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スバル フォレスター アドバンス:新車試乗記

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キャラクター&開発コンセプト

今やスバルの最量販モデル

2018年3月に米国ニューヨークショーで発表、日本では2018年6月20日に発表、7月19日に発売された新型「フォレスター」は、1997年登場の初代から数えると5代目。 世界的なSUVブームの中、グローバル市場では今やスバルの「最量販車種」であり、海外、特に北米市場が生命線であるスバルにとっては極めて重要なモデルだ。
 
新型は現行インプレッサ(2016年発売)から採用されている新世代「SGP(スバル グローバル プラットフォーム)」を採用。インプレッサ等で採用されている「歩行者保護エアバッグ」、現行レヴォーグやWRX S4で採用されている「アイサイト・ツーリングアシスト」を全車標準とした。 さらに、顔認証による乗員認識技術「ドライバーモニタリングシステム」をスバルで初めて採用したほか、水平対向エンジンに電気モーターやリチウムイオン電池を組み合わせたパワートレイン「e-BOXER」を搭載したハイブリッド車「アドバンス」も新設定している。

国内の月販目標は2500台

新型フォレスターの月販目標(販売計画)は、先代(2013年発売)の時より500台多い2500台。 これまでの販売実績は、7月:2682台、8月:3036台、「アドバンス」が追加発売された9月:5154台、10月:3985台だ。
 

価格帯&グレード展開

2.5Lガソリン車は280万8000円~。2.0L「e-BOXER」は309万9600円

「X-BREAK」のみ多少の悪路や雪道が走れるオールシーズンタイヤを履き、前後バンパー下部にはオレンジのアクセントラインが入ったアンダーガードを装備
パワートレインは新開発の2.5L直噴ガソリンエンジンと、同じく新開発の2.0L直噴エンジン+電気モーターの「e-BOXER」の2種類。前者は「プレミアム」「ツーリング」「Xブレイク」の3グレード構成、後者は「アドバンス」の1グレードになる。 全車、変速機は「リニアトロニック」ことCVT(無段変速機)のみ、駆動方式は電子制御式のアクティブトルクスプリットAWD(4輪駆動)になる。 価格は2.5Lガソリン車が280万8000円~302万4000円、2.0Lの「e-BOXER」が309万9600円。ガソリン車とe-BOXERの価格差は大きくない。 【2.5L 4気筒(184ps、239Nm)】 ・WLTCモード燃費:13.2km/L ■Touring  280万8000円 ■X-BREAK  291万6000円 ■Premium  302万4000円 【2.0L 4気筒(145ps、188Nm)+モーター(13.6ps、65Nm)】 ・WLTCモード燃費:14.0km/L ■Advance  309万9600円
 

パッケージング&スタイル

キープコンセプトながら立派に

第一印象は「先代と大差ないなぁ」という感じだったが、実車を見るとフェンダーアーチの張り出しやバンパーの造形など、質感や立派さは別物。デザインについては、SUVらしく機能的な「モダンキュービックデザイン」を採用している。アウトバックやXVのような「クロスオーバーSUV」に対して、「SUV」の本流を行くデザイン。

ボディサイズはライバル車と横並び

ボディサイズ(先代比)は全長4625mm(+30)×全幅1815mm(+20)×全高1715~1730mm(+20~35)、ホイールベースは2670mm(+30)。先代より少しづつ大きくなったが、これがもはやこのクラスの標準サイズでもある。マツダCX-5、レクサスNX、日産エクストレイル、ホンダ CR-Vあたりと大差はない。
 
最低地上高は220mmと高めで、この点からも悪路走破性を重視していることが分かる。北米でスバル車が強いのは実際に走破性が高く、北部の豪雪極寒地域で支持されているからだ。
 

インテリア&ラゲッジスペース

さらに質感向上を目指して

インパネ質感は最近のレヴォーグやXV同様、大幅に向上しており、特に試乗したブラウン本革シート仕様はイイ感じ。ドアトリムの作りも凝っている。内装カラーはブラック、ブラウン、オレンジのアクセントが入ったX-BREAK専用カラーの3色が用意されている。

後席スペースを拡大。乗降性は極めて良好

室内スペースは先代より広くなり、特に後席フットルームはホイールベース拡大分の30mmすべてを当てることで、スバルによればクラストップレベルになったとのこと。前席シートバック裏のスマートフォン用ポケットやUSB電源ポートなどの小技もある。
 
さらに乗降性も大幅に向上。ドアは直角近くまで開き、乗降時には頭も足も見事に引っかからない。 また、リアドアのサイドシル部にあるステップ部分は、幅を広げてフラットな形状にすることで、乗降時やルーフレールに荷物を積む時などの足場になるように工夫されている。

