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VW ゴルフ TSI ハイライン:新車試乗記

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キャラクター&開発コンセプト

マイナーチェンジでゴルフ「7.5」に進化

マイナーチェンジしたVW ゴルフ(2017年)
欧州では2012年、日本では2013年6月に発売された7代目ゴルフ、通称「ゴルフ7」が、デビューから約4年でマイナーチェンジし、2017年5月25日に国内で発売された。巷では通称「ゴルフ7.5」と呼ばれるモデルだ。 今回はゴルフシリーズ全体、すなわちハッチバックの「ゴルフ」「ゴルフGTI」「ゴルフR」、ステーションワゴンの「ゴルフ ヴァリアント」、クロスオーバーSUVの「ゴルフ オールトラック」のすべてがマイナーチェンジした。

フェイスリフトを実施、インフォテイメント装備や運転支援システム等も改良

ディスプレイサイズが9.2インチになるなどの改良を受けたインフォテイメントシステム“Discover Pro”
改良内容は、灯火類やバンパーなどの意匠変更(フェイスリフト)、インフォテイメントシステム“Discover Pro”のディスプレイサイズ拡大(従来の8インチから9.2インチに)や、新しいスマホアプリ連携機能「Volkswagen Media Control」やジェスチャーコントロール機能の採用、12.3インチのフルデジタルメーターの採用、自動ブレーキへの歩行者検知機能の追加、LEDヘッドライトの採用、スポーツモデル(GTIおよびR)のパフォーマンス向上など。 今回は販売主力モデルであるハッチバックの中核グレード「TSI ハイライン」を取り上げる。 新車試乗記>VW ゴルフ7 TSI ハイライン(2013年8月掲載)
 

価格帯&グレード展開

売れ筋は300万円台

「受注生産」扱いとなるTSI トレンドライン(2017年)
現行ゴルフシリーズは以下の12モデル。価格は1.2Lターボ(105ps、175Nm)のベースグレード「TSI トレンドライン」の249万9000円からスタートするが、これは15インチ鉄ホイール&樹脂キャップ、マニュアルエアコン、ナビゲーション無し、キーレスアクセス無しの「受注生産モデル」(つまり本国発注モデル)というわけで、実際には「TSI コンフォートライン」の279万9000円がスタートラインだ。
 
TSI コンフォートライン(2017年)
ただ、コンフォートラインで、オプションのLEDヘッドライト(10万8000円)や純正ナビゲーションシステム“Discover Pro”(22万6800円)を装着すると、見積もりはおのずと300万円台に。そしてパワーに余裕がある1.4Lエンジン(140ps、250Nm)でとなると325万9000円の「TSI ハイライン」になり、さらにフル液晶メーター「Active Info Display」や照射範囲を左右に可変する「ダイナミックライトアシスト」等をセットにした「テクノロジーパッケージ」(17万2800円)を装着していくと360万円を超える。
 
ゴルフ GTI (2017年)
あるいは、ステーションワゴンの「ゴルフ ヴァリアント」がハッチバックの14万円高で、あるいは1.8Lターボエンジンと4WDシステム「4MOTION」を備えるクロスオーバーSUV「ゴルフ オールトラック」が359万9000円で、そして伝統の「ゴルフ GTI」が389万9000円からで手に入る。、トップモデルの「ゴルフ R」は飛び抜けて高い549万9000円。ひとくちにゴルフと言っても、上位モデルはなかなかの高価格車だ。
 
ゴルフ R (2017年)
■Golf TSI Trendline(1.2L+7DSG)  249万9000円 ■Golf TSI Comfortline(1.2L+7DSG)  279万9000円 ■Golf TSI Highline(1.4L+7DSG)  325万9000円 ■Golf GTI(2.0L+6MT)  389万9000円 ■Golf GTI(2.0L+6DSG)  399万9000円 ■Golf R(2.0L+6MT)  549万9000円 ■Golf R(2.0L+7DSG)  559万9000円
 
ゴルフ オールトラック TSI 4MOTION (2017年)
■Golf Variant TSI Comfortline(1.2L+7DSG)  293万9000円 ■Golf Variant TSI Highline(1.4L+7DSG)  339万9000円 ■Golf Variant TSI R-Line(1.4L+7DSG)  359万9000円 ■Golf R Variant(2.0L+7DSG)  569万9000円 ■Golf Alltrack TSI 4MOTION(1.8L+6DSG)  359万9000円
 

