キャラクター&開発コンセプト
4輪操舵システム「4コントロール」を採用
![新型ルノー メガーヌGTの画像。東京モーターショー2017]()
新型メガーヌ GT(東京モーターショー2017)
欧州では2015年9月のフランクフルトショーでデビューし、2016年に販売開始。日本では約2年遅れの2017年10月4日に発表、11月9日に発売された新型メガーヌは、仏ルノーのCセグメントモデル。ルノー19(ディズヌフ)の跡を継いで1995年に登場した初代メガーヌから数えると4代目にあたる。通称メガーヌIV。
今回の技術的トピックは、コーナリング性能などを高める4輪操舵システム「4 Control(フォーコントロール)」をはじめ、走行モードや車内環境をカスタマイズできる「Renault Multi-Sense(ルノーマルチセンス)」、自動ブレーキや車線逸脱警告機能といった運転支援システムの新採用など。ルノー・ジャポンは「これまでにない走りの楽しさと先進の安全性を兼ね備えたモデル」としている。
なお、新型メガーヌには、ルノー・日産アライアンスで共同開発されたCMF(コモン モジュール ファミリー)の「C/D」プラットフォームが採用されている。CはCセグメント、DはDセグメントの意。このCMF-C/Dプラットフォームは、日産の現行エクストレイルでも採用されている。
■過去の新車試乗記
ルノー メガーヌ エステート GT 220(2013年8月掲載)
ルノー メガーヌ RS(2012年10月掲載)
価格帯&グレード展開
1.6ターボは334万円~、1.2ターボは263万円
![新型ルノー メガーヌ GTの画像]()
新型ルノー メガーヌ GT
海外にはディーゼルエンジン車のほか、一部地域には4ドアセダンもあるが、今回ルノー・ジャポンが導入したのはガソリン車のみで、1.6L直噴ターボエンジン(205ps、280Nm)を搭載した5ドアハッチバックの「GT」とステーションワゴンの「スポーツ・ツアラーGT」、そして1.2L直噴ターボエンジン(132ps、205Nm)の5ドアハッチバック「GT-Line」の3モデル。
トランスミッションはいずれも新世代の「7EDC」こと7速DCT(デュアルクラッチトランスミッション)。4コントロールは1.6ターボのGTおよびスポーツ・ツアラーGTのみに装備される。また、GTグレードにはLEDヘッドランプやスポーツシートが標準装備される(GT-Lineのヘッドランプはハロゲン)。
![新型メガーヌ スポーツ・ツアラーGTの画像]()
新型メガーヌ スポーツ・ツアラーGT
【1.6L直噴ターボ(205ps、280Nm)】
■メガーヌ GT 334万円 ※試乗車
■メガーヌ スポーツ・ツアラー GT 354万円
【1.2L直噴ターボ(132ps、205Nm)】
■メガーヌ GT-Line 263万円
ボディカラーは、GTとスポーツ・ツアラーGTがブルー アイロンM(Mはメタリック)、ブラン ナクレM(白)、グリ チタニアムM(ダークグレー)の3色。GT-Lineはブルー ベルリンM、ブラン ナクレMの2色。ブラン ナクレMのみ2万1600円高。
次期メガーヌRSは2018年夏に上陸予定
![次期メガーヌ RSの画像。東京モーターショー2017]()
次期メガーヌ RS(写真は東京モーターショー2017)
今年2017年9月のフランクフルトモーターショーでは、次期メガーヌ RS(ルノースポール)もついに発表された。次期RSは新開発1.8Lターボ(280ps、390Nm)を搭載。トランスミッションは6MTおよび6速EDCとなる。日本での発売が2018年夏の予定だ。さらに、シビック タイプRに奪われたニュルブルクリンクFF車最速の称号を奪還すべく、高性能版メガーヌ RS トロフィーの投入も予告されている。
パッケージング&スタイル
“C”シェイプ LEDランプが目印
新型メガーヌをデザインしたのは、マツダからルノーに移り、現行ルーテシア等のデザインを手がけているローレンス・ヴァン・デン・アッカー率いる社内チーム。まずは、デイタイムランプとして機能する“C”シェイプ LEDランプが目を引くが、ボディサイドのキャラクターラインやリアフェンダーの造形も凝りに凝ったもので、見ごたえがある。
