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プジョー 2008 シエロ:新車試乗記

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キャラクター&開発コンセプト

208ベースのアーバン・クロスオーバー

プジョー 2008 (photo:PCJ)
プジョー 2008は、Bセグコンパクトカーの208をベースに開発された都市型の小型クロスオーバーSUV。プジョー言うところの“アーバン・クロスオーバー”。4桁車名としては、過去の1007、4007(日本未導入)、現行の3008、4008(日本未導入)、5008に続くモデルになる。 欧州では、2012年9月のパリモーターショーでコンセプトカーとしてデビューし、2013年5月から販売を開始。2014年2月には累計生産台数が早くも10万台を超える大ヒットになっている。 日本では、2013年11月に開幕した東京モーターショーで初公開され、2014年2月15日に発売された。今のところ生産はフランスのミュルーズ工場で行われており、日本仕様も同工場製。2014年内には中国で、2015年には南米ブラジルでも生産が始まる予定。

日本向けは1.2リッター3気筒と5速セミAT

(photo:PCJ)
日本仕様のエンジンは208譲りの新世代1.2リッター直列3気筒・自然吸気。変速機には208にも追加設定された「5速ETG(エフィシェント・トロニック・ギアボックス」こと、5速セミATが組み合わされ、2ペダルが主流の日本市場に対応している。ストップ&スタート機能(アイドリングストップ機能)も採用され、JC08モード燃費は19.4km/Lを達成している。 ■過去の新車試乗記プジョー 208 アリュール (2013年1月)
 

価格帯&グレード展開

プレミアムが253万円、ガラスルーフ付のシエロが278万円

試乗したのはパノラミックガラスルーフを装備したシエロ
駆動方式は本国仕様を含めてFFのみ。日本仕様は1.2リッター3気筒(82ps、118Nm)と5速セミATの組み合わせになる。 グレードは、16インチアルミホイールやパドルシフト、ファブリック&テップレザー(合成皮革)のコンビシート等、一通り装備の揃った「プレミアム」(253万円 ※8%消費税込み、以下同じ)と、それにパノラミックガラスルーフ(電動シェイド付)、アルカンタラ&テップレザーのコンビシート、パフォーレーテッド加工された本革ステアリングなどを追加した「シエロ」(278万円)の2種類。価格差は25万円あるが、パノラミックガラスルーフを除けば外観に差はない。
 
ボディカラーは全6色。内装色はブラックとブラウンの2色があるが、シエロはブラウンのみになる。 7インチ・タッチスクリーンは全車標準だが、ナビ機能は販売店オプション(約18万円)。標準のタッチスクリーンを活かしながら、日本専用開発のパナソニック製ナビ機能を組み込む形になる。
 

パッケージング&スタイル

全高は立体駐車場OKの1550mm

ボディサイズはベースとなった208に比べて、全長こそ200mm長いが、1740mmの全幅や2540mmのホイールベースは同じ。実は208の5ドアとは、ドアパネルも共通だ。全長が4160mmに収まるなど、SUVとしてはかなりコンパクトで、日本の都市でも使いやすい、まさに都市型クロスオーバーになっている。 また、全高も208より80mm高いだけの1550mmで、日本の一般的な機械式立体駐車場にぴったり収まる。同ジャンルの日本車が軒並み1550mmを超える中、ここは2008の大きなセールスポイント。なお、最低地上高は150mmと、対地クリアランスはそこそこに留まる。 デザイン的には、SUV風の厚みのあるスタイル、アンダーガード付の前後バンパー、ルーフレールなどの専用パーツによって、クロスオーバーらしさを実現。中でもユニークなのが、ルーフの左右両端に設けられた「ルーフウェイブ」と呼ばれるデザイン処理。Bピラーより後ろのルーフ両端が一段高くなっているが、ルーフの中央は低いまま。プジョーによれば、RCZのダブルバブルルーフにインスパイアされたもの、とのこと。
 
 
    全長(mm) 全幅(mm) 全高(mm) WB(mm) 最小回転半径(m)
プジョー 208 (2012~) 3960 1740 1470 2540 5.3
VW クロスポロ (2010年~) 4000 1710 1520 2470 4.9
ルノー キャプチャー(2014~) 4125 1780 1565 2605
日産 ジューク (2010~) 4135 1765 1565 2530 5.3
プジョー 207 SW (2008~2012) 4150~4165 1750 1535 2540 5.3
プジョー 2008 (2014~) 4160 1740 1550 2540 5.5
VW ゴルフ 7(2013~) 4265 1800 1460 2635 5.2
ホンダ ヴェゼル (2013~) 4295 1770 1605 2610 5.3
スバル XV ハイブリッド(2013~) 4450 1780 1550 2640 5.3
 