パッケージング&スタイル

前後バンパーや灯火類が変わった

外観で変わったのは、前後バンパー、ヘッドライト(外形が若干変わったのでフロントフェンダーの形状も少し異なる)、LEDヘッドランプの新採用など。一部グレードにはオプションないし標準で、リアにVW初の“流れるウインカー”(ダイナミックターンインジケーター)も設定された。とはいえ全体として見ると、デザイン変更は小規模。一番の識別点はやはりバンパー形状だろう。特にリアはマフラーの出口と一体化したように見えるタイプになって特徴的だ。

ボディサイズは変わらず

ボディサイズは従来通りで全長4265mm、全幅1800mm、全高1480mm、ホイールベース2635mm。全幅が1800mmもあるのは、日本の狭い道路や駐車スペース事情を考えると気になるところだが、今となってはこれがCセグメントの標準になってしまった。一方で、全長はライバル車より短めで、ゴルフらしい節度が感じられるところ。最小回転半径も5.2mと小さく、取り回しもしやすい。
 
GTIやRを除くハッチバックのボディカラーは全8色。テーマカラーはカレー色の、その名も「ターメリックイエローメタリック」だが、売れ線は写真の白(ピュアホワイト)、黒(ディープブラックパールエフェクト)、シルバー(ホワイトシルバーメタリックなど)あたりか。これまで通りオプションでパールホワイトの「オリックスホワイト マザーオブパールエフェクト」(6万4800円)も選べる。
 
    全長(mm) 全幅(mm) 全高(mm) WB(mm) 最小回転
半径(m)
日産 ノート e-POWER (2016~) 4100 1695 1520 2600 4.9~5.2
新型VW ゴルフ7.5(2017~) 4265 1800 1480 2635 5.2
マツダ CX-3 (2015~) 4275 1765 1550 2570 5.3
メルセデス・ベンツ Aクラス (2012~) 4290~4370 1780 1420~1435 2700 5.1
トヨタ C-HR (2016~) 4360 1795 1550~1565 2640 5.2
マツダ アクセラ スポーツ (2013~) 4460 1795 1470 2700 5.3
4代目トヨタ プリウス (2015~) 4540 1760 1470~1475 2700 5.1~5.4
2代目トヨタ プリウス PHV(2017~) 4645 1760 1470 2700 5.1~5.4
 

インテリア&ラゲッジスペース

オプションで12.3インチのフル液晶メーターを用意

内装デザインも基本的にはマイナーチェンジ前と同じだが、加飾パネルやドアトリムの素材、スイッチ類は変更されて質感アップ。さらに、ハイラインにオプションとして用意されるテクノロジーパッケージ(17万2800円)を装着すれば、アウディのような、あるいは現行パサートのような12.3インチのフル液晶デジタルメータークラスター“Active Info Display”が備わり、さらに「新型」感が高まる。

進化したディスカバープロ

ナビゲーションシステムは全車オプションで、ディスプレイサイズが従来の8インチから9.2インチに拡大された純正インフォテイメントシステム“Discover Pro(ディスカバープロ)”パッケージ(22万6800円)がコンフォートラインやハイラインに用意されている。内容はSSDナビゲーションシステム、DVD/CDプレーヤー、地デジTVなどだ。 最新のディスカバープロは、単に画面が大きくなっただけではなく、ボタン部分も含めて全面フラットなタッチスクリーンとなったほか、VWで初のジェスチャーコントロール機能を採用。手のひらをディスプレイの前で左右に振ってメニューの切り替えなどができる。

新しいスマホ連携機能「フォルクスワーゲン メディア コントロール」

「フォルクスワーゲン メディア コントロール」を使用中
新型ディスカバープロに採用された、もう一つの新機能は、助手席や後席の同乗者が自分のスマートフォンで、車載オーディオや各メディアの操作、そして目的地検索および車載ナビゲーションでの目的地設定ができるスマートフォン向けアプリ“Volkswagen Media Control”(フォルクスワーゲン メディア コントロール)への対応だ。 これはスマホと車両を、WLAN(無線LAN)で接続して使用するもので、例えばスマホに入ってる音楽を車載オーディオで聞いたり、行きたい場所をスマホで検索して、その検索結果(位置情報)を車載ナビに転送する、といったことができる。ただ、アプリは4G回線ではダウンロードできないようで、事前にWi-Fi環境で落としておく必要がある。また、こちらが慣れていないせいか、なかなかWLANで接続できないことがあった。ちなみに、このアプリでは端末がiPhoneでもGoogleの検索エンジンが使用される。
 
