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レクサス IS300h “Fスポーツ”:新車試乗記

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キャラクター&開発コンセプト

8年ぶりのモデルチェンジ

今回試乗したのはハイブリッドのIS300h
レクサスのコンパクトFRスポーツセダン、ISは日本国内ではトヨタ アルテッツァとして1998年にデビュー。2代目は国内でもレクサス ISを名乗り、2005年に発売された。 8年ぶりのフルモデルチェンジとなった新型は(グローバルでは)3代目で、国内では2013年5月16日に発売された。プラットフォームを一新し、レーザー溶接や接着などの新工法を使った高剛性ボディを採用。また、スピンドルグリルを中心としたダイナミックなフロントデザインも大きな特徴になっている。トヨタによれば、新型ISはスピンドルグリルが付くようになった新世代レクサスの集大成とのこと。

IS初のハイブリッドが登場

ISシリーズでは初となるハイブリッドモデル「IS300h」もついに登場した。ハイブリッドシステム自体は現行クラウン ハイブリッド(2012年12月発売)と主要諸元を含めて同じで、2.5リッター直4(2AR-FSE型、178ps)、モーター(143ps)、ニッケル水素電池などで構成される。システム出力やJC08モード燃費もクラウンと共通で、それぞれ220ps、23.2km/L。 販売はレクサス店で、月販目標台数は800台(ちなみに先代ISデビュー時の目標は1800台)。発売から一ヶ月後までの受注台数は、目標の10倍近い約7600台で、内訳はガソリン車が約2100台、ハイブリッド車が約5500台と、ハイブリッドが約7割を占める。 ■過去の新車試乗記トヨタ クラウン ハイブリッド アスリート (2013年4月更新)レクサス IS250C (2009年6月更新)レクサス IS F (2008年3月更新)レクサス IS350 (2005年10月更新)

価格帯&グレード展開

ハイブリッドが480万円~。ガソリン車との実質的な価格差は小さい

ボディカラーは全10色。試乗車はFスポーツ専用のホワイトノーヴァガラスフレーク
パワートレインは、ハイブリッド(220ps ※システム出力)、2.5リッターV6(4GR-FSE型、215ps・26.5kgm)・6AT、3.5リッターV6(2GR-FSE型、318ps・38.7kgm)・8ATの3種類を用意。V6モデルがハイオク仕様になるなど、現行クラウンと仕様が異なる部分もあるが、基本的には同じものになる。それぞれに標準グレード、本革シート等で上質感を高めた「バージョンL」、スポーティな「Fスポーツ」が用意される。 価格は以下の通りで、ハイブリッドは250に比べて60万円ほど高いが、LEDヘッドライトは全車標準になるし、しかもエコカー減税100%対象車でもあるので(250や350は対象外)、2.5との実質的な価格差は20万円程度に過ぎない。しかもJC08モード燃費は250(FR)の11.6km/Lに対して2倍の23.2km/Lだし、指定燃料はハイオクに対してレギュラー。だいたい2万km以上走ると、元がとれる計算になる。
 
ハイブリッドはLEDヘッドライトを標準装備する
価格表を見ると気付くのは、同クラスの輸入車に比べてメーカーオプションが安いこと。その中で必須なのがミリ波レーダーによるプリクラッシュセーフティシステムとレーダークルーズコントロール(セットで6万3000円)。 ■「IS250」  2.5リッターV6(215ps)+6AT      420万-550万円(FR/4WD) ■「IS300h」  2.5リッター直4+モーター(220ps ※)  480万-538万円(FR) ※今回の試乗車 ■「IS350」  3.5リッターV6(318ps)+8AT      520万-595万円(FR)
 

パッケージング&スタイル

カッコよさも正常進化

ボンネットを低くするため、クラウン同様にポップアップフードを採用
カッコよさでは国内外で定評のあった先代IS。ゆえに新型のデザインはそうとう難しかったはずで、モデルチェンジが遅くなったのはそのせいかも。そんな風に期待値が高かった新型ISだが、フロントデザインは成功と言っていいだろう。まず、クラウンと全幅が同等とは思えないほど、前から見た時のロー&ワイド感が強い。また、フロントバンパーの形状もスーパースポーツみたいにアグレッシブで、スピンドルグリルとの相性も良好。ヘッドライトの造形も凝っている。

