キャラクター&開発コンセプト
フル「スカイアクティブ」の第4弾
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(photo:Mazda)
2014年9月11日に受注が始まり、ガソリン車(2WD)が9月26日に、ディーゼル車(2WD)が10月23日に発売された新型「デミオ」(海外名「Mazda 2」)は、マツダのBセグメントコンパクトカー。初代は1996年のデビューで、新型は4代目。
7年ぶりのモデルチェンジで登場した新型デミオは、マツダが伝統的に強い欧州市場でも戦うべく、全てを刷新。目指したのは「『車の価値はボディサイズに比例する』という既成概念を打ち破り、『圧倒的なスタイリングと品質感』、『ロングレンジドライブ性能』をお客さまにお届けすること」としている。
具体的には、販売好調のCX-5(2012年)、現行アテンザ(2012年~)、現行アクセラ(2013年~)に続いて、マツダの新世代技術「SKYACTIV(スカイアクティブ)」、そして新デザインテーマ「魂動(こどう)」を全面的に採用している。
新開発1.5リットル直4クリーンディーゼル、そして全車に6速ATを採用
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新型デミオのXDに搭載された新開発1.5リッター直4ディーゼルターボ(後方の排気側から)
(photo:Mazda)
特に目玉となるのが、マツダ独自のクリーンディーゼルエンジン「スカイアクティブD」の第2弾として登場した新開発の1.5L 直4ディーゼルエンジン。CX-5、アテンザ、アクセラの3モデルで搭載された2.4L 直4ディーゼルとは異なる新設計で、日本のポスト新長期排ガス規制や欧州のユーロ6をクリアする画期的な小排気量クリーンディーゼルエンジンになっている。
ガソリンエンジンに関しては、国内向けは直噴やミラーサイクルといった「スカイアクティブG」技術を採用した新開発の1.3L 直4に一元化された。
変速機はこれまで主力だったCVT(無段変速機)を廃止し、新開発の6速トルコンATを採用。またMTについては、ガソリン車には5速、ディーゼル車には6速を設定した。ディーゼルの6MT車は、ハイブリッド車や軽自動車を除くと、純エンジン車で最高のJC08モード燃費30.0km/Lを達成している。
また、12月から発売される4WD車に関しては、従来の電気式4WD「e-4WD」を廃止し、電子制御多板クラッチ式の「アクティブトルクコントロールカップリング方式」4WDを採用している。
日本カー・オブ・ザ・イヤー、独ゴールデンステアリングホイール賞を受賞
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2015年春に発売予定のマツダ CX-3
(photo:Mazda)
販売目標は月間5000台で、発表から一ヶ月半の累計受注台数は1万9233台に上り、ガソリンとディーゼルが揃った11月の登録実績は8890台(登録車では4位、軽を含めると10位)になるなど、販売は好調。
また、「2014-2015 日本カー・オブ・ザ・イヤー」を受賞したほか、ドイツで最も権威のある自動車賞のひとつと言われる「ゴールデンステアリングホイール賞」をスモールカーカテゴリーで受賞するなど専門家からも高く評価されている。
なお、マツダからはデミオに続く新世代商品の第5弾として、新型コンパクトクロスオーバーSUV「CX-3」がすでに発表されており、2015年春から発売される予定。こちらには1.5ディーゼルと2.0ガソリンが搭載される模様。
■参考記事
新車試乗記>(3代目)マツダ デミオ 13C-V/15C/Sport(2007年8月掲載)
新車試乗記>(3代目後期型)マツダ デミオ 13-スカイアクティブ(2011年7月掲載)
■外部リンク
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マツダ>プレスリリース>新型「マツダ デミオ」の予約販売を開始 (2014年9月11日)
・
マツダ>プレスリリース>新型「マツダ デミオ」の販売が好調 (2014年10月30日)
・
マツダ>プレスリリース>新型「マツダ CX-3」を世界初公開 (2014年11月19日)
価格帯&グレード展開
