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トヨタ カローラ スポーツ:新車試乗記

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キャラクター&開発コンセプト

次期12代目カローラシリーズの先駆け

新型カローラ スポーツ(photo:トヨタ自動車)
2018年3月に新型「カローラ ハッチバック」としてニューヨークショーで発表され、日本では6月26日に「カローラ スポーツ」として発売された新型車は、従来のオーリス(2018年3月に販売終了)に代わるCセグメント、つまりVWゴルフクラスのハッチバック車。カローラとしては2006年に販売終了したカローラ ランクス以来のハッチバック車になる、 1966年に誕生したカローラは、この52年間で累計世界販売台数が4600万台の超ベストセラーモデル。新型カローラ スポーツは、次期12代目カローラシリーズの先駆けになるモデルだという。
 
プリウスやC-HRと同じ1.8L直4 ハイブリッド車と、C-HRと同じ1.2Lターボを用意(photo:トヨタ自動車)
新型カローラスポーツは、現行(4代目)プリウスやC-HRに続いて「TNGA(Toyota New Global Architecture)」のGA-Cプラットフォームを採用し、スポーティなスタイリングや低重心を実現。「“乗って楽しい”上質な走りと乗り心地を実現」したとする。パワートレインはC-HRと同じように1.8Lハイブリッドと1.2Lターボの2本立てだ。

通信モジュールを標準搭載した「初代コネクティッドカー」

画期的なのは車載通信機「DCM(Data Communication Module)」を全車に標準搭載したこと。これによって遠隔で走行アドバイスや車両診断を行う「eケアサービス」や、クルマのアカウントをLINEに設定して、人とLINEでやりとりするように目的地設定などができる「LINEマイカーアカウント」といったコネクティッド機能を全車標準とした。トヨタは新型カローラ スポーツを「コネクティッド」と「クルマ本来の楽しさ」を融合した“新世代ベーシック”カーであり、初代コネクティッドカーだとしている。 また、自転車や夜間の歩行者検知が可能な最新の「Toyota Safety Sense」も全車に標準装備した。

月販目標台数は2300台

国内向けはトヨタ自動車の堤工場(愛知県豊田市)で生産。販売チャンネルはトヨタカローラ店で、月販目標台数は2300台。トヨタの販売力を考えると、それほど多い数字ではないが、受注台数は発売から1ヶ月後の7月25日時点で約9200台と好調だ。
 
なお「カローラ」という車名は、英語で「花の冠(花の中のもっとも美しい部分、花びらの集合体)」のこと。「人目をひく、美しいスタイルのハイ・コンパクトカー」をイメージして名づけられたという。ハッチバック車の系譜は1970年代のカローラ リフトバックから始まり、カローラ レビンやカローラ FXを経て、カローラ ランクスという流れだ。
 

価格帯&グレード展開

1.2Lターボ(210万6000円~)と1.8Lハイブリッド(241万9200円~)

18インチタイヤを標準装備するカローラ スポーツ HYBRID G “Z”(photo:トヨタ自動車)
パワートレインは2本立てで、オーリス(2015年発売の120T)で初採用され、現在はC-HRに搭載されている1.2L直噴ターボ+CVT(無段変速機)と、現行プリウスやC-HRと同じ1.8Lハイブリッド。ターボ車とハイブリッド車の価格差は、上位グレードだと27万円だ。 ターボ車には6MTモデルも用意する(発売予定は8月)。これはトヨタ車で初めてシフトダウン時に回転合わせを自動的に行なう「インテリジェント マニュアル トランスミッション(iMT)」を採用したもので、いわゆるヒール&トゥ的なことを自動で行うほか、発進時にエンストしそうになるとスロットルを自動的に開けるエンスト防止制御も備える。
 
カローラ スポーツ HYBRID G “X”(photo:トヨタ自動車)
グレードは主に装備違いで、ターボ車とハイブリッド車それぞれに、15インチスチールホイールのベースグレード「G “X”」、16インチタイヤ&アルミを履く中間グレード「G」、18インチタイヤ&アルミを履く「G “Z”」の3段階を設定。ラインナップは以下の通り。
 
