キャラクター&開発コンセプト
4代目は「TNGA」の第一弾
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東京モーターショー2015で一般公開された新型プリウス
2015年10月に技術内容を発表、12月9日に発売された新型プリウスは、1997年デビューの初代から数えて4代目。新型はこれまで進化させてきたハイブリッドシステムに磨きをかけ、駆動用バッテリーに(プリウスαやプリウスPHVを除く)普通のプリウスで初のリチウムイオン電池を採用している(一部グレードを除く)。
また、トヨタが推進するクルマづくりの構造改革「Toyota New Global Architecture(TNGA)」を採用することで、斬新な「低重心スタイル」や世界トップクラスのCd値(空気抵抗係数)0.24(先代は0.25)を実現。トヨタが掲げる「もっといいクルマづくり」の先頭を行くモデルになっている。開発コンセプトは「Beautiful Hybrid」。
JC08モード燃費40.8km/Lを達成。初の4WDモデル「E-Four」も登場
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プリウス初の4WDモデルとして設定された「E-Four」
これらによって新型プリウスは、世界トップクラスの燃費性能を実現し、JC08モード燃費で40.8km/L(販売主力モデルでは37.2km/L)を達成。また、プリウス初の4WDモデルでは、後輪を電気モーターのみで駆動する「E-Four(電気式4輪駆動方式)」を採用し、こちらでもJC08モード燃費34.0km/Lを達成している。
なお、E-Fourや一部グレードの駆動用バッテリーには従来通りニッケル水素電池が使われる。
月販目標1万2000台
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ミッドランドスクエア名古屋にて。後ろはトヨタ ミライ
生産工場は、トヨタ本社の堤工場と、2016年9月より生産開始する高岡工場。
販売チャンネルはトヨタブランド全店(トヨタ店、トヨペット店、トヨタカローラ店、ネッツ店)。月販目標台数は先代発売時より2000台多い1万2000台。
発売後一ヶ月時点での受注台数は、約10万台。先代発売時は目標の18倍となる18万台だったが、いずれにしても爆発的な売れ方ではある。
■外部リンク
トヨタ>ニュースリリース>新型プリウスを発売(2015年12月9日)
■過去の新車試乗記
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初代トヨタ プリウス (1998年1月掲載)
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初代(後期型)トヨタ プリウス (2000年7月掲載)
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2代目トヨタ プリウス (2003年10月掲載)
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2代目(後期型)トヨタ プリウス (2005年12月掲載)
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3代目トヨタ プリウス (2009年6月掲載)
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トヨタ プリウス α (2011年6月掲載)
価格帯&グレード展開
リチウムイオンか、ニッケル水素か
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A “ツーリングセレクション”(アティチュードブラックマイカ)
新型プリウスのラインナップは、燃費スペシャルと価格スペシャルを兼ねた「E」の242万9018円からスタート。しかしEは駆動用電池こそ高性能なリチウムイオンだが、内装・装備が簡素なので、実際の販売主力は、中間グレードの「S」(247万9091円~)、上級グレードの「A」(277万7563円~)、最上級グレードの「Aプレミアム」(310万7455円~)と、約30万刻みで設定された上位グレードになる。
Sはニッケル水素電池ながら、オプション設定や装備は充実。Aはリチウムイオン電池で、先進安全装備「Toyota Safety Sense P(TSSP)」も標準装備。Aプレミアムはシート等が本革仕様になる、といった内容。
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ボディカラーは全9色。写真の「サーモテクトライムグリーン」は、赤外線反射率の高い酸化チタンを塗料に使うことで、車体表面の温度上昇を抑える機能を持つ
