キャラクター&開発コンセプト
FMCから7年目でハイブリッドを追加
初代ヴィッツは1999年に欧州戦略車(欧州名ヤリス)としてデビューし、2005年に2代目、2010年に3代目にフルモデルチェンジ。さらに2014年4月にはマイナーチェンジで「キーンルック」を採用し、新世代の1.3Lエンジンで環境性能を高めるなど、着実に進化してきた。目下、欧州をはじめ約80の国・地域で販売し、累計世界販売台数700万台以上を誇る量販モデルだ。
その3代目ヴィッツが2017年1月12日、2度目のビッグマイナーチェンジを行った。主な改良内容は外観のデザイン変更、そしてハイブリッド車の追加、以上の2点となる。
ハイブリッド車はアクア等に搭載されている1.5Lハイブリッドシステムを採用したもの。欧州向けには以前からあったヴィッツ(ヤリス)ハイブリッドだが(その代わり欧州ではアクアが販売されていない)、国内への投入は今回が初となる。
トヨタによれば、ハイブリッド車の販売台数はコンパクト2BOX市場でも急増しており(トヨタによれば2011年:約8万台 → 2015年:約31万台)、ヴィッツハイブリッドを望む声が高まっていたという。JC08モード燃費はアクア(33.8~37.0km/L)とほぼ同じ34.4km/Lを達成している。
また、それ以外にもショックアブソーバーの改良、ボディ各部の高剛性化による走行性能の向上、内装の質感向上(加飾をブラックで統一)などを実施。「持ちうる最大限の知恵と技術を注ぎ込み、通常のマイナーチェンジの枠を超えた大幅な改良を実施した」(プレスリリース)としている。
月販目標9000台。ライバルはノート e-POWER
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ヤリス WRC
販売チャンネルは従来通りネッツ店のみ。月販目標は現行型デビュー時は1万台、前回マイナーチェンジ時は8000台だったが、今回は9000台とされた。ヴィッツの昨年2016年(1~12月)の実績は7万1909台(平均月販約6000台)と落ち込んでおり、これを機に台数アップを狙う。
なお、身内で競合するアクアはトヨタブランド全店扱いで、月販目標は1万4800台。2016年(1~12月)の実績でも登録車で2位の平均約1万4000台を販売している。
他社モデルで競合するのは、昨年末にシリーズハイブリッド車が追加された日産ノート、そしてホンダのフィット(ハイブリッド)など。
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ヤリス WRC
なお、ヤリスと言えば目下の話題は、今年トヨタが18年ぶりに復帰したWRC(世界ラリー選手権)での活躍。初戦モンテカルロで2位、第2戦スウェーデンで今季初優勝を飾るなど、序盤から高い戦闘力を発揮している。なお、現在WRCのトップカテゴリーを走る競技車両「WRカー」は、ベースとなる市販車とは大きく異なり、エンジンは競技専用の1.6L直噴ターボ(ヤリスWRCは最高出力380ps以上)、駆動方式はもちろん4WDになる。
■外部リンク
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トヨタ>新型車C-HRを発売(2016年12月14日)
■過去の参考記事
ニュース>トヨタ、アクアをマイナーチェンジ (2014年12月掲載)
新車試乗記>トヨタ 3代目ヴィッツ 1.3F (2014年8月掲載)
新車試乗記>トヨタ 3代目ヴィッツ 1.3U (2011年2月掲載)
新車試乗記>トヨタ 2代目ヴィッツ RS / F(マイナーチェンジ) (2007年10月更新)
新車試乗記>トヨタ 2代目ヴィッツ RS (2005年2月更新)
新車試乗記>トヨタ 初代ヴィッツ B エコパッケージ (2001年9月更新)
新車試乗記>トヨタ 初代ヴィッツ RS (2000年12月更新)
新車試乗記>トヨタ 初代ヴィッツ (1999年2月更新)
価格帯&グレード展開
ハイブリッドは181万9800円から
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16インチタイヤ&アルミとエアロパーツを装備したヴィッツ ハイブリッド U “Sporty パッケージ”
価格は1.0L 3気筒エンジン(1KR-FE)搭載車の118万1520円からスタート。1.3L 4気筒エンジン(1NR-FE)搭載車は148万1760円~。上質感を高めた「Jewela(ジュエラ)」が147万3120円~。ガソリン車は4WDも含めて全車CVT(無段変速機)になる。
