが。 パワートレインは、直噴ターボ、6速DCTと、今必要とされる要素をしっかり取り入れたもので、動力性能そのものも十分だが、1.2ターボ、1.6ターボ共に、6速DCTの印象も含めて、何となくダイレクト感やスムーズさは物足りない。このあたりは、依然VWグループ車がリードしていると感じる。

総合評価

付加価値を求めると、目は自ずと輸入車に向く

日本市場における2013年の輸入車販売は、絶好調だった。総販売台数28万540台という数字は、前年比で16.1%増。除軽市場の8.6%(前年比1.5%増)が輸入車で、これは1966年の統計作業開始以来、過去最高の数字だという。 そこまで輸入車が売れているのは、要するにクルマ好きが魅力的なクルマを買おうと思うと、輸入車が一気に浮上してくるからだ。足としてのクルマではなく、クルマに何らかの付加価値を求めた場合、クルマ好きの目は自ずと輸入車に向く。景気云々より、その傾向がますます高まっているということだろう。 今や新車販売の4割を占める軽自動車も、付加価値という点では同様。軽の場合、大きくは経済性という付加価値だが、デザイン的にも個性的なクルマが増えているのが、売れている理由だと思う。代々のカローラをセールスマンに進められるまま代替している、という人の絶対数は、どんどん減り続けているはず。それでもいまだに国産車が持ちこたえているのは、クルマにあまり興味がなく、それでも必要という人の絶対数が小さくないからだろう。

カッコイイことが今でも重要

そんな日本市場にまた1台、素晴らしくカッコイイ小型車が欧州からやってきた。そこに付加価値はいろいろあるが、カッコイイというのもその一つだろう。ルーテシアはもう、誰が見たってカッコイイ。カッコ良く見せる手法としては、ちょっとあたりまえにも思える、などとと嫌味を言いたくなるほどに。じゃあ、対抗しうるカッコイイ国産コンパクトカーって……、なかなか頭に浮かばない。 クルマが売れるというのは、なんでもいいから、とにかくカッコイイクルマであることが今でも大きいのではないか。一見してカッコイイから、欲しい、買いたいという気持ちが涌くわけで、そうなると実用性などは二の次になる。室内が広いに越したことはないが、運転している限りは、ドライバーにとって運転席周りだけが全てなのだから、パッケージングのためにスタイリングを犠牲にするのはナンセンスだ、と過激に主張したくなる。 しかし日本の小型車は逆に、ひたすら効率的なパッケージングにこだわった結果、どれも同じような形で、なおかつカッコよさを失ってしまった。ルーテシアの後部座席は特に広くないけれど、むちゃくちゃカッコイイから、これでいいというもの。このクラスならこれで十分だし。同乗者に広いと褒めてもらうためにクルマを買うわけじゃない。というか、このクラスで本当に実用性に不満のあるクルマなら、売れないだろうし、もはやそういうクルマは、このクラスにないといってもいい。ルーテシアも今回、一見3ドアに見える5ドアしかないのは、そういうことだろう。 また、走りだって、ダウンサイジングターボエンジンとDCT、そこへさらに素晴らしいシャシーが加わって、ワインディングではRSでなくとも十分に楽しめた。それでいて燃費も悪くない。このあたりも日本車と逆だ。燃費を良くすることが命題で、走りは二の次。カッコよくはないが広く、燃費はいいが走らない。そうした日本車に対する不満は、ルーテシアに乗ればたちどころに解消される。特に、何だこの高速巡航の気持ちよさは。これならもうどこまでも、運転の楽しさを持続したまま走って行ける。

今年も輸入車は売れ続ける

デザイナーのアッカー氏はマツダにいたという。マツダが日本車としては珍しくカッコイイクルマを連発して上向いているのは、この人の力が大きかったわけだ。その点では、これからのマツダ、ちょっと心配になってくる。ルノーデザインの前任者ル・ケマン氏は、あのアヴァンタイムをイメージリーダーとするアバンギャルドなデザインを推し進めた。個性的なルノー車は、日本ではあまりウケなかったが、それでもフランス車はシトロエンも含めて個性的であることが、重要な要件。それは主要販売エリアに住む人の生き方の問題でもあるだろう。個というものが確立しているというフランス人気質は、歴史的には市民革命を自ら成し遂げたことが大きいと言われる。個性を重視する社会なのだ。ちょっとステレオタイプな捉え方かもしれないが、それゆえフランス車は個性的だ、というのは間違ってはいないと思う。 江戸時代から日本人は和を尊び、お上に従順だ。今も変わらないその気質が、ここに来て個性的な物作りを妨げているように思える。いや、作る側はあんがいチャレンジするのだが、売れないのだ。トヨタだって2000年ごろには個性的な商品を連発したが、その多くは結局たくさんは売れなかった。個性的なスタイルは、日本人にはなじまないものだったことがはっきりしてしまった。それが今のクルマづくりに反映しているように思える。今後の世界市場を考えると、マツダに限らず心配になってくる。
 
ということで、ルーテシアを含め、今年も輸入車は売れ続けるだろう。消費税で景気が悪くなったとしても、もともと安くはないクルマをいざ買おうとなれば、たとえ少し高くとも納得したものを買いたいという消費者心理は変わらないからだ。 昨年ルノー ・ジャポンの新車登録台数は3771台(前年比21.3%増)と過去最高で、2001年のルノー・ジャポン設立以来、最高になるという。今年はルーテシアでさらに増えそうだ。もちろん、絶対的にはたいした台数ではないが、一方で、輸入車ブランドで販売台数トップのVWは、過去最高の6万7279台(前年比+19.7%)で、過去最高だった2001年の6万1121台を大幅に上回っている。商品力さえあれば、これくらいは売れる市場が日本にはあるわけだ。ルノーもまだまだ売れるはず。ルーテシアの出来の良さにはその牽引力が十分にあると思った。  
 

トヨタ博物館で、「パブリカスポーツ復元の軌跡」展を開催:MOTOR DAYS ピックアップニュース

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パブリカスポーツ(復元車)。1962年に開発された実験車で、トヨタスポーツ800の原型となった
トヨタ博物館(愛知県長久手市)で2014年1月18日(土)、特別企画展「パブリカスポーツ復元の軌跡~夢を繋ぐ~」が始まった。開催は4月6日(日)まで。

パブリカスポーツ復元車などを展示

戦闘機のようなスライド式キャノピーがパブリカスポーツの特徴
同企画展は、約50年ぶりに復元された実験車「パブリカスポーツ」の復元過程を紹介するもの。初日には、復元プロジェクトのリーダーを務めたトヨタ自動車 デザイン部OBの諸星和夫氏が講師となり、トークイベント「パブリカスポーツ復元に懸けた想い」も開催された。
 
パブリカスポーツ復元の過程を語るトヨタ自動車デザイン部OBの諸星和夫氏
パブリカスポーツは1962年に開発された研究実験車。開発主査を務めたトヨタ自動車の長谷川龍雄氏(1916~2008年)は戦前、立川飛行機で高高度防空戦闘機のキ94(試作段階で終戦)を設計した元航空機設計者であり、パブリカスポーツでも航空機の技術を応用した空気抵抗低減と軽量化をテーマとしていた。実際の開発・製作は、主に関東自動車工業で行われた。 パブリカスポーツは同年に開催された第9回全日本自動車ショーに出展され、ここで好評を得たことが、3年後に市販されるトヨタスポーツ800の開発につながった。なお、長谷川氏はパブリカスポーツやトヨタスポーツ800の他、初代パブリカ(1961年)、初代カローラ(1966年)、初代セリカ(1970年)などの開発主査を歴任している。
 
トヨタスポーツ800(1965年)。ベースは初代パブリカ。790cc 水平対向2気筒エンジンの最高出力は45psだったが、車重は580kgと超軽量で、最高速は155km/hを誇った
トークショーでは200名ほどの来場者を前に、パブリカスポーツの開発経緯や、今回の復元過程がスライドを使って紹介された。会場には当時トヨタのワークスドライバーで、鈴鹿500kmレースにトヨタスポーツ800で参戦して優勝した細谷四方洋氏も出席しており、燃費の良さを活かして戦ったことなど、当時のエピソードが語られた。 また、4月6日までの企画展では、写真や図面のほか、復元にあたって製作された複数の1/5スケールモデル、1/1拡大模型のほか、ベースとなった初代パブリカ(1961年)、トヨタスポーツ800(1965年)、そしてトヨタスポーツ800の浮谷東次郎レース仕様車(レプリカ)などが展示されている。
 
初代パブリカ。初代コロナ(1957年)に続いて登場したトヨタの小型乗用車。空冷の700cc水平対向2気筒エンジンを搭載
トヨタスポーツ800(浮谷東次郎レース仕様車)。浮谷東次郎氏(1942~1965年)が1965年に船橋サーキットで開催されたレースで優勝した車両のレプリカ
トヨタスポーツ800では、いわゆるタルガトップ(脱着式ルーフ)が採用された。パブリカスポーツ同様、開発・生産は関東自動車工業で行われた
 
長谷川氏が後年、諸星氏の求めに応じて書いた色紙。「過去、現在、未来:夢は何処にでもある」とある
こちらは常設展示のホンダ S500(1964年)とトヨタスポーツ800。レースでもライバルだった
この日、トヨタ博物館の駐車場に集まったトヨタスポーツ800。生産台数は約3000台と言われる
 
■トヨタ博物館HP http://www.toyota.co.jp/Museum/
 
(文・写真:丹羽圭@DAYS)

トヨタ、新型ヴォクシーとノアを発売:MOTOR DAYS ピックアップニュース

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トヨタ自動車は2014年1月20日、ミドルクラスミニバンの「ヴォクシー」「ノア」をフルモデルチェンジして発売した。中部地区での発表会が行われた中部経済産業局(名古屋市中区)からリポート。

低床フロアを採用。クラス初の本格ハイブリッド車を用意

ヴォクシー(左)とノアのハイブリッド車。バッジが青ベースになる
ヴォクシー/ノアは、5ナンバークラスのトール型7/8人乗りミニバン。2001年に登場したFFベースを初代とすれば、新型は3代目にあたる。今回は内外装デザインを一新したほか、新プラットフォームでさらなる低床化を実現。このクラスで初となる本格的なハイブリッド車(2月24日発売)を用意したのもトピックだ。
 
外観デザインに関しては、ヴォクシーではこれまで通り「“毒気”のあるカッコよさ」(プレスリリース)をテーマとしているが、新型は従来大人しめだったノアでも、押し出しの強い“堂々感”あるデザインを採用。一方、ベルトライン(サイドウインドウの下縁)を下げることで、ドライバーからの視界を拡大したほか、インテリアの開放感もアップしている。
 
ヴォクシー ZSで選べるオレンジ&ブラック内装
プラットフォームやパッケージングも抜本的に改良。ダッシュパネルから後ろのボディ骨格を一新したほか、燃料タンクを超薄型とし、低床フラットフロアを実現。全高を先代より25mm下げながら(1825mm)、室内高は逆に60mm増やしてクラストップの1400mmとしている。
 
7人乗り仕様で、セカンドシートを最後端にしたところ
7人乗りシート車(2-2-3人)には、セカンドシートに横スライド機能および超ロングスライド機能(スライド量810mm)を持たせ、キャプテンシート状態、ベンチシート状態、リムジンのような空間、センターウォークスルーなど様々なシートアレンジを可能にした。サードシートは従来通り、ワンタッチで左右に軽く跳ね上がるタイプを継続している。ちなみにセレナのサードシートは独自の跳ね上げ式、現行ステップワゴンは床下収納式だ。

プリウスα譲りのハイブリッドシステムを採用

ハイブリッド車の駆動用バッテリーは前席下に配置。ウォークスルーはしにくいが、ほとんどジャマにならない
注目のハイブリッド車には、プリウス譲りの(制御面では車重の重いプリウスαに近い)1.8リッター直4エンジン、モーター、ニッケル水素電池などからなるTHS II (リダクション機構付)を採用。同クラスで群を抜くJC08モード燃費23.8km/Lを達成した。 また、2リッター直4ガソリンエンジン(3ZR-FAE)車では、バルブマチックを改良し、新開発のCVT(無段変速機)やアイドリングストップ機能を新採用することで、同クラスのガソリン車でトップとなるJC08モード燃費16.0km/Lを達成している。
 
画角を180度までワイド化した広角カラーバックガイドモニター
また、細かいところでは、バックカメラの視野角を従来の約160度から約180度まで拡大した広角カラーバックガイドモニターを国内向けトヨタ車で初採用(一部グレードにオプション設定)。後退時でも、交差する道路から接近してくる車両などを映せるようにした。

ガソリン車が218万円~、ハイブリッド車が285万円~

生産はトヨタ車体の富士松工場(愛知県刈谷市)で、月間販売目標はヴォクシーが4600台、ノアが3400台で、合わせて8000台。販売はこれまで通り、ヴォクシーがネッツ店、ノアがトヨタカローラ店。価格はヴォクシー/ノア共に、ガソリン車が218万円~、ハイブリッド車(7人乗りのみ)が285万円~。 CMキャラクターには、ヴォクシーに俳優の瑛太、ノアに同じく俳優のイライジャ・ウッド(「ロード・オブ・ザ・リング」)を起用している。

デイズのコメント

短時間ながら、ヴォクシーのガソリン車に試乗できた。先代同様、走りは軽快だが、アクセル全開時にはエンジン音がそれなりに高まる。ハイブリッド車も早く試したい
FFのヴォクシー/ノアが登場したのは2001年のこと。このジャンルの先駆けであるステップワゴンを追った、後出しジャンケン的な良さに満ちていたが、そこから3代目となる今回も、販売好調のセレナやステップワゴンのイイトコどりをし、さらに伝家の宝刀である本格的なハイブリッドシステムを搭載して、クラストップの販売を目指す。まぁこれまでも、ヴォクシーとノアを合わせれば、クラストップレベルの販売台数だったのだが、今回はノアまで押しの強い顔(グリル)にして、販売ランキングのワン・ツーを狙うという。ミニバンの便利さを知っている人なら、子育て世代でなくともハイブリッドなら欲しい、と思うかもしれないが、人にとってはこの顔にやや抵抗感があるかも。ハイブリッドの駆動用電池も前席下に無理なく収まるなど(補器用の鉛バッテリーが荷室床下を半分ほど専有しているが)、パッケージング面はひとまず文句なしの出来だ。
 

ランドローバー レンジローバー スポーツ オートバイオグラフィ ダイナミック:新車試乗記

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キャラクター&開発コンセプト

2代目は新型レンジと同時開発

新型レンジローバー スポーツ (photo:ジャガー・ランドローバー・ジャパン)
2013年3月のニューヨークショーで発表、日本では2013年11月30日に発売された新型「レンジローバー スポーツ」は、現行の4代目レンジローバー(2013年3月に日本発売)をベースに、よりオンロード重視で仕立てたモデル。ジャガー・ランドローバー曰く、ランドローバー史上最速の一台だ。 レンジローバー スポーツとしては2代目だが、初代のベースがスチール製セミモノコックとシャシーフレーム構造のランドローバー ディスカバリーだったのに対し、新型は現行レンジローバー譲りのオールアルミ製モノコックボディを採用。これにより、車重は先代スポーツに比べて最大240kgも軽くなっている。

悪路走破性はそのままに、オンロード性能を向上

現行レンジローバーとメカニズム面での共通点は多いが、部品総点数の75%はスポーツ専用とのこと。ボディサイズはレンジローバーより短くて低く、デザイン的にはイヴォークの意匠を取り入れたものになっている。 パワートレインは現行レンジローバーとほぼ共通で、フルタイム4WDやエアサスペンションを装備する点も同じ。悪路走破性能も高度だが、オンロードでの走行性能を重視することで、レンジローバーとの差別化を図っている。 生産は現行レンジと同じで、ランドローバーの本拠地である英国ソリハル工場で行われる。
 
■過去の新車試乗記ランドローバー レンジローバー 5.0 V8 スーパーチャージド ヴォーグ (2013年5月)ランドローバー レンジローバー (2002年7月)
 

価格帯&グレード展開

レンジローバーより400万円もお得?

東京モーターショー2013に出展された時のレンジローバー スポーツ
海外にはV6ディーゼルターボのほか、そのハイブリッド車もあるが、日本仕様はガソリン車のみ。エンジンは3リッターV6直噴スーパーチャージド(340ps、45.9kgm)と5リッターV8直噴スーパーチャージド(510ps、63.8kgm)の2種類で、ミッションはZF製8速AT。駆動方式はフルタイム4WDになる。ここまでは、2014年モデルのレンジローバーと共通。 グレードは以下の3種類。価格帯はレンジローバーの方が400万円も高く、昨年末に9速ATになったイヴォーク(460万円~)、レンジローバー スポーツ(798万円~)、レンジローバー(1230万円~)と続く。 レンジ スポーツに限れば、ライバルはポルシェの2代目カイエン、新型マカン、BMWの3代目X5、メルセデス・ベンツの3代目Mクラスといったところか。
 
■レンジローバー スポーツ ・SE(3.0 V6 SC)           798万円 ・HSE(3.0 V6 SC)           903万円 ・Autobiography Dynamic(5.0 V8 SC) 1260万円 ※今回の試乗車 ■レンジローバー ・3.0 V6 Supercharged Vogue     1230万円 ・5.0 V8 Supercharged Vogue     1490万円 ・Autobiography(5.0 V8 SC)     1670万円
 

パッケージング&スタイル

レンジローバーをベースに、イヴォーク風に

ボディカラーは試乗車のコリス・グレイなど全19色
第一印象は、現行レンジローバーにそっくり、ではないだろうか。基本設計が現行レンジローバーと同じになったことで、スタイリングは先代スポーツに比べてグッと洗練された。 ただ、よく見れば各部のデザインは、レンジローバーとは全く異なるし、ボディ外板も全てレンジ スポーツ専用品。ヘッドライトも似てはいるが、別物だ。また、レンジローバーのリアゲートが伝統の上下2分割なのに対して、スポーツはイヴォークと同じハッチバックになっている。部品の75%がスポーツ専用というのも納得。
 
標準タイヤサイズはグレード毎に19、20、21インチ(試乗車)、オプションで22インチを設定
ボディサイズは、ホイールベースや全幅こそ現行レンジローバーと一緒だが、リアオーバーハングは15センチほど短く、全高は65mm低い(最低地上高の-10mmを含む)。要するに、レンジローバーより少し短く、少し低い。
 
こちらは現行レンジローバー。外部パーツのほとんど全てが異なる
後ろ姿の方がスポーツとの差が大きい。リアオーバーハングが長く、上下2分割リアゲートを採用
先代スポーツより空力特性は8%向上。Cd値(空気抵抗係数)0.37
 
    全長(mm) 全幅(mm) 全高(mm) WB(mm) 最小回転半径(m)
レンジローバー イヴォーク(2012~) 4355 1900 1605~1635 2660 5.5
ポルシェ マカン(2014~) 4681~4699 1923 1624 2807
先代レンジローバー スポーツ(2005~2013) 4795 1930 1810 2745 5.7
2代目ポルシェ カイエン (2010-) 4845 1940~1955 1700~1710 2895
新型レンジローバー スポーツ(2013-) 4855 1985 1800 2920 6.1
3代目BMW X5(F15型、2013~) 4910 1940~1985 1760 2935
現行(4代目)レンジローバー(2013~) 5005 1985 1865 2920 6.1
 

インテリア&ラゲッジスペース

高級感はレンジローバーに限りなく近い

オプションでデュアルビュー機能付の8インチ高解像度タッチスクリーンを用意。走行中でも助手席からは映像が見える
スイッチ類などレンジローバーとの共通パーツは多そうだが、センターコンソールは別物で、使われているマテリアル等も異なる。全体的な印象はエレガントなレンジローバーに対して、スポーティなレンジ スポーツといった感じで、例えば試乗車の場合は、ダークエンジンターンド・アルミニウムと呼ばれるアルミ製パネルがクール(実際に触ってもヒンヤリ冷たい)。もちろん、オプションでウッドパネルも選べるし、内装色をアイボリーやブラウン、2トーンにすることもできる。

シフトセレクターはレバータイプに

シフトセレクターはレバータイプ。P(パーキング)はボタンを押すだけ
レンジローバーと明確に違うのは、シフトセレクターがジャガーでもお馴染みの回転式シフトセレクター(ドライブセレクト・ロータリーシフト)ではなく、最近のBMWに似た電子制御式のレバータイプになっていること。「スポーツ」らしさを出すためだと思うが、デザインや操作性に関してはロータリーシフトも良かったので、ここは意見が分かれるところか。

着座位置は低め。オプションで「+2」のシートも用意

前席は電動18ウェイ。オプションでマッサージ機能も追加可
ランドローバーと言えば、上から見下ろすような「コマンドポジション」が有名だが、レンジ スポーツの場合は、基準となる着座位置および視点が低めで、加えてボディがそもそも大きいため、車両周辺の死角が大きく感じられる傾向はある。 あと、新型レンジ スポーツならではの売りが、オプションで3列シート仕様(7人乗り)を用意したこと。3列目シート(50:50の2分割)は、スペアタイヤの代わりに電動で床下収納する。現物を見ることはできなかったが(なぜかカタログにも写真がない)、スペース的にはあくまでエマージェンシーだろう。
 
後席は背もたれの角度を調整できる。上位グレードはソフト・ドア・クローズ機能を標準装備
オプションの電動パノラミックルーフは、前半分が開くほか、電動ブラインド(薄日を通すタイプ)も装備
メーターパネルはレンジローバーと同じ12.3インチのフルカラー液晶(下位グレードはオプション)
 
ラゲッジスペースレール等の各種アタッチメントはオプション。後席背もたれは2分割で畳める
床下にはオプションで20インチのテンパースペアタイヤ&アロイホイールを搭載
「オフロードパック」には、テレイン・レスポンス2 オートや副変速機が含まれる
 

基本性能&ドライブフィール

パワーウエイトレシオは4.8kg/ps

試乗したのは最上級グレードの「オートバイオグラフィ ダイナミック」(1260万円)。直前まで3リッターV6スーパーチャージド「HSE」(340ps)と迷ったが、最高出力510psと赤いブレンボ製キャリパーに目がくらみ、一年前のレンジローバーと同じV8スーパーチャージドを試乗することにした。
 
ジャガーでもお馴染みの5リッターV8直噴スーパーチャージドエンジン。パワーだけでなく、環境性能も売り
エンジンはジャガーでもお馴染みの5リッターV8直噴スーパーチャージドで、最高出力は510ps/6500rpm、最大トルクは63.8kgm/2500rpm。ミッションは最新世代のZF製8速AT(8HP70型)で、ドイツ御三家の最新SUVを相手にしても引けをとらない内容。車重はオールアルミニウム製ボディながら、試乗車で2450kgもあるが(同型エンジンのレンジより90kg軽いらしい)、パワーウエイトレシオは4.8kg/psと高性能スポーツカー並み。
 
スーパーチャージャーゆえ、ターボラグは皆無。ギアが8速もあるから、パワーバンドを外すこともない
実際、その速さはとてつもないレベル。適当に流して走る時は、1200~1500回転くらいでドロロンと平和に喉を鳴らしているが、アクセルを踏み込むや否や、即座に2、3段シフトダウンし、シュヴァーン!とダッシュする。その鋭さは、カイエンターボに張れるというか、何が来ても負けないと思えるほど。 このエンジンがすごいのは、高回転をまったく苦にしないこと。自動シフトアップしないSモードで走ると、まるでジャガーのXJやXKみたいに、クァーーーン!と快音を立てながら軽々と7000回転前後まで回りきり、レブリミッターを作動させる。思わずレンジローバーに乗ってることを忘れる瞬間。ちなみに0-100km/h加速は、この5リッターV8で5.3秒という凄まじさ。車重は2.5トンもあるというのに……。 なお、スーパーチャージャーと言えば、一昔前はミャーーンと猫の鳴き声みたいな作動音が聞こえたり、レスポンスが重々しかったりしたものだが、この(というか最近の)スーパーチャージャーはまったくそんなことはない。だから、体感的には、本当に自然吸気の大排気量V8みたいに思える。

アイドリングストップ機能も装備

アイドリングストップ作動時にはメーターに表示灯がつく。もちろんオフにすることも可能
街中では、周囲を見下ろしつつも、上品に走りたくなるのがレンジローバーのいいところ。1200回転くらいで流している時もエンジン音は唸っていて、そこは静粛性を重視したレンジローバーと異なるところ。ちょっと獰猛な感じ。 そして、信号待ちでは積極的にアイドリングストップする。エンジントルクが大きいせいか、エンジン始動直後のクリープ発生時にクルマがポンと前に出てしまうのは少し気になったが、ちゃんとエコ対応しているのは評価できる点。
 