価格はガソリンが135万円~、ディーゼルが178万2000円~
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1.3リッターガソリン車の「13C」
(photo:Mazda)
新型デミオは、1.3L 直4ガソリンNAエンジン車(92ps、121Nm)と、1.5L 直4ディーゼルターボエンジン車(105ps、6AT:250Nm、6MT:220Nm)の2つに大きく分けられる。
ガソリン車は「13C」「13S」「13S L パッケージ」の3グレードで、6ATと5MT(FF車のみ)を用意し、価格は135万円~191万1600円(4WD車を含む)。
ディーゼル車は「XD」「XD Touring」「XD Touring Lパッケージ」の3グレードで、6ATと6MT(FF車のみ)を用意し、価格は178万2000円~219万2400円(4WD車を含む)。ATとMTの価格差はなく、4WD(6ATのみ)は約19万4000円高。
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Lパッケージの内装はオフホワイトの本革/クロスによるコンビシートになる
ディーゼルモデル「XD」は、ガソリン車より25万~30万円ほど高く、上級モデルという位置づけ。初期受注におけるエンジン構成比は、ガソリン車が37%、ディーゼル車が63%と、ディーゼルの比率がかなり高い。この傾向は、CX-5、アテンザ、アクセラの時と同じだ。
パッケージング&スタイル
Bセグメントの殻を打ち破る
全体に前のめりのクラウチングスタイルで、Aピラーを後ろに引いたり、リアウインドウの面積を小さく抑えたり、という手法は先代と同じだが、パッと見は現行アクセラの縮小版という印象。5角形グリル、そこから伸びるメッキの「シグネチャーウイング」、愛嬌と鋭さの両方を備えたヘッドライト(上級グレードはハイ/ロー共にLED)を配したフロント、どことなくアルファロメオ風のネコ背などが、アクセラとの共通性を感じさせる。
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ボディカラーは全10色を設定。試乗車はイメージカラーの「ソウルレッドプレミアムメタリック」
マツダが掲げるデザインテーマ「魂動」は、「Soul of Motion」(“躍動する魂”くらいの意か)と併記されるように、ポロのような端正でソリッドなデザインでもなく、ホンダ フィットのようなエッジを効かせた未来チックなデザインでもなく、生命感や躍動感を重視したもの。何となくデザインされ過ぎな気もしないではないが、ボンネットの下に抱えるパワフルなディーゼルエンジンに見合った力強い造形になっている。
全長&WBをストレッチ。ただし全幅は5ナンバー枠を守る
マツダでは、新型デミオについて「“車の価値はボディサイズに比例する”という既成概念を打ち破る」としている。そのボディサイズは、全長4060mm×全幅1695mm×全高1500mm。軽量コンパクトを追求した先代デミオと比べると、全長は一気に160mm長くなり、4メートルの大台をオーバー。ホイールベースも2570mmと、80mm拡大されたが、これはキャビンスペースを拡大するためではなく、前輪位置が前に移動したため。おそらくパワートレインの搭載性が主な目的だと思うが、結果としてキャビン前端に余裕が生まれ、ペダルレイアウトがより自然になったとアピールされている。
一方で全幅は5ナンバー枠をキープ。今や欧州Bセグメントでは5ナンバー枠をはみ出るのが主流だが、そこはやはり国内市場やアクセラとの住み分けを考えてのことだろう。
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XDの上位グレード「XD ツーリング」にはLEDヘッドランプ(ハイ/ロー)が標準装備される
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リアにはクリーンディーゼル車であることを示すバッジを装着
インテリア&ラゲッジスペース
一眼メーター、薄型吹き出し口などシンプルなインパネ
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先代よりもフロントピラーは80mm後退し、ワイドな前方視界を確保。サイドミラーもドア付になり、大きな死角が減っている