永らくルノーデザインを引っ張ってきたパトリック・ル・ケマンの手になる歴代メガーヌの理知的かつ、時に突拍子のないデザインに対して、新型はよりエモーショナルというか、ルノーの言葉を借りれば「官能的」であり、Cセグメントの中でもアッパー寄りに見える。それもそのはず、今やライバル車には昔ながらのVW(ゴルフ)、プジョー(308)、シトロエン(C4)だけでなく、シトロエンから独立した「DS」や、Cセグ市場で存在感を増してきたメルセデス・ベンツ(Aクラス)、BMW(1シリーズ)あたりになる。このクラスも今や“高級”に見えないとツカミで負けてしまう状況だ。
4コントロールは“小回り”にも効く
ボディサイズ(先代比)は全長4395mm(+70)×全幅1815mm(+5)×全高1435mm(-25)、ホイールベースは2670mm(+30)。主に全長とホイールベースが伸び、逆に背は低くなったのが、全体的にスポーティで伸びやかに見える要因の一つだろう。
注目すべきは最小回転半径。1.2Lモデルの「GT-Line」では5.6mあるが、2.0Lモデルの「GT」と、ホイールベースがそれより40mm長い「スポーツツアラーGT」は、VWゴルフ並みの5.2mに収まっている。これはGTに採用されている「4コントロール」によって低速域で後輪が逆位相に切れるからだ。
ちなみにルノーによれば新型では「サスペンションジオメトリーを見直し、またダンパーをより寝かせて取り付けることで、タイヤとホイールアーチの間隔を狭め、スポーティ感を高めた」のだという。なるほど確かにホイールハウスのすき間が小さく見える。
|
全長(mm) |
全幅(mm) |
全高(mm) |
WB(mm) |
最小回転 半径(m) |
ルノー ルーテシア RS(2013~) |
4105 |
1750 |
1435 |
2600 |
- |
VW ゴルフ7.5(2017~) |
4265 |
1800 |
1480 |
2635 |
5.2 |
新型ルノー メガーヌ(2017~) |
4395 |
1815 |
1435~1445 |
2670 |
5.2~5.6 |
マツダ アクセラ スポーツ (2013~) |
4460 |
1795 |
1470 |
2700 |
5.3 |
日産 リーフ (2017~) |
4480 |
1790 |
1540 |
2700 |
5.2~5.4 |
4代目トヨタ プリウス (2015~) |
4540 |
1760 |
1470~1475 |
2700 |
5.1~5.4 |
VW ゴルフ ヴァリアント (2014~) |
4580 |
1800 |
1475~1485 |
2635 |
5.2 |
新型ルノー メガーヌ スポーツツアラー(2017~) |
4635 |
1815 |
1450 |
2710 |
5.2 |
インテリア&ラゲッジスペース
フル液晶メーターやタッチパネルを採用
![ルノー メガーヌ GTのインパネ画像]()
試乗した「GT」には随所にブルーのアクセントが施されるほか、手触りの滑らかなナパレザーのテアリングホイールが装備される。
日本人デザイナーが手がけたというインパネデザインは、心なしか「意外に普通だな」という風にも感じられるのだが、特徴としては7インチのフル液晶メーター、センターコンソールの7インチタッチパネル(欧州仕様では縦型8.7インチ仕様もあるのだが)、そしてドアトリムなどに配されたLEDのアンビエントライト(ブルー、イエロー、レッド、パープル、グリーン)といったあたりだろうか。
タッチパネルは「ルノー マルチセンス」の操作インターフェイスであり、走行モード(コンフォート、ニュートラル、スポーツ、パーソナルの4種類)や車内環境(アンビエントライトの色、空調など)、オーディオ等の設定ができる。
車載ナビはなし。代わりにAndroid Auto / Apple CarPlayに対応
一方、ナビゲーション機能はなく、代わりにルノー独自のマルチメディアシステム「R-Link 2」を新採用し、スマートフォンのミラーリングにも対応。ナビゲーション機能については、Android Auto(Googleマップ) もしくはApple CarPlay(Apple標準マップ)対応になった。
