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ルノー メガーヌ エステート GT 220:新車試乗記

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キャラクター&開発コンセプト

ルノースポールが手がけたスポーツワゴン

今回試乗したメガーヌ エステート GT 220
ルノー メガーヌは、VW ゴルフなどをライバルとするCセグメントカー。現行モデルは3代目で、欧州では2008年から、日本では2011年から発売されている。本来は主力となるべき5ドアハッチバックもあるが、日本ではルノーのモータースポーツ部門である「ルノースポール」が手がけた高性能3ドアクーペ「メガーヌ ルノースポール(RS)」がカルトな人気を集めているのは、ご存知の通り。
 
そんなメガーヌに、昨年からステーションワゴンの「メガーヌ エステート」も加わっているが、今回試乗したのは、その高性能バージョンで2013年5月に追加された「メガーヌ エステート GT 220」。グレード名にRSの名は無いが、開発を手がけたのは他でもないルノースポールで、メガーヌ RS用2リッターターボ(265ps)のデチューン版となるエンジンは、その名の通り220psを発揮する。また、トランスミッションは6MTで、足回りも専用チューンになっている。 ■過去の新車試乗記ルノー メガーヌ RS (2012年10月更新)

価格帯&グレード展開

人や荷物も運べて、RSより66万円安い

2013年8月現在、日本に導入されているメガーヌは、3ドアハッチバック(RS)、5ドアハッチバック、ステーションワゴン(エステート)の3種類。エンジンは大きく分けて、ルノー製の2リッター直4ターボ(F4R型)と日産製の2リッター直4 自然吸気(M4R型、日産のMR20DEに相当)の2種類で、前者が6MT、後者がジヤトコ製のCVT(無段変速機)になる。初期の6MT車には左ハンドルもあったが、現在は全て右ハンドル。
 
エステート自体は、スポーティな内外装をまとう「GT ライン」と、ほぼ同じ内外装で、ターボエンジンや6MT、専用サスペンション等を備えた「GT 220」の2本立て。販売主力はやはりCVTのGT ラインのようだが、一方でGT 220は、3ドアのRSより66万円も安く、MT派のファミリーカーとしては選びやすいモデルになっている。 なお、エステートのターボ・6MTモデルは、GT 220が初ではなく、日本でも2012年7月に限定60台で、左ハンドル仕様の「エステート GT」(180ps、30.6kgm)が発売されている。
 
ルノー メガーヌ RS
【3ドアハッチバック】 ■メガーヌ ルノースポール    385万円  2.0リッター直4 ターボ(265ps、36.7kgm)+6MT 【5ドアハッチバック】 ■メガーヌ ハッチバック GT ライン   268万円  2.0リッター直4 自然吸気(140ps、19.9kgm)+CVT
 
車両協力:ルノー名古屋東
【ステーションワゴン】 ■メガーヌ エステート GT ライン  278万円  2.0リッター直4 自然吸気(140ps、19.9kgm)+CVT ■メガーヌ エステート GT 220   319万円 ※今回の試乗車  2.0リッター直4 ターボ(220ps、34.7kgm)+6MT
 

パッケージング&スタイル

外装もルノースポールが手がける

5ドアハッチバックと共に、2012年末のマイナーチェンジで、LEDのポジションランプなどが採用された
現行メガーヌと言えば、RSの3ドアクーペスタイルが目に浮かぶが、エステートの外装もGT系はルノースポールが手がけているため、けっこうスポーティ。RSに比べてフェンダーの張り出しは少ないが(全幅は50mmナロー)、カワウソみたいな?ヌメッとした造形の、低くて滑らかなスタイリングは独特。RSの時も思ったが、こちらの方が胴長な分、往年のアルピーヌV6ターボっぽい。ハッチバックのデザインは少々地味だが、エステートの方は素直にカッコいいと思える。

