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マセラティ ギブリ ディーゼル:新車試乗記

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キャラクター&開発コンセプト

マセラティ初のディーゼルモデル

旗艦セダンのクアトロポルテより一回りコンパクトなモデルとして、2013年にワールドデビュー、日本では同年12月にデリバリーが始まったマセラティ「ギブリ」。ミドルクラスの4ドアセダンながら、伝統的なブランドイメージ通り、GTカー的なスポーティさや高級感を魅力とする。ライバル車はメルセデス・ベンツのEクラスやCLSクラス、BMWの5シリーズや6シリーズ グランクーペ、アウディのA6やA7 スポーツバック、ジャガー XFといったところだ。
 
新開発の3.0L V6 直噴ディーゼルターボ
今回試乗した「ギブリ ディーゼル」は、マセラティ初のディーゼルエンジン搭載車。欧州にはデビュー当初からあったが、日本では2016年3月7日に発売された。最高出力275ps、最大トルク600Nmを誇る新開発の3.0L V6ディーゼルターボエンジンを搭載し、0-100km/h加速6.3秒、最高速度250km/hの動力性能や欧州複合サイクルで17.0km/Lの燃費性能を謳う。 生産は現行クアトロポルテ同様、2013年1月に開設されたトリノのグルリアスコ工場(正式名アッヴォカート・ジョヴァンニ・アニェッリ工場)。これは旧ベルトーネ工場に新設されたもので、年間7万台の生産能力を持つ。伝統のモデナ工場では引き続きグラントゥーリズモやグランカブリオが生産され、アルファロメオ 4Cの委託生産も行われている。

前代未聞の急成長。グローバルで7万5000台を目指す

マセラティが誇る名車の一つ、Tipo 61 “バードケージ”(1959~61年)
1914年に創業したマセラティは、戦前は主にレーシングカーの製作やレース活動を行っていたが、戦後は高級GTカーを主としたロードカー事業に進出。経営難に陥った1960年代には仏シトロエン傘下に、1975年には地元イタリアのデ・トマゾ傘下に入り、1980年代にはビトゥルボなどの新世代GTカーで新しいイメージを得た。1993年にはフィアット傘下に入り、1997年には同じくフィアット傘下のフェラーリの経営管理下に入った。 2005年に経営権がフィアット(現FCA)直轄に戻ると、それまでの少量生産メーカーから脱し、中規模メーカーを目指す戦略にシフト。グローバルでの販売台数は、フェラーリ傘下だった1998年の518台から、2012年には10倍以上の6288台となり、翌2013年には1万5400台、2014年には3万6500台と200%を超えるペースで急増。2018年には7万5000台を目指すとしている。
 
マセラティ レヴァンテ
日本での年間販売台数は、2003年までは200台未満、2004年~2013年までは300~500台レベルだったが、2014年には1407台に増加。2015年には1449台を達成した。なお、輸入元は長らくコーンズだったが、2010年以降はマセラティの100%子会社であるマセラティジャパンになっている。国内のディーラー数は2016年8月現在、24拠店。9月からはマセラティ初のSUV「レヴァンテ」のデリバリーが始まる。 ■外部リンク マセラティ ジャパン>ギブリ ディーゼルを発表(2016年3月7日) マセラティ ジャパン>マセラティ レヴァンテ発表(2016年5月10日) ■過去の参考記事 ・新車試乗記>マセラティ ギブリ(3.0L V6ガソリンターボ) (2014年5月掲載)
 

価格帯&グレード展開

ガソリンは915万円~、ディーゼルは933万円~

ギブリのラインナップは2016年8月現在、3.0L V6ガソリン ツインターボ(330ps)の標準モデル(915万円~)、同型エンジンの410ps版を搭載するS(1054万円~)、4WDのS Q4(1135万円~)、そしてギブリ ディーゼル(933万円~)の計4モデル。トランスミッションは全車、ZF製8速AT。 なお、ハンドル位置はディーゼルが右のみ。ガソリン車のベースモデルとSには左と右があり、S Q4は左のみになる。併せてレヴァンテ(全車4WD)の価格も掲載しておく。 ■ギブリ       915万円~ ■ギブリ ディーゼル 933万円~ ■ギブリ S     1054万円~ ■ギブリ S Q4    1135万円~ ■レヴァンテ ディーゼル 976万9090円~ ■レヴァンテ      1080万円~ ■レヴァンテ S     1279万円~
 