ハイブリッド車は181万9800円からスタート。「ハイブリッド Jewela」が198万3960円、今回試乗した「ハイブリッド U」が208万7640円、そして今回のマイチェンでドロップした1.5Lガソリンエンジン搭載車「RS」の代わりに追加された新グレード「ハイブリッド U “Sporty パッケージ”」が223万7760円。ハイブリッドはFFのみ。
ボディカラーは、新色のクリアブルークリスタルシャイン(写真)など全17色と豊富だ。
パッケージング&スタイル
デザイン一新で、ヤリス顔に
外観デザインに関しては、欧州向けヤリス同様に、ボディ前後のデザインを一新。フロントグリルを拡大したり、ヘッドライトやリアコンビネーションランプのデザインを変更して、ワイド&ロー感を強めている。
さらにオプションでフロントにBi-Beam LEDヘッドランプとLEDライン発光タイプのクリアランスランプを、リアには同じくLEDライン発光タイプのテールランプ(ストップランプに6個のLEDを使用)を用意。要するに新しいヤリス顔になった。
アクアより背が55mm高い
ボディサイズは全長が60mmほど伸びて、全長3945mm×全幅1695mm×全高1500mm、ホイールベース2510mm。同じ1.5Lハイブリッドのアクアより、50mm短く、ホイールベースは40mm短く、背は55mm高い。どちらもBセグとしてはコンパクトな部類に入る。
なお、主力グレードの最小回転半径は4.7mと小さいが、16インチタイヤを履く最上級グレード「Sportyパッケージ」は一挙に5.6mになることに注意。これは従来のRSと同じだが、これだけ大きいと小回りが効かない感が明らかに出る。
インテリア&ラゲッジスペース
質感&おしゃれ度アップ。ただし新設スイッチはあちこちに
割と大きく変わった外観に対して、内装は「あんまり変わってない」という印象。変わらなかったのは前回のマイナーチェンジで、すでにインパネデザインが一新されたからだろう。
ハイブリッド車では、タコメーターが例のパワーメーターに変更されるが、メーターやマルチインフォメーションディスプレイのあたりは基本的に従来通り。便利な買い物アシストシート(手荷物を助手席に置いておいても落ちにくい)も健在である。ハイブリッド車にはテレスコが装備されるのが嬉しい。
また、今回は加飾部分をブラックで統一するなどで質感を向上。また、試乗車はブラック基調だったが、上級グレードの「U」には内装色に茶系のバレルブラウン、中間グレードの「ジュエラ」には赤茶系色のマルサラが用意されるなど、内装カラーも頑張っている。トヨタ車もすっかりオシャレになった。
とはいえ、基本設計は7年前のままなので、その間に増えた各種スイッチは、空いているスペースに「仕方なく」という感じで配置されている。ハンドブレーキの下に設置されたエコドライブモードやEVモードスイッチなどがそうだ。
アクアより明らかに優れるポイント
後席はBセグメントの平均で、つまりそんなに広くはないが、実際に座ってみると、乗車姿勢がアップライトで座り心地も良く、なかなか快適。足先も前席の下に余裕で入るし、ヘッドルームにも余裕がある。乗降性については、乗り込むときに頭が引っかかりやすいが、アクアより明らかに優れる。後席の好印象は、ヴィッツならではのセールスポイントだ。
荷室は従来通り、アジャスタブルデッキボードでフロアの高さを2段階で変更できるのが売り。後席の下には駆動用ニッケル水素電池があり(外からは見えない)、荷室の下にはパンク修理キットなどが収まる。
基本性能&ドライブフィール
1.5Lハイブリッドシステムを改良
試乗したのはハイブリッドの上級グレード「ハイブリッド U」(208万7640円)。試乗車はT-Connectナビ 9インチモデル DCMパッケージ(30万5640円)やLEDランプセット(8万6400円)などのオプション込みで272万7000円と、なかなか立派なお値段である。
走り出してすぐに感じるのは、電気モーターでの発進や加速が心なしか力強いこと。システム出力はアクアと同じ100psで、現行プリウスやC-HRハイブリッドの122psより2割ほど低いが、車重は1120kgしかなく、現行プリウスより250kg以上、C-HRより320kgも軽い。さすがにこの差は大きい。
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ハイブリッド車は1.5L「1NZ-FXE」(74ps、111Nm[11.3kgm])とモーター(61ps、169Nm[17.2kgm])の組み合わせ。システム出力は100ps