インパネデザインも意欲的。アクセラと同じ一眼メーターを採用し、その両脇にジェットエンジンをモチーフにした丸型の空調吹き出し口を配置。そこから助手席ドアまで、水平に真っ直ぐ伸びたスリットが新鮮。デザインを重視して助手席側の丸型吹き出し口は1個だけとし、スリットの中に吹き出し口を一つ隠すことで、空調性能を確保している。シンプルでスポーティな雰囲気は新型NDロードスターにも通じるものがあるが、そのあたりはもちろん計算済みだろう。
前を向いて運転すべく「マツダコネクト」を採用
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コントローラーで遠隔操作するマツダコネクト。操作感は何となくアウディのMMIを思わせる
多くの国産メーカーは、ここ2、3年で一気にタッチパネル方式に傾倒しつつあるが、マツダは欧州車と同じように、遠隔操作系のインターフェイスを追求中。新型デミオの低いダッシュボード上面にも、マツダ独自の遠隔操作インターフェイス「ヒューマン・マシン・インターフェィス(HMI)」に則り、コマンダーコントロールで操作する7インチワイドディスプレイが搭載されている(ガソリンの13Cを除く)。ここは現行アクセラとおおむね同じだ。
マツダが提唱する「Heads-up Cockpit(ヘッズ-アップ・コックピット)」コンセプトは、運転中にちゃんと前を向きながら操作できなきゃ危ないでしょ、というもの。同時にスマートフォン等と連携してネット接続などができる「MAZDA CONNECT(マツダコネクト)」も採用されている。
とはいえ、現状のマツダコネクトは、まだ使い勝手やナビ性能に物足りないところがあり、デミオではオーディオレス仕様にのみ、ディーラーオプションとしてタッチパネル式のナビも用意している。
理想的なペダルレイアウトとペダルタッチを実現
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シートスライド量は260mm、ステアリングチルト調節は上下45mm、テレスコピック調節は前後50mmを確保
新型デミオで特にアピールされているのが、先にも触れたように自然なドライビングポジションやペダル配置。先代よりフロントタイヤを80mm前方に配置したことで、アクセルペダルを20mm外側にずらし、ドライバーが自然に足を伸ばしたところに配置できたという。
また、アクセルペダルにオルガン式を採用しているのは、運転好きには強力なポイント。このクラスでは滅多に採用されないもので、かなり「奢った」部分。こんなところが、いかにも「Be a driver.」のマツダらしい。
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ペダルレイアウト適正化の説明図。アクセルペダルは右に20mm移動した
(photo:Mazda)
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アクセルペダルにはこのクラスでは珍しいオルガン式を採用
後席も二人がけならOK
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後席は開放感こそ高くないが、足もとの広さなどは十分。座り心地もポロなどの競合車に負けていない
後席の広さは二人なら十分。頭まわり圧迫感なく、足下も前席下に軽く伸ばせてよい。気になるのはドリンクホルダーが一人分しかないこと。二人座ると取り合いになりそうだ。
荷室容量は先代より30L増の280Lだが、奥行きはやや狭く、手前側が湾曲していて、スクエアな荷室形状のポロ(同じく280L)より狭く感じられる。また、バンパーの敷居が高く、灯油缶などの重いものの出し入れはやりにくそう。ボディ剛性やスタイリングを重視する一方で、積載性や使い勝手は多少割り切られた印象。
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背もたれ格納は、近年一般的なシングルフォールディング。フラットにはならないが、操作は簡単
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床下にはパンク修理キットを搭載。上げ底にはなっていないので、床下収納は大きくない