写真はダイナミックモード選択時。走りながらでもブラインド操作できる
乗り心地はノーマルモードなら問題なし。ダイナミックモードだと小刻みに揺すられる。ボディの剛性感はすごいの一言で、まったくビクともしない。これならガタガタのオフロードでも長時間快適に走れるだろう、と思う。 逆にけっこう困るのが、狭い道に入ってしまった時。全幅がほとんど2メートル(1985mm)もある上、周囲の視界が効かないので、狭い道でのすれ違いや、狭い場所での駐車には慣れが必要。特に左サイドが見えないのが困る。ボタンを押せば、ナビ画面にフロント左右の死角が映し出されるが、どこが映っているのかちょっと分かりにくいのが難点。

山道では「レンジローバーの形をしたイヴォーク」に変身

Sモードを選択し、マニュアルモードにした状態。盤面が赤くなり、使用ギアが大きく表示される
ワインディングでの走りも予想以上。マニュアルモードは、前述のように自動シフトアップしない超スポーティ制御だから、最初はうっかりレブリミッターに当てがち。シフトダウンは「フォォン!」とブリッピングして見事に決める。エンジンの反応はほんと、ジャガーのXKRあたりとおんなじだ。 テレインレスポンスをカチッと回して、ダイナミックモードを選べば、エアサスがグッと引き締まり、ボディ全体が岩のようにソリッドになる。その走りは、目線が異様に高いことを除けば、スポーツセダンやスポーツカーと同じ。ステアリング操作に応じて2.5トンのボディがダイレクトに反応し、走行ラインを自由自在に変更できる。
 
最上級グレードはレッドペイントのブレンボロゴ入りキャリパーを装備。試乗車のタイヤは275/45R21のコンチネンタル クロスコンタクト
コーナーでの動きはレンジローバーとは別物で、レンジローバーとイヴォークの中間という感じ。特にダイナミックモードでは、アンダーステア感が皆無で、時にはビクッとするほど鋭く旋回する。このあたりは、カイエンやX5対策だろう。ちなみに、ベベルギア式トルセン・センターデフの、通常時の前後トルク配分はやや後輪寄りの42:58だ。 高速道路では1200~1500回転くらいでユルユル走るのが気持ちいい。100km/h巡航は8速トップで1450回転くらい(レンジローバーのV8スーパーチャージドと同じ)。持てるパワーの、ほんの少しだけを使う贅沢感が、クルマのキャラクターに合っている。 もちろん、510psを解放すれば、すさまじい走りが可能だが、速さに加えて圧倒的な安定感が印象的。これだけのヘビー級SUVが、まるでジャガーのXJやXKのように(目線の高さを除けば)走ってしまう。

最低地上高は最大278mm。渡河水深限界は850mm

オフロード走行モード選択時。センターデフとリアデフの作動状況などが一目で分かる
オフロード性能については、数値を中心に紹介。レンジローバーには少し譲るが、絶対的にはハイレベルで、先代スポーツと比べると渡河水深限界が150mm増すなど、確実に性能アップしている(数値はスタンダード/オフロードモード。カッコ内はレンジローバーの数値)。 ■最低地上高:210mm~278mm (220~303mm) ■アプローチアングル:24.3/33.0度 (26.0/34.7度) ■ランプブレークオーバーアングル:19.4/27.2度(20.1/28.3度) ■ディパーチャーアングル:24.9/31.0度(24.6/29.6度) ■渡河水深限界:850mm(900mm) なお、副変速機、つまりローレンジ付の2速トランスファーケースは、下位グレードだとオプションだが(テレインレスポンス2とセットで24万7000円)、最上級グレードは標準装備。装備車の場合は、オフロードモードを選択した時に、前後トルク配分が50:50となり、直結(100%ロック)も可能。自在に伸び縮みするエアサスペンションの威力もあり、驚異的な走破性を発揮するのはご存知の通り。
 
 

試乗燃費は6.0~7.4km/L。JC08モード燃費はV8で7.3km/L、V6で8.4km/L

今回はトータルで約180kmを試乗。試乗燃費(車載燃費計)は、いつもの一般道、高速道路、ワインディングを走った区間(約90km)で6.0km/Lだった。これは奇しくも昨年乗ったレンジローバー(エンジンは同じV8スーパーチャージド)と全く一緒だった。 また、一般道を大人しく走った区間(約30km)では7.4km/Lで、昨年レンジローバーで大人しく走った時の6.5km/Lよりかなり良かったが、これは主に新しく採用されたアイドリングストップ機能(燃費を最大7%向上させるという)のせいだろう。なお、同機能はレンジローバーの2014年モデルにも装備されている。 なお、JC08モード燃費は、今回試乗したV8スーパーチャージドが7.3km/Lで、V6スーパーチャージドが8.4km/L(2014年レンジはそれぞれ7.4km/L、8.5km/L)。燃料タンクはレンジローバーの101リッターとほぼ同じ105リッターもある。
 

ここがイイ

高級スポーツセダンに遜色ない走りや快適性。レンジより手頃な価格。エコ対応

とにかく速い。パワフル。静粛性は思ったほどではないが、ノーマルモードでの乗り心地はいいし、総合的に言えば、この価格帯の高性能スポーツセダンより快適で、同乗者には喜ばれそう。 巨大なのに軽快なハンドリング。スポーツモードで走れば、並のスポーティカーには負けない。カービューの試乗記には「ニュルブルクリンクを8分35秒前後でラップすることができる」とあった。ちなみに先日、日産 GT-R NISMOが出した量販車最速が7分8秒。R32の時代は8分20秒位。SUVの進化はすごい。 ということで、いつものようにワインディングも走ったのだが、燃費はパワーや車重を考慮すれば、かなり良いと言える。普通に乗ればJC08モード燃費の7.3km/Lは現実的な数字。実燃費とのズレは少ない。 また、このクラスの高級車で、段差やクルマ止めなどに気を使わなくても済むのはSUVの特権。よほど横着しない限り、アゴをガリッとやることはないと思う。 見た目も名前も高級感も、「レンジローバー」なのに、値段はそれより400万円も安い。また、お金はあっても大排気量エンジンはもういいと思っている人にはV6のダウンサイジングエンジンもあるし、アイドリングストップも標準装備するといったエコ対応もちゃんとやっていること。

ここがダメ

狭いところは苦手

全幅1985mmのボディは、狭い道だとやはり気になるレベル。特に左フロントや、巨大なドアミラーが作り出す死角は気になるところ。左フロントの死角については、カメラの映像をもう少し見やすくすると改善できる気がするのだが。 また、ランドローバーと言えば、上から見下ろすようなコマンドポジションが伝統だが、新型レンジ スポーツやイヴォークでは、かつてほど見晴らしが良くない。そこでシート座面を上げようとすると、ペダルに足が届きにくくなるというディレンマが生じる。 アイドリングストップ機能は、発進・エンジン始動時に、おそらくエンジントルクが大きいせいだろう、強めのクリープが発生して、クルマを唐突に動かしてしまう。一人で乗っている時は問題ないレベルだが、同乗者がいる場合は気を使いそう。もちろん、そういう時はアイドリングストップをオフにしてしまえばいいのだが。 レバータイプのシフトセレクターが採用されているが、他のレンジローバーやジャガーと同じロータリー式もオプションで選べたら良かった。ひょっとするとロータリー式を選ぶ人の方が多いんじゃないだろうか。

総合評価

輸入車が売れてるのはアベノミクスのせいではない

昨年となる2013年も、日本国内の輸入車販売は好調に終わった。輸入車(外国メーカー車)販売総数は約28万台で、前年比16.1%アップし、国内販売におけるシェアは8.6%と過去最高。1000万円以上の高額車の販売台数も、順調に推移したともいう。庶民の実感としては景気がいいとも思えないのだが、一部、そうとう景気がいい人達がいるようで、それがこの数字に反映しているのだろう。格差はどんどん広がっているということか。 景気に関係なく、コンスタントに実績を上げている業界も確かにある。先日も、あるマンション大規模修繕会社の売上を見ていたら、ここ10年ほどで倍増していた。マンションは30年くらい前からどんどん建っており、どこも10年すれば大規模修繕が必要になる。しかしノウハウと結構な資本投下のいる修繕会社がどんどん新しく現れたりはしないようで、おのずと既存の会社が業績を伸ばしてくるわけだ。それから、いわゆる住宅リフォーム会社も好調なようだ。これらは、市場が勝手に成長しているため、景気がいいということだろう。
 
儲かっていれば、クルマでも買うか、となる。セダン、スポーツカー、SUV、ついでに便利なミニバンの4種類くらいは揃えたいところ。あとオープンモデルも1台欲しいか。むろん、それぞれこだわりの車種を選びたい。となると選択肢は自ずと輸入車に傾く。クラウンマジェスタ、GT-R、ランクル200、ヴェルファイアと国産車で揃える必要はなく、新型メルセデス Sクラス、フェラーリ カリフォルニア、ランドローバー、ヴェルファイアの方が魅力的に思える。こう並べても、ミニバンだけはヴェルファイアになってしまうのだが(日本車最後の牙城か?)。 そう考えるとポルシェは、ミニバンを除いて、ここに入るクルマを全て揃えている。パナメーラ、911、カイエン、あとはオープンのボクスター(911 カブリオレでもいいが)。ポルシェ好きオヤジにとっては、これらを揃えるのが究極の夢かもしれない。ポルシェ好調のワケは、こんなところにもあるだろう。輸入車が売れているのはアベノミクスのせいではなく、一部のクルマ好きにとっては買いたいクルマが輸入車しかないということが大きいし、クルマという高い買い物をどうせするなら、こだわったのもにしたいということだと思う。

まさにライバルはカイエン

SUVも、ちょっとばかり走りにこだわりたいと思うと、レンジローバー スポーツはいい選択になるだろう。上記のようなラインナップを所有している場合、普通のレンジローバーより軽快なこのクルマは、他の所有車から乗り換えても違和感がない。昨年試乗したレンジローバーもそれなりに速かったが、普段スポーツカーに乗ってるような人が乗ると、ややかったるさを感じるだろう。しかしこれならまったく気にならない。いつも通り、かっとばせる。まさにライバルはカイエンだが、ポルシェが嫌だとなると、ハイエンドSUVの選択肢はこのレンジローバーなど一部に限られる。なんにしろ、お金があるから高級車を買いたいなと思うと、どうしても輸入車になってしまうのは否めない。 日本自動車輸入組合(JAIA)の上野金太郎理事長(メルセデス・ベンツ日本社長)は、「本年はやはり、消費税率引き上げ前の駆け込み需要とその後の反動減、消費の冷え込みがどの位の期間、続くかについて、慎重に見極める必要があると考える」と述べているが、3%ばかりの消費税アップなんて、富裕層にはたいして関係ないはず。そろそろアベノミクスも怪しくなってきているので、実体経済としての高級車販売が今年も伸びること、そこに期待したい。景気が悪くなれば販売も鈍るという、いつものパターンを覆すべく、日本の富裕層は今年もどんどん高級車を買って、実態経済を持ち上げてもらいたいものだ。
 
さて、世界市場でもランドローバーは2013年に過去最高の34万8338台を売り、前年比15%のアップ。特に、今やジャガー・ランドローバーの世界最大市場である中国では、両ブランドで29.8%アップの9万5237台を売っているとのこと。おそらく中国のお金持ちでも、走りにこだわるクルマ好きなら、一番高い普通のレンジローバーよりスポーツの方を指名するだろう。かつての英国植民地インドのタタ・モーターズ傘下となったジャガー・ランドローバーが、英国にとってアヘン戦争の相手である中国で大きなビジネスを行い、車両を作ってイギリス国内の雇用確保を誇っているというあたり、世はやはり諸行無常であるなあ、とあらためて思う。
 

フォルクスワーゲン ゴルフ ヴァリアント TSI コンフォートライン:新車試乗記

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キャラクター&開発コンセプト

ゴルフ7ベースのステーションワゴン

欧州では2013年夏、日本では2014年1月6日に発売された新型ゴルフ ヴァリアントは、ゴルフ7こと7代目ゴルフのステーションワゴン版。ゴルフベースのワゴンが登場したのはゴルフ3からで(当初の車名はゴルフワゴンで、ヴァリアントと名乗るのは3代目から)、今回の新型はワゴンとしては5代目に当たる。 新型ゴルフ ヴァリアントはゴルフ7同様、VWグループの新モジュール戦略「MQB」に則ったモデルで、クラスを越えた内外装品質、新世代の1.2/1.4リッター直噴ターボ、軽量化、先進安全装備、優れた燃費性能といったセリングポイントもゴルフ7と共通。JC08モード燃費も1.2リッターで21.0km/L、1.4リッターで19.5km/Lと、ゴルフに遜色ない。先代より荷室容量が20%増えるなど、ワゴンとしての進化もポイント。 ■過去の新車試乗記VW ゴルフ TSI ハイライン (2013年8月)
 

価格帯&グレード展開

自動ブレーキは全車標準で、269万5000円から

ゴルフと同じ9エアバッグを標準装備。パッシブセーフティの高さは、ゴルフ3の時代から定評あるところ
今回日本に導入されたのは、1.2リッターの「TSI コンフォートライン」と、気筒休止機能付の1.4リッターの「TSI ハイライン」の2グレード。先代の上級グレード「TSI コンフォートライン」にあった1.4リッター“ツインチャージャー”(ターボとスーパーチャージャー)はドロップした。 ハッチバックとは装備内容が異なるので、単純に比較できないが、価格はヴァリアントの方が20万~23万円ほど高い。ただし、ヴァリアントでは1.2リッター車のエアコンをマニュアルにするなどして価格をハッチバック並みに抑えている。ミリ波レーダーを使った「フロント アシスト プラス」ことプリクラッシュブレーキシステムは全車標準。

コンフォートラインとハイラインの差

ハイラインには、ACCやレーンアシストシステムを標準装備 (photo:VGJ)
コンフォートラインとハイラインの価格差は53万円あるが、主な違いは以下の通り。 ■エンジン(1.2ターボか、1.4ターボか) ■バイキセノンヘッドランプ(LEDポジションランプ付)の有無(7万3500円のオプションか、標準装備か) ■ACC(アダプティブクルーズコントロール)、レーンキープアシスト、パドルシフト等の有無(15万7500円のオプションか、標準装備か) ■前後パークディスタンスコントロール等の有無 ■タイヤサイズ(205/55R16か、225/45R17か) ■エアコン(マニュアルか、フルオートか) ■シート(ファブリックか、アルカンターラのスポーツシートか) ■リアサスペンション形式(半独立式トーションビーム&トレーリングアームか、独立式の4リンクか)
 
新開発の純正ナビ「ディスカバー プロ」はオプション (photo:VGJ)
オプションは、全車に新開発の純正ナビゲーションシステム “Discover Pro”(17万8500円)を用意。またハイラインには、電動パノラマスライディングルーフ(14万7000円)、電子制御ダンパーのDCCパッケージ(14万7000円)、レザーシートパッケージ(26万2500円)などを用意している。 2014年1月現在、ゴルフシリーズ(先代ゴルフベースのトゥーランとカブリオレを除く)のラインナップは以下の通り。
 
新型ゴルフ ヴァリアント TSI ハイライン
【ゴルフ ヴァリアント】 ■ゴルフ ヴァリアント TSI コンフォートライン 269万5000円 1.2L 直4ターボ(105ps、17.8kgm)  JC08モード燃費 21.0km/L ※今回の試乗車 ■ゴルフ ヴァリアント TSI ハイライン     322万5000円 1.4L 直4ターボ(140ps、25.5kgm)  JC08モード燃費 19.5km/L
 
新型ゴルフ TSI ハイライン (photo:VGJ)
【ゴルフ(ハッチバック)】 ■ゴルフ TSI トレンドライン    249万円 ■ゴルフ TSI コンフォートライン  269万円 1.2L 直4ターボ(105ps、17.8kgm)  JC08モード燃費 21.0km/L ■ゴルフ TSI ハイライン      299万円 1.4L 直4ターボ(140ps、25.5kgm)  JC08モード燃費 19.9km/L ■ゴルフ GTI         369万円 2.0L 直4ターボ(220ps、35.7kgm)  JC08モード燃費 15.9km/L
 

パッケージング&スタイル

ゴルフと違うのはリアオーバーハング部分

ボディカラーはハッチバックと同じで全8色。試乗車はVWで定番のディープブラック パールエフェクト
リアドアあたりまではゴルフ7とほぼ一緒で、全幅やホイールベースも同じ。4575mmという全長はゴルフより320mm長いが、それは実質的にリアオーバーハングの延長分になる。先代ヴァリアントと比べると、ホイールベースは60mm長いが、全高は逆に45mmも低い。こういった進化の仕方は、ハッチバックのゴルフ6からゴルフ7への変化と同じだ。

歴代ヴァリアントで最もスポーティ

デザイン的には、全高が劇的に低くなったことで、ロー&ワイド感が強まったのが一番の特徴。これによって歴代ゴルフ ヴァリアントに少なからずあったズングリ感が払拭され、スタイルが一気にスポーティになった。各部の質感も大幅に上がっていて、思わず一クラス上のパサート ヴァリアントの立場が心配になってしまう。
 
    全長(mm) 全幅(mm) 全高(mm) WB(mm) 最小回転半径(m)
VW ゴルフ 7 (2013~) 4265 1800 1460 2635 5.2
トヨタ プリウス(2009~) 4460 1745 1490 2700 5.3
先代VW ゴルフ ヴァリアント(2009~2013) 4545 1785 1530 2575 5.0
新型VW ゴルフ ヴァリアント(2014~) 4575 1800 1485 2635 5.2
トヨタ プリウスα(2011~) 4615 1775 1575~1600 2780 5.5~5.8
スバル レヴォーグ(2014~) 4690 1780 1485~1490 2650 5.4~5.5
VW パサート ヴァリアント(2012~) 4785 1820 1530 2710 5.3
 

インテリア&ラゲッジスペース

品質感はゴルフ譲り。荷室は先代の20%増

試乗車はディスカバープロ付き。コンフォートラインではパドルシフトはオプション
インパネや前席まわりは、ほぼゴルフと同じ。ゴルフ同様、近接センサー付きの5.8インチタッチパネルを持つオーディオ「コンポジション・メディア(Composition Media)が全車標準になり、さらにオプションで8インチタッチパネルと64GB・SSDメモリー式ナビを組み込んだディスカバープロが用意されている。後者は、ゴルフにもすでに設定されている。 室内や荷室の広さも、もはやCセグメントのレベルではなく、一部のDセグメントを超えるレベル。荷室容量も増え、荷室側のレバー操作で後席背もたれがワンタッチで畳める機構も新採用された。 少し残念なのは、先代ゴルフ ヴァリアントでは出来たダブルフォールディング(後席の座面を跳ね上げてから背もたれを倒す方式)が廃止され、シングルフォールディングのみになったこと。そのため、拡大時の荷室は完全にフラットにはならない。
 
後席はルーフ形状やリアクォーターガラスのせいか、ゴルフより広く感じられる
コンフォートラインはファブリックシート(写真)、ハイラインはファブリックとアルカンターラのスポーツシートが標準
ヴァリアントのコンフォートラインでは、エアコンがマニュアル(風量が6段階と細かい)になる
 
荷室容量(後席使用時)は605Lで、先代ヴァリアント(505L)の1.2倍、現行ゴルフ(380L)の1.6倍
最大容量は先代(1495L)の1.08倍となる1620リッター、奥行きは最大1831mm(先代比+131mm)
外したトノカバーやラゲッジネットは、床下に収納できる。最近の新型車では珍しく、テンパースペアタイヤを搭載
 

基本性能&ドライブフィール

最高出力105psでも十分

新開発の1197cc直4・DOHC直噴・ターボは後方排気。排気マニフォールド用の遮熱板がエンジン後方に見える
試乗したのは、エントリーグレードの「TSI コンフォートライン」(269万5000円)。エンジンは、MQBコンセプトと共に登場した新開発の1.2リッター直噴ターボ。先代ゴルフや現行ポロの1.2ターボとは別物で、搭載位置は前後ひっくり返り、後方排気に変更。シリンダーヘッドもSOHC・2バルブから、DOHC・4バルブになり、カムの駆動方式もチェーンからタイミングベルトに変更されている。後方排気化されたのは、欧州で主力のディーゼルターボエンジン(後方排気)との互換性を高めるためだそうで、タイミングベルトの採用は静粛性や駆動ロスの低減を狙ったものだろう。
 
1.2ターボエンジン(TSI コンフォートライン)の性能曲線 (photo:VGJ)
ただ、ここまでエンジンを刷新しながら、従来1.2ターボと同じ最高出力105ps、最大トルク17.8kgmに留めるのがVWらしいところ。おそらく、排気量、燃費、車体とのバランスを考えると105psで十分、という判断なのだろう。 実際、そのパワーフィーリングは、常識的な速度域で走る限り、まったく不満なし。1500~2000回転といった常用域のトルク感やレスポンスは、とても1.2リッターとは思えないレベルだし、全開加速時には4000回転から上、レッド手前の6000回転まで目一杯使って、全力で加速する。まぁ、パワーウエイトレシオは12.3kg/psに留まるので(同じ1.2ターボ、105psのポロより車重は200kgも重い)、実際のところ、加速自体はたいしたことないが、アクセルを踏み込むやいなや、エンジンが一生懸命に働き始めるし、7速DCTも打てば響くようなレスポンスでそれをバックアップするので、ドライバーとしては気持ちよさすら感じてしまう。

少なくともコンフォートラインの乗り心地はやや硬め

乗り心地はコンフォートラインの場合、やや硬めな印象。路面のいいところなら素晴らしくスムーズだが、荒れたところだとゴツゴツ感が出る。後席に人を乗せる機会が多い場合は、リアサスがマルチリンクで、電子制御ダンパーの設定もあるハイラインがいいかも、という考えがよぎる。 静粛性はゴルフ7と同等で、全開加速時を除けばTSI ハイラインとの差も大きくないように感じた。アイドリング音は非常に静かで、オーディオをオンにしているとアイドリングストップしたかと思うほど。巡航時のロードノイズも静か。 Start/Stopシステムこと、アイドリングストップ機能は、静かに、スムーズに始動するが、エンジンが掛かってから、電子制御クラッチがつながるまでのタイムラグは相変わらず。せっかちに発進しようとすると、ちょっともたつく印象があるが、これはトルコンを備えていないDCTの機構上、ある程度はやむをえないと考えたい。慣れれば、特に気にならなくなる。
 
合わせて、停車中にブレーキを踏んでいなくても停止状態を保つ「オートホールド」機能もある。これは新しく採用された電動パーキングブレーキを使ったもの。アイドリングストップとも連動するので、一見便利そうだが、発進しようとしてアクセルを踏んでも、すぐに始動・発進しない感が強まるほか、動き出しに少し唐突感が出るので、早々にオフにしてしまった。これも慣れ次第かもしれないが。

ワインディングでもそつなく。100km/h巡航は約2100回転でこなす

コンフォートライン(試乗車)のタイヤは205/55R16。ミシュランのエコタイヤ、エナジー セーバーだが、グリップ感はまずまず。指定空気圧は意外に低めで、標準は前後とも2.0kg
ワインディングで意外だったのは、ステアリングを切り込む時の手応えが重めなこと。そのせいかハッチバックより身のこなしも心なしか重々しい感じがした。一方で、トーションビームとなるリアサスも、TSI ハイラインやアウディ A3の「なんなんだこれは」という足と比べると、普通っぽい。もちろん、これでも性能的にはクラストップレベルだ。 高速道路で特に感心したのは、風切り音の小ささ。ある程度の速度域でも、ゴーゴーザワザワ言わない。このクラスだと風切り音はある程度仕方ないと思っていたが、認識を改めねば、と思った。 100km/h巡航時のエンジン回転数は約2100回転で、TSIハイラインより高めだが、まったく気にならない。ちなみ最高速(UK仕様)は同型エンジンのゴルフ7(192km/h)と同等の193km/hとあった。 ただ、パワーがパワーだけに、追越加速など「ここぞ」という時は、パワーがちょっと物足りなくなる。パワーウエイトレシオ12.3kg/psのクルマにしては速いが、加速性能では現行ポロの1.2 TSI の方が明らかに速い。少し余裕を求めるなら、ハイライン(最高速は同じくUK仕様で212km/h)がやはり良さそう。