なお、毎度書いているように、Android Auto / Apple CarPlayを利用する場合はルノーに限らず、スマートフォンと車両をUSBケーブルで接続する必要がある。USB接続端子はメガーヌの場合、センターコンソールの下部に2つ用意されている。
カードキーも新デザインに
10年くらい前に日本車でも流行ったカード型のスマートキーは、今では多くのメーカーが廃止してしまったが(レクサスなどには今でも付いてくる)、ルノーは嬉しいことに今回も新デザインで継続。かなり厚みが増したのは、財布などに入れて、折って壊さないようにするためか? ただし、ポケットに入れていることを忘れてしまうほど軽く出来ている(そのまま洗濯しちゃいそう)。
なお、従来ルノー車の日本仕様は、電波法の関係でスマートキー機能が無効化されていることが多かったが、新型ではちゃんと使えるようになっている。
GTグレードにはスポーツシートを装備
GTグレードに装備されるアルカンタラ張りのスポーツシートは秀逸な一品。サイドサポートがしっかり張り出して上半身を強力にサポートしてくれるし、「かた柔らかい」独特のクッションで座り心地もいい。さすがフランス車の椅子は違うな、と思わせる。背もたれの角度調整は従来のダイアル式ではなく、日本車に多いレバー式になった。
リアシートもクッションに独特のコシがあって座り心地はとてもいい。メガーヌの後席と言えばひと昔前のモデル(2代目)だとフットルームは狭いし、背もたれも立ち気味……といった不満を覚えたものだが、新型は大丈夫。あえて言えば、フットルームにはもう少し余裕が欲しいところだが。
などと感じる場合は、スポーツ・ツアラーGTがいい。ホイールベースが40mm長くなる分、後席のニースペースも広くなるからだ。
荷物を積むならスポーツ・ツアラー
写真のハッチバックでも荷室容量は十分なように見えるが、なぜかカタログや資料には荷室容量の記載がなかったり、後席の背もたれを倒した時に大きな段差が生じたりするなど、積載性はそれほど重視していない様子。今やCセグのハッチバックで重要ななのは、荷室容量よりもスタイルや居住性という判断だろう。
一方、スポーツ・ツアラーの荷室容量は580Lと十分で、カタログにも堂々と数値が記載されている。さらに後席の背もたれを倒せば、フルフラットな床面が広がり、容量は1695Lに増加。また、2枚のラゲッジボードで荷室スペースを上下や前後に分割することも可能だ。さらに、荷室側からレバーを引くだけで後席背もたれを倒せるイージーフォールディング機能、買い物袋などを吊り下げられるラゲッジフック、引き出し式トノカバー(床下に収納可能)、12V電源ソケットも装備する。
床下には、フルサイズのタイヤ&ホイールが入りそうな空間があるが、日本仕様は標準装備のパンク修理キットがあるだけで、おかげで空きスペースに小物を入れておくことっが出来そう。おそらく、後からスペアタイヤを買って積むことも可能だろう。
基本性能&ドライブフィール
205psの改良型1.6ターボを搭載
試乗したのは5ドアハッチバックの「メガーヌGT」(334万円)。
GTのエンジンは、形式名こそ現行ルーテシアRS用と同じM5Mながら、それをベースに大幅なアップデートを施した1.6L 4気筒の直噴ターボ。最高出力は205ps、最大トルクは280Nm(28.6kgm)で、つまり排気量1Lあたり127psのハイチューンユニットだ。
ちなみにルーテシアRSの従来型1.6ターボエンジンは、シャシースポールとシャシーカップが200psと240Nm、トロフィーが220psと260Nmといったところで、トルクについてはメガーヌGTの新型エンジンの方が、弟分のRSを上回っている。
「EDC」は7速&湿式クラッチに
パワートレインでもう一つ、ルーテシアより進化しているのがトランスミッション。ルノー言うところの「EDC」ことゲトラグ製DCT(デュアルクラッチトランスミッション)は、ルーテシアが6速であるところ、新型メガーヌでは7速になった。段数については、VWやメルセデス・ベンツのDCTに追いついた格好だ。また、クラッチについては、従来の乾式から、よりスムーズでトルク容量の大きい湿式に変更されている。
ステアリング左側に隠れているエンジン始動ボタンを押して、さっそく走り出す。パーキングブレーキは電動で、自動的に解除される。このあたりは日本車の多くが出遅れているところだ。