Apple CarPlayでナビゲーションを実行中。端末はiPhone 7plusで、この場合はiPhoneの標準マップが使用される
また、新型ディスカバープロは、スマホとのコネクティビティ機能“App-Connect”、すなわちAndroid AutoやApple CarPlayの各アプリにも対応している。こちらはUSBケーブルでスマホと車両を接続し、スマホのデータ通信機能やナビゲーション機能、音楽データ等を利用するもの。ナビゲーションにはAndoroidであればGoogleMap、iPhoneであればiPhoneの標準マップが使用される。こちらも各アプリは無料で誰でもダウンロードできる。スマホに何もかも集約したい人には便利かもしれないが、いちいちUSBケーブルでつなぐのが面倒ではある。 また、最新のディスカバープロは、スマホ等でテザリングしてVWの専用サーバーに接続するモバイルオンラインサービス「Volkswagen Car-Net」にも対応している。これはニュースや交通情報などの各種オンライン情報やGoogleのオンライン検索などを可能にするもので、この場合はナビゲーションにGoogleMapが使用される。新車から3年間は無料で利用できる。
 
昔ながらのオーディオとも言える標準装備の「コンポジションメディア」
なお、全車に標準装備されるのは、見た目こそディスカバープロに似ているが、ナビゲーション機能などが省かれたインフォテイメントシステム“Composition Media(コンポジションメディア)”。機能としては車両設定画面や車両情報の表示に加えて、CDプレーヤー、MP3/WMA再生、AM/FMラジオ、BlueToothオーディオ/ハンズフリーフォン機能に留まるが、こちらも今回のマイナーチェンジでディスプレイサイズが従来の6.5インチから8インチに拡大されている。高価な車載ナビは要らないという人には経済的な選択だが、これだけ大きなディスプレイスペースの使い道としては少々もったいない気もする。実際の装着率も低いようだ。
 

ゴルフは相変わらずゴルフ

パッケージングは当然ながらマイナーチェンジ前と不変。後席の広さ、着座姿勢、居心地などはスタンダード中のスタンダードで、何の変哲もないが、何の不満もない。ライバル車がゴルフをベンチマークとして追い上げてきているが、ゴルフは相変わらずゴルフという感じで、堂々としたものだ。
 
5人乗車時の荷室容量は従来と同じでクラストップの380L。後席の背もたれは昔のようにダブルフォールディングでフラットには畳めないが、背もたれを倒すだけのワンタッチなので操作は簡単だ。
 
床下にはパンク修理キットではなく、相変わらず応急スペアタイヤを搭載する。フロア高はおそらくフルサイズのタイヤを収納する時に対応するためだろう、2段階で変更できる(写真は上段)。
 

基本性能&ドライブフィール

走りはデビュー時と大差なし

試乗したのは上級グレードで1.4ターボエンジンを搭載する「TSI ハイライン」。車両自体は325万9000円だが、それに“Discover Pro”ナビやフル液晶メーターなどをオプション装着して、しめて365万8600円という仕様。GTIやRなど、もっとパワフルで高価なモデルもあるが、動力性能的にも装備的にもこれで十分というのが、試乗車の仕様だろう。 結論から言ってしまうと、走りに関しはマイナーチェンジ前と同じ、というのが正直なところ。いやひょっとすると微妙に違うのかもしれないが、ほとんど分からないレベル。今回の試乗では、その前後にたまたまマイチェン前のゴルフ7に乗る機会があったが、印象としてはほとんど一緒だった。
 