気になるのはアクアとの差。システム出力は同じで、車重はヴィッツの方が20~30kg重いが、プレスリリースには「エンジン・モーター・インバーターなどの制御を改良した」とあり、何となくアクアよりダッシュは速いかも、という感じ。直接比べていないので断言はできないのだが。いずれにしてもパワートレインの印象はあくまでもトヨタ製1.5Lハイブリッド車の大枠を外れない。
やり切った感のあるシャシー
それでもヴィッツ ハイブリッドはよく走る。そしてプリウスやC-HRより二回りほど軽量コンパクトなボディは、街中を走り回るのにぴったり。また、従来の1.3Lガソリンモデルに比べると、車重が100kg増えているため(前軸で60kg、後軸で40kg増)、ほどよい重厚感もある。
また、サスペンションがしっとり動く感じや、静粛性の高さなど、走りの質感が妙に高い。200万円超の値段相応とも言えるが、輸入コンパクトにも引けをとらないものがある。プレスリリースに誇らしげに書かれた、「持ちうる最大限の知恵と技術を注ぎ込み、通常のマイナーチェンジの枠を超えた大幅な改良を実施した」という文句は、マイナーチェンジとしては異例に気合の入ったものだが、それも納得の仕上がり。具体的には、新構造となるショックアブソーバーの採用、ボディ各部のスポット溶接増し打ち等によるボディ剛性のアップ、インストルメントパネル周りのブレース板厚アップなどが行われたとある。
そんなわけでハンドリングも良くなった。3代目ヴィッツのハンドリングは、前回のマイナーチェンジでずいぶん良くなったと思ったが(例えばアンダーステアが軽減された)、今回のハイブリッドではボディ剛性のアップやサスペンションの改良が効いているのだろう、クルマの動きがいい。アンダーステアはマツダ車みたいに軽微で、ステアリングを切れば切っただけフロントが頼もしくインを向き、しかもリアが(当然トーションビームだが)それにしっかりついてくる。VSCの助けもほとんど必要としない。今回のマイチェンで欧州向けヤリスのノウハウが入ったのかもしれないが、開発陣としてはやりきった感のある仕上がりだろう。
ただ、タイヤサイズはハイブリッドだけで3種類あり、Fとジュエラが175/70R14、試乗したUが185/60R15(試乗車はダンロップのエナセーブEC300だった)、同“Sportyパッケージ”が195/50R16。中間にあたる15インチのバランスが絶妙なだけに、14インチと16インチのハンドリングはちょっと分からないところ。なお、U、F、ジュエラには15インチタイヤとアルミホイールのセットがメーカーオプションで用意されているので、これはお勧め。Uでは4万8600円高、Fとジュエラでは5万8320円高と値段も高くない。
高速道路も不満なく走る
高速道路での走りもいい。ミリ波レーダーを使うTSSPではなく、赤外線レーザー&単眼カメラ方式のTSSC(Toyota Safety Sense C)なので、レーダークルーズコントロールはないが、それでもUには普通のクルーズコントロールが標準装備されていて、楽に一定速度で巡行できる。無駄な加減速が減るため、燃費にも貢献する装備だ。
同じ1.5Lハイブリッドの2代目プリウスやアクアなどと同様、本線に合流する時の加速は申し分ないが、中間加速では一転ジワジワしか伸びない感もやはり大差ない。パワーウエイトレシオは11.2kg/psに過ぎないから、例えば今回のマイチェンでドロップした1.5Lガソリン(109ps)のヴィッツRSや、1.2Lターボ(以前は105ps、現行は90ps)+7速DCTのVWポロみたいな速さはない。
それでも静粛性はまずまずだし、乗り心地や燃費もいいので、高速ロングドライブは得意と言っていいだろう。
試乗燃費は16.9~26.0km/L、JC08モードは34.4km/L(ハイブリッド)
今回はトータルで約290kmを試乗。試乗燃費は、いつもの一般道と高速道路を走った区間(約110km)が16.9km/L。高速道路を90~100km/hで走った区間(アップダウンありの約90km)が23.0km/L。高速道路を70~80km/hで走った区間が26.0km/L。撮影などを含めて290kmトータルでの燃費は18.3km/Lだった。歴代プリウスやC-HR同様、高速道路で飛ばすと伸びないが、一般道で渋滞していると(EV走行が増えるので)燃費がどんどん良くなるのは相変わらずだ。
ハイブリッドのJC08モード燃費は全車34.4km/Lで、アクア(33.8~37.0km/L)とほぼ互角。ヴィッツの
ガソリン車(アイドリングストップ付で24.0~25.0km/L)と比べると4割ほど優れる。
燃料タンク容量はガソリン車(42L)より約2割少なく、アクアと同じ36L。燃料はもちろんレギュラー。