試乗燃費(コンフォートライン)は11.5~15.5km/L。JC08モード燃費は21.0km/L

今回はトータルで約250kmを試乗。試乗燃費(車載燃費計)は、いつもの一般道、高速道路、ワインディングを走った区間(約90km)で11.5km/L。また、一般道で普通に走った区間(30km×3回)が13.0km/L、14.0km/L、14.1km/Lで、低燃費を心がけて走った区間(約30km)が15.5km/L。撮影など一切合財を含めて、250kmトータルでの燃費は11.8km/Lだった。指定燃料はもちろんハイオク。 JC08モード燃費は21.0km/Lで、先代ヴァリアントの1.2リッター車より11%良い。同じエンジンを積むゴルフ7の1.2リッター車とは同値だ。 なお、1.4リッター車のJC08モードは19.5km/Lで、先代の1.4リッターツインチャージャーより23%良くなっている。
 

ここがイイ

トータルバランスの高さ、スタイリング、ディスカバープロなど

走り、デザイン、実用性、装備、価格など、すべてがすごく高いレベルでまとまっている。試乗したコンフォートラインは、際立ってパワフルではなく、際立って乗り心地がよくもなかったが、トータルバランスの高さとなると、ライバル車は思い浮かばない。もちろん、よりパワフルで、サスペンションも格上げされるハイラインであれば、メルセデス・ベンツのCクラス ワゴンあたりと比較される内容を持っている。 Cセグメントのワゴンであること。サイズ感よし、使い勝手よし、燃費バランスよし、むろん走ってよしと、クルマの理想形はこのクラスのワゴンでは、とすら思うのだが、日本車に同ジャンルのクルマはほとんど存在しない。発売前のスバル レヴォーグ(ヴァリアントより115mm長い)の人気が上々であるなど、日本でもワゴンはけしてオワコンではないと思う。国産メーカーはマーケティングにとらわれ過ぎではないか。ゴルフ ヴァリアントには、セグメントを超えた出来の良さがあり、売れるのは当たり前と思う。 もうひとつ売れる理由はスタイリングだろう。本格ワゴンという言い方が正しいかは分からないが、ハッチバックをただ伸ばしただけではない、スタイリッシュなデザインは先代を大きく凌ぐ点。以前のモデルは今ひとつと感じた人も、今回は食指がうごくはず。またゴルフ同様、燃費の向上も大きなメリットだろう。 ゴルフ7の試乗時には、搭載が間に合っていなかった純正ナビ・インフォテイメントシステムの「Discover Pro」。8インチの大型ディスプレイは、ダッシュボードの最上部でないのは残念だが、まあまあ見やすい位置にあり、近接センサ付きのフリック操作でスマホのように動く。燃費や空気圧など車両情報を表示できるのは純正オプションならでは。64GBのSSDをミュージックサーバーにできるし、ブルートゥース、SD、DVD、もちろん地デジなど、ひと通りなんでもありなので、エンタメ系はまずまず不満はない。ITSスポットで使えるDSRC(狭域通信)にも、便利かどうかは微妙だが対応している。3年保証も付いて17万8500円なら、まあ許せる価格だ。これはひとまずつけておくべきだろう。

ここがダメ

好みが分かれるシート、拡大時に完全フラットにならない荷室など

執拗に指摘して申し訳ないが、フロントシート(標準の手動タイプ)の座面角度はどうにも好感が持てない。小柄な日本人の場合、もう少し前側を下げるか、座面長さを調整できないと、膝裏が当たって落ち着かない。リアシートのシートバック角度もやや立ち気味で、きちんと座ることを強いられるタイプ。数多くの市販車の中で、肝心要のシートが好みではないモデルはごくわずか。クルマ全体の出来がいいだけに、シートだけがそういう印象になったのは残念。 本文でも触れたが、後席をフラットに格納できなくなったのも残念。ゴルフのハッチバックも含めて、欧州車でもどんどんシングルフォールディングで済ますクルマが増えているが、せっかく大人が足を伸ばして横になれるスペースがあるのだから、やはりフラットに出来るようにして欲しかった。 取り回しは悪くないが、ゴルフより30センチほど後ろが長いので、バックする時は要注意。試乗車には装備されていなかったが、バックカメラはあった方がいいだろう。販売店オプションでエンブレムに内蔵するタイプが用意されているようだ。 また、慣れるとは思うのだが、アイドリングストップから始動してスタートするときの一瞬の遅れ、これも気になる人は気になるだろう。
 
写真は東京モーターショー2013に出展されたゴルフ ヴァリアント Rライン(参考出品)
コンフォートラインに乗ると、ハイラインもいいなと思えてくるし(エアコンもオートになる)、純正ナビのディスカバープロも欲しいし、DCCも付けたい、などと言っていると、350万円オーバー。それでもまだコストパフォーマンスは高いが、おそらく先代レガシィ ツーリングワゴンに乗っている潜在ユーザーからすれば、2リッターターボエンジンと、出来ればフルタイム4WD(VW風に言えばシンクロ)が欲しいところだろう。昨年末の東京モーターショーには、参考出品としてスポーティ版のゴルフ ヴァリアント Rライン(欧州仕様)が出展されていたが、日本向けがどんな仕様になるかは未定のようだ。

総合評価

ハンコを押したくなるのは当然

今年(2014年)は4月の消費増税以降、景気の悪化は避けられないとの見方が根強い。自工会(日本自動車工業会)も、国内新車販売は9.8%悪くなる見通しを出した(年間485万台)。逆に3月までの駆け込み登録は凄まじいようで、ただですら毎年この時期に大混雑する陸運事務所は、いったいどうなることか、と部外者ながら心配になってしまう。 ゴルフ ヴァリアントも、どうせ買うなら3月までに登録したいところだが、今から契約しても絶対無理のよう。それでも注文は殺到しているようで、納車のめどははっきり言ってわからない現状のようだ。人気輸入車の新型登場時には、いつもあることなのだが、日本国内では確実にタマ不足になる。ヴァリアントどころかゴルフ7ですらが、なかなか入らない状況のようだ。 ゴルフ ヴァリアントの人気のわけは、本文で書いてきた通り。日本カー・オブ・ザ・イヤーを獲得したことでも分かるように、このクラスとしては破格に出来の良いゴルフ7が、輸入車好きには特に多いワゴン好きでも納得のスタイリングで登場したのだから、欲しい人が殺到するのもよく分かる。むろん、ちょいと試乗してみれば、その出来の良さは誰にだってビンビン伝わってくるし、試乗したコンフォートラインなら国産車なみの300万円前半で買えるのだから、契約書にハンコを押したくなるのは当然だろう。
 
先日カーセンサーに、クルマ(新車)の保有期間に関する読者アンケートが掲載されていた。それによれば、日本では平均して1台を8年ちょっと所有する人が多いらしい。さすがに10年越えは多くないようだが、それでも中高年は保有期間が長くなる傾向という。ゴルフ ヴァリアント コンフォートラインにACCと純正ナビをつけて300万円強。アンケートのように9年(108ヶ月)所有するとしたら、月額2万8000円ほどといったところ。まあ9年後でも、そこそこの下取値はつくだろうから、それで諸費用分はまかなえてしまうはず。月3万円以下で、このクルマに乗れるのだから、サザン桑田世代のみならず、若い人にもぜひ、とすすめたい。 また、このクルマの生涯燃費が12km/Lだったとすると、ちょっと前の似たようなクラス感、パワー感を持つクルマは8km/Lくらいだから、ハイオクがリッター160円で月1000km走るのであれば6000円ほど安くつく計算。ちょっと前の燃費が悪いクルマと比べたら、月2万8000円でなく2万2000円で乗ってるのと同じことになる。やはり昨今の燃費改善は、実質的にクルマを安くしているとも言えるわけだ。

商品の良さを知らしめるべき

というように、日々進化するクルマのことをもっと多くの人が知れば、8年を待たずしてクルマの買い替えは進むだろうし、たとえ消費増税しても、販売の落ち込みはいくぶん緩和できるはず。大手メディアも、日本の景気を何とか保たせたいなら、メディアスクラムを組んで新型車のいいところを一般に広く伝え、買い替えを促進すべきではないか。 とはいえ、意識的に買い替えをせず、長期間クルマを保有する人に関しては、逆に優遇措置をとるべきだろう。「物を大切にする」という、美しき日本の道徳を守っているのだから、増税するより減税してしかるべき。日本を支えるトヨタだって、昔のクルマには敬意をはらっているのだから。
 
新車効果で売れているうちはいいが、今後はメーカーやディーラーも、もっとクルマを知らしめて売る努力をすべきではないだろうか。テレビCMを流し、大きなショールームを作るばかりでなく、積極的に商品の良さを伝える工夫をすべきだと思う。既存メディアを使うのか、ネットを使うのか、真逆に訪問販売に力を入れるのか、費用対効果が最も高い方法が何かは、まだ誰にも分からないが、せっかく良い商品(クルマ)がこうして次々に出ているのだから、それを真剣に考えるべき時だと思う。
 

日産 エクストレイル 20X “エマージェンシーブレーキ パッケージ”:新車試乗記

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キャラクター&開発コンセプト

3代目はクロスオーバーSUVへ

新型 日産エクストレイル。名古屋モーターショー2013にて
日産 エクストレイルは、トヨタ RAV4やホンダ CR-Vに対抗して2000年にデビューした2リッタークラスのSUV。「ガンガン使えるタフギア」を合言葉に、悪路走破性を重視した電子制御4WD「オールモード4×4-i」、無骨な外観デザイン、防水処理を施した内装など、道具感のある作りが幅広い層から支持され、2001年から10年間、国内で最も売れたSUVになった(2011年はジュークにその座を譲った)。2007年には2代目(T31型)にモデルチェンジしている。 今回の3代目(T32型)は、海外では2013年9月のフランクフルトショーでデビュー。日本では12月11日に発表、16日に発売された。欧州ではキャシュカイ(日本名デュアリス)の3列シート車「キャシュカイ+2」として、米国ではローグ(日本未導入)の2代目として販売されるモデルで、これら3モデルを一つに統合すべく、スタイリッシュなSUVになっている。 また。新型エクストレイルは、ルノー・日産グループで車両の構成要素を共有化する新戦略「CMF(コモンモジュールファミリー)」を導入したモデルの第一弾でもある。

緊急自動ブレーキシステムや自動駐車システムを新採用

好評の防水シートや防水ラゲッジは、新型でも継続された (photo:日産)
日本仕様はひとまず2リッター直4・直噴ガソリンエンジンとCVTの組み合わせ。アイドリングストップ機能も採用され、燃費(JC08モード)はFF車で16.0km/L、4WDで16.4km/Lと先代を大きく上回る数値を達成している。 新技術としては、日産では初採用となる低速域での緊急自動ブレーキシステム「エマージェンシーブレーキ」や「踏み間違い衝突防止アシスト」を採用。インテリジェントパーキングアシスト(自動駐車システム)付のアラウンドビューモニターも新設定されている。一方で、歴代エクストレイルで好評だった防水シート、防水ラゲッジといったヘビーデューティな仕様は継承された。 世界190ヶ国で販売されるというグローバルモデルゆえ、生産拠点は世界9ヶ国にあるが、日本向けはこれまで通り日産自動車九州(福岡県)。なお、発売当初はUK製を輸入していたデュアリスは途中から同工場製に変わったが、すでに国内向けは生産終了。つまり新型エクストレイルは、国内ではデュアリスの後継でもある。 国内の販売目標は月間2500台で、発売後3週間の初期受注は4倍超の1万1000台に達したとのこと。
 
販売が継続される先代(T31型)エクストレイルのクリーン・ディーゼル車(GT) (photo:日産)
なお、2リッターディーゼルターボ仕様に関しては先代ベースが継続販売されるが、その代わりに1年後には、日産独自の1モーター・2クラッチ+CVT方式のハイブリッド車が追加される予定。 ■過去の新車試乗記【エクストレイル関連】2代目(T31型)日産 エクストレイル 20GT(ディーゼル) (2008年10月)2代目(T31型)日産 エクストレイル 20X (2007年10月)日産 デュアリス 20G (2007年6月)初代(T30型) 日産 エクストレイル (2000年12月)
 

価格帯&グレード展開

全車2リッター・CVTで、224万9100円からスタート

日産 エクストレイル 20X (photo:日産)
全車2リッター直4ガソリン(147ps、21.1kgm)のエクストロニックCVT(無段変速機)仕様で、MTはない。駆動方式は4WDのほか、FF(20万0550円安い)を中間グレードにだけ用意している。 ラインナップは大きく分けて、上級装備を省いた「20S」(4WDのみ)、アルミホイール、オートエアコン、スマートキー等を標準装備した「20X」(FFおよび4WD)、そして20Xにアンダーカバー等を装着して外観をスタイリッシュにまとめた「エクストリーマーX」(4WDのみ)の3つ。価格は224万9100円~279万7200円。
 
日産 エクストレイル 20X エクストリーマーX (photo:日産)
低速域での衝突回避・軽減ブレーキや「進入禁止標識検知」を備えたエマージェンシーブレーキ パッケージ装着車は、わずか7万7700円高なので、一番の売れ筋は、20Xの4WDでエマージェンシーブレーキ パッケージ付(252万7350円~)あたり。出来ればさらに、オプションで、ステアリング操作を自動で行ってくれるインテリジェントパーキングアシスト(日産では初)付きアラウンドビューモニター&日産コネクトナビ(31万8150円)やLEDヘッドランプ(7万3500円)を装備したいところ。諸経費込みで300万円前後という感じだ。 なお、SUVらしいタフなイメージを強調した「エクストリーマーX」もベース車(X)の19万9500円高で設定。フロントオーバーライダー、アンダーカバー、大型フォグランプ、アルミホイールなどが装着される。 ボディカラーは、歴代エクストレイルのテーマカラーであるバーニングレッド、新色のチタニウムカーキなど全7色。初期受注の人気はダイヤモンドブラック(35%)、ブリリアントホワイトパール(23%)とのこと。

7万円高で7人乗りにできる

新型にはエクストレイルでは初の3列シート車が設定された (photo:日産)
新型のもう一つの売りは、7万0350円高でサードシート付の7人乗りになること(20Sを除く)。サードシートはあくまでエマージェンシー用で、荷室の床下に格納可能。また、使用の際に3列目のフットルームを確保すべく、セカンドシートに前後スライド機能が追加される(5人乗り仕様は固定)。このあたりは、同じく7人乗りも選べるトヨタ ヴァンガードや三菱 アウトランダー(PHEVは除く)などとおおむね同じ。ただし、車重は70kgほど増えるほか、スペアタイヤが省略されるので、どちらにするかは必要次第だろう。 ■20S(4WDのみ)      225万9600円 ■20X(FF/4WD)    224万9100円~/244万9650円~ ■20X エマージェンシーブレーキ パッケージ(FF/4WD)  232万6800円~/252万7350円~※今回の試乗車 ■20X エクストリーマー X (4WDのみ)   264万9150円~ ■20X エクストリーマー X エマージェンシーブレーキ パッケージ(4WDのみ)  272万6850円~
 

パッケージング&スタイル

クロスオーバーSUV風に変身

今回試乗したのは20X “エマージェンシーブレーキ パッケージ”
「タフギア」をキーワードに、四角くて無骨なスタイルを売りとしてきたエクストレイルだが、新型はフロントウインドウとバックドアを寝かせ、ボディサイドに複雑な抑揚をつけるなど、すっかり今風のクロスオーバーSUVに変身。欧州では2代目キャシュカイ+2として販売されるように、デュアリスの後継と言われればすんなり納得できるのだが……。日本でも案外早く定着するかもしれないが、今のところは、戸惑っている人が多いという状況だと思う。
 
ボディサイズ的には、このクラスのほぼド真ん中。先代よりホイールベースが75mm伸び、全長と全幅も少しずつ大きくなったが、意外にも全高はあまり変わっていない。ぐっと低くなったように見えるのだが、それはどうやらデザインによる錯覚らしい。また、CX-5がショート&ワイドの典型的ヨーロッパスタイルだとすると、エクストレイルはロング&ワイドの米国スタイル。このあたりは、米国向けのローグから来た設計要件だろう。
 
ヘッドライトはハロゲンが標準だが、オプションでLED(ハイ/ロー)を用意。LEDポジションは全車標準
バックドアは樹脂製で、7kg軽量化。ルーフレールは全車オプション
ホイールベースは先代より一気に75mmも伸びた。Cd値(空気抵抗係数)は0.35(先代比-0.01)
 
    全長(mm) 全幅(mm) 全高(mm) WB
(mm)
最低地上高(mm) 最小回転半径(m)
マツダ CX-5(2012~) 4540 1840 1705 2700 210 5.5
先代 日産エクストレイル
(2007~2013)
4590 1785 1685~1770 2630 200 5.3
スバル フォレスター(2012~) 4595 1795 1695 2640 220 5.3
新型 日産エクストレイル(2013~) 4640 1820 1715 2705 205 5.6
三菱 アウトランダー PHEV(2013~) 4655 1800 1680 2670 190 5.3
トヨタ ハリアー(2013~) 4720 1835 1690 2660 175~190 5.3~5.7
 

インテリア&ラゲッジスペース

意匠は変わるもの、エクストリームらしさは不変

室内幅は先代比+85mmで、センターコンソールも幅広くなった
インパネデザインは道具感のあった先代に対して、質感重視に変更。無骨な感じが好きな人は残念かもしれないが、一方で歴代エクストレイルで好評だった防水シート、防水加工フロア、防水ラゲッジといったヘビーデューティな仕様は継承されている。その点でエクストレイルらしさは不変だ。
 
アラウンドビューモニターには、人などの動きを検知して警告するMOD(移動物検知)機能が備わる (photo:日産)
新しい技術としては、日産では初採用となる低速域での緊急自動ブレーキシステム「エマージェンシーブレーキ」や「踏み間違い衝突防止アシスト」を採用するなど、安全装備を充実。また、インテリジェントパーキングアシスト(自動駐車システム)付のアラウンドビューモニターも新設定されている。
 
フットルームは先代比+90mmで、座面長もしっかり確保した大柄なリアシート。2列シート車は固定で、3列シート車は前後スライドする
「セルクロス」を使った防水シートは標準(一部グレードでクロスシートも選択可)。シートヒーター(20S以外に装備)も強力
大容量コンソールには、保温・保冷機能付の大型ドリンクホルダーを装備
 
新型では2枚のボードで荷室の間仕切りができるフレキシブルラゲッジ機能を採用。荷室高は先代より上がり、容量は若干減少したようだ
後席背もたれはシングルフォールディングに変更され、畳んでも少々かさばる。試乗車は5人乗り仕様で、床下には155/90R17という超大径テンパースペアを搭載
ハンズフリー機能付きリモコンオートバックドアをオプションで用意。インテリジェントキーを携帯していれば、手や物をバックドアのセンサーにかざすだけで電動バックドアが開く。ボディが泥だらけでも、手を汚さずに済む
 

基本性能&ドライブフィール

CVTっぽさはあるが、動力性能はとりあえず十分

新型で直噴化されたガソリンエンジン「MR20DD」はセレナと基本的に同じ
試乗したのは初期受注の70%を占めるという「20X "エマージェンシーブレーキ パッケージ"」の4WD。車両本体は252万7350円だが、試乗車は日産コネクトナビなどのメーカーオプションやフロアマットなど販売店オプション込みで302万4000円。 走らせての第一印象は、ざっくり言えば、自然吸気の2リッターエンジンにCVT(無段変速機)を組み合わせたモデルに共通するもの。直噴化された「MR20DD」はセレナと基本的に同じエンジンで、最高出力は147ps(先代比10ps増)、最大トルクは21.1kgm(先代比0.7kgm増)を発揮する。トルク感はそこそこだが、これはこれで特に不満なし。丁寧にアクセルを踏めば、CVT特有のスリップ感は少ないし、深く踏み込むとマニュアルモードみたいにステップ感のある変速をするのが面白い。 また、中回転から高回転にかけては、2リッターという排気量ならでのパワー感がある。しかも回せば、けっこう速い。エコモードを切った方が反応はいいが、エコモードのままでもアクセルを踏み込めば活発さが増すので、特に不満なく走れる。

アイドリングストップや先進安全装備はさりげなく

ステアリングの右下に「エコ」スイッチがある。走行中は押しにくい
アイドリングストップ機能は、1月の寒さを勘案しても、あまり積極的に作動しないという印象を受けたが、始動・発進はごくスムーズで、ほとんど意識しないほど。システムはセレナ譲りで、再始動の時にはスターターではなく、ACジェネレーター(発電機)で直接クランクを回すタイプ。道理でスムーズなわけだ。 日産初採用のエマージェンシーブレーキは、単眼カメラによる画像解析で測距を行うもので、衝突回避が可能なのは30km/hまでとのこと。一度警告までは作動したが、これもそれほど(例えばボルボやスバルのものほど)積極的には作動しないので、試乗中はほとんど意識しなかった。ただし、エマージェンシーブレーキ装着車に付いてくるLDW(車線逸脱警報)はかなりの頻度で作動するため、正直なところ途中でオフにしようかと思った。
 
車重は先代の同等装備車より60kgほど軽量化され、試乗した4WD(2列シート車)で1500kg。パワーウエイトレシオは10.2kg/ps
踏み間違い衝突防止アシストについては、バックする時、駐車場のそばにあった草に反応し、スロットル制御および「ググッ」とブレーキ制御が入った。これは、ドライバーによるブレーキ操作がない場合や、ドライバーが誤ってアクセルを踏んでいると車両側が判断した場合に作動するらしい。障害物の検知はパーキングセンサー用の超音波センサー(前後4つずつで計8個)を使っている。

ワインディングではデュアリスみたいに

そんな印象のパワートレインより、シャシーの方が先代から大きく変化した。先代はFFベース・モノコックボディの中型SUVとしては、悪路走破性を重視したせいか、ユサユサ感が大きめで、それがSUVらしくもあったが、一方で新型のシャシーは完全にクロスオーバーSUV風で、滑らか、フラット、シャッキリした走りになった。デュアリスみたいになった、と言ってもいいかも。こうした変化に対して寂しく思う人がいるかもしれないが、一般的には間違いなく進化だ。 ワインディングで負荷をかければ、腰高感はそれなりに高まるものの、意外によく曲がるし、ヒヤッとする動きも出ない。液晶モニターの前後駆動配分を見る限り、舗装路では発進時を除いて、ほとんど前輪駆動のまま走っている感じだったが、オールモード 4×4-i の4WDオートモードでは、前後の駆動力配分を100:0~50:50の範囲で積極的に変更することで、コーナーでの操縦安定性を高める制御も付いている。
 
オールモード 4×4-i の操作ダイアル。2WDモードのほか、50:50のLockモードも選べる(低速走行時のみ)。左のヒルディセントコントロールは、Lockモード選択時のみ作動
また、コーナーやブレーキング時にCVTのギア比を制御してエンジンブレーキを掛ける「アクティブエンジンブレーキ」や、積極的にブレーキ制御を行ってコーナリング時の安定感を高める「コーナリングスタビリティアシスト」も黒子として安定感ある走りに貢献しているようだ。 ただ、エンジンとブレーキを制御することで、凸凹道での車体振動を低減すると主張される「アクティブライドコントロール」については、車体との兼ね合いもあるので、それ自体の効果はよく分からなかった。

高速道路ではロードノイズが少し気になる

メーター中央に「アドバンスド ドライブアシスト ディスプレイ」を装備。様々な車両情報を表示できる
高速巡航時のエンジン音や風切り音は静かで、多少高い速度域でも、ノイズレベルが変わらないのはいいところ。乗り心地や直進安定性も良く、この点での不満はない。 ただ、オールシーズンタイアからと思われるロードノイズは、やや大きめ。ホイールハウスの裏には入念に吸音用のフェルト(不織布)が貼られているが、少なくとも高速道路ではもうちょっと静かだったら、という感じ。タイヤをサマーに替えれば良くなるかも。 なお、試乗車にはメーカーオプションの日産コネクトナビとセットで、斜め後ろの車両を検知してドライバーに注意を促す「BSW(後側方車両検知警報)」も装備されていた。ただし、クルーズコントロールは従来通りの手動式で、追従機能はなし。スバルのEyeSightやミリ波レーダー式のACCなどが、すでにライバル車で手に入ることを考えると、ちょっと物足りない。

試乗燃費は9.0~11.8km/L。JC08モード燃費(4WD・2列車)は16.0km/L

指定燃料はもちろんレギュラー。燃料タンク容量は60リッター
今回はトータルで約200kmを試乗。試乗燃費(車載燃費計)は、いつもの一般道、高速道路、ワインディングを走った区間(約90km)で9.0km/L。また、一般道で大人しく走った区間(30km)が11.8km/Lだった。走行モードは、ほとんど4WDオートのエコで走った。2WDモードでも走行抵抗はほとんど大差ないはずなので、実燃費も大差ないのでは、と思う。感覚的には、街中で7km/L台、高速巡航では13km/L台で、総じて10km/L前後で推移するという印象。 なお、JC08モード燃費(4WD・2列シート車)は16.0km/L。指定燃料がレギュラーなのは嬉しいところ。これは先代4WD車(JC08モード11.8km/L)より約36%いい数値。モーターデイズ的には、6年前に乗った先代20Xの試乗燃費が6.5~9.5km/Lだったので、実質2~3割アップかな、という印象。
 

