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スバル レヴォーグ 2.0GT-S EyeSight:新車試乗記

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キャラクター&開発コンセプト

国内における新たな看板モデル

スバル レヴォーグ(プロトタイプ)。写真は2013年12月の名古屋モーターショー
2013年11月の東京モーターショーでプロトタイプが公開され、2014年4月に正式に発表、6月20日に発売された「レヴォーグ」は、国内向けに開発されたステーションワゴン、スバル言うところの新型スポーツツアラーだ。北米市場に対応するため大型化したレガシィに代わり、国内市場で看板モデルとなるべく開発されたモデルである。 ボディサイズは使い勝手を重視し、全長を4690mmに抑えるなど、4代目レガシィ(2003~2009年)に近いところに回帰。車名「Levorg」は、「レガシィ」「レヴォリューション」「ツーリング」を組み合わせた造語だという。
 
新世代2.0L ハイパフォーマンス“DIT”エンジンとスポーツリニアトロニック(写真はWRX S4のもの)。「人とくるまのテクノロジー展 2014 名古屋」にて
エンジンは伝統の水平対向4気筒で、2種類を用意。一つは新開発の1.6L 直噴ターボ「1.6L インテリジェント“DIT”」(FB16型)で、もう一つは先代レガシィやフォレスター等に搭載されている2.0L 直噴ターボ「2.0L ハイパフォーマンス“DIT”」(FA20型)。前者はレギュラーガソリン仕様で、後者はハイオク仕様になる。トランスミッションは全車リニアトロニックCVT(無段変速機)。JC08モード燃費はアイドリングストップ機能付の1.6Lで16.0~17.4km/L、同機能なしの2.0Lで13.2km/Lを達成している。

月販目標は3200台。新型WRX、新型レガシィ等と共に攻勢

新型WRX S4 (photo:富士重工業)
スバル独自の運転支援システム「EyeSight」も、もちろん採用。その最新バージョンで、操舵支援機能が新たに追加された「EyeSight(ver.3)」が初搭載された。 月販目標は3200台で、これまでの販売実績は6月:2133台(登録車で23位)、7月:5352台(同11位)、8月:5391台(8位)、9月:7800台(9位)、10月:4059台(14位)、11月:2719台(18位)。11月末時点での累計販売台数は2万8092台に上る。 なお、スバルは2014年後半から新型車を矢継ぎ早に投入しており、8月25日にはレヴォーグと同時開発された新型WRX S4とWRX STI(月販目標は計650台)を発売。こちらの初期受注(発表後約1ヵ月)は目標の約6倍を達成し、11月の実績は1793台となるなど、好調な売れ行きを見せている。
 
新型レガシィ アウトバック (photo:富士重工業)
また、10月24日には新型レガシィ アウトバックとB4(月販目標は計1200台)を発売し、こちらも目標の約3.6倍を受注するなど好調。また、11月25日にはインプレッサがマイナーチェンジしたほか(月販目標2150台)、フォレスター(2012年11月発売、月販目標2000台)もあり、スバルにとってはかつてなく充実したラインナップになっている。 ■参考記事 ニュース>スバル、新型「レヴォーグ」のプレ内示会を開催(2013年12月掲載) ■外部リンク ・富士重工業>プレスリリース>新型「LEVORG(レヴォーグ)」を発表 (2014年4月15日)
 

価格帯&グレード展開

1.6GTが266万7600円~、2.0GTが334万8000円~

1.6GT-S EyeSight (photo:富士重工業)
レヴォーグはエンジン別に、1.6Lターボ(170ps、250Nm)の1.6GT系と、2.0Lターボ(300ps、400Nm)の2.0GT系の2つに分けられる。 駆動方式は全車AWD(4輪駆動)だが、1.6GTと2.0GTは方式が異なる。1.6GTは電子制御多板クラッチ式の「アクティブトルクスプリットAWD」で、前後トルク配分は60:40を基本に100:0~50:50で制御するタイプ。一方の2.0GTは、センターデフ(前後トルク配分は45:55)に電子制御多板クラッチを組み合わせた「VTD-AWD(不等&可変トルク配分電子制御AWD)」になる。トランスミッションは全車リニアトロニックCVT。 1.6GTの価格(以下、全て消費税8%込)は266万7600円で、同 EyeSightが277万5600円、それにビルシュタイン製ダンパーや18インチタイヤを装着した1.6GT-Sが305万6400円。今のところ販売は、1.6GT EyeSightが全体の8割以上を占めるとのこと。
 