全長はハッチバックの+240mm、WBは+60mm

ボディカラーは全5色。試乗車はノワール エトワールM(黒メタリック)
ドアミラー、ルーフバー、ホイール、リアディフューザーなどはブラックアウト。この点はCVTの「 GT ライン」も同じで、光軸を可変するディレクショナルバイキセノンヘッドランプも両者に標準装備される。GT 220ならではの特徴は、タイヤ&ホイールがGTラインの17インチ(205/50R17)に対して専用意匠の18インチ(225/40ZR18)になることくらいか。 ボディサイズ自体は、ハッチバックに比べて全長が240mmほど長いだけでなく、後席フットルームを稼ぐためだろう、ホイールベースも60mm延長されている。
 
 
    全長(mm) 全幅(mm) 全高(mm) WB(mm)
ルノー メガーヌ R.S. (2012-) 4320 1850 1435 2640
ルノー メガーヌ ハッチバック (2012-) 4325 1810 1460 2640
ルノー メガーヌ エステート (2012-) 4565 1810 1490 2700
トヨタ アベンシス (2011-) 4780 1810 1480 2700
マツダ アテンザ ワゴン (2012-) 4800 1840 1480 2750
 

インテリア&ラゲッジスペース

インパネはスポールとほぼ同じ

インテリアはカーボン調パーツを多用し、ルノースポールが開発したフロントシート、アルミ製ペダル、そしてブースト計や出力値などを表示できるR.S.モニターも装備
インパネの基本デザインは、RSと同じ。ステッチやアクセントラインの色、加飾パネルが違うくらいで、ステアリングもRSのものとほぼ同じ。ただしシートは、RSが専用レカロ製バケットシートなのに対して、GT ラインとGT 220は一般的なスポーツシートになる。ただし、このシートもルノースポールが開発したもので、なかなかの優れもの。背もたれのサイドサポートが体をしっかり支える一方、腿のあたりは緩めで、座り心地や乗降性にも優れる。 ホイールベースが60mm伸ばされた恩恵は明らかで、後席フットルームは不満なし。実用性を重視するフランス車らしく、荷室も手堅い作りになっている。エアバッグは計6個を標準装備。
 
後席はWB延長のおかげで足もとは広く、乗り降りもしやすい。アームレストはカップホルダー付
フロントのスポーツシートはGT ラインと共通。座り心地がよく、サポート性も高い
ルノー定番のカードキーは電波法の関係でそのままでは使えない。代わりに汎用のキーレスが付属
 
荷室容量は486~1516リッター。後席はダブルフォールディングで格納できる
荷室手前の床下には、ちょっとした収納スペース。ボードは垂直固定でディバイダーにもなる
スペアタイヤはテンパーではないが、装着タイヤとはサイズが異なるもの
 

基本性能&ドライブフィール

即座に再始動。もうエンストは怖くない

パーキングブレーキは電動で、スイッチはセンターコンソールにある
現行メガーヌに乗るのは昨年のRS以来。日産製エンジンとジヤトコ製CVTを積んだ「普通のメガーヌ」には乗ったことがなく、今回もまたルノー製ターボエンジンと6MTというマニアックな仕様である。 走り出す前に、スタッフの方から電動パーキングブレーキについて簡単に説明を受ける。この電動パーキングブレーキは発進すると自動的に解除されるのだが、普通にクラッチを(痛めないように)つなぐだけで発進しようとすると、解除されずにエンストしそうになる。少しアクセルを踏みながら、クラッチをつなぐのがコツ。
 
めっきり試乗することが少なくなった「3ペダル」の図。GT 220にはアルミ製プレートが付く
面白いのは、発進に失敗してエンストしても、即座にスターターが回って再始動してくれること。これは「ストップ&スタート」機能と呼ばれるアイドリングストップシステムの再始動システムを利用した便利機能だ。おかげでエンストしても、素知らぬ顔で速やかに走りだすことができる。他社のMT車にも欲しい。 一方、アイドリングストップ自体は、今回試乗したのが真夏の炎天下だったせいか、ごくたまにしかエンジンは止まらなかった。また、止まった場合は、他メーカーのものと同様にクラッチを踏み込むとスターターが回って再始動するはずだが、信号が青になる前に再始動してしまうことが多かった。

パワー感はRSのノーマルモードに近い?