ここがイイ

防水インテリアの継承、操縦安定性の飛躍的アップ、カメラやセンサーを駆使した安全装備の充実、燃費性能のアップ

すっかりクロスオーバーSUV風にはなったが、防水シートや防水ラゲッジなど、エクストレイルらしい機能性は継承されていること。これは海外仕様にはなく、日本専用。試してはいないが、オフロード性能も一般的なドライバーには十分なはず。7人乗りが選べるようになったことも、案外大きなメリットだと思う。 スタイリングがガラッと変わったように、操縦安定性も先代とは別物のように良くなった。とくに「アクティブエンジンブレーキ」や「コーナリングスタビリティアシスト」が働くワインディングでは、4WD的なオン・ザ・レール感を超えて、ものすごくよく曲がる、という新感覚の走り。CVTの段付き加速感も新鮮。 エマージェンシーブレーキ、踏み間違い衝突防止アシスト、車線逸脱警報、後側方車両検知警報、ふらつき警報、進入禁止標識検知、アラウンドビューモニター+インテリジェントパーキングアシストという先進技術の搭載。エマージェンシーブレーキ パッケージとアラウンドビューモニター(日産コネクトナビなどとセット)装着車に限るが、単眼カメラに加えて、前後左右にある4つのカメラ、前後8個の超音波センサー(パーキングセンサー)をフルに活用し、走行中や駐車時などの安全性を高めている。特に、駐車時のうっかり自損事故を自動ブレーキで防ぐ機能は新しいが、今後必須になっていくと思う。また標識検知も、画像解析を行うカメラならではの機能。今のところは進入禁止だけだが、今後の発展が期待される。 実用燃費がおそらく2割は良くなりそうなことも、この手のクルマでは実利の大きい進化。ガソリンエンジン車の進化はまだまだ続く。

ここがダメ

今までのイメージとのギャップ、ロードノイズなど

スタイリングは確かに今風になったが、従来モデルの無骨な感じがなくなったのは、少なくとも日本ではやや残念なところ。「日本のオヤジカーでもある」と先代の試乗記で書いたように、その支持は広い層で高く、先代の販売は終盤まで好調だった。そして今回のフルモデルチェンジ、スタイリング変更だが、これはあくまでもCMFを軸とする新しい世界戦略の中で行われたもの。エクストレイルという車名で培ってきた従来のイメージが大きくリセットされる形になったのは、ちょっともったいないと思ったりもする。 エマージェンシーブレーキは単眼カメラを使ったもので、今後の発展性を考えると面白いが、現状の性能は、このクラスの最新装備としては物足りない。すでにミリ波レーダーや、スバルのEyeSightのようなステレオカメラ方式が普及しつつある今、追従走行が可能で、もっと高い速度域まで対応するシステムにバージョンアップして欲しいところ。 高速走行時のロードノイズは、エンジン音や風切り音が静かなだけに、少し惜しいと思った。オールシーズンタイヤを標準とした意図は分かるが、日本ではサマーが標準でも良かったかも(冬はスタッドレスを履くだろうし)。 プラスαの余裕を求めるなら1年以内に追加されるというハイブリッド車に期待が集まる。車両価格は間違いなく上がるので、お得かどうかは微妙だが。クリーンディーゼルを国内で販売する予定は今のところないようだ。

総合評価

先代は最後まで売れていた

2014年1月の国内車種別販売ランキング(登録車)によると、エクストレイルは6616台で堂々の8位。それより上位はフィットやアクアなどのハイブリッド車やコンパクトカーが大半だ。日産は5位にノート、6位にセレナが入り、エクストレイルの次が28位のマーチだから、エクストレイルの健闘が光る。 ちなみに昨年トータル(1~12月)で、エクストレイルはモデル末期にもかかわらず25位。SUVで一番売れたCX-5が前年比+8.7%で18位(月平均3210台)、新型フォレスターが前年比+182%(約2.8倍)で19位(同2930台)だったが、先代エクストレイルも1月から11月まで月平均2236台も売るなど、大健闘していたわけだ。
 
つまり先代エクストレイルは、最後までものすごい支持を得ていたクルマということになる。日産は今、日本ではノート、セレナ、マーチ、そしてエクストレイルが売れているメーカーだと言えるのだ。先代の試乗記では、『コンセプトを徹底的に絞り込んだエクストレイルは、国産で唯一といってもいい「道具としてのクルマ」』『日産が考えたのは、50代と20代から30代前半(の親子)にエクストレイル、30代・40代のミニバン嫌いの都会派にデュアリスというマーケティングなわけで、これは絶妙。(中略)日産はこの2台で相当利益を上げるのではないか。』と書いたが、どうやらそのとおりになったようだ。
 
(photo:日産)
その屋台骨となるモデルのフルモデルチェンジは果たして……。いかにも無骨な、日本ウケするヘビーデューティスタイルが、先代までのエクストレイルが売れた大きな理由と思われたが、新型の立ち上がりは好調なよう。大きくイメージを変えたが、それは受け入れられた、ということのようだ。実際のところ、新型のスタイリングは今っぽく、今後はさらに一般受けすると思う。また先代、先々代からの代替え客から見ても新鮮だろう。それでいてタフさはちゃんと残っているので、ジュークのようなクロスオーバーとはきっちりユーザーが分かれる。それは、1月のランキングですぐ下につけるホンダ ヴェゼルとも一線を画せるということ。国内では同じくSUV色の強いフォレスターを睨んでさえいればいい。

クルマが進化する手段や方向の見事なサンプル

性能に関しては本文で書いた通り、このクラスのSUVとしては不満ないもの。特にSUVならではの使いやすさ、これはやはりセダンタイプの比ではない。デイズのある名古屋は雪もほとんど降らないし、都市部にいる限り、オフロードもほとんどない。しかし雪が降り、道がぬかるむ土地も、まだまだあるだろう。であればやはりSUVがいい。いや、都会でも高いアイポイントは運転しやすく、クルマ止めや坂でアゴをヒットすることもない。気軽に乗れるという点ではSUVが一番だなあと実感する。 ということで、より都会的なルックスを手に入れた3代目は、エクストレイルとデュアリスのユーザーを両取りして売れるはずだが、それでもライバルのフォレスターにはEyeSightがあるので、その対策は欠かせない。今回、日産の持てる衝突安全系装備の総てを、SUVにもかかわらず、これでもかとこのクルマへ投入してきたのは、そういうわけだ。この部分で新型エクストレイルが圧倒的にリードしたとは言えないものの、互角までは持ち込んでいると思う。特に多くのクルマが装備する超音波センサーを利用した踏み間違い衝突防止アシストは、今後の展開も含めて面白い。
 
アラウンドビューモニターの機能を使ったインテリジェントパーキングアシスト(自動駐車システム) (photo:日産)
ただ、アラウンドビューモニターを使ったインテリジェントパーキングアシストは、位置決めなどの使い方にかなりの慣れを必要とする上、車両が自動で動く速度はかなり速く、どうにも今ひとつうまく使えなかった。2代目プリウスに同じようなシステムが搭載されてから、すでに10年が経とうとするが、今回も10年前と同じような感想になってしまった。バックモニターに頼りすぎる運転は、人の運転能力(運転の勘)を削ぐようにも思える。自動運転がITS(高度交通システム)の最重要テーマとなっている昨今、今回の搭載はデモンストレーション的な意味合いもあるように思えるが、やはりこの技術は現時点で意味のあるものなのかどうか、再検討が必要だと思う。もしこれで事故が多発すると、自動運転自体への向かい風になりかねないことを危惧する。
 
東京モーターショー 2013の日産ブースにて
今回のエクストレイルは、ルノー・日産グループのCMF(コモン・モジュール・ファミリー)戦略の落とし子なわけで、VWのMQB同様、そのおかげもあって安全系装備を充実させることができたとも考えられる。今後、クルマが進化する手段や方向は、こういうものなのだな、という見事なサンプルに見えてくる。ある意味、実に日本的だった先代とは違い、日本という小さな世界を横目に、グローバリゼーションの流れに乗って世界で売れるクルマが作られ、その恩恵もあって安全でエコなSUVが登場した。日本での最高というより、世界での最高を目指すものになったわけだ。ちょっと残念な気もするが、パソコンやテレビ事業を止めるソニーのようにならないためには、それもありだろう、とも思う。
 

ホンダ オデッセイ アブソルート・EX:新車試乗記

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キャラクター&開発コンセプト

5代目はステップワゴンとプラットフォームを共有

新型ホンダ オデッセイ。10月31日に名古屋で開催された新車発表会にて
2013年10月31日に国内で発表、11月1日に発売された新型オデッセイは、1994年にデビューした初代から数えて5代目。ホンダ初のミニバンとなった初代オデッセイは、アコード用のFFプラットフォームを使うことで、低床フロア、広々した室内、優れた操縦性を実現して大ヒット。2003年に発売された3代目以降は全高を低くし、スポーティな走りやスタイリングをより重視する方向と進化していた。 しかし今回の新型は、これまでとは異なる方向にモデルチェンジ。まずプラットフォームを従来のアコード系からステップワゴンベースに変更。底床化をさらに推し進めながら、全高を一気に150mm高くし、ホイールベースを70mm伸ばしてエリシオンと同じ2900mmとした。 また、オデッセイの特徴でもあったリアのヒンジドアは今回から両側スライドドアに変更。また、7人乗り仕様には、背もたれの中折れ機能やオットマンを備えたセカンドシート「プレミアムクレードルシート」が採用されている。

2.4リッター直4+CVTを搭載。アブソルートでは直噴を採用

エンジンは全車2.4リッター直4の自然吸気だが、アブソルートには新開発の直噴エンジンを採用。変速機は今回から全車CVT(無段変速機)になった(先代も標準車はCVTだったが、4WD車やアブソルートは5ATだった)。ハイブリッドモデルは用意されていないが、目下「検討中」とされている。 生産はこれまで通り埼玉製作所(埼玉県狭山市)で、販売目標は先代と同じ月間4000台。発売後約1ヵ月での累計受注台数は、その3倍の1万2000台超とのこと。広告キャッチコピーは「美×力」。
 
初代オデッセイは当初は北米市場を主眼に開発され、ニューヨーク市ではタクシー(イエローキャブ)としても導入された
■過去のニュース【ホンダ オデッセイ関連】ホンダ、新型オデッセイを発表 (2013年10月) ■過去の新車試乗記【ホンダ オデッセイ関連】4代目ホンダ オデッセイ アブソルート (2008年11月)3代目ホンダ オデッセイ アブソルート (2003年12月)2代目ホンダ オデッセイ (1999年12月)初代ホンダ オデッセイ (1994年11月)
 

価格帯&グレード展開

価格は249万~。アブソルートは295万円~

これまで通り、標準の「オデッセイ」と、精悍な内外装、高出力エンジン、専用サスペンションを備えた「オデッセイ アブソルート」を用意。エンジンはいずれも自然吸気の2.4リッター直4だが、前者はポート噴射で175ps、後者は直噴で190ps(4WDは185ps)を発揮する。どちらもレギュラーガソリン仕様。変速機は全車CVTだが、後者には7速マニュアルモードとパドルシフトを標準装備する。 駆動方式はFFのほか、オンディマンド式ながら電子制御化して低μ路での発進性能を向上させた改良型リアルタイム4WDを用意。乗車定員は7人乗り(2-2-3)と8人乗り(2-3-3)がある。

売れ筋はアブソルート

標準車の内装色は全車アイボリーになり、木目調パネルを装備。オプションでレザーも選択できる
グレードは「B」「G」「G・EX」「アブソルート」「アブソルート・EX」の5種類。価格は普通のオデッセイが249万円~、アブソルートが295万円~。 また、標準車にシティブレーキアクティブシステム(低速衝突軽減ブレーキ+誤発進抑制機能)、LEDヘッドライト、Honda インターナビ、16インチアルミホイール等を追加した上級グレード「G・EX」は336万円~。アブソルートにHonda インターナビ、電動シート(運転席のみ)、17インチアルミホイール等を標準装備した最上級グレード「アブソルート・EX」が358万5000円~。 あくまで初期受注だが、その内訳はアブソルートが87%と圧倒的で、そのうち51%をアブソルート・EXが占める。また、7人乗りは全体の73%を占める。
 
LEDヘッドライト(ロービーム)はアブソルート全車とG・EXに標準装備。
■B(FF/4WD)   249万円(8人乗り)/274万円(8人乗り) ■G(FF/4WD)   269万円(8人乗り)・281万9000円(7人乗り)/294万円(8人乗り) ■G・EX(FF/4WD)  336万円(7人乗り)/350万5000円(8人乗り) ■アブソルート(FF/4WD)    295万円(8人乗り)・315万4000円(7人乗り)/327万5000円(8人乗り) ■アブソルート・EX(FF/4WD) 358万5000円(7人乗り)/373万円(8人乗り) ※今回の試乗車
 

パッケージング&スタイル

ついに両側スライドドアを採用

アブソルートには大開口メッキグリル、前後エアロバンパー、ドアロアガーニッシュを採用
新型で目を引くのは、大きなメッキグリルがある押し出し感の強い顔、そして両側スライドドアだろう。従来のヒンジドアは歴代オデッセイの特徴だったが、今やその廃止を惜しむ人はほとんどいないのでは。重量はスライドドアの方が重くなるが、ミニバンとしては進化と言っていいと思う。 「ソリッド ストリームライン(塊感のある流線型)」をテーマにしたスタイリングも、オデッセイらしく流麗にまとまっている。

背は150mmも高くなった

試乗車は18インチホイールを履くアブソルート・EX。タイヤは225/45R18
プラットフォームは現行ステップワゴンがベースだが、燃料タンクは薄型化され、ホンダお得意の「超低床プラットフォーム」をさらに追求。逆に全高は先代より150mm高くなったが、結果として初代(全高1645mm)の高さに戻ったとも言える。 また、ホイールベースも先代から70mm拡大され、新型オデッセイと入れ替わりで販売終了したエリシオンと同じ2900mmになった。今回のオデッセイは、国内ではエリシオンとの統合モデルでもある。
 
 
    全長(mm) 全幅(mm) 全高(mm) WB(mm) 最小回転半径(m)
ホンダ ステップワゴン(2009~) 4690 1695 1815~1830 2855 5.3~5.6
先代(4代目)ホンダ オデッセイ(2008~2013) 4800 1800 1545~1565 2830 5.4
新型ホンダ オデッセイ(2013~) 4830 1800~1820 1685~1715 2900 5.4
トヨタ アルファード/ヴェルファイア(2008~) 4870~4885 1830~1840 1890~1900 2950 5.7~5.9
ホンダ エリシオン プレステージ(2007~2013) 4920 1845 1790~1810 2900 5.7~5.8
 

インテリア&ラゲッジスペース

タッチパネル式ナビを採用。ダッシュ造形はシンプルに

アブソルートの内装は黒木目調パネルをあしらったブラック基調。EXはHonda インターナビを標準装備
インパネデザインはホンダ車では久々にシンプル。工場オプションのインターナビがタッチパネル式になったため(フリックやピンチアウト操作も可能)、ナビ用ディスプレイは手が届きやすいダッシュ前面に配置されている。エアコン操作パネルも流行りのタッチ式になった。操作性はいまいち良くないが、慣れ次第か。
 
先代にも採用されていたオプションの「マルチビューカメラシステム」
歴代オデッセイ同様に、乗り込んでまず思うのはフロントウインドウの傾斜が強く、Aピラーが左右の視界を遮ること。これも慣れである程度カバーできるが、最初は少し戸惑う部分。上級のEXグレードには、日産のアラウンドビューモニターと同様の「マルチビューカメラシステム」をオプション設定。それとセットで、駐車時の運転操作をサポートする「Hondaスマートパーキングアシストシステム」も付いてくる。
 
小物入れに関してはセンターコンソールの「リフトアップトレー」が便利
リフトアップトレーを格納すれば、ウォークスルーがやりやすくなる
ステアリングスイッチでオーディオ、情報表示、クルーズコントロール等を操作可。アブソルートはパドルシフト付
 

プレミアムクレードルシートを採用。サードシートは3人掛けに

2列目のプレミアムクレードルシート。写真の最後端位置では、左右スライド機能でシートを中央に寄せる必要がある。EXグレードにはロールサンシェイドも装備
インテリアで最大の見どころは、7人乗り仕様のセカンドシート。キャプテンシートタイプの「プレミアムクレードルシート」には、前後740mmロングスライド機能、左右スライド機能、背もたれの中折れ機能(上半分を少し起こすことができる)、そしてオットマンも備えている。ただ、レバーが一つの座席に5つも付いているので、覚えるまではどのレバーがどの操作なのか分かりにくい。 サードシートはオデッセイ伝統の床下収納式、従来モデルは2人掛けだったが、新型では現行ステップワゴン譲りの3人掛けを採用。見た目こそ平板だが、座り心地は中央席も含めて良好。
 
3人掛けになった3列目。3分割でのリクライニングも可能で、座り心地は良好。見晴らしもいい
セカンドシートを左右に離せばセンターウォークスルーが可能。室内高は先代より105mm増えて1325mm(FF)。ちなみに現行ステップワゴンの室内高は1395mm
試乗車は運転席パワーシート装着車。セダン的なドラポジが何となくホンダ車らしい
 
サードシート使用時の荷室。全車スペアレスで、パンク修理キットを搭載する
サードシート格納時。バネが入っているので操作に力やコツは不要
セカンドシートを一番前に寄せた状態。7人乗りのセカンドシートはこれ以上畳めない。8人乗りのベンチシートは背もたれを前に倒せる
 

基本性能&ドライブフィール

アブソルートは直噴エンジンとCVTを新搭載

自然吸気2.4リッター(2356cc)直4は、アブソルートのみ直噴化。レギュラーガソリン仕様ながら、FF仕様で190psを発揮する
試乗したのは、装備満載のアブソルート・EX(車両本体で358万5000円)。エンジンは先代用ユニット(K24A)の発展型となる2.4リッター直4・DOHC i-VTEC(K24W)。普通のオデッセイ用(175ps)は一般的なポート噴射だが、アブソルート用(FF車は190ps)は直噴化されている。 エンジンは直噴、ミッションがCVTということもあってか、高回転まで引っ張った時のザラッとしたノイズは気になるものの、動力性能に不満はない。先代アブソルートはプレミアムガソリン仕様で206psだったが、新型はレギュラーに変更。パワーは下がったが、実際のユーザーにはありがたい部分だろう。
 
CVTは、フィールやノイズ面に限って言えば、先代の5ATとどっちがいいかというと微妙だが、エンジンの中低速トルクが十分にあるため、加速時のスリップ感といったCVT独特のネガは、そんなに気にならない。DBW(ドライブ・バイ・ワイヤ)とCVTの協調制御「G-design Shift」も効いている感じ。ただ、高回転ではやはりパワートレインが少々ノイジー。CVTの7速マニュアルモードも、かえってフリクション感が強まるのが気になった。

スポーティさが優先された足回り

アブソルート・EX(FF車)は225/45R18タイヤ(トーヨ-のトランパス)を標準で履く
舗装のいいワインディングでは、滑らかでしっかりした走りが楽しめる。ミニバンにありがちなロール感はなく、ステアリング操作に対する反応もいい。新開発のザックス製「振動感応型ダンパー」(全車標準)は、振動の幅が小さい時には柔軟に、コーナリング時など大きな入力には高い減衰力を発揮するとのこと。このあたりは当然ながら、現行ミニバンで販売上位を占めるヴェルファイア/アルファード、セレナ、ステップワゴンなどと明確に違う部分。テストコースで煮詰めた感じが伝わってくる。ホンダとしては最も過激にスポーティを追求した3代目アブソルートの走りを意識したようだ。 一方で、アブソルートで評価が厳しくなるのは、専用サスペンションによる乗り心地。都市部の道路や高速道路など、舗装がいいところでは問題ないが、荒れた路面になると上下動が大きくなる。また、路面の荒れたコーナーでは、リアに跳ねるような動きも。実は先代までのオデッセイは前後ダブルウイッシュボーンだったが、新型のサスペションはステップワゴン譲りのフロントがストラット、リアがトーションビームという組み合わせ。しかも車重は前後スライドドアの採用やボディサイズの拡大などによって、上級グレード(電動スライドドアが標準になる)では200kg近く増している。 巡航時の静粛性については、少なくとも1列目では不満がなかった。高速道路では乗り心地もいいので、快適に巡航できる。回転計が液晶バーグラフ表示なので、正確な数字は分からなかったが、100km/h巡航時のエンジン回転数は1700~1800回転くらい。それゆえ長距離ドライブでは、オプションのACC(EXグレードのみ注文可能)が欲しいところ。

試乗燃費は8.5~11.5km/L。JC08モード燃費(アブソルート・FF・7人乗り)は13.6km/L

指定燃料は全車レギュラー。燃料タンク容量はFFが55リッター、4WDが50リッター
今回はトータルで約200kmを試乗。試乗燃費(車載燃費計)は、いつもの一般道、高速道路、ワインディングを走った区間(約90km)で8.5km/L。また、一般道で大人しく走った区間(30km×2回)が11.2km/L、11.5km/Lだった。今回は気温が0度C前後と低く、アイドリングストップ機能はおそらくエンジン水温やヒーター優先のためだろう、作動しないことが多かった。ちなみに先代オデッセイに5年前に試乗した時の試乗燃費は8.1~8.9km/L。 JC08モード燃費は、アブソルートのFF車で13.6~14.0km/L。先代アブソルート(FF)は11.0km/Lだったので、車重が200kgも増えたのに、モード燃費は2割以上向上。しかも指定燃料はプレミアムからレギュラーに変更されている。
 

ここがイイ

超底床フロアによる大空間、乗降性の良さ、積載性の高さ。走り重視の独自性。燃費性能。シンプルなインパネデザイン

全長4.8メートル、全幅1.8メートル、室内高1325mmなどによる大空間を、贅沢に使った7人乗り仕様のパッケージング。プレミアムクレードルシートによって、並みのリムジンを上回るリアシート空間が300万円台で手に入るのは魅力的。また、サードシートの座り心地もまずまずだから、少なくとも6人が快適に過ごせて、センターウォークスルーで自由に前後を行き来できる。 後席ステップの地上高が約300mmと圧倒的に低く、乗降性も抜群にいい。足腰の弱った高齢者には喜ばれると思う。また、サードシートは従来通り床下収納で、室内高が高くなった上、低床のため荷室開口部の地上高も低いから、積載性もぐんと高まった。自転車なども積みやすくなったと思う。 販売主力のアブソルートは、ミニバンとしては異端というか、ニッチ向けの仕様だが、今や王道としてのミニバンは、ヴェルファイア/アルファード、ヴォクシー/ノア、セレナ、ステップワゴンなどで足りているわけで、対抗すべくオデッセイ自体はそれらとは違うクルマに仕上げられている。その独自性はホンダらしいもの。 現時点では直噴化以外、これといって特徴のないアブソルート用のエンジンだが(おそらくターボ化を見据えての直噴だと思う)、パワーは十分にあるし、車重が上級グレードで200kgも増えたのに燃費も悪くなっていない。併せて、レギュラー仕様とされたことも嬉しい部分。 タッチパネルを多用したインパネと、そのシンプルなデザイン。これまでのホンダ車の志向とは異なり、すっきりした運転席周りは好感が持てる。

ここがダメ

アブソルートの乗り心地。車両感覚のつかみにくさ。ハイビームがハロゲンになること

ミニバンの一般的な尺度で言えば、アブソルートの乗り心地はもう少し何とかしたかったところ。少なくとも試乗した18インチタイヤを履くアブソルート・EXの場合、高速道路や、よく整備された平滑な路面ならいいが、舗装の悪いところでは2列目以降から不満が出ると思う。 あと、乗っていると慣れてしまうが、左Aピラーによる死角や、長めのボンネット、1.8メートルの全幅などによる車両感覚のつかみにくさは気になるところ。最小回転半径は5.4メートルと小さく、小回りは効くが、狭い道では少し緊張感を覚える。このあたりは初代オデッセイから続く伝統とも言えるが。 あと、ロービームはLEDなので明るくていいが、それに対してハロゲンのハイビームは相対的に暗く感じられるし、色調も黄色っぽく見えてしまう。どうせならハイビームもLEDにして欲しかった。 上級グレードには、低速突軽減ブレーキ「シティブレーキアクティブシステム」を含む「あんしんパッケージ」が装備されるが、より高い速度域まで対応するミリ波レーダー方式の衝突軽減ブレーキ(CMBS)やACC(アダプティブクルーズコントロール)は、オプションになる(セットで7万3500円)。今後、このあたりの先進安全装備は急速に進化・普及すると思われるので、できれば標準装備にして値段を下げるという方向だと良かったと思う。