基本性能&ドライブフィール
低回転はゆったり、2500回転以上でグワッと来る
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1498cc・直列4気筒DOHC・4バルブ・直噴ディーゼルターボ。圧縮比は2.2Lディーゼル(14.0)より高めの14.8
試乗したのは、ディーゼル車の上級グレード「XD ツーリング」。アイドリング音はゴロゴロゴロとディーゼルっぽいが、大きな振動や揺れはなく、言ってみればちょっと昔のガソリンエンジンと同レベル。
最大トルクは250Nm(25.5kgm)/1500-2500rpmで、まさにその回転域ではゆったりとしたトルク感があり、街中でも走りやすい。最初はちょっと出足が鈍い感じがするが、慣れてくると気にならなくなる。アクセルを丁寧に踏む限り、6速ATはこまめに変速して1500~2500rpmをキープ。たまに1250rpmくらいまで落ちるが、その時でも振動は出ない。
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2.2Lの2ステージターボではなく、シングルのVG(可変ジオメトリー)ターボを採用
一方で、アクセルを深く踏み込むと、2500rpmを超えたところからグワッと分厚いトルクが湧き上がり、場合によっては多少のトルクステアを発生させながら、4000rpmオーバーまで一気に吹け上がる。最高出力は1.5L自然吸気ガソリン並みの105ps/4000rpmに過ぎないが、やはりこのボディに、2.5Lエンジン並みと言える250Nmのトルクは強力。ロックアップ感のある新開発の6ATも手伝って、気持よく加速してくれる。また、ガソリンエンジンみたいによく回るという印象は、先行した2.2Lディーゼルと同じだ。
車重はFFの5MTで1080kg、試乗したFF・6ATで1130kg、4WD・6ATで1220kg(4WDの6MTは設定なし)。若干、出足が鈍く感じられるのはエンジン特性に加えて、1.3Lガソリン車より100kg重いことが響いているかもしれないが、このくらいのパワー感が日本の道ではちょうどよく感じられる。
欧州車みたいなガッチリ感
エンジンに負けず劣らずインプレッシブなのがボディのガッチリ感。これはもう誰が乗っても500メートルも行かないうちに体感できるはず。ボディの剛性感は「国産Bセグメントもついにここまで来たか」と思うレベル。ガソリン車に比べてXDは車重が重いせいもあると思うが、この重厚感は大したもので、ドイツ車みたいというより、例えば車重が同じ1130kgの現行VW ポロ(の日本向けガソリン車)より明らかに上。その分、工事中の道路みたいな凸凹路へ行くとけっこう揺すられるが、ボディはビクともしない。サスペンションは確かに固めだが、どんな局面でも安心感がある。
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XD(標準車)は185/65R15だが、XD Touringは185/60R16を標準で履く。銘柄はトーヨーのプロクセス R39
ハンドリングも悪くない。XD(FF・6AT)の前後重量配分は67:33(760kg+370kg)とフロントがかなり重いが(6MTはフロントを主に50kg軽く、逆に4WDはリアを主に90kg重くなる)、フロントヘビー感はほとんどない。電動パワステにはねっとりとした重さがあり、従来デミオにあった軽快感はないが、ブレーキを残しながら素早く切るような局面でも、ノーズがけっこうインに入ってくれる。
そして、いい意味でマツダらしくないのが、リアが頑として路面を捉え続けること。先代デミオはややテールハッピーで、よく言えばZoom-Zoomで軽快だったが、少なくとも新型デミオのXDはそれとは異なり、重厚なハンドリングが持ち味。
100km/h巡航は約1750回転
高速道路での走りも文句なし。アクセラやゴルフなどの最新Cセグメントのように、しっとり走るわけではないが、このクラスとしては抜群に直進安定「感」が高く、安心感が高い。一般道でやや硬めに思えた足回りは、高速道路上では完璧にスムーズになり、フラット感も高い。単に巡航している間も、ステアリングから絶え間なく伝わってくる「いいクルマ」感が心地よい。