ライバル車がコンサバに見えてくる

リアホイールアーチにはフェンダーの端を折り返す「ヘミング工法」を使い、タイヤの張り出し感を高めている
一方、切れ長のリアコンビランプが目を引くリアデザインは、好みが分かれるところ。ボディサイドのロッカーパネル(サイドシルのあたり)から跳ね上がっていくキャラクターラインも独特で、このクラスのセダンとしてはずいぶん思い切っている。ただし、ライバルの3シリーズやCクラスがコンサバに見えてくるとしたら、それは成功ということか。 ボディサイズはこのクラスのど真ん中で、3シリーズとほぼ同等。全長は現行クラウンより20センチ強短く、ホイールベースは5センチ短い。特にリアオーバーハングの短さが印象的。
 
ドアミラー付け根やリアコンビランプには直進安定性に寄与する「エアロスタビライジングフィン」を採用。Cd値(IS300hの場合)は0.26とのこと
 
    全長(mm) 全幅(mm) 全高(mm) WB(mm) 最小回転
半径(m)
メルセデス・ベンツ Cクラス(2013) 4595-4640 1770-1780 1430-1445 2760 5.1
BMW アクティブハイブリッド 3 4625 1800 1440 2810 5.4
レクサス IS(2013-) 4665 1810 1430-1460 2800 5.2
レクサス HS250h(2013-) 4710 1785 1495 2700 5.6
レクサス GS (2012-) 4850 1840 1455 2850 5.1~5.3
マツダ アテンザ セダン(2012-) 4860 1840 1450 2830 5.6
トヨタ クラウン ハイブリッド(2012-) 4895 1800 1450-1460 2850 5.2
ホンダ アコード ハイブリッド 4915 1850 1465 2775 5.7
 

インテリア&ラゲッジスペース

インパネまわりも個性的

内装カラーはブラック、ブラウンなど計5色。素材はファブリック、セミアニリン本革、写真のFスポーツ専用本革など3種類。トリムはウッド、竹、メタルなど数種類を用意
インパネデザインも先代とはまったく異なる。棚のような形状のダッシュやトリムが水平に走り、そこへ前後方向にまっすぐ走るセンターコンソールやドアトリムが交差するもので、曲線を多用するデザインとは趣がかなり異なる。一方で、ほどほどにタイトな空間は、初代IS(アルテッツァ)から一貫してあるFRスポーツセダンらしさを感じさせる。エクステリア同様、インテリアデザインにも強い個性やオリジナリティが感じられる。

LFA譲りの可動式メーターを採用

標準グレードやバージョンLのメーターはアナログの2眼タイプ(ハイブリッド車は回転計とハイブリッドシステムインジケーターとの切替式)だが、FスポーツにはLFAの意匠を受け継ぐ可動式メーターを採用。これは中央のリング内に液晶ディスプレイによるバーチャル回転計(切り替えるとハイブリッドシステムインジケーターにもなる)を配し、その中央をデジタル速度計としたもの。
 
ステアリングスイッチを押すと、リングが右に移動し、同時に液晶の表示も変わる
面白いのは、ボタンを押すとそのリングがモーター駆動で右側に「シャコッ」と数センチスライドし、空いたスペースに各種情報が表示できる点。一見、リングは内の液晶ディスプレイごとスライドし、もう一枚の液晶ディスプレイが現れるように見えるが、実のところそれは錯覚。実際には液晶ディスプレイは一つで、「リアル」に動いているのはリングだけだ……というようなことは知らないほうが楽しめるかも。
 
エアコンも温度調整スイッチは、指先でタッチして操作する静電式。SDナビ+7インチモニター、通信サービスのG-Link(3年間無料)、リモートタッチは全車標準
7インチモニターには燃費情報やエネルギーモニターも表示可能
試乗車はオプションのレザースポーツシート(ベンチレーション機能付)で、色はFスポーツ専用のダークローズ。硬めの表皮がスポーティ
 
ハイブリッドの荷室容量はガソリン車より30L少ないだけの450リッターで、しかも6:4分割でトランクスルーできる。ちなみにクラウンハイブリッドは405L+床下45Lで、トランクスルー不可
ハイブリッドの床下には駆動用バッテリーがあり、収納スペースは浅い。左の壁に補機類用の鉛バッテリー、パンク修理キット(スペアタイヤのないハイブリッドに標準装備)、ジャッキが収まる
ヘッドルームは相変わらずギリギリだが、先代ISの泣きどころだった後席フットルームの狭さは解消。前席の下につま先がしっかり入るようになった
 