総合評価

背景には車種の統廃合

今度のオデッセイは5代目だ。ということで、奇数回のフルモデルチェンジで大きく変わるホンダ車、という原則を見事に踏襲した。ちょっと振り返ってみると、初代オデッセイはアコードをベースとした底床・ヒンジドアの6/7人乗りという当時としては画期的なコンセプトのミニバンだった。ホンダらしく走りにこだわり、当時としてはミニバンらしからぬ走りがひとつの売りで、大ヒットした。 2代目はヒット作の継承ということで、マイチェンとも見えそうなキープコンセプト。続く3代目は奇数回ということで、コンセプトを活かしながらも走りをより重視し、ミニバンというよりステーションワゴン(なにせ立体駐車場に入るのだから)とも言うべき斬新な乗り物となった。そして4代目は再びそのキープコンセプトだが、3代目ほど尖ったモデルではなく、そのマイルドさは今ひとつ多くの人にはウケなかったようだ。
 
ということで5代目は大胆に変えてきた。オデッセイとして走りは譲れないが、ユーティリティや車格はより向上させようというわけだ。その背景には、車種の統廃合がある。最上級ミニバンとなるエリシオンが廃止され、オデッセイがホンダの国内向け最上級ミニバンに位置づけられた。こうなるとオデッセイ一車種だけでヴェルファイア/アルファード、そしてさらにはエスティマをもライバルとしなくてはならない。日産のエルグランドや、価格的には輸入車のミニバンもライバルになる。高級感や広さ、ブランドで勝負し、むろん走りでも勝とうというのが、新型オデッセイの狙いだ。しかも価格的な優位性も保つ必要があり、昨今、多大なコストをかけるわけにもいかない。そこで初代がアコードをベースに作られたように、ステップワゴンをベースにすることで、相当なコスト削減を果たしている。こういう事情で足回りなどは先代よりぐっとシンプルかつ低コストになった。 ということで、背は高く、一方で底床は徹底され、広い室内空間と低重心を確保。室内空間はまさにミニバンと言うべき広大なものになった。そして走りの方も、まあふつうに飛ばす分には不満など出ないレベルがキープされている。3代目から4代目に引き継がれたプログレッシブコマンダーを中心とした斬新なインパネはなくなり、ごくシンプルなインパネと操作系(タッチパネル類は新しい)になり、これなら誰もが違和感なく買えるという、ある意味保守的なものとなった。そして、2列目のプレミアムクレードルシートなど誰もが喜ぶ装備も得て、ライバルに対抗する。実際、このシートは大柄な人向けと思えるヴェルファイアのものより、よく体に馴染んだ。ヴェルファイアのオッサンぽさが嫌な人には、ついに選択肢ができたと喜ばれるだろう。

パッケージングと走りのベストミックス

いわゆるワンボックス時代から、かれこれ20年以上は「ミニバン」のある暮らしをしてきたが、やはりこんな便利なものはない、と思う。同じ全長と全幅のクルマなら、天地も広いミニバンこそ多人数・多荷物を運べる理想的な乗り物だ、と今でも思う。クルマは広いに越したことはない。ただ、それゆえ出てくるネガにどう対応するか。中でも燃費、操安というあたりは大きな課題だが、それらを解決しようとするのがこれまでミニバンが辿ってきた進化と言ってもいいだろう。燃費に関しては今のところハイブリッド車が解決に当たり、操安に関しては早くからオデッセイが取り組んできた。ただ、そのオデッセイもスポーティな走りと十二分な広さを両立させることが無理だったのは事実。それをとうとう実現したのが今回の新型と言えるのではないか。 試乗時には、いつものワインディングには雪が残っており、思う存分走るわけにはいかなかったが、それでもこんなに大きな室内空間を持つミニバンなら、これくらい走ればもう十分でしょう、という感覚にはなった。ミニバンでもスポーツカー並み、はまあ理想だが、ミニバン黎明期(20年くらい前)にこのクルマがあったら、まさにスポーツカー並みに走るミニバンだと思ったかもしれない。サンデードライバー的には新型オデッセイのこの性能で、もはや十二分なのでは。本文にあるように、2列目以降の乗り心地という肝心な部分と走りの両立が高いレベルで出来たとはちょっと言いづらいところだが、乗り心地を最も重視するのであれば、このクルマを選ぶ必要はない。ミニバンらしいパッケージングとオデッセイらしい走りのベストミックスが今回のオデッセイだと思う。 また、日常的に使うミニバンとして、いいなあと思ったことを列挙してみよう。まず、センタコンソールのリフトアップトレー。ここにはスマホが置け、その前にあるUSB端子で充電ができる。初めてスマホ置き場を持ったクルマではないか。これは可動式なので、引っ込めれば運転席から後席へウォークスルーがしやすい。室内確認用の広角ミラーが引き継がれているのも評価できるし、それが眼鏡ボックスと一緒になってるのもいい。ここにはサングラスを使わない人でも老眼鏡が置いておけるw。マルチビューカメラも、こういうクルマの場合、やはりあれば便利だ。ただ、カメラ画像に気を取られる可能性がないとも言えないのが難しいところだが。そしてプログレッシブコマンダーが消えた代わりに、スマホライクな操作ができるようになった純正ナビ。タッチパネルは嫌いだと言い続けてきたが、もはやこちらがデフォルトになりつつあるのを受け入れるしかないだろう。もうひとつ、燃費は重量増加から考えると悪くなるはずだが、これを少なくとも先代並みにキープし、ガソリンのレギュラー化で実質的に維持費を下げたのは素晴らしいと思う。
 
先代はステーションワゴン的だったが、今回は明らかに「ミニバン」を目指した。ということで、目下売れているのはアブソルートのようだが、標準モデルの方が快適で豊かな生活の道具となる「高級ミニバン」としてはチョウドイイのかもしれない。巨大でメッキギラギラのグリルにするのが国産ミニバンの主流であり、アブソルートもその路線だが、ノーマルモデルではおしとやかなグリルが好ましく映る。おそらく乗り心地もアブソルートよりいいだろう。となるとプレミアムクレードルシートを搭載したG・EX(336万円・エコカー減税100%対象)を所有した上で、やがて出るS660をもう1台買うというのが、理想のホンダライフかも。そういえばホンダ ビートが登場する直前(1990年頃)にはエスティマとビートが理想のカーライフと思っていたもの。クルマは進化したが、人は進化してないかw
 

スズキ ハスラー:新車試乗記

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キャラクター&開発コンセプト

軽ワゴンとSUVのクロスオーバー

東京モーターショー 2013に出展された新型スズキ ハスラー
2013年11月に開幕した東京モーターショーでお披露目された新型ハスラーは、ワゴンRのようなトール型軽ワゴンとSUV(スポーツ用多目的車)を融合させた新ジャンルの軽自動車。市販車は12月24日に正式発表され、年明けの2014年1月8日に発売された。 一番の特徴は、「アクティブなライフスタイルに似合う軽クロスオーバー」をテーマとした内外装デザイン。また、4WDモデル(CVT)には、低μ路での発進をサポートする「グリップコントロール」機能や、急な下り坂ではブレーキ制御等で車速を約7km/hに維持する「ヒルディセントコントロール」機能を追加するなど、オフロード走行性能も若干高められている。

現行ワゴンRがベース

スズキ ハスラーと言えば、1969年に登場した2ストロークのオフロードバイク「TS」シリーズが有名。国内向けがハスラーと呼ばれ、全盛期には50ccから400ccまであった。写真はスズキ歴史館の展示車で、1970年代の空冷モデル。左から400、50、90
ベースは現行の5代目ワゴンRであり、超高張力鋼板を多用した軽量プラットフォームをはじめ、トルクフルなR06A型エンジン、超ワイドな変速比を誇るジヤトコ製副変速機付CVT、リチウムイオンバッテリーを使ったブレーキエネルギー回生システム「エネチャージ」、レーダーブレーキサポート(衝突被害軽減ブレーキ)といったスズキの最新技術は、全て現行ワゴンRから受け継がれている。 生産は湖西工場(静岡県湖西市)。販売目標は月間5000台と、ワゴンR(1万6000台)の約1/3だが、受注はうなぎのぼり。納期は仕様にもよるようだが、現時点で半年待ちとも言われている。 なお、マツダには「フレア クロスオーバー」としてOEM供給され、2014年1月31日に発売されている。こちらの目標台数は月間500台。
 

価格帯&グレード展開

104万8000円からスタート。売れ線は130万~150万円台

試乗した2台。いずれもXで、左のピンクがターボ・4WD、右のシルバーがNA・FF
エンジンは自然吸気とターボの2種類で、駆動方式はFFと4WD。ミッションはCVTがメインだが、下位グレードでは5MTを選択できる。 価格は104万8000円からだが、ホワイト2トーンルーフなどの人気オプションを選べるのは、中間グレードの「G」から。売れ筋はGグレードに、2トーンルーフ(4万2000円)、ディスチャージドヘッドランプ、運転席シートリフター、チルトステアリング等のセットオプション(6万3000円、これは必須)、4WD(約12万円高)、ターボ(8万4000円高)を追加した130万~150万円台になりそう。全部のせは、160万円を超える。
 
15インチスチールホイールは「A」と「G」に標準装備。基本はガンメタだが、ホワイトルーフ車のみホワイトになる。最上級「X」は切削タイプのアルミが標準
【ラインナップ】 ■A(5MT)   104万8950円(FF)/116万6550円(4WD) ■A(CVT)   104万8950円(FF)/116万6550円(4WD) ■G(5MT)   112万7700円(FF)/124万0050円(4WD) ■G(CVT)   121万1700円(FF)/133万4550円(4WD) ■Gターボ(CVT) 129万5700円(FF)/141万8550円(4WD) ■X(CVT)    136万9200円(FF)/149万2050円(4WD) ■Xターボ(CVT) 145万3200円(FF)/157万6050円(4WD)
 

パッケージング&スタイル

道具感あり、可愛らしさあり

ヘッドライト周辺は初代ジムニー(LJ10、LJ20系)や現行ジムニー(JB23)、そして前後フェンダーのショルダーラインは初代/2代目エスクードがモチーフとのこと
これだけデザインで老若男女に絶賛される軽自動車も珍しい。ボディサイズは全高も含めて現行ワゴンRと大差ないが、アウターパーツはほぼすべて新規。丸目の異型ヘッドライト、小さめのグリル、無塗装の前後バンパーやフェンダーアーチ、表情豊かなボディサイド、立ったAピラー、ワゴンR比で+25mmの最低地上高(175~180mm)、大径タイヤ(全車165/60R15)などで、タフな道具感と可愛らしさを両立したデザインとしている。 面白いのは、2スト時代のジムニーや初代エスクードなど、スズキが誇る歴代SUVへのオマージュが随所に隠されていること。ボディサイズに制約がある中、これは本当にグッドデザイン賞ものじゃないだろうか。

ボディカラーは全9色。2トーンルーフ仕様も用意

NAとターボを外観で見分けるのは困難。識別点はマフラーエンドの形状と太さくらいしかない
全部で9色、2トーンルーフ(ホワイトもしくはブラック)を含めると11パターンあるボディカラーも、ハスラーの楽しさを倍増させている。新色のパッションオレンジ、サマーブルーメタリック、キャンディピンクメタリックの3つは、ホワイトルーフの2トーン仕様。また、フェニックスレッドパール(ワゴンR スティングレーと同じ赤)とブラックルーフといった組み合わせも用意している。2トーンルーフはMINIというより、トヨタのFJクルーザーや、その元ネタであるランドクルーザー40系を思わせる。
 
ディスチャージヘッドランプ(LEDポジションランプ付)はXだと標準だが、Gでは運転席シートリフター等とセットオプション(6万3000円)
リアのエンブレムは頭文字の「H」型。リアコンビランプの形状は初代(1988年~)/2代目(1997~2005年)エスクード譲り
これはスチールシルバーメタリック。Aピラーが起こされ、ロングルーフ化されたことで、シルエットはワゴンRとは別物になっている
 
    全長(mm) 全幅(mm) 全高(mm) WB(mm) 最小回転半径(m)
ホンダ N-ONE 3395 1475 1610 2520 4.5-4.7
スズキ ワゴンR/
ワゴンR スティングレー
1640~1660 2425 4.4~4.6
スズキ ハスラー 1665 4.6
スズキ ジムニー(JB23型) 1680~1715 2250 4.8
 

インテリア&ラゲッジスペース

内装デザインとパッケージングも文句なし

一眼メーター、エアコンルーバー、スピーカーリングの形状は、ヘッドランプと同じ。新開発のシボが採用された黒い樹脂部分の質感も高い
ダッシュボードのカラーパネルは新開発の材料着色素材で、車体色がオレンジの場合はオレンジだが、それ以外は写真のピュアホワイトになる。車内が明るくて楽しい雰囲気なのは、このパネルのおかげだ。 また、シートカラーは全車ブラックだが、外装オレンジの場合はオレンジの、ブルーの場合はブルーの、ピンクの場合はピンクのパイピングが施される。それ以外の外装色はホワイトのパイピングになる(Aグレードはパイピングなし)。コスト制約のある中、これだけ楽しく出来た内装デザインにも100点をあげたい。
 
メーカーオプションのスマートフォン連携ナビは7万3500円高(GのCVT車やXのみ)。インパネボックスのリッドは、開けると耐荷重1.5kgのテーブルになる
センターコンソールの足もとにも大型のドリンクホルダー(センターロアポケット)がある
液晶ディスプレイには、エンジン始動時と停止時に、各4パターンのイラストがランダム表示される。燃費計のほか、タコメーターも表示可能
 
後席は前後スライドやリクライニングが可能。リアドアポケットには、ペットボトルやちょっとした長物も収納できる
助手席を畳めば(座面を跳ね上げ、ヘッドレストを抜いて倒す)、お弁当を広げられる耐荷重2kgのテーブルに早変わり
運転席シートリフターやチルトステアリングは、Gだとセットオプション。運転席シートヒーターはAの2WD車を除いて標準
 
荷室フロアには取り外し可能な樹脂製ボードを採用。濡れたものや汚れたものも大丈夫
助手席まで畳めば、大人が足を伸ばして横になれる。室内長は2160mmで、ジムニーより500mm長い。
荷室の床下にはパンク修理キットを搭載する
 

基本性能&ドライブフィール

【自然吸気・FF】 基本的にはワゴンRと同じ

試乗したのは、CVTのNA・FF車とターボ・4WD車の2台(グレードはいずれも最上級のX)。浜松市にあるスズキ本社をスタートし、同市内や浜名湖周辺、東名高速道路、浜名バイパス等で試乗した。 まずはNA・FFの印象から。ベースはワゴンRということで、のっけから身も蓋もないことを言えば、中身はワゴンRとほぼ同じ。車重は現行ワゴンRとほぼ同じ800kg(試乗車)で、CVTのギア比もまったく同じ(タイヤは大径化されているが)。トルクフルなR06A型エンジン(最高出力52ps、最大トルク6.4kgm)、超ワイドレンジのCVT、超軽量ボディ、オルタネーターの負担を減らすエネチャージなどによって、ワゴンRでも「けっこうよく走るなぁ」と思ったが、ハスラーでも普通に街中を走るだけなら、NAで十分と思わせる。
 
もちろんNAなので、加速時にはアクセルを床まで踏み。エンジンを高回転までブン回すことになるが、その場合でも軽のノンターボとしてはノイズレベルが低くて、音質も耳障りではないし、速度のノリも比較的いい。このあたりが、このR06A型エンジン&ジヤトコ製CVTのいいところ。 CVTのギア比はターボ車と全く同じで、100km/h走行時でもアクセルを緩めると、2300回転くらいまで下がるが、巡航する時は3000回転前後まで上がっている。それでも、回転は十分に低く、エンジン自体は静か。 その一方で、ちょっと加速しようとすると、軽自動車らしく、それなりにノイジーになるのは仕方ないところ。ここは、後で触れるターボとの差が大きい部分。最高速は120km/hまでならすぐに出そうだが、その後はジリジリ。総じてNAでは、加速時に軽自動車であることを実感させられる。

【ターボ・4WD】 軽に乗ってる感がまるでない

ターボエンジンはワゴンR スティングレー譲り。最高出力64ps、最大トルク9.7kgm
続いてターボ・4WDの印象。ターボエンジンはワゴンR スティングレーなどと同じで、NAと比べると最高出力は約2割(12ps)増しの64ps、最大トルクは約1.5倍の9.7kgmにアップする。車重はターボで20kg、4WDで50kg増えて、ターボ・4WDでは870kg(Xグレード)になる。 NA(少なくともFF)に乗ると、「これだけ走れば、ターボじゃなくてもいいな」と思うのだが、ターボに乗ると「うーん、やっぱりターボはいいな」になる。ワゴンRの時よりターボに惹かれるのは、やはりSUV的な車両イメージにパワー感が合っているせいか。 試乗したターボ車はフルタイム4WD仕様で、車重のほか、若干の駆動抵抗も増えているはずだが、ターボだと車体とパワーのバランスがとれていて、とてもいい。パワー感、静粛性、乗り心地は1~1.3リッタークラスの普通車並みか、それ以上という感じで、軽自動車に乗っている感がまるでない。

【ターボ・4WD】 高速道路も快適至極

乗り心地もNA・FFより、心なしかしっとり、ゆったり。車重が70kg重い上、やはりエンジンのトルクが分厚い分、加速にせせこましさがないせいか、ちょっとした重厚感すらある。試乗車はたまたまスタッドレスタイヤ(ブリヂストンのブリザック)を履いていたので、よりその印象が強まっていたかも。開発時には、主に近所の足として使われるワゴンRに対して、長距離ドライブにも積極的に使われるだろうと考え、SUVらしくゆったりした乗り味にチューニングしたというが、その乗り味を一番よく実現しているのが、このターボ・4WDかなと思う。 操縦安定性に関しては、NAだとパワーがない分、コーナーではアンダーステアの大小が変化するくらいで何事も起きないが、ターボの場合は(試乗車がスタッドレス仕様ということもあるが)、前輪が加速時に路面を掻いたり、アクセルオフでリアが流れたり、ということがあった。もちろんそんな時でも、主要グレードのCVT車に標準装備されるESPがすかさず介入してくれるので、不安はない。
 
ターボなら高速道路も余裕。80km/h巡航時のエンジン回転数は2000回転を下回る
当然ながら、ターボは高速道路でも快適。100km/h巡航は2300~2400回転くらいで、上り坂でも余裕で登ってくれる。140km/h手前でリミッターが作動するようだが、動力性能は十分だ。また、ターボ車で一つ不思議だったのは、NAよりも風切り音が静かに感じられたこと。資料には、NAとターボで遮音・吸音材の仕様に違いがあるとは書かれていないが、けっこう明確に差があった。 それから、浜松近辺でおなじみの? 海からの横風に対しては、NA・FFではちょっとふらつくことがあったが、ターボ・4WDはほとんど普通車のコンパクトカー並みに安定して走れた。これはターボ・4WDの方が70kgも重く、おそらく重心も低いせいだと思う。直進安定性はどちらも十分なレベルだ。

基本は「生活四駆」だが、ノウハウはジムニー仕込み?

ジムニーに比べてアプローチアングルは小さめ。フロントのバンパースキッドプレートは材料着色のSSPP(スズキスーパーポリプロピレン)製
ターボ・4WDではオフロードも少し走ってみた。4WDシステムは、ワゴンRと同じビスカスカップリングを使ったフルタイム4WD。FF・4WDの切替が不要で、初心者でも扱いやすいのがメリットだが、一方で、フルードの粘性を使ったビスカスカップリングの特性上、前後で回転差が生じないと駆動力がリアに伝達されないのが欠点。つまり、前輪がスリップ(空転)しないと4輪駆動にならない。よって、ウエットの舗装路や、ちょっとした雪道には有効だが、本格的な悪路走行には向かないとされている。 そこでハスラーでは、ビスカス式4WDの弱点を少しでも補うため、ESPを使ったオフロード走行用の制御モード「グリップコントロール」を新採用している。これは、空転し始めた車輪に対するブレーキ制御を通常より早めて、グリップしている車輪で駆動力を発揮できるようにするもの。
 
左のスイッチがグリップコントロール、中央がヒルディセントコントロール(HDCの作動表示灯はメーター内にある)
これと合わせて、低μ路の急な下り坂で車速を自動的に約7km/h以下に保つヒルディセントコントロールも新採用された。最近のSUVでは割と当たり前の装備だが、軽ではこれが初とのこと。 この日は関東や甲信越で大雪が降った日の直後だったせいか、試乗車にはスタッドレスが装着されていたが、浜松にはもちろん雪はなく……、それでもせっかくなので、ちょっとしたオフロードや砂地を走ってみた。その範囲でも確認できたのは、やはり対地クリアランスは普通の軽より断然余裕があること。ワゴンRベースとはいえ、そこはジムニーやエスクードを作っているスズキ。アプローチアングルこそワゴンRの3度増しに留まる28度だが(ジムニーは軍用車並みの49度もある)、ディパーチャーアングルは5度増しの46度を確保している(ジムニーは50度)。軽自動車はもともとオーバーハングが短いせいもあるが、「クロスオーバー」SUVとしては十分に立派な数値だと思う。
 
グリップコントロールの効果はよく分からなかったが、雪道などでスタックしかけた時には「切り札」として使えるのでは。パートタイム4WDのジムニーみたいな走破性は期待すべきではないが、悪路走行など普段は絶対しない一般ドライバー向けの「生活四駆」としては、かなり欲張った性能だと思う。 あと、最小回転半径が4.6メートルと小さいことも、軽クロスオーバーならではのメリット。林道や雪道では行き止まりなどでUターンしたいことがよくあるが、そんな時も軽のサイズなら余裕。この点はジムニー(最小回転半径は4.8メートル)も得意とするところだ。
 
    最低地上高(mm)
2WD
最低地上高(mm)
4WD
アプローチ
アングル(度)
ディパーチャー
アングル(度)
スズキ ワゴンR 155 150 25 41
スズキ ハスラー 180 175 28 46
スズキ ジムニー 200 49 50
トヨタ FJクルーザー 230 34 27
 

試乗燃費はターボで12.6km/L、NAで16.8km/L。JC08モード燃費は23.2~29.2km/L

燃料タンク容量はワゴンRと同じで27リッター。ターボでも無給油で300kmは走れそう
今回はスズキの浜松本社を起点に、NA・FFとターボ・4WDで約50kmずつ走行(撮影を除く)。あくまで参考ながら、試乗燃費(車載燃費計)は、NAが16.8km/L、ターボが12.6km/Lだった。 JC08モード燃費は、それぞれ29.2km/Lと25.0km/Lだから、実用燃費はおおむね半がけという感じ。ハスラー全体のモード燃費は、23.2km/L(NA・5MT・4WD)~29.2km/L(NA・CVT・FF)。高速道路では、エンジンを回さずに走れる分、ターボは意外に伸びるかも。
 

ここがイイ

デザイン。豊富で楽しいオプション。ワゴンR譲りの機能性・装備

とにかくデザイン。最近の日本車の中ではベスト、と言い切るのはオーバーにしても、ベストスリーには入るのではないか。既存の軽をベースにクロスオーバー風に仕立てたクルマは過去にもあったが、それらとは全くレベルが違う仕上がり。ある意味、デザインが売りのパイクカー(死語)とも言えるが、この遊び心あるデザインは本物だと思う。そしてインテリアはもちろんのこと、スチールホイール(俗に言えば鉄チン)ですらが、専用にデザインされている(これがまた、とてもカッコいい)。 オプションも豊富だ。エンブレムだけでも多くの種類があり、中でもペンギンの親子が4匹いるのが一番人気とのこと。往年のオフロードバイク「ハスラー」に付いていた、翼のはえた赤いオーバルと「S」マークのエンブレムも、熟年にはたまらないかも。もちろん、豊富なボディカラーも楽しい。鉄チンホイールに入れるラインやボディストライプもあるから、趣味よく個性的な外観にできる。
 
アウトドアでの着替えでも便利なカーテン&タープキットを装着したところ
オプションには遊びのツールもいろいろ用意されている。ハスラー自体が「遊びのクルマ」感に満ちているが、アクセサリーカタログはもちろん、車両カタログにおいても、巻頭からタープやら、車中泊用のクッションやらが掲載され、ハスラーの楽しさを伝えている。クルマが単なる移動の手段ではなく、夢のある動く道具であることを、このクルマ(とオプション)が体現しているのだ。 パッケージングや機能性はワゴンRと同じと書いたが、それ以外にもパワートレイン、新アイドリングストップシステム、エネチャージ、レーダーブレーキサポート(衝突被害軽減ブレーキ)といった最新装備をワゴンRから譲り受けていること。ハスラーの良さは、現行ワゴンRの良さでもある。