荷室容量は520L。2人かけベンチにも

荷室容量は520L(写真のアドバンスは509L)。注目すべきはリアゲート開口部の広さで、その最大幅は歴代フォレスター最大の1300mm。ベンチ代わりに大人が2人並んで座ることもできる。 荷室フロアの奥行きは、ほぼフラットに畳める後席格納時で1547mmと資料にはあるが、実際には大人でも足を伸ばして寝ることができる。荷室フックや12V・120W電源、LEDの荷室照明なども備わり、電動ゲートも設定されている。
 
床下には「カーゴフロアマルチボックス」なる床下収納スペースがあり、ガソリン車では応急スペアタイヤを搭載。写真のアドバンス、つまり「e-BOXER」の場合はリチウムイオン電池やパンク修理キットが収まっている。
 

基本性能&ドライブフィール

ハイブリッド車(e-BOXER)のアドバンスに試乗

試乗したのはe-BOXER、つまりハイブリッド車の「アドバンス」。価格は本革シートなどのオプション込みで345万6540円だ。 まずは見晴らしの良さが好印象。ドア付けのドアミラーは左右斜め前がよく見えていいし、Aピラーも比較的細く、斜め後方の視界もいい。最小回転半径は先代より0.1m増えたものの5.4mに収まっており、取り回しに不満はない。これには新採用のVGR(可変ギアレシオ)ステアリングも効いているのだと思う。
 
もう一つ、視界関係で便利なのは、新型フォレスターに限った装備ではないが、スマートリヤビューミラー。ミラー下側のレバー(普通のルームミラーなら防眩時に動かすレバー)を操作すると、通常の鏡から、後方の専用カメラが捉えた映像を映す液晶ディスプレイに変身する。スマートリヤビューミラーの角度によっては、鏡と二重になって見にくい場合があったり(角度を調整すれば大丈夫)、近視や遠視などの視力的な問題でピントが合わない人もあると思うが、高感度カメラによる夜間の鮮明な映像や、カバーする範囲の圧倒的な広さなどは、従来のルームミラーとは比べ物にならない。これはいずれ当たり前の装備になりそうだ。

街乗りでは俊敏トルクフル

注目のハイブリッドパワートレイン、、、スバル自身はハイブリッドとは呼んでいないが、、、「e-BOXER」は、先代XVハイブリッドのものがベース。遊星ギアによる動力分割機構を備えたトヨタのハイブリッドとは全く異なるもので、通常の水平対向エンジンに電気モーターやクラッチ等を追加したもの。トランスミッションはCVTのままで、トルコンも残っている。 ただし、今回は駆動用電池を前回のニッケル水素からリチウムイオンに変更するなど、大幅改良。やはりリチウムのおかげか、ハイブリッド感は大幅に増し、50km/h程度でモーター走行することもしばしば。また、発進時や低速走行時のトルクは強力で、アクセルを踏み込んだ時のレスポンスはなかなか鋭い。この点は明らかにエンジン車に優る部分だ。 また、当然ながらアイドリングストップからのエンジン再始動もスムーズなので(タコメーターを見ていないとエンジンのかかった瞬間が分からない)、ガソリン車のような再始動時の振動やもたつきもない。街乗りでの力強さとスムーズさが、e-BOXERの魅力と言ってもいいだろう。

高速域ではエンジン音が高まりがち

郊外の一般道やワインディングでは、ボディのシッカリ感や、スバルらしいフラット感などで乗り心地は良好。SGPシャシー共通の特徴としてブレーキもよく効く。前述したような運転のしやすさもあって「いいクルマだなぁ」という印象に終始する。 一方、高速道路のようなところでは、80km/hからの加速が今ひとつ。カタログを見ると、2.5Lガソリン車の最高出力が184psなのに対して、アドバンスの最高出力は145psに留まり、しかも車重は110kg増えるため(ガソリン車が1530kgで、アドバンスは1640kg)、ここぞという時の加速ではちょっと力不足を感じてしまう。エンジンを回している割に、加速しないなという印象。モーターの最高出力は13.6psしかないので、中間加速ではほとんど助けにならない。 とはいえ、エンジンの吹け上がりは軽快でスポーティだし、日本の路上においては動力性能にまったく不足はない。これで十分と言うべきかも。
 
「アイサイト・ツーリングアシスト」などの運転支援装備は、基本的には現行レヴォーグなどと同じ。操作のしやすさ、分かりやすさという点では、この種のものでベストと言っていいだろう。全車速追従機能付クルーズコントロールは、従来のツーリングアシスト同様に最高120km/h(実際のメーター上では135km/h)まで設定できる。