基本性能&ドライブフィール

いつものトヨタ製ハイブリッド車の世界

試乗したのはハイブリッドの300h Fスポーツ。車両価格は538万円だが、試乗車はオプションのFスポーツ専用本皮シート(37万8000円)や、レクサス御用達であるマークレビンソンのオーディオシステム(23万4150円)などを装備し、616万円。 モーターの力で力強く、スムーズに走りだすのは、いつものトヨタ製ハイブリッド車でなじみのあるもの。当然ながら、同じパワートレインの現行クラウンハイブリッドに近く、また、FF、FRといった駆動方式の違いを除けば、レクサスのCTやHS、あるいはトヨタのプリウスやSAIといった直4エンジンのハイブリッド車にも通じるものがある。つまり、それらと決定的に大きな差はない。静かで、スムーズで、アクセルを踏み込めばエンジンがブーンと唸りだしてエンジン主体で加速。アクセルを緩めれば、積極的にEV走行に戻り、燃費を稼ぐ、、といった感じ。このあたりの滑らかさ、ソツの無さは、トヨタのハイブリッド車に共通するもので、いつもながら感心する。
 
アクセルをグイと踏んだ直後のレスポンスは、スポーツモードなら悪くない。モーターのトルクがガツンと出て(モーターだけで30.6kgmもある)、さらにエンジンのパワーも加わって、おそらくは吸気系からと思われる「コオォォォォォン」というサウンドと共に、ハイブリッドならではの力強い加速が始まる。 一方で、クラウン ハイブリッド同様、そこから上のパワー感については、物足りなさが否めないところ。マニュアルモードで上限まで回しても、パワーそのものが盛り上がらない上、エンジン音も変わることはなく、絶頂感が訪れない。システム出力は220psと、IS250の215psより少し上だが、こうなると実際のフィーリングはどうなのかと、ちょっと乗り比べしたくなる。

独特の乗り心地が印象的なFスポーツ

一方で、うーん、これはいい、と素直に思うのが、滑らかな乗り心地。クラウン ハイブリッドもこんなに滑らかだったかなぁ?と記憶を探ってしまうほど、独特の滑らかさがある。Fスポーツの場合は、ナビ情報や各種センサーと連携する電子制御ダンパー(AI-AVS)付スポーツサスペンションを標準装備するが、これまでのトヨタ車にあった電制ダンパー付サスペンションより動きが自然。少なくともFスポーツの足には、数百メートル走るだけでオオッと思わせるものがある。
 
「ドライブモードセレクト」は上からプッシュすれば「ノーマル」、左に回せば「エコ」、右に回せばスポーツおよびスポーツ+(プラス)
もちろん、乗り心地には高剛性ボディも効いているはず。プラットフォームは現行GSベースで(もちろんショートホイールベース化)、トヨタ独自のレーザー溶接(レーザースクリューウェルディング)や構造用接着剤を積極的に使ったもの。ただ、新型ISの場合は、それが欧州車のようにガッシリ重厚といった方向ではなく、徹底した滑らかという形で伝わってくる。所属するクラスも感触も違うが、何となく新型ゴルフの乗り味に近いものも感じた。
 
Fスポーツのタイヤは前後18インチで、リアの方が太い。銘柄はBSのトランザ
Fスポーツの足回りは、飛ばした時もすごくいい。一世代前のレクサス(というかトヨタ)のFRモデルには、電動パワーステアリングに何となくバーチャルな感じがあったが、少なくとも今回試乗したISの場合は霧が晴れたようにリニア。飛ばした時もいい感じで踏ん張り、路面状況も伝えてくれる。また、Fスポーツのタイヤは、フロントが225/40R18、リアが255/35R18サイズのBS トランザ ER33になるが、そんな超偏平タイヤであることを忘れてしまうほど、乗り味はマイルドで、穏やか。グリップも十分にある。 ちなみにハイブリッドの車重は1670kgで、前後重量配分は車検証数値で、ほぼ50:50(840kg:830kg)。これに対して、前回試乗したクラウン ハイブリッドは、車重は1690kgでほぼ同じだが、重量配分は52:48(880kg:810kg)と少しフロントヘビーになる。IS300hのこうした重量バランスの良さは、確かに実感できる気がする。
 