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レッドゾーンは、赤の点線が5000rpmから、実線が5500rpmから始まるが、通常のDレンジであれば4500rpmあたりでシフトアップする
100km/h巡航時のエンジン回転数は、6速トップで約1750rpm、5速で約2100rpm、4速で約2900rpm。少なくとも日本仕様では約180km/hでリミッターが働く。実力としての最高速は190km/hくらいだろうか。
高速域では、全体にノイズレベルが上がるなど、速度相応に慌ただしくなるが、特に突出してうるさい音がなく、なによりクルマが安定しているので疲れない。
低速域での自動ブレーキ等を採用。ただしミリ波レーダーは未設定
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SCBS(図のオレンジ部分)とBSM(水色部分)の守備範囲を示すイラスト
(photo:Mazda)
先進安全装備については、特にXDでは充実しており、近赤外線レーザーレーダーを使って前方を監視し、約4~30km/hでの低速時の衝突被害を軽減する「スマート・シティ・ブレーキ・サポート(SCBS)」や、ペダルの踏み間違い等による誤発進を防ぐ「AT誤発進抑制制御」を標準装備。
さらにオプションで、後方左右からの車両の接近を警告する「ブラインド・スポット・モニタリング(BSM)」、LEDヘッドライトのハイ/ロー自動切替を行う「ハイビーム・コントロール・システム(HBC)」、車線逸脱警報システム(LDWS)を全車に設定している。
実際の印象だが、SCBSについてはこれまでのマツダ車同様、あまり早めに警告・作動しないタイプで、今回は特に意識せず。BSMについてはサイドミラー鏡面に黄色のLED照明で警告が出るものだが、デミオの場合はドアミラーがドア付でやや後方に位置するせいか、通常運転時の視界に入りにくく、意識しないと便利さを体感できなかった。
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ハイビーム・コントロール・システム(HBC)の説明イラスト。左が前方にクルマがいない場合(ハイビーム時)、右が前方にクルマがいる場合(ロービーム時)
(photo:Mazda)
HBCに関しては、ハイかローかを単純に切り替えるもので、照射範囲をバリアブルに変化させるものではないため、この種のシステムにありがちな痛痒があるが(ハイになって欲しい時にハイにならないなど)、周囲に迷惑をかけない範囲でなるべくハイを使いましょうという交通ルールには即したもので、それなりに意味がある。
LDWSについては車線逸脱を「ピピピ」と音で警告してくるものだが、これは長時間運転している時の注意力低下などを自覚する目安にもなるので、上手に利用したいところ。
一方で残念なのは、アクセラ以上で設定のあるミリ波レーダー方式のレーダークルーズコントロールやプリクラッシュセーフティシステムが未設定なこと。このクラスでの採用例はそう多くはないが、最大のライバルと思われる現行VWポロ(マイナーチェンジモデル)にはACCという名称で採用されている。この高速巡航性能を最大限に活かすためにも、レーダークルーズはぜひ欲しいところ。
試乗燃費は15.6~21.0km/L。JC08モード燃費(FF・6AT)は26.4km/L
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今回、軽油は126円/Lで、ハイオクより33円安く、レギュラーより22円安かった
今回はトータルで約310kmを試乗。車載燃費計による試乗燃費は、いつもの一般道、高速道路、ワインディングを走った区間(約80km)が15.6km/L。それとは別に高速を走った区間(約90km)が16.3km/L、一般道を大人しく走った区間(30km✕2回)が20.2km/Lと21.0km/L。参考値ながら高速道路を80~100km/hで巡航した区間(約40km)が22~23km/L台だった。
なお、試乗車のJC08モード燃費は26.4km/L(電気をキャパシタで貯めるi-ELOOP装着車は0.2km/L優れる26.6km/L)。
6AT車のタンク容量は44Lなので、航続距離は少なくとも600km以上。マツダ自身は6ATと6MT(タンク容量35L)共に、最大1000km以上を走れるようにタンク容量を設定したとのこと。