インテリア&ラゲッジスペース

インパネはほぼ208譲り。小径ステアリングの上からメーターを見る

インパネデザインは、ほとんど208と共通。楕円タイプの小径ステアリングを採用し、その上から運転席正面のメーターを見るところも一緒で、やはり208と同じように最初は戸惑う。とりあえずシートリフターやステアリングのチルト/テレスコでポジションを決めた後、メーターが見えるようにステアリングを微調整する、という手順がお勧め。 試乗車は上級グレードのシエロで、インパネやシートの一部にテックレザーという素材が張られている。厚めのパッドが入っていて押すとソフトだが、触感はサラサラしている。新しい素材を果敢に車内に持ち込むところがフランス車らしい。

7インチタッチパネルは標準。ナビはオプションで用意

 
メーターの周囲はブルーのLEDで縁取られる。明るさは調整可能で、オフにも出来る
208同様に、ダッシュボード中央の特等席には、7インチのタッチパネルを配置。このあたりは、今のトレンドをしっかり抑えている。ナビゲーションシステムは販売店オプションで、デフォルトでは「ナビ」ボタンをタッチすると画面が真っ暗になってしまう。なのでナビ機能はぜひ欲しいところだが、約18万円と高価。 操縦桿をイメージしたというデザインのサイドブレーキは、ちょっと引きにくい。シエロにはパノラミックガラスルーフが備わるが、プレミアムの方にも天井にLEDライトによるデザイン的な遊びがあり、退屈させない。
 
シエロにはパノラミックガラスルーフが備わる。なお、電動サンシェイドはネット式で、障子のように光を薄く通すタイプ
夜には、パノラミックガラスルーフの両端にLEDのアンビエンスランプが灯る (photo:PCJ)
プレミアムの場合は、レーザー加工した天井に仕込まれた「LEDトラック」と呼ばれる左右4本のラインが光る (photo:PCJ)

後席はワンタッチで格納。積載性は207SW的

シエロのシートは、アルカンタラとテップレザーのコンビ
さすがフランス車、フロントシートの座り心地は文句なし。一方で、リアシートの形状が平板なのは、畳んだ時の収納性を重視しているから。背もたれを前に倒すと、連動して座面も沈み込み、荷室フロアをツライチになる。このあたりは、先代207ベースのステーションワゴン、207SWの実質的な後継者であることを窺わせる部分。208ベースのSWは、今のところ本国でも登場していない。 実際、荷室容量は208より26%増えてCセグメント並みの360リッター。拡大時はワゴン並みの1172リッターになる(208は285~1076リッター)。また、奥行きは208より150mm延びて、最大160センチほど。また、リアゲートの敷居や荷室フロアが低く、荷物の積み下ろしもしやすい。
 
後席はスペース的には不足ないが、シート形状は平板で、背もたれは立ち気味
荷室フロアにはステーションワゴン風に5本のレールが走り、開口部にはステンレス製のシルガードが備わる
スペアタイヤはフランス車に多いフルサイズではなく、テンパータイプ(コンチネンタル製)
 

基本性能&ドライブフィール

3気筒エンジンは意外にトルクフル

エンジンは前述の通り、208と同じ1.2リッター直列3気筒。流行りの直噴ターボではなく、自然吸気だが、最新のダウンサイジング&レスシリンダーの思想を採り入れたもの。アイドリングストップ機能も付いている。 最高出力は208と同じ82ps、最大トルクも同じ12.0kgm。一方、車重は208の3気筒モデルより50kg増えてプレミアムでは1140kg、シエロでは1160kg。パワーウエイトレシオ的には、約14kg/psとけっこう辛い数字だが、これがなかなかどうして、よく走る。予備知識がないと、ターボかなと思うくらい、特に中速域ではトルクフル。3気筒の振動も、ほとんど気にならない。
 