ここがダメ

メーカーオプションのナビ。テレスコの不備。NAのアイドリングストップからの再始動・発進。

メーカーオプションの「スマートフォン連携ナビゲーション」は、フリック、ピンチイン、ピンチアウトといった、スマホと同じ操作が出来るが、残念ながら走行中にこれらの操作は出来ない(従来のタッチパネル式ナビでできる操作は可能)。また、停止中であっても、これらの操作に対する反応はあまり良くなく、初期のAndroidタブレットを思わせる。また、地図をかなり拡大しないと細かい道路が表示されないなど、地図の見みやすさにも不満が残る。ワンセグとバックモニターが付いて7万3500円という価格は良心的だが、性能的にはもうちょっとがんばってもらいたいところ。なお、ディーラーオプションでも、同様のタッチパネル機能を持ったもので、さらに高性能なものが何種類か用意されている(値段はそこそこするが)。 これだけ人気のクルマであり、普通車からのダウンサイザーや、普通車と併用するセカンドカー需要も多そうなことを思うと、ステアリングのテレスコ調整は欲しかったところ。背もたれを立てた姿勢をとらないと、ちょっとステアリングが遠い感じがする。必須とも言うべきチルトとシートリフターは、上位グレードに装備されるが(とはいえ売れ筋のGグレードでもセットオプション)、さらにテレスコがあれば、もっと「軽自動車で十分」感が出たと思う。 細かいことを言えば、最上級のXでも、下位グレードと同じ鉄チンの方が良かった。「G」に6万3000円のセットオプションを追加すれば、鉄チンのままX並みの装備になるが、その場合はステアリングが本革にならず、ウレタンになってしまう。 アイドリングストップからの再始動・発進は、ターボなら問題ないが、NAだと一瞬もたつく感じがある。この「モワッ」という感じがどうしても気になる人は、ターボを選んだ方がいいかも。

総合評価

最近のスズキはデザインが分かっている

先のモーターショーで一目見て、恋の花が咲いてしまった、そんな人は多いようで、とにかくバカ売れ状態のハスラー。しかも老若男女にウケている。クルマにそんなにお金かけられないけど、こだわりのクルマが欲しいという若い男性、足としてかわいい軽が欲しいという若い女性、ママ用のクルマを押し付けられたくない若いお母さん、といったヤング(死語)はもちろん、中高年からシニア(これは生きてる語)までが、このスタイルに惹かれ、足に欲しいと思っている。それにしても、生活の足として使えるクルマで、ここまで広い世代に訴えることが出来たデザインは、ちょっと今までの日本車にないのではないか。 この外観が年齢を問わず好まれるのは、オフロード車的なワイルドさがあるからだろう。トヨタのFJクルーザーもそうだが、オフロード車の方がデザイン的にも遊びがあるし、よりオモチャっぽく、ポップな感じに仕立てることが可能だ。ポップにするとヘタをうてば、カ・ワ・イ・イだけのクルマになってしまうが、四駆の精悍さを加えたことで、より多くの人にウケるデザインになる。ちょっと前から流行っているツートーン塗装もSUVだから、よりハマるのだ。
 
インテリアデザインも、カラーパネルとかシートのパイピングとか、遊び心にあふれている。室内空間も、これまで軽が成し遂げてきた進化の結果、見事に広いから、かなり大柄な人でも十分だろう。聞けば今回は通常とは違うデザインチームが短期間(2年ほど)でデザインを仕上げ、会社の上層部もそのデザインを軽く認めてしまったらしい。最近のスズキは全社的にデザインが分かっていると思う。例えば現行のMRワゴンなどはグリルレスのため、かなり個性的な顔つきになっているが、にもかかわらず、あれを出してしまったのは偉いと言うしかない。今回のハスラーも、グリルが控えめなのがいいと思う。あざとくウケ狙いしたカスタム系のハデ顔だったら、逆にこんなにも広い層にはウケないだろう。 走ってみても、おそらく誰もが満足できるはず。本文にあるとおり、NAでも十分で、ターボならなお良い。今回はNAが、ワゴンRのそれよりいっそう走るように感じたのだが、ワゴンRのように燃費コンシャスにしなくてもよかったことが幸いしているのかも。アイドリングストップからの始動・発進にちょっともたつく感じがあったのは残念で、ここはちょっと手を入れてもらいたいところだが、嫌ならアイドリングストップをオフにするという手もあるから、まあいいんじゃないのと思える。

「クラスレス」という新たな次元に

東京モーターショーにハスラーと同時に出展された「ハスラークーペ」。あくまでもコンセプトで、市販予定はないとのこと
クルマには夢が必要なのだが、スーパーカーのような高尚な夢に、頑張れば手が届くという良い時代は過ぎ去ってしまった。それとは違う夢、いまやそれは「リア充」と呼ばれるのだが、それを実現できる手が届きそうな道具として、ハスラーというクルマは好まれているのだろう。実際に使うかどうか分からない4WD性能とか、アウトドアで使える防水仕様の荷室とか、このクルマのささやかな夢は多い。熟年層だって、これ1台あれば定年後はなんだか楽しく過ごせそうな夢が見られる。昔は軽トラ、今ならハスラーだ。であれば、これをベースに、リアをぶった切ったトラックがあっても面白い。モーターショーにはクーペが出ていたが、ボディバリエーションをいくつも作ったら、ハスラーシリーズとして一つのジャンルになるのではないか。
 
こちらは2007年の東京モーターショーで発表されたスズキの「X-HEAD」。2人乗り小型トラックのコンセプトカー
そしてそんな道具感が、このクルマのクラスレス感を生んでいる。軽自動車はお金がないから乗るものという捉え方がいまだにあるが、道具感があれば、それを覆せる。例えばジムニーはその代表だろう。初代ワゴンRにもそういうイメージがあり、貧富や年齢を越えて多くの人に乗られた。かつてのダイハツ ネイキッドにもそれを期待したのだが、時期尚早だったのか、売れないまま消えてしまった。ハスラーにはそうはなってもらいたくないものだ。 とにかくハスラーは、経済性云々ではなく、純粋に乗っていてカッコイイ。小さいのに、安いのにカッコイイ。そしてそれが軽の新たな世界を創るだろう。しかも今の軽はネイキッドの時代とは違って、走りでも室内空間でも燃費でも不満がないのだ。ハスラーによって、広くて、よく走る軽というものが、もう一段上の「クラスレス」という新たな次元に進化したといってもいい。
 
悲しむべきは軽自動車税が引き上げられたことだ。安くていいものを作り、それを国民が喜んで買うと、お上が上前をはねる、というのは、どうにもいただけない。ハスラーを筆頭にした軽自動車は今や日本の誇りではないか。ソニーのパソコンは台湾製や中国製に勝てない商品になってしまったが、軽自動車は日本でしか作れない高水準な工業製品だ。そしてデザインの良さは、これはまさにポップカルチャーだと言えると思う。カ・ワ・イ・イが世界の共通語なら、「Kei」も世界の共通語になる可能性を持っている。であれば、ハスラーにはさらに、日本が誇る最新のIT装備や安全装備やらを満載して、可愛くて最先端の乗り物にし、海外へも出してしまおう。この箱庭的製品こそが、日本の伝統的なモノづくりであり、かつてのソニーのトランジスタラジオのように、世界に誇れる製品ではないか。それを保護しないでどうする、と安倍ちゃんには言いたいのだけど、軽自動車になんて今まで乗ったことがないだろう彼に理解できないだろうな、と思う(ちなみに河村名古屋市長の公用車は軽自動車です)。
 

トヨタ ハリアー プレミアム “アドバンスト パッケージ”:新車試乗記

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キャラクター&開発コンセプト

レクサス RXとは異なる国内専用車に

新型トヨタ ハリアー (photo:トヨタ自動車)
2013年12月2日に発売された新型「ハリアー」は、初代(1997~2003年)、2代目(2003~2013年)に続く3代目。初代と2代目は海外ではレクサス RXとして販売されていたが、2009年に登場した3代目レクサス RXが国内でもレクサスブランドで販売されるようになると、国内では従来の2代目がそのまま「トヨタ ハリアー」として継続販売されていた。今回10年ぶりのモデルチェンジとなった新型ハリアーは、名実ともに国内専用車だ。 初代/2代目ハリアーは乗用車ベースの高級クロスオーバーSUVという新ジャンルを開拓したモデルであり、3代目も「高級・進化・新規」の3点をキーワードに開発。斬新な内外装デザイン、価格以上の高級感、ハイブリッド車の設定、最新の先進安全装備といったところが特徴。プラットフォームは今回から米国向けの4代目RAV4(2013年~)をベースとしている。

新世代2リッター直4ガソリンと、2.5リッター直4ハイブリッドを用意

こちらは2リッターガソリン・4WDのPremium “Advanced Package” (photo:トヨタ自動車)
純エンジン車に関しては、ヴォクシー/ノア用をベースにしたバルブマチック付2リッター直4「3ZR-FAE」(151ps、19.7kgm)とCVT(無段変速機)を採用。また、4WDシステムは従来のセンターデフ方式から、現行RAV4と同じ電子制御カップリング方式に変更された。JC08モード燃費はFFで16.0km/L、4WD車で14.8~15.2km/L。 一方、ハイブリッド車(2014年1月に発売)では、先代のV6エンジンに代えて、カムリハイブリッドベースの新世代2.5リッター直4「2AR-FXE」に、前後2つのモーターを組み合わせる。システム出力は197psで、駆動方式は先代ハイブリッド同様、後輪をモーターで駆動する電気式4WD。JC08モード燃費は21.4~21.8km/L。 生産はトヨタ自動車の高岡工場(愛知県豊田市)で、販売チャンネルは全国のトヨペット店。販売目標は月間2500台だが、発売から一ヶ月後までの受注台数は約2万台と絶好調。内訳はガソリン車が約1万2000台、ハイブリッド車が約8000台とのこと。
 
■過去の新車試乗記【トヨタ ハリアー関連】レクサス RX450h (2009年6月)レクサス RX350 (2009年2月)トヨタ ハリアー ハイブリッド (2005年4月)トヨタ ハリアー AIRS (2003年3月)トヨタ ハリアー 3.0 Gパッケージ (1998年2月)
 

価格帯&グレード展開

価格はガソリン車が272万円~、ハイブリッド車が361万円~

ボディカラーはダーク系を中心に全7色。写真は特別色のスパークリングブラックパールクリスタルシャインで、光が当たるとブルーっぽく見える
価格は純エンジン車が272万円からで、4WDは18万9000円高。ハイブリッド車は361万円からで、純エンジン車の4WDと比べると約70万円高になる。歴代ハリアーと同じく、意外に安いと感じる人が多いのでは。ちなみにレクサスRXはガソリン車の270(2.7リッター直4・6AT)が432万円から、ハイブリッド車の450hが561万円からと、その差は大きい。 ミリ波レーダー方式のプリクラッシュセーフティシステムなどを備えた最上級グレード「アドバンスト パッケージ」装着車は、非装着車の55万円高になる。
 
内装はファブリック&合皮コンビのブラックが標準で、アイボリー(写真)も選択可 (photo:トヨタ自動車)
【エンジン車(2リッター直4・CVT)】 ■Grand/Elegance/Premium(FF/4WD)  272万~323.9万円 ■Premium “Advanced Package”(FF/4WD) 360万~378.9万円 【ハイブリッド車(2.5リッター直4・モーター×2)】 ■Grand/Elegance/Premium(E-Four)  361万~392万円 ■Premium “Advanced Package”(E-Four) 447万円 ※今回の試乗車
 

パッケージング&スタイル

流行に一石を投じる?フロントデザイン

フロントにはハリアー(鷹の一種)のマークがあしらわれる
外観デザインのテーマは「Elegant Velocity(洗練されたスピード感)」。目を引くのが、グリルをスモーク仕上げのアクリルで覆ったフロントノーズ部分。一般的なメッキグリルとは一線を画す斬新なもので、フロントオーバーハングを大きめにとったロングノーズデザインも、昨今の流れとは逆を行くもの。フロントバンパーやヘッドライトもダイナミックにデザインされている。

先代より小型化し、小回り性能を向上

全長4.7メートル少々、全幅1.8メートル台、全高1.7メートル弱のボディサイズは、先代ハリアーとほぼ同じだが、ホイールベースは先代の2715mmから2660mmに55mm短縮。最小回転半径はハイブリッドの最上級グレード(18インチタイヤが標準)だと5.7メートルだが、純エンジン車の17インチ仕様では5.3メートルに抑えるなど、車格に比して小回りがよく効くようになっている。国内専用車らしい配慮。
 
LEDヘッドランプ(ロービーム)とLEDフォグランプは全車標準
リアコンビランプの側面には、直進安定性を高めるという突起「エアロスタビライジングフィン」が備わる
歴代ハリアーから水平基調を継承したというサイドビュー。オーバーハングの長さが目立つ
 
    全長(mm) 全幅(mm) 全高(mm) WB(mm) 最小回転半径(m)
レンジローバー イヴォーク(2012~) 4355 1900 1605~1635 2660 5.5
マツダ CX-5(2012~) 4540 1840 1705 2700 5.5
スバル フォレスター(2012~) 4595 1795 1695 2640 5.3
新型トヨタ ハリアー(2013-) 4720 1835 1690 2660 5.3~5.7
2代目トヨタ ハリアー(2003~2013) 4730~4755 1845 1680~1690 2715 5.7
レクサス RX(2009~) 4770 1855 1690 2740 5.7
 

インテリア&ラゲッジスペース

クラス随一の上質感を演出

写真は「プレミアム」にオプションのレザー内装(23万3100円)。純正ナビのディスプレイは8インチタッチ式で、フリック操作も可能
高級セダンのようなインテリアは、歴代ハリアーが売りとしてきたもの。新型はディープボルドー色(ブラックも選べる)のレザー調表皮を、ダッシュボードやドアトリムに張るなど、このクラスでは群を抜いた高級感がある。また、シフトパネルなどに使われるウッド調加飾パネル(茶系とグレー系の2通りある)も出色の出来。カタログには「天然素材では得られない深い照り」などとあるが、確かにある意味、本物のウッドを越えた美しさを感じる。
 
「プレミアム」と「エレガンス」で選べるファブリック+合皮のアイボリー内装。シート中央のエンボス加工がいい感じ (photo:トヨタ自動車)
そして中間グレード「エレガンス」(280万円~)以上で選べるファブリック&合成皮革のコンビシート仕様がいい。失礼ながら、これまでのトヨタ車にないセンスの良さを感じてしまった。内装デザインのテーマは「Rich Simplicity(高級感のあるシンプルさ)」。 空調コントロールは流行りの静電式スイッチを採用したもの。今や珍しくないが、やはり操作しにくい。これもいつかスマホのように慣れるのだろうか。

パッケージングは微妙に変化

“アドバンスト パッケージ”には、歩行者を検知して警告するパノラミックビューモニター(左右確認サポート付)が備わる (photo:トヨタ自動車)
乗り降りのしやすい低めのシート座面(先代比30mmダウン)、センタートンネルのないフラットな後席フロア、5人乗りに最適化されたパッケージングなどは、おおむね歴代ハリアー譲り。ホイールベースは先代より55mm短いが、逆に後席ひざ前空間は前席シートバック形状の工夫などによって47mm広くしたという。ただ、前席下への足入れ性はあまり良くないので(前席のシート位置にもよるが)、足の長い人はちょっとモゾモゾするかも。
 
リアシートは立派で、足もとは完全フラット。若干のリクライニング調整も可能
ドライビングポジションはステアリング取付角度やシート形状の変更によって、よりセダン風になった
ワイヤレス充電規格「Qi(チー)」に対応した機器で使える「おくだけ充電」(NTTドコモの登録商標)は“アドバンスト パッケージ”のみ
 
荷室容量は純エンジン車と同じで456~992リッター。パワーバックドアは停止位置メモリー機能付で、天井が低い所や小柄な人でも大丈夫
床下収納は巨大(143リッター)。標準はパンク修理キットだが、メーカーオプションでスペアタイヤ(165/80R17)にも変更できる(1万0500円)
マイコン制御のチルト&スライド電動ムーンルーフ(電動ロールシェード付)は全車オプション(10万5000円)
 

基本性能&ドライブフィール

2.5リッター直4になったハイブリッド

先代の3.3リッターV6から、2.5リッター直4に変更されたハイブリッド
試乗したのはハイブリッドの最上級グレード「プレミアム “アドバンスト パッケージ”」。エンジンはカムリハイブリッド用の横置2.5リッター直4「2AR-FXE」がベースで、エンジン単体の最高出力は152ps、最大トルクは21.0kgm。また、フロントモーター(143ps、27.5kgm)とリアモーター(68ps、14.2kgm)があり、トータルでのシステム出力は197psを誇る。 ちなみに、他のトヨタ製ハイブリッド車のシステム出力は、現行プリウスが136ps、カムリハイブリッドが205ps、クラウンハイブリッドが220ps、先代ハリアーハイブリッドが272ps、レクサスRX450hが299ps。こうして見ると、新型ハリアーハイブリッドの動力性能はちょっと控えめにも見える。
 
が、それはあくまでピークパワーの話。確かに、先代ハリアーハイブリッドの「トヨタ、どうしちゃったの?」と思わせる暴力的加速はないが、相変わらず前後2つのモーターによるトルクは強力で、約1.8トンのボディを軽々と停止状態から加速させる。途中からはエンジンが始動するが、一般的な加速であればエンジン音はほとんど聞こえないし、始動時のショックもほぼ皆無。少なくとも100km/hまでなら、動力性能に不満はない。

ワインディングで“振り回せる”ハンドリング

「プレミアム」には235/55R18タイヤが標準装着される
足回りはかなりソフトな設定だが、意外にもワインディングでの操縦性はすごくいい。タイトなコーナーが連続するところを攻めても、かなり楽しめる。 スポーツモードならエンジンブレーキが適度にかかり、ステアリング操作に応じてノーズがインにしっかり入ってくれる。アンダーステアが多少出ても、S-VSC(ステアリング制御付VSC)のブレーキ制御やトルク制御が働いてグイグイ曲がってくれるし、もっと強いアンダーステアにはさらに強力な制御がスムーズに働く。10年前の2代目ハリアーで採用された初期のVSCは、限界を超えると唐突に出力を絞ったものだが、いまやそれも昔。また、「プレミアム」が履く235/55R18タイヤ(ブリヂストン デューラー H/T)は、グリップこそオールシーズン規格相応だが、限界が無闇に高くないせいもあってコントロールしやすかった。 また、特にハイブリッドの場合は、エンジンよりレスポンスが早い駆動用モーターで前後輪を別々に制御しているのが効いている。ちなみに2リッターガソリンの4WD車にも、前後駆動力配分をS-VSCと協調制御する「ダイナミックトルクコントロール4WD」が採用されている。

高速走行は快適。ただし乗り心地には気になる点も

メーターや各種情報表示は見やすいが、先代同様、タコメーターがないのは残念
高速道路では、エンジン音はもちろん、風切り音やロードノイズも静か。高遮音ガラスを採用するなど、静粛性には力が入っているようだ。高速域での加速や伸びは、パワーウエイトレシオが約9kg/psということで、そこそこだが、日本で乗る分には速すぎず、ちょうどいい性能だと感じた。 一方で気になったのは、郊外の二級国道や田舎道に多い、舗装の荒れた道路での乗り心地。そこそこ速めのペースで流すと、車体の上下動、いわゆるピッチングが出る。思わず電子制御ダンパーの切替スイッチを探してしまったが、新型ハリアーの足回りは完全メカニカルで、調整は出来ない。 代わりにハリアー全車には、路面や走行状況(ストローク量)に応じて、減衰力をパッシブに変化させる「FAD(Frequency Adaptive Damping=振動数感応型)ショックアブソーバー」を採用。さらにハイブリッド全車には、路面の凹凸に応じてモーターのトルクを制御することで、ピッチングを抑制する「ばね上制振制御」も採用されている。とはいえ、このちょっと昔のアメ車を思わせる乗り心地は、人によってはかなり気になるところ。ただ、足回りのセッティングはパワートレインによって違うので、これはあくまでハイブリッドの18インチ仕様(プレミアム)での印象になる。

レギュラーガソリンでOK。試乗燃費は10.6~18.6km/L

今回はトータルで約270kmを試乗。試乗燃費(車載燃費計)は、いつもの一般道、高速道路、ワインディングを走った区間(約90km)が10.6km/Lで、一般道(20km)と高速(20km)を大人しく走った区間(約40km)が18.6km/L。全てエコモードで走った。総じて、高速道路を飛ばすと燃費がどんどん悪化し、逆に渋滞にはまるとどんどん良くなるという傾向はプリウスと同じ。 指定燃料がレギュラーなのは嬉しい点。先代ハリアーハイブリッドやレクサスRX450hはプレミアムだった。タンク容量は55リッターなので、航続距離は悪くて500km、レーダークルーズを使っての高速巡航なら800km以上いきそう。車重1.8トンの4WD車としては、本当に驚異的。
 

ここがイイ

独自のデザイン、価格以上の高級感、燃費性能

好みは分かれるが(それもハリアーの伝統だ)個性的なエクステリアデザインと、高級感のあるインテリア。特に、珍しくメッキグリルが主張しない顔は新鮮。一見ではレクサス車に負けないインテリアも商品価値が高い。販売主力は300万円台だと思うが、知らなければもっと高いクルマに思える。 ハイブリッドの場合はパワフルな走りと、それにも関わらず実際に10km/L以上走ってしまう燃費性能。10年前の3リッターV6ハリアーは10・15モード燃費でも9.1~9.7km/Lで、実燃費は5~6km/L台だったと思う。この10年で、このサイズのSUVの燃費は確実に進化している。 そして、いまだライバル車不在なこと。高級ミディアムクラスSUVはこの10年で欧州車を含めて数多く現れたが、ハリアーのポジションは独特で、国内では他に代わるものがない。

ここがダメ

ハイブリッドの特定条件下での乗り心地、ドアミラー等による死角、プリウスと同じような運転感覚

少なくとも試乗車(ハイブリッドの18インチ仕様)の場合は、2級国道や田舎道に多い舗装の荒れた路面をある速度域で走った時の、フワフワと上下動が収まらない乗り心地。新型ハリアーの足回りには、先代にあったエアサスや電子制御ダンパーといった類の用意がないので、あとはこの揺れに耐えるしかない。話によると、今回のハリアーでは、通常の開発では80~120km/hでチューニングするところを、50~60km/h以下での常用域重視に変えたという。まさに国内専用車ならではの話だが、、、、、。 リリースには「フロントピラー形状やドアミラー位置の工夫で視界の確保にも配慮し、運転のしやすさを向上」とあるが、やっぱりAピラーとドアミラーが成す死角の大きさは気になった。これはハリアーだけでなく、今どきの大型SUVに共通する課題。安全運転の基本の一つは「見る」ことなので、肉眼による視界はもうちょっと重視されてもいいと思う。ハイブリッドの18インチ仕様は最小回転半径が5.7メートルに膨らむので、小回りが苦手なところにも少し慣れを要した。 先代にあったバカっ速いハイブリッドではなく、ある意味ではプリウスと同じような運転感覚のハイブリッド車であること。燃費は確かに先代より良くなっているのだが。

総合評価

日本専用車ゆえのデザイン

久々に、一見してこれはいいなあと思うトヨタ車だ。何がいいかというと、まずグリルが控えめ。最近はちょっと前の欧州車などに触発されてか、何にしろハデであればいい、という感じのグリルを付けたクルマが多くて、いささか辟易していたが、新型ハリアーは実に奥ゆかしい。それでいて存在感はしっかりあるし、「しゅっとしたスピード感」が開発時のキーワードだったという全体のフォルムは、先代をリファインした感じでもあり、日本人好みのカッコよさにマッチしている。エグくないグリルや、ある意味で古式ゆかしいカッコよさを実現できたのは、日本だけで売るモデルだから。やっぱり日本人には日本専用車じゃないと、とあらためて思う。
 
内装も一見して、いいと思った。日本人が好む高級感というものが見事に表現されている。本革風、本杢風という、まさにいい意味でのフェイクで作られたインテリアは、フェイクを超えた出来の良さと同時に、新たな価値も生み出しているように思える。街でもフェイクレザーのジャケットを着ている人が増えたし、今やウール100%さえもそう多くはない。フリースなどの方が軽くて暖かだったりする。その意味で、もはや本物とか自然素材にこだわる必要性のない時代に入っているのでは。そう考えるとクルマの内装は、別に本革じゃなくていいし、本杢でなくてもいいだろう。高級感があり、センスが良ければ文句はない。だいたい100年も乗り続けるわけではない量産車に、貴重な本革や本杢を使う方が間違っているようにすら思うのだが。