街中を流す限り、この1.6Lターボユニットは、ごく穏やかな力感で約1.4トンのボディをスムーズに走らせる。ならばとアクセルペダルを深く踏み込むと、一瞬だけ息を吸い込むようなターボラグがあった後、6000rpmまで一気に吹け上がり、前輪が路面を掻く。なるほど確かに205ps、トルク変動は大きいが速さは十分。0-100km/h加速は7.1秒とのことだ。
7速DCTの変速マナーは、VWのようにシャキン!ではなく、滑らかに変速するタイプで、予備知識がなかればトルコンATだと思うかも。スポーツモードを選択した場合は、たまーに軽くショックが出ることもあるが、おおむねスムーズだし、坂道発進も普通のATみたいに難なくこなす。また、ルノースポール譲りの大型パドルシフトを引けば、思いのままに変速できる。
走行モードは4種類から
例のルノー マルチセンスによって、走行モードも「コンフォート」、デフォルト設定の「ニュートラル」、「スポーツ」、項目ごとに好みに合わせて設定できる「パーソナル」の4種類から選択できる。変更要素はアクセルペダルマッピング、パワーステアリングの手応え、変速マッピング、4コントロールのマッピング、そして「R-サウンド」ことエンジン音(3パターン)だ。
実際のところ、普段は初期設定のニュートラルがちょうどよく、それでもエンジンをけっこう上まで引っ張るのがフランス車らしい。スポーツモードはそれよりさらにエンジンを引っ張りまくる設定で、どちらかと言えばサーキット用という感じ。今回は試さなかったが、そんな場合は「パーソナル」モードで項目ごとに設定するのがいいかも。
なお、スポーツモードではスタートダッシュを決めるためのローンチコントロールや、一度のパドルシフト操作で複数段のシフトダウンができるマルチシフトダウン機能も有効になる。またスポーツモードは、センターコンソール中央の「R.S.ドライブボタン」を押しても選択可能だ。
【4コントロール】FF車ばなれした接地感
そして新型メガーヌに乗って何よりも印象的なのが「4コントロール」。いわゆる4輪操舵システムは、4WSという名称でもおなじみだが、中でも有名なのは1980年代に市販量産車としては世界で初めて採用された日産のHICAS(ハイキャス、High Capacity Actively Controlled Suspension)だろう。それ以外にもホンダ、マツダ、トヨタなどで採用例があり、いったんは廃れたものの、最近では復活傾向にあって、現行モデルではレクサス(GS、IS)、BMW(7シリーズ、5シリーズ)やポルシェ(991 GT-3、ターボ)、そしてルノーでも上級モデルのラグナ(現在は日本未導入)で採用されている。
新型メガーヌの4コントロールは、ルノー・スポールが開発・チューニングを手がけたもの。機構的には、電子制御アクチュエーターでリアのタイロッドを動かし、後輪を操舵するというもので、後輪の最大切れ角は2.7°。約60km/h以上(スポーツモードでは約80km/h以上)で走行中は、後輪は前輪と同一方向に向き、コーナリングやレーンチェンジでの安定性を高める。ちなみに新型メガーヌのリアサスは、4コントロール装着車も半独立式のトーションビームだ。
4コントロールの効果は、高速道路で車線変更をすれば、すぐに体感できる。ステアリング操舵に応じて、ロール感や揺り戻し感などがないまま、水平移動するようにレーンチェンジする感覚は4WS独特のもの。そう言えばこの感覚、何かで味わったなぁとしばし考えて思い出したのは、2006年に発売された
V36スカイライン。あれは世界初の4WAS(4輪アクティブステア)、つまり前輪も後輪も電子制御でアクティブ操舵する、というものだったが。
また、コーナーでは旋回性の良さもさることながら、リアの接地感がものすごい。接地感が高いからレスポンスをクイックにできるとも言えるだろうが、まるでフルタイム4WDのような、あるいは上から車体を地面に押し付けているかのような接地感がある。
一方で、約60km/h未満(スポーツモードでは約80km/h未満)で走行中は、後輪は前輪とは逆方向に向き、回転半径を小さくして小回りを可能にする。結果、最小回転半径は4コントロール非搭載のGT-Lineが5.6mであるところ、GTおよびスポーツ・ツアラーGTではVWゴルフ7並みの5.2mを実現している。また、緊急時にはステアリングの回転速度からシステムが状況を判断し、後輪の舵角を増やして車体の動きを安定させるという。低速コーナーでは回頭性が良すぎて違和感があるという声もあるようだが、今回試せた限りではアンダーステアの小ささや安定感など、むしろメリットの方が大きく感じられた。