エンジンは新開発の1.2リッター3気筒「EB2型」。自然吸気で、82psを発揮する
タイヤ外径が大きくなった分を相殺すべく、208よりも最終減速比は低められており(4.538 → 4.692)、1速での発進は十分に力強い。また、2速、3速でのフリクション感のない、息の長い加速感も、208同様にとても気持ちよく、「いいクルマ」感がある。このあたりは、スペックだけで分からない部分だ。ちなみにこれと同じパワートレインは、208/2008と同じタイミングで、シトロエンのC3/DS3にも搭載されている。

セミATには慣れやコツが必要

セミATゆえ「P」レンジはない。エンジン始動時は手動で「N」にする必要があるなど、フィアット500などとは微妙に操作方法が異なる
一方で、多くの人が最初に戸惑うのは、セミAT独特のマナーだろう。資料によれば、このETG5に合わせて、TCU(トランスミッション・コントロール・ユニット)と電動アクチュエーター(ザックス製)も新開発されたようだが、大ざっぱな印象を言えば、日本でも以前販売されていたプジョー 1007やシトロエン C2、あるいは最近のフィアット 500(デュアロジック)や、スマートのセミATと比べても、特に大きな進化を感じさせない。2速にシフトアップする際に「息継ぎ」するところや、交差点で徐行してから再加速する際に一瞬ギアを迷うところも相変わらずだ。
 
低燃費モデルであることを示す「eVTi」バッジ。「e」はefficient(高効率)とecological(エコ)、VTi は可変バルブタイミング機構とインジェクションの意(photo:PCJ)
また、この5速ETGには、フィアット系のデュアロジックと違って、電子制御クラッチによる擬似クリープ機能が備わるが、そこで気になるのは、ブレーキを離してから動き出すまでにタイムラグがあること。もちろん坂道発進では、ヒルスタート アシスタンス(いわゆるヒルホルダー)が作動し、2秒間ブレーキを保持して、ずり下がりを防止してくれるが、傾斜センサーが感知しない緩い坂道では、ブレーキを離すとクルマが少し後退してしまう。すぐに擬似クリープが働き、クルマはゆっくり前進し始めるのだが、慣れるまでちょっとヒヤッとする瞬間だ。 一番困るのは、上り勾配の駐車場にバックで入れる時だろう。慣れていないと、落ちたり動き出したりを繰り返すことになる。右足でアクセルペダルの踏み加減を調整しながら、上手に半クラッチ状態を作り出すのがコツだ。

重心が高まったネガはある。高速巡航は気持ちいい

タイヤはミシュラン エナジーの16インチ。グリップ性能は十二分
ワインディングでは、トルクフルなエンジン、伝達ロス感のないミッション、ガッチリしたボディや足回り、205/55R16のミシュラン、クイックな電動パワステなどによって、軽快に走る。もうちょっとSUV的に穏やかな方がいいと思うが、ESPが作動するところまでは、そう簡単にはいかない。サスペンション形式は208と同じで、Bセグでは一般的な、フロントはストラット、リアはトーションビーム。ダンパーは伝統通りプジョー内製になる。乗り心地は硬めだ。 細かいことを言えば、重心が高い分、相対的にトレッド(フロントは1480mm、リアは1485mm)は、狭く感じられる。つまり、踏ん張ってる感、路面をしっとり捉える感は、ベースとなった208の方が上だ。また、パドルシフトを引けば「ブオン!」とブリッピングして見事にシフトダウンしてくれるが、5速ゆえステップ比は大きめで、特に2速へのシフトダウンがまま決まらないのは、他の5速セミAT車と同じ。
 
100km/h巡航時のエンジン回転数は、208と大差なく、5速トップで3000回転弱(2950回転くらい)。数値的には高めだが、エンジン自体はスムーズで静かに回るし、パワー的にもこれくらいは回したいところ。風切り音やロードノイズも気にならないし、直進安定性や乗り心地も悪くない。何より、セミATならではのダイレクト感、フリクション感のなさは、高速道路を流す時も気持ちがいい。 ただ、さすがに82psしかないので、高速での追い越し加速や急勾配は苦手。最高速(欧州仕様)は172km/hとのこと。