名機F4Rエンジン。RS同様、冷却性に優れたナトリウム封入バルブもそのまま採用されている
RS用エンジンのデチューン版となる2リッター直4ターボエンジンは220psと34.7kgmを発揮。ただし、今どきの直噴ターボ風に低回転からドーンとトルクが立ち上がるタイプではなく、回転上昇と共にギュウィーーーンとパワーが膨れがあっていくもの。ちょっと1990年代的ではあるが、これはこれで気持ちいい。常用域のパワー感は、RSのノーマルモード(最高出力は250psに抑えられる)に割と近いかな、という感じ。 ただし、RSの場合、スポーツモードでは「ウホッ」と声が出そうなくらいパワフルなのに対して、GT 220の全開加速は、平常心で対処できるレベル。ここは265psと220psの差が正直に表れるところ(どちらも最高出力の発生回転数は5500回転)。ちなみに最大トルクはRSが360Nm (36.7kgm)/3000rpm、GT 220は340Nm(34.7kgm)/2400rpmだから、そんなに大差ない。 あと、RSのスポーツモードは、車内で聞こえる排気音が「ボボン、ボン、ボン!」とかなり勇ましいが、GT 220は、まぁまぁ静か。その点でもRSのノーマルモードに近いと思う。

ワインディングでも緊張感なし

タイヤは225/40R18のダンロップ スポーツマックスTT。ブレーキはRSのようなブレンボ製ではないが、大径タイプになる
街乗りでの運転感覚については、フランス車だということを忘れそうになるほど自然で、ある意味では普通。電動パワステは適度に軽く、滑らかだし、最小回転半径は発表されていないが、小回りも普通に効く。 ボディ剛性が特別に高いという印象はなく、低速での乗り心地も格別スムーズではないが、不快な突き上げ感やゴツゴツ感はなく、しばらく乗っていると馴染んでくるタイプ。RSも乗り心地はかなりいいが、こちらの方が全体にゆったり感がある。
 
ワインディングでは、RSとはサスペンションも違うし、ボディも長いし、ということもあってか、クルマの動きはかなり穏やか。しかしそれゆえ緊張感は少なく、そこそこのペースでも楽しめる。RSの場合は、自分の運転スキルが試されるような印象を受けるが、GT 220はもっとフレンドリーだ。 そして、このクルマの良さが一番分かるのは、やはり高速道路だろう。速度域が上がっても緊張感はまったくなく、RSよりもむしろリラックスして運転できる。ダンピングの効いた足回りがボディの無駄な上下動を抑えてくれて、フラット感も申し分ない。中・高速コーナーも得意中の得意で、絶対的な安心感と共に、さらりと抜けることができる。淡々と走っているようで実際には速い、というオトナの走り。
 
100km/h巡航は6速トップで約2400回転と高めだが、低回転を得意としない非直噴ターボの特性を思うと、妥当なところか。メーカー発表値では、0-100km/h加速が7.6秒で、最高速は240km/h。ちなみにRSはそれぞれ6.0秒、254km/hになる。

JC08モード燃費は13.0km/L、試乗燃費は7.9km/L

給油口は最近の欧州車に多いキャップレスタイプ。指定燃料はハイオクで、燃料タンク容量は60リッター
今回は約200kmを試乗。JC08モード燃費は13.0km/Lだが、試乗燃費は、一般道から高速道路、ワインディングまで、いつものパターンで走った区間(約90km)が約7.9km/L(12.7L/100km)だった。 なお、昨年RSに試乗した時には、ほぼ同じ区間で今回と大差ない約7.7km/Lだったが、その時は10月下旬。それに対して、今回の試乗は真夏で、エアコンによる負荷はかなり大きかったと思われる。また、前述の通り、アイドリングストップもほとんど作動しなかった。季節のいい時なら、もうちょっと伸びたかも。 なお、参考までに約30kmほどだが、高速道路の周回区間を80~90km/hで巡航した時の平均燃費は約13.3km/Lだった。
 