デビュー当時、その動的質感の高さにびっくりしたゴルフ7だが、この4年間でこちらの感覚もそのレベルに慣れてしまったのか、当時の感激はない。それでも、カチッとして軽快感のある走り出し、アクセルを踏み込んだ時の絶妙なトルク感、過不足ない加速感、ステアリングフィールの良さ、コーナーでの素直なターンインや安定感などは、面白みこそないが、お手本のようで、やはりいいなと思う。ただ、今回たまたまほぼ同時に乗る機会のあった現行パサート(1.4 TSI)のような重厚感や落ち着きはない。まあ同じMQBとはいえ、パサートとゴルフが同じわけはないのだが。 1.2Lエンジン(105ps、175Nm)のコンフォートラインだと、パワーは必要十分というレベルであり、困ることはないものの、潤いに欠ける面があるのだが、ハイラインの1.4L(140ps、250Nm)はやはりパワーに余裕がある分、「いいクルマ感」や「上級な感じ」があって嬉しい。まぁコンフォートラインでも十分ということは、それより上はすべて贅沢なのだが、「どうせ300万、400万円出すならいっそ」とハイラインを飛び越えて、「GTI」や「R」を選びたくなるように「出来ている」。このあたり、ドイツ車の商売上手なところ。 なお、あらためていいなと思ったのは、停車中にブレーキペダルを踏まなくても停止状態を保つ「オートホールド」。アイドリングストップ中にブレーキペダルを離しても、アクセルを踏むまでエンジンが掛からないし、いちいちパーキングブレーキをかけなくても停車すればテレビ等の映像が表示されて便利だった。

「DCC」のオプション設定がなくなった

今回試乗したハイラインで気になったのは、少し硬めの乗り心地や、タイヤのゴロゴロ感。4年前に試乗した時より気になったのは、電子制御ダンパー「DCC」が今回はなかったせいか(ハイラインには設定そのものがなくなった。GTIにはオプション、Rには標準装備)。オプションで15万円ほどしたので、おそらく装着率は低かったのだろう。 また、試乗車のタイヤ(ハイラインに標準の225/45R17)は最近の欧州車で多いポーランド製のブリヂストン・トゥランザで、このあたりも影響していたのかも(銘柄は他にミシュラン、ピレリ、ダンロップなどのこともある)。ちなみにコンフォートラインの標準タイヤは205/55R16で、足回りの設定もややソフトなようだ。 なお、トレンドラインとコンフォートラインのリアサスペンションは、ゴルフでは4まで使われ、7で復活したトレーリングアーム(トーションビーム)であり、ハイライン以上ではゴルフ5から採用されている4リンク(マルチリンク)になる。今回あらためて乗りくらべてみたが、両者の差は、少なくとも乗り心地や通常速度域でのハンドリングでは、ほとんどないように感じた。

渋滞時追従支援システムや歩行者検知機能を追加

今回のマイナーチェンジでは運転支援システムも主に2点、改良された。 一つはVWのコンパクトモデルで初採用となる渋滞時追従支援システム“Traffic Assist(トラフィックアシスト)”の追加。これはACC(アダプティブクルーズコントロール)とLKA(レーンキープアシスト)を利用したもので、起動速度は30km/h以上、作動速度は0km/h~。つまり、いったんオンになれば、0km/h以上の全車速で、加速・減速、ステアリング操舵を一定の条件内で自動で行う。従来モデルでもACCは全車速対応だったが、LKAは60km/h以上でしか作動しなかった。
 
ただ、実際に試した限りでは、高速道路などを60km/h以上で走行する時の操舵支援はほぼ従来通りで適度ながら、一方で低中速での操舵支援はそれほど強力ではなく、特に60km/以下ではほとんど作動を体感できなかった。 もう一つの改良ポイントは、プリクラッシュブレーキシステム“Front Assist(フロントアシスト)”に、歩行者検知機能(5~65km/hで作動)が追加されたこと。今やセンサーにカメラを使う自動ブレーキ装備車では歩行者検知機能が当たり前になりつつあり、ゴルフもそれに対応したということだ。 なお、ACCの設定上限速度はコンフォートラインやハイラインの場合、従来は160km/hまでだったが、今回の新型では少なくともハイラインでは210km/hに引き上げられていた(コンフォートラインは未確認)。ま、日本では160km/hで十分な話ではあるが。最高速度(発表値)は、従来モデルと変わらなければ、コンフォートラインが192km/h、ハイラインが212km/hだ。

LEDヘッドライトに加えて「ダイナミックライトアシスト」も

ここ最近のトレンドとして、ヘッドライトのハイ/ロー自動切替の採用があり、ゴルフもそれにぬかりなく対応している。LEDヘッドランプを標準装備するハイラインに、オプションで追加できる「テクノロジーパッケージ」(17万2800円)には、ハイビームでも対向車や先行車のドライバーを幻惑しないよう照射範囲を細かく自動調整する「ダイナミックライトアシスト」が盛り込まれた。
 