    エンジン
最大出力(ps)
エンジン
最大トルク(kgm)
モーター
最大出力(ps)
モーター
最大トルク(kgm)
システム
出力(ps)
車重
(kg)
JC08
モード
燃費
(km/L)
3代目トヨタ
プリウス(2009-)
99 14.5 82 21.1 136 1350 30.4~32.6
レクサス
HS250h(2013-)
150 19.1 143 27.5 190 1640 20.6
トヨタ カムリ
ハイブリッド(2011-)
160 21.7 143 27.5 205 1540~1550 23.4
トヨタ クラウン
ハイブリッド(2012-)
178 22.5 143 30.6 220 1630~1680 23.2
レクサス IS300h 178 22.5 143 30.6 220 1670 23.2
レクサス
GS450h
(2012-)
295 36.3 200 28.0 348 1820~1860 18.2
 

試乗燃費は10.5~20.0km/L。JC08モード燃費はクラウンHVと同じ23.2km/L

IS300hの指定燃料は、クラウン ハイブリッドと同じレギュラー仕様
今回はトータルで約650kmを試乗。参考までに今回の試乗燃費(車載燃費計)は、いつもの一般道、高速道路、ワインディングを走った区間(約90km)が10.5km/Lだった。また、以下はエコモードで、一般道をあまり燃費を気にせず走った区間(約60km)が12.0km/L。名古屋から大阪まで普通に足として使った区間(往復で約400km)が17.2km/L。一般道を注意を払ってエコ運転した区間(約60km)が20.0km/L。撮影のための移動も含めてトータルでの燃費は、満タン法で約13km/Lだった。 JC08モード燃費は前述の通り、クラウンハイブリッドと同じ23.2km/L。なお、そのクラウン ハイブリッドに半年ほど前に乗った時の試乗燃費は12.4~19.6km/L。どちらもエコモードで普通に走れば13~17km/Lくらいに収まると思う。タンク容量はガソリン車と同じ66リッターだから、航続距離1000km超えは普通にありえる。
 

ここがイイ

スタイリング、ハイブリッドの燃費性能、シートおよびシートベルト、リモートタッチ

カッコよくて、なおかつチャレンジングなスタイリング。このあたり、国内ではクラウンとの住み分けがうまくいきそうだし、海外では存在感のアピールにつながるはず。最近、欧州の高級車メーカーはフロントグリルを控えめにするなど、全体に大人しいデザインを採用する方向にあるが、新型ISを見て逆に「やられた」と思うかもしれない。今後の評価を待ちたいところ。 抜群の燃費、滑らかな乗り心地、そしてコンパクトなボディサイズ、取り回しの良さ。これらは本文で書いたとおり。 まるでつけていないかのようなシートベルト。体が拘束された感がまったくない。また、Fスポーツのスポーツシートはフィット感が優れる割に、窮屈さがなく、街乗り、スポーツ走行のどちらにも大きな不満がない。 リモートタッチ。現在、こうした遠隔操作系のインターフェイスはだんだん劣勢に追い込まれているが、タッチパネルはクルマには向かないと信じる。

ここがダメ

制動力の微妙な変化。操作性こまごま。視認性の低いアナログ時計

強めにブレーキングした時にかすかに生じる、制動力の微妙な変化。ブレーキはトヨタのハイブリッド車ではおなじみの協調回生を行う電子制御式だが、効きは不満なく、通常時のタッチも問題ない。ただ、ちょっと強め(0.4~0.7Gくらい?)にブレーキングしながら減速してゆく時に、制動力が途中で微妙に変化するのが気になった。 細かいところの操作性。まず、ウインカーレバーは電子制御式だが、ウインカーを少しだけ出したい時の力加減や操作感が微妙だったり、出したウインカーを止める時の操作方法がBMWなど欧州車とは違っていて、使いにくかった。それにタッチ式の空調温度設定も、慣れればそうでもないが、やはり最初のうちはやりにくい。オートワイパーの間欠モードも思ったようにワイパーが作動してくれなくて困った。
 
それからナビの目的地設定がうまくできなかったり、リモートタッチ(これ自体は素晴らしい)でも走行中の目的地設定は出来ない。ならばと試したボイスコントロールも音声認識がぜんぜんダメで、うまく動かないなど、細かい部分の操作性でストレスが多い。 このハイテク車にあって、アナログ時計を採用した心意気は買いたいが、残念なことに光の当たり具合によって針がとても見にくくなる。時計は走行中によく見る計器だから、視認性にもっと配慮して欲しい。

