キャラクター&開発コンセプト
3代目はガソリン、ディーゼル、ハイブリッドの3つで展開
![]()
新型アクセラセダンとアクセラスポーツ
(photo:Mazda)
アクセラは、アテンザやデミオと共に、マツダの「Zoom-Zoom」戦略を担ってきたCセグメントモデル。2003年に初代がデビューして以来、世界120ヶ国で370万台以上を販売するなど(2013年3月時点)、今やマツダの販売台数の3割を超える基幹モデルだ。海外名は「Mazda3」。
今回発売されたのは3代目で、2013年10月10日にガソリン車とハイブリッド車の受注受付を開始し、11月21日に発売された。
![]()
アクセラハイブリッドは、トヨタのハイブリッド技術を使ったモデルの第一弾
(photo:Mazda)
なお、2010年3月にマツダは、トヨタからハイブリッド技術のライセンス供与を受けることで合意しており、今回のアクセラハイブリッドはそれを初めて商品化したもの。さらに年明けの1月には、CX-5やアテンザで好評の2.2リッターディーゼルターボエンジン搭載車も加わる。
「ガソリン」「ディーゼル」「ハイブリッド」と3種類のパワートレインを同一モデルで備えるのは、輸入車では、BMWの3シリーズや5シリーズ、メルセデス・ベンツのEクラスがあるが、国産メーカーでは初めて。ただしアクセラの場合、ハイブリッドは国内専用車になる。
魂動デザイン、先進安全装備、マツダ コネクトを採用
![]()
前方をミリ波レーダー、カメラ、近赤外線レーザーレーダーで、後方を準ミリ波レーダーで監視する先進安全技術「i-ACTIVSENSE」
(photo:Mazda)
新型アクセラは、CX-5やアテンザに続いて、車両全体で環境性能などを追求する「SKYACTIV(スカイアクティブ)技術」や、新しいデザインテーマ「魂動(こどう)」を全面採用するモデルの第3弾になる。
さらに、アテンザに続いて先進安全技術「i-ACTIVSENSE(アイ・アクティブセンス)」を採用するほか、新開発のカーコネクティビティ システム「MAZDA CONNECT(マツダ コネクト)」をマツダで初めて採用し、走行しながらでもIT機能を安全に利用できるインターフェイスを提供している。
国内向けの生産はこれまで通り、アテンザと同じ防府工場(山口県防府市)で行う。同工場の年産可能台数は36万台で、その9割以上が輸出される。国内の販売計画台数は月間3000台。
![]()
東京モーターショー 2013にて
なお、発売から約一ヶ月後の12月19日時点での累計受注台数は、その5倍以上の約1万6000台と発表された。現時点で注文した場合の納期は、ハイブリッドが1月下旬以降、ガソリンとディーゼルが3月下旬以降とのこと。現時点ではガソリンが全体の66%を占める。
■過去の新車試乗記(マツダ アクセラ関連)
・
マツダ アクセラ スポーツ 20S i-stop (2009年8月)
・
マツダスピード アクセラ(2006年9月)
・
マツダ アクセラ (2003年11月)
価格帯&グレード展開
トップモデルは、298万2000円のディーゼル
![]()
2.2リッターディーゼルターボを搭載するマツダ アクセラスポーツ XD(2014年1月発売予定)
(photo:Mazda)
パワートレインはガソリンエンジン(1.5と2.0)、ディーゼルエンジン(2.2ターボ)、ハイブリッド(2.0ガソリン+モーター)の3種類。変速機は6ATに加えて、6MTも多くのグレードで選べるのがマツダらしい。なお、1.5ガソリンエンジンは新開発のフル「スカイアクティブ」ユニットで、変速機は従来のCVTに代えて、このクラスの国産車では異例の6ATに変更されている。
ボディタイプは5ドアハッチバックの「スポーツ」と4ドアセダンだが、2リッターガソリンとディーゼルはハッチバックのみ、ハイブリッドはセダンのみ、4WDはスポーツの1.5リッター・6ATのみと、少し選択肢が限られる。
![]()
電動レザーシートを備える「Lパッケージ」の内装。写真のオフホワイトか、ブラックから選べる
(photo:Mazda)
価格は1.5ガソリンが171万1500円から、2.0ガソリンが220万5000円から、ハイブリッドが237万3000円から。そして2.2ディーゼルターボ(XD)が6MT・6AT共に298万2000円で、一番高い。「ディーゼル=最上級モデル」という設定が新鮮。
■アクセラスポーツ(5ドアハッチバック)
【1.5リッター直4+6AT/6MT】 171万1500円~