試乗燃費は12.0~15.6km/L。JC08モード燃費は18.5km/L

指定燃料はプレミアムで、タンク容量は50リッターと大きめ。航続可能距離は少なくとも500km以上はいきそう
今回はトータルで約200kmを試乗。試乗燃費(車載燃費計)は、いつもの一般道、高速道路、ワインディングを走った区間(約90km)が12.0km/L。また、一般道を大人しく走った区間(約30km)が15.6km/L。また、参考ながら高速道路を80~100km/h+で走った区間(約35km)が17.5km/Lだった。JC08モード燃費は18.5km/L。 総じてオートモードで走ると好燃費だが、マニュアルモードでブンブン回して走ると伸び悩む傾向。ただ、最高出力がしょせん82psなので、無闇にアクセルを開けても、出力相応に燃料消費は少ない。
 

ここがイイ

日本にジャストのボディサイズ。エンジン。7インチディスプレイの標準化

SUVとしては最もライト級のボディサイズ。一時は3ナンバーが当たり前になるなど、肥大化が嘆かれた欧州製コンパクトカーだが、その一派であったプジョーから、日本の同クラス車よりコンパクトなモデルが出るとは。本文で触れたように、全高は機械式立体駐車場OKの1550m。日本車で全高が1550mm以下に収まるのは、スバル XVくらいしかなく、しかもルーフレール非装着車に限られる。 208同様に、トルクフルで滑らかに回る3気筒エンジン。モアパワーということであれば、同じ3気筒でも新型フィエスタのようにターボを装着したいところだが、自然吸気の方がメカニズム的にはシンプルだし、燃費的にも有利。日本車にとってもベンチマークになり得るエンジンだ。 大型タッチスクリーンをダッシュボード中央に配したインパネデザインは、今のトレンドをしっかり抑えたもの。208の日本発売時には間に合わなかったナビゲーション機能も、販売店オプションで用意された。 一昔前からプジョー・シトロエンが積極的に採用しているコーナリングランプは、相変わらず便利。40km/h以下の速度域で(つまり主に市街地走行中)、ステアリング操作やウィンカー操作に応じてコーナー内側のフォグランプが点灯するという単純なものだが、これが意外に心強い。

ここがダメ

万人向けとは言えないセミAT。メーターレイアウト。ナビ機能の値段

これまで208には4ATか、5/6MTしかなかったので、今年から208と2008にAT限定免許で乗れる5速セミATが採用されたのは良いニュースだが、緩やかな坂道発進で落ちてしまう点や、傾斜のある駐車場でのバックのしにくさは、トルコンATしか乗ったことのない人にはハードルが高い。同じくセミATが主力のフィアット500はコンスタントに売れ続けているが、2008は500のようにキャラクターで売る商品ではなく、やはり乗りやすさや実用性でも訴求したい。 208と同じで、シートとステアリングを理想的な位置に合わせると、たいていの場合、ステアリングがジャマでメーターが少し隠れてしまう。なので多くの人は少し妥協して、ステアリングをちょっと下げることになるはず。ホンダの場合、一時期シビックや2代目インサイトなどでデジタル速度計をステアリングの上から見る位置にレイアウトしていたが(回転計はステアリングの内側に見える)、今ではすっかり止めてしまったし、トヨタもセンターメーターを止める方向にある。ステアリングの小径化は、一つの理想だが、現実にはちょっと無理があるようだ。 ナビゲーション機能がオプションで用意されたのはいいが、これが約18万円と高いこと。日本専用にパナソニックが開発したことで割高になったようだが、消費者心理としてはせめて10万円くらいに抑えるか、いっそ標準装備にして欲しいところでは。ナビ無しでは、せっかくのタッチパネルがもったいない。 ラテン車(フランス車、イタリア車)らしく、給油キャップは相変わらず鍵を差して開けるタイプで、やっぱり面倒。

総合評価

セミATにはもうちょっと洗練が必要

ちょっと古い資料になってしまうが、プジョーが2005年に発表した調査結果では、AT(トルコンAT、CVT、セミAT)車の比率は、日本の92%を筆頭に、北米90%、豪州・東南アジア・中東70%となっている。一方で、欧州は平均で14%と当時もMT天国で、中国も15%だ。欧州の国別では、スイスが27%とAT比率が比較的高く、ドイツ・スウェーデン20%、イギリス・オランダ14%だが、フランス・イタリア・スペインなどラテン系は4~6%に留まり、ギリシャはなんと2%しかない。 日本の場合はというと、自販連が乗用車市場(軽自動車と輸入車を除く)のデータを出しているが、約30年前の1985年には、ATが48.8%だったものが、20年後の2005年には96.6%(プジョーの調査とは異なっている)になり、2011年にはついに98.5%にまで高まっている。 以下は、当時のプジョーオフィシャルwebマガジン(2005年4月)からの引用だ。 ---PSAグループの製品戦略部門(DSPG)でギアボックスとトランスミッションを担当するリーダー、ティエリー・ノダンは指摘します。 「ヨーロッパでAT車の普及が進まない最大の原因は、そのイメージにあるのです。ドライバーのほとんどはAT車について深い知識を持っていません。彼らは“AT車は燃費が悪く、性能が低い”というネガティブなイメージを持っているのです。(中略)AT車を試乗したドライバーはその性能に満足し、“AT車は性能が悪い”という先入観から解放されるという結果が導き出されています」(引用ここまで)。
 