こういった具合に4コントロールは、サスペンションを固めたりしなくても、コーナリング性能を高められるため、乗り心地とハンドリング性能を両立しやすいのがメリットの一つのようだが、より高性能なシャシーに4コントロールを組みあわせれば、ハンドリング性能はより向上するわけで、それは次期メガーヌRSでのお楽しみ、ということだろう。
なお、新型メガーヌのGTには、ルノー・スポールがチューニングした「GTシャシー」が4コントロールとセットで採用されている。これは専用のスプリング、ダンパー、アンチロールバー、ステアリングを備えるほか、ブレーキディスクの直径がGT-Line用より30㎜大きいフロント320㎜、リア290㎜になり、タイヤもGT-Lineより1インチ大径の225/40R18、銘柄はコンチネンタルのスポーツコンタクト5になる(ぜんぜん関係ないが、先回の試乗記で乗った新型スイフトスポーツもスポコン5だった)。このGTシャシーに関しては、低速域や荒れた路面でこそ多少ゴツゴツするが、速度域が上がれば重厚かつフラットな乗り心地が味わえる。メガーヌGTを選ぶユーザーなら、期待通りというところだろう。
100km/h巡行時のエンジン回転数は7速トップで約2150rpm。試せた範囲では、風切り音やロードノイズが突出してうるさくなることもなく、やはり欧州車だなぁと思わせる。もちろん直進安定性もまったく問題なく、レーンチェンジや高速コーナーでは「あ、この瞬間が4コントロールだね」という感じ。
ミリ波レーダーはあるが、ACCはない
新型メガーヌにおけるトピックの一つが、ADAS(エイダス、Advanced Driver Assistance System)、つまり先進安全技術や運転支援システムの採用である。日本車やドイツ車に比べて後手に回っていたこの分野で挽回すべく、新型メガーヌには2つのカメラ(フロントとリア)、ミリ波レーダー、超音波センサー(フロント4個、リア4個、フロントサイド2個、リアサイド2個の計12個 ※GTラインは前後サイドを除く計8個)が搭載され、具体的には以下の機能が採用されている。
・車間距離警報/SDW(Safety Distance Warning)
ミリ波レーダーが前方車両との距離を時間で表示(約2.5秒以下)し、危険と判断すると、7インチフルカラーTFTメーターへの表示と音でドライバーに注意を促す。約30km/h~200km/h走行時に作動。
・エマージェンシーブレーキサポート(アクティブブレーキ)
ミリ波レーダーが前方車両との距離を検出し、衝突の可能性が高まると警告灯やブザーでドライバーに回避操作を促す。さらに最大2秒間の緊急ブレーキを作動させて、衝突時の被害を軽減する。約30km/h~140km/h走行時に作動。
・車線逸脱警報/LDW(Lane Departure Warning)
フロントカメラで車両前方の白線を検知し、ドライバーが意図せずに車線をはみ出しそうになった場合、ブザーで注意を促す。約70km/h以上での走行時に作動。
・後側方車両検知警報/BSW( Blind Spot Warning) ※GTグレードのみ
フロント2個、リア2個の計4つの超音波センサーで、バックミラーの死角の車両を検知すると、ドアミラー内のLEDインジケーターで注意を促す。約30km/h~140km走行時に作動。
・オートハイ/ロービーム
対向車や先行車をカメラが検知し、ハイビームとロービームを自動で切り替える。
・イージーパーキングアシスト ※GTグレードのみ
12個のセンサーが駐車可能なスペースを検出し、自動でステアリング操作を行い、縦列駐車(出入りとも)やバックでの車庫入れをサポート。
以上のように、新型メガーヌは多くのADAS諸機能を備えているのだが、残念なのはACC(アダプティブクルーズコントロール)の採用が見送られたこと。普通、ミリ波レーダーが搭載されれば、自動ブレーキとACCはセットで付いてくるものなのだが……(実際、欧州仕様にはACCも採用されている)。電動パーキングブレーキもあるので、全車速対応ACCの採用も可能だったと思うのは素人考えか……。
