日本最大級の自動車技術展「人とくるまのテクノロジー展 2014 名古屋」(主催:公益社団法人自動車技術会)が2014年12月11日(木)、ポートメッセなごや(名古屋市港区)で開幕した。自動車メーカーや部品メーカーなど、197社による一般展示のほか、特別講演、電気自動車の試乗会などが行われる。開催は12日(金)まで。初日の様子を駆け足で紹介。
ホンダはすでに発表されている新型レジェンドを展示し、そのハイブリッドシステムやSH-AWDシステム、後輪を駆動するためのTMU(ツインモーターシステム)、運転支援システム「Honda SENSING(ホンダ センシング)」等を訴求する内容。せっかくの機会なので、説明員の方に「EV走行時、レジェンドのフロントモーターはなぜ駆動に参加しないのか」と質問すると、構造的にはEV走行時のフロントモーター駆動も可能だが、リアモーターだけでも十分な駆動力が得られる。また、フロントモーターを駆動させるとバッテリーの消耗が早く、効率面でメリットがない、という説明があった。
トヨタブースの主役はやはり燃料電池車のMIRAI(ミライ)で、展示車が人影で見えないほど盛況。ここでは説明員の方を捕まえて、個人的に疑問だった「なぜミライの二次電池はリチウムイオンではなく、ニッケル水素なのか」を質問。「現時点では出力型ではなく容量型の電池として考えると、特性やコスト面でニッケル水素で十分という判断です」という、至極まっとうな答えが返ってきた。その説明員の方によると、よくある質問だそうだ。
こちらはトヨタ系の大手サプライヤー、JTEKT(ジェイテクト)のブース。世界初の電動パワーステアリングは意外にもスズキ セルボ(1988年)だったとのこと。開発したのはジェイテクトの前身の一つである光洋精工
マツダブースでは、新型デミオを展示し、マツダが推進する「ヘッズアップコックピット」などを訴求。ここでは、デミオに採用されている電動ヘッドアップディスプレイ(アクティブ・ドライビング・ディスプレイ)について「なぜ走行時に格納出来ないのか」を質問。答えは、水平に倒れるタイプなので、フロントガラスに映り込みが出るからとのこと。昇降式やフロントガラス投影式はスペースやコスト面で難しいという。
小規模メーカーのオンリーワン技術を展示する各ブースは、一日では見切れないほど多彩で、ディープな世界。薄肉真円加工技術(中農製作所)、世界初の量産化マグネシウム合金ねじ(丸ヱム製作所)、世界最小チェーン(オリエンタルチエン工業)、超深絞りプレス加工(富士金属)などなど、数多くのブースが並んだ。
あいにくの雨だったが、屋外では電動自動車の試乗会も行われた。トヨタ MIRAIのほか、電気自動車のBMW i3、日産 リーフ、三菱 i-MiEV、そしてプラグインハイブリッド車のホンダ アコード PHEV、アウトランダー PHEVというラインナップ。人気はやはりMIRAIとi3で、こちらも申込み枠がかなり早くから埋まっていた。
(丹羽 圭@DAYS)
そんなMIRAIの試乗だが、シフトレバーはいつものプリウス風。試乗した感覚も、加速感や乗り心地などはプリウスにかなり近いものだった。燃料電池が発電を始めてもエンジンのように振動することはなく、モーターによる走行のままなので、そこはプリウスとは異なる。とはいえプリウスに乗り慣れた人であれば、ほとんど違和感はないはず。足踏み式のパーキングブレーキなどの使い勝手も同様。ただ、室内の広さはプリウスには及ばない。2人乗りの後席はもちろん、運転席もかなりタイトだ。
それに対してi3は、コラムにあるシフトセレクターの形状、電動パーキングブレーキ、iDriveなどの操作系が斬新。ダッシュボードは植物樹脂のような素材でできており、一般的なメーターもなく、タブレットのようなものが2つ乗っかっている。なんだかかなり新しい感じがする。走りは相当にパワフルな印象。それでありながら、減速したい時には回生ブレーキによってアクセルペダルを戻すだけでブレーキングできるから、これまでのクルマとはちょっと違う運転感覚だ。運転しづらいと思う人もいるだろう。しかし慣れてくると、アクセルペダルだけで動きをコントロールできて、これは面白いなあと思えてくる。こういう感覚から新しいドライビングプレジャーが生まれるのだろうか。
日本車のFCVがコンサバティブで、ドイツ車のEVがアグレッシブ。ガソリン車でなくなっても、両国のクルマづくりにおける違いは、やはりこれまでのように続いていくのか、と思わせる試乗だった。
(水野誠志朗@DAYS)
■外部リンク
人とくるまのテクノロジー展 公式HP
中部地区では初の開催
同展は1992年に横浜で始まり、今年5月にも横浜で出展491社で開催されているが、中部地区では今回が初。地元のトヨタをはじめ、主要自動車メーカー、大手サプライヤーが出展したほか、「モノづくりニッポン ~自動車技術を支えるオンリーワン技術~」と題した企画展示では、高度な技術を持つユニークな部品メーカーや自動車関連機器メーカーが数多く集まった。 入場者は自動車関連メーカーや官公庁・民間研究機関の研究・技術者だけでなく、自動車技術に関心がある一般も対象。モーターショーのような派手な演出や展示はないが、技術に特化した展示が行われており、個々の技術や製品について深く知ることができる。