ムダのなさが気持ちいい

パワートレインも4気筒エンジンやTHSⅡによるハイブリッドということで、先代のV6エンジン搭載車のような古典的な高級感はないが、パワーは十分だし、燃費もいいしと、要するにムダがない。贅沢な、とか、高級な、ということには本来、ムダが占めている割合が大きいと常々思うが、そんなムダより合理的な質の高さで、お金が潤沢にはない庶民にあった高級車を作っている。ハリアーはトヨタブランド車であり、レクサスとは違ってムダに豪華ではない。そういう意味で、クラウンにも近い合理的な高級感を備えている。そしてクラウンのようなムダに豪華なグリルが無い分、さらに合理的な高級感があり、それが心地いい。
 
プラットフォームは北米の主力車種である4代目RAV4(今のところ日本未導入)がベースで、それに日本向けにデザインしたボディを載せ、日本向けにチューニングしている。そうは言っても、ベースがアメリカ向けのせいか、乗り心地はかなり緩いというか、やわらかな感じがした。その割にワインディングではしっかり走るからいい、と言いたいところだが、特定の速度域ではやや落ち着きのないところもあり、路面の荒れたところではピッチングもちょっと気になる。子供などは酔いそうだ。日本で日常的に使う速度域での快適性を重視した結果かもしれないが、日本でも遠出をすることはあるので、このあたりは今後ちょっと手を入れて欲しい。

チャレンジングな部分はLF-NXで

レクサス LF-NX(東京モーターショー2013)
4代目となる次期レクサス RXはたぶん、東京モーターショーに出ていたLF-NXに変わるのだろう。しかし、LF-NXのスタイルに多くの日本人が馴染むまでには、相当な時間がかかりそうだ。世界でウケるものが日本でウケるとは限らない。今、ジャパンコンシャスなハリアーが投入されるのは、マーケティング的には至極アタリマエのこと。そして日本でハリアーは大ヒットするだろう。スバル レヴォーグも日本専用車だし、日本人のためのクルマという動きは歓迎したいところ。やっぱり日本では、そういうクルマが一番乗りやすい。それに異を唱えたい偏屈なクルマ好きは、気にいった輸入車に乗ればいい。そういう選択ができる日本がいいと思うし、その点では日本サイコーである。
 
と、ここまで褒めておいて何だが、怒涛の走りや新たなハイテク安全装備に驚いた10年前のハリアーハイブリッドにあった感動は、もはやこのクルマにはない。新しいハリアーは燃費コンシャスなハイブリッド車を、一見高級に仕立てた無難なクルマ。チャレンジングな部分はLF-NXが担うことになるはずだ。クルマ好きとしてはさらに、トヨタの新しいプロジェクト「DRIVING KIDS with TOYOTA」を体現するような、ドキドキするハイブリッドスポーツカーの出現を期待したいところだ。
 

フォード フィエスタ:新車試乗記

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キャラクター&開発コンセプト

欧州向けから、グローバルモデルへ変身

新型フォード フィエスタ (photo:フォード・ジャパン)
フォード フィエスタは、もとは欧州フォードが中心となって開発したBセグメントのコンパクトカー。1976年のデビュー以来、欧州を中心に1500万台以上が販売されるなど海外では極めてポピュラーなモデルだ。 2008年に欧州でデビューした今の6代目は、初めて北米にも投入。今や世界140ヶ国以上で販売されるなど、新しい世界戦略「One Ford」を推進するフォードにとっては、Cセグメントのフォーカス共々、主力モデルの一つになっている。2012年の世界販売台数は72万3130台で、車名別では世界で6位(1位はフォーカス)、Bセグメントでは1位だったという。 そんな新型フィエスタが、日本でも2014年2月1日に発売された。先代は2008年に販売を終了したので、日本では約6年ぶりの復活となる。フォード・ジャパンにとっては、2013年に導入した新型フォーカスと、クロスオーバーSUVの新型クーガに続く新型車になる。

フォード最小1リッター3気筒ターボを搭載

日本に導入されたのは最新の2014年モデルで、話題のダウンサイジングエンジン、1リッター3気筒直噴ターボ「エコブースト(EcoBoost)」を搭載。トランスミッションにはゲトラグ・フォード製の6速DCT「パワーシフト」を採用し、JC08モード燃費17.7km/Lを達成している。 また、フォードが長年提唱してきた「キネティック・デザイン」に加えて、2013年モデルから採用された迫力あるフロントフェイスもセールスポイントになっている。 生産は世界6拠点(ドイツ、メキシコ、インド、中国、ブラジル、タイ)で行われているが、日本仕様は欧州向けと同じドイツのケルン工場製が導入されているようだ。 ■過去の新車試乗記 【フォード フィエスタ関連】フォード フィエスタ Ghia (2004年9月)
 

価格帯&グレード展開

スマートキーまで標準装備し、価格は229万円

日本仕様には相対速度差30km/hまでで衝突を回避・衝突ダメージ軽減を行う自動ブレーキシステム「アクティブ・シティ・ストップ」を標準装備
海外には3ドアハッチや4ドアセダン、1.6リッター直4モデルなどがあるが、日本仕様はシンプルに5ドアのワンモデル設定。1リッター3気筒ターボ(100ps版)の6速DCT車のみで、価格は229万円。 装備は極めて充実。16インチアルミ&タイヤ、エアロパーツ一式、オートエアコン、オートライト、雨滴感知ワイパー、クルーズコントロール、リバースセンシングシステム(バックセンサー)、リアビューカメラ、果てはスマートキーまで標準装備する。ナビは販売店オプションでパイオニア製のPND(6万2895円)を用意している。 ライバルは、VW ポロ(1.2直4ターボ+7速DCTで219万円~)、ルノー ルーテシア(1.2直4ターボ+6速DCTで199万8000円~)、プジョー 208(1.2リッター直3・NAの5MTで202万円~、5速セミATで218万円~)など。また、日本車ではトヨタ アクア(170万円~)やホンダ フィット ハイブリッド(163万5000円~)も競合するはず。価格差があるように見えるが、装備を同等にすると、それほどでもない。

自動ブレーキや7エアバッグなど安全装備も充実

エアバッグはドライバーの脚部を保護するニーエアバッグなど計7個を標準装備
新型フィエスタは安全装備でも抜かりがない。7エアバッグや横滑り防止装置「アドバンス トラック(AdvanceTrack)」に加えて、前方車両への追突回避を行う「アクティブ・シティ・ストップ」も標準装備する。同システムは一般的な近赤外線レーザー方式で、30km/h以下で走行中、車両間の相対速度差が15km/h未満の場合に追突を回避し、15~30km/hでは衝突のダメージを軽減するというもの。 ボディカラーは、ブルーキャンディ Me、ホットマゼンタ Me、パンサーブラック Me、ムーンダストシルバー Me、レースレッド、フローズンホワイトの全6色。Me(メタリック塗装)は6万円高。
 

パッケージング&スタイル

フェイスリフトでアストンマーティン顔に

マイナーチェンジで下部のラジエターグリルが上昇し、立派なメッキグリルになった
前述のように日本仕様はマイナーチェンジ後の、いわゆる後期型。目を引くのは、何と言ってもアストンマーティン顔のフロントデザインだろう。実際のところ、アストンマーティンのグリルは上部が少し小さい凸型なのだが、グリル面が逆反りである点やクロームバーが横桟なのは共通。もともとアストンマーティンは2007年までフォード傘下のPAG(プレミアム・オートモーティブ・グループ)に属していたから、デザイン言語に共通性があってもおかしくない。ちなみにマイチェン前の顔は、マツダのデミオ似だった。

ボディサイズはBセグのド真ん中

後ろ上がりのキャラクターラインがビシッと入り、ルーフはクーペのように後方でスラントする
全体のスタイリングは、フォードが以前から提唱しているキネティック・デザインに沿ったものだが、目下「One Ford」を推進中のフォードでは、新世代モデルのデザインを「フォード・グローバル・ワン・デザイン・ランゲッジ」と呼んでいる。印象としては、少々エッジが効きすぎて個性的だった従来のキネティック・デザインを、もっと広く受け入れやすいものにした、という感じ。日本仕様は各種エアロパーツ(大型リアスポイラー、フロントスポイラー、サイドスカート)のおかげで、かなりスポーティに見える。 ボディサイズは下の表からも分かるように、Bセグメントのド真ん中。数値的にはポロに近く、新型ルーテシアより小さいが、実車の印象は背高系のポロより、スポーティなルーテシアに近い。
 
    全長(mm) 全幅(mm) 全高(mm) WB(mm) 最小回転半径(m)
ホンダ フィット ハイブリッド(2013~) 3955 1695 1525 2530 4.9~5.2
プジョー 208(2012~) 3960 1740 1470 2540 5.3
VW ポロ(2009~) 3995 1685 1460~1500 2470 4.9
トヨタ アクア (2011~) 3995 1695 1445 2550 4.8~5.7
フォード フィエスタ(2014~) 3995 1720 1475 2490 5.0
ルノー ルーテシア(2013~) 4095 1750 1445 2600
VW ゴルフ 7(2013~) 4265 1800 1460 2635 5.2
 

インテリア&ラゲッジスペース

クルマを着るような一体感あり

試乗車はオプションのポータブルナビ付。車載の情報ディスプレイが隠れないように設置されており、意外に見やすい
インテリアは造形的にも空間的にもスポーティ。もちろん、前席から後席、荷室まで十分に広く、実用的だが、ポロに比べると着座姿勢は低めで、サイドウインドウの絞り込みも強く、「クルマを着る」ようなタイト感がある。このあたりは、全体に広々した上級モデルのフォーカスと明確に違うところ。運転席に座ると、ステアリングの位置からペダル配置までピタッと決まるのが気持ちいい。

SONY製オーディオは、フォード自慢の「SYNC」に対応

 
4.8インチのワンセグ付SDメモリーナビ(パイオニア製)はオプション。車載の4.2インチディスプレイにはリアビューカメラ機能が備わる
インパネの中央上部には、バックモニターにもなる4.2インチ・カラー液晶ディスプレイとオーディオ操作パネルを配置。日本仕様にはソニー製の8スピーカー・プレミアムオーディオが標準装備になる、見た目がちょっと昔のラジカセっぽく、スイッチの配置が散漫なのが玉に瑕。 一方で、デジタルオーディオプレーヤーやBluetooth対応の携帯電話と接続した際、ステアリングスイッチや音声で、オーディオの操作や電話発信が可能なフォード独自のドライバーコネクトテクノロジー「SYNC」に対応しているのが、この純正オーディオの肝。今のところ音声操作は英語にしか対応していないが、ディスプレイに表示されるコマンドを言えば、ちゃんと英語で答えて反応してくれる。ちょっぴり「ナイト2000」風。
 
後席クッションは前席と違ってフカフカと柔らかい。空間はポロより少しタイトだが、背もたれの角度が寝ていてリラックスできる
ホールド性の高いシート、優れたペダル配置、ステアリングのチルト&テレスコ、シートリフターなどにより、ドライビングポジションはピタリと決まる
携帯するだけでドアの施解錠、エンジン始動が可能なスマートキーは標準装備
 
トランク容量は276Lで、ポロ(280L)と同等。後席の背もたれを倒すと、上げ底状態ならほぼフラット
最大容量は960L。フロアボードを下段にして、天地を拡げることができる。ダブルフォールディングは不可
床下にはスペアタイヤを搭載。サイズは装着タイヤと異なるが、175/65R14のフルサイズ
 

基本性能&ドライブフィール

2リッターかと思うようなパンチ

日本仕様は前述の通り、フォード最小エンジンの1リッター(997cc)の直列3気筒・直噴ターボ「EcoBoost」。小径ターボ、直噴システム、吸・排気可変バルブタイミング機構など、最新技術が盛り込まれた新世代ユニットで、海外ではフォーカス等に2012年から搭載。エンジン分野で権威のある賞の一つ、インターナショナル・エンジン・オブ・ザ・イヤーを2012年から2年連続で受賞している。フィエスタへの搭載は2014年モデルから。
 
「Ti-VCT」と呼ばれる吸・排気可変バルブタイミング機構を採用。ブロックは鋳鉄で、カムシャフトの駆動はゴルフ7同様、ロスが少ないコグドベルトを使用する (photo:フォード・ジャパン)
日本仕様の最高出力は100ps/6000rpmで、いわゆる「リッター100馬力」。最大トルクは1.6~1.8リッター並みの17.3kgm/1400-4000rpmを発揮する。 そんなスペック通り、走りだして、ウワッと思うのが、低回転からグワッと来るトルク感。たった1リッターで、ウワッ、グワッはないだろうと思うかもしれないが、実際にその出足は1リッターとは思えないほど力強く、ポロの1.2ターボ(105ps)やルーテシアの1.2ターボ(120ps)を上回る。感覚的にはデミオクラスのボディに、2リッターエンジンを載せたみたい。アクセルペダルに軽く足を載せているだけで、ズンズン加速してしまう。

ノイズ・振動も気にならない

車両協力:フォード名古屋
3気筒と言えば、気になるのは音や振動の問題だが、これも全く気にならないレベル。V6エンジンに似た独特のサウンドは確かに3気筒っぽいが、いわゆる不快な成分が入っていない。ライバル車の4気筒ターボ、特にVWの1.2ターボはワンランク上の滑らかさを持つが、フィエスタの3気筒の方が活き活きとしたパンチがあり、面白さでは勝る。 また、アイドリング時の振動やノイズもほぼ問題なし。3気筒=ステアリングがブルブル震える、という現象は、最新欧州車では過去のものだと痛感させられる。アイドリングストップ機能が未装備なのは、最新エコカーとしては少し物足りないが、おかげで再始動のショック云々は気にせずに済む。

ターボラグは6速DCTでカバー

冷静に観察すると、2000回転を切るくらいの低回転域ではレスポンスが鈍く、いわゆるターボラグは明確にあるのだが、それがほとんど気にならないのは、ゲトラグ・フォード製の6速DCT、通称「パワーシフト」が優秀だから。3000回転手前くらいからグググッと盛り上がってくるトルクを、巧みな変速で拾ってくれる。 ただ、VWの通称「DSG」が間髪を入れず、電光石火でシフトアップ&ダウンするのに対して、このゲトラグ製DCTの変速動作は、ボルボなどと同様、少々おっとりしている。おそらくフォードとしては、トルコンATのようなスムーズさの再現を狙っているのだろう。

シャシー性能は、ミニフォーカス風

タイヤは195/45R16のハンコック Ventus S1 evo。正直に言って、グリップから乗り心地まで、全く不満を感じなかった
新型フィエスタでもう一つ驚くのは、ほとんどスポーツモデルのようなシャシー性能。軽めの電動パワステには、切り始めに少し意図的な鈍さを感じるが、いったん旋回し始めるとアンダーステア知らずで曲がってゆく。 また、ボディには全体が一丸になったような剛性感があり、硬めに思えた足回りも、荒れた路面をしなやかに捉え続ける。リアサスはBセグで一般的なトーションビームだが、リアの安定感は感動的で、オーバースピード気味でコーナーに入っても、まったく不安を感じない。その分、リアを流すような走り方は難しそうだが、この安心感には代えがたい。一言でいえば、ミニフォーカス。 日本仕様はスポーツサスペンションと195/45R16タイヤが標準だが、街乗りから、田舎の荒れた舗装路、そして高速道路まで、まったく不満なし。背高コンパクトカーにありがちな横揺れはほとんどなく、ピッチングもほぼ皆無。荒れた路面での乗り心地はポロより良く、比べるならルーテシアだと思った。
 
マニュアルシフトする時はシフトノブ横の「セレクトシフト」スイッチを押す。長い下り坂などでエンジンブレーキを掛ける時には便利
ワインディングで気になったのは、マニュアルシフトがしにくいこと。パドルシフトはなく、フォーカス同様、シフトノブの横にサムスイッチがあって親指で変速できるようになっているが、これがワインディング走行中だと、素早く操作できない。ステアリングから手を離し、一度ノブを握って、そこで初めて親指で押せるから。結論としては、マニュアル操作はせず、スポーツモードのまま走った方がストレスなく、速く走れる。 なお、トルクステアは皆無ではないが、そこは最新モデルらしく最小限。電動パワステには、横風や路面のうねりなどに対する修正舵を減らす「ドリフト補正機能」や、ステアリングの微小なブレや震動を打ち消す「アクティブ ニブル コントロール」が備わるらしいが、システム単体でどれほど効果を発揮しているのか不明(オン・オフスイッチはないので)。しかし、ステアリングの座りの良さは特筆できる。
 
100km/h巡航は2300回転くらい。直進安定性は抜群によく、静粛性もBセグメントでは最上レベルだと思った。高速走行時にも突出してうるさい音がなく、エンジン音をはじめ、ロードノイズや風切り音も気にならない。このあたりも、さすが欧州生まれと思える。 標準装備のクルーズコントロールを使えば、まるで2リッタークラスのように悠々と走る。100ps版の最高速(メーカー発表値)は発見できなかったが、180km/h台は確実だろう。

試乗燃費は10.9~14.5km/L。JC08モード燃費は17.7km/L

給油口は、キャップレスの「イージー・フューエルシステム」。ノズルを差し込むと自動でシールドが開く
今回はトータルで約200kmを試乗。試乗燃費(車載燃費計)は、いつもの一般道、高速道路、ワインディングを走った区間(約90km)で10.9km/L。また、一般道を大人しく走った区間(約30km×2回)が14.1km/L、14.5km/Lだった。JC08モード燃費は17.7km/L。 総じて、ゴー・ストップが多い街乗りではつい元気に走りがちで、感覚的には10km/L台といった印象(車載燃費計で9L/100km台)。指定燃料はプレミアムになる。
 

ここがイイ

4気筒要らずのエンジン。超充実した装備。ドラポジなど

まず第一にエンジン。この3気筒ターボには、4気筒よりこっちの方がパワフルで面白いから、という理由で積極的に選びたくなる魅力がある。軽自動車的な広さはないが、少家族ならファミリカーになりえるし、高速ロングドライブでの余裕は、普通車というか、ほとんど2リッタークラス並み。それでいて燃費もいいし、カッコもいい。 オートエアコン、スマートキー、オートライト、オートワイパー、クルーズコントロール、自動ブレーキなどなど、標準装備がやたら充実していること。パワーウインドウが全席オートなのは、日本車でもこのクラスでは珍しい。こんなところも One Ford の成果なのだろう。 そしてピタッと決まるドライビングポジション。これがちゃんとしているクルマは、乗っていて気持ちいいことを再認識した。 リアドアを閉じた時のガチンという音。ドイツ車のドアは、総じてドアの閉まり音が重厚だが、この硬質な音はあまり聞いたことのないもの。日本車の品質基準ではNG?かもしれないが、フィエスタの場合はいかにも欧州車っぽいということで「ここがイイ」に。

ここがダメ

6速DCTの変速レスポンス

VWのDSGの比べて、もう少し、と思えたのは、新型ルーテシア同様、6速DCTの変速レスポンス。ただ、これは本文でも触れたように、トルコンAT的なヌルっとした滑らかさを出すという狙いもあるのだろう。フィエスタがポロに勝っている部分は多いが、いちおうこの点は指摘しておく。 日本仕様には4.2インチの液晶カラーディスプレイが装備されているが、北米仕様には6.2インチディスプレイにナビやSYNCを組み込んだものが用意されている。日本仕様(欧州仕様?)の4.2インチディスプレイ+オプションのPNDも悪くないが、できればこのあたりも One Ford でグローバル標準化して欲しいところ。

総合評価

とてもリッターカーとは思えない

あまりの出来の良さに、言葉を失ってしまった。いや、あまりの楽しさに、思わず走りこんで我を忘れてしまったのだ。3気筒ターボと聞けば、それは日本車というか、軽自動車のお家芸だったはず。最新軽の660ccターボエンジンはすでにリッターカーを上回る性能を発揮しているが、その排気量を1.5倍の1リッターにして、直噴ターボ化すれば無敵の走りになる、とはさすがに思っていなかった。今回それをフォードにやられてしまった。そう、フィエスタには、まさにやられてしまった感が強い。 フィエスタの走りはとにかく力強く、まるで排気量が倍のクルマのようだ。直噴ターボながら、その味付けは昔のドッカンターボっぽくもあり、その点でも走らせる面白さは十分。ワインディングでのパワー感、自在な身のこなし、高速巡航の安定感や快適性などは、とてもリッターカーとは思えない。現時点では、同クラスの日本車に勝ち目はない、と言えるだろう。

Fun to Drive の価値

それは小排気量エンジン+直噴ターボ+DCTという日本車にないゴールデントリオがもたらしたもの。こういったクルマは総じて運転が楽しい。まさにFun to Driveなのだ。トヨタが「Fun to Drive」をスローガンにしていたのは1984年~1987年で、30年近い年月を経て2011年10月からも「Fun to Drive, Again.」を打ち出しているが、この30年で失われたものは、そうとう大きいと言わざるをえない。国産車においても、この30年で進化を遂げたものはたくさんあるが、トヨタ車の場合、こと走りに関しては、特にバブル崩壊以降、結局脇に置かれたままだったように思う。クルマがクルマでない何か新しいものに進化していれば、走りなどどうでもいいのかもしれないが、クルマが未だクルマであって、今後も新興国へクルマとして売られていく以上、「走りのよさ」は結局大きな価値を持ったままだ。結局、クルマが大きく進化、というか、「クルマとは異なる何か」に変化しなかった今となっては、こうした「クルマらしいクルマ」に乗るにつけ、複雑な思いとなってしまう。
 
2004年に発売された先代フィエスタの試乗記では「乗って気持ちいいフィエスタか、異常に便利なポルテか」と比較して書いたが、フォードは気持ちいい乗り味を着実に進化させて、こんな素晴らしいクルマを作った。異常に便利なポルテはいまだに価値を失ってはいないが、その進化はそれほど大きくない。そして10年を経て、世界でトップクラスのセールスを誇るフィエスタと、日本だけでそこそこ売れるガラパゴスなポルテという対照的な存在となっている。日本で便利に使うにはポルテがいいとは思うが、グローバルな世界では、それは通用しないということだろう。日本がグローバリズムに背を向け、いっそ鎖国でもすればいいのだが、そうもゆくまい。 昨年の名古屋モーターショーでは、その直前に行われた東京モーターショーと違って、ディーラー主導の出展ながら米国メーカーを含めて数多くの輸入車が展示された。その中には実質的にジャパン・プレミアの新型車が何台かあり、フィエスタもその一台だった。だったのだが、多くの人に知られていなかったせいか、大きな注目を浴びていたとは言いがたかった。近くにはアストンマーティンも展示され、そちらはかなり人目を引いていたのだが。このクルマの良さを、もうちょっと多くの人に伝える方法は、本当に何かないものかと思う。販売店を増やせばいいというものでもないだろう。フィエスタに関しては、そこだけが唯一、本当に惜しいところだ。
 

マツダ アクセラ スポーツ XD:新車試乗記

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キャラクター&開発コンセプト

3代目はガソリン、ディーゼル、ハイブリッドの3種類で展開

東京モーターショー 2013にて
マツダ アクセラ(海外名Mazda3)は、ファミリア(海外名Mazda 323)の後継として2003年6月にデビュー。これまで世界約120ヶ国以上の国と地域で販売され、累計生産台数は400万台超(2014年1月22日時点)。マツダにとっては販売台数で約3割を占める基幹モデルだ。 2013年11月21日に発売された3代目は、燃費性能と走りの良さを両立する「SKYACTIV技術」を全面採用。ガソリン車に加えて、マツダ初のハイブリッド車(日本市場のみ)、そしてディーゼルエンジン車と、3種類のパワートレインを用意している。

CX-5やアテンザと同じディーゼルエンジンを搭載

マツダ アクセラスポーツ XD (photo:Mazda)
今回試乗したのは、ディーゼルエンジン車の「アクセラ スポーツ XD(クロスディー)」。CX-5やアテンザで高い評価を得ている2.2リッター直4ディーゼルターボエンジンを搭載したもので、こちらは年明けの2014年1月に発売された。 なお、国内向けアクセラの生産は、マツダ防府工場(山口県防府市)。国内の販売計画台数は月間3000台で、これまでの販売実績(自販連発表)は、2013年11月:3623台(登録車で16位)、12月:3015台(同16位)、2014年1月:4476台(同16位)、2月:5558台(同11位)。3月7日に発表された工場出荷目処によれば、注文から納車まではおおむね2ヶ月待ちのようだ。 発売から約一ヶ月後までの受注(約1万6000台)の内訳は、ガソリン車が66%、ハイブリッド車が19%、ディーゼルエンジン車が15%とのこと。
 