■1.2L直4ターボ(最高出力116ps、最大トルク185Nm) ・6MT・FF:210万6000円~238万6800円 ・CVT・FF:213万8400円~241万9200円 ※試乗車 ・CVT・4WD:233万2800円~261万3600円 ■1.8L直4ハイブリッド(システム最高出力122ps) ・電気式CVT・FF:241万9200円~268万9200円

コネクティッドサービスは全車標準・3年間無償

車載通信機DCMは全車標準で、トヨタ独自のオンラインサービス「T-Connectサービス」は3年間無料で利用可能。 具体的なサービス内容は、スマホアプリから目的地登録できる「LINEマイカーアカウント」、音声対話で目的地の検索・設定やニュースなどの情報検索が可能な「エージェント」、車両から発信される情報をもとにコールセンター等から適切なアドバイスを受けられる「eケア」、スマートフォンなどでエンジンオイル量などを確認できる「eケアヘルスチェックレポー」、オペレーターがナビの目的地設定なども遠隔操作で行ってくれる「オペレーターサービス」、「ヘルプネット(エアバッグ連動タイプ)」など。
 

パッケージング&スタイル

見た目は欧州Cセグメント調

プラットフォームは現行プリウスと同じTNGAなので、ボンネットは低く、ボディ全体も低く、正面から見ると迫力のロー&ワイド。特に18インチタイヤを履くG“Z”グレードはスポーティだが、コンサバティブなイメージが強い「カローラ」という車名とは現時点では結びつかず、新型オーリスと呼びたくなってしまう……。実際、欧州では引き続きオーリスの名で販売するらしい……。フロントは現行カムリに通じる新世代トヨタ顔で、ボンネットは妙に軽いと思ったらアルミ製。複雑な形状のバックドアは樹脂製だ。

国内向けカローラ初の3ナンバー。小回りは効く

ボディサイズは全長4375mm×全幅1790mm×全高1460mmで、国内向けカローラで初めて3ナンバー幅になった。ホイールベースは現行プリウスより60mm短く、C-HRと同じ2640mm。 サイズ自体はゴルフ7のほか、マツダ アクセラスポーツやスバル インプレッサスポーツ(そう言えば名前も同じ〇〇スポーツ)に近いが、最小回転半径は5.1mとクラス最小レベル(18インチタイヤ装着車は5.3m)。実際、小回りは得意だ。
 
ボディカラーは新開発のオキサイドブロンズメタリック(写真)など全8色。タイヤサイズは195/65R15、205/55R16(試乗車)、225/40R18の3サイズある。
 
    全長(mm) 全幅(mm) 全高(mm) WB(mm) 最小回転
半径(m)
日産 ノート e-POWER (2016~) 4100 1695 1520 2600 4.9~5.2
VW ゴルフ7.5(2017~) 4265 1800 1480 2635 5.2
トヨタ C-HR(2016~) 4360 1795 1550~1565 2640 5.2
トヨタ カローラ スポーツ(2018~) 4375 1790 1460 2640 5.1
スバル インプレッサ スポーツ(2016~) 4460 1775 1480 2670 5.3
マツダ アクセラ スポーツ (2013~) 4460 1795 1470 2700 5.3
4代目トヨタ プリウス (2015~) 4540 1760 1470~1475 2700 5.1~5.4
 

インテリア&ラゲッジスペース

サドルタン内装はフランス車みたい

写真は中間グレード「G」で選べるサドルタン本革&ファブリックのコンビ仕様
インストルメントパネルの造形はユニークで、特に試乗車の場合はダッシュボードにステッチも入って質感は上々。試乗車の場合はオプションの9インチナビディスプレイが目立っていた。 内装のカラー・仕様には何種類かあり、どれを選ぶかで雰囲気が変わってくる。例えばシートはブラックのファブリック(スポーツシートとスポーティシートの2種類)、レッド/ブラックの本革+ウルトラスエードのコンビ(スポーツシートのみ)、サドルタンカラーの本革+メランジ(2色以上の霜降り糸を使った織物)調のファブリックとのコンビ(スポーティシートのみ)と計4種類がある。
 