2.0GT EyeSight (photo:富士重工業)
さらに2015年1月には特別仕様車「1.6GT EyeSight S-style」も発売予定。売れ筋の1.6GT EyeSightをベースに、18インチアルミホイールやLEDロービーム+ハロゲンハイビームヘッドランプ、運転席8ウェイパワーシートなどを装着したもので、価格は289万4400円。 一方、2.0GTの価格は、標準車の2.0GT EyeSightが334万8000円で、ビルシュタイン製ダンパーや18インチタイヤを装着した2.0GT-S EyeSight(今回の試乗車)が356万4000円。
 

パッケージング&スタイル

「スポーツツアラー」らしくスタイリッシュに

ヘッドライトやボンネットは新型WRXと共有する
ここ数年、スバルの新型車で何かとアピールされるのがデザイン性や質感の向上で、これまでのスバル車とは違う、という形でアピールされることが多い。それはレヴォーグでも同様で、資料には「流麗」「スタイリッシュ」「スポーツツアラーに相応しい躍動感」といった表現が並ぶ。確かに後ろ下がりのルーフラインはあまりワゴンっぽくなく、それゆえツーリングワゴンではなく、スポーツツアラーと呼ぶのだろう。

全長は“昔のレガシィ”並みに回帰

ボディカラーは全7色。試乗車のライトニングレッドはBRZでも使われている
ボディサイズは全長4690mm×全幅1780mm×全高1485~1490mm(ルーフアンテナ含む)。全幅は大型化した先代(5代目)レガシィ ツーリングワゴンと全く同じだが、全長はそれより100mmほど短く、全高は50mmほど低い。冒頭でも触れたように、全長は先々代(4代目)レガシィ並みだ。 ホイールベースは2650mmで、フォレスター(2640mm)、インプレッサ(2645mm)、新型WRX(2650mm)とほぼ同じで、先々代レガシィより20mm短いだけ。そして先代および新型レガシィと比べると、ホイールベースは約100mm短い。つまりスバルにはWBが2650mm級と2750mm級のプラットフォームがあり、レヴォーグはそれの短い方になる。
 
ルーフが後方でかなりスラントしているのが分かる
なお、標準仕様のフロントグリルは、ブラックアウトされた横桟と太めのメッキ枠がつくタイプだが、試乗車は販売店オプションのメッシュグリル仕様。また、同じく販売店オプションのSTIフロントアンダースポイラーにより、最低地上高は2.0GTの標準(135mm)より約30mm低くなっていた。ちゃんとダウンフォースを発生させる機能パーツのようだが、段差やクルマ止めでは注意が必要。
 
2011年の東京モーターショーに出展された「アドバンスト ツアラー コンセプト」
ドアはフロントがガルウイング、リアが後ろヒンジだった
 
    全長(mm) 全幅(mm) 全高(mm) WB(mm) 最小回転
半径(m)
スバル WRX S4 (2014~) 4595 1795 1475 2650 5.5
4代目(BP型)スバル レガシィ ツーリングワゴン (2003~2009) 4680 1730 1470 2670 5.4
スバル レヴォーグ (2014~) 4690 1780 1485~1490 2650 5.4~5.5
5代目(BR型)スバル レガシィ ツーリングワゴン (2009~2014) 4790 1780 1535 2750 5.5
現行スバル レガシィ アウトバック (2014~) 4815 1840 1605 2745 5.5
 