最高出力111ps 最大トルク14.7kgm
JC08モード燃費17.8~19.4km/L
![]()
新型マツダ アクセラスポーツ
(photo:Mazda)
【2.0リッター直4+6AT】 220万5000円~
最高出力155ps 最大トルク20.0kgm
JC08モード燃費18.4~19.0km/L
【2.2リッター直4ディーゼルターボ+6AT/6MT】 298万2000円
最高出力175ps 最大トルク42.8kgm
JC08モード燃費19.6km/L(6AT)
![]()
アクセラハイブリッドはセダンのみ
(photo:Mazda)
■アクセラセダン(4ドアセダン)
【1.5リッター直4+6AT/6MT】 171万1500円~
最高出力111ps 最大トルク14.7kgm
JC08モード燃費17.8~19.6km/L
■アクセラハイブリッド(4ドアセダン)
【2.0リッター直4+モーター】 237万3000円~ ※今回の試乗車
システム最高出力136ps
JC08モード燃費30.8km/L
パッケージング&スタイル
小さなボディでアテンザのカッコ良さを再現
![]()
ボディカラーは全8色。写真は特別塗装色のスノーフレイクホワイトパールマイカ
今回試乗したのはハイブリッドで、ボディは自動的に4ドアセダン。CX-5やアテンザに続く「魂動デザイン」の第3弾ということで、スタイリングは一見「ミニアテンザ」風。ただしボディサイズが違うだけに、全体に伸びやかなアテンザに対して、アクセラでは凝縮感が追求されている。実際には、アテンザより小さいとは言え、セダンだとBMWの3シリーズに迫る大きさなのだが。
セダンとハッチバックでリアドアを共通化
![]()
ホイールの意匠までガソリン車と同じなので、リアのバッジを見ないとハイブリッドだと分からない
また、単なる偶然だろうが、2700mmのホイールベースやハッチバックの全長は、現行プリウスと全く同じ。ハッチバックでもハイブリッドが選べたら、プリウスやCT200hとモロに競合しそう。
面白いのは、フロントドアだけでなく、リアドア(サイドウインドウも含む)も、セダンとハッチバックで共通であること。こういうケースは極めて珍しいが、開発していく過程で、一緒でいいじゃん、ということになったようだ。確かに。
![]()
アクセラセダン。Cd値は0.26
(photo:Mazda)
![]()
アクセラスポーツ。Cd値は0.28
(photo:Mazda)
![]()
アクセラスポーツ。
(photo:Mazda)
インテリア&ラゲッジスペース
内装もクーペのようにスポーティ
![]()
7インチディスプレイや一眼メーターを中心に、シンプルかつスポーティ、そして機能的にデザインされたインパネ
インテリアもマツダらしくスポーティ。ダッシュボードのカウルが低く、Aピラーが手前に立ち、しかもフロントドアのウエストラインが古典的なスポーツカーように抉られているので、まるでFRのスポーツセダンやクーペのような印象を受ける。
また、ここ数年、マツダ車に乗るたびに言っているが、質感もずいぶん高くなったが、このあたりは海外でVWのゴルフ7とまともに戦うクルマである以上、半ば必然か。実際のところ、全体のクオリティレベルは欧州車風。
![]()
試乗車は電動レザーシート(シートヒーター付)を装備する「Lパッケージ」付。オフホワイトも選べるが、これはブラック
初代ロードスターの開発時に初めて使われたキーワード「人馬一体」を目指したというドライビングポジションは、確かにいい。前輪を50mm前方に配置することで自然なペダルレイアウトを実現したほか、先代よりAピラーを100mm後退させて優れた視界を確保したとのこと。座り心地も秀逸で、ドラポジ自由度も高い。ここも欧州車レベル。
OSレベルからアップデートできる「マツダコネクト」
![]()
視線移動の少なさ、アイコンやフォントの視認性にこだわった7インチディスプレイは、15Cを除いて標準装備
新型アクセラで初めて採用されたのが、マツダ独自のITインターフェイス「マツダ コネクト(MAZDA CONNECT)」。これはマツダの「Heads-Up Cockpit(ヘッズアップ コックピット)」、つまり顔をちゃんと前に上げて、わき見をせずに運転する、というコンセプトに沿ったインターフェイスだ。