パッケージング&スタイル

外観はガソリン車と変わらず

今回試乗したのはディーゼルだが、外観はガソリン車とまったく同じ。グレードを示すバッジもないので、ガソリンかディーゼルかの判別は、エンジン音に耳をすますか、タコメーターの文字盤を見ないと難しい。 一見、クアトロポルテとギブリはそっくりで、プラットフォームもかなりの部分が共通と思われるが、実際に2台を並べてみると、ボディラインやデザインはまったく異なるのが分かる。大型セダンらしい存在感があるのはクアトロポルテだが、デザイン的に尖っているのはギブリの方で、抑揚は強く、オーバーハングは切り詰められている。
 
マセラティは初代クアトロポルテ(1963~70年)の時代から、こうした4ドアクーペ的なものを本能的に作ってきたが、現代のギブリには、初代ギブリ(1966~73年)や往年のスーパーカーであるボーラ(1971~78年)、メラク(1972~83年)を連想させる意匠も散りばめられている。ドアは当然サッシュレスだ。 ボディサイズはEクラスや5シリーズというより、A7 スポーツバックや6シリーズ グランクーペに近く、かなり大きい。特に全幅は1945mmもあり、実はクアトロポルテと5mmしか違わない。
 
マセラティ クアトロポルテ
マセラティ ギブリ
 
初代マセラティ ギブリ (1967年)
マセラティ ボーラ (1971年)
 
    全長(mm) 全幅(mm) 全高(mm) WB(mm) 最小回転
半径(m)
BMW 5シリーズ(F10型、2010~) 4910~4920 1860 1470~1475 2970 5.5~5.7
メルセデス・ベンツ Eクラス (2016~) 4923~4950 1850~1852 1455~1468 2940 5.4
メルセデス・ベンツ CLSクラス(C218型、2011~) 4940~4995 1880 1410~1430 2875 5.2
ジャガー XF(2016~) 4965 1880 1455 2960 5.7
トヨタ クラウン マジェスタ(2013~) 4970 1800 1460 2925 5.6
マセラティ ギブリ(2013~) 4970 1945 1485 3000
アウディ A7 スポーツバック(2011~) 4990 1910 1420~1430 2915 5.7
ポルシェ パナメーラ(2016~) 5049 1937 1423~1427 2950
BMW 6シリーズ グランクーペ(F06型、2012~) 5010 1895 1390 2970 5.5
日産 シーマ(2012~) 5120 1845 1510 3050 5.8
マセラティ クアトロポルテ(2013~) 5270 1950 1470 3170 5.9
 

インテリア&ラゲッジスペース

イタリア車ならではの雰囲気

色気のあるインテリアは、今も昔もイタリア車の大いなる魅力。かつての工芸品的ハンドメイド感は薄れたが、ドイツ車や日本車には真似できない雰囲気がある。ダッシュセンターにはお約束のクロックも備わる。 また、オプションに含まれる大型パドルシフトは、フェラーリのようなコラム固定式で、コーナリング中でも確実に操作できる優れもの。その分、ウインカーレバーがステアリングリムから離れてしまい、操作する時に指を伸ばす必要があるが、こだわりが感じられる部分だ。

Android Autoに6月生産分から対応

8.4インチの大型タッチパネル「マセラティ タッチ コントロール」を備えたナビゲーションシステムは、2013年デビュー時と同じ。この場合、ナビやオーディオ/地デジの機能は、組み込まれたパナソニック製ナビが担っている。 ただし、2016年6月以降に生産されるクアトロポルテ、ギブリ、レヴァンテの3車種については、GoogleのAndroid Autoに対応した「マセラティ タッチ コントロール プラス(MTC PLUS)」になる予定。Android 5.0(Lolipop)以上のスマートフォンをUSBコードで接続すれば、Googleマップ、音楽再生、音声認識によるハンズフリー操作などが可能になる。また、iPhoneのApple CarPlayにも対応する。 ■外部リンク マセラティ ジャパン>Android Autoに対応(2016年7月13日)
 
後席はボディサイズの割にタイトだが、座り心地は良い
オプションのフルプレミアムレザーシート仕様。チルト・テレスコも電動
 
トランク容量はこのクラスで平均的な500L。60:40分割でトランクスルーもできる
トランク床下にはスペースセーバータイヤ(175/55R18)とバッテリーを搭載