また、「S」「A」「Aプレミアム」には、215/45R17タイヤを履く“ツーリングセレクション”が約10~15万円高で設定され(それ以外は195/65R15)、また電気式4WDの「E-Four」が約20万円高で設定されている。E-Fourのリアモーター(7.2ps、55Nm)は約70km/hまで駆動を行う。
購入時に留意したいのは、上にある通り「S」と「E-Four」の駆動用電池がニッケル水素になること。リチウムイオン電池搭載車との性能差は、少なくともカタログ上ではない。
■E FF:242万9018円
■S FF:247万9091円~/E-Four:267万3491円~
■A FF:277万7563円~/E-Four:297万1963円~
■Aプレミアム FF:310万7455円~/E-Four:330万1855円~
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新型プリウス用に新開発されたリチウムイオン電池。AとAプレミアムのFF車、そしてEに搭載
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新型プリウス用に新開発され、従来より小型軽量化されたニッケル水素電池。SグレードとE-Fourの全車に搭載
パッケージング&スタイル
「先駆け」の名にふさわしく斬新
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Bi-Beam LEDヘッドランプは全車標準
車名がそもそも「先駆け」なので、先取のデザインはプリウスのDNA。新型でも切れ長の多角形ヘッドランプとリアコンビランプ、低いボンネットとルーフ、後ろで天地が狭まりつつ、リアウインドウにつながるサイドウインドウなど、かなり斬新。初めて見た時にはギョッとしたが、これぐらいやらないと海外市場、特に米国では目立てないかも。そしてトヨタが誇る燃料電池車「ミライ」に似ていたりもする。
初めて全高が低くなった
全体の特徴は、トヨタ言うところの「低重心スタイル」。全長は60~80mmアップ、全幅は15mmアップしたが、全高は歴代プリウス共通の1490mmから、今回初めて低くなり、1470mmになった。同時にノーズ先端は70mm低く、ボンネット後端(カウル)は62mm低く、リアスポイラー(車両後端)は55mm低く、前席乗員着座位置は59mm低くなった。
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ルーフピーク(頂点)が170mm前進したことで、空力特性を改善。全高が低くなったことと併せてクーペっぽさが増した
インテリア&ラゲッジスペース
見晴らし良好。シートも良くなった
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ステアリングは従来の楕円から真円に変更。純正ナビ(全車ディーラーオプション)のディスプレイサイズは9インチ
インパネ形状もエクステリアに劣らず斬新。セオリー通りエクステリアと呼応したデザインで、伝統のセンターデジタルメーターを継承しつつ、有機的なラインで全体をまとめている。
カウル位置が低く、サイドウインドウの下縁も低いため、視界は後方も含めておおむね良好。先代より前席ヒップポイントは59mmも下がったが、実際にはその分、シートリフターで上げてしまうため、低くなったという実感は意外にない。ただし左Aピラーによる死角は、右左折時に若干気になった。
従来モデルより明らかに良くなったのはシート。シート内のバネ特性やクッションパッドを変更したことでフィット感が増した。後席のヒップポイントも少し下がったが(-26mm)、座面クッションが太ももをしっかり支えるものになり、リラックスして座れるようになった。
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AとAプレミアムに標準のホワイト加飾されたセンターコンソール。ステアリングリムも同様に加飾される
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電子制御シフトレバー「エレクトロシフトマチック」の操作感はほぼ従来通り
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後席は空間そのものは大差ないが、シートクッションが大きくなり、ホールド性が大幅に改善された
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写真はAプレミアムの8ウェイ電動本革シート。座り心地、ホールド性、質感など不満なし