また、エマージェンシーブレーキサポート、いわゆる自動ブレーキ機能の対象も先行車両のみで、ミリ波レーダーが検知を苦手とする歩行者、自転車、バイクなどは対象となっていない。昨今の最新モデルではメーカーを問わず、デジタルカメラによる画像解析で歩行者を検知対象とするものが多いだけに、少々物足りないところだ。
試乗燃費は11.1~12.5km/L
今回は約200kmを試乗。参考ながら試乗燃費は、いつものように一般道や高速道を走った区間(約80km)が11.1km/L、高速道路を普通に巡行した区間(約80km)が12.5km/Lだった。さすがダウンサイジングターボ、巡行時の燃費はかなり良い。指定燃料はもちろんハイオク。JC08モード燃費は未発表だ。
燃料タンク容量は、車格の割に少なめの47L。燃費がいいので航続距離はこれだけあれば十分、ということだろう。
ここがイイ
目が覚めるようなハンドリング性能
4コントロールの採用による、FF車とは思えない感覚の圧倒的なコーナリング性能。クイックに反応するフロントと、それに遅れず反応しつつ、抜群の接地感を保ったまま追従するリアの動きはまさに4輪操舵ならでは。また、これによって小回りも効くようにするなど、日常域の恩恵もしっかりある。
また、特性はややピーキーだが、十分にパワフルな1.6Lターボ、かつてフランス車御用達だった4速AT「AL4」からすると夢のようなトランスミッションの7EDC、まずまずの燃費性能、ソツのないパッケージングなど、トータルでの完成度は高い。
ここがダメ
ACCは欲しかった
せっかくミリ波レーダーを搭載しているのだから、やっぱりACCはつけて欲しかった。日本仕様で採用が見送られた理由は分からないが、ACCはもはや軽自動車のN-BOXにも付いている装備。同様に、エマージェンシーブレーキサポート(自動ブレーキ)が歩行者対応ではないことや、車線逸脱防止や車線中央維持のためのステアリング操舵支援がないことも、ゴルフやインプレッサといった同クラス車と比べてしまうと物足りない。
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新型メガーヌの欧州仕様にある8.7インチディスプレイ
車載ナビがないのは、その分、車両価格も安くなるし、数年後にナビだけ時代遅れになることもないのでまぁいいとして、しかしAndroid AutoやApple CarPlayを利用中、エアコンの設定温度が表示されなくなるのは不便。まぁマニュアルエアコンみたいに暑ければ温度調整ダイアルを右に少し回し、寒ければ左に少し回して様子を見る、でもいいわけだが……。ちなみに欧州仕様には縦型8.7インチディスプレイもあるようで、それだとミラーリングしてる最中でもエアコンの設定温度が表示されそうに見えるのが……。
総合評価
こだわりの輸入車がますます売れる
輸入車(外国メーカー車)が売れている。このまま行けば2017年は20年ぶりに30万台を超えるそうだ。軽を除けば国内市場は300万台くらいだから、約一割に相当する台数だが、それがだんだん増えているということのよう。世の中の一割、10人に一人くらいはいまだクルマ好き、というか、クルマなんかどうだっていいとは思わない人ではないか。そういう人が軽ではなく普通車を買おうとした時、昨今、なかなか魅力的な日本車を見つけにくい。そうなると自ずと個性的な輸入車に目が向かってしまうのは理解できるところ。せっかく買うなら走りやデザインなど何か「こだわりのあるクルマ」を、ということだろう。クルマ好きとしては、そんなこだわりを感じられるクルマが、国産車からどんどん減っていることこそが問題だと思う。
しかしながら、逆にいえば9割の人はクルマにこだわりはなく、経済性とかを重視してクルマを買うわけで、つまり世の9割のニーズはそちらだ。ゆえにそこにマッチする商品、そういうクルマが日本では作られるということだろう。ニーズを感じながら商品は作られるわけで、例えばハンドリング性能など、いまや日本では一般ユーザーにほとんどニーズがない案件ゆえ、そういうクルマが作られることはない、ということになる。かつての日本では、走行性能へのニーズは存在していた。そこで4WSなどという、新たな技術の挑戦もされたのだが、費用対効果も含めてニーズがなくなることで、それらが積極的に採用されることはなくなっていった。とはいえ4WSそのものは日本車でもレクサスや日産のアッパークラスなどで、高級車の技術の一つとして現在も採用され、進化し続けているのだが。