基本性能&ドライブフィール

600Nmの大トルクや静粛性が光る

試乗したのは「ギブリ ディーゼル」(933万円)。 最高出力275ps/4000rpm、最大トルク600Nm (61.2kgm)/2000-2600rpmを誇る2987cc V6 DOHCディーゼルターボエンジンは、スクーデリア・フェラーリでF1エンジンの開発を長く担当していたパオロ・マルティネッリ指揮のもと、マセラティとイタリアのVMモトーリ社が共同開発したもの。ギブリのほか、クアトロポルテ(ディーゼルは日本未導入)、そしてレヴァンテにも搭載される。 スターターボタンを押すと、クククッとスターターが回った後、エンジンがドゥルン!と硬く、小気味いい音で瞬時に目覚める。アイドリング時の音は、知っていれば確かにディーゼルのそれだが、振動やノイズは最小限で、言われなければそれと気付かないレベル。メルセデスのS300h(直4ディーゼルハイブリッド)と比べても遜色ないくらい静かだ。
 
ボア×ストロークは83.0×92.0mm。燃料噴射圧2000bar(約2000気圧)、圧縮比16.5。可変ジオメトリーターボチャージャーを備える
「スタート&ストップ機能」ことアイドリングストップは標準装備。これにより燃費とCO2排出量を最大で6%低減したという。素晴らしいのは、アイドリングストップからの再始動が極めて素早く、縦置きエンジンでありがちな揺れやショックもないこと。ブレーキペダルから足を浮かせた瞬間、スターターが回る間もなく、いきなりドゥルン!とエンジンが掛かり、スムーズに発進できる。ピストンの停止位置を事前に動かして再始動に備えるマツダのi-stop並みに洗練されていると思った。また、試乗した日は最高気温が37.8℃に達する猛暑日だったが、そんな中でもほぼ確実にアイドリングストップする。
 
なお、ギブリは車両設定画面で、アイドリングストップ機能を完全オフにすることもできる。意外にこれが出来ないクルマが多いので、アイドリングストップ嫌いの人には嬉しい装備だが、少なくともギブリ ディーゼルの場合はエンジン再始動がかようにスムーズかつ静かなので、わずらわしいと思うことはほとんどないだろう。

0-100km/h加速は6.3秒、最高速度は250km/h

走り自体は、やはりガソリンのV6ターボとはまったく異なり、トルクにモノを言わせるタイプ。マニュアルモードで引っ張っても、エンジンサウンドやパワー感が劇的に盛り上がることはなく、4500rpmほどで早々にシフトアップしてしまうが、600Nmものトルクは車重2040kg(試乗車は2070kg)のボディを、1速で約50km/h、2速で約70km/h、3速で約100km/hまで、連続パンチを繰り出すように一気に加速させる。ZF製8速ATの仕事ぶりは完璧で、ステップ比は小さく、変速スピードは速い。パワーウエイトレシオ約7.5kg/ps、0-100km/h加速6.3秒、最高速度250km/hという数値はちょっとしたスポーツカー並みであり、ガソリンV6ターボ(330ps版)の5.6秒、263km/hに、実質的には遜色ないもの。動力性能で不足を感じることはまったくない。 ちなみに、走行モードは、シフトレバー横のボタンで変更可能。デフォルトの「オート」のほか、マニュアルモードの「M」、エコモード相当の「I.C.E(Increased Control & Efficiency、制御性&効率性向上)」、「スポーツ」が選べる。
 
そのスポーツを選んだ時には、新採用のマセラティ・アクティブ・サウンド・テクノロジーにより、エンジン音がスポーティに変化する仕掛けもある。実際にはアイドリング時や加速時の音量がわずかに大きく、ワイルドになる、という感じで、「ディーゼルの概念を超えるパワフルな排気音」という主張は、正直なところ大げさかなと思ったが、そこはマセラティの心意気というものだろう。このエンジン自体の一番の特徴は、なんといっても分厚くフラットなトルク特性、静粛性、スムーズさだ。 100km/h巡行時のエンジン回転数は1400rpmほどと低く、エンジン音は寝息のように静か。その気になれば80~90km/h台を1200~1300rpmで走ってしまうほど、粘りと滑らかさがある。高回転時の雄たけびや爆発的な盛り上がりこそないが、パワートレインはものすごくよく出来ている。
 