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駆動用バッテリーが後席下に移動したため、荷室容量は従来の446Lから502Lに拡大(E-Fourはリアインバーターの分だけ減って457L)
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荷室床面は先代より110mm低くなった。AプレミアムにはAC100Vのアクセサリーコンセントも付く。床下にはパンク修理キットや工具
基本性能&ドライブフィール
乗り心地がよくなった。そして静かになった
試乗したのは、Aプレミアム “ツーリングセレクション”(車両本体319万9745円)。販売店オプションのナビ等込みで約360万円。
走り出してすぐに分かるのは「乗り心地が良くなった」と「静かになった」、そして「モーターで走る領域が増えた」こと。
静粛性については、エンジン音やロードノイズなど、全体にワンランク静かになった。これには、モーターで走る領域が増えたことも効いている。アクセルを深く踏み込まなければモーターだけで50km/hくらいまで走ってしまう感じ。新開発のモーターは小型・軽量化および「高出力密度化」されたものだが、試乗車の場合は駆動用電池がリチウムイオンなのも大きいのでは、と想像する。
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エンジンは最大熱効率40%を実現したという改良型「2ZR-FXE」
パワーに関しては、エンジン単体が98ps、モーター単体が72psで、システム出力は122ps。先代に比べて劇的にパワフルになったという感じは、正直なところあまりしなかったが、エンジンがかかった後も、その唸りはずいぶん静かになった。あるいはキャビンに侵入してこなくなった。アクセルを乱暴に踏み込めばエンジンが掛かって唸るという「プリウス的な走り」は残っているが、従来型オーナーなら「静かになったなぁ」と感慨深いだろう。
また、ドライブモードを「PWR(パワー)」に変更すれば、明確にパワー感が高まる。ただしスイッチがセンターコンソールにあり、走行中にブラインド操作しにくいのが欠点。パドルシフトは採用されていない。
劇的に良くなったハンドリング
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“ツーリングセレクション”の215/45R17タイヤ。先代の17インチは専用開発のミシュラン プライマシーHPだったが(後でトヨタ 86にも採用された)、新型(試乗車の場合)はトーヨーのNanoEnergy(ナノエナジー)になった
劇的に良くなったのがシャシー性能。低重心のTNGAプラットフォームの採用、ねじり剛性が約60%上がったという高剛性ボディもさることながら、リアサスペンションが従来のトーションビームから、ついにダブルウィッシュボーンになったのが効いている。リアサスの突っ張り感がなくなり、しっとりと、そしてよく動くようになり、段差での突き上げ感も劇的に減った。
なお、新型のボディには環状構造の骨格を採用。溶接打点の間隔をスポット溶接より狭くできるレーザースクリューウェルディング(LSW)や構造用ボディ接着剤も採用されている。そして980Mpa以上の超高張力鋼鈑の採用率は従来型の3%から19%へと大幅にアップしている。
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モーターとPCUを小型化したことで補機バッテリーを従来の荷室からエンジンルーム内に移動。駆動用バッテリーは荷室床下から後席下に移動した
また、電動パワステの剛性感も格段に上がった。従来型オーナーならすぐに「なんだかすごくしっかり感が出たなぁ」と思うだろう。
シャシーの良さは山道を走れば一目瞭然。先代でも操縦安定性は高かったが、ことコーナリングに関してはアンダーステアが強めで、はっきり言って曲がらなかった。それが新型ではリアが追従するようになったことで、ステアリングを切れば切っただけ曲がるようになり、高速コーナーでも安心感が格段に増した。それに何より運転していて気持ちがいい。
TSSPを上位グレードに標準装備。レーダークルーズも全車速対応
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Bi-Beam(バイ・ビーム)LEDヘッドランプは全車標準。オートマチックハイビームはTSSPとセット
先進安全装備については、ミリ波レーダーと単眼カメラを使った「Toyota Safety Sense P(TSSP)」の採用がトピック。これにより、歩行者検知機能付のプリクラッシュセーフティが備わった。ミリ波レーダーは先代にも採用されていたが、画像認識するカメラが新たに付いたのはやはり心強い。