ここがイイ
(プリウスではなく)ヴィッツで十分と思わせる仕上がり
ヴィッツ ハイブリッドに試乗した今でも
アクア(2年前にマイナーチェンジしている)と何が違うのか?みたいな疑問はあるわけだが、アクアよりも背が50mmほど高く、おかげで室内は広くて、乗り降りは楽で、いかにもコンパクトカーらしい使い勝手を持ちながら、ミニプリウスとでも言うべき慣れ親しんだトヨタ製ハイブリッドの乗り味と優れた燃費性能を兼ね備えるところ。要するにプリウスではなく「ヴィッツで十分」、いや「ヴィッツの方がいい」と感じる人が世の中には多いのではないかと思う。
フルモデルチェンジしてから7年目のモデル末期ではあるが、最後の仕上げと言わんばかりに、デザインだけでなく、パワートレインやシャシーも入念に「改善」されていること。試乗したのが200万円超えのハイブリッド車だったせいは大きいと思うが、これまで乗ったヴィッツの中で一番いいというか、ヴィッツという名に違和感を覚えるほど、上のクラスのモデルに思えた。内装デザインはあんまり変わっていないが、質感は高くなったし、ドアの閉まり音の良さにも感心した(特に前ドア)。
ここがダメ
ステアリングスイッチに透過照明が付かないこと
昼間しか乗らなかったら気付かなかったが、夜になるとステアリングのあたりが真っ暗で、左右スポークに多数あるステアリングスイッチを文字通りブラインド操作するか、ルームライトをつけることになる。ステアリングスイッチは「ナビレディセット」というメーカーオプション(6スピーカー&バックカメラとセットで3万5640円)に含まれるものだが、透過照明くらいはつけて欲しかった。
もはや完全なる成熟期にあり、信頼性や燃費性能は折り紙つきのトヨタ製ハイブリッド車だが、正直なところ、どれに乗っても似たような運転感覚にはさすがに食傷気味。特にノート e-POWERのような100%電動の走りを知ってしまうと、というのが正直なところ。
総合評価
そして半分はハイブリッド車になった
ハイブリッド車が登場して20年、ついにヴィッツにもハイブリッドが搭載された。
2017年2月14日付のトヨタの発表によれば、「トヨタは、ハイブリッド車のグローバル累計販売台数が2017年1月末までに1,004.9万台となり、1000万台を突破した」「2017年1月末までに販売したハイブリッド車のCO2排出抑制効果は約7700万トン、ガソリン消費抑制量は約2900万kL(いずれも車両サイズおよび動力性能が同等クラスのガソリンエンジン車との比較)と試算している」とのことだ。
2016年度の日本における年間ガソリン消費量は5150万2218kL(
国土交通省統計)だそうだから、20年かけて、その半年分ほどを節約した計算になる。これはすごいことなのか、なんだか今ひとつよく分からないが、CO2排出を大幅に抑えたことは間違いなく素晴らしいことだろう。とにかく世はハイブリッド、じゃない、トヨタはハイブリッドなのだ。
あれは確か2001年頃、エスティマのハイブリッド車やクラウンのマイルドハイブリッド車が出たときだったと思うが、「2005年には世界中でハイブリッド車を年間30万台以上売りたい」とトヨタ首脳が言っていた。その2005年は23.49万台だったが、翌年には31.25台となり、その目標を達成している(2代目プリウスの大ヒットが要因だろう)。トヨタ首脳からは「そのうちに日本で販売するトヨタ車の半分はハイブリッドになる」と聞いた記憶もあるが、今やそれが現実になりつつある。
2016年のトヨタ国内販売は158万台で、そのうち67.7万台がハイブリッド車だった。これには商用車も入っているから、乗用車だけなら半分くらいになる。トヨタは有言実行する会社だなあ、とあらためて感服する次第。
今年はこのヴィッツハイブリッドも加わって、ますますトヨタのハイブリッド比率は高まるのだろう。とはいえ今回の場合は、トヨタを代表するコンパクトカーにハイブリッドがないのはいかんでしょう、ということより、フルモデルチェンジからすでに6年経ち、ハイブリッドでも投入しないとこれ以上売れない、という切実な営業的ニーズもあったように思われる。女性向けのコンパクトカーならパッソで十分だが、ヴィッツは男性にも売れるコンパクトカーだから、ハイブリッドがあればもっと売ってやるのに、というのが営業サイドの声ということだろう。
20万kmも当たり前の時代