インテリア&ラゲッジスペース

インテリアも質感重視。室内の広さは十分

インパネはインプレッサがベース。Dシェイプ形状のステアリングはスバル初採用。右スポークにEyeSightとSI-DRIVE用スイッチが付く
内装の質感アップも重要課題とのことで、レヴォーグではピアノブラック調パネル、金属調アクセント、メッキパーツ、手触りのいい革巻ステアリング(D型形状)、質感の高いメーターやディスプレイ、スイッチ類などなど、細かいところまで作りこまれている。価格帯で直接バッティングするVW ゴルフあたりは、相当意識しているはず。パーキングブレーキは全車速追従走行時の停車中にブレーキを保持するのに必要なため、当然のように電動だ。 ホイールベースはインプレッサ並みだが、全幅が1780mmあるせいか(インプレッサは1740mm)、室内の広さは後席でも十分。シートの座り心地も前後共に良い。運転席は、電動シートとステアリングのチルト/テレスコで、望み通りのポジションがとれた。
 
後席の背もたれは5段階でリクライニングする。座り心地や乗降性は良好
1.6GT-Sと2.0GT-Sは電動スポーツシート。2.0GT-Sはアルカンターラと本革のコンビが標準になる
 
荷室容量(後席使用時)は522L(サブトランクを含む)。荷室側のレバーを引くと後席が倒れる
後席はシングルフォールディングだが、ほぼフラットになる。サブトランクは計40Lと大きめ
 

基本性能&ドライブフィール

最初やんわり、滑らかに加速

2.0GT系の新世代2.0L 水平対向4気筒直噴ターボ。上に見えるのは、もちろんインタークーラー
試乗したのはトップグレードの「2.0GT-S EyeSight」(356万4000円)。 2.0L 直噴ターボ「ハイパフォーマンス DIT」エンジンは、先代レガシィが2012年にマイナーチェンジした時に初めて登場したもの。最高出力300ps、最大トルク400Nm(40.8kgm)とかなりパワフルで、新型WRX S4(STI は6MTだが、S4はCVT)にも搭載されている。 トランスミッションはそのWRX S4同様、高トルク対応のスポーツリニアトロニックCVT。パドルシフト付で、マニュアルモードは通常モードでは6速だが、S♯を選んだ時はクロスレシオの8速になる。
 
2.0L ハイパフォーマンス“DIT”エンジンの性能曲線 (photo:富士重工業)
エンジン始動後のデフォルトは、燃費重視の「I」モード。そのパワー感やレスポンスは、先代レガシィやフォレスターの2.0 DITエンジン搭載車に当然ながら近い。アクセルを踏み込んだ直後のレスポンスは、CVTの特性もあってか、少しモワッとした感じだが、いったん加速体制に入ると「ザァーーン」というボクサーサウンドや、滑らかな回転上昇感と共に、一気に速度を上げていく。AWDということもあり、トラクションは完璧。ただ、正直なところ、300ps、400Nmという割にガツンと来ないなぁとも感じてしまうのだが、速度計の針の動きを見れば、速度のノリがハンパないことが分かる。車重は1560kgなので、パワーウエイトレシオは5.2kg/psだ。
 
スバル車でおなじみのマルチファンクションディスプレイ(MFD)を装備。写真は2.0GTのみのブースト計を表示したところ
そして「I」モードのまま、街中を流すと、このパワートレインの良さがジワジワと染みてくる。1.6GTの場合、低回転のトルクが細く、それをカバーするためか、スロットル特性が少々過敏なところがあるが、2.0GTは最大トルクがその1.6倍もある分、ブーストが本格的にかからない領域でもトルクフル。CVTのふんわりした特性も加わり、独特のトルク感やスムーズさが味わえる。例のSI-DRIVEで、「S」や「S♯」も何度か試してみたが、「I」でもアクセルを踏み込めばS並みに加速してくれるので、最終的には「I」で十分と感じた。