具体的には、ダッシュ中央の7インチディスプレイをほぼ全車標準化し、ナビゲーションなどの各種操作をセンターコンソールのコマンダーコントロールで可能にしたもの。要はBMWのiDriveやアウディのMMIのマツダ版。操作感は双方の最新バージョンのいいとこ取りをして、さらに日本人にも馴染みやすいように改良したという感じ。
![]()
コマンダーコントロールの操作は、少し慣れが必要な部分もあるが、おおむね良好
また、時流に遅れず、スマートフォンとブルートゥースで連携させ、インターネット経由で利用できる各種サービスもそれなりに充実。高級オーディオ大手の米国ハーマン社が運営するWebコンテンツ「Aha」を使えば、世界中4万局以上のインターネットラジオ局にアクセスできるほか、Twitterの新着ツイートやFacebookのニュースフィードの音声読み上げ、Facebookの「いいね!」や音声メッセージ投稿機能なども利用できる。
![]()
「アクティブ・ドライビング・ディスプレイ」と呼ばれるヘッドアップディスプレイ。車速の他、ナビの誘導矢印、緊急性の高い警告などを表示
また、ナビゲーションシステムは、販売店オプションのナビゲーション用SDカード(3万5000円)をセットして利用する。地図自体は海外で開発された独特のものだが、年1回、3年まで無料更新可能とのこと。
ナビを含めて、マツダ コネクトは「古くならないシステム」を目指し、スマートフォンやインターネットの各種サービスやシステムの進化に合わせて、OSレベルからアップデートできる仕組みとのこと。ここに来て、車載ITは次のフェイズに入った、と思わせる。
![]()
ハイブリッドのトランク容量は312L。ちなみにガソリン車のセダンは419L、スポーツは364L(4WDは362L)
![]()
ハイブリッドは駆動用バッテリーを搭載するため、トランクスルーはできない(ガソリン車は可能)。床下はパンク修理キットと小物入れ
![]()
後席は、スペース、座り心地、着座姿勢、乗降性など、全ての点で不満なし。ゴルフと十分に戦える
基本性能&ドライブフィール
動力性能はプリウスとほぼ互角
![]()
ハイブリッドシステムはプリウスと同じだが、エンジンはマツダ自製。エンジンベイに収まるため、給排気系や補機類も再設計されている
今回はマツダ初のハイブリッド車のお手並み拝見、ということで、アクセラハイブリッドに試乗。
前述の通り、ハイブリッドシステムの動力分割機構、モーター(82ps、21.1kgm)、バッテリー(ニッケル水素)といったハード部分は、トヨタから供与されたもので、具体的には現行プリウスやレクサス CT200hとギア比も含めて同じ。スロットルペダルも、アクセラの純エンジン車ではオルガン式なのに対して、ハイブリッド車にはスロットルセンサーごと、プリウスと同じ吊り下げ式に変更されている。ただ、ペダルレイアウトに関してはマツダ流にかなりチューニングしたようで、特に気になるところはない。
![]()
ハイブリッド用に改良されたマツダ製2リッター直4ガソリンエンジン。直噴システムや吸排気VVTを備えた贅沢なユニット
(photo:Mazda)
一方で、エンジンはプリウスやCT200hだと1.8リッター直4だが、アクセラにはマツダ自製の2リッター直4・直噴ユニットをハイブリッド用に改良して採用。最高出力を純エンジン車の155psから、プリウスやCT200hと同じ99psに、最大トルクを同じく20.0kgmから14.5kgmにデチューンしているのは、余分な開発工程を省き、トヨタのハイブリッドシステムと問題なくマッチングさせるためだという。とはいえ、ここに自製エンジンを使うところが、「スカイアクティブ」を提唱しているマツダの意地か。
![]()
スカイアクティブ-ハイブリッドシステム
(photo:Mazda)
プリウスに似た電制シフトセレクターをDに入れて走りだせば、やはりプリウスに似た感覚で、するすると力強く走りだす。アクセルを深く踏み込めば、いつの間にかエンジンが掛かってブォーンと加速するところも、おおむね同じ。システム出力はプリウスと同じ136psで、車重もほぼ同じ1390kgだから、まあ当たり前か。
ただ、プリウスより排気量が200cc多い分、エンジンが掛かってからの力強さは若干上かも。また、加速感を自然にするなど、マツダ独自のチューニングは入念に行われたらしい。とはいえ、3代目プリウスと直接比べなければ、感覚的にはほぼ互角と思える。
あ、この瞬間がマツダらしい
![]()
ハイブリッドのシフトセレクターはプリウスに似た電子制御式。パーキングはボタン操作