総合評価

小さな高級車というニーズ

コンパクトなセダンあるいはワゴンが欲しい。それも上質の。しかし上質なクルマ、あるいは高級車はデカいものという常識が、いつになってもなかなか覆らないままだ。モデルチェンジのたびにどんどんサイズアップするクルマが多く、全幅1800mm程度でも上質感を味わえるクルマは本当に少ない。 小さな、あるいは小さめの高級車、そんなニーズは今もかなりあるはずだ。しかし日本車において小さな高級車は、これまでことごとく失敗してきた。それはブランド力がなかったからだ。小さな高級車を目指すには、人が見て納得できるブランドの力が必要になる。そんな中、今回のレクサス ISには大いに期待した。4665mmの全長、1810mmの全幅なら日々乗り回すのも難しくないし、日本の狭い駐車スペースでも、あるいはタワーパーキングでも比較的気軽に駐める事ができる。実際、数100kmを試乗して、その使いやすさは確かに実感できた。 ISはインテリアも上質だ。LFAがモチーフというインパネデザインは、もう少しスッキリさせたい気もするが、奇をてらっていないのは好感が持てる。試乗車はFスポーツだったこともあって、シートも素晴らしい。オプションのレザーシートだが、ベンチレーション機能付きで体に触れる部分からは冷気が噴きだすから、夏場でも苦にならない。ファンをフルで回せばおしりが寒いくらい。その場合、ファンノイズが気になるが、それだけ静粛性が高いということでもある。かなりの高速域でも静粛性に不満はなかった。
 
Fスポーツの場合、タイヤは見るからに超偏平タイプだが、専用サスペンションによる乗り心地は素晴らしく、快適そのもの。それでいてワインディングでは相当にスポーティな足でもある。トヨタ車では初めて味わうものと言ってもいい、柔と剛を両立した、しなやかな足は、誰もが評価するだろう。後席も先代よりぐっと広くなったから、十分ゲストを迎えられるはず。背もたれの角度もちょうどよく、くつろげる後席だった。 そんなクルマが、そうとう飛ばした試乗でも二桁の燃費を維持し、高速道路ではプリウス並みの燃費で、しかもレギュラーガソリンで走る。加えて、長距離移動が本当に全くの疲れ知らずだったことも付記しておきたい。480万円からスタートするハイブリッドの価格は安くはないが、これなら購入契約書にサインしてもいいと思わせる。

次は官能的なハイブリッドユニットを

いや、本当にサインする前に、今ひとつのわだかまりがある。それはこの直4エンジンを使ったハイブリッドユニットに、一般的な高級車が持つ官能性がないことだ。基本的にはプリウスに似たエンジンフィールで、いかにも事務的に走る。欧州仕様でも最高速度は200km/h程度らしいが、圧倒的な動力性能も高級車では重要な要素のはず。ワインディングでも遅くはないが、特に気持ちいいわけではない。 シャシー性能が相当に高まっているだけに、動力ユニットのいかにも経済優先というフィーリングがどうしても納得出来ない。ムダな性能があってこそ高級車。ムダに官能的だからこそ、高いお金を出して高級車を買うわけだが、経済性(それは環境性能でもある)が重視されたこのクルマには、そういったムダが極めて少ない。ムダがないから、なんだか面白みがないのだ。その点、まだ乗っていないが、ある意味全くムダな3.5リッターV6のIS350なら、印象は大きく異なるはず。たぶんこれこそが求めていた小さな高級車だ、となるような気がする。とはいえ燃費を考えるとハイブリッドがあるだけに、悩んでしまう。まあ、悩むように人は高級車を買ってはいけないのだろう。 エコを考えたら高級車など必要ない。しかし人は高級車を欲するわけで、高級車をエコにすることは確かに大きな課題だ。それに果敢に挑んでいるのがこのクルマと考えると、強く支持したいところだが、どうしても官能的な高級車像とはかけ離れてしまう。トヨタが今後もハイブリッドを売りにしていくのなら、次はガソリン車とは異なる官能的なハイブリッドユニットをつくり上げるしかないだろう。それはハイブリッドユニットに、乗る人の心を揺さぶる何かを与えるということだ。それができれば世界一の、唯我独尊の高級車が完成するだろう。
 
今回のIS300hは残念ながらまだそこまでいっていない。それでも現実には7割の人がハイブリッドを選んでいるわけで、それはエコのためというより、エコカー減税やらガソリン税やら、税制に大きな差があることが大きいだろう。取得税はゼロです、ガソリン代(ガソリン税)は半分です、下取りだっていいですと言われれば、やっぱりハイブリッドを買ってしまう。高級車なのにクルマをどう評価するかより、税額の大小と言うか、損得が優っているように見える今の状況は、どう考えても変だと思うのだが。

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