1999年に登場した初代ヴィッツは、発売当初は1Lのみで84万5000円~128万円と安価だった。にも関わらず、欧州ではヤリスとして販売されるモデルだけあって、男性も胸を張って乗れるという点で貴重なコンパクトカーだった。そして10・15モード燃費は4AT車でも19km/Lを上回り、実燃費でも11km/Lくらい走った覚えがある。今回のヴィッツ ハイブリッドは181万9800円からで、試乗車は208万7640円、JC08モード燃費34.4km/L、試乗燃費は16.9km/L。装備も違うので直接比較はできないが、値段も燃費も1.5倍というところ。色々計算はあると思うが、これを見ると1999年の方がトータルでも出費は少なくて済んだように感じられるのだが……。
初代ヴィッツには、インターネット専用販売グレード「ユーロ・スポーツエディション」があった。これは欧州仕様のサスペンションを採用した、ヤリスに限りなく近いフットワークを持ったモデルだった。ちなみにインターネット黎明期のこの当時、クルマはいずれネット販売されるだろうと思っていたが、それはまったく実現していない。また今回の試乗車もクルマのIT化というか、IoTの分野では思うような進化は見られない。試乗車の足回りはまるで欧州車のように進化していたが、全車ディーラーオプションのカーナビ(いちおうT-ConnectとDCM搭載ナビだが)をいじってみても、デジタル系は何も進化していないんじゃないか、という気がした。3代目ヴィッツが登場した2010年12月というと、Andoridスマホがやっと普及し始めた頃。ヴィッツは大きく変わらないが(マイチェンは3回目だが)、世の中は大きく変わった。
かようにクルマという商品は、進化に時間がかかる。それでも昔は4年ごとにフルモデルチェンジしたものだが、昨今は6年はおろか、欧州車並みの8年が当たり前になってきた。それではなかなか進化しない。クルマの所有期間も伸びているようだし、何より多走行のクルマが増えた。某自動車雑誌には10年10万kmストーリーという連載記事があったくらいで、昔は10年10万km走れば、ひとまず区切りだったが、最近は20万kmも当たり前の時代になっている。クルマは丈夫になっている。デイズで使っている2代目プリウスも先日15万kmで車検を取った。あと5万kmは走るつもりで、多分走りきるだろう。10年落ち、20万km以上走ったプリウスがたくさん中古車で売られている時代なのだから。
新しいヴィッツハイブリッドも10年後は多分、まだまだ現役だ。そんな自動車がまだまだ走っている10年後に、自動運転の時代が来るとはちょっと考えられないなあ、というのが昨今の気分だ。商品がどんどん進化し、それに合わせて法律もどんどん変わり、どんどんモノが買い換えられていくということは、ことクルマに関しては考えづらい。プリウスが出て20年で、やっとここまで来た。これがクルマの進化する速度だ。クルマの進化の遅さや、クルマ関連の法的整備の遅さを見ていると、絶望的な気分になる。しかも「情報」ではなく、「人命」を預かるもの。昨今は人命より情報のほうが価値が高かったりするが、それでも自動運転で死亡事故でも起きたら、情報漏えいの比ではない問題になるだろう。でも自動運転で事故が起きないはずはない。事故は減るかもしれないが、必ず起きると思う。それへの対応は考えられているのだろうか。
「次期モデルの名は。」
そして、キーマンたちも歳をとっていく。豊田章男さんはもう60歳だし、トヨタのIT系を率いてきた友山専務も58歳だ。10年後も現職でやっているとは思えない。同世代のゲイツは一線を退き、ジョブズもすでにいないのがIT業界。むろんトヨタでも優秀な人材が出てくるだろうと期待したいが。話はずれるが、皇太子殿下は57歳だ。普通ならそろそろ引退を考えるこの歳以降に、新たな最高地位に、しかも死ぬまでついていなくてはならないというのは、想像を絶する苦悩だと思う。今上天皇に限らず退位を制度化するのは、明治以前の歴史を考えれば日本国の伝統として何ら問題ないと思う。もめるまでもないことだと思うのだが。
ヴィッツに話を戻すと、今回のマイチェンで、ますます「もっといいクルマ」になった。ハイブリッドの走行感覚は相変わらずだが、足回りとかは本当にいいクルマになったと思う。問題はその良さが「ハイブリッド」でしか消費者に対して訴求できないことだと思う。となればいっそ、マイチェンで車名を変えるという前代未聞?のことをやってみたら面白かったのでは。名前を変えるといっても新名をつけるのではなく、WRCで勝った「ヤリス」を名乗るのだ。走りもここまで欧州車っぽくなっているのだし、もともと欧州ではヤリスだったわけで、なんら問題はないだろう。「誰もが知っているヴィッツの車名があのヤリスに変わった」というのはスゴイ宣伝効果になると思う。そしてヤリスに乗ってみれば、その良さは十分納得できるのだから、名前倒れにはならない。数年後に出るであろう次期モデルでは、ぜひやってもらいたい、と書いておこう。