前後重量配分は51:49とあるが、車検証上は55:45と少しフロントヘビー
ハンドリングは十分にスポーティだが、ほとんど3速固定で走ることになるワインディングより、高速コーナーで本領が味わえるタイプ。踏めば湧き出るトルクと、ガシッと路面を捉えて離さない4輪を感じながら、高速道路を流す方が合っている。その点はまさに4ドアのグランツーリズモ。シャシーがエンジンに完全に勝っているクルマだ。もちろん、ミリ波レーダーを使ったACCも採用されている。 ブレーキもよく効く。ギブリ ディーゼルのブレーキは、ブレンボ製とは謳われていないが、それっぽい効きとデザインの4ピストン・アルミモノブロックキャリパーが標準装備される。信号で止まる時にはカックンブレーキになりやすいが、それはすぐにコントロールできるようになる。

試乗燃費は10.9~12.2km/L。燃料費はガソリン車の約半分

今回はトータルで250kmを試乗。参考ながら試乗燃費は、一般道と高速道路を走った区間(約80km)が10.9km/L(9.2L/100km)。一般道をi.C.E.モードで大人しく走った区間(約60km)が12.2km/L(8.2L/100km)だった。 JC08モード燃費は不明だが、参考値として発表されている欧州複合サイクルが17.0km/L。燃料タンク容量は70Lで、ガソリン車より10L少ない。なお、ギブリ ディーゼルは、メルセデス・ベンツのブルーテック同様、AdBlue(尿素水溶液)の定期的な補充が必要になる。
 
なお、2年前に乗ったギブリの3.0Lガソリンターボは、試乗燃費が6.4~7.8km/Lで、JC08モード燃費は6.8km/L(S Q4)~7.6km/L(ベースモデル)。なのでディーゼルの燃費は、おおむねガソリン車の7割増しという感じ。燃料価格は軽油の方が約2割安いので、実際の燃料コストはガソリン車の半分くらいと考えていいだろう。
 

ここがイイ

大トルク、静粛性の高さ、アイドリングストップ、燃費など、パワートレイン全体

エンジン、ミッション、アイドリングストップなどを含むパワートレイン全体。かつてのマセラティのように、打てば響くようにレスポンスする高回転型エンジンではないが、275ps、600Nmのパワーは十分。動力性能にまったく不満はない。 また、静粛性の高さは特筆すべき点で、ひょっとするとガソリン車より静かかも。アイドリング中こそ耳を澄ませばディーゼルと分かるが、走行中はほとんどそれを意識することはなかった。そしてもちろん燃費もいい。V6ガソリンターボ車だと実質6~7km/L台のところ、ディーゼルなら10~12km/L台で走ってくれる。高速巡行も快適で、まさに4ドアのグランドツーリングカーだ。

ここがダメ

伝統的な?不良っぽさやヤバさはない

実用エンジンとして文句なしのV6ディーゼルターボだが、往年のマセラティV8ターボやV6ターボのような不良っぽさ、ヤバさ、時に暴力的な加速感といったものはないこと。このあたり、マセラティにそうした昔のイメージを期待するか否かで変わってくるが、そうしたイメージが頭にすっかり刷り込まれているクルマ好きほど、期待とのギャップを感じてしまうかも。逆に言えば、そのあたりを満足させるパワー感、トルク感、サウンド、非日常性の、あざといくらいの演出はもう少しあっても良かったと思う。 本国仕様のタッチパネルに、パナソニックのナビを組み込んだオーディオ/ナビシステムは、これはこれで実用的とも言えるが、無理矢理感は否めないところ。とはいえ、今後出てくるAndroid Auto/Apple CarPlay対応モデルの使い勝手も今のところ未知数だが。試乗車にはバックモニターが付いていたが、解像度の低さが気になった。
 
右ハンドル車の場合、運転席の左足もとはセンタートンネルの張り出しが大きめで、足の置き場に少し困ること。ただしマセラティの場合は、右ハンドルがあるだけでもありがたいことで、ギブリについてはボンネットオープナーもちゃんと右側にある。問題ないレベルと言うべきか。 後席はボディサイズの割に広々という感じはなく、特にサンルーフ装着車では、後席に座ると目の前の天井が低く感じられた(ヘッドルーム自体は問題なし)。広さ的にはDセグメント相当、もしくは4ドアクーペ風という感じ。