乗員認識技術「ドライバーモニタリングシステム」

スバル初となる乗員認識技術「ドライバーモニタリングシステム」は、センターコンソールのマルチインフォメーションディスプレイ上部に内蔵された赤外線カメラによって乗員の顔カタチを捉えるもの。顔の向き、目の動き、まばたきの頻度から、居眠り運転やわき見運転などを検知すると、音声やディスプレイで警告を行う。また、5人までドライバー(の顔)を登録することが可能で、そのドライバーが乗車するとシートやドアミラーの位置、空調設定などを前回乗車した時と同じように自動調整してくれる。 ドライバーの登録は、ステアリングスイッチを操作することで可能。取扱説明書を見ながら、実際に顔と名前を登録して試してみると、次に乗車した時には「Hello ○○(登録した名前)」と表示が出て、シートなどが自分の設定位置まで自動的に動いてくれるのがちょっと感動的。ま、これが本当に便利かどうかは、複数の家族で使うかどうかなど状況によって違うと思うが、そのうち音声で喋ってくれるようになると楽しいかも。

e-BOXERの試乗燃費は10.1~14.2km/L。高速道路ではガソリン車が有利

今回は約260kmを試乗。参考ながら、試乗したe-BOXERの試乗燃費は、一般道やワインディング、高速道路の含むいつもの試乗コース(約80km)が10.1km/L、一般道を大人しく走った区間(約30kmを3回)が12.2km/L、12.5km/L、夜間で14.0km/Lだった。一般道ではおおむね10km/L台と言っていいのでは。レギュラーガソリン仕様なのが嬉しい。 なお、WLTCモード燃費を2.5Lガソリン車と比べてみると、市街地では2割ほどe-BOXERの方が優秀だが、高速燃費ではほぼ互角(正確に言えば、ガソリン車の方が0.4km/L優れる)。加えて燃料タンク容量は、2.5Lガソリン車の63Lに対して、アドバンスは48Lしかない。よって、少なくとも高速道路を使った時の航続距離は、ガソリン車の方が有利だ。

ここがイイ

極めて実用的

今回試乗したe-BOXERの場合、市街地でのトルクフルな走り、ピックアップの良さは魅力的。市街地での燃費も、このe-BOXERなら10~12km/Lと悪くない。静粛性については、加速時にエンジン音が高まるのがマイナスポイントだが、巡行時なら静か。スバルの4WDゆえ、雪道などの走破性も高いと思われる。 室内の質感も高く、装備もよく、乗降性や積載性も優秀。実用的な中型SUVとして完成度は高い。

ここがダメ

もっとスポーティな仕様も欲しい

「さすがスバル」「さすがシンメトリカルAWD」と思わせる走りの良さが、少なくとも今回試乗したグレードではストレートに伝わってこないこと。全体的に実用性重視という印象で、例えば先代で言うところの「XT」、つまり300ps級のターボ車とか、ハンドリングも含めて高性能でスポーティな仕様も欲しくなる。心配しなくても追加される気はするが。 ドライバーモニタリングシステムで気になったのは、走行中に居眠りや、わき見をしていないのに「居眠り注意」「わき見注意」と警告されることが度々あったこと。その際、オーディオの音が一瞬途切れることがあったのも気になった。 ステレオカメラを主センサーとし、いまだ世界トップクラスの運転支援機能を実現しているアイサイトについては高く評価したい反面、他メーカーがミリ波レーダーとカメラ併用でキャッチアップしてきた今、再び差別化できる進化が待たれるところ。

総合評価

質実剛健に使うなら、最適な一台

諸事情あって試乗記の更新を少し休んでおりましたが、ゆったりしたペース(当社比)で再開させていただくことに。よろしくお願いいたします。 ということで、まずは今年のCOTY候補にも上がっているフォレスターに試乗してみた(残念ながらメーカーは辞退のようだが)。今や右を向いても左を向いてもSUVばかりというご時世だが、フォレスターは日本において、そんなSUVの元祖的な存在の一つと言ってもいいだろう。いわゆるクロカン四駆と呼ばれるハードな4WD車ではなく、もう少し乗用車寄りのそのスタンスは、スバルの四駆アイデンティティと相まって、ずっと一定の人気を保ってきた。そして今となっては、さらにライトなSUVが増える中で、逆にヘビーデューティな、男の道具としてのSUVというイメージができ、それは今回のモデルでも引き続き打ち出されている。 とはいえ、サイズも昨今の基準では特に大きくはないわけで、日本でも海外でも日常的にチョイ乗りできるクルマだ。そういったサイズの中で、使いやすさをさらに追求したのが新しいフォレスターだ。室内や荷室は他車比較でも広く、道具としてのクルマというイメージ通り。質実剛健に使うなら、このクラスで最適の一台と言えるのでは。
 