ここがイイ
日本車もついにここまで来たかと思わせる完成度
「クラス概念を超えるクルマ」というマツダの主張通り、まさにクラス破りの走り。ボディサイズや室内の広さは全幅が5ナンバーということもあり、Bセグメントの枠に収まるが、走り、特にエンジンの力感やボディのガシッとした剛性感は、欧州Cセグメントや一部Dセグメントに迫る感じ。VW ポロが2、3年後にフルモデルチェンジするとどうなるか分からないし、そもそもポロをはじめ、このクラスの欧州製ディーゼル車に日本では乗る機会がないので、こと欧州ディーゼル車との比較では分からないが、日本で販売されているBセグメントカーで言えば、デミオXDは、ある意味突出した存在になった。
もう一つは予想以上に実用燃費が良かったこと。こういった動力性能に優れたクルマの場合、JC08モード燃費はそこそこ良くても、実用燃費は平凡なことが多いが、デミオXDの場合はこれだけ走って、こんなに燃費がいいのか、という印象。最新のプリウス、アクア並みとは言わないが、低回転域だけでゆったり走れば、初代プリウスくらいの燃費は出る。しかも燃料はレギュラーガソリンより2割ほど安い軽油。経済性云々はともかく、燃費のいいクルマには乗りたいが、走りが軟弱なクルマには乗りたくないという人には、格好の選択。
走りが良くてもデザインが悪ければ躊躇するところだが、新型デミオの内外装は質感が高く、オリジナリティも高い。内装に関しては、後で触れるように改善して欲しい点が若干あるが、1990年代の初代デミオやファミリアを思えば、質感は劇的に向上した。
ここがダメ
センターコンソールの立て付け。ヘッドアップディスプレイの必要性の低さ。レーダークルーズの不備
内装質感は劇的に上がったデミオだが、それゆえにステッチの入った立派なニーパッドを備えたセンターコンソール下部が、膝で押すとグラグラと動いてしまうのは要改善ポイント。おそらくコンソール内部に金属の骨格がないからだからだろうが、ボディだけでなく、ここもガシッとさせたいところ。運転しているドライバー本人には見えないが、助手席の人から指摘されそう。
エンジン始動と連動して電動で上がってくるヘッドアップディスプレイはカッコはいいが、表示されるのは速度、ナビ連動の矢印、走行車線表示、車線逸脱警報の警告くらい。速度はすぐ下のメーターにくっきり表示されるし、ナビ情報はすぐ横のカラーディスプレイに表示されるので、ほとんど必要性が感じられなかった。また、別のスタッフからは視力との関係で表示がぼやけて見える、煩わしいといった意見も出た。表示は車両設定メニューからオフに出来るが、走行中にディスプレイを格納することは出来ないようだ。
上でも触れたように、ミリ波レーダーによるレーダークルーズコントロールやプリクラッシュブレーキアシストが今のところ装備されていない。マツダの販売店には本来ならゴルフやポロを買うようなユーザーがかなり流れているようだが、ポロ対策の一つとして、このクルマにこそレーダークルーズは欲しいところ。
総合評価
全てが柔らかな感触
今年の日本カー・オブ・ザ・イヤー受賞となったデミオ。イヤーカーになっても、あまり振り向かれないものだが、デミオはいつになく人々の関心が高いようだ。そのせいもあってか販売は好調で、2014年11月の国内販売台数は8890台、車種別販売ランキング(軽を含む)では10位に入っている。デミオのライバルとなるアクアは1位で1万6520台、フィットは6位で1万1027台。直接のライバルではないが、プリウスが5位で1万3022台、あとの6台は全て軽自動車だ。ライバルの普通車がすべてハイブリッドを持っているだけに、デミオの健闘はやはりディーゼルの恩恵と考えるべきだろう。人々がこのサイズのディーゼル車の登場をいかに待っていたかの証左と思われる。
さてやっと試乗したわけだが、いいクルマはホンの少し転がしただけで分かるもの。しかしこのクルマは、転がすどころかシートに座った時から何かがいつもと違う。なんだかシートが柔らかい。往年のシトロエンじゃあるまいし、今どき珍しいこの感触は、しかし悪くない、いやこれはかなりいいのでは。小柄な人でもシートポジションは見事に決まるし、ホールド感もいい。そう言えばダッシュボード前面やドアアームレスト、ニーパッドなど、体が触れる部分はどこもパッドで柔らかな感触。これはちょっとこのクラスでは類を見ないもの。