総合評価

今やディーゼル車は知的なクルマ

2年前、ギブリのガソリン車の試乗記で「ギブリ Sの285km/hなどという最高速は、もはや日本では実質的な意味を持たない」とか、「ハイオクガソリンがリッター170円オーバー時代に実燃費は総平均で6.2km/Lだ」とか書いた。この2年で、高速道路は制限速度を120km/hに引き上げようという機運が高まっているし、ハイオクガソリンはリッター130円を切るあたりまで下がっている。2年前より少しはマシになったと考えるべきかもしれないが、それでも新東名を設計速度の150km/hで走ることはできそうもないし、ガソリンが劇的に安くなったわけでもない。
 
そんな中で、ディーゼルのギブリに乗ると、同じギブリでもこの2つの問題がなんとなく解決出来たような気がする。すさまじいまでのパワー感こそないが、いいペースで粛々と高速巡航するのは気持ちいいし、ワインディングではガソリン車同様に十分楽しい。燃料代はガソリン車の半分で済む。このクラスで10km/L以上走るなんて、と驚かずにいられないし、しかも単価の安い軽油だ。そしてディーゼルのネガはほとんど感じられないわけで、これは確かにいい。しかしその代わりと言っては何だが、エクスクルーシブなクルマに乗ってる感がやや希薄になっている気はする。ガソリン車が持つ、他を圧倒する非日常感はなく、完成度の高い上質なFRセダンという感じだ。 ところで、巨大な高級SUVやいわゆるスーパーカーで、街なかを走っている人を見ると、お金があるのだろうなあと思いつつも、あまり知性が感じられないのだが、皆さんはどうお感じだろう。他のいわゆる高級車の一部も失礼ながらそんなふうに見えなくもない。その点、ギブリが今、日本で数を増やしているのは、端正で知的な雰囲気があるからだと思う。本当にお金のある人が、あまりに売れているドイツ車以外で選ぶとしたら、知的なマセラティは良い選択になる。高級邸宅の販売用にパースを描く場合、ガレージに収まっているクルマはメルセデスよりマセラティが栄えるのは確かだ。
 
マセラティというブランドは、ドイツのライバル車と比べて、孤高の地位にある。誰もがすぐ分かるドイツの高級車ではなく、普通の人にはちょっと得体の知れないイタリア車だ。いくら年間5万台生産されるようになったとはいえ、知る人ぞ知るという部分こそ、このブランドの大きな価値だろう。そんな差別化されたブランドに先端技術のディーゼル車があることは、より希少価値を高めている。そしてディーゼル車のイメージに妙な不良っぽさはない。 ブランドイメージとしては、環境に優しいとされ、また最新テクノロジーでもあるディーゼル車であれば、より知的さが強調される。今やディーゼル車は、分かる人には分かる知的なクルマなのだ。むろん、ネガがまったく気にならないという点で、ギブリは今まで乗ったディーゼル車でピカ一。アイドリングストップからの始動のスムーズさは魔法のようだ。

ライバルは完全自動運転のEV

そんなギブリだが、ナビだけはどうにもいただけなかった。だがこれはすぐにGoogle(とApple)が解決してくれるだろう。日本車メーカーがその対応にもたついている間に、輸入車のナビには先行してAndroid Auto(Apple CarPlay)の対応が進んでいる。ナビ同様にディーゼル搭載で出遅れている感のある国産高級ブランド車はなかなか厳しい。どんどん先行するディーゼルの高級輸入車に乗ってみるにつけ、ガソリン車ではいいところまで来た国産高級車が、また引き離されているように感じてしまう。大衆車の部分では中国車に追われ、高級車の部分ではやはり欧州車に勝てないとなると、ナビ業界をはじめ日本の自動車産業の未来を憂えずにはいられない。 実際、1000万円を超えるケースは限られるにしても、ある程度以上の購入予算があるクルマ好きだと、魅力的な輸入車を選んでしまうというのが現状だろう。国産車 vs. 輸入車という点では、結局40年も同じような図式で語られている。とはいえ、クルマなんかなんでもいいよ、という人の割合は、40年前より確実に増えているわけで、そういう人の関心は走りや乗り味より、今や自動運転だ。そこでもし完全自動運転のEVができたとして、ギブリと同じ価格だったら、どちらを買うかと想像してみると、さすがにギブリも厳しいかも。しかしまあ、そんな時代が来るまでは、当面ギブリの優位は揺るがないはずだ。
 

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