今回メガーヌに試乗して、4コントロールによる独特の動きを感じながら、日本の4WSが走りへのこだわりの技として改良され、Cセグメント以下にも搭載されていたら、と夢想した。しかしまあ、ないものを考えても仕方ないので、このクラスで4WSを体感したいのであれば、メガーヌを楽しめばいいだけの話。ということで話はもとに戻り、こだわりの外国メーカー車がまたまた売れるということになる。
フランス車といえば、かつては走りというより、独自の乗り味が魅力だった。今でもシトロエンあたりはそうだが、ルノーは走りの魅力を前面に打ち出している。メガーヌも今回の日本導入がGT系だけというのは、日本での一割の人々を取り込むにはその方がやりやすいからだろう。走りを楽しむなら、いまや欧州車ということ。それはそれでいい。日本車には日本車の進む道があるはず。と書いてみても、その道は一体どの道なのだろう。ということで、メガーヌGTはその4コントロールにとても大きな魅力を感じた。有無を言わせぬ個性があることは本当に素晴らしい。
カーナビなどもういらない
ところで、日本がお得意だったものには、カーナビという装備もある。ところがスマホの圧倒的な性能アップによって、カーナビ機能はもはやスマホで何ら問題なくなってしまった。ニーズという点で、現在のカーナビはすでにニーズに対応した商品ではないのではないか。このところ色々試乗してみても、純正カーナビに感心したことは、残念ながらまったくない。目的地設定はしにくいし、情報は拾いにくい。何しろ情報は今やスマホで検索するのが普通なので、そこから目的地設定して道案内させるのに、わざわざカーナビで設定しなおす、などということなど、もはやありえない、と断言できる。
純正ではなく、、市販の汎用カーナビを見ると、昨今は大型ディスプレイやスマホのようにスムーズな操作感を売り物にしているものが多い。あとはハイレゾ対応などのオーディオ性能か。しかし検索機能は相変わらずだ。Android AutoやCarPlayが使えるとうたっているのはパナソニックとケンウッドの一部機種くらい。地図更新も多くは3年間で終わりだ。大丈夫か、日本のカーナビ。いや、大丈夫ではないのだろう。
![ルノー メガーヌのサテライトスイッチ画像]()
新型メガーヌにもルノー車でおなじみのオーディオ操作用サテライトスイッチが装備されている
では、クルマのディスプレイで何がしたいかと言えば、空調を含めた車両の各種設定、電話の操作、オーディオ、テレビ、バックカメラ、といったあたり。あとはスマホのナビ画面がそのまま大きく表示されればいい。メガーヌの「R-Link 2」は、Android AutoやCarPlayに対応しているから、テレビ以外は全部可能だ(テレビが映らないのは個人的にはとても問題だが)。それで電話もオーディオもナビもできてしまう。もはやこれ以外は必要ない。スマホをUSBで車両につないでしまうと何かと不便という人は、格安simのスマホをもう一台持てばいいだろう。1万円くらいの中古スマホに、データ通信だけなら月1000円ほどのsimを入れれば一気に便利になる。それですべて解決だ。カーナビなどもういらない。メガーヌは素晴らしい。いらないカーナビ分だけお得。もうちょっと大きめのディスプレイは欲しいが。
そういえばメガーヌにはスポーツ・ツアラーというステーションワゴンも用意されている。ステーションワゴンも国内ではニーズがないとされ、日本車ではすっかりマイナーな存在になってしまったもの。加えていえば、ルノーが採用しているカード型スマートキーも多くの日本車から消えてしまったものだ(レクサスやクラウンなどでは今でも通常のスマートキーとは別にカードキーが付属してくるが)。なるほど輸入車が数を伸ばすのも分かる。
ただ、そのメガーヌにもニーズがあるのに載っていないものがある。ACC(アダプティブクルーズコントロール)だ。日本仕様では解決できない事情が何かあるということだろうけれど、これは早く改善してもらいたい。来るべき新東名120km/h時代に買うクルマで、ACCがないのは辛すぎる。メガーヌの欠点はその一点に尽きる。