足はカヤバか、ビルシュタインか

1.6GT-Sおよび2.0GT-Sは、225/45R18タイヤ(試乗車はダンロップのSPスポーツマックス 050)を履く
レヴォーグの場合、1.6GTか2.0GTかに関わらず、グレード名に「-S」が付くモデルは、ビルシュタイン製ダンパー(フロントは倒立式)、アルミ鍛造製フロントロアアーム(ピロボールブッシュ付)、225/45R18タイヤ(2.0GTは全車)を標準装備するタイプになる。 その乗り味は、いかにもビルシュタインらしいカドマルのゴツゴツ感がリニアに伝わってくるもの。タイヤが凸凹の一つ一つを、ゴトゴトと乗り越えていく様子が、音や振動を通して伝わってくる。同乗する家族にはちょっと不評かもしれないが、ワインディングロードを気持よく走るのを体感すると、このサスペンションの狙いがよく分かる。感覚としては先々代レガシィの2.0GTあたりに近く、4輪をベタッと接地させて、ひたすらニュートラルに走ってしまうタイプだ。
 
レヴォーグ 2.0GT系のAWDは、前後トルク配分45:55のセンターデフを持つVTD-AWD。WRX S4も同じタイプ (photo:富士重工業)
一方で気になったのは、ある程度の速度で田舎道を走っていると、ごくたまにだが、一瞬ビクッとするほど鋭いハーシュネスが入ること。気になったので、来た道を戻って路面をチェックしてみると、段差というより、エクボのようにアスファルトが凹んだところだった。また、高速道路などで路面が大きくうねっていると、思った以上にボディが上下動することがあり、ブレーキを少しあてて動きを抑えたくなることがあった。 これまでレヴォーグには1.6GTを含めて何度か試乗しているが、足回りは全てビルシュタイン仕様。GT-Sではない標準仕様(ダンパーはカヤバ製)の評判も良いので、機会があればそちらにも試乗してみたいところ。

完成の域に達したEyeSight

画素数が4倍になり、従来のモノクロからカラー認識も可能になったEyeSight(ver.3)のステレオカメラ
100km/h巡航時のエンジン回転数は、約1650回転。エンジン音はほとんど聞こえず、ロードノイズも最小限。ものすごく静かというほどではないが、不快なノイズや振動がないので疲れない。 EyeSight(ver.3)による全車速追従機能付クルーズコントロールは、ミリ波レーダーを使うタイプも含めて、この種のものでは最も完成度が高いものの一つ。加減速や追従マナーなどの動作も申し分なくスムーズで、慣れているので操作もしやすかった。速度は最高113km/hまで設定可能だ。
 
EyeSghtの特徴は、ミリ波レーダー等を使わず、前方監視のすべてを画像解析で行うこと。歩行者や自転車のほか、最新のver.3では赤信号やブレーキランプ点灯も認識する (photo:富士重工業)
なお、レヴォーグが初搭載となったEyeSight(ver.3)は、ステレオカメラの性能や画像解析の技術向上により、これまでより広角かつ遠方まで前方を監視できるものに進化。また、カラー認識も可能になり、赤信号やブレーキランプの認識も可能になった。もちろん赤信号を認識して自動で止まってくれるわけではないが、ドライバーのうっかりミスを少しでもカバーしてくれるのは頼もしい限り。 また、このver.3には車線を読み取って逸脱を警告するだけでなく、高速道路を65km/h以上で走行中には電動パワステを使って操舵アシストし、車線に沿って走らせる「アクティブレーンキープ」も採用されている。車線が鮮明ではない場合など、条件によって作動しないことはあるが、高速道路の緩いコーナー等ではかなりはっきりと「アシスト」を体感できる。もちろん、自動運転にはならないように、ステアリングから手を離せば(ステアリングへの入力を怠れば)、操舵アシストは中断される。 なお、ヘッドライトはロービームにスバル初のLEDが採用されているが、ハイビームはハロゲンのまま。最近はコンパクトクラスでもトヨタのBi-Beam(バイビーム)など、ハイ/ロー共にLEDの新型車が出ているので、ブランニューモデルとしては物足りない気もするが、ハイビーム点灯時はLEDロービームと同時点灯になるので、明るさは十分。色味もそんなに黄色っぽくならない。なお、国内外メーカーで最近採用が増えているハイ/ローの自動切替は採用されていない。