また、TSSP装着車には、レーダークルーズコントロールも備わる。パーキングブレーキが電動ではなく、足踏みのままなのはちょっとがっかりだが、幸いレーダークルーズコントロールは全車速追従機能付。渋滞等で停止してもブレーキを保持し、発進もレバー操作もしくはアクセルペダルの軽い踏み込みだけで追従走行を再開する。
新型ではもっと日常的なところでの運転支援も充実している。走行中、後方の車両が死角エリアに入ると、ドアミラー内のLEDインジケーターでドライバーに知らせる「ブラインドスポットモニター」のほか、低速での取り回し時での接触回避や被害軽減を行う「インテリジェントクリアランスソナー」、駐車時のステアリング操作を支援する「シンプルインテリジェントパーキングアシスト」などは、Aグレード以上に標準装備される。
試乗燃費は18.9km/Lと、JC08モードの約半分
今回はトータルで約315kmを試乗。参考ながら試乗燃費は一般道と高速道路を走ったトータル区間(約315km)が18.9km/L。うち、一般道を走った区間(約25km)が23.5km/L、高速道路をレーダークルーズコントロールを使用して実質80~100km/h(平均91km/h)で走った区間(約90km)が23.1km/Lだった。
なお、JC08モード燃費は先代の30.4~32.6km/Lに対して、試乗した主力グレードのFF車で37.2km/L、「E」グレードで40.8km/Lと2割増し以上。額面上は現行アクアの37.0km/Lとほぼ互角ということになる。
今回は基本的に空調はオンで走っており、実燃費に関しては外気温の低さ(試乗時は夜間マイナス2度~日中10度Cほど)や、ヒーターの作動が足を引っ張った感じ。
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4.2インチカラーTFTツインメーターを採用。右側は速度などの基本情報、左側は切替可能なマルチディスプレイ
なお、新型プリウスの空調は、冷やす方は先代同様、家庭用エアコンのような電動インバーターコンプレッサー(湿度センサー付)を使用。温める方は普通にエンジン冷却水の熱を利用するが、新型ではエンジン冷間時、冷却水を排気熱回収器とヒーターコアだけで循環させるようになった。その方がヒーターの温まりだけでなく、エンジン暖機も早くなる。
基本的に、高速道路より一般道の方が燃費が良くなるのは、歴代プリウス(トヨタのハイブリッド車)と変わらず。高速道路で巡航速度を80~90km/h以下に抑えれば25km/L超も可能だろうが、リアルワールドの100km/h巡行では23km/L台が現実的に思えた。ただ、エンジン停止が可能な速度域は先代では約70km/hまでだったが、新型は約110km/hまでになったようだ。
燃料タンク容量は43L(Eのみ38L)で、指定燃料は従来通りレギュラー。
ここがイイ
間違いなく「いいクルマ」になった。乗り心地、静粛性、ハンドリング、シート、ドアの閉まり音など
全てが良くなった新型プリウス。中でもシャシーは本当に良くなった。乗り心地は明らかに良くなり、静粛性も明らかに高まった。山道を走れば、ハンドリングも見違えるように良くなったことが分かる。ステアリング操作に対して正確に反応し、アンダーステア感は激減し、思い通り曲がるようになった。走りも力強くなって、よりEVに近づいた(依然エンジンメインで走るハイブリッド車ではある)。
シートも明らかに良くなった。試乗車はAプレミアムの本革シートだったせいもあり、質感や触感も悪くなかった。あと、ドアを閉めた時の音もすっかり高級になった。
AプレミアムにはAC100Vのコンセントが2つ、室内センターコンソール後方と荷室左側に標準装備される(合計1500W)。いざという時に非常用電源というか、自立移動式の発電機になるという点では、もはやクルマを超えている。
最後にスタイリング。未来感のある独自な造形は、唯一無二な存在感を漂わせている。MIRAIより未来っぽく見えるほど。シエンタやこのプリウスを「かっこいい」と言う人は多くないと思うが、それを世に送り出すトヨタに拍手。それでも売れているあたりに、日本人の変化を感じてしまう。
ここがダメ
モード燃費ほど良くなった気がしない実燃費。Aプレミアムのホワイト加飾
JC08モード燃費は最高40.8km/L、主力グレードで37.2km/L。特に40km/Lの大台に乗せるのは開発時の至上命題だったようだ。しかし、そういった数字が期待させるほど、実燃費は従来モデルと大差ないように感じられた。先代に試乗した時の燃費は、約560km走って17.8km/L。今回は約315km走って18.9km/L。もちろんエコ運転すれば、先代でも新型でも20~25km/L台まで伸びそうだが、実感としては先代に比べて1割も良くなっていないという印象。足がいい分、ワインディングをハイペースで走ったのは確かだが。