試乗車のサドルタン仕様はまるでフランス車のようにオシャレで、仕上げや座り心地もいい。女子をターゲットにした仕様らしいが、男性にも十分刺さる。

リアは乗降性に難あり

後席は乗り込む段階でドアが大きく開かないこと(C-HRもそうだった)、そして頭をかなり屈めないと車内に滑り込めない点に面食らう。乗降性は割り切った印象だ。 いったんリアシートに座ってしまえば足元は広く、座り心地も良好。フロントシートが大きいので、前方の見晴らしはよくないが、少なくとも大人4人なら快適に過ごせると思われる。

アジャスタブルデッキボードを用意

荷室容量は352Lと、このクラスの水準(350L前後)を確保しているが、これはデッキボードやパンク修理キットを取り外した時の数値。とはいえ、日常の買い物には困らない広さはある。
 
2WD車にオプションで用意されている4:2:4分割アジャスタブルデッキボードを使えば、フロアの高さを2段階で調整できる。上段にした場合は、後席を畳んだ時にフラットになるほか、フロアの一部(4:2:4分割の4の部分)を開けて物の出し入れが可能だ。また、ボードをコの字型にして荷室を左側・中央・右側の3つに仕切ることもできる。
 
床下には、パンク修理キットやパンタグラフジャッキ等の工具が収まるほか、若干の小物収納スペースがある。また左右の壁ぎわに収納スペースがあったり、四隅に金属製フックがあったりと、細かい配慮がある。
 

基本性能&ドライブフィール

完成度が上がった1.2Lターボ

試乗したのは1.2LターボのCVT車。スポーティシートや16インチタイヤを装備した中間グレード「G」で、車両本体は225万7200円、オプション込みで291万5633円。 VWのダウンサイジングエンジンに刺激されて開発されたこの1.2Lターボエンジンの搭載車に乗るのは、先代オーリスやC-HRの発売時以来。その時は今ひとつ印象が薄かったが、今回は走り出した瞬間からえらくスムーズで驚く。CVTのスリップ感もほとんどなく、静かでトルクフル。排気量は2L、ミッションはトルコンの8速ATですと言われたら信じてしまいそうなくらい、小排気量ターボやCVTのネガを消している。どうやらエンジンに関しては、インジェクターを高圧・6噴口タイプに変更したり、ピストントップの形状を変更したりと、いろいろやっているようだ。
 
1.2L直噴ターボ「8NR-FTS」の性能曲線
とはいえ、アクセルをガバッと踏んでも、最高出力116ps、車重1310kg、パワーウエイトレシオ11.3kg/psという平凡なスペック通り、それほど速いわけではない。また、VWの7速DSGのように小気味のいい変速感や、ダイレクトなパワー伝達感もない。 それでもトルク感は十分あるし、CVTやトルクコンバーターによる絶対的な滑らかさは、DCTにはない魅力。また、アイドリングストップからの再始動も静かで素早く、まったくもってストレスフリーで乗れる。しかも直噴ターボ車ながら、使用燃料はレギュラーでOK。総合的に見てVWの1.2Lターボに遜色ないパワートレインになったと思う。

乗り心地はワンクラス上のクルマのごとく

シャシーの方も滑らかスムーズ。試乗車が16インチタイヤ仕様だったせいもあるが、とにかく当たりが柔らかい。サスペンション形式はプリウスやC-HRと同じで、フロントがストラット、リアがダブルウィッシュボーン。KYBが新開発したアブソーバー(ダンパー)のおかげか、とにかく足がスムーズに動く。荒れた舗装路での乗り心地は、ワンクラス上のクルマのように滑らかで、ロードノイズも静か。 一方で気になったのが、試乗車が履く205/55R16タイヤ(ブリヂストン エコピア)のグリップ性能。コーナーで少し無理をするだけで、キューーとあっけなくスキール音を上げるし、スポーティに走ろうとするとVSCが容易に介入してくる。おそらくこの「G」グレードは小さな高級車的なところを狙ったのだと思うが、シャシー性能が高いだけにこのタイヤチョイスはちょっともったいないなぁと思った。
 