試乗燃費は8.5~10.8km/L。JC08モード燃費は13.2km/L

今回はトータルで約300kmを試乗。車載燃費計による試乗燃費は、いつもの一般道、高速道路、ワインディングを走った区間(約80km)が8.5km/L、それとは別に一般道を大人しく走った区間(60km)が10.8km/Lだった。約300kmトータル(撮影のための移動を含む)の試乗燃費(満タン法)は約8km/L。指定燃料は1.6GTだとレギュラーガソリンだが、2.0GTはハイオクになる。 JC08モード燃費は1.6GTが16.0~17.4km/Lで、今回試乗した2.0GTが13.2km/L。タンク容量は60リッターで、少なくとも2.0GTの実質的な航続距離は500km前後という感じだ。
 

ここがイイ

ジャパンベストのボディサイズ。完成度の高いEyeSight

レガシィが5代目になってから5年経った今年、ボディサイズの点で往年のレガシィの代わりとなるモデルが、ついに日本のスバリスト向けに登場したこと。しかもグローバルモデルが幅を利かすこのご時世で、(少なくとも今は)国内専用車。もちろん、実際にはグローバルモデルである新型WRXと同時開発だったりするのだが、かなりの部分を専用開発しているのは英断。 進化したEyeSight(ver.3)。現在、この手の走行支援システムは、高性能ミリ波レーダーを中心に、単眼もしくはステレオカメラや追加のレーダーで補うというのが世間一般の主流だが、スバル独自のEyeSightは、ステレオカメラの画像解析だけで前方を監視するというもの。これはまず低コストであるのがメリットだが、それ以上に将来性の大きさが魅力。カメラの性能や画像解析の技術は、今後も急速に向上していくからだ。この先はどこまで自動運転化、あるいはメルセデス・ベンツ言うところの半自動運転化を進めるかという問題があるが、ひとまずEyeSightに関しては、さらにver.4、ver.5という具合に進化していくのが楽しみ。

ここがダメ

スペックほどパワー感がないこと。路面を選ぶ足回り

今ひとつダイレクト感に欠けるリニアトロニックCVT。1.6GTと比べると、2.0GTはかなりいいが、それでも何となくパワーの出方に迫力がなく、最高出力が300ps、最大トルクが400Nmもあるとは思えないというのが率直なところ。ただ、逆に言えば、さらりと速く、疲れにくいとも言えるし、雪道ではこれくらいマイルドな方が走りやすいのかもしれない。 2.0GT-Sの足回りに関しては、本文にある通り、街乗りから高速まで乗り心地がよく、ワインディングではスポーティに走れるなど、その良さは実感できたが、一方で大きな入力があった時のハーシュネスは少し気になった。もう少し路面を選ばない、しなやかさが欲しいところ。 試乗車は販売店オプションのオーディオ・ナビ(ダイアトーン製)付で、オーディオ用ステアリングスイッチがなく、走行中は音量調整などが、かなりやりにくかった。ステアリングスイッチは販売店オプションでも用意されているようなので、ぜひ装着をお勧めしたい。

総合評価

サイズとパワーは、15年前のC43 AMG並み

なんだか使いやすいなあ、と思って乗った今回のレヴォーグは、よく考えてみたら長年乗ってきたメルセデス・ベンツの初代Cクラス、W202のワゴンとほぼ同じサイズだった。最終モデルでも、すでに15年ほどたつW202だが、すっかり大きくなった現行Cクラスと違って、全幅は1800mmに満たず、日本の多くの場所で無理なく駐車できるし、小回りもよく効いて取り回しの楽なクルマだ。 そういえば当時W202にはC43 AMG ステーションワゴンというハイパワーモデルがあった。4.3リッターV型8気筒SOHCで、最高出力306ps、最大トルク41.8kgm、車重1570kgというスペックは、今回のレヴォーグ(それぞれ300ps、40.8kgm、1560kg)に相当近い。当時C43 AMG ワゴンの新車価格は消費税抜きで1010万円。このサイズながら、さすがAMGというべき価格だが、今はほぼそれと同じスペックのクルマが税抜き330万円で買えるわけだ。しかも燃費は、C43の10・15モード:7.5km/Lに対し、レヴォーグはJC08モードで13.2km/L(共にハイオク)となり、おそらく燃料代は半分ですんでしまうだろう。さらにレヴォーグはAWDであり、EyeSightやSI-DRIVEもついている。これが15年間のクルマの進化というものか。いい時代になったと言うべきだろう。
 