ここがイイ

希少なスポーツワゴンであること。独特の大人っぽさ

日本国内では絶滅寸前の、走れるステーションワゴンであること。ディーラーには、レガシィのGT(2リッターのターボエンジン)あたりに乗っていた人が興味も持って訪れるそうだが、さもありなん。 ルノーと言えば、今や日本ではアルファロメオなどを超えて最もマニアックでニッチなブランドという感があるが、今回のGT 220もそんな日本市場独自のイメージにふさわしく、マニアックで「他にない」クルマになっていること。カングーほど個性的でも、RSほど尖ってもいないが、それが逆に独特の大人っぽさを生み出している。日本のメーカーでは、出来そうで出来ないクルマの一つ。

ここがダメ

2ペダル仕様がないこと

かように実用的で、完成度も高く、デザインもよく、値段もそこそこ、と申し分ないクルマゆえ、やはりMTしかないのは惜しいところ。販売店も歯がゆいだろうし、残念に思うユーザーも少なくないだろう。30代、40代、50代のクルマ好き男性でも、躊躇なくMTを選べる人は、ごくわずか。まあ、ターボに2ペダル仕様があれば売れるかというと、そうでもないのだろうが。

総合評価

これくらいのサイズのワゴンが欲しい

巷の話題はすでに新型ルーテシア(本国名クリオ)のようだが、メガーヌ RSがあんまり良かったので、今回は気になるスポーツワゴンのGT 220にも乗ってみた。そう、スポーツワゴンだ。今や日本のメーカーではまず作らないジャンルで、ボディサイズも手頃。日本車にもアベンシス、アテンザ ワゴン、レガシィ ツーリングワゴンなどがまだあるが、それらはボディサイズがちょっと大きめだ。もうじき新型ゴルフのワゴン(ヴァリアント)も登場するが、これくらいのサイズのワゴンが欲しいなあ、と思っている人は日本でもけして少なくないだろう。国産メーカー的には、絶対的な需要が少なすぎる、というマーケティング結果が全てなのだろうけど。 メガーヌの場合、スタイリングのカッコ良さは、ワゴンがハッチバックをしのぎ、3ドア>ワゴン>5ドアハッチバックの順だと思う。後席も荷室も広くて、全幅も1800mmチョイだから、日本でも使いやすいサイズだ。ほとんどのタワーパーキングに問題なく収まる。
 
シートはさすがフランス車、スポーティでありながら、座り心地が素晴らしい。走りも昨年試乗したクーペほどではないが、手の内で操れるパワー感が、MTと相まって実に心地よい。なんかこれ、いいなあ、ちょっと欲しいなあと思うのだが、そこはやはりMTゆえ、日本の交通環境を考えると、クラッチレスが欲しくなるのは間違いない。クーペはあくまで走りを楽しむために所有するクルマだからMTでもいいが、ワゴンはやはり日常使いのもの。たまにMTに乗るのは楽しいが、じっくり考えてみると、もうクラッチペダル付きには戻れない体になってしまっている。そんな人が、今の世の中は大半だろう(ここはマーケティングを支持するところ)。 考えてみれば、2ペダルでありながらMT的にシフトできるクルマは作られているが、3ペダルのMTをスイッチ一つで2ペダルに切り替えられるクルマは、少なくとも量産車では存在していない。MTの楽しさそのままに、スイッチ1つでクラッチレスにできる、そんなクルマがあればとも夢想するが、今となってはもはや、開発されることなど一切ありえないだろう。
 
となれば、メガーヌにも新型ルーテシアに採用されたようなDCTを載せてもらいたいものだ。さすればゴルフのワゴンと悩む人が続出する、ほどのことはないだろうけど、そこそこの人数はいるのではないか。ちなみにデイズの初代Cクラス、W202ワゴン(2.4リッターV6)は間もなく13年目の車検。世の中にはこんなに多くのクルマがあるのに、乗り代える気にさせるクルマはなかなか現れない。

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