リアのダブルウィッシュボーンサスペンション(photo:トヨタ自動車)
そんなことが気になる人には、225/40R18タイヤ(ダンロップのSPスポーツ MAXX)を履き、オプションで電子制御可変ダンパー「AVS(Adaptive Variable Suspension system)」(10万8000円)も装着できる「G“Z”」グレードも用意されている。AVSはトヨタブランドのFR車やレクサスではおなじみのものだが、トヨタブランドのFF車では国内初採用とのこと。今回は試乗できなかったが、多少なりともハンドリングが気になるなら、買う前に試乗してみた方がいいだろう。

先進安全・運転支援装備は文句なし

先進安全装備や運転支援装備については、第2世代の「Toyota Safety Sense」が全車標準になっている。 具体的には、歩行者検知(昼間・夜間)や自転車運転者検知(昼間)を行う自動ブレーキ、停止から180km/hまでカバーする全車速対応のレーダークルーズコントロール、車線中央を走行するように操舵支援する「レーントレーシングアシスト(LTA)」、ハイビームとロービームを自動で切り替える「オートマチックハイビーム(AHB)」、道路標識を読み取ってディスプレイに表示する「ロードサインアシスト(RSA)」など。 さらに、12万5280円のオプションになるが、駐車時に静止物に対して自動ブレーキをかける「インテリジェントクリアランスソナー(パーキングサポートブレーキ付)」や、出庫時に後方左右から接近してくる車両に対して自動ブレーキをかける「リヤクロストラフィックオートブレーキ」も装備できる。つまり、今どきの新型車に付いていて欲しい安全装備が、ほとんどすべて用意された。
 
「リヤクロストラフィックオートブレーキ」のイメージ
実際に使ってみると、レーダークルーズからオートマチックハイビームまで、すべてそつなく作動して、まったく不満がなかった。ただ、トヨタのオートマチックハイビームに関しては、相変わらずライトスイッチレバーをハイビーム側にしないと作動しないという操作ロジックが、やっぱりいまいち使いにくいと思うのだが……。これだけシステムの完成度が高ければ、オートライトON すなわちオートマチックハイビームONでいいと思う。 日産が早くから採用していた駐車時の自動ブレーキについては、今や軽自動車にも装備されるくらいで、ようやくトヨタも、という感じ。バックモニターで見る限り、まだ余裕のある段階でガツン!と自動ブレーキをかけてくるので最初はドキッとしたが(ブレーキを左足でかけながらバックすれば、ギリギリまで寄せられる)、駐車時にぶつけてしまう可能性は相当低いだろう。

試乗燃費は10.2~13.3km/L。モード燃費はハイブリッド車の約半分

今回は約320kmを試乗。参考ながら試乗燃費は、一般道や高速道路を走った区間(約80km)が10.2km/L、一般道を大人しく走った区間(約30km×4回の平均)は13.3km/Lだった。直噴ターボながら、燃料はレギュラーでいいのがありがたい。 なお、JC08モード燃費は19.6km/Lで、それより実態に近いWLTCモードは16.4km/L、市街地モード(WLTC-L)は12.9km/L、郊外モード(WLTC-M)は16.9km/L、高速道路モード(WLTC-H)は18.2km/L。 燃料タンクは50Lと大きめ。航続距離は500kmくらいと考えていいだろう。 一方、ハイブリッド車のJC08モード燃費(15/16インチタイヤ仕様)は、34.2km/Lで、WLTCモードは30.0km/L、市街地モード(WLTC-L)は29.4km/L、郊外モード(WLTC-M)は32.9km/L、高速道路モード(WLTC-H)は28.8km/L。つまり、1.2Lターボ車のおおむね倍(!)という圧倒的な燃費性能を誇る。燃料タンク容量は43Lだが、航続距離は少なくとも600~700kmはありそうだ。 車両価格はハイブリッド車の方が27万円ほど高いが、代わりにエコカー減税等の優遇もある。単純に経済性だけで言えばハイブリッド車が有利だ。

ここがイイ

滑らかでスムーズな乗り味。充実の安全装備

滑らかスムーズ、静かでトルクフルな1.2Lターボ+CVTのパワートレイン。VWがダウンサイジングターボで大攻勢をかけ始めたのがおおよそ10年前。トヨタもついにこの分野で追いついてきた。伝達効率や生産コストではDCTを大量生産するVWに太刀打ちできないだろうが、滑らかさやレギュラーガソリン仕様という点は大きな武器。VWの1.2 TSIエンジンと7速DCTが相手なら、それぞれ一長一短で、ほぼ互角の内容だと思う。。 乗り心地も滑らかスムーズで、とても気持ちよく乗れる。小回りも効く。安全装備や運転支援装備も充実しているし、買ったあとの満足感は高いと思う。