欧州の人々は、MTの方が燃費が良くてエコだと思っている(たぶん今も)。それはつまり安くクルマに乗れるということ。そういう人たちを納得させるには、「マニュアルトランスミッションベースのオートマチックトランスミッション」と言った方がよく、なるほどそれで欧州の少なくとも小型車では、トルコンATやCVTよりも、セミAT、そして現在急速に普及しつつあるDCTの開発が進んだのだと考えることもできる。 そういう事情から、2008にもセミATが採用されているのだが、日本人の98.5%はトルコンATやCVTで何の不満もない人たちなので(ここ笑うところです)、このセミATの挙動にはちょっと不満が出てしまうかもしれない。我々も3気筒・セミAT車のスマートには日常的に乗っていたので、それなりに慣れているつもりだが、当時のスマートにはアイドリングストップがなかった。一方で、信号などで止まるとアイドルストップし、スタート時にエンジンを始動するところから始める2008には、もうちょっと洗練が必要な気がした。

今後は中国がクロスオーバー車の主戦場

しかし2008、スタイリングはカッコいいし、3気筒エンジンも素晴らしい。クロスオーバーというのは、いつになっても今ひとつピンとこない呼び方なので「持ち上げ系」と言ってみたりするが、スバルのXVやホンダ ヴェゼルなど、「持ち上げる」とカッコよくなるということは、これまでに散々書いてきた。日本の女性もこの手のクルマは昔から大好きで、なんとなく強そうとか、丈夫そうとか、安全性が高そうとか 小さくてもクラスレスっぽいとか、なんとなくプレミアム感があるとか、クルマ好きでない人でもクロスオーバー車には価値を見出している、という印象がある。スズキ ハスラーの大人気もそれを象徴しているだろう。 そういった女性目線で言えば、男性はスポーツカーよりクロスオーバーに乗ってた方がモテるということだし、女性も自分で乗るなら、小さめのクロスオーバーがいいと思っている、ということになる。日本でも今後はどんどん増えてブームとなりそうだ。2008のようなクルマは、日本車にはまだそう多くない。昔はトヨタ RAV4などのヒット車もあって、この分野は本当は日本車が先行していたはずだが、いつの間にか形勢が逆転してしまっているように見える。
 
クロスオーバー車をカッコよく思うのは世界共通のようで、ウォール・ストリート・ジャーナルによると、中国でもSUVの人気が高くて、各国メーカーによるSUV市場争奪戦が繰り広げられているそうだ。つまり、今後は中国こそがクロスオーバー車の主戦場。そういえばPSAは今年2月に中国・東風汽車からの資本受け入れを決めた。30億ユーロ(約4200億円)規模を増資し、その一部を東風と仏政府が引き受けるとの報道だ。 中国で人気のSUVに搭載されるトランスミッションは、トルコンATかDCTか。中国のATが今どうなっているのか、今後どうなっていくのか、そんな資料は見あたらなかったが、10年前はまだMT比率の高かった中国で、欧州のようにDCTやセミATが主流になったりするのは、日本車にとっては嬉しくない状況だろう。
 
まあ、そんなダイナミックな世界の動きとは別に、この2008に関する些細な話をひとつ。それは、タイミングベルトが10年18万km保証(無交換でいい)という、かつての欧州車を知る身としては夢の様な話になっていること。ただこれ、トタル(フランスのオイル会社)の指定オイルを使用した場合の保証とのこと。これも中国へトタルがさらに進出するための方策か? PSAもなかなかやるな、というようなことを春先の平和な日本の片田舎で2008に乗りながら、漠然と考えていたのだが…。

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