乗り心地は基本的には固いのだが、しっとりとした固さというか、重厚感すら感じるサスの動きが、むしろ柔らかくも感じられる。これもこのクラスでは、これまで味わったことのない乗り心地。悪くない。足はとにかく固めでないと、と思っている人は一度乗ってみるといいだろう。
肝心のディーゼルエンジンも、いわゆるガソリンエンジンのシャープな力強さとは異なり、トルクフルで、これもまた柔らかな力感が感じられる。踏めば意外にシューンと回転が上がるのだが、それでも加速感に角がない。もちろん振動や騒音といったネガは感じられない。
図抜けて個性的で、独自性が強い
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海外で発表された4ドアセダン
(photo:Mazda)
つまり誰が乗っても「ああこれはちょっと違うな」と分かる作りになっている。個性がある。独自だ。最近の工業製品としてはちょっと驚き。なにせマーケティング主体で物を作れば、だいたいどれも似たような出来になる。小排気量クリーンディーゼル車という新しいものを生み出そうとしたゆえ、それに合わせて作っていく過程で、全てが個性的になっていったのだろう。これなら欧州ライバル車の中でも埋没することはない。どこも悪くはないけれど、どこといって味もない、でも燃費は素晴らしい、という幾多の日本車と比べると、図抜けて個性的で、独自性が強い。これは昨今の商品として凄いことだ。
そうは言いつつ、ちょっと気になる点も。スタイリングが図抜けてカッコいいとは言いづらい。ロングノーズのプロポーションは個性的だが、マツダのこれまでのデザインから考えると、もうちょっと何とかできるように思える。全長の寸足らず感をもう一工夫して、驚きのあるデザインにしても良かったのでは。海外で発表された4ドア(日本での販売を期待したい)や、SUVのCX-3は一見してかなりカッコいいだけに、そこは残念に思う。
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(photo:Mazda)
それからアクティブ・ドライビング・ディスプレイ(ヘッドアップディスプレイ)は、透明のパネルによく見るとけっこう濃い色が付いているので、これは視界を妨げるなあ、と思った。マツダコネクトはコントローラーの前にパッドが付いて、操作性そのものはかなり良くなっているが、やはり直感的にまだまだ使いにくい。自由に操作するには欧州車風に論理的に操作する必要がありそうだ。その点でもまさに日本というよりグローバルな商品ということになる。長く日本で使うのであれば、後々の交換も考えてディーラーオプションのナビの方がいいかもしれない。
また昨今の事情としては通信simが安くなっているので、こういう通信前提のシステムにこそsimフリーのsimスロットが欲しいと思った。昨今の事情はあくまで日本の話なのだが、それは世界的には当たり前になりつつあるので、グローバルカーであるデミオでは検討して欲しかったと思う。
質実剛健こそが日本製品の生きる道
燃費はカタログ的にはハイブリッドに一歩譲るが、実燃費(というか実支払額)では大きく引けを取ることはないだろう。つまりトータルに見てデミオ(のディーゼル)は素晴らしいクルマになっている。素晴らしい日本製品が生きていくためにはプレミアムを目指すしかない、プレミアムでないと生きていけないというのが、近年衆目の一致するところだったが、どっこいこういう大衆クラスの商品でも、素晴らしい製品が生み出された。しかも世界ではまだまだ通用しにくいハイブリッドではなく、メジャーなディーゼルで。作ったのは広島の会社だ。
このところマツダやスバルといった地方の会社が、独自の技術で世界に通用する製品を作っている。小沢一郎がこの総選挙で、日本人の原点は「地方」にあると言っているが、地方ゆえに開発陣はモノづくりに集中できるのだろう。我々も地方にいるからよく分かる。両社とも、いわゆるプレミアムじゃないけど、これなら買ってもいいか、という気分を喚起する商品を産み出している。安易に高級品を作ろうとするのでなく、質実剛健こそがこれからの日本製品の生きる道かもしれない、とデミオを運転しながら思った。それは日本のモノづくり精神が持つ本質的な価値だったのだし。デミオ、そしてハスラーという今年の2台の小さなイヤーカーは、そんなことを再認識させてくれた。