そもそも燃料タンクの容量まで減らした燃費スペシャルのEで、JC08モード燃費40.8km/Lを謳うというのはどうなのだろうか。世界トップクラスのエコカーとして、堂々と主力グレードで勝負するのがいいと思う。
視界は確かに悪くないが、本文でも触れたように、左側Aピラーの死角だけは気になった。空力重視のクルマゆえAピラーがこの位置・角度になるのは理解できるが、対歩行者や自転車の安全に関わる部分なので、さらなる改善を期待したい。
上位のAグレード系には、もれなく陶器をイメージしたというホワイト加飾がインテリアに施されるが、ステアリングやシフトレバーまわりはいいとして、フロントコンソールトレイまで真っ白になるのは、そうとう好みが分かれる。ここはオプションでも良かったのでは。
高速道路で速度域が高くなると、全体に騒がしくなってくること。高速域でもそんなにうるさくならない欧州Cセグメント車との差を感じた。
先進安全装備で少し物足りなかったのは、車線逸脱を監視・警告する「レーンディパーチャーアラート(ステアリング制御付)」のステアリング制御(操舵アシスト)がほとんど体感できなかったこと。このあたりの考え方は各メーカーで違うのだろうが、他社(ドイツブランド3社やスバルのEyeSight、Honda SENSINGなど)のように、もうちょっと積極的に介入させてもいいと思った。
総合評価
初代と2代目プリウスのこと
初代プリウスが登場したのは、モーターデイズを発行している当社、株式会社デイズが仕事を始めた1997年のこと。おこがましい言い方だが、デイズはプリウスとともに生きてきた。プリウス同様、「21世紀へGo」とばかり、アナログコンテンツとデジタルコンテンツのハイブリッドビジネスを目指して、デイズは設立されたのだったが、それから19年の間、順調に売れ続けたプリウスとは異なり、売れたり売れなかったり。まあなんとかこれまで継続しているのは、皆様のおかげとお礼申し上げたい。
この20年ほどで消えてしまったクルマは多いが、消えた会社はもっと多い。その点、デイズはまだあるだけいい方なのかもしれないと自ら慰めてみる。相変わらずアナログでもデジタルでも、未来的な作業は大してできていないが、DAYSではなくDAYZというクルマが登場して今も販売ランキングベスト10に入っているくらいで、デイズという社名(の音)だけは、ちょっとだけ未来を先取りしていたのかもしれない(すでに追いつかれ、追い越されているが…)。
そんなデイズが敬意を表して社用車として現在使っている計3台のプリウスは、いずれもまだ2代目だ。3台とも今のところの生涯燃費はだいたい18km/Lくらい。渋滞路から高速道路まで、それぞれ月2000~4000kmほど走らせているが、ガソリンが安い昨今でもあり、移動経費の見事なまでの安さには十分満足している。パワー感にも不満はなく、よく走る。パッケージングにも特に不満はなく、後席に乗せた人も狭いとは言わない。さすがに先進安全装備は最新モデルに見劣りするが、これは古いモデルである以上、致し方ない。また、一度も使ったことはないが、2代目でも駐車スペースに半自動で入ることができるはずだ。
ナビにBlueToothでスマホをつなげれば、ハンズフリー通話もできる。そして、5年程度で地図更新を終了してしまうメーカーが多い中、トヨタが偉いのは発売後10年以上経たナビでも、更新地図データを提供してくれることだ。純正ナビ画面は見やすく、使いやすい位置にあり、ナビ性能も道案内くらいならほとんど不満がないので、これはたいへんありがたい。それでもさすがにアナログTVチューナーは砂の嵐だが。
不満があるのは足回りの軟弱さや、違和感があるほど、よく転がる(アクセルのオンオフに連動せず惰性で走ってしまう)感覚だ。アクセル開度とパワーユニットの出力によるハーモニー、それを受け止めて踏ん張るしなやかな足回り、といった走りの気持ちよさは、2代目には望むべくもない。
日本のクルマの底上げに大いに貢献する
しかし、新型である4代目では、2代目で不満だった部分が見事に改善されていて、走りが本当に心地よくなった。これなら欧州車好きが足に使っても、ひとまず不満がないのでは。ここは見事な進化だ。実際に走ってみた燃費はそう良くなっていない印象だが、走りがこんなに良くなっても、燃費は少なくとも従来と同等以上というのが、4代目の真骨頂だろう。
こうなるとすぐにでも社用車を入れ替えたいところだが、残念ながら、うちのようなビンボー会社にはあまりに高価過ぎて(バックカメラとナビ、先進安全装備のTSSPをつければ、Sでも総支払い額は300万円近い)、購入は難しい、というのが悲しい現実だ。とはいえ、個人購入なら他のクルマと比べてけして高くはないから、売れているのはよく分かる。