ここがダメ

後席の乗降性。16インチタイヤのグリップ性能

ショールームで実車を見れば分かることだが、後席の乗降性ははっきり言って良くない。ゴルフなどのライバル車やプリウスよりも乗り込みにくいと思われる。 本文に書いた通り、中間グレード「G」に標準装着されるタイヤはシャシー性能に対して、グリップ性能が物足りない。おそらく18インチタイヤ+AVSのG“Z”グレードがあるがゆえの割り切りだと思うが、中間グレードでもせめて現行プリウスの17インチ仕様並みのグリップ性能が欲しい。 鳴り物入りのコネクティッド機能だが、短時間の試乗ではメリットが体感できなかった。故障した時やリコール時のフォローなどには便利で有用だと思うし、LINEユーザーにもそれなりに便利かもしれないが、それ以上のユーザーメリットはいま一つな気が。通信モジュールの全車標準搭載化は英断だが、それと同時にGoogleMapを車載ディスプレイに映せるAndroid Autoあたりにも対応して欲しい。 1.2Lターボかハイブリッドかは悩みどころだが、維持費や燃費や下取りを考えると無難なのはハイブリッド、と思えてしまうのが、今回試乗した1.2Lターボの難しいところ。

総合評価

30プリウスの代替え需要

プリウスが登場して早20年以上。ハイブリッド車に乗ることは日本ではもはや普通になり、ハイブリッド車を買うのは2回目、3回目というような人も多いだろう。また、2009年に登場して7年間生産された先代30プリウスはとにかくやたら売れたので、その代替え需要もものすごい。 ただ、そんな人たちが現行プリウスに乗り替えるかというと、そこは案外微妙。あの先鋭的なスタイリングを見ると、もうちょっと普通のハイブリッド車ってないかな、と思う人はけっこう多いようだ。これまで便利に使ってきた30プリウスのようなハッチバックはないかと探しても、C-HRのようなスタイリング優先のコンパクトSUVや、1クラス下のアクアやヴィッツしかなかったりする。そうなると、より電気自動車っぽい日産ノート eパワーあたりも気になってしまうだろう。
 
そんなところへ出てきたのが、この新型カローラ スポーツだ。ハイブリッド車もあるし、プリウスより安いし、スタイリングも比較的オーソドクス。となるとこのクルマ、かなり売れるのではないか。今後はヴィッツとアクアが統合されてヤリスになり、その上のクラスはカローラ スポーツとプリウスでカバーする、というのがトヨタのコンパクト系ハイブリッド車のラインナップになる、ような気がする。 カローラ スポーツのスタイリングは、北米のデザインスタジオ「CALTY」所属のデザイナーが描いたスケッチがベースらしい。まさに海外でも好まれそうな5ドアハッチバックゆえ、日本でもコンサバな人ならプリウスよりカローラ スポーツを選ぶことになるだろう。インテリアにも現行プリウスのような奇抜さはない。シフトレバーはハイブリッド車でもごく普通のタイプだ。

欧州と同じものを日本でも売る

ということでカローラ スポーツの場合、日本での販売主力はやはりハイブリッド車と思われるが、純エンジン車の1.2Lターボがあるのは、ガソリン車好きの少数派には朗報だ。市場が縮小して日本専用車を作るのが難しくなる中、欧州と同じものが日本でも販売されることは、クルマ好きにはかえって嬉しい状況かも。マニュアルトランスミッションながらシフトダウン時の回転合わせを行うiMT車なんてのが発売されるのも、同様の恩恵だろう。試乗した1.2ターボのしっとりした乗り味や、絶対的パワーはないが心地よいトルク感は、とても好ましく感じたし、ボディしっかり、足しなやか、実に欧州車ライクな、いいクルマじゃないか、と思う。 CVTもフィールの面ではDCTに負けてない。よりダイレクト感があるのは確かにDCTだが、フォルクスワーゲンの乾式クラッチDCT(DSG)を搭載するビートルカブリオレで、プログラムを最新に更新しても消せない小さなシフトショックに悩んでいる身としては、DCTに完全な軍配を上げる気にはなれない。各メーカーのCVTやDCTの信頼性に関しては一概に言えないが、カローラ スポーツは天下のトヨタ車ゆえ、信頼性は高いと信じたい。