実際に使ってみた印象は、他社の類似のものと同様に、ハイビームをより活用しやすくなるほか、ハイ/ロー切替のわずらわしさも減るなど、恩恵は大きい。ただし、ダイナミックライトアシストの起動速度は60km/h以上とのことで、一般道では恩恵が得にくいと感じた。 また、うっかりハイビームのまま走ってしまうこともままあり(フル液晶メーターの表示モードによっては青色のハイビームインジケーターが目立たなくなるせいもある)、慣れるまで注意が必要だ。

試乗燃費は11.0~13.6km/L。JC08モード燃費は18.1km/L(ハイライン)

今回は約250kmを試乗。参考ながら、試乗燃費はいつもの一般道と高速道路を走った区間(約80km)が11.0km/L。また、一般道を大人しく走った区間(約30km)が無駄な加速を控えて13.6km/Lだった。 JC08モード燃費は1.2Lのトレンドライン/コンフォートラインが19.1km/L(従来は21.0km/L)、試乗した1.4Lのハイラインが18.1km/L(従来は19.9km/L)。エンジン諸元も車重も特に変わっていないのに1割近くダウンしているのはなぜ? いずれにしても実用燃費については、VWの直噴ターボ+DSG車全般に言えるように、(アクセルを)踏めば悪化し、大人しく走れば良好といった感じ。使用燃料はいずれもハイオクで、燃料タンク容量は50Lだ。

ここがイイ

4年経っても商品力は健在

4年前のデビュー時には完成度の高さに圧倒されたが、今回は基本性能の変わらなさに拍子抜けしたというのが正直なところ。他社の同クラス車もゴルフ7をベンチマークにして進化しており、こちらもそのレベルに慣らされているということだろう。とはいえ、実質300万円台の価格帯で、これだけの走行性能、快適性、運転支援システム、安全装備、そして新型の売りではあるインフォテイメントシステムを備えたクルマはそうはない。ひねりがないように見えて、シンプルでクリーンなデザインも良い。

ここがダメ

初心者には難しいスマホ連携機能。装備満載だとやや高価

オプションのインフォテイメントシステム「ディスカバープロ」は、あの手この手で「進化」を遂げているが、使いこなせるユーザーはどれほどいるのだろうか。いっそスマホの通信機能やナビゲーション機能を利用した方がいいという発想は分かるが、現時点だとスマホとの接続は面倒だし、使いこなすのも難しい。また、タッチパネルによる操作も、やはり運転中にブラインド操作できないという点では困る時がある。VWに限った話ではないが、この手のインフォテイメント装備はまさに今が過渡期。その意味で、ナビやスマホ連携といった機能が一切省かれる「コンポジションメディア」が全車標準なのは良心的かも。 ゴルフも試乗車のように最新装備が一通りそろったモデルとなると300万円台後半。今なおベーシックカーの鑑だが、全幅は1800mmとクラウン並みで、手頃なコンパクトカーとは言いづらくなってきた。今後は次期ポロがそのあたりをカバーすることになるだろう。

総合評価

インフォテイメントシステムは過渡期

これまでさんざん褒めちぎってきたゴルフが、またまたちょっと良くなった。特にスタイリングは主にバンパーのあたりをちょっといじったくらいだが、ますますシャープにリニューアルされて、ちょっとどころか、かなりカッコよくなったのでは。最近のフォルクスワーゲン車はシャープな印象が売りだが、10年前はなんとなく丸い印象が強かっただけに、どんどん変わることには唖然としてしまう。そういえばその頃はワッペングリルなどという意匠もあって、当時とは別の会社のクルマのようだ。そんなフォルクスワーゲン車の中では、丸いザ・ビートルなどかなり浮いた存在だろう。生産終了、次期モデルなしの噂も、いたしかたないのかも。 今回ちょっと良くなった部分を象徴するのが12.3インチのフル液晶メーターだが、これは17万2800円のセットオプションで、しかもハイラインでしか選べない。標準装備じゃないのは残念だ。個人的には絶対欲しいが、実用面で大したことができるわけでもないので、価格に見合うかどうかの判断は個人の好みで左右されるだろう。また、画面が9.2インチになった純正インフォテイメントシステム「ディスカバープロ」(22万6800円)もトピックなのだが、こちらもさほど先進的という感じはしなかった。
 