しかし、100メートルも走らないうちに、パワートレインの印象より先に意識が行ったのは、ガシッと座りのいい電動パワステや、やはりガシッととしながらも、同時にしなやかな足回りから来る感覚。ちょっと走るだけでそんなこと分かるのか、と思うかもしれないが、パワートレインの印象が似ているだけに、かえって違う部分が目立つ。あ、この瞬間がマツダだね、という感じ。
ワインディングへ行くと、この差はもっと顕著。簡単に言って、プリウスは基本的にドライバーの意志で積極的に曲げにくいクルマだが、アクセラハイブリッドは他のマツダ車同様、最初はびっくりするくらい、よく曲がる(特にプリウスを基準にすると)。
![]()
ハイブリッドのタイヤは全車205/60R16で(1.5ガソリン車と同サイズ)、試乗車はBSのエコピア。グリップはまあ十分だが、17インチ仕様も欲しいところ
もっとも、マツダに言わせれば、新型アクセラでは、自然なコーナリングを実現するため、旋回初期にドライバーの予測以上にヨーが発生しないように「ため」を作った、とのこと。ただ、それはあくまで従来マツダ車を基準とした話だろう。
あと、回生協調ブレーキの制動フィールもすごく自然。プリウスなどトヨタのハイブリッド車だと「あ、回生してるな」と意識するのだが、アクセラハイブリッドは試乗中にほとんどまったく意識しなかった。このあたりのチューニングも、操作フィールにこだわるマツダらしいところ。
ハンドリングがいいだけに
一方で気になったのは、プリウス同様、アクセルを離しても、ほとんどエンブレが効かないこと。エンブレが効くはずの「B」レンジでも思ったほど強く作用しないので、ブレーキを上手に使わないとコーナー進入時に前輪に荷重を載せることが難しい。この点はプリウスだと諦めもつくが、アクセラの場合はハンドリングが良いだけに、ドライバーが純エンジン車と乗り方を変えないと、おっとっと、となる。
また、このシャシーにして、パドルシフトはおろか、スポーツモードがないのも惜しい。もちろん、意図的にプッシュせず、ちょっと速いペースで走るくらいなら、何の不満もなく走れるのだが。
逆に好印象だったのは、シャシー性能の高さ。これは、最大トルク42.8kgmのディーゼルターボ車もある新型アクセラならではの余力か。ボディのガッシリ感、しなやかに動くサスペンション、ロードノイズや風切り音の小ささなど、一クラス上の余裕が感じられる。
試乗燃費は14.8~25.4km/L。JC08モード燃費は30.8km/L
今回はトータルで約200kmを試乗。参考までに試乗燃費(車載燃費計)は、いつもの一般道、高速道路、ワインディングを走った区間(約90km)が14.8km/L。一般道で、無駄な加速を控えて走った区間(約30kmを3回計測)が22.5km/L、23.3km/L、25.4km/Lだった。
ハイブリッドの場合、JC08モード燃費は全車30.8km/Lで、これはプリウス(エントリーグレードのLは32.6km/Lだが、主力は30.4km/L)と互角。燃料タンク容量もプリウスと同じ45リッターだから(純エンジン車は51リッター)、航続距離もだいたい同じだろう。
ここがイイ
シャシー、スタイリング、マツダ コネクトの可能性
気持ちのいいハンドリングと乗り心地の良さを両立した足回り。このクラスのセダンでは珍しくズングリ感のないスタイリング。快適性の高さ。プリウス同様、燃費の良さ。また、正直なところ、ガソリン車ならどうかと試乗したくなったし、来年発売のディーゼルもそうとう楽しみ。
OSからアップデートが可能だというマツダ コネクトの先見性と可能性。
ここがダメ
スポーツモードが欲しかった。ハイブリッドの場合、先進安全装備の未設定
メリハリのある運転スタイルと相性がいいシャシーと、メリハリのないトヨタのハイブリッドシステムとが、いまいちマッチしていないこと。スポーティに走ろうとした場合、シャシーはマツダらしく応えてくれるが、パワートレインはやはり大ざっぱに言えばプリウス的。せめてCT200hみたいに、スポーツモードやパドルシフトが欲しかった。
今のところ、今回試乗したアクセラハイブリッドに関しては、低速(4~30km/h)での衝突回避・被害軽減を行うスマート・シティ・ブレーキ・サポート(SCBS)&AT誤発進抑制制御、もしくはミリ波レーダーを使ったスマート・ブレーキ・サポート(SBS)&マツダ・レーダー・クルーズ・コントロール(MRCC)の設定がないこと。これらは「スポーツ」の上位グレードには標準装備になる。
総合評価
この方法をどんどん真似ればいい