AIとではなく、人(オペレータ)とつながるクルマ

話は変わって、インパネ上部センターというナビディスプレイの位置は素晴らしい。試乗車のようにディーラーオプションで巨大な9インチナビをつければ、タッチする手も届きやすく、いわゆる車載ナビとしては、ひとまず不満はないだろう。 で、考えるのが「つながるクルマ」、コネクティッドサービスだ。DCM標準搭載でいろんなことができるのはレクサスもそうだが、その高級車向けサービスが、いよいよ大衆車カローラにまで下りてきた。特に事故のときのヘルプネットは安心だし、車両情報・メンテ情報などがユーザーへ知らされることは今後当たり前になるだろうし、何よりディーラーあるいはメーカーがユーザー管理できる点でも重要だ。極論を言えば、トヨタは自社の販売車両を3年間はすべて一元管理できる。つながるクルマ=つなげられてるクルマなのだから。
 
ただ、ユーザー側が実際にできることはたいして多くないと感じてしまう。なぜなら、ナビゲーションなどの機能や操作性を、スマホと比較してしまうからだ。音声での検索や目的地設定という基本的な操作さえ、やはりスマホは圧倒的に優位にある。今回はLINEによってクルマと会話ができる、つまりトヨタのクラウドサーバーを介してクルマに指示を与えたり、クルマから情報を得たりもできるようになったという。これ、ガジェヲタ的には萌えなくもないが、新車から3年の無料期間は楽しめるからいいとしても、4年目から有料となると、その費用に値するのかどうか、つい考えてしまう。
 
とはいえ、便利なのは有人のオペレータサービスだろう。エージェント機能(AIとの音声対話サービス)は現時点ではとてもスマホには勝てないように思えたが、いきなりオペレータを呼び出して、遠隔操作で目的地設定をしてもらう、なんてことができるのは、デジタル機器が苦手な人には素晴らしいこと。また、クルマに詳しくない人にとって故障・事故のときにオペレータにつながるのはものすごく安心。昨今は保険会社がオペレータサービスを充実させているが、トヨタも保険まで含めて全てやろうという意志が見える(商品的にはまだ揃っていないようだが)。 AIとつながるクルマではなく、人(オペレータ)とつながるクルマは、究極のアナログサービスであり、究極の安心感とも言える。高齢化社会となっていく中、「これがあるからトヨタ車を買う」という人が増えるかもしれない。そしてトヨタ、スバル、マツダ、スズキといったグループのクルマ全部にDCMを積み、このサービスが全てで稼働すれば、などと夢想してしまう。いや夢でなくトヨタはそこを狙っていると思う。
 
ただ、その場合の大きな課題は、クルマに標準装備されたDCMといったハードウェアの経年による陳腐化だ。ご承知のように通信機器はまさに日進月歩。クルマに搭載された通信系ハードウェアは、クルマの寿命以前に陳腐化するのは確実。その意味でソフトウェアの更新はもちろんのこと、ハードウェアも更新できる仕組みが欲しい。数年たったらディーラーでゴソッと交換できる仕組みがあれば、と思う。そうすれば、ディーラーもメーカーもかなり長い間、販売したクルマを管理下に置いておけると思うのだが。 クルマは良くなったし、つながるようにもなった。最新のトヨタセーフティセンスも当然ながら全車標準。ACCも0~180km/hまでの全車速対応となったから、ついに実用的な「前についていくクルマ」になった。内装の質感も高い。もう不満らしい不満はない。初期受注は、1か月で月販目標の4倍の約9200台と好調。納車されれば大満足だと思う。とはいえ、なんかモヤモヤっとしたものもある。それは、最先端ではない、突き抜けていないという感覚かも。ただ、それこそがトヨタカローラだとも言える。スープラじゃないんだから、カローラというクルマは「これでいいのだ」。
 

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