思い起こすと、ゴルフ7のデビュー当初は、今回のマイナーチェンジモデル同様にコンポジションメディア(ただし5.8インチディスプレイの旧型)が標準装備で、純正ナビはダッシュボード上に外付けディスプレイを載せるタイプの販売店オプションだったが、今回はかえって、このナビ機能無しの新型コンポジションメディアの方が好ましく思えたりする。ただ、せっかくの8インチ大画面ゆえ、スマホの外部ディスプレイ機能と、地デジと、バックカメラと、車両情報表示くらいができればいいと思うのだが、コンポジションメディアではそれはできない。残念だ。 試乗車には9.2インチ ディスプレイのディスカバープロが装着されていたが、音声操作が限られたコマンドにしか対応しない点や地図性能など、ナビ機能に関しては残念ながらあまり魅力を感じなかった。スマホをつなぐ方法にも、BlueTooth(オーディオ、ハンズフリーフォン)、Wi-FI(VW Car-Net)、無線LAN(VW Media Control)、さらにはUSBケーブル(App-Connect)と何種類もあり、それぞれが違う機能に対応している。また、事前にオンラインでユーザー登録もしておかないといけない(車体番号や個人情報の入力が必要など、これがけっこう面倒らしい。現在の登録率は約3割とのこと)。この煩雑さはさすがに。こうなるともうスマホだけでいいと思えてしまう。 となると、やはりApp-Connectで、AndroidAutoやApple CarPlayが使えることは大きな魅力で、結局はディスカバープロを装着することになるのだろう。日本車もこのあたりでは苦労しているが、輸入車も同様のようで、まさに過渡期。次世代の扉は開いたばかり。今後に期待するしかない。

エンジンとギアを楽しむなら

それはそうと、久々にゴルフ7に乗って、その軽快さにはちょっと驚かされた。ものすごく軽く走る。もう少し重厚感があってもいいのにと思って、たまたま現行パサート(同じMQBプラットフォーム)に乗ったら、そちらにはあったし、ふだん乗っているザ・ビートル・カブリオレ(ゴルフ6と同世代)にも独特の重厚感があるので、ゴルフ7の軽快感がすこし「軽い」感覚に思えてしまったのだろう。 ところで、そのザ・ビートル(1.2L TSIエンジン、7速DSG)が5万2000kmにして、いわゆるジャダーが出るようになり、ディーラーに持ち込むとクラッチ交換ということになった。これはご存知の方もいると思うが、初期の乾式クラッチ式7速DSGには「あること」らしい。確かに街乗りがメインで、ストップ&ゴーを繰り返していたし、デイズ事務所の駐車場も、前の道路も急な坂で、半クラ状態での発進が多かったし、カブリオレは車重が1380kgと重く、それも乾式単板クラッチには高負荷だったのだろう。これ、全車に出るわけではないようで、たまたま当たってしまったか。
 
これまでDSGの素晴らしさを力説してきた我々としては、ここは素直にこういうことがあったことを報告しておきたい。どうやら初期の乾式単板クラッチ式7速DSGには起きやすいようだ。ゴルフ7に現在搭載されているものはすでに対策がなされているようで、GTIやRのような2.0Lターボのハイパワー車や、4WDのオールトラックあたりは湿式クラッチが使われている。今回はディーラーで購入した車両で、ずっとディーラーでメンテをしてきたこともあって、特に負担なく修理してもらうことができたのは幸いだった。 これまでほとんど故障がなかったザ・ビートルゆえ、トラブルに驚いたわけだが、クルマも機械製品である以上、消耗し、壊れるのは当たり前ということを、昨今はすっかり忘れていた自分にも驚いた。昔はシトロエンの泥沼にハマっていたのに。クラッチ交換したザ・ビートルは新車の走りを取り戻し、ずいぶん若返った気がする。電気自動車の時代になれば、こうしたことも内燃機関時代の古き良き思い出語りになるのだろう。
 
ということでゴルフ7.5は、DCTと直噴ターボエンジンを組み合わせたクルマとしては依然素晴らしいものだったが、ディスカバープロをはじめとして、VWが訴える新しいクルマ感に関しては、あまりピンとこなかった。それを含めて、ゴルフ7が出てからのこの4年間でデータ通信の世界も大きく進化し、電動化されたクルマに乗る機会も多く得て、我々は次の世界への扉を開きつつあるから、そう思うのかもしれない。 1年半前に試乗したPHVのゴルフGTEは、期待に反してまだまだ未完成な印象が強かったが、今秋にも国内導入と言われるe-ゴルフを筆頭に、ゴルフも今後は電気のクルマになっていくのだろう。しかしエンジンとギアという古典的な世界を楽しもうとするなら、ゴルフは今もやはりその第1選択候補である。それに異議はない。
 

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