トヨタのハイブリッドシステムが、他メーカーのクルマに載るのは、国内では初めてのはず(海外では日産、フォードの例がある)。これから自社でハイブリッドシステムを一から開発するなんてのはムダなことだから、こういことは他社でもどんどんやればいい。10年後にパワートレインの主力がどうなっているかなんて分からないのだし。燃費にこだわるユーザーをハイブリッド車で満足させ、その傍らで、走らせて楽しいクルマを欲するユーザーを重視していくことが、ひとつの生きる道のはず。マツダはそれを選び、その結果が今回の試乗車ということになる。
車両価格がガソリン車より高く、8万kmくらい走らないと元が引けないというハイブリッド車だが、カタログ値や燃費競争、流行、税制などに煽られて動く日本のマーケットをかんがみると、作らなければ致し方なしということ。新型アクセラの立ち上がり一ヶ月の受注台数は約1万6000台だが(目標は月販3000台)、ガソリン車66%、ディーゼル車15%、ハイブリッド車19%と、ハイブリッドばっかりになっていないのはマツダファンの心意気を見た感じだ。また、ハイブリッド比率を今後も約20%とすると、月販わずか600台のために新たにハイブリッドを開発するわけにはいかないから、やはり今回の選択は正解だった。こうなれば独自のハイブリッドを持たない他社も、この方法をどんどん真似ればいいと思う。
で、このクルマ、パワートレインはエンジン以外、プリウスとほぼ同じだが、マツダらしいスポーティ感を実現しているあたりは立派なもの。乗って楽しいハイブリッド車、軽快感があるハイブリッド車が欲しいなら、このアクセラはおすすめだ。
ところでこのアクセラ、じっと見るとなかなかいいスタイリングで、サイズもそこそあるのだが、路上では意外に小さなクルマに見えてしまう。その昔、丸い(曲線の)クルマと四角いクルマ論争があったと思うが、丸いクルマは小さく見えがちで、分が悪かった。ゴルフ7など、妙に四角くて、存在感がある。おそらくアクセラは海外の路上では映えるクルマだが、こと日本市場ではもうちょっと造形に主張があってもよかったと思う。
マツダ コネクトは今後に期待
高評価したいのがマツダコネクト。これもまた海外市場で他メーカーと張り合えるよう、海外メーカーと似たような仕組みを用意し、それをそのまま日本に持ち込んだというものだろう。タッチパネルではない操作系はロジカルであり、日本のカーナビのようなアバウトさはない。スマホが一般化したように、やがてカーナビはこういうものへ集約していくのかもしれない。
ただ、率直に言って現時点での使い勝手は今ひとつだ。特に気になったのが地図。デザインとして外国人がロジカルに日本地図を再現したようで違和感があり、コンビニなどのタウン情報が少ないのも不便。情報豊かなGoogle Mapを表示したくなってしまうが、それはできない。また、運転席正面のヘッドアップディスプレイも必要性を感じなかった。日本では流行らない装備だ。ネットラジオも普段聴いている放送が聴きたいだけなのだが……。それでもこれを評価するのは、今後の可能性の部分。改良がすすめられ、その恩恵を既存ユーザーも受けられるというのは、全く新しいこと。今後に期待したい。
海外向けを日本向けに仕様変更
アクセラに乗ってみると、アクセラそのものは日本向けではなく、海外に向けて作られているということがつくづく実感された。海外で現地のクルマに対抗できるまでに仕立てられたクルマゆえ、日本ではまるで輸入車のようだ。家電でもそうだが、海外向けを日本向けに仕様変更した、という商品が増えているが、クルマもそうなってきたということだろう。その仕様変更の最たるものが、アクセラの場合は国内専用となるハイブリッドと言えるかもしれない。
逆に、欧州車を好むようなクルマ好きからすれば、アクセラの魅力はガソリン車、そしてディーゼル車にあるように感じられる。ただ、世の中はクルマ好きで成り立っているわけではないので、ハイブリッド車も必要であり、そこは日本市場に強いトヨタの力を借りて実現させたマツダ。中小メーカーはこうじゃなくちゃ、とそのしたたかさに拍手を送りたい。
今年はスバルがトヨタと協業して86/BRZを出し、日産・三菱はデイズとekワゴンで、そしてマツダもハイブリッド限定だが、こうしてトヨタと組んだ。完全独立独歩でやる日本のメーカーは、いよいよホンダくらいか(スズキも?)。やがてくる再編の激動期に向け、いよいよ一歩踏み出したというのが今年のような気がする。やがてクルマがロボットになった時、果たして日本のメーカーはどれだけ生き残っているのだろうか。