さて4代目は「もっといいクルマ」になったし、それなりに走りも楽しめるが、燃費さえ気にしなければ、もっともっといいクルマがあるのも確か。同じクラスには、乗って気持ちいいクルマは多々ある。
ただ、それらの燃費はごく普通で、それゆえ相対的に維持費が高いことにもなる。クルマというものに、そうこだわりのない多くの人にとっては、燃費が良くて、車両価格はそう高くなく、そして走りがこれまでよりだんぜん良くなったというのであれば、これはもう言うことはないはず。プリウスはクルマ好きがあえて乗るクルマとまでは言えないと思うが、多くの人がこういった「足のいい」クルマに乗るようになることは、日本の自動車社会にとって重要な転機だと思う。プリウスに乗って、「いいクルマ」感を知った人は、買い替えの時までにはクルマのハードウエア、特にシャシー性能に対するシビアな感覚が育っているはず。となると、その後は「いいクルマ」以外は売れなくなるだろう。つまり新型プリウスは、日本のクルマの底上げに大いに貢献する、歴史的価値のあるクルマと言えそうだ。
「もっといいクルマ」への、さらなる期待
と、ここで終われば、美しく原稿が仕上がるのだが、モーターデイズとしてはつい、まだいろいろと書いてしまう。新型プリウスの外観デザインは斬新で素晴らしいが、気になったのが内装だ。「ここがダメ」でも書いた通り、Aに標準装備されるセンターコンソール、シフトパネル、ステアリングの、陶器をイメージしたというカラーセンス(真っ白)は確かに斬新だが、どうにもいただけない(SやEは普通のグレーになる)。シートを含めて白の内装なら、もちろん合うのだろうが、黒の内装にもこれを残したのはどうしてなのだろう。Aで黒に変更するには、例えば2万5000円ほどでアクセサリーの「センターコンソールトレイ(ブラック)に変更するという手があるが、ステアリング部分の変更は難しいだろう。また、これは最新モデル全般の傾向ではあるが、運転席はゆったり広々ではなく、タイトに仕上がっている。スポーツカーではないので、もっとゆったりした雰囲気にしてもらいたいが、それはこの空力デザインや時代に合わないということなのだろうか。
また、ナビディスプレイの位置が低くて、視線が下方へ移動してしまうのも気になった。インパネセンターの一番上にエアコン吹き出し口があるため、その分ディスプレイの位置が下がっている。これでは先代や先々代と比べても、視線が下がってしまう。初期デザイン案ではこんなレイアウトではないだけに、何か理由があったのだろうか。
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ITSコネクトの受信画面
また、どれくらいの人が使っているか分からないQi(チー: ワイレス充電規格)には対応しているものの、それ以外のスマホ連動機能では特に見るべきものがない。代わりに行政肝いりのITSコネクトは無料キャンペーン中だが。
それに関連するが、TFTカラー液晶のセンターメーターは見やすく、違和感なく使えるが、最近発売されたアウディTTやA4、発売間近のジャガー F-PACEなどは、いよいよ地図まで表示する全面液晶の大型パネルメーターになってきている。未来感があるのはそういうタイプで、プリウスのようなクルマにこそ、そういった新機軸が欲しかったと思う。
2代目登場時には本当に感動した自動運転の先駆けであるインテリジェント パーキングアシストは、12年ほどの長い時を経て大きく進化し、かなり使えるものになっていた。最初は、やはり操作への習熟が必要だが、実際に使えるところまで来たと思う。ただ、それに習熟する作業より、自分で車庫入れする方が簡単という人が圧倒的に多いという現実は変わっていない。また、ハンドルから手を離した状態で、ステアリング自動操舵で見事なまでにピッタリと路肩に寄せて縦列駐車するので、ひょっとしてぶつかるのではないかと心臓に悪い。自動運転というものは、どれだけクルマを信頼して身を預けられるかが問われるのだなと実感した。
ハイブリッド車として走りが素晴らしくなった点で、4代目の進化は著しい。ただ「21世紀へGo」という未来感は、案外乏しく思えた。プラットフォームを刷新するというクルマとしての革新は見事に果たしたが、世界初のハイブリッド車という先進イメージがもたらす未来カーとしてのインテリジェント性能は、通常進化の範囲にとどまっている。日本で一番売れるクルマがここまで来た、と評価すべきだが、それでもそういうクルマだからこそ、もうちょっとすごい未来を提示して欲しかったという気持ちも湧いてくる。「(初代プリウスのような)突き抜けた日本製商品よ、今こそい出よ」という期待感が、今の社会の本音だろう。ついに「もっといいクルマ」になったプリウスゆえ、次は夢のようなビジョンを示してくれると期待したい。