そのC43の動力性能はともかくとして、乗り味はどうだったのだろう。C43には試乗したことがないが、知り合いに聞いてみると足はそんなに硬くはなかったという。試乗したレヴォーグ 2.0GT-Sの場合、速さの部分では何ら不満はなかったが、本文にあるように足はかなり硬めに感じられ、普段乗りをするのであれば、もうちょっとしなやかな印象の足が欲しいところ。あらかじめ「S♯」モードに対応している足という感じで、その気になって走りたい人にはむろんこれでいいのだろうが、出来ればSI-DRIVEに連動して足回りのセッティングまで変化するとうれしいかも。ただ、さすがにそれは贅沢というものか。

このクラスの国産ワゴンはレヴォーグが担う

ともあれ、国産ワゴンが数少ない昨今、このジャンルにスバルは新型車を投入してきた。いつも書くように、セダン復権と言い始めている日本のメーカーが、なぜ「ワゴンは売れない」と決め付けているのか分からないが、使い勝手からプレミアム感まで、絶対にセダンよりワゴンだと思うのだ。特にレヴォーグのサイズは、日本において使いやすさや積載性を考えると一番バランスが良く、パッケージング面でまったく不満がない。スタイリングはかなりスポーティな方向にふられていて、個人的にはかつてのレガシィのような、もう少し無骨なワゴンスタイルの方が好みだが、このクラスでワゴンを出し続けるスバルに敬意を表して、これ以上の文句は言うまい。なんといってもスバル独自のEyeSight(ver.3)を搭載し、これを武器に矢継ぎ早に新型を投入するスバルは、あのダサい、いや失礼、質実剛健な会社とは思えないほど昨今イメージが良くなっているのだし。 その昔、打倒レガシィを目標に開発されたハイパフォーマンスな3代目トヨタ カルディナを富士スピードウェイで乗ったことがあったが、今やそのカルディナはなく、当時は激しくライバル心を燃やしていたトヨタとスバルは今や協業の間柄。地元ディーラーの新車発表試乗会がトヨタ博物館で開かれることなど、当時は想像すらできなかったことだ。時代は変わる、というか、量販が見込めないとされるステーションワゴン分野は、トヨタのグループ内でスバルと棲み分けられているようでもある。それゆえスバルの躍進があるわけだが、このあと、時代はどう変わっていくのだろう。
 
先代レガシィはクラウンエステートの代替となった、などとかつて書いたことがあったが、今後はレヴォーグにも、そんな間口の広さが必要になってくるだろう。つまり、ワゴンを求めている人は、スポーティな走りを求める人ばかりではないということだ。使いやすいサイズのワゴンボディで、しっとりとした乗り心地を持ち、燃費のいいクルマが欲しいという人は少なくないように思う。それゆえ、例えばクリーンディーゼル、あるいはハイブリッドの搭載などが将来的にはあってもいい。また、スバルが得意とするクロスオーバーSUV風の派生モデルも、レガシィ アウトバックやXVとキャラがかぶりそうだが、あるといいと思う。レヴォーグはボディのサイズ感が素晴らしいだけに、噂のあるSTIのみならず、そんな風にバリエーションが増えてくれるとうれしいと思った。デビューしたばかりの今は、走りを強調しているけれど、たぶん今後はいろいろな展開があるのではないか。期待したい。
 

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