■過去の新車試乗記(マツダ スカイアクティブ-D関連)マツダ アテンザ XD (2013年2月)マツダ CX-5 XD (2012年5月) ■過去の新車試乗記(マツダ アクセラ関連)マツダ アクセラ ハイブリッド (2013年12月)マツダ アクセラ スポーツ 20S i-stop (2009年8月)マツダスピード アクセラ(2006年9月)マツダ アクセラ (2003年11月)
 

価格帯&グレード展開

トップモデルはディーゼル。価格は298万2000円

試乗したアクセラ スポーツ XD
3代目アクセラは、ガソリンエンジン(1.5と2.0)、ハイブリッド(2.0ガソリン+モーター)、ディーゼルエンジン(2.2ターボ)の3種類。変速機は2リッターガソリンだと6ATしかないが、ディーゼルでは6MTも選べる。国産車で、これだけちゃんとマニュアル車を用意するメーカーは珍しい。なお、アテンザのディーゼル(FFのみ)にも6MTはあるが、CX-5のディーゼル(FFと4WDがある)だと6ATしか選べない。
 
XDには電動サンルーフも標準装備。これぞ最上級グレードの証?
ディーゼルの価格は、6MT・6AT共に298万2000円で、ガソリン車はもちろん、ハイブリッド車と比べても飛び抜けて高い。ディーゼルエンジンは一般的に高コストであり、さらにアクセラの場合は馬力もトルクもラインナップ内では最強ということで、「ディーゼル=トップモデル」という位置づけ。専用コンビシートや電動サンルーフが標準装備になるなど、装備も充実している。
 
アクセラスポーツ (photo:Mazda)
■アクセラスポーツ(5ドアハッチバック) 【1.5リッター直4+6AT/6MT】  171万1500円~ 最高出力111ps 最大トルク14.7kgm JC08モード燃費17.8~19.4km/L 【2.0リッター直4+6AT】   220万5000円~ 最高出力155ps 最大トルク20.0kgm JC08モード燃費18.4~19.0km/L 【2.2リッター直4ディーゼルターボ+6AT/6MT】  298万2000円 ※今回の試乗車 最高出力175ps 最大トルク42.8kgm JC08モード燃費19.6km/L(6AT) -----------------
 
アクセラセダン (photo:Mazda)
■アクセラセダン(4ドアセダン) 【1.5リッター直4+6AT/6MT】  171万1500円~ 最高出力111ps 最大トルク14.7kgm JC08モード燃費17.8~19.6km/L ----------------- ■アクセラハイブリッド(4ドアセダン) 【2.0リッター直4+モーター】  237万3000円~ システム最高出力136ps JC08モード燃費30.8km/L
 

パッケージング&スタイル

ディーゼルは5ドアハッチバックのみ

ボディカラーは全8色。試乗車はアルミニウムメタリック
アクセラには4ドアセダンもあるが、ディーゼルは「スポーツ」と呼ばれる5ドアハッチバックの「スポーツ」のみ。アクセラハイブリッドの試乗記でも触れたように、セダンとハッチバックは、リアドアまでデザインは共通で、どちらもデザインテーマ「魂動」に基づくダイナミックなスタイリングが大きな特徴。抑揚豊かなボンネット、深くえぐられたベルトライン、フロントフェンダーとリアフェンダー上のショルダーラインなど、見どころは多い。Cセグメントのハッチバックでは、ゴルフ7やボルボ V40などと並んで、秀逸なデザインでは。

アクセラの場合、赤いラインがディーゼルの証

後ろ姿はアルファのブレラ似? リアオーバーハングはセダンより120mm短い
CX-5やアテンザでは、ディーゼル専用の意匠が特にないため、ディーゼルかどうかを見分けるのが難しかったが(エンジン音を聞いた方が手っ取り早い)、しかし今回のアクセラでは、ディーゼル車のフロントグリルに赤いラインを追加。ゴルフのGTI っぽいのはちょっと何だが、識別は簡単になった。 その他の目印は、18インチアルミホイールが高輝度塗装タイプになること、電動サンルーフが標準装備になること、フロントフォグランプがLEDになること、リアバンパー下部の黒い部分がディフューザー形状&ピアノブラック塗装になることくらい。
 
    全長(mm) 全幅(mm) 全高(mm) WB(mm) 最小回転
半径(m)
VW ゴルフ 7(2013~) 4265 1800 1460 2635 5.2
レクサス CT200h(2011~) 4320 1765 1450~1460 2600 5.0~5.2
トヨタ プリウス (2009~) 4460 1745 1490 2700 5.3
マツダ アクセラ スポーツ(2013~) 4460 1795 1470 2700 5.3
マツダ アクセラ セダン(2013~) 4580 1795 1455 2700 5.3
BMW 3シリーズ セダン(2012~) 4625 1800 1440 2810 5.4
 

インテリア&ラゲッジスペース

秀逸なインパネデザイン、ピタリと決まるドラポジ

タブレット風の7インチディスプレイ、一眼メーター、シンプルな水平基調のダッシュが特徴
新型アクセラに試乗するのは2度目だが、インパネを見てあらためて思ったのは、質感が高いこと。デザインや素材に統一感があり、ゴテゴテしておらず、クリーンでスマート。ゴルフ7ほどの図抜けた高級感はないが、デザインの新しさ、スポーティさ、マツダ独自のITインターフェイス「マツダ コネクト」による操作性の良さでは、アクセラが優れる。エクステリア同様、インテリアのデザインも秀逸。

XD専用の人工スエード&レザーシートを採用

手元のコントラーラーでナビ等を遠隔操作できる「マツダコネクト(Mazda Connect)」を採用
視界の良さも、特筆できる。ダッシュボードのカウルやベルトラインが低く、Aピラーが後方に立つため、死角が少ない。Aピラーが視界を遮る新型車が多い昨今、アクセラはそれらとは逆だ。 また、「人馬一体」を目指したドライビングポジションも、先回のフィエスタ同様、ピタリと決まる。アクセルペダルも、ハイブリッドではプリウスと同じ吊り下げ式だっただが、ガソリンやディーゼルの純エンジン車ではオルガン式とするなど、ドイツ車を仮想敵とするマツダのこだわりが感じられる。
 
後席はサイドウインドウが小さく、ルーフの絞り込みも強いが、ゴルフ7よりゆったり座れる
XD(ディーゼル)には、ラックススエードとレザーのコンビシート(運転席は電動)が標準。ラックススエードはセーレン株式会社の商標で、東レのアルカンターラと同様の人工スエード
コマンダーコントロールは少々慣れが必要。スマホと連携すればインターネットラジオの利用や、TwitterやFacebookの音声読み上げも可能
 
スポーツ XDのトランク容量は364Lで、ゴルフ7(360L)と同等
後席の畳み方はシングルフォールディングだが、ほぼフラットになる。斜めになればギリギリ足を伸ばして寝れた
床下にはパンク修理キットと小物入れスペース。その下に吸音材が敷かれている
 

基本性能&ドライブフィール

多少カラカラ言うが、音振はディーゼルらしからぬレベル

17前後の圧縮比が一般的な量産ディーゼルエンジンにおいて、世界一低い圧縮比(14.0)を売りとするマツダの2.2リッター直4ディーゼルターボ
ディーゼル車の「XD」には6MTもあるが、今回は6ATに試乗した。 2.2リッター(2188cc)の直4・DOHCディーゼルターボエンジンは、CX-5やアテンザのXDと同じもの。最高出力175ps/4500rpm、最大トルク42.8kgm/2000rpmという諸元も同じで、6ATのギア比(1速3.487、2速1.992、3速1.449、4速1.000、5速0.707、6速0.600)も共通。 ただし、最終減速比はアクセラとアテンザが同じ3.804なのに対して、CX-5(4WDも含む)だけは4.090と、ちょっとローギアードになっている。なるほど、だからCX-5は出足が良かったのか。車重はFFの6AT同士で比べると、アクセラが1450kgで一番軽く、アテンザが1510kg、CX-5が1520kgで一番重い。
 
圧縮比の低減により効率を高める一方、低音での着火性も確保したほか、NOx後処理装置なしでポスト新長期排出ガス規制をクリアしている
さて、アイドリング時の音は、CX-5やアテンザとほぼ同じ。「カラカラカラ」という音は耳をすませば聞こえるが、振動はほとんどない。また、アイドリングストップが頻繁に作動するので、信号待ちではエンジンが止まっていることが多い。再始動時には、さすがにディーゼルエンジンが回り出すに相応のショックがあるが、これはまぁ慣れると思う。 発進直後に、一瞬カラカラッという音が高まるが、走りだしてしまえば全く気にならない。というか、むしろ走り出した後は、下手なガソリンエンジンより滑らかで、静かかも。2000回転くらいからエンジンの振動がスッと消え、ターボのブーストが掛かってフワッと浮き上がるように加速。5500回転までストレスなく吹け上がる。 ただ、アテンザ同様、最大トルク42.8kgmという数値が期待させるほど、怒涛のパワフルさはない。車重は2リッターガソリン(155ps、20.0kgm)より140kg重く、パワーウエイトレシオは1450kg/175ps=約8.3kg/ps。リズムよく走るには、3000~5500回転(タコメーターの頂上部)あたりのパワーバンドをキープする必要がある。

脱出加速に惚れ惚れする

タイヤサイズは2リッターガソリン車と同じ215/45R18。XDにはダンロップのSPスポーツ MAXX TTが装着される
このクルマ、すごいな、と思ったのは、ワインディングでの走り。前輪には、常に上から押し付けられているような絶大な接地感があり、また、その力を受け止めるボディや足回りが異様にガッシリしている。前後重量配分は、2リッターガソリンの810kg:500kg(62:38)に対して、940kg:510kg (65:35)。つまり前軸にガソリン車より140kgも多く荷重が掛かっている。サスペンションは当然、XD専用にチューニングされている。 ただ、ハンドリング自体はかなり安定志向。マツダと言えば、フロントが軽快にインに入るクルマが多いが、アクセラ XDの身のこなしは重々しい。ただ、それと同時にステアリング操作に応じて、ひらりとフロント・アウト側にロールするのが面白いところ。その点ではまるでロードスターのようにロールしてからスッとノーズがインに入る、という素直な動きが楽しめる。決してロードスターのような軽快感はないが、動き自体はやっぱりマツダらしい。 そして何より心奪われるのが、コーナーから脱出する時の気持ち良さ。立ち上がりでアクセルを踏み込めば、40数kgmに及ぶトルクを、まるで4WDみたいに余すことなく路面に伝えながら、グゥーンと一気に立ち上がる。この時にターボラグはなく、トルクステアもホイールスピンもない。この時の加速の気持ちよさは、他のクルマではなかなか味わえない。
 
最大トルクは2000rpm、最高出力は4500rpmで発揮され、5500rpm付近で緩やかにリミッターが作動する
リミッターが作動する約5500回転まで回せば(自動シフトアップはしない)、1速で50km/h、2速で87km/h、3速で120km/hまでカバー。2速と3速が少し離れているので、3速固定にした方がスムーズに走れる(スポーツモードなるものはない)。パドルシフトは、シフトダウン時にブリッパーで回転合わせするなど、DCTに迫る動きを見せる。 乗り心地はかなり硬めだが、まったく不快ではないと思った。日本車にしては異例なほどダンピングの効いた、そしてストローク感のある非常にいい足という印象。RX-7、RX-8、ロードスターと、足回りへのこだわりが語られるマツダ車は多いが、それらと同じくらいの執念と完成度を感じる。おそらく、XDの仮想敵は、ゴルフ7のディーゼルエンジン搭載車(もちろん日本未導入)だろう。

高速巡航ではクラス破りの重厚感にしびれる

「アクティブ・ドライビング・ディスプレイ」と呼ばれるヘッドアップディスプレイを装備。車速の他、ナビの誘導矢印、緊急性の高い警告などを表示
高速道路での走りにも唸らされた。100km/h巡航時のエンジン回転数は1900rpm。前輪のドシッとした接地感が気持ちよく、一方でステアリングにはダルさがなく、とにかくビシッと走る感じが強い(その点はBMWを思わせる)。おかげでちょっと緊張感はあるが、直進安定性は抜群。かなりマニアックな話になるが、このクラスの日本車では味わい難い充実感がある。 また、エンジンは回せば回すほど滑らかになり、特に4000回転くらいから上の、コーーンと澄み切った音が気持ちいい。なんでこんな音がするんだろうと思ったら、アクセラ XDだけは全車標準のBose製オーディオ用スピーカーから高回転時のエンジンサウンドを補っているとのこと。それはまぁともかく、素晴らしく滑らかに回るエンジンなのは確か。 なお、今回は夜道をけっこう走ったが、ハイビームとロービームの両方がAFS機能付のバイキセンだったので、とても走りやすかった。LEDの方が今風だが、これはこれでいいのでは。

試乗燃費は11.0~14.6km/L。JC08モード燃費は19.6km/L

今回はトータルで約270kmを試乗。参考までに試乗燃費(車載燃費計)は、いつもの一般道、高速道路、ワインディングを走った区間(約90km)が11.0km/L。また、一般道で、特にエコ運転せずに走った区間(約30km)がやはり11.0km/L、同じく一般道でエコ運転に努めて走った区間(約30kmを3回計測)が13.5km/L、14.1km/L、14.6km/Lだった。総じて、何も考えずに走っていると、11km/L台という印象。 JC08モード燃費は19.6km/Lで、これは純ガソリン車(FFで19.0~19.6km/L)と大差ないが、ハイブリッド(30.8km/L)には完敗する。ただ、軽油はレギュラーガソリンより15%ほど安いので(今回入れたガソリンスタンドではレギュラー151円に対して130円)、燃料費はガソリン車より安く済みそう。いずれにしても、車両価格代をペイするには10万km以上走る必要はあるが。 燃料タンク容量は純ガソリン車と同じ51リッター。航続距離は普通に500km、高速道路で流せば800kmくらいは可能だろう。
 

ここがイイ

シャシー、エンジン、全体の完成度

ディーゼルエンジン自体もさることながら、まずはシャシー性能の素晴らしさ。エンジン重量のせいか、ガソリン車にはない圧倒的な接地感や重厚感が味わえる。 でもって、そのエンジントルクを路面に余すことなく伝えて加速する感覚が気持ちいい。ディーゼルエンジンと言えば、トルク感や燃費だが、アクセラの場合はハンドリングにもその特性が活きている。直進安定性もよく、乗り心地も悪くない。全体の完成度が極めて高い。 エンジンのトルク感は数値ほどではないが、高回転域でのスムーズさは下手なガソリン車以上かも。思わず、ロータリーエンジンのイメージもダブってしまった。ディーゼルエンジンなのに、回して気持ちいい。エンジンのカラカラ音は皆無ではないが、これも個性。ガソリン車と音が同じだったら、逆につまらない。 298万2000円という価格は、200万~250万円くらいで買えるガソリン車と比べると割高だが、これだけのエンジン、これだけのシャシー、これだけの完成度なら妥当だ。マツダの中でも、とびきりマニアックで、とびきり気合いの入ったクルマがアクセラ XDであり、そのマニアック度は販売終了したRX-8にも匹敵すると思う。

ここがダメ

マツダコネクトの操作性、グリルの赤いラインなど

今後の発展性が楽しみなマツダコネクトだが、今のところ操作性はイマイチ。地図の機能や使い勝手に関しても、やはり今回もちょっと辛いと思ってしまった。また、組み込み式ナビはハードの差し替えが難しい分、困る部分もある。ただ、このシステムはOSからアップデートが可能とのことなので、今後もソフトウエアの部分でどんどん改良して欲しいところ。 ヘッドライトのハイ/ローを自動で切り替えるシステム(マツダではハイビーム・コントロールシステム=HBCと呼ぶ)は、内外メーカーで最近多く採用されているが、同システムの使用中には、とっさにレバー操作でハイビームに切り換えられないのは不便(マツダに限らないが)。オートライトはオンにしつつ、HBCはオフにする、という使い方も可能にした方がいいと思う。 マニュアルモードで自動シフトアップしないのがマツダ流のようだが、やはりレブリミットまで行ったら自動シフトアップする方が運転しやすいと思う(ポルシェのPDKでも自動シフトアップする)。また、本文でも触れたように、やっぱりスポーツモードもあった方が便利だ。 ディーゼルの場合、フロントグリルのメッキモール部分に赤いラインが入る。これはゴルフのGTIを意識したものだと思うが、とってつけたようで、ちょっと中途半端では。

総合評価

クリーンディーゼル3台で最も好印象

マツダのクリーンディーゼルエンジンを初めて搭載したCX-5のXDに乗ってから、早くも2年が経とうとしている。アテンザ セダン XDに乗ったのは1年前だ。 そして今回、アクセラのXDに乗ったわけだが、登場から2年といえば、同一モデルならマイナーチェンジがそろそろ行われてもいい時期。アクセラのディーゼルエンジン自体は、スペックを見る限り、これまでの2台と特に違うようには見えないが、運転した時のフィーリングとしては最も好印象を持った。おそらくこの2年間で、エンジンについても細かな改良は続いているのだろう。 CX-5のXDは、よく走るなという印象ばかりが強く、アテンザではその前に乗ったBMW 320dと比べてトルク感や快適性などで物足りない部分があった。しかし今回のアクセラ XDに関しては、もうこれなら文句ないんじゃないか、と思えた。エンジンとシャシーのマッチングなどは、やはり最新車だけあって相当に手が入っているように思われる。特に欧州においてはこのクラス、強力なライバルたちと競わなければならないのだから、徹底的にブラッシュアップされたのではないか。

1983年式911を思い出す

とにかく、ディーゼルとしてのネガはほとんど気にならない。エンジンそのものは下手なガソリン車より、よく回るとすら思えた。何よりその強大なトルクによる走りは、普通のガソリン車や、まして「トヨタ的」ハイブリッド車ではまったく太刀打ち出来ない独自の魅力を持っている。いつも180psくらいが手頃で楽しいパワー感だと書いているが、このクルマはまさにそれ。加えて強大なトルクだ。 クルマの走りにおいて、楽しさの大きな要因がトルク感だと思う。アクセラの場合、前輪から路面に伝えられるトルクの塊が、ボディをグイグイ引っ張っていく感覚が、気持ち良すぎ。その昔、乗っていたポルシェ 911 SC(1983年式)は180psと27kgmを発揮し、RR(リアエンジン・リア駆動)によって後ろからグイグイ押される感覚が素晴らしかった。SCの車重はアクセラより250kgも軽かったし、前か後ろかという違いもあるが、感覚的にはけっこう近いものがある。まあ、いずれにしても、これくらいのパワーと大きなトルクが、経験上一番楽しく公道を走れる。 というようなことを、BMW 320dの試乗記でも書いた。さすがに200万円もの価格差がある320dには敵わない部分もあるが、その320dに迫ってやろうという意志すら感じさせる仕上がり。費用対効果で考えれば、320dを凌いでいると言えるかも。走ってみれば、マツダの言うところのズームズーム、最近はワクワクともいうみたいだが、それが確かにある。320dはともかく、価格的にもクラス的にも直接のライバル関係であるゴルフ7に対してなら「本質」で対抗できる、唯一の国産車かもしれない。

いろいろな意味で欧州車そのもの

それもこれも、欧州という厳しい市場で勝ち残るために作られていることが、その原因だろう。まさに欧州車のような日本車、それがアクセラ XDだ。いや、日本メーカー製の欧州車を、日本で売っているだけなのがアクセラ XDか。古いクルマ好きにとっては、結局今も欧州車のようなものが好みということは変わらない。先週のフォード フィエスタもそうだが、欧州のものを持ってくれば我々は喜ぶ。分かりやすい(苦笑)。つまりはアクセラにおいても、ハイブリッドよりディーゼルの方が好みとなる。しかしまあ、そういう人は多くはないので、アクセラのディーゼルはプレミアムグレードとして売られるのだろう。値段は高いが いい味です(たぶん名古屋の人にしか分からないCMフレーズw)というところか。 ただ、今後、少なくとも国内ではスマホのようにフリック操作できるナビが主流になっていくと思われるが、マツダにとって最新のインターフェイスであるマツダコネクトは、主にコマンダーで操作する欧州流だ。コマンダーは慣れが必要だが、慣れれば操作しやすくて安全。一方、フリックなどの操作は慣れがあまり必要なく、何よりふだん使っているスマホのように操作できる強みがある。長年、ナビはリモコンで操作するものと考え、そう使ってきた者としては、コマンダーにこそ合理性を感じるのだが、世の中は一気にタッチパネルの方向へ流れている。マツダコネクトの今後に期待したいが、そこだけはちょっと憂うところだ。
 

愛知県ITS推進協議会・第64回会員セミナー開催:ITS DAYS

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3月19日(水)、名古屋国際センター(名古屋市中村区)にて、愛知県ITS推進協議会・第64回会員セミナーが開催された。

「安心・安全ビジネスモデル ~適切な規制とインセンティブによる需要創造~」 名古屋大学大学院国際開発研究科特任教授 西村 眞 氏

名古屋大学大学院国際開発研究科特任教授 西村 眞 氏 いわゆる「環境問題」や「省エネ問題」「介護問題」など、社会にとって重要な問題であるにも関わらず、ビジネスとして成立しにくいが故に、解決が立ち遅れてしまいがちな分野がある。西村氏は、適度な規制とインセンティブの設定により、持続的な収益構造を持ったビジネスモデルを構築できるとし、その実例が紹介された。「交通事故死亡者数ワーストワンの愛知県だからこそ、その数を劇的に減らす『愛知モデル』の創出が期待されている」と締めくくった。

平成25年度ITS安全・安心グループ活動報告 名古屋大学大学院環境学研究科教授 森川 高行 氏

名古屋大学大学院環境学研究科教授 森川 高行 氏 ITSを活用して交通社会における「安心」「安全」を実現する具体策について、愛知県ITS推進協議会の「ITS安全・安心グループ」が取りまとめている。今回は、その座長である森川氏により、平成25年度の同グループ活動報告が行われた。報告の最後には、文部科学省革新的イノベーション創出プログラム(COI STREAM)拠点事業の支援を受けた名古屋大学が取り組む、高齢者向けモビリティ社会の研究概略も紹介された。

交通安全のためのITS活用方策提案紹介

(1)「右折時衝突防止支援システムの効果評価」 トヨタ自動車(株)IT・ITS企画部ITS開発室第1開発グループ長 菅沼 英明 氏

トヨタ自動車(株)IT・ITS企画部ITS開発室第1開発グループ長 菅沼 英明 氏 交差点での右折時、対向車が途切れたタイミングを見計らって進む際、ヒヤリとした経験が誰しもあるのではないだろうか。トヨタ自動車(株)では、交差点に設置された画像解析カメラの情報を元に、対向車の情報を車内モニタに表示させるシステムを開発中だ。被験者を集めて行った実験では明確な効果が確認されており、近未来の車載デバイスのひとつとして可能性を感じさせるシステムと言えそうだ。

(2)「車速センサーと電光掲示板を用いたゾーン30での速度超過対策」 公益財団法人豊田都市交通研究所研究部主任研究員 三村 泰広 氏

公益財団法人豊田都市交通研究所研究部主任研究員 三村 泰広 氏 生活道路を走り抜ける車のスピードを抑制する「ゾーン30」がいま、注目されている。豊田都市交通研究所では、豊田工業高校、(株)キクテックと共同で、走行する車のスピードを電光掲示板に表示してドライバーに伝えることでスピード抑制効果を狙うシステムを開発中だ。ハンプ(路面障害物)の設置が難しい道などで特に効果が期待されており、今後愛知県内での実証実験も行われる予定とのこと。

(3)「『指差し呼称』による安全教育システム・安全確認支援システム」 愛知県立大学情報科学部教授 小栗 宏次 氏

愛知県立大学情報科学部教授 小栗 宏次 氏 交通事故の約85%は、ドライバーのよそ見や判断ミス等の人的要因である。小栗氏は「交通事故死者数のさらなる減少を目指すには、無人運転を指向するか、ドライバーをより適切にサポートするか、どちらかしかない」とし、ヒューマンエラー防止法として長く日本で親しまれている「指差し確認」に注目。様々な可能性とともに、基礎的な研究報告が行われた。課題は多くあるものの、非常にユニークかつ興味深い講演内容であり、ともすればデバイス&インフラ至上主義になりがちなITSの分野において、『人(ドライバー)が主役』とする新たなアプローチを提示したとも言える。今後も小栗氏と同システムに注目していきたい。 【安原武志(DAYS Inc.)】
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