昨年の欧州カー・オブ・ザ・イヤーを受賞し、今年の日本カー・オブ・ザ・イヤーで10ベストカーに入っているボルボ XC40
それゆえ、これぞSUVの王道だとも言えるが、逆に言えば、保守的で地味なクルマという印象も否めない。最近のデザイン勝負のSUVとは一線を画した真面目なクルマが欲しいという人には、スバルというブランドと共に有力な候補となるだろうが、奥さんの意見を聞いたりするとどうなのだろうか。何にしろこのところは、SUVもスタイリングとブランド勝負の時代に入ってしまったようだ。今年のイヤーカー候補を見てみても、どれも見事にスタイリッシュ。その中でフォレスターは最も地味ではないか。しかしそれゆえ個性的とも言えるのだが。これがもしトヨタブランドだったりしたら地味さに拍車がかかりそうだが、スバルであれば、その無骨さこそが魅力になるということだろう。 本文にあるように、走りに大きな不満はないし、どう走ってもさすがハイブリッド車、街乗り燃費も10km/L台はいく。昔のフォレスターを思えば文句ない燃費だ。試乗記再開にあたって気の利いたことの一つも書きたいところだが、道具としてのクルマとしてなら、全く不満がないなぁこれ、と思う。

この国の「何か」がおかしい

さてスバルの場合は、何が不祥事だっけ、と思い直さねばならないほど、今年は不祥事が噴出した自動車業界だったが、最後のゴーン容疑者逮捕にいたっては、もう何でもありという気分になってしまう。クルマに罪はない、メーカーはいいクルマを作るかどうかで評価されるべきという意見もあるが、軽以外のクルマの多くが移動の道具というより、ほとんどブランド品と言ってもいいくらい、性能などよりもブランド力が購入を左右する要素となっている昨今ゆえ、クルマの良し悪しよりもメーカーやブランドの社会性が問われるのは致し方ないだろう。 そして日本にとってクルマ生産は、今でも国際競争力を持つ優良な国家産業であり、その盛衰は国家の盛衰に直結する。そんな中で自動車メーカーに限らず、クルマ関連産業がわけの分からない不祥事を繰り返すのは、この社会、「何か」がおかしい、としか思えない。マスコミでもネットでも、その何かを誰も追求していないように見えるのだが、その何かを明らかにしないと、日本のクルマ産業どころか、日本自体が衰退に向かうだろう。ゴーン問題にしても現時点ではあまりに不可思議な話で、何かがおかしいと言うしかない。この事件で一体誰が利を得るというのか。

2018年のイヤーカーは……

そんなおかしな日本でイヤーカーを選ぶとすれば、モーターデイズとしては不祥事など関係なく、クルマとしてやはり「スズキ ジムニー」となるだろう。新型ジムニーはパートタイム4WD車としては極めて洗練されており、今どきの安全装備も与えられているが、あくまでも現代の自動車として客観的に考えると、快適性とか操縦安定性とかは「ほぼなくて」、プリミティブなクルマらしさだけがある。それこそが最大の魅力だ。全く過去に戻ってしまったようなクルマ。過去に戻って、その当時やれたらよかったと思うことを、今やって作ったクルマ、だ。オートバイも原点回帰で、排ガス規制をクリアしたヤマハ SR400(1978年にデビュー)の販売が再開されたが、ジムニーもまあそんなようなもの。何にでも使える万能車ではないが、クルマに乗っている楽しさがある。 個人的にも納車されたが、乗り回していると40年前の若い頃の感覚に戻れる。コーナーは慎重に走るのだ(苦笑)。そういうプリミティブなクルマらしさをまた味わって、実に楽しく(でもけっこう危険な気持ちで気を引き締めて)乗っている。自動で走る乗り物ではなく、自分で操る乗り物。どんどん「クルマ」ではなく、快適な移動手段へと変化しつつある自動車だが、ジムニーはそうじゃないものとして作られたという点で、現代社会にクルマとは何かを訴えている商品であり、その一点だけでイヤーカーにしていいと思う。
 
今回試乗したフォレスターもスバル車の中ではジムニー寄りのクルマだろう。であれば、さらにプリミティブで無骨さを出した方向に振ってみると、より商品力は高まるのではないか。スバルには他にスタイリッシュなXVという選択肢もあるのだし。そんなことを思ってしまった。
 

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